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仮投下スレpart1
1
:
◆VxAX.uhVsM
:2011/01/16(日) 16:06:09
規制で本スレに書けなかったり、書いたけど自信がない。
という方へのスレです。
491
:
◆mtws1YvfHQ
:2012/01/24(火) 22:47:28
忌々しそうに舌打ちをするのを二人は無視する。
ただ、事実の確認のみを進めて行く。
「人質、ね? それで一体何をやらされてるんだ?」
「ふむ――方法を言った所で理解できんだろうから簡潔に言うが、俺は人の心を操れる」
「「はぁ?」」
王土の言葉に、二人が同時に声を上げた。
思わず目と目を合わせる二人を見て、王土は可笑しそうに笑う。
「何が可笑しい。貴様らは言葉で説明できない事柄を知っているだろう? 運命なり、時間なり、変態なり」
その言葉に場の雰囲気が変わったのを楽しむようにまた笑いながら、意味有り気に蝙蝠を見た。
一時として王土から目を離していなかった蝙蝠の目が細まり、口が横に裂ける。
今にも、不愉快な笑い声を上げそうな具合に。
「さて、貴様らに頼みたい事……だが、言うまでもなく分かるな?」
「…………」
「…………」
沈黙で答える二人に満足そうに頷き、また笑う。
己が優位にある思っているように、あくまでも偉そうに。
そうしながらも何時の間にか校舎を出ていたが、学園を出るにはまだ時間がかかりそうである。
「話が早くて助かる。特別に情報をやろう―― 一つ。今の貴様らには戦力が足りん。二人とも半端に優秀だがな」
「きゃはきゃは、言ってくれるじゃねえの。なぁ?」
「ああ。ぼくまで半端扱いは頂けないな」
「そうそ……てめっ!」
「事実だ。まあそれは蝙蝠、貴様の持っている物である程度解決できるかも知れないぞ?」
その言葉に、言い合いを始めそうだった二人の視線が自然と一つの物に集まる。
理事長室で見付けた、竹刀を入れるような袋。
それに視線が集まる。
「王刀・鋸」
「なにっ!」
王土の言葉。
それに蝙蝠は驚きの声を上げ、視線を完全に持っている袋に向けた。
創貴はすぐさま王土の背に拳銃を突き付ける。
引き金は何時でも引けるように指を掛けて。
そこまでしても蝙蝠は気付かない。
完全に意識が袋の中身に奪われてしまっていた。
興奮し切った様子で袋の中を覗き込み、
「…………なんだこりゃ?」
呆然とした様子で呟いた。
「王刀・鋸。見た目こそ木刀だが、その力は、利用の仕方によっては相当な物だ」
「詳細は?」
「持った者の毒気を抜く――分かり易く言えば、持った者の悪意、戦う気を大幅に削ぐ刀だ」
「持たせないと使えないのか? 使い難いな……」
492
:
◆mtws1YvfHQ
:2012/01/24(火) 22:48:37
言いながら創貴は、ある程度落ち着いたのか視線を王土に戻した蝙蝠を見て拳銃を離す。
王刀・鋸。
ふざけた名前の割にその力は凶悪だ。
上手く相手に持たせられれば如何なる思考思想であろうとも説得が難しくなくなる。
この力が本当だとすれば、だが。
幾つもあるだだっ広く無駄にサッカーゴールまである校庭の一つを横切りながら、王土は言い続ける。
「さて、まだ時間はあるようだからもう一つ情報をやろう。黒髪の露出狂……もだが、特に橙色の髪の娘、着物の女と学生のコンビ。この三人には近付くな」
「具体的に」
「……長い黒髪に学生服を改造した露出服を着た美しい女、橙色の髪の大きな三つ編みをした太い眉の少女、着物を着た妙にか弱そうな雰囲気の女と見た目だけは人畜無害そうな最悪最低の学生服の男」
「なんで?」
「死ぬ」
疑問の言葉に、単刀直入に返した。
あまりと言えばあまりの言葉に、二人の足が止まり掛ける。
だが、何事もなかったように動く。
しかしそれも、次の言葉までだった。
「今の貴様らでは一分持つまい」
思わず、一瞬だが止まった。
また歩き始めたが、口は閉じていた。
王土の言葉。
絶対の自信の込められた言葉。
ましてやそれが何処までも偉そうな男の言葉となると妙な説得力すらある。
「――さて、そろそろ逃げさせて貰うぞ?」
「ああ、良いぜ。出来るだけはしてやるよ」
「当然だ――蝙蝠、胸を借りるぞ」
言い終えた瞬間、何か言おうと口を開いた蝙蝠の胸を、跳んだ王土の両足が踏み付けていた。
そのまま踏み台代わりにし、創貴の頭上を跳び越える。
拳銃でその後を追うような動作をするが、不規則に左右に走る王土に当たりそうではなく、わざとらしい舌打ちをして見せてから蝙蝠の方を向いた。
蝙蝠もまたわざとらしく胸を痛そうにさすっている所。
「さっさと行くぞ」
「へいへい」
軽く伸びをし、創貴を掴む。
走り始めた。
風景は一気に変わり、あっさりとし過ぎるほどあっさりと開け放たれた校門を抜けた。
だがまだ走る。
エリアの境界が何処かハッキリしていない以上、仕方がない。
ひたすら走り担がれながら行く二人を、大きな時計塔は見下ろしていた。
間もなく時間が来る事を示しながら。
493
:
◆mtws1YvfHQ
:2012/01/24(火) 22:49:35
「アイツ、実際どう思う?」
「あくまでお前から見て信用できるかだ」
喋りながらでも速度は落ちない。
蝙蝠にとっては当然の事に過ぎず、重要な事は今口にしている事だった。
「演技でも疑ってるのか?」
「……あくまでお前から見てだ」
あえて返事を濁す蝙蝠を不審げに見た。
しばらく様子を眺め、口を開く。
「信用できると思うぜ?」
「あっそ」
無表情。
予想通りの答えだったのか予想外の答えだったのかは、蝙蝠の表情からは読み取れない。
会話が途絶えた。
どちらも何か考えているように顔を顰め、話し掛け辛い雰囲気に包まれる。
走る音だけが響く。
創貴が、口を開いた。
「情報は集まった。だがそれもアイツが信用できるかで随分変わってくる」
「…………」
「お前はどう思う?」
「…………」
「蝙蝠?」
一向に答えない蝙蝠に視線を向け、逸らした。
珍しく険しい表情を浮かべていたのだ。
十秒、二十秒と時間が過ぎ、
「……おれは、嘘であって欲しいな」
どうにも言い辛く、煮え切らない感じで言った。
創貴は黙って先を促す。
「おれの見た感じアイツの強さ――っつうよりも身体――は、今までおれが見て来た中でもかなり上だ。そいつが俺の忍法を知ってる風な上で、こう言ったよな? 確か」
「今の貴様らでは一分持つまい」
創貴が先に言う。
蝙蝠はただ頷く。
この言葉の意味を二人は考える。
真庭蝙蝠の戦闘経験、供犠創貴の知恵知略、そして都城王土の身体能力。
それぞれがそれぞれ並外れていると言って良い。
にも関わらず、この三つが合わさっても、勝てないと言ったのだ。
そんな相手がいるとすれば悪夢以外の何物でもない。
誰だって嘘だと思いたい。
だが、しかし、
「本当だと思うぜ?」
「……だよなぁ」
494
:
◆mtws1YvfHQ
:2012/01/24(火) 22:50:31
二人は確信していた。
あの傲慢不遜を絵に描いたような男が例え嘘であっても己を卑下する事を言うかどうかを考えれば、絶対にあり得ないと確信するが故に。
嘘を付いていないと確信出来た。
あの男だからこそ、出来てしまった。
「アイツが嘘を付いてない前提で考えを纏めるぞ?」
「おう、言え言え」
「分かった分かった。だがまず止まれ。もう十分距離は取っただろうしな」
止まり創貴を降ろした蝙蝠に、周囲を少し警戒してから創貴は語り始めた。
「まず首輪に盗聴器がある可能性は低い。
理由はあった場合、あの男があそこまで腹を割って話す可能性が低いからだ。
ましてや不知火を裏切るような話だったから尚更な。
あったとしても携帯にあったかも知れないが、僕達で捨てたしな。
あいつを繋ぎ止める鎖である人質。
行橋未造って言ってたな。
あれで随分と入れ込んでる風だったから女なのかも知れないが……関係無いな。
どっちでも良いとして、あそこまで言ったらそいつに危害が及ぶ可能性が――もし僕が不知火の立場だったら――間違いなくある、と言うか及ぼす。
だから僕は盗聴器がないって結論に到った訳だが、質問は?
よし、次に王刀・鋸の話に移ろう。
毒気を抜くとか言う能力ってのは怪しい話だが、ある程度は本当の話だろう。
まだ僕は中身を確認してないから木刀なのか知らない。
…………うん、どう見ても木刀だな。
まあそれを袋に入れてるよりも出して持ってた方が威嚇としての意味を持てる。
なのに袋に入れて持ち歩いていたのはなぜか?
多分、直接掴まないようにするためだろう。
つまり本当に毒気を抜くかどうかは別として、持てば何かが起こる可能性は高い。
少なくとも、不利になる可能性のある現象の起きる可能性が。
質問はあるか?
……四季崎、記紀?
なんだそれ、人の名前か何かか?
独り言ってお前、変な奴だな――元からだったな。
さて、最後に、警戒すべき四人について。
これも本当だと思う。
蝙蝠とさっき話したが、あの男が己の価値を下げる嘘を付くとは思えない。
ってのもあるけど、最も足るは表現の具体性だ。
人間は完全な嘘を付く事が、ほぼ、出来ない。
ない物を作り出す事はなかなかできない。
「あー、分かる」って……心当たりでもあるのか?
――さっさと続きを言え?
495
:
◆mtws1YvfHQ
:2012/01/24(火) 22:51:34
勝手な奴だな……まあ良いけど。
とりあえずあいつの言ってた人間は特徴がある程度分かり易く具体的だった。
一目で分かるように配慮して何だろうが、この特徴を捉える、って事自体嘘だと難しい。
学生服の最悪最低って所は今一分からないが、まあ、あいつは少し考えはしたが言えた。
だから信用できる。
少なくとも、今の所はな。
今後の情報次第では変わるだろうが。
しかし、厄介な事になったな。
……なにがだって?
あいつの探し人を見付けられないとあいつが敵になるだろう、って事がだよ。
あんたが言うには相当強い奴なんだろ?
それが敵になるのは遠慮したい所だ。
だから、今後の予定はおおよそ決まった」
「異論はないな、蝙蝠?」
殆ど息を付く事も無く喋り終えた創貴が、蝙蝠に聞く。
途中途中で相槌を入れていただけの蝙蝠だったが、話は全て聞いていた。
だから他をどうこう考えず、先に一度願いを叶えて貰って一度叶えたのだから簡潔に、ただ己の安全と利益を考える。
どうすれば生き残れるかを頭の中でじっくり巡らせる。
どうせなら他にもあるだろう完成形変体刀を探し出す。
最終的にまだ未知の何かを持っていそうなあの男と対峙する可能性と、危険を冒してでもこちらが人質を手に出来る可能性。
更に足す事の味方を増やせる可能性と零崎双識と出会い殺し遂せる可能性。
引く事の動き回って狙われる可能性とただ見付かり不意を狙われる可能性。
更に足し、更に引き、足して足して足して、引いて引いて引いて、足して引いて足してつまり結果、
「それで良いんじゃねえか?」
探す。
生憎、暗殺専用だから得意分野ではないが自信はある。
見付からなかったとしてもあの男よりも強いのが最低でも四人いるのだ。
遠目に見る事さえできれば真似が出来、勝てる可能性が出来る。
探し人を見付けられた上で見れれば最上、と。
「――きゃはきゃは」
蝙蝠は楽しそうに笑う。
創貴はそれを呆れたように見ていた。
496
:
◆mtws1YvfHQ
:2012/01/24(火) 22:52:17
【1日目/午前/D-5】
【供犠創貴@りすかシリーズ】
[状態]健康
[装備]グロック@現実
[道具]支給品一式×2、ランダム支給品(0〜1)、銃弾の予備多少、耳栓
A4ルーズリーフ×38枚、書き掛けの紙×1枚、「診療所で見つけた物(0〜X)」、箱庭学園パンフレット@オリジナル
[思考]
基本:みんなを幸せに。それを邪魔するなら容赦はしない
1:蝙蝠と行動
2:りすか、ツナギ、行橋未造を探す
3:このゲームを壊せるような情報を探す
4:機会があれば王刀の効果を確かめる
5:蝙蝠の目的をどう利用して駒として使おうか
[備考]
※九州ツアー中からの参戦です
※蝙蝠と同盟を組んでいます
※診療所でなにか拾ったのかは後続の書き手様方にお任せします
【真庭蝙蝠@刀語】
[状態]健康、零崎双識に変身中
[装備]エピソードの十字架@化物語、諫早先輩のジャージ@めだかボックス
[道具]支給品一式、ランダム支給品(0〜2)、書き掛けの紙×1枚、ナース服@現実、王刀・鋸×1
[思考]
基本:生き残る
1:創貴と行動
2:双識をできたら殺しておく
3:強者がいれば観察しておく
4:完成形変体刀の他十一作を探す
5:行橋未造を探す
6:危なくならない限りは供犠の目的を手伝っておく
[備考]
※創貴と同盟を組んでいます
※現在、変形できるのはとがめ、零崎双識、供犠創貴、阿久根高貴、都城王土、元の姿です
497
:
◆mtws1YvfHQ
:2012/01/24(火) 22:54:29
都城王土は箱庭学園を歩いていた。
目的は一つ。
投げ落とされた携帯電話の回収のため。
不知火との連絡手段、と言っても一方的に掛けられるに過ぎない、なのだ。
それがない以上、下手に動けない。
下手な行動が反乱を企てていると思われればどうなるか。
想像するまでもない。
苦々しい事だが理解していた。
だからあたかも隙を突いて逃げ遂せた上で、携帯電話の回収に向かっている殊勝な姿を見せる。
逆らう気が毛頭もないかのように見せかけるために。
「忌々しい」
不機嫌そうに言いながら歩く。
死んで欲しくない人間。
そのためならば一時の苦汁も舐めるに値する。
理事長室前の、割れた窓ガラスが見え始めた。
周囲を見渡してみれば、それなりに離れた所に転がる携帯電話が目に入る。
近付き、土を払いながら拾い上げる。
まだ使えるかどうかは見ただけでは分からない。
軽く周囲を見渡すと、携帯電話が震え始めた。
画面に浮かぶのは非通知。
少し残念そうな笑みを浮かべながらボタンを押し、耳を当て、言った。
「俺だ」
変わらぬ口調のまま。
【1日目/午前/D-4】
【都城王土@めだかボックス】
[状態] 健康
[装備] 携帯電話@現実
[道具] なし
[思考]
基本:不知火の指示を聞く
1:行橋未造の安全が確認が出来れば裏切る
[備考]
※首輪は付いていません
※行橋未造が人質に取られているため不知火に協力しています
※行橋未造が何処にいるかは分かりません
498
:
◆mtws1YvfHQ
:2012/01/24(火) 22:58:31
以上です。
あらゆる面で他が行き過ぎてるせいもあるのか中途半端な気がする創貴蝙蝠グループの強化および、めだか(改)のフラグ回収。
詳しくは、蝙蝠戦闘力強化、創貴作戦数増加。
更に変体刀を手に入れた双識と蝙蝠の戦闘フラグ強化。
目的はこんな所でした。
個人的に悩んでいる事としましては
>>493
〜
>>495
の部分をなくして他の人に任せた方が良いんじゃないかなと思い悩んでいます。
それも含め、物語の矛盾や誤字脱字などがないかなどの意見をお願いします
499
:
誰でもない名無し
:2012/01/25(水) 11:03:46
仮投下乙です
まず質問ですが、
王土は十三組の十三人編より後の状態か?
