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パラレルワールド・バトルロワイアル part2

387 ◆Z9iNYeY9a2:2012/06/09(土) 20:09:49 ID:QAuOKTGs
文章を加筆した部分を修正スレに投下しておきました
ご確認お願いします

388 ◆bbcIbvVI2g:2012/06/16(土) 21:32:41 ID:0Ts8TUk2
投下します

389漆黒の会談 ◆bbcIbvVI2g:2012/06/16(土) 21:35:18 ID:0Ts8TUk2
警察署を出発した夜神月。
行先は特に決まっていなかったのだが、しいて言えば安全の確保できる場所に移動したいと考えていた。
今の自分にはノートどころか力になりそうな支給品もないのだ。
あったといえば一本の黒い剣と赤いカードのようなもの。
黒い剣のほうは自分に扱えるものとは思えなかったがどうやら何かしらの力を秘めている様子。駆け引きには使えるだろう。
赤いカードのほうは逃げに徹するのであればそれなりに有用な道具となる。一度しか使えないのがネックだが。

そうして移動しているうちに、大きな戦闘音が聞こえてきた。
警察署から見て南のほうからの音だ。そこまで距離が離れてもいないようだ。

(まさかこの近くで戦闘が…?)

下手に動くと巻き込まれる可能性もある。
見晴のよい離れた場所から様子をうかがうことにしたのだった。

(あれはオルフェノクとかいう生物、それに金色の…ロボット?!)

あんなものまでこの場にあるというのか。
驚愕する月を後目に状況は進んでいく。
場に現れた白い少女と戦う銃使いの少女。あれも魔法少女とかいうものなのだろうか。
そして金髪の少女が、巨大な銃を手に飛び上がり、発砲した。
爆音が響く中で周囲は火に包まれ、その場にいたオルフェノク、白い少女たちは散り散りになって去って行った。

やがて残った金色のロボットも消滅し、マントを羽織った男がその場に残った。

(あの男が、ロボットを動かしていたのか)

男は道に残った一人の男の死骸に近づき、しばらくした後去って行った。

(どうするか…)

あの男は間違いなくこの殺し合いに積極的な一人だろう。
多くの参加者を殺して回るはずだ。
であれば、もし後に裏切ることが前提であっても今は手を組んでおけばことが有利に進むかもしれない。
問題は、今自分の手元にはカードが少なすぎることだ。交渉が決裂したときのことを考えると心もとない。

(いや、もしかしたら賭ける価値はあるかもしれない)

男は近くにあった建物に入っていった。地図にもあるバー・クローバーという施設らしい。

月は支給されていた剣を手に、そしてカードをいつでも使えるようポケットに入れて男を追った。
あのような男の前でこんな剣を持っていても気休めにしかならないだろうが、逆にいえば気休めくらいにはなる。

390漆黒の会談 ◆bbcIbvVI2g:2012/06/16(土) 21:36:06 ID:0Ts8TUk2

「誰かな?」

入るために敢えて足音を聞こえるように歩いて、バー・クローバーに入った。
こそこそして入っては余計な警戒を抱かせてしまうからだ。
そして目論見どおりに相手に気付かせる。

「僕は夜神月、さっきのロボットから君が出てくるのを見てね。好奇心から会いにきたんだ」
「ほう、あれを見て私に会いに来るか。なかなかの度胸だ。
それで、要件は何だ?まさかその剣で私を殺せると思っているわけではないのだろう?」

ここまでの会話の中で月はこの男についてある程度の推察を立てた。
おそらくこの男は殺し合いに乗っていても無差別に殺しまわっている男ではない。
いわゆる立ち回りを気にする性格のようだ。
であれば、いける。そう確信した。

「単刀直入に言いましょう。僕と手を組みませんか?」



放送が始まったとき、二人はFー4エリアを目指してバイクを走らせていた。

男の名はロロといった。ロロ・ヴィ・ブリタニア。
殺し合いに乗ってこそいるものの慎重に行動することを心掛けているという。
自分のスタンスに近かったため、申し出をすんなりと受けてもらえた。
なぜそこを目指していたかというと、彼の探すとある人物がそちらに向かうのを月が見かけたためだ。
そういった事情で移動した二人は、突如響いた放送に思いを馳せた。

(松田、美空ナオミ、こいつらが死んだのは僥倖だな。だが)

共に自分の存在を脅かしうる者だった二人。敵が少しは減ったことになるだろう。
ニア、メロ、そしてLが生きているのは警戒しておく必要があるだろうが。
しかし、弥海砂。彼女が死んだのは若干でこそあるものの痛手だった。
彼女がそこまで長生きできる存在とは思っていない。だがこれほどまでに早く死ぬとは。

「C.C.、ゼロ。共に健在か」

そんな月の傍で呟くロロ。だがその名前の意味は分からない。
まだお互いの知り合いについての情報交換を行った程度だ。
会話に気を取られて襲われでもしたら事だ。詳しい情報交換は落ち着いた場所ですることにしていた。

そうしてF‐4にたどり着いたが、ロロの目当ての人物は見つけることはできなかった。
既に移動したということだろう。手がかりもなく、虱潰しに探し回るほど暇なわけでもない。
一旦その人物の捜索は打ち切りどこかに拠点を構えることにするという。

そうして結局警視庁まで戻ってきていた。近くにある施設として、ただ都合のよかっただけである。
それでも月としては一度来た場所だ。何か変化があればすぐに分かる。

「おや、夜神月君ではないですか」

と、警視庁に入ったところで月にとっては数時間前に聞いた声が聞こえた。

見ると、入ってすぐの受付付近の席にゲーチスが座り、その傍で美樹さやかが眠りについていた。

391漆黒の会談 ◆bbcIbvVI2g:2012/06/16(土) 21:37:20 ID:0Ts8TUk2



それは偶然だった。
ふと美樹さやかの遺骸にもう一度目を落としたことでそれに気づくことができた。

「これは…?」

彼女の欠けた頭部の形が若干元に戻っているようだった。
さらに近づいてみると、少しずつ彼女の傷が再生していく様子がわかる。

「そんな魔法のようなことが―――ああ、そういうことですか?」

口にして気付いた。
美樹さやかは魔法少女だと言っていた。ならばもしかすると有り得ないことも起こしうるのかもしれない。
例えば致命傷を負っても生存することが可能である、とか。

「ふふふ、美樹さやか。あなたは本当に楽しませてくれますね」

もしまだ彼女が生きているならまだ利用することができる。
目が覚めたときが楽しみになってくる。

だがこの場で彼女の目覚めを待っているというのも危険だ。
政庁から離れつつどこか腰の下ろせるような場所に移動するべきか。
意識のない美樹さやかを抱える。近くに落ちているバッグの回収も忘れない。

そうしてたどり着いたのが警視庁であった。
美樹さやかの目的地へは彼女が目覚めてから移動すればよい。

そうしているうちにやってきたのが、

「おや、夜神月君ではないですか」

夜神月、そして黒髪の男であった。



月としてはゲーチスとの遭遇はどちらかといえば避けたかった部類だ。
彼からは得体のしれない黒さを感じており、底知れぬ不気味さがあったからだ。
それでももし己の世界にいる者であったならばここまで警戒しなかっただろう。
だが、彼の住む世界は月にとってはあまりに未知数。何かしらの力を隠し持っていても不思議ではない。
しかし、出会ってしまったものは仕方ない。できれば迅速にこの場を去りたい。
触らぬ神に祟りなしというやつだ。変に刺激してはまずい。

392漆黒の会談 ◆bbcIbvVI2g:2012/06/16(土) 21:38:33 ID:0Ts8TUk2
そう思っていた矢先であった。

「お前、乗っているな?」

ロロが、その月が避けていた部分に触れたのであった。

「乗っている、とは何のことでしょうか?」
「ふん、お前のその腹に隠している闇、隠しきれてはいないぞ?」

ロロはあくまで、直感的に感じ取ったことを言ったにすぎない。
それは月にとっては相容れないやり方だ。

「…あまりそういうことを口に出すのは感心しませんよ。
私はゲーチスと言います。あなたは?」
「ロロ・ヴィ・ブリタニア。いずれ魔王となる男だ」

このやり取りの中で月は直感した。
こいつは狡猾で頭も回る男だ。しかし己の力を過信している節がある。
そうでなければあのような大胆な問いかけはできないだろう。もし何か起これば力ずくで全てを終わらせられるのだから。
実際にそれが可能なほどの力を持っているからたちが悪い。
が、そこが付け入る隙になる。

そしてそれと同じ印象をゲーチスも感じ取っていた。
最もゲーチスは彼の能力を知らないため、月ほど確信することはできなかったが。

それを知ってか知らずか、ロロは話を進める。

「俺も乗っている者だ。だがさすがに全ての参加者を殺すのは骨が折れる。
どうかな?我らと手を組まないか?」
「なるほど、そういうことでしたか。では月君もやはり?」
「ええ」
「ほう、なかなか喰えないお人じゃないですか」

おどけるような口調で話すが、月には彼なら薄々気づいていたのではないかという気がしてならなかった。
自分がゲーチスの黒さをうっすらと感じ取ったように。

「残念ですが私にはある目的がありまして。おそらくあなた達と相容れるものではないかと思うのです」
「そうか、残念だ。ではこの場での一時休戦と軽い情報交換くらいは頼めるかな?」
「それくらいならいいでしょう。しかし会ったばかりの人間をそう信用するというのも考えてしまいますね」
「なら、お互いの持つ手札をそれぞれ公開して話すというのはどうですか?
僕は彼の力を知っていますし、それだけでは不公平になりますから」

ここで敢えて主導権を握ろうと意見を出す月。あまり流されてばかりはまずい。
ロロの力は概ね把握している。だが彼はどれほど把握されているかまではわかっていないはずだ。
だから彼としても話さざるを得ないだろう。
これは取引でもある。ゲーチスの隠しているものを知ることもできるのだから。

「ふん、いいだろう。お互い隠し事はなしだな」
「仕方ありませんね」



393漆黒の会談 ◆bbcIbvVI2g:2012/06/16(土) 21:39:06 ID:0Ts8TUk2
ロロは己の持つ能力についてを話した。
ナイトメアフレームという機動兵器、そしてジ・アイスという能力。

ゲーチスは己の持つポケモンについてを話す。
サザンドラという3つの首を持つドラゴン。波動、エネルギー弾を操ることができる。

月は何の能力を持っているわけでもない。だから改めて支給品を開示した。
バイクと黒い剣。しかし今この状況ではこの程度では焼け石に水くらいのものしかないだろう。
するとロロが誰のものを持ってきたのか、持っていたもう一つのバッグから取り出した何かを投げて寄越した。
ゲーチスの持つボールと同じものに見える。開くと、中には全身に刃のついた人型に近い生き物が出てきた。
どうやらこれは元々はゲーチスのポケモンであったらしい。それがロロの拾ってきた誰かのバッグのあったとか。
本来なら自分のものであると取り戻そうとしそうなものだが、ゲーチスは月に預かっていてもらいたいとそれを受け取ることを了承してくれた。
しかも親切なことに傷ついたキリキザンに薬まで施してくれた。

無論、全てを明かしたといっても馬鹿正直に本当に全部話した者はこの中にはいない。
ロロはギアスの能力はヴィンセント搭乗時しか使用できないような言い方をした。もしもの時に油断をさせておくためだ。
ゲーチスは、波乗り、大文字技の存在は隠しておいた。一つは万一の時に水場を移動経路として使う時のため、もう一つは使い勝手を考えての話だ。ポケモンを知らない二人だからこその隠し事だ。
月はポケットに隠したレッドカードの存在は言わなかった。唯一にして一度きりの、今の月にとって最も実用的なアイテムである。小さなものであったため最初に会った時も隠し通すことができたものだ。

こうして上げた以上に、さらにゲーチスは後ろで眠る美樹さやかの詳細についても敢えて詳しくは話していない。
先ほどの戦闘行為のダメージが残っているため眠っているとしか伝えていないのだ。
もし、この少女について詳細を聞けばこのロロという男は彼女を己の手駒にできないかと考えることだろう。それは困る。
美樹さやかは自分の駒として扱っていきたいのだ。このような男に奪われるわけにはいかなかった。
幸いさやかとはここに来てからずっと共にいる仲でいる上、彼女の事情はある程度承知済みだ。もしもの時でも彼女の扱いにはこちらに分がある。
そういった考えがあった。
そもそもゲーチスの欲しているのはあくまで手駒。協力者ではないのだ。それに自分の隠すべき部分
今争いはしないといってもいずれは潰しあうことになるのは目に見えているのだから。


一方で月は若干の焦りがあった。
この場において最も立場の低いのは自分だろうという自覚があった。
ロロやゲーチスのような強力な力があるわけではない。
ゲーチスから施されたキリキザンというポケモンがあってもだ。いや、むしろそれこそが警戒に値する。
これは罠か、あるいはもし自分が裏切ることがあっても対処できるという意図があるかということだ。
だがそんな焦りを表に出すことはない。それに気付いていないという意志表示のためだ。

394漆黒の会談 ◆bbcIbvVI2g:2012/06/16(土) 21:40:38 ID:0Ts8TUk2
「さて、では情報交換タイムといこうか」

そして場を仕切るロロ。
各々が様々な思惑を胸に秘めたまま、未だ目覚めないさやかの傍で情報交換が始まった。


【E-3/警視庁/一日目 午前】
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:意識なし
[装備]:ソウルジェム(濁り中)
[道具]:
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない。主催者を倒す
1:????
※第7話、杏子の過去を聞いた後からの参戦
※「DEATH NOTE」からの参加者に関する偏向された情報を月から聞きました
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)

【ゲーチス@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:左腕に軽度の火傷(処置済)
[装備]:普段着、きんのたま@ポケットモンスター(ゲーム)、ベレッタM92F@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]:基本支給品一式×2、モンスターボール(サザンドラ(ダメージ小))@ポケットモンスター(ゲーム)、病院で集めた道具(薬系少な目)
    羊羹(1/4)印籠杉箱入 大棹羊羹 5本入 印籠杉箱入 大棹羊羹 5本入×4、不明支給品1
[思考・状況]
基本:組織の再建の為、優勝を狙う
1:情報交換を行う
2:表向きは「善良な人間」として行動する
3:理屈は知らないがNが手駒と確信。
4:切り札(サザンドラ)の存在は出来るだけ隠蔽する
5:美樹さやかは自分の駒として手元に置く
6:政庁からはなるべく離れる
7:今のところロロと組むつもりはない
※本編終了後からの参戦
※「DEATH NOTE」からの参加者に関する偏向された情報を月から聞きました
※「まどか☆マギカ」の世界の情報を、美樹さやかの知っている範囲でさらに詳しく聞きだしました。
(ただし、魔法少女の魂がソウルジェムにされていることなど、さやかが話したくないと思ったことは聞かされていません)
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
※月、ロロにはサザンドラの存在と使う技を明かしました。しかし波乗り、大文字の存在と美樹さやかの詳細については話していません


