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オールジャンルバトルロワイアル6

212 ◆.pKwLKR4oQ:2023/12/31(日) 23:58:37 ID:noovOncU0
あれはいつの日の記憶だっただろうか。
おそらく買い物の帰り道だっただろうか。
真っ赤に染まった夕焼け空の下を自分とまだ幼い息子で2人仲良く手を繋いで家路についていた。
右手には商品がぎっしりと詰まった買い物袋が、左手にはまだ小さな手が。
確かな重さと温かさを伴って両の手からしっかりと伝わっていた。
ふと隣を見ると、息子が笑みを浮かべてこちらを見上げていた。
それを目にした時、どうしようもなく心の底から愛おしさが込み上げてきた。
決して裕福とは言えないが、それでもこうして笑いかけてくれる息子がいる。
それに家に帰れば夫と娘が待っている。
ささやかだが何物にも代えられない幸せがそこにはあった。

そんな些細な幸せが、何気ない家路が、今はどうしようもなく遠かった。


    ▼     ▼     ▼

「なんでこんなこと……そんなに殺し合いがしたいのか!! あんたたちは!」

リュウタロスは内から溢れ出る憤りを抑えられなかった。
先程の社長の放送によれば、もうすでにこの島で生き残っている者は当初の3分の1でしかない。
もしかしたらもっと上手く立ち回っていたら、これだけの犠牲者を出さずに済んだのかもしれないのに。
そもそも正午までにC-6の豪邸で待ち合わせをしていたはずが、結局辿り着けずに途上で放送を聞く羽目になってしまった。

「おい、あんたそれでも連合の軍人か!」
「いきなり何を……? それに元々軍人になるつもりなんてーー」
「今はそんなことを言っている場合じゃないだろう。少ししたら出発しよう」

確かにあの石板の通り、不思議なことに井戸に入ると洞窟の裏側らしき場所に出ていた。
その場所からならD-6の禁止エリアを迂回して、C-6の豪邸に正午までに辿り着くことは不可能ではないと思われた。
だが阿魔野邪鬼と別れて先を急いだにもかかわらず辿り着けなかったのは、偏にキラのせいだとリュウタロスは思っていた。
軍人として訓練を積んできたリュウタロス、類まれな身体能力を有するスザク、素手でロボットを破壊するジャイアンの母。
その3人と比べると、キラは体力面で一段劣っていると言わざるを得なかった。
スーパーコーディネイターといえども鍛えていなければ一般の学生と身体面で大きな差はない。

「ん、どうされたんですか?」
「あ、ああ、すまないね。なんだか昔のこと、思い出しちゃって……」

キラに突っかかるリュウタロスを自然と窘める立ち位置にいるスザクだったが、ふとジャイアンの母が物憂げな表情を浮かべていることに気づいた。
洞窟に一人残した阿魔野邪鬼を心配しているのかと思ったが、どうやら違うようだった。
実はこの時ジャイアンの母は自身も気づかぬ精神的変化をしていた。
その身に纏った天の羽衣の効果でこの島に来てから負の感情が薄れてきていたのだ。
その影響で昔の感情が蘇ってきているのだが、それに気づく者はこの場には誰もいなかった。


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