蝙蝠は王土に変態したときに異常を使えるのか?
の2つ
それ以外は
>>493-495
の部分も含めて疑問に思った点は無かったです
感想ですが真庭忍軍&りすか勢vs零崎一賊の構図が着々と出来上がってますね
王土が王刀を持っているというのは皮肉が利いてていいですが武器として扱うには難しいアイテム、どう生かすのか楽しみです
残りの変体刀は斬刀と薄刀と賊刀と誠刀ですか…後の2つが扱い難しそう
500
:
誰でもない名無し
:2012/01/25(水) 19:15:28
>>499
氏ではないけれど俺の意見としては。
最初で言うならば、十三組十三人編より後でいいのでは?
そうでなければ、行橋のためにこんなことを協力するとは思えないし。
そもそも、これより前だと行橋が自身の所為で苦しんでも「まあ、いいか」で済ませるし。
いやまあ「俺は行橋のため〜」的な言葉自体が嘘で、実は計画にノリノリとかそんなオチがあればまた別なのだが。
蝙蝠に関しては使えてもいいのでは? 使い方さえ知っていれば。もしくは知っていけば。
才能とは言えども、刀語一巻にて七花の「虚刀流故に刀が使えない」というものまでものの見事に変態したわけだし。
今更どんなことまで変態しようと受け入れれる気はするな。
501
:
◆mtws1YvfHQ
:2012/01/26(木) 22:46:29
>>499
氏
返答ですが、まず王土は十三人編以後からの参戦のつもりです。
そのため言葉の重みを使わせておりません。
本投下の際にはその辺りの事も状態表の辺りに追加しておきたいと思います。
蝙蝠に関しては流石にそれ無理じゃないか……と思っていたのですが、
>>500
氏の言う事ももっともであります。
しかし蝙蝠はどうも七花の件から考えると真似は出来ても中身を完全に把握は出来ていないようなので、使えはするがその可能性に気付いていない、と言う感じになるかと思います。
いっその事、後の作者の方に丸投げと言うのもありますが。
確りと決めてしまった方が良いでしょうか?
またもご意見の方をお願いします
とりあえずは以上です
502
:
◆8nn53GQqtY
:2012/03/24(土) 23:31:51
いーちゃん、八九寺、投下します。
初投下ということもあり、仮投下で様子見たいと思います
503
:
探サガシモノ物ガタリ語 いのじワード
◆8nn53GQqtY
:2012/03/24(土) 23:32:45
【0】
『まるで並行世界に生まれた同一人物のように似通っている『きみ』と僕との絶対とも言える最大の共通点――』
『それは『きみ』がどうしようもなく救えないほど『優しい』ことに尽きるだろう』
『『きみ』はその優しさゆえに、自身の『弱さ』を許せなかった――つまりはそういうことだ』
『だから『きみ』は孤独にならざるをえない』
『『きみ』の間違い、『きみ』の間抜けは、その『優しさ』を他人にまで適用したことだ』
『素直に自分だけを愛していればそれでよかったのに』
『無論僕が言うまでもないように『優しさ』なんてのは利点でも長所でもなんでもない』
『むしろ生物としてはどうしようもない『欠陥』だ。それは生命活動を脅かすだけでなく進化をすらも阻害する』
『それはもう生命ではなく単純な機構の無機物みたいなものだね。とてもとても、生き物だなんて大それたことは言えない』
『だから僕は『きみ』のことをこう呼ぶことにするぜ――『欠陥製品』と』
「そう、きみも『優しい』。
だが『きみ』はその優しさゆえに、自身の『弱さ』を許してしまった。
孤独に平気でいられないという自身の『弱さ』を、どうしようもなく許してしまった。
優しいってのはつまり、自分も優しくされたいってことだからね。
どこまで堕ちても、どれだけ他者を害しても『ぼくは悪くない』と言うきみを、どうして人間だなどと言える?
生物ってのはそもそも群体で生きるからこその生物だ。
群体として生きることを望みながら決して群体になじもうとしない、なじめない、生物として『過負荷(マイナス)』だ。
こいつはとんだお笑い種だね。きみと『ぼく』は同一でありながらも――出てくる結果は対局だっていうんだから。
僕は価値ある命を奪うが、『きみ』は命を無価値にする。自身どころか他人をすらも活かさない、なにもかも絶対的に活かさない。
社会生活の『活』の字がここまでそぐわない人外物体にして障害物体。
だから、『きみ』のことは暫定的に、こう呼ぶことにするよ――『人間未満』とでも、ね」
504
:
探サガシモノ物ガタリ語 いのじワード
◆8nn53GQqtY
:2012/03/24(土) 23:33:36
【1】
さて、回想シーンはここまで。
ここから先は、現在進行形の物語。
僕の後ろには、真宵ちゃんが付いて来る。
そして、僕の行く先には――
「向こう側が見えませんね……日本にこんな広い砂漠があったでしょうか」
「鳥取砂丘を見たことはあるけど、ここまで広くはなかったね」
地の果てまで、砂漠が広がっていた。
『地の果てまで』という文字どおりに、この『因幡砂漠』の向こうには海しかないのだけれど、その水平線さえ茶色い砂丘に遮られている。
「時に、ざれれ言さん」
「真宵ちゃん、れが一個多いよ」
「失礼、噛みました」
「違う、わざとだ」
「かみまみた」
「わざとじゃない!?」
「食(は)みました」
「その噛みかた何かエロい!?」
「ごほん……砂漠を行くことになったのはいいのですけど、いきなり出て来たこの『支給品』は何なのでしょう。
こんなに大きな車が、何の伏線もなしにどこから出て来たのでしょう」
「ディパックの中から、としか説明しようがないね。
いいんじゃない? 《怪異》があるんだから、四次元リュックがあっても」
「確かに、メタ発言はボケ突っ込みの手法として有効ですけど、ロワのお約束にいちいちめくじらを立ててもいられませんからね」
「その台詞自体がアウトに近い何かだよね」
そう言えば真宵ちゃんは、この劣化四次元ポケットみたいなディパックをよく見ていなかったのだった。
僕ら今まで、支給品の確認とか、ろくに済ませなかったからなぁ。
言いわけさせてもらうと、僕も真宵ちゃんも、当初は『バトルロワイアル』に対する実感がなかったし、
『とりあえず阿良々木くん探しに付き合おう』ぐらいの考えしかなかったから、認識が甘かったということなのだろう。
地図を取り出した時に、支給品らしき道具が見えたけれど、いまいち使えそうにないものだったし、
戯言使いである僕に至っては、真庭鳳凰という忍も、翼ちゃんの時も、七実ちゃんの時も、口を使って切り抜けてきたわけだし。
ただ、僕の荷物は真宵ちゃんが気絶していた間に、だいたいの荷物確認を済ませていたりする。
ちなみに、僕が取り出したばかりの赤いフィアット500は、あの大男から貰ったディパックに入っていた。
何だか車内の感じとか、鍵についているキーホルダーの形とかが、あのみい子さんから貰ったフィアットとそっくりなのだけど、偶然だろうか。
こんな便利な移動手段があったなら使えばよかったのにとも思ったけど、学ランの件といい、あれでまだ高校生だったのかもしれない。
ともかく、僕が何の伏線もなく車を出してきたのにも、理由はある。
505
:
探サガシモノ物ガタリ語 いのじワード
◆8nn53GQqtY
:2012/03/24(土) 23:34:24
「ここまで広い砂漠を、徒歩で、しかも女の子を連れて移動するのは厳しいと思ったからね。
さっきまでは目立つといけないと思って出さなかったけど、砂漠なら視界が開けてるから徒歩でも目立つのに変わりないし」
「なるほど。では、なぜ進路をこちらの方向に?
戯言さんのことですから、誰も来ない場所に逃げるのでもないのでしょう?」
「それは過大評価だね。僕はこれでもけっこう怖がりで、卑怯ものだぜ?」
「だとしても、無思慮ではないでしょう」
にこりん、と笑顔を向ける真宵ちゃん。
何だろう。彼女が目覚めてからだけれど、ずいぶんとフレンドリーさが増している気がする。
僕はそんなに、信頼を獲得されるようなことをしただろうか。
出会った当初は、かなり警戒されていたはずだけれど。
『嫌いです』言われたし。
軽妙な言い回しは元からだったけど、こんな弾んだ会話することだってなかったはずだし。
まぁ、真宵ちゃんからすれば、阿良々木君亡き今、この環境で頼れる人間は僕しかいないのか。
そんな僕に対して何かしらの感情が芽生えてもおかしくはないんだろう。
いや、変な意味じゃないぞ。
仮に真宵ちゃんがこの体型で、僕より年上だったりしたら、喜んでフラグと解釈したところだけれど。
「名簿に書かれてた僕の知り合いを探したいって、さっき話したよね。
そいつとの合流を前提に、これからの進路を色々と考えてみたんだ」
「ほほう、その女性とは、戯言さんのヒロインに当たる方ですか?」
「いや、大事な人じゃないと言えば嘘になるけど。なんでそこで《ヒロイン》の話になるのかな」
秋までの僕なら『違うよ』と否定していたところだけれど、今さらそういうわけにもいかないな。
……結婚の約束までしちゃったし。
「なら、戯言さんはどうして《主人公》を目指そうと思ったのですか?」
「それは、安心院さんに言われたから……」
「それは安心院さんの方から頼んできたことで、戯言さんが引き受けた理由にはなりませんよね。
ここから生きて帰りたいだけなら、必ずしも《主人公》を目指す必要はありませんから。
確かに《主人公》という立ち位置は他のキャラより生存率が高いですけれど、《主人公》にならなければ生き残れないわけでもありません」
ずばりと突いて来た。
けっこう、僕の深いところを。
なるほど。
《主人公》になる明確な方法など存在しないけれど、《主人公》を目指す理由は明確に必要だ。
それは言うなれば、物語を作る上で、主人公を作る上で、不確定な事項。
主人公の戦う、動機づけ。
その動機で言えば。
僕は確かに、玖渚に死んでほしくないと、強く思っている。
真宵ちゃんも、死なせたくないと思っている。
真心も、哀川さんも、死ぬなんて許容できないでいる。
まさしく『女の子のためなら何でもしたい、ライトノベル型の主人公』だっけか。
「《主人公》を目指すなんて野望はとても大それたものですけど、
しかし、《主人公》になりたいと思うほど、誰かを想えるのは、とても素晴らしいことだと思います。とてもとても、いい事です」
まるでよくよく知っている人を語るみたいに、真宵ちゃんは言い切った。
真宵ちゃんにとっての《主人公》――阿良々木君も、そういう少年だったのだろうか。
「阿良々木さんにもヒロインがいました。戦場ヶ原ひたぎさんと言う人です」
戦場ヶ原ひたぎ。
名簿にいた。
つまり、ここに来ているということだ。
そうなると、翼ちゃんが嫉妬していた『彼女』が、そのひたぎちゃんになるのか。
「放送を聞いてどうなってしまったのか。仲良くはありませんでしたけど、心配ではありますね」
そりゃあ……他ならぬ真宵ちゃん自身が、あんなことになったのだ。
もっと近しい位置にいた女性なら、ずっと酷いことになったっておかしくない。
戦場ヶ原ひたぎ、ね。
捜索対象、および要注意人物に、戦場ヶ原ひたぎ、一名を追加。
「その人とまた会う為にも、まずは生きのびることを考えないとね」
「そうですね」
506
:
探サガシモノ物ガタリ語 いのじワード
◆8nn53GQqtY
:2012/03/24(土) 23:35:16
話を戻そう。
真宵ちゃんが言うところの《ヒロイン》――玖渚友の話をした。
青い目で、青い髪で、小さくて、――そして《サヴァン》なのだということ。
どこか、パソコンのある施設で引きこもっている可能性が高いこと。
僕も真宵ちゃんが目覚める前に、目的地を絞り込んでいたこと。
診療所、豪華客船、ネットカフェ、斜堂卿一郎研究施設、そのいずれかに絞られること。
「だから、地図の東側に行ってみることにしたんだ。ネットカフェと研究施設の二つが割と近い位置にあるから、まとめて寄りたいところだし。
廃墟から向かうと、スーパーマーケット手前で曲がるルートを使えば、途中で診療所も抑えられるからね」
「なるほど、効率的に施設を回れますね。でも、それならどうして砂漠を迂回するんですか?