【ロロ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:疲労(中)、左頬に切り傷(軽度)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、コルト・ガバメント(5/7)@現実、モンスターボール(空)、不明ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本:この殺し合いの優勝者となる
1:ゼロとC.C.の正体を確認し、抹殺してゼロの力を手に入れる
2:ナナリーを抹殺する
3:巴マミを抹殺する。なるべく残酷な方法で
4:夜神月を利用する
5:手駒にできそうなプレイヤーを見つけたら、戦力として味方に引き入れる
6:もう1人のロロ(ロロ・ランペルージ)の名前に違和感
7:ゲーチス、月と情報交換を行う
[備考]
※参戦時期は、四巻のCODE19と20の間(ナナリーを取り逃がしてから、コーネリアと顔を合わせるまでの間)
※ジ・アイスの出力には制限が設けられています。普段通りに発動するには、普段以上のエネルギー消費が必要です
※ヴィンセントには、召還できる時間に制限があります
 一定時間を過ぎると強制的に量子シフトがかかりどこかへと転移します
 また、再度呼び出すのにもある程度間を置く必要があります
 (この時間の感覚については、次の書き手さんにお任せします)
※ゲーチス、月にはヴィンセント、ジ・アイスについて明かしました。しかしヴィンセント使用中でなければジ・アイスは使えないと誤解させる言い回しをしています
[情報]
※「まどか☆マギカ」の魔法少女、オルフェノクについての簡易的な知識
※ルルーシュ・ランペルージとゼロ(ルルーシュ)が別個として存在していると認識

395漆黒の会談 ◆bbcIbvVI2g:2012/06/16(土) 21:41:46 ID:0Ts8TUk2
【夜神月@DEATH NOTE(漫画)】
[状態]:健康
[装備]:スーツ、
[道具]:基本支給品一式、レッドカード@ポケットモンスター(ゲーム)、エクスカリバー(黒)@Fate/stay night、ジャイロアタッカー@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト
    キリキザン(体力半分ほど)ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:優勝し、キラとして元の世界に再臨する
1:情報交換を行う
2:しばらくはロロと行動
3:元の世界で敵対していた者は早い段階で始末しておきたい
4:ミサと父さん(総一郎)以外の関係者の悪評を広める
情報:ゲーチスの世界情報、暁美ほむらの世界情報、暁美ほむらの考察、アリスの世界情報、乾巧の世界情報(暁美ほむら経由)
※死亡後からの参戦
※ロロ、ゲーチスにはレッドカードの存在は明かしていません


【レッドカード@ポケットモンスター(ゲーム)】
ポケモンに持たせると、攻撃技を当てた相手を強制的に交代させるアイテム。
本ロワにおいては参加者も使用可能である。
ポケモンに発動した場合の効果はゲーム準拠。
参加者に発動した場合は戦闘可能範囲外まで強制移動させられる。

【エクスカリバー(黒)@Fate/stay night】
セイバーの所有する宝具。ただし聖杯の泥の影響で黒化している。
真名を解放することで膨大な魔力を解放可能。だがこれが可能なのは基本的にセイバー本人のみ。

396 ◆bbcIbvVI2g:2012/06/16(土) 21:42:59 ID:0Ts8TUk2
投下終了です
頭脳派キャラはあまり得意ではないのでおかしい所があれば指摘いただけると幸いです

397名無しさん:2012/06/16(土) 23:06:04 ID:4/cn/B7Y
投下乙!
悪い奴らは手を組むものさ

398名無しさん:2012/06/17(日) 00:00:16 ID:/zl/pLBg
投下乙です!月からすれば少なからず駆け引きがやれる腹黒共より、どう動くか分からない錯乱さやかあちゃんが一番厄介だと思うんだ……ほら、やっぱり危険人物しかいないじゃないですかw

399名無しさん:2012/06/17(日) 12:57:54 ID:TIpgiHuk
投下乙です

頭脳派キャラを書くのは難しいがこいつらならこうするだろうなみたいな展開はまだなんとかなるかもね
情報交換はどうなるか気になる。そしてさやかちゃんは会議が終わる前に目を覚まさないと…どうせこの三人ならどうさやかちゃんを利用するかの算段とかもするだろうなあw

400名無しさん:2012/08/23(木) 14:09:50 ID:4tOA1eRA
予約キター

401 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:19:01 ID:E5hoQQIY
これより本投下を始めます

402Tiger&Cherry ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:20:10 ID:E5hoQQIY
藤村大河。
穂群原学園の英語教師。弓道部の顧問。剣道5段。
彼女のプロフィールとしてはこのくらいのものしかないだろう。少なくともこの場においては。
魔術師などではなく、当然のことながらオルフェノクでも魔法少女でもポケモントレーナーでもない。本当の意味で一般人である。
しかし、そんな彼女でも様々な人物と関わりがあった。

魔術師殺しの異名を持つ男、衛宮切嗣。
そんな男の息子、衛宮士郎。
間桐家の魔術師、刻印虫を植え付けられた少女、間桐桜。
他にもサーヴァントや元暗殺者といった存在にも関わりを持っている。

そのような正気の沙汰ではない環境にありながら、それらの異端と関わることもなく、なのに彼らに少なからず影響を与えていた。
衛宮士郎は赤い外套の英霊となり記憶を摩耗させた中においても彼女のことは大切に思っていた。

そして、間桐桜にとってもかけがえのない人間の一人だった。




「ピカ、ピカ。
…ピカピ、ピカピ」

嫌な予感はあった。
突然ピカチュウが駆け出したときにはすでに止めることなどできなかった。
だがNは確かに聞いた。駆け出す直前、ピカチュウが”ヒカリ”と呟いたのを。

Nがその呟きの意味を理解したときには手遅れだった。
追いかけた三人が見たのは、もはや原型を留めていないほどボロボロにされた人間の死骸だった。
辛うじて見える帽子が、おそらく知った人間が見た際の判断材料になるかもしれないという程度のものだった。

ルヴィアも顔を顰め、大河は口を押えて立ち尽くしている。
ピンプクはゾロアークの体毛に入っていたので、これを見てすぐにボールに戻したことでピンプクには見られずに済んだ。

「ピカピ、ピカピ」

ピカチュウはなおもヒカリだったものに呼びかけ続けている。
自分のマスターの死を直接知ることになったのはついさっきのことだ。立て続けに見てしまった仲間の無残な亡骸に大きなショックを受けているのは明白だった。

「N君、ピカちゃんをその子から離してあげて」
「…ピカチュウ」

Nはピカチュウに声を掛ける。
しかしあくまで掛けるだけだ。もしここで離れろと言うと、ピカチュウの意志を捻じ曲げることになるのだから。

403Tiger&Cherry ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:21:19 ID:E5hoQQIY

「…ねえ、N君、この子の姿を隠してあげられる何か、持ってない?」
「今そういった者は持ってないけど、ゾロアーク」
「クシュウ」

ゾロアークに言うと、ヒカリの周囲の空間だけ景色が変わる。
次の瞬間にはヒカリには白い布がかぶせられていた。
当然これは幻影であり、実際にそこに布があるわけではない。しかし今、この場においての視覚的な気休めにはなるし、大河にとってはそれで充分だと思った。

「…?そういえばルヴィアさんは?」
「彼女なら、ちょっと離れるって。でもすぐに戻ってくるって言っていたよ」





嫌な予感があった。
その少女の死体からそう離れていない場所、そこからどうしようもなく嫌なものをルヴィアは感じた。

そもそもここはあの女、間桐桜と戦った近くの場所だ。あの時あの女はこの方向に何があると言っていた?
そしてあのヒカリという少女の傍に落ちていた、血に染まった斧。

見てはいけない気がした。だが見なければいけない気もした。
予感はそれに近づくにつれて確信に近づいていき、そして、

「まったく無様ですわね。ミストオサカ」

そこには、あの時間桐桜の言ったように、頭の割られた遠坂凛の姿があった。

「あなた、どれくらいの借金を残しているか分かっているんですの?
 まさかあなたが借りたものまで返せない人間だったなんて、つくづく見下げ果てましたわ」

その口調は普段の凛に接する彼女の口調と何ら変わりはない。傍から見れば死体と話しているとは思えないだろう。

「さて、そうなった場合、残りの借金はどうしましょうか…、そういえばあなたには妹がいるんでしたわね。
 この際ですし、肩代わりしてもらいましょうか。そしてあなた方遠坂家は、まともに借りたものを返すこともできない情けない一族と末代まで語り継いであげますわ」

いつもであれば、ここで蹴りの一つでも飛んでくるのが普通といえるほどの暴言の数々。しかしそれが動くことなどなかった。

「あなたとの腐れ縁もここまでですわね。それでは、さようなら」

と、こうしてルヴィアと凛の別れは、ルヴィアにとっていつも通りのやり取りで終わりを遂げた。

404Tiger&Cherry ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:21:48 ID:E5hoQQIY



ヒカリを弔ってあげたいと言ったのは大河だった。

「こんな女の子をこんな姿で放っておくなんてできない」
とのことだった。

ピカチュウは顔を涙で濡らしながら同意し、Nもピカチュウの友達を埋葬することを手伝うと申し出た。

「分かりましたわ。ただ、私は少し気になることがありますのでお先に行かせてもらいたいのですが、よろしいかしら?」
「あー、うん、そうよね。これは私の我儘なんだし。でも気を付けてね」

もし彼女がいない間に全てを終わらせられるならそれに越したことはない。
それにこっちにはNや複数のポケモンも共にいるのだ。過剰な期待はできないが何かあった時には逃げることは可能だろう。

「あ、あとね、桜ちゃんに会ったら―――」
「分かっていますわ。その辺りも心配せずともよいですから」

おそらく大河の期待とは正反対のことをしようとしているのだな、と思いつつ。
ルヴィアは北へ歩きだした。





どうしてこんなことになってしまったのだろう。
私は、ただ先輩に死んでほしくなかった。先輩を守りたかった。
きっと先輩は私のためなら命を惜しまないだろう。
でもそんなのは嫌だった。
姉さんのように、一人でも戦える力が欲しかった。

そう思った矢先に、それを見つけてしまった。
デルタギア。
これを使えば一人でも戦うことはできる。先輩に守ってもらわなくても自分の身は守れる。

そう、守りたかっただけだった。
なのに、気がついたら目の前には男の人が倒れていた。正気を取り戻したときには遅かった。
でもそんな気持ちをどこかにやってしまうぐらいそれが楽しくて。それがおかしいことにも気付けなくて。

そんな時、血塗れの斧を持って走る少女を見つけた。
きっと人を殺したんだ。あの人は悪い人なんだ。そう思ったとき、とても自然にその人を撃った。
そして、自分がどうするべきなのかに気付いた。
悪い人を殺そう、と。それが先輩を守ることに繋がる、と。
そう言い訳をして、やってはいけないことを肯定してしまって。

そうして、自分がおかしくなっていることに気が付かないまま、こうしてみんなと行動していました。

405Tiger&Cherry ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:22:14 ID:E5hoQQIY



「それはたぶんバーサーカーだと思います」
「バーサーカー…、狂戦士、ですか?」

合流を済ませた4人は、それまであったことについての情報交換を行っていた。
当初、タケシがグレッグルに殴られたり桜が頭痛を起こしたりと色々な意味でのトラブルもあったが今は落ち着いている。

「はい。でもごめんなさい、名前くらいはわかりますけど、あまり詳しいことは知らなくて…」
「ああいいのよ。名前が分かっただけでも今のところは十分だし。
 でもちょっと気になるんだけど」

バーサーカーについての説明を受けた真理は新たな疑問を問いかける。
バーサーカー、そしてセイバーなる者。彼らの存在自体は美遊からも聞いていた。
聞いていた、と言っても外見や特徴を聞いたわけではなくただ注意するようにと言われたくらいだが。
それだけではなく、桜と美遊の知り合いには衛宮士郎以外にも被っている部分が見受けられた。
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、藤村大河。
だが桜は美遊の存在は知らないと言っていた。それだけならばそこまでおかしいとは感じなかっただろう。友達の友達に交友関係があるとも限らない。
問題は美遊の話したクロエ・フォン・アインツベルンについて話した時のことだ。
彼女からはその子はイリヤの双子の姉妹だと聞いていたのだが、そんな人は知らない。
桜自身、イリヤのことはよく知っているが双子の存在など初耳だ。
というより、知らないではなく、桜にとってはそんなものいないはずなのだ。

「本当に知らないのね?」
「はい…」
「そういえば真理さん、覚えてますか?美遊ちゃんが言ってたあの――」
「もしかして、平行世界がどうとか言う話?正直よく分からなかったけど」
『平行世界だと?』

その単語に反応したのはナナリーにしか見えない少女だった。

(ネモ?分かるの?)
『まあな。こいつらに今から言うことを伝えろ』

‐‐‐‐

「えっと、じゃあこの桜さんと美遊の知っている人たちとは違う可能性があるの?」
「ええ、そうらしいです」

ナナリーはネモが言うことを分からないなりに分かりやすく伝えた。と言ってもナナリー自身も分かってはいないのだが。
ただ、もしそうならゼロと兄であるルルーシュが同じ場所にいる説明もつくかもしれないとネモは言っていた。

「それにしても、すごいですねナナリーちゃんは。私の知らないようなことまで知ってて」
「いえ、たまたま知ってただけですから…」

ナナリーにはその言葉をただの感心と受け取りたかった。
しかし、そういった桜の言葉からは明らかに何か含みがあるような気がしてならなかった。
実際、傍にいるネモの警戒も解けてはいない。

情報交換をしながら、四人は一人を除いて特に不安を抱えることもなく歩いていく。

406Tiger&Cherry ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:22:42 ID:E5hoQQIY

そして、彼らが彼女と出会ったのはポケモンセンターを出てしばらく歩いたところにある橋の近く。
そこに、その少女はいた。

「また会いましたわね、マトウサクラ」
「……!」

目の前に立っていたのは金髪でドレスのような服を着た少女。彼女を見たときの桜の表情はすさまじいものだった。

「何で、あなたがこんなところにいるんですか?」
「それはこっちのセリフでしてよ。まさか集団に紛れ込むなんて思ってもいませんでしたもの」

知り合いなのか、とこの場で問いかけられるものはいなかった。
二人の表情や刺々しい会話、そして殺気はただ事ではないことはナナリー、真理、タケシにもすぐに察しがついたからだ。
しかしその後の会話の内容はその中の一人にはあまりにも大きな事実だった。

「一つ尋ねますわ。ヒカリという帽子の少女を殺したのはあなたですの?」
「名前は知らないですけど、帽子をかぶった女の子を殺したのは私ですね。それがどうかしたんですか?」
「なぜ殺したんですの?」
「だってあの人真っ赤に染まった斧を持って歩いてたんですよ?そんな危ない人、殺さないといけないじゃないですか。
 まさかそれで死んだのが姉さんだとは思いもしませんでしたけど」
「嘘だ!!ヒカリはそんなことしない!!」

会話を聞いてタケシが声を荒げる。
三人は状況に付いていけていない。突如現れた少女に突然の罪を晒されることにも、その罪を何事もなかったかのように流す桜にも。
唯一その被害者かつ加害者(桜曰く)である少女の知り合いであったタケシが反射的に反応できただけだ。

「あら?タケシさん、もしかして人殺しを庇うんですか?」
「――っ!?」

その言葉に何を思ったのか、おもむろにバッグから取り出したデルタギアを構え、殺気を放ちながら近づいてくる桜。
さっきまでとのあまりの変わりように身動きを取ることができないタケシ。
だがそのタケシに近づく桜の目の前を黒い何かが通り過ぎた。

「お止めなさい。あなたの相手は私でしてよ」

少女が桜の目の前に向けて指から何かを放ったのがネモには視認できた。
そんな彼女の注意を自分に向けようとする金髪の少女。そして続けた言葉が桜の注意を向ける決定的な言葉となった。

「はぁ、全く、そんな女にはシェロ―エミヤシロウのことなんて任せられませんわね」

ピタリ、と桜の動きが止まる。
その時ナナリー以外の皆が見た桜の表情は忘れられないだろうほどのものだった。

「なんで、あなたまで先輩のこと知ってるんですか…!」
「気に障ったんですの?ならその方から離れなさい。
 あなたの苛立ちなら私が押さえつけて差し上げますわ」
「――変なところばっかり姉さんを思い出させて。いいですよ、まずあなたから殺してあげます。
 変身――」
『complete』

今は桜には目の前の女しか目に入っていない。こいつを早くこの世から、目の前から消し去りたい。
デルタギアのデモンズスレートの影響に強く侵された精神は桜の意識を殺すことに向けさせていた。
そして、それは確実に桜を、そして桜の内を侵食していた。

ここに二人の少女によるリターンマッチが開幕した。

「ま、真理さん、どういうことなんですかこれ?!」
「知らないわよ、私に聞かないでよ!」

一方タケシと真理の二人は今だに混乱が解けない。この短時間に想定外な情報が色々と増えすぎた。

『だからあの女とは離れておけと言ったが、まあここで奴の正体を知る者と会えただけ幸運、か?』
「……」

そしてそんな彼らを尻目に桜を見つめるネモと、その傍にいるナナリーは冷静に状況を見守っていた。

407Tiger&Cherry ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:23:20 ID:E5hoQQIY


「ピカ…」

埋葬は終わり、ピカチュウは悲しそうな目をヒカリに向ける。
Nはその中に、ヒカリとの本当の別れの悲しみと同時に、自分が最も大切に思っていた存在を同じように弔えなかったことへの後悔を感じ取れていた。
しかしNにはピカチュウの思いが分かっても、それを汲み取ることはできない。
アッシュフォード学園での出来事の中ではそれに気付けなかったというのに。

「タイガさん、友達との別れとは、悲しいものなのかな?」
「うん、悲しいものよ。それがもう二度と会えない―なんてことになったら特に」
「……」

Nには実感することができなかった。
ポケモンをトモダチといったが、彼らの力を借りた後はすぐに野に返した。
人間の手で拘束したくないがための方針であったが、それゆえ深いつながりを持ったものとの別れというものはなかったのだ。

「僕は、本当にポケモン達とトモダチだったのかな?」
「うーん、よく分からないけどさ、そういうのって付き合いの長さだけで築けるものでもないのよねー。
 案外出会って数日で仲良くなる、なんてことも少なくないのよ」
「でも、僕は彼らと別れるときに悲しいとは思わなかった。僕にとって彼らはトモダチじゃなかったのだろうか…」

もしかしたら、その悲しい、という感情があるからこそポケモントレーナー達はポケモンを手放さないのだろうか。

「タイガにとって、大事な人っているの?」
「うん、いるよ。そうねー、ここにいちゃう人でいうと二人、かな。
 士郎っていう弟分みたいな男の子と、桜ちゃんって、こっちは言ったかな?妹分みたいな女の子」

その名前を出したときの彼女の顔は、あのトレーナーに付き従うポケモン達を連想させた。
ああ、そうだったのかと納得する。

今まで自分はポケモン達の、人間に対する怒りしか知らなかった。そのようなポケモンとばかりいさせられたから。
でも、そんな僕でも大切だと思える存在を作ることができるのだろうか。
あのトレーナーのポケモン達のように。藤村大河にとっての彼らのように。

「いつかそのシロウって人にも会ってみたいな」
「あははは、それいいかもね。でも気を付けてね。士郎ってパッと見じゃ分からないけど結構扱いづらいんだから」

と、その時だった。

「ピカ?」

ピカチュウの耳が動き、ルヴィアの歩いて行った方を向く。
二人が耳を澄ますと、何かがぶつかるような音が聞こえてきた。

「もしかしてルヴィアさんに何かあったんじゃ…。
 急ごう、N君!!」

そしてNと大河は音の方向へ向けて走り出した。

408Tiger&Cherry ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:23:55 ID:E5hoQQIY



先に近づいてきたのは桜の方だった。
怒りに任せて握った拳を叩きつける。シンプルだがそこにデルタのスペックが合わさるとそれだけでも洒落にならない。

するとルヴィアは懐から取り出したマッチにおもむろに火をつけ上に放り投げる。
突然の行動に気を取られそちらを警戒する桜。次の瞬間飛んできたのは頭に向けての飛び蹴りだった。
元々ダメージを負っていた場所に与えられた衝撃はデルタの鎧を通してでもそれなりのものであり、桜は足元をふらつかせる。
そしてふらついたところを至近距離からのガンドで吹き飛ばす。

朦朧とする意識の中吹き飛ぶ桜。しかし一度戦った相手か、あるいは侵食された精神が攻撃に比重をおいていたためかその後の対応は異常なほど早かった。
かろうじて受け身をとれた桜はいつの間にか手にしていたシャンパンのボトルを投げつける。
無論そのようなものをまともに受けるルヴィアではない。が、それが目の前で弾けては話が別だ。
破片や中のワインが飛び散る中でかろうじて防ぐことができたため大事に至る怪我はなかったが、驚いたまま桜をにらむルヴィア。
飛んでいくそれを桜はデルタムーバーの光線で撃ちぬいたのだ。
一見離れ業に見えるがよく見ると周囲には焦げた跡が見える。腹部には軽いものだが熱線による傷が、ドレスのスカートも数か所穴が開いている。

「今あなたがやってたこと、マネしてみたんですがどうですか?」
「生意気な小娘だこと」

桜はすでに起き上がっており、ルヴィアも傷自体は大したことはない。
ベルトの力はスペックこそ確かだが、桜にはそれを使いこなせてはいない。銃を使わせないようにして確実に体を抑えていけば勝つことはできる。
それはさっきの戦いの中でも気付いていたことだ。
だが、なぜだろうか。ルヴィアの中には妙に苛立ちがあった。

「全く、このような凶暴女をシェロの傍に置いておくなんて、周りの大人は何を考えているのでしょうか」

思い出すのは藤村大河から聞いた間桐桜、衛宮士郎の話。
あることを境に、士郎とは家族同然の生活をしているという桜。それを自然なものと受け入れる士郎。
そこにイリヤスフィールはいないのだから、自分の知る士郎とは違うことは分かっている。
それでも、士郎の近くにいられる彼女を羨ましく感じるところもあったのかもしれない。
だからふと呟いたその言葉自体は彼女に対する煽りだったのだろう。

「それはこっちのセリフです。せっかく先輩は私を守ってくれるって、ずっと傍にいてくれるって言ってくれたのに。
 こんな体の私を受け入れてくれるって言ったのに。
 なのに後から姉さんが私から先輩を盗ろうとする。私が欲しかったもの全部持ってるくせに、今度は先輩まで!」
「そんな人がせっかくいなくなったと思ったのに、なんであなたはそんなに姉さんにそっくりなんですか?
 あなたも私から先輩を奪うんですか?」

桜の心中を聞いて彼女、そして士郎がどのような状況、関係にあるか大まかな把握はできた。こんな体、というのが何を指しているのかは分からなかったが。

そして言葉を終わらせた直後、デルタムーバーともう一つ、支給されていたらしき拳銃をこちらに向けてくる桜。
しかしただ撃つという行為の速さに限ってはルヴィアのほうが早い。ガンドにより両手のそれらは打ち払われて後ろに落ちる。

おそらく自分ではこの女を止めることはできないだろう。大河には悪いがここで殺すしかない
そう自分の中で確定させるが、その判断が少し遅かったことに気付いたのはすぐだった。

「桜ちゃん!!」

そう、その藤村大河がやってきたからだ。

409Tiger&Cherry ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:26:28 ID:E5hoQQIY
「―――え…、あれ…。藤村…先生?どうして――」

隙、というレベルではない。直前まで何をしていたかすら忘れてしまったとでもいうほどの動揺を見せる。
もし今なら仕留めるのは容易かっただろう。ガンドでベルトを撃ち、変身を解除させればあとはこちらのものだ。

それができなかったのは、桜に走り寄る大河に当たりかねないからだ。

「桜ちゃん、それ外して!桜ちゃんはそれのせいでおかしくなってるだけだから!
 大丈夫、先生もちゃんと守ってあげるから!ね?」

デモンズスレートで凶暴化していたはずの精神さえも虚と化し、暴れたかった思いもどこかへ行ってしまう。
しかしベルトを外して変身を解こうとするのを見て、

「ダメ!!止めて!!」

大河を思い切り突き飛ばした。
ルヴィアは近くに倒れこんだ彼女を起こし、大河を庇うように前にでる。

「これは外さないで…、こんなに汚れた私を藤村先生には見られたくない…」

桜にとって、藤村大河は士郎に次ぐ大切な人だった。

間桐の家にいる間は蟲漬けの日々。学校に行っても偽りのようにしか感じられない日常。
そんな中でも衛宮士郎と、藤村大河と共にいる時間だけは心から笑うことができた。

そして士郎が桜の中で全てを受け入れた人であるなら、大河は日常、平穏の象徴だった。
故に、こんな人を殺した姿を、憎悪にまみれて汚れた顔を見られたくはなかった。

そもそも先生は一般人、魔術とは無縁の人間なのだ。
いつか自分が体に埋め込まれたものによって変貌していったとしても、彼女だけには無関係でいて欲しかった。

「何言ってるの!そんな辛そうな声出して私が放っとけると思ってるの?!」

そんな桜の思いとは裏腹に、大河は自分に関わってこようとする。

「桜ちゃんはそんなことする子じゃないんだから、だから、ね?そんなもの捨てて一緒に帰ろう?
 罪を償っていくことは私もちゃんと支えてあげるから」

ああ、先生はまだ私があの日々に戻れると思っているんですね。
でもダメなんです。だって――

「駄目なんです、もう…。先生は私のこと先輩の家にいる時しか知らないじゃないですか…。
 私は先生の思っているような人間じゃない、化物なんですよ…」

ここで殺した人数だけではない。それ以前にも既に人を死なせたことはあるのだ。
加えてデルタギアが自分によくない影響をもたらしていることはわかっている。もうあの生活に戻れるとは思わない。

なのにそんな私を、先生は助けようとする。そんなことには耐え切れなかった。

「私、ここでどんなことしてきたか知ってますか?もう三人も殺してるんですよ。
 私の罪はそれだけじゃないんです。それに、私の体はもう化物になってるんです」

もう戻れないのならばいっそ突き放してほしかった。化物なんかと一緒にいられないと。

「……やっと本音話してくれたね」

なのに藤村先生はそんな私も受け入れようとする。その優しさがあまりに辛い。

「大丈夫、桜ちゃんがどんなになっても桜ちゃんなのは変わらないから。士郎だってそんなことじゃ絶対見捨てたりしないから。
 だからそれを渡して」

それまで皆が何かを隠しており、肝心なところで支えになってあげられない。そう感じていた大河にとって、桜が自分の本音をぶちまけてくれたのは嬉しかった。

410Tiger&Cherry ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:27:19 ID:E5hoQQIY
そんな想いを受け入れて楽になりたいという思いと、それまでの行動ゆえに受け入れてはいけないという思い、そこにデルタギアを手放したくないという思いが重なり思考が混乱していく。

「だ、だってこれを無くしたら私は先輩を…、私は…、私は…!あああああああああああああああああ!!!」

これを手放したら先輩を守ることができない。それは怖い。
混乱する思考は、本来ではありえない、藤村大河に襲いかかるという暴挙をとらせる。
本人ですらわけが分かってない。しかし一般人に向けられたそれはとてつもない脅威なのだ。


「ミスフジムラ!!下がって!!」
「あ、ごめんルヴィアさん!これちょっと貸して!」

その様子を見て大河を庇おうとするルヴィアだが、大河は自分のバッグを渡す代わりにルヴィアのバッグに入っていた剣を取り出し桜の前に出てしまう。

「な…っ?!
 マトウサクラ!!止まりなさい!!」

ルヴィアの声も届かず拳を振りかざす桜。
その場にいた誰もが大河の死を確信し、目を逸らす。

キーーーーン

しかし響いてきたのは大きな金属音だった。
目の前を見ると、桜の拳は大河の横を過ぎ、大河の両刃剣は刃のない側面でデルタの頭を打っていた。

「ほらね桜ちゃん、そんなになったって桜ちゃんはこんな私にも勝てないんだよ?
 桜ちゃんは桜ちゃんなんだから」

ドサッ
完全に戦意を喪失したのか桜は座り込む。それと同時にデルタの変身が解除される。
焦点の合わない目を彷徨わせる桜を、大河は抱きしめる。

「ちゃんと私も面倒見てあげるから、士郎と一緒に帰ろ?また桜ちゃんの作るご飯食べたいな」
「藤村…せん…せ――」



「とりあえずはこれで一件落着、といったところかしら?」
「そのようだね」
「あらN、いたんですの?」

Nの存在に気付いたのは、このいざこざに一段落ついた時だった。
今まで何も声を出さなかったこともあり気付くのが遅れてしまった。

「彼女、すごいね。あの人を止めるなんて」
「まあおそらく私には無理なことであるのは確かですわね」

話している間、ピカチュウは複雑そうな表情でNの足元にいた。
自身の主であり友であった人間の敵を殺した人。少なからず思うところもあるのだろうか。

「ミスフジムラにとってよっぽど大切な人だったのでしょうね。だからこそ命を賭けてでも助けようとしたのでしょう」
「大切な人、か」


そう呟いたNが何を考えているのか、ルヴィアには分からなかった。

411Tiger&Cherry ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:28:37 ID:E5hoQQIY


「…終わったの、よね?」
「きっと大丈夫です。彼女から殺気は感じられません」

真理とタケシの混乱はだいぶ前には収まっていた。
桜を止めるために戦いに割り込むことも考えてはいたものの、ナナリーがあのフジムラと名乗る女の人を信じて見守ろうという強い言葉に従って見ていた。

『…はぁ、人を見る目はやはりお前の方が上か』

ネモの呟きに何が含まれているのか、ナナリーには分からない。
ただ、あの桜の叫びはあまり他人事とは思えないようなところがあった気がする。

「もう大丈夫なんだから、タケシ、それ仕舞いなさいよ」

真理としてはタケシがカイザギアを使わざるを得ない局面に入らなかった安心が大きかった。
また、桜の言っていた自分が化物、という言葉が妙に気になりもした。
しかしそれ以上に思うこともあった。

(…私もあの人みたいに巧を受け入れることができるかな…?)