先に豪華客船に寄ってから、診療所、ネットカフェ、研究施設の順で回るということですか?」
「診療所を通るルートでネットカフェに向かうには、いったん来た道を戻らなきゃいけないからね。
つまり、『骨董アパート』に戻る道を通ることになるね」
「そうなりますね」
「さっきのおっかない2人組を遠ざける方便で、『骨董アパートに行けばいいですよ』って言っちゃったんだよね」
「…………………」
つまり、素直に道路ぞいに南下すれば、またあの2人と出くわしてしまう可能性が高いのだ。
言いわけさせてもらうと、その時点では次の目的地を考える余裕などなかった。
「今の僕たちが球磨川君たちに会うのは危険だし……それ以前に会いたくないしね」
いや、『会いたくない』というのは、半分ぐらい方便。
本当に会いたくないのは、僕ではなく真宵ちゃんの方だろう。
出会いがしらに自分を殺そうとした挙句に、庇って戦ってくれた男性を眼の前で虐殺した一味だ。
「球磨川さん……というのですか。あの男の人は」
真宵ちゃんが、声のトーンを低くして呟いた。
「あの人たちは……殺し合いに乗っていたんです、よね?」
「いや、少なくとも球磨川君の方は乗っていないようだったよ。
『殺さないで』って言ったら、彼女を止めてくれたし」
「殺し合い否定派なのに……あの人の仲間をしていたんですか?」
あの人。
七実ちゃんのことだろう。
声が震えている。思い出したくない対象なのは明らかだ。
それでも追求してくるのは、勇気なのか、彼女らと会話が通じた僕に対する警戒心も少しあるのか。
「僕も……彼と話した時間は長くなかったけど、それでも安全な人物ではなさそうだったよ。
気分の向くまま行動するし、何をするか分からない。
殺し合いが起こらなくても、生来の危険人物に見えた。そこは、女性の方も同じだと思う。
だから一緒に行動しているのかもしれないね。」
球磨川禊。
大嘘つき。
人間、未満。
人間として、足りていない。極端な過不足。過負荷(マイナス)。
こんな殺し合いが起こらなくても、いずれ、誰かを殺す計画を立てていたんじゃないかと思える。
507
:
探サガシモノ物ガタリ語 いのじワード
◆8nn53GQqtY
:2012/03/24(土) 23:36:19
「ただ、殺し合い自体は肯定していないようだった。不知火理事長もぶっ殺すとか言っていたし」
「不知火――最初の広い場所で演説してた、主催者さんですよね」
「そうだね。つまり球磨川君は、主催者の手がかりを何かしら持っているのかもしれないけど――それでも、再会したい相手じゃないな」
《縁》があったら、また会えるのだろうけど。
先送りにできることなら、先に見送りたい。
……前々回、ぶっとい因縁フラグを立ててしまった気がしないでもないが。
「そういうわけで、砂漠を迂回することにしたんだ」
ここから先の話しは車の中でと、鍵をさしこんでドアを開けた。
炎天下でこれ以上立ち話を続けても、体力を浪費するだけだろう。
「いったん豪華客船に寄ってから、診療所への道に向かうよ。
車で移動すれば、次の放送までには公道に戻って来られるだろうし」
【2】
「ざれれれ言さん!」
「真宵ちゃん、僕は別にバカボンの家の隣近所に住んでるおじさんじゃないからね」
砂煙をあげて直進するフィアットのハンドルを、ダボダボの制服からはみだした両手で握りながら僕は返事した。
ザシャザシャザシャと、砂煙がフィアットの小さな車体を乱暴に汚していく。
路面は走りにくいけれど、障害物のない開けた場所だから、事故を起こす心配もない。
話しかける真宵ちゃんは、助手席。
シートベルトをしてちょこんと座りこんだ膝の上には、樹木の伐採に使うような、大きな剪定バサミが握られていた。
これも元々、僕の支給品だったものだ。
フィアットに乗り込んだ後、この際だからと互いの支給品はすべて公開して、使いやすい道具は交換した。
ジャキンジャキンと、切れ味を確かめるように、大きな両刃をゆっくり開閉させている。
小学生が持つにはずいぶんと物騒な武器だけれど、不思議とその鋏は、真宵ちゃんの両手にぴったりだと思えた。
まるで、元からそういう幼女の手持ち武器だったみたいに。
では、ここいらで僕らの手持ち武器を公開しておこう。
まず、このフィアットを僕に譲渡してくれた日之影空洞という青年の荷物。
彼は、フィアットの他にも、拳銃一丁を支給されていた。
これはどう考えても当たり武器だと思うのだが、僕なんかに渡したまま飛び出していって良かったのだろうか。あの大男は。
けれど、拳銃というメインウエポンが手に入ったのは良かった。
ジェリコ941。
八月の――匂宮出夢君との戦いで使っていた拳銃だ。使い方はしっかりと覚えている。
他の支給品――僕に支給された元からの道具は、ハズレとは言わないまでも、使いどころが難しそうだったから。
508
:
探サガシモノ物ガタリ語 いのじワード
◆8nn53GQqtY
:2012/03/24(土) 23:36:53
まず、真宵ちゃんに交換で譲渡した剪定ハサミ。
『ウォーターボトル』と書かれた魔法の水……と説明書が付いているけれど、
どっからどう見ても濃硫酸にしか見えない液体の入った瓶。
そして『巻菱(まきびし)指弾』と書かれた、小さいネジのような金属片が、三つほど。
この巻菱一つに、大の男をしばらく行動不能にできるだけの毒物が仕込んであるらしい。
しかし当然ながら、僕は巻菱を指で弾き飛ばして、狙った人間の体に命中させる真似はできない。
だからそうなると、人間の肌に直接触れて埋め込ませるぐらいしか使い道はなく、
そこまで接近する危険を冒すぐらいなら、戯言のひとつでも振るう方がよほどリスクが少ない。
(ハサミや濃硫酸をイマイチと見なしていたのも、同様の理由による)
そう見込んで扱いかねていた代物だけど、一応ズボンのポケットにいれておく。
そして、真宵ちゃんに支給された道具は二つ。
ひとつは、『柔球』という、楕円形の鉄球。ちなみに二個一組み。
説明書によると、標的に直撃しない限りは何度でもバウンドし、なおかつバウンドするごとにスピードが増していく、室内戦闘用の武器らしい。
……味方に当たったらどうするんだろう。
真宵ちゃんが今まで危ない目にあっても、使おうとしなかった理由が納得だ。
そしてもう一つが、剪定ハサミと交換で、僕の手に渡ったものだ。
真宵ちゃんは使い方が分からない、と自己申告をしたので。
「失礼、噛みました」
「違う、わざとだ」
「かみまみた」
「わざとじゃない!?」
「かけますか?」
「支給品にかこつけて上手いこといったつもりになってる!」
「ともかく、です。車を運転しながら電話をかけるのは、危なかったと聞いています」
どこにでもある、携帯電話だった。
アンテナが、ちゃんと3本立っている。
一応、助けをよぼうと手当たり次第にかけたけれど、それは繋がらなかった。
会場内限定で電波が繋がっている仕組み、らしい。
電話帳には、幾つか登録された番号があった。
施設の名前で。
『一戸建て』
『喫茶店』
『クラッシュクラシック』
『西東診療所』
『展望台』
『病院』
『マンション』
509
:
探サガシモノ物ガタリ語 いのじワード
◆8nn53GQqtY
:2012/03/24(土) 23:40:31
どれも地図の北側、A〜Cに当たるエリアの施設だ。
僕たちが向かおうとしていた施設のどれもが該当しないのは残念。
けれど、そうなると他にも携帯を支給された参加者がいて、他の施設の番号が登録されているのかもしれない。
「危な『かった』っていうのは、どういうこと?」
「私が生きていた時には、携帯電話はそこまで普及していませんでしたから」
ああ、そう言えばこの子、幽霊(自己申告)だったよ。
「すると、真宵ちゃんが亡くなったのは、けっこう昔なのかな……」
「生きていれば21歳になります」
「マジかよ」
やばい。
僕より年上だった。
この姿で、年上だった。
思いっきり、僕のストライクゾーンど真ん中だった。
「まぁ、確かにこの道は悪路だけど、行動はなるべく迅速に起こしたいしね」
「それは――禁止エリアの情報を聞き逃したからですか?」
「それも聞き出したいことだけど、それだけじゃないよ」
申し訳なさそうな顔をした真宵ちゃんに、僕はきっぱりと言った。
真宵ちゃんは放送の死者をかろうじて覚えていたものの、禁止エリアまでは記憶していなかった。
そこを責めるのはあまりにも酷だ。阿良々木君の名前が呼ばれた直後のことだったのだから。
だから、早い内に他者と連絡を取り、放送の情報を補完しておきたい。
それが、さっそくとばかりに電話をかけようとする、一つの理由。
「まず、聞いておきたいんだけど――真宵ちゃんは、《主人公》って何をする人だと思う?」
「また《主人公》を目指そう、というお話ですか?」
「ううん、これは、僕が《主人公》になれるかとは全く別の問題だよ。
つまり、『このバトルロワイアルに主人公がいるとすれば、それは何をする人だと思う?』という意味になるかな」
「なるほど、確かに主人公の定義は曖昧ですが、ジャンルを搾れば、ある程度絞り込むことはできますね。
推理小説の主人公なら殺人事件を解決すべきですし、ライトノベルの主人公ならハーレムを作らねばなりません」
つまり僕は、推理小説の主人公にはなれないってことか。
「そうですね。主人公さんを選べるなら、私は――」
「――殺し合いを止めさせて、皆を家に帰してくれる人がいいです」
そんな風に、言った。
そんな真摯で、とても切実な回答を。
「うん、僕もそう思うよ。それに主人公云々を抜きにしても、脱出する方法は見つけないといけない。
知り合いを探して守るだけじゃ、究極的には殺し合いは止まらないからね」
510
:
探サガシモノ物ガタリ語 いのじワード
◆8nn53GQqtY
:2012/03/24(土) 23:41:03
動機付けとして《ヒロイン》が必要なら、目標として《打倒すべき存在》は必要だ。
それすなわち、殺し合い。
あの大嘘つきは、《欠陥製品》が殺し合いを止めると言ったら、嗤うかもしれないけれど、
それでも、僕は彼のように、破滅による物語の終わりを望まない。
「でも、だからと言って、僕に『首輪を解除して脱出する』なんて技術はないんだよね。
それをするなら、僕よりずっと向いた人たちがいるし」
最強の請負人とか、死線の蒼とか。
「僕は一介の戯言遣いに過ぎないし――いつも通り、フィジカル面より、メンタル面から攻めていくしかないんだ」
「メンタル面――話し合いで解決するということですか」
「交渉になるかもしれないし、取引になるかもしれないし、恐喝になるかは分からないけど――主催者、あの『不知火理事長』と接触してみたい」
いつまでも、マーダーに襲われて、見逃してもらっての繰り返しじゃいられない。
いい加減、攻守交代をはかりたい。
この回り道が、家への帰り道に続くように。
「でも、接触すると言ったって、僕はあの人のことを何も知らないし、どこにいるのかも分からない。
だから、もっと情報が必要なんだ。不知火理事長を知っている人とか、そういう参加者に接触した人とか」
「そうですね。現状、私たちと主催者にある繋がりと言えば、お孫さんと私の声がよく似ていることぐらいですし」
「よく知っているね。僕はあの人に孫がいるなんて初めて聞いたんだけど」
閑話休題。
この局面で『電話』というアイテムが転がり込んできたのも、何かの《縁》だと考えよう。
直接的に対峙することなく、声だけが聞こえるというシチュエーション。
ここで何も仕掛けないでは、戯言遣いの名に恥じるというものだ。
「そういうわけで、僕は電話をかけるから。真宵ちゃんはひとまず、黙ったままでいてくれるかな。
人数が特定されていない方が、有利に立ちやすいからね」
「分かりました。では、電話は私が持ちますから。戯言さんはちゃんと両手で運転して、前を見ながら話してください」
「ありがとう。じゃあ、安全運転させてもらうよ」
携帯電話を、再び真宵ちゃんに返す。
どの施設にかけようかと少しだけ考えて、いや、適当でいいのかと思いなおした。
一件ずつ、順番にかけてみればいいだけだ。
僕は、施設名を頭の中で反復して、適当に思いついた施設を選んで、
言うなれば、《縁》を感じた電話番号を。
真宵ちゃんに、押してもらった。
511
:
探サガシモノ物ガタリ語 いのじワード
◆8nn53GQqtY
:2012/03/24(土) 23:41:28
【3】
人間未満、大嘘つき、球磨川禊。
さっきはああ言ったけれど、訂正しておくことがある。
僕はたくさん殺してきたけれど、これからは生かす道を行く。
君が一人じゃないように、僕はもう独りじゃない。
【一日目/午前/F-3】
512
:
探サガシモノ物ガタリ語 いのじワード
◆8nn53GQqtY
:2012/03/24(土) 23:41:54
【戯言遣い@戯言シリーズ】
[状態]健康、
[装備]箱庭学園制服(日之影空洞用)@めだかボックス(現地調達)、巻菱指弾×3@刀語、ジェリコ941@戯言シリーズ
[道具]支給品一式×2(うち一つの地図にはメモがされている)、ウォーターボトル@めだかボックス、お菓子多数、缶詰数個、
赤墨で何か書かれた札@物語シリーズ、ミスドの箱(中にドーナツ2個入り)
[思考]
基本:「主人公」として行動したい。
0:電話をかける
1:真宵ちゃんと行動
2:玖渚、できたらツナギちゃんとも合流
3:豪華客船へと迂回しつつ、診療所を経由し、ネットカフェ、斜道卿一郎研究施設 いずれかに向かう
[備考]
※ネコソギラジカルで西東天と決着をつけた後からの参戦です。
※第一回放送を聞いていません。ですが内容は聞きました。
※夢は徐々に忘れてゆきます(ほぼ忘れかかっている)
※地図のメモの内容は、安心院なじみに関しての情報です。
※携帯電話から掲示板にアクセスできることには、まだ気が付いていません。
【八九寺真宵@物語シリーズ】
[状態]健康、精神疲労(中)
[装備] 携帯電話@現実、人吉瞳の剪定バサミ@めだかボックス
[道具]支給品一式、 柔球×2@刀語
[思考]
基本:生きて帰る
1:戯言さんと行動
[備考]
※傾物語終了後からの参戦です。
※真庭鳳凰の存在とツナギの全身に口が出来るには夢だったと言う事にしています。
※日之影空洞を覚えていられるか、次いで何時まで覚えていられるかは後続の書き手様方にお任せします
513
:
探サガシモノ物ガタリ語 いのじワード
◆8nn53GQqtY
:2012/03/24(土) 23:42:50
仮投下終了です。
投下中に指摘いただきました、日之影さんのディパックは中身だけ移し替えられてた件は、本投下にて修正させていただきます
514
:
◆mtws1YvfHQ
:2012/05/13(日) 21:42:52
失礼します。
投下規制中なのでこちらの方に投下させていただきます。
零崎軋識、供犠創貴、真庭蝙蝠の投下を開始します
515
:
神に十字架、街に杭
◆mtws1YvfHQ
:2012/05/13(日) 21:44:45
黙々と零崎軋識は歩く。
まず目指すのはクラッシュクラシック。
トキを、零崎曲識を、殺した奴を殺し、その一族郎党余さず皆殺しにする。
それは良い。
それは良いが、情報がなければそれも出来ない。
そのためにはまず死体を見付け、どう殺されたか調べなければならない。
のもあるが、何よりも弔ってやりたい。
他の『家族』の誰かが既にやっている可能性もあるが、それでも見付けて損はない。
「…………」
そう思っても、口惜しい。
何故、『家族』の事を疎かにした。
何故、『他人』の事を優先したか。
何もかも殺しても殺し足りない。
『家族』を守り通すと決めてもまだ足りない。
償い、足りない。
しかし今思い悩んでも意味はない。
見付けなければ意味がない。
そのためのクラッシュクラシック行き。
「きっとあそこに向かってるはずっちゃ……!」
人識は分からないが、レンならきっと、クラッシュクラシックに向かっている筈だ。
『家族』思いのが向かわないはずがない。
だからそこか、その途中で合流出来る。
そうすれば全身全霊を持って守る事が出来る。
「ん?」
何か、何処からか音がした気がした。
耳を澄ませる。
足音。
それが近付いて来ている。
自然、《愚神礼賛》を握り直す。
誰か知らないが殺す。
会場にいるなら殺す。
足音に向けて進む。
走っていたレンがいた。
「――レン!」
思わず声を掛ける。
声を掛けた瞬間、離れるように横に跳び、十字架を構えた。
そして小脇に抱えていた、
「子供かっちゃ?」
子供を降ろす。
何をやっているのか
思わず怒鳴り付けたくなる。
老若男女容赦なく、関わりがあれば殺し尽くす。
特に今回はもう一人死んでいる。
尚更、ここにいると言う関わりを持つ人間を殺さないといけない。
それが基本の筈だ。
それが普通の筈だ。
それが通常の筈だ。
それが当然の筈だ。
なのに、
516
:
神に十字架、街に杭
◆mtws1YvfHQ
:2012/05/13(日) 21:46:31
「レン!」
「近寄るな!」
「ッ!」
何故、『家族』に武器を向ける。
何故、『家族』に殺意を向ける。
何故、何故、何故。
どうして。
「また似たような手で騙せると思ってるのか貴様は!」
「……は?」
「今度はなんだ? 正面から不意討とうって魂胆だろう。違うか!?」
「お、おい、落ち付くっちゃ!」
どうして。
どうにも妙な事になっている。
俺が誰か分からないのか。
『呪い名』に何かされた訳でもあるまいし。
いや、ざっと見ただけで定かではないが、確か、あろう事か、あの名簿には、『時宮』の名前があったはずだ。
もしかしたら、そう言う事なのか。
「――落ち付け、レン。俺は他の誰でもない、『呪い名』の野郎共じゃない、紛れもなく、零崎軋識だっちゃ」
「……悪いがまだ信用ならないな」
「だったら何を言えば良い?
お前は《自殺志願》を使わない方が圧倒的に強い事を言えば良いのか?
お前の特技がコサックダンスだって事を知ってるって言えば良いのか?
それとも……それともお前がかなりの変態だって事を知ってれば良いのか?」
「…………おい」
「事実だろ」
そこまで言ってようやく、顔が引き攣らせてはいるものの、十字架を下ろした。
後ろの子供を守るように。
言い様のない苛立ちが湧き起こるが、堪える。
今この苛立ちに流されれば今度こそ、蝙蝠、とか言う奴と思われるかも分からない。
それに少し前まで人の事を言える立場じゃなかった。
歯を食い縛り、何とか堪えた。
「――――それより、その、子供は、なんだ?」
堪えた、と言ってもまだ残っている。
心の奥底から未だに湧きつつある不満。
それが言葉を途切れ途切れにさせていた。
何とかそれ以上何も出ないように押し留め、睨み付ける。
レンは肩を竦めた。
「何って、協力者に決まってるだろう?」
「協力者だぁ?」
事もなげに協力者と言った。
よりにもよって、『家族』が殺されたにも関わらず、協力者。
こいつは一体、何を言っている。
何故殺してないかと思えば協力者。
この場所にいると言う立派な関係者なのにも関わらず協力者などと温い事を言って、殺していない。
思えば思うほど、考えれば考えるほど、
517
:
神に十字架、街に杭
◆mtws1YvfHQ
:2012/05/13(日) 21:48:35
「レン…………この、馬鹿野郎!」
耐え切れない。
堪え切れない。
よもやそんな甘い男だったと思いたくない。
よもやその程度の男だったと思いたくない。
人一倍『家族』の事を大事にし、大切にし、それ故に特攻隊長などと言われていた男がこんな甘かったと思いたくない。
しかし、目の前にあるのが事実だ。
「この会場にいる関係者ならなんで殺さない!
この場所にいると言う理由でなぜ殺さない!
なんで殺さない!
理由として充分だろ!
理屈として充分だろ!
なのになんで殺してねえんだお前は!
『家族』でもない奴を殺したくないって訳じゃねえだろ?
それとも何か別の理由で殺せないって言うんだったら、俺が、殺して」
《愚神礼賛》を振り上げ、
「馬鹿野郎!」
「がっ!」
その瞬間、殺気と共に眉間に衝撃が走った。
殺気があったから咄嗟に衝撃を和らげる事が出来たが、それでも十分痛い。
十字架を握った方とは逆を振り終えた姿勢のレンの姿が目に入る。
殴られた。
そう気付く。
死にそうなほどではないにしろ、あろう事か、『家族』に殴られたと思うとなお痛い。
痛みが増す。
「お前、何を……!」
「馬鹿だから馬鹿だと言ったんだこの馬鹿が!」
「レン! 幾らお前でも」
「許さないとでも言う気か? だったらそれで構わない」
「なにっ!」
予想を遥かに超えた剣幕に尻込みした。
僅かに気圧され、下がってしまった。
そうなってもレンの言葉が止む気配はない。
「確かに関係している。間違いはない。この場にいるんだからな……だが考えろ! もし俺達の手に余る事態が起きたらどうする? その時になって殺さなければ良かったじゃ済まないんだぞ!」
「た、確かにそうだが……」
振り絞るように、言葉を続けようとするが、続かない。
現実的に考えればその通り。
事実、思い当たる節が幾つもあった。
例えば、《害悪細菌》のような破壊。
例えば、《猛獣》のような探索。
例えば、俺の現地行動。
それぞれにはそれぞれにあった輩が居るのは、骨身に染みて分かっている。
手を取り合う『家族』ではなく、目の敵のような『他人』のお陰で。
「とりあえず……」
518
:
神に十字架、街に杭
◆mtws1YvfHQ
:2012/05/13(日) 21:50:28
レンが一瞬子供を窺い見て、その首筋に手を当てた。
子供が前のめりに倒れた。
動かない。
当て身。
気絶させたのか。
「今殺すのは不味い。さっき言った通り、殺してから後悔では遅いんだ。殺すなら――全てが終わった後。そう思わないか?」
射抜くような目が向けられた。
そう言えば普段付けている伊達眼鏡がない所為で諸に視線が身体を射抜く。
一時の激情に身を任せて皆殺しにしようとしていた俺と、それを堪えて今後を考えて行動しているレン。
どちらが正しいかなんて考えるまでもないだろう。
それでも、そうと分かっていても、
「――悪いが、そうは思わない」
口から衝いて出たのは同意とは真逆の、否定の言葉だった。
レンが目を閉じ、空を仰ぐ。
「何故」
「嫌だから、だ」
もし協力するとしても、その中にトキを殺した奴が紛れ込んでいたとしたら。
そんな想像、一時足りとも耐えられない。
顔を戻し、睨み付けてくるレンの眼が鋭く光った気がし、同時に殺気が湧き上がり始めた。
そうだろう。
頭ではどれだけレンの話が正しいと分かっているのに、否定の材料もなくただ否定だけされる。
ただの子供の我が儘に近い。
きっと俺自身であっても殺気を抑え切れない。
だから、レンは正しい。
間違っているのは俺だ。
故に、『家族』に殺気を向ける行為を、咎められない。
「猶予はやる……次に会う時までにその子供を殺しておけよ。『家族』以外生き残らせる道理なんて無いんだからな」
それだけ言って、横を通り過ぎる。
刹那、レンの体が激しく震えているのが見えた。
口で言っても、理屈も何もなく否定されたのが口惜しいのか、はたまた別の理由か分からないが。
「クラッシュ・クラシックで待ってるぞ」
「このっ!」
殺気が背を叩く。
大人しく殴られる覚悟は出来ていた。
殴られても、少ししてまた仲直りすれば良い。
漫画のような話だが、それで良い。
唯一無二の、『家族』同士。
出来ない道理はないのだから。
「馬鹿野郎!」
そう思っていた中、頭を、今までにない衝撃が、襲った。
519
:
神に十字架、街に杭
◆mtws1YvfHQ
:2012/05/13(日) 21:52:24
「が、ああ!」
絶叫が上がった。
それでも武器に力を込めようとしている零崎軋識の脇腹に、頭を殴った流れで十字架を打ち込む。
鈍い音が鳴り、くの字に折れ曲がって地面に倒れた。
だが、手を緩めるにはまだ早い。
空かさず軋識の右肩に十字架を振り下ろし、砕く。
「ぁが、ぐがが!」
再び絶叫を上げた所で手を止める。
と見せ掛けて左肩を。
次いでに腰骨も。
そこまでやって、今度こそ手を止める。
「がががあがががが」
最早何を言おうとしているのかも分からない。
何処をどう動かそうとしても痛みが走り、それどころじゃないんだろう。
腰骨じゃなく背骨にするべきだったかと一瞬思うが、大して変わらないと思い直す。
抵抗する隙を与えれば命の危機に直結しかねない相手だから、これでもまだ心細い位。
そんな奴だと話していた、だけでなく見ていて、確信したのだから。
「きゃはきゃは……って、武器持たせたまんまじゃ、まだまだ危ねえか」
口にしながら武器をもぎ取る。
辛うじて指に引っ掛かっていた程度だったが、指を外すのに少し掛かった。
思い入れでもあったのか。
如何でも良いが。
それよりも、武器だ。
振り回すのには中々の力が必要な重量感に全体に付いた鉄の棘。
当たり所次第では死に直結し、当たり所が良くても大きな傷を与えるだろう。
一撃必殺と言う言葉がこれ以上なく似合う武器だ。
「これでよし…………きゃはきゃは」
一先ず笑ってみるが、今になって冷や汗が出て来る。
真後ろから、しかも身内と勘違いしていた様子だったから一発で殺そうとしたのに、初撃の威力を殺され反撃までされる所だった。
始終疑いを持たれずにそれだ。
もし途中で、ちょっとした事ででも疑われていたら、倒れていたのはどちらか分からない。
まあ勝負になっていたとしても勝算はあった。
姿から動揺を誘い、言葉巧みに揺さぶり逃げて、不意打ち。
過程方法問わなければ幾らでも勝ち得ただろう。
そう思っても、冷や汗が止まらない。
疑われなくて良かった。
そう、未だに思う。
「お、前……な……に、者」
「きゃはきゃは。生憎ながらおれはトキだぜ?」
「嘘、を」
「付くなって? おいおい、お前がそう思いたいだけだろう、零崎軋識さん?」
意地悪く言ってみると、軋識が震えた。
姿形はどう見ても双識のそれだが、偽者だと思っているはずだ。
そこで、そう思いたいだけだ、と言われればどうなるか。
笑いながら思い悩む軋識を眺める。
体がもはや殆ど動かず、顔を動かす位しか出来ない様子だ。
そんな苦悩と苦痛に歪む顔を見てて愉しいが、
520
:
神に十字架、街に杭
◆mtws1YvfHQ
:2012/05/13(日) 21:53:59
「――ま、そろそろネタばらししてやるか。確かにおれはお前の思ってる通り、零崎双識じゃねえぜ?」
言いながら創貴を窺う。
まだしばらくは起きそうにない。
その間に、力一杯使って地面に十字架を突き刺す。
軽い力でも押せば軋識に向かって倒れそうだ。
そうして、ゆっくりと、焦らすように軋識の後ろに回り込み、
「……おれの……いや……わたしの…………名前は…………あ。あー。よし……」
身体を弄くり、軋識の前に姿を晒す。
双識の姿ではなく、
「奇策士とがめだ」
紛れもない奇策士とがめの姿に変えて。
その姿で笑って見せる。
するとそこには、驚きのあまり目を剥いた軋識の姿が目に入る。
笑いが込み上げてきた。
心の底から可笑しさが込み上げてきた。
本当ならここでネタバラシと行こうと思っていたが、一つ、悪戯を思い付いた。
このままの調子で上手く行けば面白い事になる悪戯を。
「――いや、そんな、はずがあるか! とがめって、やつは、死んだはずだ!」
「んー、何で死んだって分かるんだ?」
「何で、も、何も、放送で……!」
言っている途中でその言葉は止まった。
軋識も言っている途中で気付いたようだ。
こっちも今まで思い付かなかった事だが。
「お前、まさか、不知火、って奴と……!」
「さあ、どうだろうな? きゃはきゃは」
苦しげに言うのを嘲笑う。
そう、放送の内容がすべて真実かどうかなど、放送で名前を呼ばれた奴が本当に死んでいるのかも、直接死体を見ない限り分からないのだ。
おれもついさっきまでその可能性には気付かなかった。
でもまああの二人は死んでるだろうなきっと。
さて、笑いながら様子をじっくり観察する。
何処まで真実か分からない不安定さ。
何を信じればいいか分からない不可解さ。
仲間だと思った奴が敵で。
その敵が死んだ筈の奴で。
混乱に混乱を重ねて正常な判断力を根こそぎ奪った今現在。
目に見えて、そして何より予想通り、面白い位に狼狽えている。
だけでなく、
「?」
何故か僅かな安心が見て取れた。
それに思わず首を傾げる。
「おい、とがめ」
「何だ、命乞いか? 何でも差し上げますってんなら聞いてやるぜ?」
「違う。一つだけ、聞きたい事がある」
「……聞いてやる理由がねえな」
「頼む――冥土の土産に、一つだけ、教えてくれ」
521
:
神に十字架、街に杭
◆mtws1YvfHQ
:2012/05/13(日) 21:56:27
冥土の土産。
あろう事かこの蝙蝠に冥土の土産とは。
折角最後まで意地悪く死なせようと思ったのに。
そう言われれば、
「きゃはきゃは……そう言われちゃ断れねぇな。何だよ」
「零崎曲識って、奴、は、生きて……るか?」
零崎曲識。
その名前は記憶にある。
放送で呼ばれた中にその名前があった。
つまり死んだはずの人間だ。
だがなるほど、目の前に死んだはずの人間がいる。
そしてそいつが不知火とか言う奴と仲間だとしたら、本当に死んだかどうか知っている。
とでも思った訳か。
「…………」
もちろんそんなの知らない。
今現在言った事だって嘘八百。
冷静に考えれば可笑しな所が幾つも考え付くほど分かり易い嘘だらけだ。
だが冷静に考えられるだけの時間は軋識に残ってない。
残すつもりもない。
ならばせめて真庭蝙蝠。
冥土の蝙蝠らしい答えに、
「……生きてるぜ」
嘘を一つ。
その嘘に軋識が目を閉じ、言った。
「最高の、土産、だ。ありがとう……っちゃ」
「どういたしまして。そしてさよならだ」
答えながら十字架を押す。
十字架はゆっくりと倒れて行き、
「すま、な、いっちゃ、レン。トキ。人識――申、し訳あ、りま、せん、暴く」
何事か呟いていた軋識を――――
目を開けると僕の目の前に、麦わら帽子を被り、血塗れの服を着た、零崎軋識が立っていた。
一瞬で全身総毛立つ。
「……蝙蝠か」
が、気付いた。
もし目の前にいるのが本当に軋識だとしたら、目を覚ませている訳がない。
そう言うと軋識が、いや、蝙蝠があからさまにつまらなそうな顔をし、舌打ちをする。
「ちったぁ焦れよ、つまんねぇな」
そして、
522
:
神に十字架、街に杭
◆mtws1YvfHQ
:2012/05/13(日) 21:58:33
「きゃはきゃは」
相変わらずの不愉快な笑い声を上げた。
そこまでしたのを見届け、気付けば、そして思わず、ため息を付いていた。
「ため息付くなよ。幸せ逃げるぜ?」
「これ以上逃げてたまるか」
別段蝙蝠が役立たずな訳ではない。
能力や性格性能含めたあらゆる要素のぶっ飛び具合は今まで会った大半の――会った事のある6人の魔法使いを含めた――中でも相当だ。
もしかしたら良くも悪くも五本指の中に入るかもしれない。
だけど、それでいても零崎軋識。
そのぶっ飛び具合は異常だった。
家族至上主義と言えばいいのか。
無差別殺人鬼と言えばいいのか。
釘バットを何の躊躇いもなく人間に、それに一応子供相手に振り下ろそうとした動作。
魔法と違って、飛び道具と違って、自己防衛のためと言う訳でもないのに、やらなければならない訳でもないのに、特に理由らしい理由もなく、本当の意味で自分の手で人を殺す動作を何の躊躇いも迷いもなく。
片鱗を見ただけでどれだけ危険か分かる。
だから正直不安だった。
果たして蝙蝠が騙し切れるか。
途中、騙す工程で必要だったんだろうが気絶させられるとは思ってなかっただけに。
目を覚ました時、目の前に血塗れの軋識の姿が目に入った時の恐怖は言い表せれない。
駒にこうも振り回されるのは難だが。
騙し切れて良かった。
「…………」
そう思う反面、惜しいとも思う。
あの異常なまでのぶっ飛び具合。
もちろん魔法使いではないにしても。
家族至上主義と言える考えを利用出来れば、そこそこ優秀な駒として使えたろうに。
後悔先に立たず、ではあっても。
例え蝙蝠と双識のの殺し合いが確定事項でありその時に僕が蝙蝠の手伝いをするのが確定事項でも。
例えその時に軋識が双識側に付くのが確定事項であっても。
過程までは駒として役に立っていた、かも知れない。
かも知れないに過ぎないが。
それに、あんな奴みんなを幸せにする上で障害にしかならなかっただろうが。
「……で、だ」
「あん?」
「気絶までさせといて何の情報もないでーす……なんて事はないよな?」
下を軽く出して、目だけ軽く上に向ける。
ペコちゃんか貴様。
顎を下から殴ってやろうかと考えるが、読まれたようで下を引っ込め少し真剣そうな表情をした。
「クラッシュクラシックは分かるよな?」
「ああ。それで?」
「どうもそこと零崎の奴らが関係してるみたいでな、あいつもまず行こうとしてたみたいだ。ま、おれにあったのが運の尽きだったって訳だが――きゃはきゃは」
「クラッシュクラシックか」
「笑えよ」
苛立った様子で舌打ちする蝙蝠をスルー。
付き合い過ぎると調子が狂う。
523
:
神に十字架、街に杭
◆mtws1YvfHQ
:2012/05/13(日) 22:00:03
「一番考えられるのは零崎の……曲識と関係ある場所何だろうな。だとしたら双識についても何か分かるかも知れないが……」
「今行くのは危険、ってか?」
揶揄するような蝙蝠の言葉を、若干気に入らないが、頷く。
もし他の零崎、と言っても残りは双識と人識だけのはずだ、が二人とも軋識と同じようにクラッシュクラシックに向かっているとすれば鉢合わせになる可能性が高い。
何時かは双識を殺す手伝いをするにしろ。
今、クラッシュクラシックに行くべきだとは言えない。
今は、まだ。
「いやいや」
と。
「いやいやいやいやいやいやいやいやいや」
と。
僕の考えに蝙蝠が首を振る。
「今だから、今だからこそ、行ける。
今、まだ二人が軋識が死んだって気付く前に、おれが軋識に成り代わってるって気付かれる前に、そう今の内なら仮に鉢合わせたとしてもすぐには気付かれねえ。
気付かれない内に殺せれば後がぐっと楽になる。
だからこそ今、クラッシュクラシックに行くべきだ」
釘バットを振り回しながら蝙蝠が言う。
それをただ、なるほど、と思う。