「あ、あそこにいるのは…、お〜い、ピカチュウ!!」
「ピカ?!ピカピー!!」

帽子をかぶった男の傍に見えた黄色いのとピンク色の生き物。
どうやらタケシの探していたポケモンらしい。

ピカチュウ達は走り寄り、青年もその後ろにゆっくり続いている。タケシも駆け出そうとする。






ぞわっ

「…ピカ?!」
「ゲコッ?!」
「え?」
『ナナリー!!タケシを止めろ!!』



藤村大河が、桜がどんなになっても受け入れるといったのは本心である。
彼女にとってもう桜は家族の一員に等しい存在であり、桜にとっても間桐の家族とは比べ物にならないほど大切に思っていた。

もしも化物が彼女の中にいるならそれを退治しても桜を助ける。そんな意気込みもあった。
なにより、そんなもののせいで泣いてほしくはなかった。

だから――

(士郎、ごめん)

桜を抱きしめる自身の背後に、こんな自分でもわかるほどのおぞましい存在を感じ取り、
それが体を切り刻む痛みを感じ取る瞬間があっても。
それに体を食われているのを感じ取っても。

藤村大河は声を上げることもなく、また桜に恨みを抱くようなことは一瞬もなかった。
最後に浮かんだのは、かつて憧れた人の遺したたった一人の家族、彼女のもう一人のとても大切な存在。

【藤村大河@Fate/stay night 死亡】

412悪意と悪夢―聖杯と魔女 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:30:06 ID:E5hoQQIY
あれ…、藤村先生…?どうしたんですか?
なんでこんなところで寝ているんですか?
あれ?これ…何?この赤い液体何なの?
だって、今先生は先輩とみんなで帰ろうって――
じゃあこの地面に転がっている手は何なの?
どうして先生にはお腹が、足が無いの?

こんなの、違う違う違う私じゃない。
違う、これをやったのは………私?

「いやああああぁぁぁぁぁ!!!!!」



それは藤村大河が、ではなく間桐桜が不幸だったというべきだろう。

彼女自身が言った通り、桜の体には有り得てはならないはずのものが存在している。
間桐臓硯によって埋め込まれた聖杯の破片。
本来であれば(少なくとも他者にとっては)それ自体が大事になるはずはなかったが、彼女の属性、それに間桐の魔術属性が合わさったことで黒い影による惨劇が起きてしまった。

そして、ここで一つの要因が入り込む。
デルタギアの副作用、デモンズスレート。
不適合者の凶暴性をあげ、攻撃的な性格を植え付ける作用。

桜はここに来て半日も経たない間、何度それを使って変身しただろうか。
デルタの力に魅入られ、この短期間に既に6度変身している。
そしてその度に彼女の精神を侵していることに桜は気が付かなかった。

その結果、僅かに感じた力を失うことへの恐れが増幅され、そして放心した結果―――

しかしそれだけならばそのようなことは起こらないはずだ。彼女は今まで殺意をもって人を襲うことに耐えてきたのだから。
だから、不幸だったのだ。

桜は一度、彼女に会った時、一瞬、ほんの一瞬だがおいしそうと、そう思ってしまったことがあった。
それが致命的だった。これは常に魔力を求めて空腹だったのだから。それはもう藤村大河を餌として認識してしまっていたのだから。
だからこれを彼女の前で顕現させてはいけなかったのだ。

それだけでは終わらない。
間桐桜は既に4体の英霊を取り込んでいる。聖杯として完成するには程遠いものだが、普通に考えればそれは莫大な魔力である。
そして、冬木の聖杯である以上、その魔力のもたらすものは決まっている。

すなわち殺戮。

その意志が。桜が強固な意志で押しとどめていた呪いが。
彼女の感情爆発により、溢れ出した―――

413悪意と悪夢―聖杯と魔女 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:30:42 ID:E5hoQQIY


それに対する確実な対応ができたものはいなかった。
グレッグルがタケシを殴り飛ばしたことでタケシは事なきを得たが。
藤村大河を助けられた者はこの場にはいなかった。

だがそれを責めるのも酷な話だ。
それを前にしては、ネモですら戦慄を覚える存在だったのだから。

「いやああああぁぁぁぁぁ!!!!!」

その桜の叫び声と共に、

「うわあ?!」
「な、なにこれ…!」

彼らの周囲には漆黒の影が覆っていた。

「これは…一体…」


唯一、魔術師でありあれを見たルヴィアだからこそ分かることがあった。
これは異常なほどの濃度を持つ魔力の泥。おそらくはあの時の間桐桜の使った影の魔術に近い何か。
これに取り込まれたらおそらくは命はないということ。

しかし警告するまでもなかった。
この場にいる誰もが、生物としてその危険性を理解したからだ。

「タイガさん!!ルヴィアさん!!」


皆の周囲を侵食するように現れたその泥だが、唯一Nの周りには少量しか存在していなかった。
おそらく桜がNという存在をこの場において認識していなかったためであろう。

「N!早くここから離れなさい!!
 いいですこと?後ろを向いて、絶対に振り向かずに走りなさい!」

今ここにNがいてもおそらくできることはない。ルヴィア自身自分の身を守るのが精いっぱいだ。
ピカチュウやゾロアークも泥に向けて攻撃しているが、成果が出てないことはNも分かっていた。
Nが一瞬、顔を歪めたように見えた後、ピカチュウ、ゾロアークを伴い後ろを向いて走り出した。

それを確認した後、ルヴィアは泥に向けてガンドを撃ち、泥を弾こうとする。が、魔力の量が違いすぎた。大海に小石を投じるようなものだ。

(せめて宝石でもあれば―――っ!)

その存在を肌で感じ取り振り返る。
背後に現れたのは最初に間桐桜と戦った時に現れた影。
そして振り向いた瞬間には、すでにその触手は目の前に迫っていた。



「くそっ、こうなったら…」

グレッグルによって事なきを得たタケシはグレッグルをボールに戻し、カイザギアを取り出していた。
タケシにはこれに対する知識などない。が、もしあのベルトのせいでこうなったのならこれで対抗できると思ったのだ。
もうこれしか手段がないと判断しての彼なりの決意。

「タケシ駄目!それよりちょっと貸して!!」

と、真理がカイザフォンを取り上げ、携帯電話型のそれを銃のような形に折り曲げる。

『Single mode』

ボタンを押し、カイザフォンを向けた瞬間、それから光線が放たれる。
銃器でもなかなかダメージを与えられないオルフェノクにもダメージを与え、あわよくば倒しうる威力の武器。
確かにそれは当てた部位の泥を消し、地面を露出させた。しかしそれだけだ。周りがすぐにその隙間を覆っていく。

「駄目!これじゃカイザでもたぶん無理、変身してもこれじゃ勝てない!」
「でもマリさん、だったらどうしたら―――危ない!!」

そのまま隙間を覆い尽くそうとし泥の一部が跳ねあがり。
跳ねあがった黒い泥は真理に降り注いだ―――

414悪意と悪夢―聖杯と魔女 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:31:06 ID:E5hoQQIY
『ナナリー、しっかりしろ!!』
「ネ、ネモ…、これは何なの…?」
『私にも分からん。だがこれはいわば悪意の塊だ。
 解き放たれれば多くの人間を殺すぞ』
「これも、サクラさんが…?」
『少なくともあの女が関わっているのは確実だ。
 ……ナナリー、構わないな?』
「私なら大丈夫、大丈夫だから。だからお願い、みんなを助けて!」



真理に降りかかろうとした泥。しかし真理をそれが冒すことはなかった。
ルヴィアに襲いかかる影の触手。だがルヴィアの肉体は健在だった。

地面から生えた別の触手のような何かが真理に飛び散った泥を、ルヴィアに襲いかかった多数の触手を全て斬り払ったのだ。
謎の触手は地面へと戻り視界から消える。と同時にルヴィアはまた別の大きな魔力に似た気配を感じ取る。

そこに立っていたのは、4メートルはあろうかという巨人。生物的であり鋼の巨人といったほうがいいだろう。
この状況で新手の敵かと警戒したとき、その巨人はルヴィアの傍に立つ影を手に持っていた太刀で切り裂いた。
影が形を失って崩れると同時、さらに振りかざした太刀で今度は周囲の木々を切り裂いた。

倒された木々は泥を押しとどめる防波堤と高台としての足場を形成していく。
巨人はルヴィア、真理、タケシをおもむろに掴み、倒された木々の上に運び上げる。

(敵、ではないですの…?)

未だ警戒心は解けない。特に真理にはそれがかつて見た巨大オルフェノクや黒い巨人を連想させ、恐怖心を呼び起こさせる。

『お前たち、早くここから離れろ!!』

しかし、それらは巨人から発せられた声を聞いた瞬間消え、新たに困惑を生み出す。

「な、ナナリーちゃん?!」
『話はあとだ、今からこいつらから抜けられるように足場を作る。お前たちは急いでここから抜け出せ!!』

言うが早いか、巨人は木を切り倒していく。その先、橋を渡ったあたりにはこの泥は届いていないようだ。
しかし泥は防波堤として倒された木々を徐々に汚染、消滅させていっており、足場として倒している木々も長くは持ちそうにない。

「もう!!あとでちゃんと説明してよ!?」

そう言って三人は走り出した。
背後を警戒して、ルヴィアが殿を務めて再び現れた影を牽制しつつ進んでいく。


そして、抜け出すまでの足場を形成するまでもう少しといったところで、彼女は現れた。

「ふふふ、みなさん、どこへ行くんですか?」

三人の後ろに迫っていた影は消失、それと同時に光線が巨人を狙って放たれる。
間桐桜―仮面ライダーデルタ。黒い泥が蠢く中で彼女の放つ銀色のフォトンはこの場では何より異質であり、不気味だった。

「さく―――」
『振り返るな!早く行け!』

放たれた光線を太刀で弾いたナナリーは叫び、ルヴィアすらも残らせようとしない。
間桐桜はもう自分の手に負える存在ではなくなったのだと、いや、元々手に負えるようなものではなかったのだと。
ルヴィアは今更ながらに気付かされた。

415悪意と悪夢―聖杯と魔女 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:32:28 ID:E5hoQQIY


「へぇ、ナナリーちゃんもやっぱり普通の子じゃなかったんですねぇ」
『……』

ネモは無言で桜に向けてブロンドナイフを発射する。

「う…っ」

桜の体は吹き飛ばされるが、デルタを破壊することはできなかった。
しかし内側には相当のダメージが届いているはず。なのに彼女はゆっくりと、痛みなど感じていないかのように起き上がる。
同時に、マークネモの足元に黒い影が現れる。

『ちぃっ…!!』

その触手がしなる前にネモは下がり、触手の攻撃範囲から逃れる。

間桐桜、いや、デルタを相手にするにはこの得体のしれない泥と神出鬼没の影はあまりにやっかいだった。
特に泥。もしマークネモが足を失い、自身の乗るここまで泥が侵食してきたら対処することはできない。
今はネモが全力でそれの侵攻を抑えている状態であり、ゆえに桜との戦闘に完全には専念できていなかった。



「ねえ、あなたのお兄さん、死んだんだっていってましたよね?
 大切な大切なお兄さん、殺されちゃって。殺した人のこと憎くないですか?」
『…何が言いたい?』
「その人、一緒に殺しにいきませんか?今の私ならあなたのそんな気持ちを叶えてあげられると思うんです」

一瞬、ほんの僅かにナナリーの感情に乱れが生じたのをネモは感じ取る。

(やめろナナリー、こいつの言葉に耳を貸すな!)

さっきの会話の中で投げかけた言葉を、この時ばかりは後悔した。
もしナナリーがそれを望んでしまえば、ナナリーと契約している限りそれに抗う術はない。

「ふふふ、こんな泥人形さんなんかに嫌な感情全部押し付けて、ナナリーちゃんって本当に悪い子♪」

次の瞬間、デルタのいた場所に頭上から太刀が叩きつけられた。
しかし次の瞬間には桜はマークネモの背後に移動しており、そこから光線で撃たれ背から火花が散る。

(くそ、未来視が乱れた…。あんな言葉で心を乱されたか)

しかしある程度の行動のパターンは読めた。
この泥と影は桜を襲うことはない。彼女自身が出しているものなら当然だろう。しかし上手く連携が取れているわけでもなさそうだ。どうにも持て余しているようにも見える。
そして桜自身はあまり動いていない。ほとんどあの強化服の力に頼り切りだ。
加えてそれをもっても、ほとんどが射撃主体。マークネモを相手にするにはそれが最良なのかもしれないし、単純に彼女自身のセンスの問題かもしれない。

背後を振り返ると、さらに光線を放ってくる。
そういう未来が見えたネモは振り向かず飛び上がり、そこからブロンドナイフを飛ばし続ける。
避けることもできずまともに受けているようだったが、狙いは分かっているのかベルトには直撃することはなかった。

地面に着地すると同時に、その場にいた影を踏み潰して行動を封じる。
そして態勢を崩したままの桜にナイフを射出。その腕、足を貫く。

痛みは壮絶なはずにも関わらず無言で動かない桜を、そのまま木に張り付けにする。
ピクリとも動かない桜。
あとはベルトを外し、止めを刺せば終わる。生身状態の桜を斬りつければ、彼女とて殺せるはずだ。

(すまんなナナリー、もうこいつにはこれしか手はないんだよ)

ナナリーの中には殺すことへの抵抗を感じもした。
しかしこの女は生かしておけばもっと多くの人を殺す。それを防ぎたければここで終わらせるしかない。

マークネモは太刀を構えたまま、ベルトに手を伸ばした。

416悪意と悪夢―聖杯と魔女 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:33:26 ID:E5hoQQIY
時間を掛ければナナリーに危険が迫る。だから迅速に、確実に殺せるようにしなければいけない。
ネモは焦っていた。この得体のしれないものにナナリーが侵されることを。
だから見過ごしてしまった。腕を貫いてもまだ、桜のその手はデルタムーバーを離していないことを。

早く決めたければそのままその太刀で首を落とせばよかったかもしれない。
しかし彼女は、そのスーツを過大評価してしまった。外さなければ倒すのは難しいと思ってしまった。
あるいは、ナナリーの優しさが踏み込ませることを躊躇わせてしまったのかもしれない。


そして、桜に意識を向けるネモは気付いていなかった。
桜のデルタギアを奪われることへの恐怖が、無意識のうちに先の影とは別の、影の使い魔を顕現させていることに。
小人ほどのそれが現れたことに、ネモは足元にそれが取りつくまで気付かなかった。

『な…!まだ、こんな――』

その一瞬、刺さったナイフの力がほんの少し緩み。

「チェック」≪exceed charge≫
『しまった―……!』

ようやく未来を見た時には手遅れだった。
目の前の銀の三角錐がマークネモを撃ちつけていたのだから。

この場においては戦闘中常に未来を見続けるには、そう意識していなければ見ることはできない。
最初に戦ったロロは相性的に不利であり、追い詰められていたこともあって気付けなかったのだ。
そうとは気付かず意識をそれから外してしまった。

今更未来を見ても遅い。見えるのは、この三角錐を通しての必殺のキックを放つ桜。
そんなもの見えたところで動けなければ同じだ。
そして、そのキックはおそらくこのマークネモを持ってしても耐えきることはできない威力を持つと出ている。

(ここまでなのか…?)