確かに蝙蝠の言葉にも一理ある。
そしてふと思う。
あるいはここが分岐点なのかも知れないと。
委員長としてりすかと出会ったように。
りすかと共にツナギと出会ったように。
あるいはここが大きな分かれ目になるんじゃないか。
「……一応聞くが」
「何だよ?」
「僕がどっちか決めたとしたら、お前は大人しく従うのか?」
自分で言いながら、その自分に思わず呆れる。
元々は裏切る前提で組んでいたはずなのに、どうにも蝙蝠の魔法が魅力的過ぎるらしい。
変身能力。
変態能力。
地球木霙、属性「肉」、種類「増殖」。
ツナギ、属性「肉」、種類「分解」。
単純に属性「肉」の二人と比べても、戦闘でこそ一歩以上引き離されそうだが、使える幅が広い。
なまじ戦闘に特化でないだけに、応用が利き易い。
利き易過ぎて、作戦に使い易い。
使い易過ぎて、まるで万能だ。
それこそ万能過ぎて、手に余らない。
「んー、どうすっかな」
「その場合、同盟を解消したいってんなら僕はそれでも構わないぜ?」
「行く気はないって訳か?」
「早まるな。あくまでそうなった場合は、だ。すぐ決めるにはメリットもデメリットも多い」
言いながらさり気なく蝙蝠の様子を観察する。
首を横に傾げ、目を閉じて、考え込む動作。
表情は相変わらずの笑いが貼り付いてるだけで、何も読み取れない。
関係ないが今の、華奢な男の、ガキ大将のような見た目とマッチしているようなミスマッチのような、微妙な表情。
524
:
神に十字架、街に杭
◆mtws1YvfHQ
:2012/05/13(日) 22:01:04
「ん?」
ガキ大将のような見た目。
零崎軋識の姿そのまま。
服装から武器、何から何まで軋識と全く同じ姿だ。
蝙蝠から目を離して辺りを見渡す。
までもなくすぐに、背中を十字架で貫かれ地面に縫い付けられた、裸でうつ伏せの男の姿が見付かった。
道具やら何やら所の騒ぎじゃなく、服までひん剥きやがったか。
やり過ぎだろ、とは思わない。
むしろどうせひん剥いたなら素性が分からないようとことんまで遣り尽くすべきだ。
「蝙蝠」
「……もうちょい待てって」
「違う。軋識の顔をしっかり潰しとけ」
「もうやってある」
何でもないように言って、こちらに向けていた目をまた閉じた。
「ふん……」
見えてなかっかったが抜かりがない。
優秀な駒だ。
逆に言えばそれだけクラッシュクラシックに行く気満々な訳だろうが。
「……蝙蝠、こんな所で考えてて鉢合わせしたら拙い。場所を移すぞ」
「おうよ」
すぐに答えは返ってきた。
考えていたのはあくまで僕を振り回すためのフリだったのか。
そう疑問を感じるほど、答えは早かった。
だとしたら扱い辛い駒だ。
それとも僕の言葉で危険性に気付いたか。
だとしたらまだ扱い易い駒だが。
死体に背を向ける形で足を進める。
数歩も行かない内に、蝙蝠が横に並んだ。
十字架は置いて釘バットで行くようだが、上手く扱えるのか。
そんな事を思いながら頭の中で地図を開く。
山の方向からして、一番近いのはマンションか。
「マンションで少し過ごすぞ。クラッシュクラシックに行くかどうかはその後に決める。良いな?」
「ま、良いんじゃねえか? きゃはきゃは」
変わらない、不愉快になる笑い声を聞きながら考える。
早い内にクラッシュクラシックに行くべきか、行かないべきか。
一先ずはそれを。
【零崎軋識@人間シリーズ 死亡】
525
:
神に十字架、街に杭
◆mtws1YvfHQ
:2012/05/13(日) 22:02:05
【1日目/午前/D-5】
【供犠創貴@りすかシリーズ】
[状態]健康
[装備]グロック@現実
[道具]支給品一式×2、ランダム支給品(0〜1)、銃弾の予備多少、耳栓
A4ルーズリーフ×38枚、書き掛けの紙×1枚、「診療所で見つけた物(0〜X)」、箱庭学園パンフレット@オリジナル
[思考]
基本:みんなを幸せに。それを邪魔するなら容赦はしない
1:蝙蝠とマンションに向かう
2:出来るだけ早くクラッシュクラシックに行くかどうか決める
3:りすか、ツナギ、行橋未造を探す
4:このゲームを壊せるような情報を探す
5:機会があれば王刀の効果を確かめる
6:蝙蝠の目的をどう利用して駒として使おうか
[備考]
※九州ツアー中からの参戦です
※蝙蝠と同盟を組んでいます
※診療所でなにか拾ったのかは後続の書き手様方にお任せします
【真庭蝙蝠@刀語】
[状態]健康、零崎軋識に変身中
[装備]愚神礼賛@人間シリーズ、軋識の服全て
[道具]支給品一式×2(片方名簿なし)、ランダム支給品(0〜4)、書き掛けの紙×1枚、ナース服@現実、王刀・鋸×1、諫早先輩のジャージ@めだかボックス
[思考]
基本:生き残る
1:創貴と行動
2:双識をできたら殺しておく
3:強者がいれば観察しておく
4:完成形変体刀の他十一作を探す
5:クラッシュクラシックで零崎について調べたい
6:行橋未造も探す
7:危なくならない限りは供犠の目的を手伝っておく
[備考]
※創貴と同盟を組んでいます
※現在、変形できるのはとがめ、零崎双識、供犠創貴、阿久根高貴、都城王土、零崎軋識、元の姿です
※都城王土の『異常』を使えるかは後の書き手の方にお任せします
※放送で流れた死亡者の中に嘘がかも知れないと思っています
※零崎軋識の死体はD-5にありますが、服がなく顔も潰されています
526
:
神に十字架、街に杭
◆mtws1YvfHQ
:2012/05/13(日) 22:04:35
死体が一つ。
顔の潰された無惨な死体。
しかしそれこそが、その死体の主のあるべき末路だったのかも知れない。
零崎の一賊でありながら《仲間》の一員である事を捨て切れず、《仲間》の一人でありながら零崎であった男の。
このような場所でどちらかに偏ろうとして、結局根本的な所で偏り切れなかった男の。
ずっと昔から決まっていた未来、なのかも知れない。
さてそこに一本残された十字架。
果たしてこれはどちらの十字架なのか。
《愚神礼賛》の十字架なのか。
『蠢く没落』の十字架なのか。
いや、結局どちらとも言えないだろう。
誰かも分からない骸と十字架。
それだけ。
それだけが、残された。
527
:
◆mtws1YvfHQ
:2012/05/13(日) 22:10:39
以上です。
可笑しな所や矛盾点などがあればお願いします。
以上ですのでどなたか代わりに投下の方をお願いします。
では失礼
528
:
誰でもない名無し
:2012/05/14(月) 01:28:35
投下乙です
大将があぁー!!
でも最期の嘘で零崎らしく笑って死ねたんですかね…
指摘点が2つあるのですが、
>>516
の、今この苛立ちに流されれば今度こそ、蝙蝠、とか言う奴と思われるかも分からない
とありますが軋識は蝙蝠のことを知らないはずでは?
それと、
>>520
で、放送で名前を呼ばれた奴が本当に死んでいるのかも、直接死体を見ない限り分からないのだ
とありますけどとがめに限っては不要湖で死体を見ていると思うのですが…
それ以外はこれといって疑問に思う点はなかったです
改めて軋識に合掌
529
:
◆mtws1YvfHQ
:2012/05/14(月) 23:21:46
どうも。
>>516
は単純にミスです。
申し訳ございませんが次のレスで修正版を投下します。
>>520
は蝙蝠が内心で焦る描写を突っ込んだりと考えていただけで突っ込み忘れていました。
修正させていただきました物を投下します。
投下してくださる方がおられましたら二つを下のものと入れ替えて置いて下さいますようお願いします
530
:
>>516修正版
◆mtws1YvfHQ
:2012/05/14(月) 23:23:23
「レン!」
「近寄るな!」
「ッ!」
何故、『家族』に武器を向ける。
何故、『家族』に殺意を向ける。
何故、何故、何故。
どうして。
「また似たような手で騙せると思ってるのか貴様は!」
「……は?」
「今度はなんだ? 正面から不意討とうって魂胆だろう。違うか!?」
「お、おい、落ち付くっちゃ!」
どうして。
どうにも妙な事になっている。
俺が誰か分からないのか。
『呪い名』に何かされた訳でもあるまいし。
いや、ざっと見ただけで定かではないが、確か、あろう事か、あの名簿には、『時宮』の名前があったはずだ。
もしかしたら、そう言う事なのか。
「――落ち付け、レン。俺は他の誰でもない、『呪い名』の野郎共じゃない、紛れもなく、零崎軋識だっちゃ」
「……悪いがまだ信用ならないな」
「だったら何を言えば良い?
お前は《自殺志願》を使わない方が圧倒的に強い事を言えば良いのか?
お前の特技がコサックダンスだって事を知ってるって言えば良いのか?
それとも……それともお前がかなりの変態だって事を知ってれば良いのか?」
「…………おい」
「事実だろ」
そこまで言ってようやく、顔が引き攣らせてはいるものの、十字架を下ろした。
後ろの子供を守るように。
言い様のない苛立ちが湧き起こるが、堪える。
今この苛立ちに流されれば今度こそ本当に偽者と思われるかも分からない。
それに少し前まで人の事を言える立場じゃなかった。
歯を食い縛り、何とか堪えた。
「――――それより、その、子供は、なんだ?」
堪えた、と言ってもまだ残っている。
心の奥底から未だに湧きつつある不満。
それが言葉を途切れ途切れにさせていた。
何とかそれ以上何も出ないように押し留め、睨み付ける。
レンは肩を竦めた。
「何って、協力者に決まってるだろう?」
「協力者だぁ?」
事もなげに協力者と言った。
よりにもよって、『家族』が殺されたにも関わらず、協力者。
こいつは一体、何を言っている。
何故殺してないかと思えば協力者。
この場所にいると言う立派な関係者なのにも関わらず協力者などと温い事を言って、殺していない。
思えば思うほど、考えれば考えるほど、
531
:
>>520修正版
◆mtws1YvfHQ
:2012/05/14(月) 23:31:09
「――ま、そろそろネタばらししてやるか。確かにおれはお前の思ってる通り、零崎双識じゃねえぜ?」
言いながら創貴を窺う。
まだしばらくは起きそうにない。
その間に、力一杯使って地面に十字架を突き刺す。
軽い力でも押せば軋識に向かって倒れそうだ。
そうして、ゆっくりと、焦らすように軋識の後ろに回り込み、
「……おれの……いや……わたしの…………名前は…………あ。あー。よし……」
身体を弄くり、軋識の前に姿を晒す。
双識の姿ではなく、
「奇策士とがめだ」
紛れもない奇策士とがめの姿に変えて。
その姿で笑って見せる。
するとそこには、驚きのあまり目を剥いた軋識の姿が目に入る。
笑いが込み上げてきた。
心の底から可笑しさが込み上げてきた。
本当ならここでネタバラシと行こうと思っていたが、一つ、悪戯を思い付いた。
このままの調子で上手く行けば面白い事になる悪戯を。
「――いや、そんな、はずがあるか! とがめって、やつは、死んだはずだ!」
「んー、何で死んだって分かるんだ?」
「何で、も、何も、不要、湖とか、言う、場所、に、死体があっ、た!」
こいつ、もう死体見てやがったか。
しかも丁度よりにもよってとがめの野郎の死体を。
仕方ない、もうバラすか。
いやいやだが待て。
「死体を見た」って事は、実際に殺した訳でもなけりゃあ話した訳でもない訳だ。
ならばここはあえて押してみるべきか。
「へぇー。それは本当に、このわたしだったのかな? んん?」
「当然、だ! それ、に、放送で……!」
言っている途中でその言葉は止まった。
軋識も言っている途中で気付いたようだ。
こっちも今まで思い付かなかった事だが。
「お前、まさか、不知火、って奴と……!」
「さあ、どうだろうな? きゃはきゃは」
苦しげに言うのを嘲笑う。
そう、放送の内容がすべて真実かどうかなど、放送で名前を呼ばれた奴が本当に死んでいるのかも、直接死体を見ない限り分からないのだ。
おれもついさっきまでその可能性には気付かなかった。
でもまああの二人は死んでるだろうなきっと。
さて、笑いながら様子をじっくり観察する。
何処まで真実か分からない不安定さ。
何を信じればいいか分からない不可解さ。
仲間だと思った奴が敵で。
その敵が死んだ筈の奴で。
混乱に混乱を重ねて正常な判断力を根こそぎ奪った今現在。
目に見えて、そして何より予想通り、面白い位に狼狽えている。
だけでなく、
「?」
何故か僅かな安心が見て取れた。
それに思わず首を傾げる。
「おい、とがめ」
「何だ、命乞いか? 何でも差し上げますってんなら聞いてやるぜ?」
「違う。一つだけ、聞きたい事がある」
「……聞いてやる理由がねえな」
「頼む――冥土の土産に、一つだけ、教えてくれ」
532
:
◆mtws1YvfHQ
:2012/05/14(月) 23:32:57
以上が修正版になります。
ではまたどこか可笑しな所などがあればお願いします。
失礼
533
:
◆mtws1YvfHQ
:2012/05/30(水) 22:32:37
まずはじめに、前回代わりに投下して下さった方、ありがとうございます。
今回も規制中のようなのでこちらの方に投下させていただきます。
それでは、黒神真黒の投下を始めさせていただきます。
534
:
多問少択
◆mtws1YvfHQ
:2012/05/30(水) 22:33:49
問題が多過ぎる。
喜界島さんの不参加。
阿久根君の早過ぎる死。
唯一の望みは人吉君のみ。
めだかちゃんを、僕の妹を、元に戻すだけで山積みしている問題。
しかしそれらを一度整理して歯を食い縛る。
先手を打たれた。
そう思うしかできなかった。
今更何を言っても意味はない。
「くそっ!」
ゆっくりと行動し過ぎた。
実力があるから大丈夫だろうと、三人を探しているつもりで探していなかった。
その結果が、阿久根君の死だ。
だけど嘆いていても仕方がない。
きっぱり諦めて、見付ければ弔ってあげる位で済ませよう。
しかし、悔やまれるのは一番最初の禁止エリアに箱庭学園が選ばれるのを考えてしかるべきだったのに、ゆっくり歩き過ぎた事だ。
今からでも一時間あれば着けると思う。
だが不知火理事長に会うには十分な時間があるかと言えば、ない。
理事長室にいるかも知れないが、僕のような者が他にいるかも知れない事を考えれば、いない可能性の方がよっぽど高い。
そうなれ探さざるを得ないが、探すには時間が足りない。
過ぎた時間は戻らない。
どれだけ悔もうと意味はない。
どれだけ悔いようと甲斐はない。
「くそっ! くそっ!」
箱庭学園に行っても不知火理事長には会えそうにない。
人吉君が死ねばめだかちゃんを戻せる可能性はほぼない。
ならどうするべきか。
人吉君を探す。
それが最良の選択だ。
めだかちゃんを元に戻すための最良の選択。
だけど困った。
人吉君ならきっと、めだかちゃんがいると知ればめだかちゃんを探すだろう。
暴走していると分かっていても、そう動く。
「……どうする」
あえてめだかちゃんと着かず離れずにいるべきか。
それとも、それでも、人吉君を探してみるか。
殺されるリスクを負ってでも。
殺されてるリスクを負ってでも。
どちらにしろ危うい。
選び難い。
「どうするっ!」
535
:
多問少択
◆mtws1YvfHQ
:2012/05/30(水) 22:36:18
戻せなくなれば、あるいはこの手で、止めなければならなくなるのか。
愛しき妹をこの手で。
あるいは仲間を集めてでも愛しい妹を。
「――――」
いや、焦るな。
焦るべきじゃない。
人吉君が見付からないと決まった訳じゃない。
めだかちゃんより先に見付けさえすればきっと。
そう、まずは人吉君を見付けられれば良い。
それが出来さえすれば希望はある。
僕一人では難しいけどきっと。
「きっと、助けてみせる!」
待っててくれめだかちゃん。
頼むから見付かってくれ人吉君。
きっと戻して見せるから。
僕が。
いや、人吉君と僕とできっと。
『理詰めの魔術師』の名に掛けて。
【一日目/朝/C−4】
【黒神真黒@めだかボックス】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、ランダム支給品(1〜3)
[思考]
基本:めだかちゃんを改心させ、不知火理事長に会う。
1:めだかちゃんを直すために、人吉君を見付け出す。
2:万が一に備えて組めそうな相手も探す。
3:人吉君まで死んだら……?
[備考]
※「十三組の十三人」編のめだかちゃん(改)と人吉善吉が戦っている途中からの参戦です。
536
:
◆mtws1YvfHQ
:2012/05/30(水) 22:39:49
短いですが以上となります。
どこか可笑しな所などがあればお願いします。
申し訳ないですが、以上をどなたか本体の方にお願いします
537
:
誰でもない名無し
:2012/05/30(水) 23:01:16
投下乙です
真黒さんの目的は全部結果(禁止エリア、善吉死亡、めだか元通り)が出ちゃってるからなあ…
全てを知ったときどうなるか怖いw
本スレへの代理投下も完了しました
538
:
◆8nn53GQqtY
:2012/08/27(月) 23:09:01
本スレは規制中ですのでこちらに投下します
どなたか代理投下お願いします
539
:
marshmallow justice
◆8nn53GQqtY
:2012/08/27(月) 23:11:11
【0】
手をつなぎ、どこまでも行こう。
君となら、どこまでも行ける。
【1】
「そうだね、復讐なんかしても病院坂両名は喜ばないね。僕はもう復讐なんて愚かしいことは考えないよ」
「いーや、嘘だっ! 誠意がない。あたしの会話をめんどくさそうに打ち切ろうとするときの兄ちゃんと同じ目をしてる!」
「そう言う火憐さんは、僕の妹に全然似てないね」
がれきの山のうちのひと山を椅子にして、火憐さんと櫃内様刻君は言い争っていた。
より正確に言えば、火憐さんが櫃内君に復讐なんて止めろと滔々と説教を垂れ流し、
櫃内君は、うんざりとした顔で会話を終わらせる機をうかがっている。
ちなみに、櫃内君の頭には巨大なこぶがある。たまに、蹴りを入れられた部位であるお腹を押さえている。
誰がそれらの攻撃をしたのはについては、説明するまでもないだろう。殺したい。
無桐伊織さんは、『まだ終わらないんですかー?』という顔で、投棄された丸太の上に座って足をぶらぶらさせている。
いや、表情だけではなく、実際に言葉に出してそう言おうとしていた。
けれど、櫃内君が火憐さんの腹蹴りで強制的に黙らされて説教を聞く流れになってからは、ぴたりと大人しくしている。
時折、思い出したように凶悪な殺気を見せるというのに。凶暴なのか臆病なのかよく分からない女の子だった。殺したい。
僕――宗像形としては、立場はあくまで火憐さんの味方、心情としては中立寄り、といったところだ。
確かに僕は火憐さんの正義に感銘を受けているけれど、万人がそうではないと分かるぐらいの客観的判断力はあるつもりだから。
よって、櫃内君をそこまで非難するつもりはない。殺したい。
540
:
marshmallow justice
◆8nn53GQqtY
:2012/08/27(月) 23:12:02
僕ら二人と二人が出会ったのは、分岐点で進路を決めてからほどなくのこと。
左右の景色が、がれきの山に変わった頃合いだった。
ゆるやかにカーブを描くがれきの山に視界が遮られて、互いの気配に気づいたのは割合と近づいてからだった。
もちろん二人組だからといって殺し合いに乗っていないグループだとは断言できない。
ましてや二人組の女性の方からは、あの零崎軋式と同じ空気がした。
つまりは、危険人物の匂いだ。
というか、参加者詳細名簿にも危険人物だと書かれていた。
けれど、火憐さんはそういう見た目(?)で人を判断するタイプではないし、その女性――無桐伊織も、全くの無警戒でこちらに声をかけてきた。
その呑気さは演技には見えないから、強者の余裕なのか――あるいは、あまり空気を読めるタイプではないのか。
ともかく、ファースト・コンタクト自体は穏便に運んだ。
自己紹介もそこそこに、僕と火憐さんは、彼らがたどった経緯について聞きたがった。
無桐さんと櫃内君は、まず『零崎人識』と『時宮時刻』に会わなかったかと聞いてきた。
僕たちは、そんな二人は知らないと言った。
いや、正確に言えば『零崎軋式』という男には会ったのだけれど、伊織さんはそちらにはあまり関心がなさそうだった。
その人物とはどういう関係なんですかと、僕は尋ねた。
詳細名簿から、無桐さんと『零崎人識』が家族であることは知っていたけれど、櫃内君と時宮時刻との間に繋がりはなかったはずだから。
櫃内君は、大事な人とその縁者を殺した仇であり、復讐を果たすつもりだと答えた。
そんなことをあっさりと明かしてくれたたことは迂闊だったけれど、櫃内君にそこまで落ち度はない。
一般人である櫃内君の目にも、僕が無桐さんと似た、しかし彼女より分かりやすい殺意を持っていることはすぐばれる。
そんな僕と普通に同行している火憐さんも、『そちら側』に慣れていると思い込んでも、無理はないだろう。
殺人を日常茶飯事におく人物ならば、復讐殺人についてとやかく言われることはあるまい、と。
しかし火憐さんはもちろん、『復讐による殺人』を見過ごすような人ではなく――今に至るということだ。
「お兄さんが死んでも復讐に走らない火憐さんは、とても立派だと思うよ。
けど、自分が立派なことをしているからって、そのやり方を僕にまで押し付けないでほしいな」
「兄ちゃんは関係ないっ……! いや、あたしだって兄ちゃんが死んだ時はすげー悲しかったし、あんたと境遇は似てるって思ったけど……!
でも、兄ちゃんのことがなくたって、あたしはあんたを止めようとしてる!」
「火憐さん」
「どうした、宗像さん」
541
:
marshmallow justice
◆8nn53GQqtY
:2012/08/27(月) 23:12:55
どうやらこの説教はまだしばらく続きそうだぞ、というタイミングを見計らって、僕は声をかける。
正直、お兄さんが死んだ直後の火憐さんを知っている僕としては、彼女の肩を持ちたかったのだけれど。
「この分だと、櫃内君を説得するのにはもう少し時間がかかりそうだよね。
だからその間に、僕は無桐さんと情報交換を済ませておくよ。ちょうど僕らが向かおうとしてる方角から来たんだから、何か分かるかもしれないし」
「おお、それもそうだな。んじゃ、情報交換は任せるぜ! 近くで怒鳴られると迷惑だろうから、あたしらはその辺をぶらついてくるよ」
「うん、何かあったら無茶しないで戻って来てね」
「あたし『ら』って、僕の意思はないんだね……」
本当ならこちらからそれとなく距離を取ろうと思っていたのに、気づかいまでしてくれた。
僕の言動をそのまま信じ込んで櫃内君を引きずって行く火憐さんに対して、罪悪感を覚える。
けれど、探していた人物――無桐伊織――と二人きりになれた高揚感の方が、その時の僕には勝っていた。
「えーと宗像形君でしたっけ。もしかして様刻君たちって、人払いされました?」
どうやら、いささか露骨だったようだ。
ひたすらぼーっとしていた無桐さんも気づいたというのに、気づかなかった火憐さんはよほど素直ということなのだろうか。
「うん。火憐さんには、知られたくないことだから」
「うな? 何やらプライベートなご相談ですか?」
どこにでもいそうな――いや、両手が義手だということ以外は、特異点のない女の子に見える。
感じる殺気は、零崎軋式や僕の持つそれと比べると小さいけれど、それは決して『弱い』という感じではない。
言うなれば、『抑え込んでいる』という感じがする。爪をひっこめている猫のような。
だから、無桐さんのそんな姿が、僕に期待を抱かせた。
もしかしたら。
「君の《家族》について、教えてほしいんだ」
もしかしたら――僕の《殺人衝動》を抑える方法が、分かるかもしれない。
542
:
marshmallow justice
◆8nn53GQqtY
:2012/08/27(月) 23:13:48
【2】
「殺人衝動を抑える方法? そんなものありませんよぅ」
ばっさりと。
いとも簡単に、僕の――宗像形の願望は否定された。
「そんな方法があるんだったら、教えてほしいぐらいです。
私も人識くんも、哀川のおねーさんに怒られなくて済むじゃないですか!」
うん、もしかしたら、という期待ではあったけれど。
それでも、ここまでばっさり切られると……堪えるものはある。
いや、だけど。
確かに僕も、ちょっと楽観的な可能性かもとは思っていたけれど。
それにしたって、“全く”方法がないってことは、無いんじゃないのか?
生きてれば、衝動を抑えなきゃいけない時ぐらいあるだろう?
「そうなったら、ひたすら我慢するんですよ。現に、今の伊織ちゃんが正にその状態なんですから」
義手でぽんぽんと自分の胸を軽くたたいて、無桐さんはあっけらかんと答えた。
……うん、実際僕だって今まで我慢してこれたんだけど。
けど、それにしたって、限度ってものがあるだろう?
僕は、いつ本当に人を殺してしまうか、不安で仕方がないんだぞ?
そんな痩せ我慢みたいな方法で、まともな人生を送れるものなのか?
「はい、支障があるのが普通ですよね。だから零崎一賊って、みんな短命なんですよ――これは人識君からの受け売りなんですけど。
でも、まともに生きるのなんて無理だと思いますよ? だから新しく『家族』を作っちゃうわけですし」
あっけらかんと語る火憐さんに、僕が感じたのは違和感だった。
そりゃあ、軋式のようなとんでもない『異常性』があれば、社会生活から外れようと、短命なりに生きていけるのかもしれない。
だけど、そのあっけらかんとした様子に、違和感があった。
この人たちは、殺しながら生き続けなければならない人生に、何の疑問も抱いてないのか。
人間は、殺したら死んでしまうじゃないか。
死んだら、取り返しがつかないじゃないか。
なんでそんな、曇りの無い顔ができるんだろう。
「もしかしてあなた――まだ、人を殺したことがありません?」
ぎくりとしたけれど、肯定するしかなかった。
確かに僕は、まだ一線を踏み外してはいない。
「あーなるほどなるほど。だったら、『そのせい』かもしれませんね。
伊織ちゃんが目覚めたのも、最初に人を殺した時でしたから。
罪悪感がさっぱり湧かなかったから、自分でも不思議でしたね、あの時は。
人識君は、それを『零崎化する』と言っていましたが」
どうやら殺人経験の有無が、ポイントになるらしい。
ならば、もし僕が、本当に人を殺す時が来れば。
その時の僕は、『殺したら死んでしまう』ことにも、罪悪感を抱かなくなるのか?
それは、楽になれるということなのか?
543
:
marshmallow justice
◆8nn53GQqtY
:2012/08/27(月) 23:14:30
だけど、それは悲しくないのか。絶望しないのか。
人を殺しても何とも思わない人間になるんだぞ?