マークネモが破壊されれば、ナナリーはこの泥に飲み込まれ、死ぬ。
こちらの拘束から既に解放された桜はこちらに向けてそれを放とうとしている。

(ここで、ナナリーは死ぬ、のか…?こんな女に殺されて…)

こうしている間も、ナナリーからは桜に対する怒りを感じることはできない。
いつもそうだ。この少女は己の怒りを殺し、常に優しい存在であることを心掛け、揚句優しい世界などという夢のような話を信じ続けている。

そして、そんな彼女の負の感情を背負ったのが私――

(…違う)

ならばこの、ナナリーを守りたいという感情は何なのだ?
そう、あの日契約した時から、ナナリーから負の感情を受け取りC.C.のコピーからネモへと変化したあの時から。
ナナリーを守り抜くと決めたはずだ。

(そう、こんな女に殺されるわけにはいかない――
 私はナナリーを守る。私は――)

胸をポインタでロックされ動けないはずの体、その中で太刀を持っていた右腕がピクリと動く。

『泥人形じゃない!私は、ナイトメア・オブ・ナナリーだ!!』

そしてそのキックがマークネモを貫く寸前、

『あああああああ!!』

拘束された中で唯一動いた右腕、その持っていた太刀がデルタを切り裂いた―――

417悪意と悪夢―聖杯と魔女 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:34:15 ID:E5hoQQIY


「急いで!早くしないとあの影が追っかけてくるんでしょ!?」
「落ち着いて、今はあの影は付いてきてませんわ。だから焦らないで!」
「でもナナリーちゃんは……うわっ!」

泥の上に倒れた木々を踏み台にして進んでいく三人。

例の影をナナリーが引き受けたと言ってもゆっくりはしていられない。
足元の木々はゆっくりと泥に溶かされて消滅していっているからだ。

「あ、やばい!向こうの木、もうほとんど残ってない!!」
「そういえばマリさん、あれ、あの道具!!」
「え!これ?!」

次の木に飛ぼうとした時、その木はほとんど溶け掛けており、人一人乗ることもできそうになかった。
そこで真理はバッグからJの光線銃を取り出し、その木に向かって発射。
すると木はあのときのタケシのように固まり、三人が飛び乗っても大丈夫なほどには頑丈になっていた。

しかし、

「あれ…、次は…?」

そう、それが限度だった。その先の足場は踏み場もないほどに崩れていた。硬化させる以前の問題だ。

ドドドド、ドン

「偶然木が倒れましたわ。行きましょう」

と思っていると、突如木が倒れ新たな足場ができる。

(根元がボロボロだったのが幸いでしたわ)
「あの木もそれで硬くできます?」
「え、ええ。大丈夫、まだ弾は残ってる」

そうしてどうにか次に移ったもののあと少しのところで届いていない。
さらに、ここにきてルヴィアが体の不調を訴え始めた。

「大丈夫ですか?!」
「ええ、大丈夫ですわ…。少し魔力を――いえ、なんでもありませんわ」
「俺に捕まってください。出てこい、グレッグル!!」

タケシはルヴィアの体を支えて歩き、真理の安全をグレッグルに任せる。
が、今迂闊に動くことはできない。先に進めないのだから。
ここはナナリーが追ってくるのを待つしかない。そう思った矢先だった。

「な…、まだ、追ってきますの…?」

泥の中からあの黒い影がまたしても現れる。

「そんな…!じゃあナナリーちゃんは…」
「グ、グレッグル!毒針!!」

グレッグルはタケシの指示に従い口から紫色の針を吐き出すが、その進行を緩めることすらできない。

やがてそれの使役する無数の触手は彼らを捉える。
カイザの変身も間に合わない。

「うわあああ!!」






「リザードン、火炎放射!ピカチュウ、十万ボルト!ゾロアーク、気合玉!」
「グオオオオ!!」「チュウウウウウ!!]

諦めかけた時、影に向けて空から炎と電気と青白い球が降り注いだ。

418悪意と悪夢―聖杯と魔女 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:35:30 ID:E5hoQQIY

その声を聴き空を見上げた時、タケシは走馬灯でも見ているのかと思った。
その時に空を飛んでいたのは、帽子をかぶりリザードンに乗ってピカチュウを連れた、あれは――

「サト――いや、違う」
「N!どうして戻ってきましたの?!」
「この子達がそう願ったんだよ」


それはあの時離れだしてすぐのこと。
ピカチュウはタケシのことを助けたいと、そう言ったのだ。
これ以上仲間を失いたくないと。無理でも全力を尽くしたいと。
それはリザードンも同じだったようで、ボールを通してもその声が聞こえてきた。

だから、体にダメージの残っているリザードンに無理をいってポケモンセンターまで急いでもらったのだ。
それはリザードン自身が望んだ無茶だった。

そして皆の体力を回復させたのち、今に至る。

「そうだったのか…。ピカチュウ、すまなかったな」
「ピカ」
「ポケモンセンターまで向かったせいで、少し遅くなってしまったことは謝るよ」
「私は逃げろ、といいましたのに。まあ今回は礼を言っておきますわ」
「それに僕も何だか嫌だったしね。見捨てるのは」

Nにはもっと早くから大河の運命が見えていた。にもかかわらず止めることはできなかった。
その判断に間違いがあったと思いたくはなかったが少なからず後悔はあった。
だから見捨てられなかったのだ。

その後リザードンの手により泥から抜け出すことができた。しかし依然ナナリーは追ってこない。
どうしたことか、泥自体は少しずつ減りつつあるが彼女が戻らない以上油断はできない。

「マリさん、俺が行きます」
「タケシ?」
「これがあれば、サクラさんを止められるかもしれない。そうですよね?
 三人は逃げてください。ここは俺がナナリーちゃんとサクラさんを助けてきます」
「そんな…!なら私が行くわよ!何であんたが行かなきゃいけないの?!」
「ピカ!」「グウウ!!」
「ハハハ…、ごめんな、お前たち。こんな辛いことばかり背負わせて。
 でもこういうのは、男である俺がやるべきなんです」

その悲しそうな言葉の中には強い決意があるように見えた。
サトシやヒカリと会うこともできずに自分だけ生き延びてしまったことへの罪悪感もあったのだろう。
それに桜はヒカリに会ったということも気になっていたのだ。

「なるほど、その気概、なかなか見上げたものですわ」
「あなたは――「でも」

と、ルヴィアはそんなタケシの腰を持ち上げ、

「ぐわぁ?!!!」

バックドロップの要領で地面に投げた。

「残念でしたわね。それは私の役割ですわ」

手加減はしたが意識は飛んだようだった。
若干強引だった気がしないでもないが、こうでもしなければおそらく止めることはできないだろう。

419悪意と悪夢―聖杯と魔女 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:36:39 ID:E5hoQQIY
「あなた達、早く行きなさい。その少女は私が助けますわ」
「待ってよ、何でそこであんたが残るのよ?一緒に行けばいいじゃない。
 ナナリーもきっと戻ってくるから…」
「あれには少し因縁も残っていますし、何よりこうなったのは私の甘さが原因。
 ここから南に下った辺りにカイドウという男と美遊、私の妹がいるはずですわ。詳しい場所はそこにいるキツネが知ってるはず。彼らと合流しなさい」

美遊、そして海堂直也、彼らならば力になってくれるだろう。
特に美遊、そしてカレイドステッキはこの状況を打破しうるかもしれない。もしもアカギ達が第二魔法を使えるというのならば。

「え…、海堂…?それに美遊ちゃんって…、あなたもしかしてルヴィアゼリッタさん?!」
「知ってるなら話は早いですわ。後のことはN、頼みましたわよ」
「―――分かった。あと最後に質問させて。
 また、会えるかな?」
「少し厳しいですわね」
「分かったよ。じゃあ、気を付けて」

あるいはその時藤村大河のバッグを受け取った時には、Nにはその先の彼女の運命は分かっていたのかもしれない。
それでも、最後に掛けた言葉は再会を信じての言葉だった。

そうしてNは気絶したタケシを抱え、真理を無理に引っ張ってその場を離れていった。

(巧―――)

真理は、こんな状況で一人だけ何もできていないのが悔しかった。
そんな彼女が今望むことは一つ。巧に早く会いたい。それだけだった。


【C-5/森林/一日目 午前】

【園田真理@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト】
[状態]:疲労(中)、身体の数カ所に掠り傷
[装備]:Jの光線銃(2/5)@ポケットモンスター(アニメ)
[道具]:基本支給品一式、支給品0〜2(確認済み)、ファイズアクセル@仮面ライダー555、スマートバックル(失敗作)@仮面ライダー555
[思考・状況]
基本:巧とファイズギアを探す
1:ここから離れる
2:タケシたちと同行
3:南にいる美遊、海堂と合流?
4:巧以外のオルフェノクと出会った時は……どうしよう?
5:名簿に載っていた『草加雅人』が気になる
6:イリヤと出会えたら美遊のことを伝える
7:並行世界?
[備考]
※参戦時期は巧がファイズブラスターフォームに変身する直前
※タケシと美遊、サファイアに『乾巧』、『長田結花』、『海堂直也』、『菊池啓太郎』、『木場勇治』の名前を教えましたが、誰がオルフェノクかまでは教えていません
 しかし機を見て話すつもりです   
※美遊とサファイア、ネモ経由のナナリーから並行世界の情報を手に入れました。どこまで理解したかはお任せします

420悪意と悪夢―聖杯と魔女 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:37:18 ID:E5hoQQIY

【タケシ@ポケットモンスター(アニメ)】
[状態]:疲労(中)、背中や脇腹に軽い打撲、身体の数カ所に掠り傷、気絶中
[装備]:グレッグルのモンスターボール@ポケットモンスター(アニメ)
[道具]:カイザギア@仮面ライダー555、プロテクター@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:気絶中
1:しっかりマリたちを守る。
2:ピンプクとウソッキーは何処にいるんだ?
3:イリヤと出会えたら美遊のことを伝える
4:『オルフェノク』って奴には気をつけよう
5:万が一の時は、俺がカイザに変身するしかない?
6:サトシ、ヒカリの死を元の世界に伝える。
7:並行世界?
[備考]
※参戦時期はDP編のいずれか。ピンプクがラッキーに進化する前
※真理から『パラダイス・ロスト』の世界とカイザギア、オルフェノクについての簡単な説明を受けました
※真理から『乾巧』、『長田結花』、『海堂直也』、『菊池啓太郎』、『木場勇治』の名前を教えてもらいましたが、誰がオルフェノクかまでは教えてもらっていません
※美遊とサファイア、ネモ経由のナナリーから並行世界の情報を手に入れました。どこまで理解したかはお任せします

【N@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:疲労(小)
[装備]:サトシのピカチュウ(体力:満タン、精神不安定?)サトシのリザードン(健康、悲しみ)
    ゾロアーク(体力:満タン、真理とタケシを警戒)、傷薬×6、いい傷薬×2、すごい傷薬×1
[道具]:基本支給品×2、カイザポインター@仮面ライダー555、タケシのピンプク@ポケットモンスター(アニメ)
     変身一発@仮面ライダー555(パラダイスロスト)、不明支給品0〜1(未確認)
[思考・状況]
基本:アカギに捕らわれてるポケモンを救い出し、トモダチになる
1:この場から離れる
2:タイガの言葉が気になる
3:世界の秘密を解くための仲間を集める
4:タイガ、ルヴィアさん…
[備考]
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
※並行世界の認識をしたが、他の世界の話は知らない。




『ぐ…くぅ、はぁ…、はぁ…』

それは真理達の元に影が現れる少し前のこと。

デルタのルシファーズハンマーを受けたネモは衝撃の後倒れるネモを起こして状況を確認していた。
一瞬意識が飛びかけたがどうにか持ち直して周囲を見回す。

まずマークネモの状態。胸部にあの攻撃が直撃したようで、大きな穴が開いて外が肉眼で見ることができてしまっている。
機体の汚染状態もまずい。が、これはこの場から離れ、量子シフトを行えば大丈夫だろう。
ナナリーには何度か呼びかけたが反応がない。さっきの衝撃で気を失ったのかもしれない。
そして自身のコンディションはかなりまずい。こうしているだけでも疲労が溜まり、意識が消えそうになる。
あの拘束を振り切るために力を使いすぎたのかもしれない。

だが、その甲斐はあったようだ。
間桐桜の姿は見えない。しかし足元には黒い強化スーツに覆われた右腕が転がっている。
そしてそれは今、目の前で変身が解除されたかのように桜のものであったそれに戻った。
あの時の太刀に手ごたえを感じたのは確かだ。すれ違うあの瞬間、確かに体を切り裂いた。
あれで死んでいるなら最良、生きていてもデルタの変身は解除され体のダメージを考えても戦闘続行は不可能のはず。

『…はぁ、ああ、まずはここから離れないとな…』

もし死んでいるなら、きっとナナリーは悲しむだろう。だが、それも生きているからこそ感じられることだ。
足元の泥はまだ減ってきているとはいえ広がったままだ。この森にはしばらく誰も近寄らないように他の者にも伝えないといけない。

やることはたくさんある。こんなところで休んではいられない―――

421悪意と悪夢―聖杯と魔女 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:37:57 ID:E5hoQQIY







「 み つ け ま し た 」

次の瞬間聞こえてきたのは桜の声。
それもかなり近い場所だ。今仕掛けられてはまずい。

『…?!何処だ…!』

周囲を見回すが桜の姿は見えない。
すぐ近くから声は聞こえてくるというのに。

すぐ近く、すぐ傍から。

『な…』
「こんなところにいたんですね」

そう、間桐桜はコックピットの中、ネモの背後に立っていた。

服はボロボロであり、肌が露出しているはずの場所からはあの影と同じ色の黒いドレスを纏っているのが見える。
右腕を失い、そこから胸にかけて大きな傷を作っているのは振るった太刀が確実に彼女を切り裂いたという証だ。。
なのに、彼女はどうして平然と動けるのか。

もしあの瞬間、デルタギアがなければ桜とて死んでいただろう。
太刀は確かに彼女に大きなダメージを与えたが、あと一歩のところで心臓に届かなかったのだ。
そして、今の彼女はその傷は動きを阻害するものでこそあれ、行動不能になるほどではなかった。

いつ入り込んだのか分からない。ただ言えるのは、今の自分にはなす術がもうないということだ。
桜は片腕しかない体でネモに抱き着く。

『がっ…!離せ…』
「ねえナナリー、こんな体なんかに頼らずに、私ともっと楽しいことしない?」

桜の抱きついた部分の肌が徐々に黒に染まっていくのが分かる。
さっきの一撃に使った力、加えて核である自分を直接染められている状況。
そして、マークネモは泥に取り込まれつつある。

「ほら、堕ちてしまえば楽しいですよ」
『ぁ…っ、あああああああああ!!!』

そして叫び声を最後に、マークネモは泥の中に沈み、ネモの意識は黒く塗りつぶされていった。



「やっぱり生きてましたのね。本当にしつこいこと」

ルヴィアがその少女を確認したのはNや真理達と別れてすぐのことだった。
そう、間桐桜が目の前を歩いてくる姿を確認したのは。

最も、今の彼女をふつうの人間と呼ぶには大いに抵抗があったが。
右腕を失い、胸から左肩に掛けて大きな傷が見えている。にも関わらずそれを気にする素振りは見せない。
更に服はボロボロで、肌が見えるはずの場所は黒い魔力、あの影と同じ色のドレスに覆われている。

はっきり言ってしまえば、化物だ。

「あの少女、ナナリーという子はどうしましたの?」
「ナナリーなら、変な泥人形と一緒に食べちゃいました。結構魔力溜まったんですよ?
 まあそれでもサーヴァントには敵いませんけど」
「そうですのね。もう戻る気はありませんのね」