それが、人でなしじゃなくて何なんだ。
「じゃあ、『私はそうじゃないんだー』って意地を張って、目を逸らしたら幸せになれるんですか?」
火憐さんは、真剣な面持ちに豹変してそう言った。
「自分の本質を否定したら、……それって『逃げた』ってことですよね。伊織ちゃんは、逃げたくありません。
殺人を我慢するってことと、自分を否定するってことはまた別なんです」
そうきっぱり言い切る無桐さんは、空気の読めない異常殺人鬼の顔ではなく、しっかりと自分の考えを持った少女の顔に見えた。
だからこそ、心が痛い部分もあった。
僕はずっと人間を『殺したい』と願い続けて来た。
だから『殺人鬼』だと悪ぶってきた。
けれど、『人殺し』と言われると『僕だって本当は死なせたくないのに』と忸怩たる思いをする時があった。
僕は本当はそうじゃないのだと、主張したいような。
だから、逃げだと指摘されたら、否定できないのだ。
「もしあなたが目覚めて、それが『零崎化』と呼べるものだったら、家族として迎え入れる準備はありますよ?」
無桐さんはそう言った。
それは何の打算もなく、ただ好意からそう言ってくれたように見えた。
零崎に、なる。
それは、人殺しになっても、それなりに幸福な人生を送れるということ。
『家族』という理解者がいて、引け目のない人生を送れるということ。
『逃げ』をしなくても、いいということ。
真摯な無桐さんの目を、僕はもはや『異常者』と見ることはできなかった。
けれど。
そうなったら、火憐さんとは相いれなくなる。
未だに僕は、火憐さんに“殺人衝動”のことを打ち明けていない。
似た者同士である無桐さんや軋式の前では披露したけれど、最も長く共にいる彼女に話すことは恐れている。
それを告げたら、関係が終わりになってしまうかもしれないと恐れている。
“ついて行く”と言いながら、彼女のことを信頼していないのかと見做されてもしかたがない。
けれど、火憐さんだからこそ、打ち明けるのには勇気が要った。
それは火憐さんが『正義の味方』であり、悪を憎んでいるからだ。
人間を殺したいと考えている人間は、果たして悪の側に分類されるのかどうか。
簡単だ。まぎれもなく悪だ。
悪であるからこそ、火憐さんは『人を殺そうとしている』様刻君に対して怒っているのだから。
人を殺したくて殺したくてたまらないなんて、そんな気持ちが『正義の味方』に理解されるかどうか――
544
:
marshmallow justice
◆8nn53GQqtY
:2012/08/27(月) 23:15:30
「あのー。こんなこと言っちゃうと、また『空気読めない』って言われそうですけど」
その時だった。
真摯な表情はなりを潜め、おずおずとした顔で、伊織さんは斬りだした。
火憐さんたちが出歩いていった方角の、曲がり角を指差して。
「さっきから、様刻君たち二名に立ち聞きされてるみたいですよ?」
【3】
阿良々木火憐による、櫃内様刻を更生させようという試みは、そう長くかからなかった。
何故なら、そう遠くに歩かないうちに、死体と出くわしてしまったからだ。
それは、火憐がこの殺し合いで最初に――宗像形と同時に見かけた少女だった。
そこにある所業は、一言で言えば滅多刺し。
ボロボロに裂けた豪華絢爛な着物。
内蔵は、バラバラに散乱し。
両腕はなくなっていた。
しばらく、言葉もなく立ちつくす二人。
櫃内様刻は、見るに堪えない姿に顔をそむけ。
そして阿良々木火憐がしたことは、膝をついての謝罪だった。
「ごめん……助けてあげられなくて、ごめん……」
涙を含ませた声で懺悔をする少女を、様刻は複雑そうな面持ちで見下ろす。
しかし火憐としては、探していた少女が遺体で見つかったとなれば、様刻を相手にするどころではない。
宗像形に報告して、そして二人で彼女の遺体を埋葬しようと決めた。
芯が強くとも人間強度は決して強くない火憐が、そうやって気持ちを切り替えられたのは、
それだけ彼女が宗像形を頼りにするようになっていたことの証左かもしれない。
実のところ、宗像形はとがめの名前を知っていたので、放送の時点で死亡を知っていたのだけれど、阿良々木火憐にそのことを言っていなかった。
なので、火憐としては気が重い報告を抱えて戻り、宗像らのいた一角まであと一つだけ曲がるというところまで近づいて、
「僕は――君と同じ、人を殺したくて殺したくてたまらない人種なんだ」
そんな重たいことこの上ない告白を、漏れ聞いてしまった。
その告白は、信頼を置く宗像形のもので、火憐はそこで立ち止まってしまう。
どうやら二人は、『殺人衝動』なるものについての議論を交わしているようだった。
殺人を何とも思っていない伊織の言動に、火憐はムッとして飛びだそうとしたが、
「でも、今は人を殺さないように我慢してるんだろう?」
「あ、そりゃそうか……」
様刻の言葉で、すぐに鎮火した。
阿良々木火憐の成すことはあくまで正義の味方であって、罪人の糾弾ではない。
伊織が殺人を我慢するというのならば、討伐する理由は何もないのだ。
545
:
marshmallow justice
◆8nn53GQqtY
:2012/08/27(月) 23:16:12
やがて無桐伊織は宗像形の質問に全て答え終わり、宗像形は『家族になってもいいよ』と勧誘された。
宗像が長考する気配が、廃墟の壁越しに伝わる。
「割って入らないのかい?」
「割って入る?」
「君の同行者、殺人鬼の道に誘われてるぜ? 僕にしたように、止めなくていいのかい?」
「んー……」と阿良々木火憐は難しい顔で唸る。
しかし、はっきりとした言葉で答えた。
「まずは、宗像さんの答えを聞いてからにする。
宗像さんは、『正義の味方』のあたしに『ついて行く』って言ってくれたんだ。
宗像さんに『行くな』って怒るのは、その言葉を信用してないってことじゃないか」
そう答えた時だった。
「さっきから、様刻君たち二名に立ち聞きされてるみたいですよ?」
火憐は、ぎくりと凍りつく。
様刻は、そりゃばれるよね、と肩をすくめた。
自分の悩みでいっぱいいっぱいの宗像とは違って、伊織には余裕がある。
そして伊織は駆けだしとはいえ『プロのプレイヤー』であり、一方の火憐と様刻は一般人に過ぎないのだから。
ぎくしゃくとした足取りで、火憐は宗像らの前に姿を現した。
いくら『宗像を信じている』と発言したところで、『立ち聞きがばれた』というシチュエーションならば罪悪感はある。
ましてや、火憐はそういう状況で悪びれることができるほど強かな性格ではない。
そして、硬直という意味では、宗像はそれ以上だった。
最もばれたくないと思っていた自らの悪徳を、最悪のタイミングで知られてしまったのだから。
周囲への警戒も忘れて、火憐の目をただただ凝視する。
不可抗力の連続した結果、その場には重苦しい沈黙が横たわった。
だから、
「人間・認識」
546
:
marshmallow justice
◆8nn53GQqtY
:2012/08/27(月) 23:17:08
火憐のはるか後方で様子をうかがっていたその『人形』を、彼らはその宣告がなされるまで、気付けなかった。
【4】
いくら殺人経験のない殺人鬼と、素人の殺人鬼とはいえ、奇襲の可能性を考慮できないはずがない。
だから、ガラクタの山に囲まれた、見つかりにくい場所で話し合っていた。
しかし、その『刀』が持つ視覚であるセンサーは、人間ならば見逃すほどの隙間から微かに除く、人間特有の生命反応を、見逃さなかった。
「即刻・斬殺」
宣言と共に、人間と人形を遮る、小さな掘っ立て小屋のがれきが吹き飛ばされる。
火憐はとっさに、様刻の襟首をつかんで横っ跳びに回避した。
いくら火憐がけんかっ早いとはいえ、この状況でもっとも弱者である様刻をまず守ろうとする。
「ぐえぇ……」
「なんだありゃ?」
息をつまらせる様刻と、疑問の声を上げる。阿良々木火憐。
舞いあがる埃の中から姿を見せたのは、四本の足に四本の腕、四本の刀を持つ可愛らしい顔立ちの人形だったのだから。
「――呆けてる場合じゃなかったね」
一歩前に出て、人形に対峙する構えを見せたのは――宗像形。
がれきの破壊から、人形が危険なのは明らかであり、なおかつ人間でないならば、躊躇する理由はどこにもない。
「刺殺――いや、この場合は、圧殺かな?」
その両手には、何時のまにやら取り出された暗器である、千刀。
それを宗像は、一直線に投擲した。
四本の刀のうちの日本で、それを難なく弾き落とす、人形――日和号。
ぎょろりとした目が、宗像をとらえる。
それは、標的を一般人二人から宗像に変更したということだった。
「反撃・開始」
「残念、まだこっちの攻撃は続いてる」
547
:
marshmallow justice
◆8nn53GQqtY
:2012/08/27(月) 23:18:06
しかし、宗像の攻撃はそれにとどまらない。
「ストックは、まだ数百本あるからね」
暗器を出現させ、投げる。
宗像形は、これを一瞬で行える。
一瞬で、連続して、取り出しては投げられる。
投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる
投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる
投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる
投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる
投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる
投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる
投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる
投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる
投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる
投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる
零崎軋式に対して行使したのと同じ、『鎩』による物量攻撃。
ただし、直接に切りつけるのではなく、投擲による集中砲火。
からくり人形ならば、肉体強度はそれほどでもあるまいと、質量攻撃を狙ったこともある。
数百本の刀は、もはや『壁』のような剣山となって、人形を蹂躙せんと飛来する。
日和号は、感情の宿らない無機質な目でそれを観察し。
――新たな言葉を、発した。
「人形殺法・旋風」
四本腕の刀を、プロペラのような形に集約させる。
次の刹那、その四枚羽根からまさしく旋風が放たれた。
「なっ……!?」
高速回転による推進力で、人形は千刀を小枝か何かのように巻き上げ、叩き落とし、散らしながら一直線に突進した。
刀の幾本かは、その風圧だけでばらばらに吹き飛ばされた。
障子紙のように容易く、千刀の『壁』が、突き破られる。
圧倒。
人間相手を想定した技術が、通じない規格外。
それが、宗像形を目指して襲来する。
548
:
marshmallow justice
◆8nn53GQqtY
:2012/08/27(月) 23:18:51
宗像は、見る見ると距離を詰める化物に畏怖を覚える。
しかし、そこで退避ができないほど素人ではない。
こいつに、迎撃の構えを取るのは危険だ。勘がそう言っている。
だから、回避するしかない。
この至近距離でも、己のスピードならそれができると判断して――
――しかし。
宗像形の後ろに、判断に迷う無桐伊織がいた。
“人形”という殺意を持たない敵であるがゆえに、日和号との相性が悪い“センスだけの素人”が。
もちろん、宗像形はそこまで知らない。
そもそも、彼女をかばうほどの絆は二人にない。
同族かもしれないとはいえ、ついさっき出会ったばかりの相手なのだ。“零崎”同士でもない限り、身を挺して守りたいとは思わない。
しかし、それは『いつもの癖』だった。
人間を『殺さないように』と、人一倍に配慮してきた癖。
敵に捌かれた武器でさえ、人に当たって二次被害を出さないようにと、心がけてきた癖。
それが、宗像形の足を止めた。
『避けることで、他の人間が死んでしまうかもしれない』というリスクに対して、躊躇した。
――避けられない。
その躊躇いをとらえた日和号の視覚は、それを『かっこうの隙』だと判断する。
四本足の一本を視点として、宗像形の眼前で着地。
旋風の勢いを殺さぬまま、刀を横凪ぎに高速回転させて迫る。
元より宗像形、『暗記の扱い』と『殺し方』には長けていても、『戦闘スキル』自体はそこまで高くない。
飛来する『鍛』を全てしのぎ切る相手と斬り結べるような技能は、ない。
549
:
marshmallow justice
◆8nn53GQqtY
:2012/08/27(月) 23:19:41
四本の刀が振りかぶられ、次の瞬間にそれが肌を切り裂くことを宗像は理解する。
目と鼻の先で、殺人人形は死刑宣告をした。
「人形殺法――」
目を閉じた。
ああ、これで終わるのか。
殺してしまうかもしれない人生だったけど、もう少し生きたかったな。
「宗像さんっ!!」
どん、と。
体に、真横からの衝撃が加えられた。
柔らかい、女の子の手だった。
その手に、突き飛ばされていた。
まさか、と思った。
そんなこと、あるはずがない。
もっと言えば、『彼女』が、自分の正体を『殺人鬼』なのだと知って、その上で庇うはずがない。
宗像は、目を開けた。
刀で突き殺そうとする人形と、殺されようとする宗像形の間に、割り込む少女の姿がそこにあった。
「台風」
まぎれもなく、阿良々木火憐だった。
550
:
marshmallow justice
◆8nn53GQqtY
:2012/08/27(月) 23:20:45
【5】
血しぶきが、視界に焼きつく。
幾重にも斬りあげられて、火憐さんは空中を舞った。
頭が、真っ白になった。
その瞬間、僕は自分がどんな言葉を叫んだのか覚えていない。
ただ、我を忘れた僕は、それでも憎き人形を攻撃するより火憐さんの安全確保を選んだらしい。
舞い落ちる、火憐さんの体を追った。
その体を、ぎゅっと受け止めた。
ずたずたに引き裂かれ、赤く濡れた火憐さんを目にした。
息は、あった。
死なせたくない、と逃げた。
無桐さんは、その数秒の間に、櫃内君を回収して、僕の後に続く。
とはいえ、僕こと宗像形のスピードにはついて来られず、どんどんその姿は小さくなっていった。
不要湖の出口まで到達して、僕は火憐さんを降ろした。
火憐さんのディパックから支給品を探り、治療道具がないかを調べようとする。
その時、火憐さんの胸元から、ごぼりと血が噴き出したのを見てしまった。
傷口が肺にまで到達しているのだと、僕はその裂傷を見て理解する。
「なんで……?」
つまり、手遅れだった。
致命傷だった。
死んでしまう、傷だった。
火憐さんは、そんな作業に焦る僕を、虚ろな目で見上げていた。
苦しげな呼吸音と共に、その唇がたどたどしく動く。
「あー……むな、かた…………さん?」
喋らないでと、そう言おうとした。
けれど、僕の口は、違う言葉を言っていた。
「なんで助けたんだい……僕は『殺人鬼』なのに」
答えを求めていたわけではなかった。
答えられるだけの意識が残っているとは、思えなかったからだ。
551
:
marshmallow justice
◆8nn53GQqtY
:2012/08/27(月) 23:21:32
「ううん……まさか」
そう、思っていたのに。
がしっと。
火憐さんの手が、僕の手をつかんだ。
「宗像、さん…………わるい、ひと、じゃ……なぃ」
その手の温度は、熱かった。
死にかけているとは思えないぐらい、熱かった。
命が、燃えているみたいだと思った。
理由があるんだよ、と。
火憐さんはそう言った。
「あたしは、何があっても……宗像さんの、味方、だから……」
燃える、この温度に。
溶ける、その答えは。
「『正義の味方』である、あたしが。
『味方』してるんだから……。
宗像さんは……『正義そのもの』、だ」
清く、正しく、マシュマロのように甘く。
そして、その笑顔がかっこよかった。
それが、運命の言葉になった。
火憐さんの呼吸は、いっそう苦しげになっていた。
ひぃひぃ、と。
肺の周りの肌が、少しずつ膨らみはじめている。
呼吸が肺から漏れて、体の諸器官を圧迫している証だった。
肺の損傷は、ずっと深かったらしい。
このままでは、呼吸ができるのに窒息死するという、地獄の苦しみを味わうことになる。
見ていられない、そんな死に方をすることになってしまう。
それでも、僕がしようとすることは、『殺人』になってしまうのかと恐れたから。
だから、僕は火憐さんに判断をゆだねた。
「火憐さん。苦しい死に方と、苦しくない死に方。どっちがいい?」
「苦しくない方?」と、火憐さんは囁くように答えた。
だから僕は、『苦しくない方』をすることにした。
たとえそれで『零崎』に目覚めても、耐えきって見せると決意して。
「ごめんね、火憐さん」
千刀の一本を、火憐さんの体の上に掲げる。
「僕は君を、守れなかった」
僕こと『枯れた樹海』宗像形は、人の殺し方を色々と知っている。
だから、苦しまずに殺す方法だって知っていた。
552
:
marshmallow justice
◆8nn53GQqtY
:2012/08/27(月) 23:22:00
【6】
「無桐さん。さっき、初めて殺した時から“零崎”に目覚めたって、そう言ったね?」
様刻君を連れて追いついてきた無桐さんに、僕は話しかけた。
火憐さんの、まぶたをそっと閉じながら。
「なら――僕は違うよ。僕は、“零崎”じゃない」
『殺人鬼』は、目覚めなかった。
むしろ、抱いた気持ちは失望だった。
僕が欲しがっていたのはこんなものだったのか、とがっかりしたような。
失望したような。
こんな感情しか手に入らないなら、要らないと。
殺人衝動が、消えていた。
火憐さんからの、最後の贈り物。
そんなロマンチックな考え方をするほど、僕はご都合主義者ではない。
だから、僕にとって重要なのは事実だけだ。
『阿良々木火憐さんが、宗像形から『殺人衝動』を消した』という事実のみ。
だから、阿良々木火憐さん。
君は確かに、『正義の味方』だった。
だから僕は――君の言う『正義そのもの』になりたい。
【阿良々木火憐@物語シリーズ 死亡】
【1日目/真昼/E−7】
553
:
marshmallow justice
◆8nn53GQqtY
:2012/08/27(月) 23:22:42
【宗像形@めだかボックス】
[状態]身体的疲労(中) 、殺人衝動喪失
[装備]千刀・?(ツルギ)×872
[道具]支給品一式×2、ランダム支給品(0〜5)、「参加者詳細名簿×1、危険参加者詳細名簿×1、ハートアンダーブレード研究レポート×1」、「よくわかる現代怪異@不明、バトルロワイアル死亡者DVD(1〜10)@不明」
[思考]
基本:阿良々木火憐と共にあるため『正義そのもの』になる
0:斜道郷壱郎研究施設へ向かう
1:???