こうなったのはあの時殺せなかった自分の甘さのせいだ。
タイガは死に、ナナリーも取り込まれたらしい。それらの責任は自分にもある。

今の桜はデルタに変身していない。よく見ると、腰に巻いているデルタギアは時折火花を散らしている。あの少女もただでは食われなかったということか。
確かに今の自分は魔力を消耗しすぎている。だが変身していないなら魔術抜きでも戦えるだろう。

――そんな言葉で自分を言い聞かせる。
地面の泥は大分引いているが、彼女の足元には僅かに残っている。
あの時感じた恐怖は未だに克服できていないのだから。

「ミストオサカの縁もあります。これ以上の犠牲を起こさせないために私が止めて差し上げますわ」
「怖いんですか?足が震えてますよ?」

そんな強がりも、この女は見抜いている。姉に似て嫌らしい女だ。

「ふふふふっ。私、いつも姉さんの影に隠れて、先輩まで取られそうになっても何もできなくて。
 そんな私でもやっと、姉さんの上に立てるんですから」

やたら高めのテンションで話す彼女。だがルヴィアはもう話を聞く気はない。
気圧されていては負ける。速攻でやらなければ。
そう思い走って近づいていく。

「でも、残念です。もう、姉さんはいないんですから」

不意に声のトーンが下がる。
それと同時に背後から衝撃、ルヴィアの足も止まった。

422悪意と悪夢―聖杯と魔女 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:39:14 ID:E5hoQQIY
「あなたなら姉さんの代わりになるかもって思ったりもしましたが、それは無理でした。
 似てるだけであなたは姉さんじゃないんだから。
 だから―――さようなら」

ルヴィアは視線を下ろす。その腹部からは


――――――巨大な太刀が生えていた。


同時に襲いかかる激痛。
口から吹き出そうになる血を抑え、首を動かして後ろを見る。

背後の泥、いや、影に近い何かから黒く巨大なものが頭と腕らしきものを見せていた。
言うまでもない。あの時のナナリーという少女が変化した巨人だ。
だがその姿は元の色よりさらに暗く変色し、全身に赤い筋が這っている。
何よりその魔力、先ほど感じたものよりはるかに澱んでいた。

ルヴィアが思い出すのはあの最初の空間。
あの大勢の参加者が集められたあの場で、なお目立っていた存在があった。
バーサーカー。かつて最も手ごわかったと言えるクラスカードの英霊。
だがその姿は遠目から分かるほどの異常な姿をしていた。

そして、今背後にいるそれはまさしくそれと同じ様相をしている。

(この、娘は、一体何を体に…、宿してますの…?)

だが今更それに気づいても遅い。
さらに巨人は、頭についたワイヤー、その先のナイフをこちらに向けている。

ああ、こんな時でもあの女のことが頭をよぎってしまうのはなぜなんだろう。

「全く、こんな有様では…、ミストオサカのことを、笑えませんわね――」

次の瞬間、一斉に発射されたナイフがルヴィアの体を真っ二つに吹き飛ばした。

【ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 死亡】



そう、どうでもよかったのだ。
いくらこの女が姉さんに似ていたとしても、それだけなのだ。

私の継げなかった遠坂の家を受け継ぎ、父にも愛された姉さんも。
ずっと蟲に犯され続ける私を助けてくれなかった姉さんも。
私の好意を知りながら先輩を奪おうとした姉さんも。
もういないのだから。

だから、こんなに虫けらのように殺せる。

胸の辺りから真っ二つになった体を影の中に沈める。
人間を食べたにしてはそれなりに魔力を摂ることができた。しかしまだ足りない。

「あなたにはもっと働いて―――あれ?」

そうして、空腹を満たす走狗にしようと呼び出したマークネモだったが、それはたった今光となって消滅してしまった。
残ったのは黒いスーツを着たナナリー。しかし車椅子には座っておらずしっかり二足で立っており、目もはっきり開いている。
最もその姿は普通というには程遠いが。目には光がなく、全身にあの機体と同じ赤い筋が入っている。

桜は彼女達のことを何も知らない。
マークネモのこと。ギアスのこと。それらにかかった制限のこと。何一つ知らない。

「もう少し経ってから試してみようかしら?」

そして、彼女のことも使い勝手のいい人形を手に入れたくらいの認識しかしていなかった。
もしもそれらのことを知っていたら、彼女はまた別の利用方法を考えただろう。
だが、それでよかったのかもしれない。少なくとも他の参加者にとっては。そしてネモ本人にとっても。

今彼女にとっての他の参加者のほとんどは、空腹を満たすための餌と大して変わらない存在だ。
唯一そこから外れていた人は三人。
衛宮士郎、遠坂凛、そして、藤村大河。

「藤村先生」

その中で、たった今自分が殺してしまった存在に、一つの言葉を投げかける。
後ろ、今まで通った道に目をやる。今は見ることができないが、もう少し進めばそれは目に入ることだろう。
あの場において、唯一泥が侵さなかった場所に残された死骸。手足は吸収してしまったがその部位だけは取り込むことを拒絶したモノ。
藤村大河。自分に笑顔というものを教えてくれた存在。

423悪意と悪夢―聖杯と魔女 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:40:06 ID:E5hoQQIY
薄まりつつある間桐桜の人格の中で、言っておかなければならないと感じた謝罪の言葉を口にする。

「ごめんなさい。私、やっぱり悪い子でした。先生までこんなことに巻き込んでしまって。
 せめて先生には生きててほしかった。何も知らずにいて欲しかった。
 でも安心してください。先生のところには行けないかもしれないけど、ちゃんと罰は受けます」

他の人間なら開き直れた。だが彼女だけは駄目だった。
だから、他のところで開き直ってしまった。

「先輩、待っててくださいね。
 みんな、みんなみんなみんなみんなみんなみんな殺しますから。
 真理さんもタケシさんも、イリヤさんもみんなきちんと殺して、思いっきり悪い子になりますから」
「だから先輩。ちゃんと、私を殺してくださいね」

それが間桐桜としての最後の願い。
正義の味方であり、自分にとってのヒーローであるエミヤシロウに殺されること。

そのために、己の体に溜まりかけているもの、この世全ての悪を受け入れたのだから。

「あはは、あっははははははははははは!!
 あはははははははははははははははははははは!!!!」

笑い続ける間桐桜。そして彼女は気付かない。
その眼から一筋の涙が零れ落ちたことに。
そして、そんな彼女をナナリー、いや、ネモはじっと光のない瞳で見つめ続けた。
その体が泥に沈みゆく間、ずっと。

【C-5/橋付近/一日目 午前】

【間桐桜@Fate/stay night】
[状態]:黒化(大)、『デモンズスレート』の影響による凶暴化状態、溜めこんだ悪意の噴出、喪失感と歓喜、強い饑餓
    ダメージ(頭部に集中、手当済み)(右腕損失、胸部に大きな切り傷、回復中)、魔力消耗(大)、ジョーイさんの制服(ボロボロ)
[装備]:デルタギア@仮面ライダー555(戦闘のダメージにより不調)、コルト ポリスポジティブ(6/6)@DEATH NOTE(漫画)、黒い魔力のドレス
[道具]:基本支給品×2、呪術式探知機(バッテリー残量5割以上)、自分の右腕
[思考・状況]
基本:“悪い人”になる
0:いずれ先輩に会いたい
1:“悪い人”になるため他の参加者を殺す
2:先輩(衛宮士郎)に会ったら“悪い人”として先輩に殺される
3:空腹を満たしたい
[備考]
※『デモンズスレート』の影響で、精神の平衡を失っています
※学園に居た人間と出来事は既に頭の隅に追いやられています。平静な時に顔を見れば思い出すかも?
※ルヴィアの名前を把握してません
※アンリマユと同調し、黒化が進行しました。戦闘行為をするには十分な魔力を持っていますが知識、経験不足により意識して扱うのは難しいと思われます。
※精神の根幹は一旦安定したため、泥が漏れ出すことはしばらくはありません。影の顕現も自在に出すことはできないと思われます。
※デルタギアがどの程度不調なのかは後の書き手にお任せします
 もう変身できないかもしれませんし、変身しても何かしらの変化があるかもしれません。また、時間経過で問題なく使用可能かもしれません。

424悪意と悪夢―聖杯と魔女 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:40:34 ID:E5hoQQIY


『ナ…―リ―、ナナ……、ナナリー…』
「ん…、ね、ネモ…?ネモなの?」
『ナナリー、きっとお前とこうやって話せるのはこれが最後だ』
「え…?何を言ってるの?」
『全てはお前を守るためだ。お前が受ける呪いは、全て私が引き受けたからな』
『だが、この先は賭けのようなものだ。もしかしたら私の行動はただの時間稼ぎにしかならないのかもしれない』

「待って、そんな!じゃあ桜さんは?!」
『だが最後にこれだけは伝えておく。
 ナナリー、何があっても―――あれを受け入れるな』



「ハッ…」

目が覚めた。
しかし分かったのはそこは気持ち悪いほどわけの分からない何かが辺りを埋め尽くす空間ということだけ。
気配だけでも吐き気のしそうな空間。そして吐き気の原因は辺りを埋め尽くす濃厚な悪意。

「こ…、ここは…何なの?
 え…?ネ、ネモ!!」

手探りで周囲に触れると、地面に巨大なきのこのような形の柔らかい物体が手に当たった。
それはあの時新宿で出会った時のネモの姿そのものだった。

「ネモ!しっかりして、ネモ!!」
『全くバカな人形さん』

ネモに呼びかけると不意に背後から声が聞こえる。
視覚を失った代わりに他の感覚が優れているはずのナナリーが察知することができなかったその存在。
それは桜を模したかのような声で話しかける。

『全部を自分で受け止めるなんて。そのせいで自分の意志すらも失って本当に人形さんになっちゃうんですから』

優しいように聞こえるその声はまるで悪魔の誘惑のようだった。

『ねえナナリーちゃん、私たちを受け入れない?』

まるで深層心理に語りかけるように話しかけるそれ。

『あなたを捨てた父親が、国が憎くないの?
 お兄さんを殺した人に復讐したくないの?
 私なら全部やってあげること、できるんですよ?』
「そんなの…、私望んでません…!!」
『そう、でもいいのよ。すぐに決めなくても。
 あなたが私たちを受け入れてくれるの、ずっと待ってますから』

そう言ったのをきっかけに声が遠ざかっていくのを感じる。
そして最後に―――

『でも忘れないでくださいね。あなたはもう、人を殺したんですから』
「え…?」

そう言い残した言葉が、ナナリーの中にずっと残り続けた。

(ネモ…、兄様…、…アリスちゃん…。私は……)

そうしてナナリーは、この得体のしれない空間の中で一人、答えを探し続ける。
周囲の悪意に流されることに耐えながら。

【C-5/橋付近(桜の泥内部)/一日目 午前】

【ナナリー・ランペルージ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:健康(精神)|黒化、自我希薄(肉体、ネモ)、マークネモ召喚制限中
[装備]:
[道具]:
[思考・状況]
1:私は………

[備考]
※ネモの黒化について
 アンリマユに吸収されたことでネモは黒化しました。
 その際、ナナリーの精神を肉体から隔離したため自我が薄く、現在はほとんど桜の操り人形のようになっています。
 ナナリーがアンリマユを受け入れた時を除き、アンリマユがナナリーの精神まで侵すことはないでしょう。 
※マークネモの制限は黒化前と変わりません。


※B5〜6にかけての森の木々が消滅し、一部更地と化しました

425 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:41:20 ID:E5hoQQIY
投下終了します

426名無しさん:2012/09/01(土) 00:23:52 ID:kQunr/rs
投下乙です
桜のキル数がまたもや上がってしまったw
こいつ止めれるやついるのかw

あとタケシがまた終了しそうでハラハラしました

427名無しさん:2012/09/01(土) 01:36:22 ID:viPUbc0k
投下乙です
桜……ついに戻れないトコロにいってしまったか……
はたして士郎は彼女を止められるのだろうか

あと状態表の指摘ですが、桜は完全に黒化したのであれば、影の使い魔は自由に召喚できますし、魔力も無尽蔵に使えますよ

428名無しさん:2012/09/01(土) 08:41:10 ID:Tcul8bG2
やっちゃったぜ☆
黒桜爆誕と爆走、もうほんとどうしてこうなった!
とにかくはやく士郎来……いや来てどうにかなるのかコレ。そんな絶望感あふれる投下乙です

>>427
完全に黒化したら無理ゲーじゃないですかやだー!
まあ真面目に考えれば主催が細工をしてないはずもありませんしね。なによりここにはもうひとつの……

429名無しさん:2012/09/01(土) 10:25:09 ID:viPUbc0k
投下乙
桜は完全に(?)黒化し、セイバー、バーサーカーに変わる新たな僕をゲットですか・・・・・・
これにセイバーまで付いたらマジで手をつけられないなw

>>428
使い魔をどうにかできれば、別に無理ゲーってほどでもない
事実、宝石剣という反則があったとはいえ、凛でも簡単に追い詰めれたし
と言っても、その使い魔(サーヴァントなどを含む)をどうにかするのが困難なわけだけどw

430名無しさん:2012/09/01(土) 17:13:14 ID:VBZt8SM.
久々の投下乙です。
タイガー・・・ルヴィア・・・南無三
桜は原作士郎と違う意味で「止まれなく」なった感じですね
もはやカレーっていうより代行者呼ばないと討伐不可なレベル

431名無しさん:2012/09/02(日) 17:17:00 ID:SSkVBLCI
投下乙です

432 ◆Z9iNYeY9a2:2012/09/02(日) 17:50:23 ID:OpWLlmG.
>>427
指摘ありがとうございます
その部分は正直今回やりすぎた感があったのでこんなこと何度もできないよー的な意味合いだったのですが
今読み返したらその下の部分の備考と被ってました
混乱させてしまいすみません、wikiに収録された際には直しておきます

433名無しさん:2012/09/04(火) 01:33:00 ID:ik6cSOJA
投下乙です!相変わらずヤンデルタは酷いなぁwまあ相性ゲーで倒せそうな面子が少なからずいるのが救いか?

434名無しさん:2012/09/13(木) 17:25:07 ID:Q2lNGKt6
予約キター!

435 ◆Z9iNYeY9a2:2012/09/18(火) 00:22:46 ID:RPFA1MiA
これより投下します

436Lost the way ◆Z9iNYeY9a2:2012/09/18(火) 00:26:15 ID:RPFA1MiA
どれだけの間飛び続けただろうか。
もう美遊から充分離れることができただろうか。

怖い。
誰かを殺し、傷つけてしまう自分が。
怖い。
そんな自分を木場さんや海堂さんに見られるのが。

先の放送で呼ばれた名前。その中には木場勇治や海堂直也の名こそなかったが、菊池啓太郎の名前があった。

こんな自分を、正体は知らないまでもよくしてくれた。周りの人間に虐げられてきた結花にとってその存在は大きなものだった。
どうして彼が死ななければならないのだろう?私のような化物が生きて啓太郎さんのような優しい人間が死んでいって。

何も考えたくなかった。ただもう、それこそ鳥のように飛び続け、やがて朽ちてしまいたいとまで思ってしまうほど飛び続けた。
時間ももう分からないほどに。

だからだろうか、彼女は近くにいた存在すらも知覚することができなかった。

「っ!?」

急に翼を焼くような痛みが襲う。

「うああっ!!?」

バランスを崩し地面を転がる結花。
翼の痛みは消えず、恐怖のあまりオルフェノクの姿で辺りを見渡す。
そしてそこに立っていたのは――

「乾…さん?」



『美遊様、焦る気持ちも分かりますが少し休まなければ…』
「分かってる、分かってるけど…!」

痛みを堪えつつも前に走ろうとする美遊。その腕には銃弾による傷がつき、歩いた後の地面を血で濡らしていた。




それは今より時間を遡り、第一回放送の直後まで戻る。
飛び去った長田結花を追う中、突如始まったアカギの放送に思わず足を止めた美遊とロロ。

『凛様が…?!』
「まさか…、そんな…!」

何かとても大きな鈍器で殴られたかのような衝撃。
サファイアの中には信じられないというような驚愕が、美遊の中には大きなショックが生まれる。
長田結花を追わねばならないということをすっかり忘れてしまいそうになる。

「兄…さん……?」

そして隣にいたロロも、信じられないといった表情を浮かべて立ち尽くしている。

437Lost the way ◆Z9iNYeY9a2:2012/09/18(火) 00:28:32 ID:RPFA1MiA
兄さん。
確かロロ・ランペルージの兄、ルルーシュ・ランペルージ。その名は遠坂凛の名が出る前に呼ばれたためまだ記憶に残っている。
つまり、彼の兄も死んだということだ。

(兄……)


「ロロさん、その―――っ?!!」

話しかけている最中、腕に激痛が走った。
混乱の中で左腕に目をやると、いつの間にか銃で撃たれたかのような痕がついている。

『美遊様!大丈夫ですか?!』
「これは…っ、ロロ……さん…?」
「あ…、う…、くっ!!」
「ロロさん!!」

状況も掴めぬまま、美遊の前から走り去るロロ。
追おうとするが腕から激しい痛みが伝わりその場に蹲ってしまう。

「サファイア…、今のは…」
『分かりません。話しかけられた美遊様だけが急に止まってロロ様が銃を向けてきたのです。
 私が気付いて気をそらしたので大事こそは避けられましたが…、申し訳ありません』
「ううん、いいの。これは私のミスだから…、っ」
『美遊様?!』





兄さんが、死んだ。
そんなの嘘だ。
兄さんは強いんだ。これまでどんな危機も乗り越えてきたんだ。
そう、僕の自慢の兄なんだ。こんなところで名前を呼ばれるはずはないんだ。

自分の中にどれだけそう言い聞かせてもロロの中から不安は、動揺は消えなかった。

そう、兄さんが死ぬはずはないんだ。あのナナリーやユーフェミアですら生きているのに。
でも、もしも本当だったら?
もし、あの時ナナリーに構わず兄さんを探すのを優先していたら、兄さんと合流できたかもしれない。
ナナリー。
どうしてあいつはまだ生きているんだろう?



「ロロさん」

そんなことを考えていると、ふと声が聞こえた。
それは美遊の発した声。だが今の不安定な状態にあるロロには、

(―ナナリー!!)

それが憎きナナリーの声に聞こえてしまった。
そこからの反応は早かった。
ギアスを発動させ、確実に殺すために銃を向け、

『美遊様!!』

438Lost the way ◆Z9iNYeY9a2:2012/09/18(火) 00:29:48 ID:RPFA1MiA
発砲したところであの喋るステッキの体当たりにより妨害されてしまった。
ロロにとって幸か不幸か、狙いであった心臓を反れた銃弾は美遊の左腕を撃ちぬいていた。
それと同時にギアスが解除され、ロロ自身も我に返った。

そして呼び止める美遊の声を無視して走り出して今に至る。

(兄さん…、兄さん……!!)

今のロロにはあのナナリーの声色を感じる美遊と一緒にいることはできなかった。
それがあいつのことを、まだ生きているナナリーのことをどうしても意識してしまう。

普段のロロであれば美遊を殺すこともあるいは選択できたかもしれない。
だがそんな発想もできないほどに取り乱していた。それは美遊、そしてもしかしたらロロにとっても幸運だったのかもしれない。

ただ、何かに我慢できなくなってしまった。
何かとは何だ?分からないまま、自分の心も定まらないまま、ロロは走り続ける。

兄の死を受け入れたくないという思いを抱いて。




「くっ…!」

腕にはできる限りの治癒魔術をかけたにも関わらず、成果は芳しくない。
出血量こそ抑えられたものの未だに少しずつ血は流れ、痛みも美遊から体力を奪っていた。

『美遊様、このまま行かれては危険です』
「分かってる。でもロロさんと長田さんが…」

失念していた。彼が失ったのは自身の兄なのだ。
そんな状態にあるロロへの気配りを疎かにしてしまった。

遠坂凛が死んだという事実は、表にこそ出していないが美遊に大きなショックを与えていた。
ともすれば彼女の存在に関わるほどの。
それは彼女に無意識の内に強い罪悪感と責任感を植えつけていたのだった。
己の状態すら見えなくなってしまうほどの。

そんな状態で動き続けていれば体力を普段以上に消耗してしまうのも当然だろう。
歩く足取りはふらついている。どころか視線すらもはっきりしているようには見えない。

熱を持つ腕、少しずつではあるが流れ出る血液、そして削られる体力。

『もうこれ以上はいけません…!せめて血が収まるまでは――』
「大丈夫だから。私の体のことは私がよく分かってるから」
『…。美遊様、申し訳ありません』
「え、サファ――――」

言いかけた言葉を最後に、美遊の意識は落ちていった。

439Lost the way ◆Z9iNYeY9a2:2012/09/18(火) 00:33:05 ID:RPFA1MiA
催眠音波を流し、美遊の意識を奪ったサファイア。
そもそもこうなってしまったのも自分の責任だとも、サファイアは考えていた。

バーサーカーの戦いのダメージもさほど時間を掛けずに治癒することができたはず。にもかかわらずこの銃創の治りは遅い。
それはなぜか。
バーサーカーの戦いの際は、サファイアが付きっきりの状態で、美遊も十分な警戒を払い戦っていた。
しかしロロの放った銃弾はロロ本人ですら予測しえなかったもので、ギアスの効果も合わさり完全な不意打ちであった。
さらにその時対応すべきだったサファイアはロロの暴挙を止めるため美遊の手から離れてしまっていた。
結果、バーサーカー戦のように障壁や保護を張ることができず、もろに銃弾を受けてしまったのだ。

あの時美遊様の手から離れさえしなければ、あるいはもっと早く対応できていれば――
そう考え始めてしまいそうになるのを抑えて全魔力を治癒に注ぐが、治癒の進行は普段と比べて格段に遅かった。

(これは…どうしたら―――)

その時だった。
近くに人の気配を察知したのは。



北崎、Lと別れて鹿目邸へと向かう草加雅人と鹿目まどか。

まどかが迷いの中発するべきかと考えた言葉は、ついに発せられることはなかった。
それは移動の最中、空を飛ぶ灰色の怪人を見たことがきっかけだった。

「草加さん、あれってやっぱり…」
「ああ、オルフェノクだ。
 まどかちゃん、君は先に家に向かっていてくれ。あれを放ってはおけない」
「えっと…、分かりました。気をつけてください」



草加さんはオルフェノクを放っておけないと言っていた。それはきっと正しいのだろう。
最初に会ったあの馬のようなオルフェノク。そして先ほどのあの北崎という男。
共に恐ろしい存在だった。
まどかを襲った方はもちろんのこと、一時的に協力していた彼もまるで戦いを楽しんでいるかのようだった。彼が自分を見ていたあの目は人に向けるものではなかった。
正直まどかとしてはあの時草加の近くにいるべきではないかと思っていた。
だが、馬のオルフェノクに襲われたときの彼の出していた、自分へ向けた殺気。それはまどかに恐怖を植え付けていた。
今まで魔女に殺されかけたことこそあれ、あそこまで明確に殺意を向けられたことなどなかった。それも憎しみからくるものなど。
だから、怖くて逃げ出してしまったのだ。オルフェノクという存在から。

(結局私って足手まといなのかな…?)

さやかちゃんやほむらちゃん、マミさんや杏子ちゃん、草加さん達のような力もなければ。
ユーフェミアさんやLさん、夜神さんのように自分を貫ける確固たる意志もない。
そもそもどうしてこんな何のとりえもない私なんかがこんなところにいるのか。それすらも分からない。

440Lost the way ◆Z9iNYeY9a2:2012/09/18(火) 00:34:35 ID:RPFA1MiA
『君は途方もない魔法少女になるよ。恐らくこの世界で最強の』
『まどか。いつか君は、最高の魔法少女になり、そして最悪の魔女になるだろう』

ふと思い出すのは、キュゥべえの言葉。
もし、あの時契約していれば、皆の力になれたのだろうか?
最高の魔法少女。
あの時は魔法少女の真実を知ってしまった直後であり何も感じなかった。
だが、今のまどかにはとても甘美なものに思えた。思えてしまった。



そんなことを考えつつ家までもうすぐというところに着いたあたりのこと。

『すみません、そこの方!』
「え?」

何者かの声がまどかの耳に届く。

『お願いします!力を貸してください!』
「え、どこ?誰?」

周囲を見回しても人の姿は見えない。実際まどかの視界には人の姿はなかった。

「え?何これ…」

まどかに話しかけていたのは輪っかに羽が生えて真ん中の星が印象的な何か。
何かとしか言えなかった。あえて言うなら魔女の使い魔に見えなくもない。

「つ…使い魔、ならどこかに魔女が…!」
『驚かせてしまって申し訳ありません、お願いします!美遊様を…!』
「え?」

謎の物体に案内された場所、そこはまどかの家からさほど離れている所ではなかった。
そしてそこに倒れていたのは小学生ほどの少女。

「これは…、大変!早く手当てしなきゃ!」

腕にできた大きな怪我。そしてそこから流れる血がただ事でないことはまどかにも分かる。

『お願いします!美遊様を…!』
「う、うん!とにかく家に運ぶから!」

自分にできることがあるかは分からない。もしかしたらただの足手まといなのかもしれない。
それでも、目の前で倒れる少女を助けることくらいはできるかもしれない。

そんな思いを胸に、自身の家を模した建物の扉を開いた。

441Lost the way ◆Z9iNYeY9a2:2012/09/18(火) 00:36:44 ID:RPFA1MiA


草加雅人。
彼はオルフェノクを憎む存在と考えている。それが例え共に戦う仲間であろうと、かつての同級生であろうと。
そして、育ての親であろうとその心自体は変わらない。

だから偶然見つけた長田結花に対しても、一切の情けも加えることはなかった。

「うぁっ!」

クレインオルフェノクの顔面にファイズの拳が突き刺さる。
吹き飛ばされる結花をさらに蹴り付ける。

もうかなりの攻撃を加えていたが、彼女からの反撃は一切なかった。
どうやらファイズの中にいるのが乾巧だと思っているようだ。
だからあえて声を発することなく、乾のスタイルの真似をして攻撃を加えていたのだ。

(全く、どうしようもない奴だな。君は)

北崎のこともあり、今の草加はかなり機嫌が悪かった。
そこで現れた長田結花は彼にとっては格好の獲物だった。忌み嫌う化物である彼女の存在は。

だが、それを指しおいても、彼はこの女のことは気にいらなかった。
化物でありながらまるで弱者であるかのように振る舞い、木場や乾に守られて過ごすこのオルフェノクが。
こういうやつに限って木場の知らないところで人間を襲っているのではないかとさえ思えてくる。

(お前ら化物がそうやって弱い者みたいなふりして、気持ち悪いんだよな)

さらに気にいらないのは彼女が自分の攻撃を受け入れているということだ。
まるで自分を裁かれたがっているかのように、こちらの攻撃を受け入れている。
あの時の乾巧のようだった。
何があったか知らないが、もう少し抵抗くらいはしてくれないと倒しがいもない。

(そんなに死にたいんだったら、望みどおりにしてやるよ)

蹴り飛ばされた長田結花を見ながら、オルフェノクに止めを刺すための武器を手にとる。
左腰に装着されているツールを右手に取り付け、ファイズフォンのスイッチを押す。
右腕に紅い光が流れ込んだ。

と、その時だった。

「……!」

背後で響く微かな足音。
誰だ、と振り返ったところにいたのは銃を持った一人の少年。

声を出すわけにはいかない。出してしまえばお膳立ては台無しだ。
周囲を注視すると、長田由香は逃げようとしているのかそれとも迎え撃とうとしているのかはっきりしない。
だが少なくとも彼女を味方する存在、というわけではないようだ。

442Lost the way ◆Z9iNYeY9a2:2012/09/18(火) 00:39:35 ID:RPFA1MiA
声を出したくはない。出してしまえばお膳立ては台無しだ。
周囲を注視すると、長田由香は逃げようとしているのかそれとも迎え撃とうとしているのかはっきりしない。
だが少なくとも彼女を味方する存在、というわけではないようだ。

(はぁ…、せめてこの化物を見て逃げてくれたら楽なんだが――何!?)

思わず声を出しそうになってしまう。
その少年は確かに離れた場所でこっちを見ていたはずだった。
なのに一息ついた瞬間、目の前でその手に持った銃を放ってきたのだから。

もし北崎やファイズアクセルフォームのような高速移動であればそこまで驚きもしなかっただろう。
あるいは何らかの前触れのようなものがあればワープのようなものと判断できただろう。
だが、目の前の少年はいきなり目の前に現れた時には既に銃を構えていたのだ。

訳の分からぬ現象に思わず後ずさる草加。
幸い変身中だったおかげでさほどのダメージこそなかったものの、もしベルトを盗られることがあれば二重の要素で危ない。だから迂闊に動けない。

(チッ…、どうする…、このガキと長田結花、どうするべきか…)



僕はどうしたらいいんだろう。
兄さんはもういない。僕の全てだった兄さんは、いないんだ。

もしかしたら放送が嘘だったかもしれない。そう言い聞かせることもできたかもしれない。
あれさえ見なければ。

それは道をがむしゃらに走っている時に見つけてしまった。
平地に不自然に広がった大量の灰。その中に埋まったカチューシャとリボン。
その瞬間、これが誰のものか分かってしまった。
篠崎咲世子。
さっきの放送で名前を呼ばれた一人だった。
彼女の死自体に別段特別な思いというほどのものはない。せいぜい、あああいつは死んだんだな〜といった感想程度だ。
しかし、ここで彼女の死を知ったことにはある種重要な意味があった。
あの放送が間違っている可能性はかなり低いということ。ここにある咲世子だった何かのように、ルルーシュ・ランぺルージもどこかで物言わぬ骸と化しているのだろう。
もちろん、放送で流した真実の中に嘘を交えることもできたかもしれない。
しかし、ロロはそうやって自分を誤魔化せるほど心を保てている状態ではなかった。

力なく歩いていると、見えてきたのは謎の強化服のようなものを着た誰かが長田結花を殴りつけている光景があった。
もう兄さんもいないのなら、いっそみんな殺してしまうか?そんな投げやりな思いが浮かぶ。

こっちを認識したことに気付いた瞬間、ロロはギアスを発動させて至近距離から銃を撃った。
しかしその装甲はロロの銃弾を弾き傷一つ残していない。
ああ、僕じゃこいつを殺せないのか、と弱気な考えも浮かんでくる。

後ずさる彼(?)を見ながら力のない目は周囲を見回す。

(兄さん、僕はどうすればいいの?)

443Lost the way ◆Z9iNYeY9a2:2012/09/18(火) 00:40:16 ID:RPFA1MiA
【D-6/鹿目邸/一日目 午前】

【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:擦り傷が少々
[装備]:見滝原中学校指定制服
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0〜3(確認済み)
[思考・状況]
1:目の前の少女を助ける
2:さやかちゃん、マミさん、ほむらちゃんと再会したい。特にさやかちゃんと。でも…
3:草加さんが追ってくるのを待つ
4:乾巧って人は…怖い人らしい
5:オルフェノクが怖い…
[備考]
※最終ループ時間軸における、杏子自爆〜ワルプルギスの夜出現の間からの参戦
※自分の知り合いが違う人物である可能性を聞きました

【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:ダメージ(小)、左腕に銃創、意識無し
[装備]:カレイドステッキサファイア
[道具]:基本支給品一式、クラスカード(アサシン)@プリズマ☆イリヤ、支給品0〜1(確認済み)、タケシの弁当
[思考・状況]
基本:イリヤを探す
1:気絶中
2:結花、ロロを追いかける
3:知り合いを探す(ロロの知り合いも並行して探す)
3:結花の件が片付いたら、橋を渡って東部の市街地を目指す(衛宮邸にも寄ってみる)
4:真理の知り合いと出会えたら、真理のことを伝える
5:ナナリー・ランぺルージには要警戒。ユーフェミア・リ・ブリタニアも、日本人を殺す可能性があるので警戒。
6:『オルフェノク』には気をつける
7:凛さん…

[備考]
※参戦時期はツヴァイ!の特別編以降
※カレイドステッキサファイアはマスター登録orゲスト登録した相手と10m以上離れられません

【D-5/一日目 朝】

【草加雅人@仮面ライダー555】
[状態]:負傷(中)、疲労(中)
[装備]:ファイズギア@仮面ライダー555(変身中)
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]
基本:園田真理の保護を最優先。儀式からの脱出
1:真理を探す。ついでにまどかに有る程度、協力してやっても良い
2:オルフェノクは優先的に殲滅する。そのためにLと組む
3:長田結花は殺しておく。目の前の少年に対処
4:鹿目家に向かった後、流星塾に向かう。その後、Lとの約束のため病院か遊園地へ
5:佐倉杏子はいずれ抹殺する
6:地図の『○○家』と関係あるだろう参加者とは、できれば会っておきたい
7:可能なら長田結花には俺(ファイズ)を乾巧と思わせておくのも面白いかもしれない
[備考]
※参戦時期は北崎が敵と知った直後〜木場の社長就任前です
※自分の知り合いが違う人物である可能性を聞きました

【長田結花@仮面ライダー555】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、怪人態、仮面ライダー(間桐桜)に対する重度の恐怖
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜3
[思考・状況]
基本:???
1:仮面ライダー(間桐桜)から逃げる
2:仮面ライダー(間桐桜)に言われた通り、“悪い人”を殺す?
3:木場さんの為に、木場さんを傷つける『人間』を殺す?
4:乾さんに倒されるなら―――
[備考]
※参戦時期は第42話冒頭(警官を吹き飛ばして走り去った後)です
※目の前にいるファイズが乾巧だと思っています

【ロロ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:ギアス使用による消耗(中)、精神的に疲弊
[装備]:デザートイーグル@現実、流体サクラダイト@コードギアス 反逆のルルーシュ(残り2個)
[道具]:基本支給品、デザートイーグルの弾、やけどなおし2個
[思考・状況]
基本:????
1:僕はどうしたらいいんだろう?
?:ロロ・ヴィ・ブリタニアを陥れる方法を考える?
?:ナナリーの悪評を振りまく?
[備考]
※参戦時期は、18話の政庁突入前になります
※相手の体感時間を止めるギアスには制限がかかっています
 使用した場合、肉体に通常時よりも大きな負荷がかかる様になっており、その度合いは停止させる時間・範囲によって変わってきます

444 ◆Z9iNYeY9a2:2012/09/18(火) 00:41:40 ID:RPFA1MiA
投下終了です。中途半端なところで終わってすみません
おかしなところがあれば指摘お願いします

445 ◆Z9iNYeY9a2:2012/09/18(火) 00:43:36 ID:RPFA1MiA
一か所ミスがありました
草加達の現在地、時刻のところですが【D-5/一日目 午前】に変更でお願いします

446名無しさん:2012/09/18(火) 19:22:54 ID:NakvvV4c
投下乙。草加ェ……というかロロェ……
全員が精神的にアレなせいでどうあがいても絶望……あ、草加さんはいつもどおりですね

447名無しさん:2012/09/18(火) 20:25:05 ID:ljlq49C6
投下乙です

ロロ、やはりこうなってしまったか・・・
そして全くブレない草加さんさすがです

448名無しさん:2012/09/21(金) 17:43:24 ID:QwF5ZzgQ
草加さんは平常運転!

449名無しさん:2012/09/21(金) 20:37:15 ID:gLfBW6UE
投下乙です

なんかもうねえ…
らしいといえばらしいけどお前らェ…
巻き込まれる側もたまらんなあ…

450名無しさん:2012/10/03(水) 21:01:33 ID:dv4hG/vw
草加さんがいつもどおりでむしろ安心した俺がいる

451 ◆Z9iNYeY9a2:2012/10/17(水) 00:08:37 ID:TV1III3A
事後報告ですみません
自作「Lost the way」において、銃がデザートイーグルということを失念していました
結果威力の方におかしな部分が出てしまったので腕に直撃ではなく掠めたという形に修正させていただきました

あと、死亡者名鑑の項目を作成しておきました
とりあえず雑談スレの過去ログに貼られていたものを載せさせてもらい、残りは暇があれば順次更新していこうかと思います
また、もし項目を作成していただけるなら幸いです

452名無しさん:2012/10/17(水) 10:02:53 ID:rXdYHxDc
この上なく乙!そして感謝!

453名無しさん:2012/10/28(日) 17:50:15 ID:Om1xJQew
一応移転報告
パラレルワールド・バトルロワイアル part2.5
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/14759/1351176974/
今後は仮投下等を除いてこちらに投下してください

454名無しさん:2012/11/30(金) 23:30:26 ID:BI5oKLLY
このメンツは波乱の予感

455<削除されたのは乾巧って奴の仕業なんだ>:<削除されたのは乾巧って奴の仕業なんだ>
<削除されたのは乾巧って奴の仕業なんだ>

456<削除されたのは乾巧って奴の仕業なんだ>:<削除されたのは乾巧って奴の仕業なんだ>
<削除されたのは乾巧って奴の仕業なんだ>

457名無しさん:2014/04/01(火) 00:03:33 ID:PjojCqEk
暗い通りの中、一組の足音がまどかの耳に響く。

カツ、カツ、カツ

まどか「あなたは…?」
???「私は美国織莉子」

見慣れない学生服を着た少女はまどかを見下ろしながらそう名乗り―――

織莉子「あなたのような存在を、魔法少女として認めるわけにはいきません!」

襲い来る大量の使い魔達を前に、織莉子は手を掲げる。

織莉子「はっ!変身!」

キピーン



N「パラレルワールドの皆は完全に僕達の敵に回ったようだ…」

ゆまとニャースを後ろに連れた士郎の前で、Nは語る。


そこにあるのは仁義なきバトルロワイヤル。



ぶつかり合うガブリアスとミュウツー。


セイバーオルタの刃とオーガのオーガストランザーがぶつかり合い火花を散らす。



使い魔を前にファイズエッジを振るうファイズ、その後ろには車椅子の少女と黒髪で細身の少年。

「お前、パラレルワールドの人間だったのか、なら次は」
ゼロ「俺が相手だ」

困惑するファイズに対し仮面を被る細身の男―――ゼロ。

その強打がファイズの体を捕える。

458名無しさん:2014/04/01(火) 00:04:08 ID:PjojCqEk



織莉子「次はあなたの番よ」
ほむら「あら、どうして?」ファサ
キリカ「別世界の君たちは許されないんだよ」


刃を振るうキリカと球体を飛ばす織莉子のコンビネーションに苦戦する美樹さやか。



――――そして現る、パラレルワールドの管理者とは?

空間を切り裂く謎の一撃が、周囲の大量の黒き巨人を吹き飛ばす。




巧、士郎、Nの向こうから現れる7人の戦士たち。
彼らは皆、パラレルワールドの住人。

士郎「パラレルワールドの人間…、戦うしかないのか…!」

「変身!」ファイズフォンを掲げる巧。

腕の聖骸布を剥ぎ取る士郎。

モンスターボールを構えるN。

全身を光に包ませ魔法少女衣装に着替えるほむら。

QB「全ての世界の力を結集させるんだ!」





まどか「パラレルワールドの皆が戦うっていうなら…、私も戦わなきゃ…!皆を守るために!」

―――変身!


魔法少女が、サーヴァントが、オルフェノクが、仮面ライダーが走る。

多くの力が入り混じる混戦。

バーサーカーが駆け抜け、マークネモがその巨大な刃を振るう。

ピカチュウの電撃とドラゴンオルフェノクの青い炎がぶつかり合う。


どちらが勝つかを賭けて傍観する死神達と、真相解明に奔走する探偵達。

459名無しさん:2014/04/01(火) 00:05:41 ID:PjojCqEk

「天幕よ、落ちよ!花散る天幕(ロサ・イクトゥス)!」
「ニコ、サキ!行くわよ!」

赤きセイバーが剣を振るってKMFをなぎ倒し。
プレイアデス聖団が並び立ち。

イリヤ、美遊、クロの三人のコンビネーションが巨大な魔女を吹き飛ばす。


パラレルワールドで分かれ並び立つ総勢57人。

「問答無用!」


パラレルワールド・スーパー大戦feat.赤セイバーとプレイアデス聖団


2114年4月1日ロードショー――――


入場者には特製QBステッカー、プレゼント!


どちらの世界が勝つか、映画の結末を決めるのは君だ!
詳細はパラレルワールドバトルロワイヤルwikiにて!

460名無しさん:2014/04/01(火) 13:05:05 ID:7RHAc4Es
なんか混じってるー!?
今年もまた4月ネタ乙ですww

461名無しさん:2014/04/02(水) 19:22:28 ID:e/gPo9nQ
パラロワならではのパラレルな4月馬鹿ネタだったw 乙w

462名無しさん:2015/04/01(水) 00:52:59 ID:laXkM7ak
新シリーズ予告


――――――――今、世界の命運をかけたレースが開幕する。




『さーて始まりました、最速のレーサーの栄光は一体誰の手に!パラレルワールドGP!!
 実況は私、カレイドステッキ・ルビーちゃん。そして解説は』
「え、あれ?私って確か殺し合いの中にいたんじゃ」
『お馴染み、私のマスター、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンさんです!』
「ちょっと待ってルビー。一体何がどうなってるのか分からないよ?!」
『全くもー、ボケるには早すぎますよイリヤさん。仕方ありませんね、説明してあげましょう』

カクカクシカジカ

「えっとつまり、並行世界から集めた人たちでレースをして誰が一番速いかってのを決めるってことだよね。
 それでここはルビー達が作ったレース用の固有結界…だっけ?みたいなものだって」
『理解していただけたようで何よりです』
「全然分かんないよ!?そもそもどうしてレースなの!?レースに一体何がかかってるっていうの!?」
『それはですね―――――』

テーン

『おっと、選手の皆さんが入場してきたみたいですね』
「まだ何も聞いてないんだけど!」
『さぁ、選手の皆さんはこちらになります!』


①暁美ほむら:サイドバッシャー

②ナナリー・ランペルージ:マークネモ

③北崎:ジェットスライガー

④草加雅人:オートバシン

⑤クロエ・フォン・アインツベルン:ガブリアス

⑥ロロ・ヴィ・ブリタニア:ヴィンセント

⑦N:リザードン

⑧美遊・エーデルフェルト(ライダー):ペガサス

⑨ゼロ:ガウェイン


『さぁ、最速の称号は誰に与えられるのか!』
「待って!ロボットとか怪獣とか明らかに車に見えないものたくさん見えるんだけど!
 ていうか美遊とクロ何やってるの?!」
『あ、そうそう。このレースは攻撃・妨害・乱入何でもありの特別ルールとなっています。速さだけを競っていては勝てませんから注意してくださいねー。
 あとイリヤさん、ツッコミポイントはちゃんと押さえた上で突っ込まないと疲労が溜まってしまいますよ』
「ルビーがそうさせてるんでしょーーーー!!」







テーン

463名無しさん:2015/04/01(水) 00:57:25 ID:laXkM7ak


突如始まった大規模レース。
KMFが、ポケットモンスターが、神獣が、バイクが走り互いの速さを競い合う。

ミサイルが弾け、宝具が飛び交い。
大気が凍てつき、時間が止まる。

「あれ?どうして私たちって時間停止してても動けるの?」
『解説者権限ですね』

「北崎!お前だけはぁ!!」
「しつこいやつは嫌われるよ…っと」

「私のジ・アイスのギアスで凍り付け!」
「くっ、ガブリアス!!」

白熱するレースの中でやがて発生する死者。


「魔女の力は…俺が――――」

「ステルスロックを進行上に撒いておいたわ」
ドーン
「ほむらーーーー!!」


カチッ

そしてレースの中、一つの異変が。

『さーて始まりました、最速のレーサーの栄光は一体誰の手に!パラレルワールドGP!!』
「あれ?これ、前にも同じことがあったような…」

「これから始まるレースで誰かが死ぬ度に時間が戻ってるっていうの?イリヤ」
「うん、信じてもらえないかもしれないけど、このレース絶対何か変…」
「その死んでるやつってのは…」

「ぐああ!」
「草加ぁ!!」
「どうしてあの人だけ普通のバイクなの?」
『あれ、一応変形するんですけどね』



『まもなくだね。時間を繰り返す度に積み重ねられていく因果は高いエントロピーを生み出す』

「この件から手を引け、乾」
「海堂?!」


そして明かされる、レースの裏に隠された、真実。
バトルロワイヤルというゲーム。


「なるほど、これが真相ってことだね」
「ピカッ」

死にゆく者に対する後悔の想い。


「もうたくさんだ、誰かが犠牲になるのは」

少女の葛藤と、死にゆく仲間達。


「美遊!」
「イリヤ……、あなたは、生きて…!」


「今でも信じてる!意味なく死んだやつは、いないってな…!」

彼らの戦うべき本当の敵は――――

『止めろアリス!これ以上加速すると―――』
「構わない!これがナイトメア・オブ・ナナリーだ!」

アリスのゴッドスピードがぶつかり合う。
その相手は―――――――――


パラレルワールドGPの真の開催目的とは――――



スーパーGP in パラレルワールド
魔法少女大戦

PaRRW掲示板にて投下予定

464名無しさん:2015/04/01(水) 01:28:44 ID:G6hh4CIM
早速のGPネタwww

465名無しさん:2015/04/01(水) 02:31:17 ID:CTgzrjMI
早いよwけど毎年乙!

466名無しさん:2016/04/01(金) 22:58:07 ID:z884J6VE
今年はないのかな……


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