2:機会があれば教わったことを試したい
3:とりあえず、殺し合いに関する裏の情報が欲しい
4:DVDを確認したい
5:火憐さんのお兄さんを殺した人に謝らせたい
[備考]
※生徒会視察以降から
※阿良々木暦の情報はあまり見ていないので「吸血鬼」の名を冠する『異常』持ちだと思っています
※無桐伊織を除いた零崎四人の詳細な情報を把握しています
※参加者全員の顔と名前などの簡単な情報は把握しています
※危険参加者詳細名簿には少なくとも宗像形、零崎一賊、匂宮出夢のページが入っています
※上記以外の参加者の内、誰を危険人物と判断したかは後の書き手さんにおまかせします
【無桐伊織@人間シリーズ】
[状態]殺人衝動が溜まっている
[装備]『自殺志願』@人間シリーズ
[道具]支給品一式、ランダム支給品(0〜2)
[思考]
基本:零崎を開始する。
0:久渚さんに電話をして宗像さんのことを教えるべきですかね……?
1:曲識を殺した相手や人識君について情報を集める。
2:今は様刻さんと一緒に時宮を探す。
3:黒神めだかという方は危険な方なのでしょうか。
[備考]
※時系列では「ネコソギラジカル」からの参戦です。
※黒神めだかについて詳しい情報を知りません。
※宗像形とは、まだ零崎に関すること以外の情報交換をしていません。
【櫃内様刻@世界シリーズ】
[状態]健康 、『操想術』により視覚異常(詳しくは備考)
[装備] スマートフォン@現実
[道具]支給品一式、ランダム支給品(0〜2)
[思考]
基本:死んだ二人のためにもこの殺し合いに抗う。
0:火憐さん……。
1:時宮時刻を殺す。
[備考]
※「ぼくときみの壊れた世界」からの参戦です。
※『操想術』により興奮などすると他人が時宮時刻に見えます。
※黒神めだかについて詳しい情報を知りません。
※スマートフォンのアドレス帳には玖渚友が登録されています。
※阿良々木火憐との会話については、次以降の書き手さんに任せます。
554
:
marshmallow justice
◆8nn53GQqtY
:2012/08/27(月) 23:22:58
投下終了です
555
:
◆PKyKffdMew
:2012/10/03(水) 17:12:00
さるさんを喰らいましたのでこちらに投下します
556
:
◆PKyKffdMew
:2012/10/03(水) 17:12:36
【3】
勝者が消えた。
敗者二人は、黙って朽ち果てる。
二人ともまだ辛うじて息はあるが、七実はまず確実に手遅れだった。
重大な臓器を真っ二つにされ、血液だって全身の何割を失ったか分からない。
球磨川は彼女に比べたら軽い傷だ。
しかしそれでも、その程度は即座に処置を施さなければならないような大傷である。
もちろん、この場に医療設備などない。
彼を助けてくれるような人物もいない。
負け犬(きらわれもの)は不要物(きらわれもの)らしく――たった一人で消えていく。
ここに、二人分の屍が生まれた。
【鑢七実@刀語シリーズ 死亡確認】
【球磨川禊@めだかボックス 死亡確認】
『ま、嘘なんだけどね』
死は免れないような大傷を負っていた少年・球磨川禊は何事もなかったかのように直立していた。
負った傷は痕も残らず癒え、完調以外の様子にはどうやったって見えない。
彼は別に、特殊な再生細胞を持った超人ではない。
ただ、人より大きな《欠点(マイナス)》を持っているだけであって。
『大変だったよ、怪我をなかったことに出来なくってさ。わざわざ死ぬのを待たなきゃなんなかった』
球磨川禊は、《大嘘憑き》という過負荷を持っている。
オールフィクションの名の通り、その効力はあまりに絶大。
現在では細かな制約がつけられてしまっていたが、自分と七実の死を《なかったこと》にすることくらいは容易かった。
死んでいた筈の七実も、意識こそないが息を吹き返し、怪我は綺麗さっぱり消えている。
真心に負わされたダメージはすっかりチャラになり、屍から二人は返り咲いた。
『とりあえず七実ちゃんが目を覚ますまで待たなきゃね』
言うなり球磨川禊は地面に胡座をかいて座り込む。
七実が目を覚ますまで、彼は一時の休憩を取ることにしたのだった。
その胸の内で、これまであった色々なことを回想しながら。
557
:
◆PKyKffdMew
:2012/10/03(水) 17:12:56
【鑢七実@刀語】
[状態]健康、身体的疲労(大)、気絶
[装備]無し
[道具]支給品一式×4、錠開け専門鉄具、ランダム支給品(1〜6)
[思考]
基本:弟である鑢七花を探す。
1:………
2:七花以外は、殺しておく。
3:骨董アパートに行ってみようかしら。
4:球磨川さんといるのも悪くないですね。
5:少しいっきーさんに興味が湧いてきた。
[備考]
※支配の繰想術、解放の繰想術を不完全ですが見取りました。
※日之影空洞を覚えていられるか、次いで何時まで覚えていられるかは後続の書き手様方にお任せします。
※真心の使った《一喰い》を不完全ですが見取りました
【球磨川禊@めだかボックス】
[状態]『健康だよ。だけどちょっと疲れたかな、お腹は満腹だけどね』
[装備]『大螺子が2個あるね』
[道具]『支給品一式が2つ分とランダム支給品が3個あるよ。後は食料品がいっぱいと洗剤のボトルが何本か』
[思考]
『基本は疑似13組を作って理事長を抹殺しよう♪』
『1番は七実ちゃんが起きるまで休んでおこう』
『2番はやっぱメンバー集めだよね』
『3番は七実ちゃんについていこう!彼女は知らないことがいっぱいあるみたいだし僕がサポートしてあげないとね』
『4番はこのまま骨董アパートに向かおうか』
『5番は―――――まぁ彼についてかな』
[備考]
※『大嘘憑き』に規制があります。
存在、能力をなかった事には出来ない。
自分の生命にかかわる『大嘘憑き』:残り1回。
他人の生命にかかわる『大嘘憑き』:残り2回。
怪我を消す能力は再使用のために1時間のインターバルが必要。 (現在使用不可。残り45分)
物質全般を消すための『大嘘憑き』はこれ以降の書き手さんにお任せします。
※日之影空洞を覚えていられるか、次いで何時まで覚えていられるかは後続の書き手様方にお任せします。
※戯言遣いとの会話の内容は後続の書き手様方にお任せします。
558
:
◆PKyKffdMew
:2012/10/03(水) 17:13:32
投下を終了します。
大変申し訳ないのですが、どなたか代理投下してくださると助かります
559
:
◆PKyKffdMew
:2012/10/06(土) 12:03:28
一応こちらに。
さるさん喰らった(しかも投下終了宣言)のですが、本スレのSS
『不忍と不完全の再会』は投下終了です。
560
:
◆PKyKffdMew
:2012/10/13(土) 21:43:33
戯言遣い、玖渚友、八九寺真宵、真庭鳳凰 投下します
561
:
終わりの始まり《前編》
◆PKyKffdMew
:2012/10/13(土) 21:47:00
《死線の蒼(デッドブルー)》。《仲間(チーム)》。
いわゆる《裏の世界》に精通している者ならば、この言葉に聞き覚えくらいはあるのではないだろうか。
サイバー世界に深く関わる者なら、少なくとも知っていて当然の呼称。
反社会的な団体でありながら、世界の技術を何年分か進めた天才たちのグループ。
一人、《害悪細菌》。
一人、《二重世界》。
一人、《凶獣》。
一人、《街》。
一人、《屍》。
―――エトセトラ。各個の名前はあまり重要なことではない。
大切なのはそれぞれが第一級の天才であること、そして彼らの頂点に君臨するのが誰かということだ。
ここまでの話を聞いた第三者が、それを聞いたなら驚愕を示すだろう。
最初は信じるにも値しない冗談として笑い飛ばすかもしれない。
それは一般的に見れば正しい反応。
非一般的な視点から見ても、その反応を笑いの種にすることが出来る人間は恐らく希少。
《チーム》の、伝説的サイバー集団のリーダーが、小柄な少女であると誰が思う。
小さな頭に、どれだけの異常性が凝縮されているかも分からない。
貧弱な肉体と相反するように、発達しすぎた頭脳。
天才を惹き付けるある種のカリスマ。
蒼い瞳の、暴君。
《死線の蒼》玖渚友を一言で紹介しろと言われれば、誰もが口を揃えてこう言う筈だ。
異口同音に、だが彼らのコメントは一様に玖渚への畏怖を感じさせる。
天才。
化け物。
サヴァン。
『×××××』。
ひとくくりにして纏めると、異常(アブノーマル)。
エリートなんて言葉では片付けられない、サヴァン症候群を患った少女。
崩壊の近付くその体。
分厚いカルテが必要になるほど精密な検査を要求するその体。
その体の中で、ただひとつその頭脳だけが色褪せない。
いつまでも深い深い蒼色で――見る者を限りない深淵へと誘い、時に引き摺り込む。
そこから這い上がるか、それとも深淵を受け入れ蒼に染まるか。
その選択を誤れば、決定的な破滅を招く。
まさに死線。
蒼き死線。
害悪の細菌や、二つの顔を持つ零崎の人間さえも魅了した彼女。
極めつけに、《欠陥製品》と揶揄された少年と奇妙な《縁》を持ち続け、その関係を断ち切ろうとせずに生きてきた事実こそが、彼女の異常性を端的に、しかし最大限に表していた。
無為式を捕らえ続ける――戯言を繋ぎ止める。
戯言のように、あるいは正論のように。
化物のように、あるいは人間のように。
支配のように、あるいは解放のように。
牢獄のように、あるいは世界のように。
魔法のように、あるいは数式のように。
物語のように、あるいは狂言のように。
異常のように、あるいは過負荷のように。
彼女が存在し続ける限り、戯言遣いは玖渚友に巡りめぐって行き着くのだ。
全ての道はローマに通じている、そんな言葉がある。
戯言遣いの少年と死線の少女の関係も――その程度のものだ。
ちょっとばかし縁が強すぎるだけで――
互いが絶縁を突きつけたとして――互いがその都度それを認めないだけで。
戯言遣いは彼女から一度逃げたが、結局彼女のところへ舞い戻った。
円環のように、必然的にそんな滑稽な顛末が待っていた。
562
:
終わりの始まり《前編》
◆PKyKffdMew
:2012/10/13(土) 21:47:40
玖渚友は本来の通りに進む物語では、戯言遣いへの《呪い》を自ら解除する。
が、彼は玖渚と離れる未来を――選び取らなかった。
世界が修正力を働かせているとしか思えないような、ご都合主義の展開があった。
ハッピーエンド――不知火袴なんてイレギュラーが関与しなければ、物語はそこに至ったろう。
歪(ゆが)んで歪(ひず)んで、捩れて曲がった物語も、最後くらいは幸せな終わりがあったろう。
あと少しだった。
あと少しのところで、物語的には本当に惜しいところで――イレギュラーが介入した。
縁は潰えるのか。
それとも、執拗に神は二人の縁を繋ぎ続けるのか。
結末ばかりは《蒼色サヴァン》にも分からない―――。
《無為》に繰り広げられる《式》へと、身を任せるしかない。
バトルロワイアルの前では、玖渚友もまた平等に、一人の参加者であった。
† †
「うにー………」
ディスプレイの前でスライムのようにぐんにゃりとだれている、青髪の少女。
彼女こそが玖渚友、かの《仲間》を統率していた《死線の蒼》だ。
こうしている様だけを見ると、確かにそんな大仰な人物には見えないかもしれない。
しかしまだ二十歳に満たない少女が、殺し合いの恐怖を感じることもなくディスプレイに向かう姿。
いつ殺されても良いですよと言っているようでさえある、無防備――言い換えれば余裕。
少女相応のそれというには、玖渚は十分異質な存在だった。
「分かっちゃいたけど情報が進展しないよ……」
玖渚が管理人となっている掲示板の存在に気付いている参加者は果たしてどれくらいいるのか。
そもそもネット環境が一部使用できることにさえ、多くは気付いていないだろう。
皆が皆、玖渚友のように聡明なわけではない。
画面を更新しては溜め息をついて、また脱力する。
愛玩動物のような姿は、ロリィタ趣味の人間が見たなら発狂しかけること間違いなしだ。
玖渚は、有り余る知性をその脳髄に保管しているが―――彼女自身は普段無気力な人物である。
風呂に入ることも億劫だし、外出だってそうそうしない。
時々遊びに来る戯言遣いには、いつも呆れられる有り様だ。
そう、引きこもり。玖渚は根っからの引きこもり気質だった。
「でも不思議だなぁ。僕様ちゃんにこんなことになってて、直くんがまだ黙ってるなんて」
玖渚機関。
暴力の世界にも大きな影響力を持つ、玖渚友に密接に関係している一大組織。
中でも玖渚の兄・玖渚直は彼女を溺愛している。
そして直は現在《機関》の中でかなり大きな立ち位置にある筈。
記憶違いということは有り得ない。
玖渚友に―――蒼色サヴァンに限っては、縁遠い話だ。
直が本気になれば、言っちゃ悪いが不知火袴の計画はどんなに万全な対策を講じ、どんなに隠密を徹底していたとしても――半刻はもたない。
玖渚機関はそれだけ強大だ。
玖渚友が行方不明となっていて、直がそれに気付いたならさあ大変。
莫大な情報網とカネが、彼女一人を連れ戻すために使われるのは想像に難くない。
「単に気付いてない可能性もあるけど、なーんか腑に落ちないよねえ」
どうしてかそんなことを思う。
理由は、玖渚自身今回ばかりは少々事態に難色を示していたからだった。
正直、解除の困難な首輪を外して脱出・もしくは主催打倒を行うというのはかなりの無理難題だ。
玖渚友の頭脳でなら不可能ではないにしろ、一人でやれることには限りがある。
肉体的な作業については完全に論外だ。
玖渚にやらせるくらいなら、元気盛りな小学生にやらせた方がずっとマシだろう。
563
:
終わりの始まり《前編》
◆PKyKffdMew
:2012/10/13(土) 21:48:16
そもそも、脱出の手段が見つかったとしてそれで全員が同意するかという話だ。
不知火の提案した《賞品》はあまりに魅力的で、人々を揺さぶる。
本当か否か確証も取れていないのに、希望論を奏でるのは――遥か太古からの、人類の性か。
自己満足の絶望論を吐かれるよりは、まだ幾分か可愛いものなのか。
玖渚友には、どちらが的を射ているのかは分からない。
彼女は、そういう人間だからだ。
希望を必要以上に持とうとはしない。
絶望を人並以上に唱えようとはしない。
どちらでもいい。
言い換えれば、どちらも同じことだから。
人類最悪の狐のように、彼女もそれを同じことだと思う。
ただ、価値観を押し通そうとする頭の悪い輩だけは面倒だ。
いつかの閉塞された研究所の《博士》のようなタイプが絡んでくると、たちまち事態は拗れる。
「ま、きっといーちゃんが何とかしてくれるだろうけどねん」
にぱーっと、天使のような笑顔で玖渚は破顔した。
彼女は、玖渚機関よりもっと心強い味方がいることを知っている。
先程から何度も挙がっている《戯言遣い》――その渾名のひとつ、《いーちゃん》。
彼は確かに弱くて情けない、《マイナス》にとても近しいような男だ。
が、だからこそだろうか。
玖渚はこのデスゲームを終わらせる人物が彼であると、信じて疑わない。
まったくもって《いつもの通り》に、全部解き明かして解決してくれると笑顔で断言できる。
あの人はそういう人間だから。
戯言を遣うことしか出来なくたって、彼は玖渚友の愛する人だ。
親愛なんて不確かな感情のまま、玖渚は彼を信じる。
天才だらけの孤島の時のように。
山奥の研究所、《害悪細菌》の引き起こした事件の時のように。
―――最後は、二人で帰れると信じている。
「ふふっ、いーちゃん。愛してるよ♪」
愛してる。
何度口にしたか分からないその言葉。
けれど飽きずに、玖渚は戯言遣いへ求愛の台詞を用いた。
彼が死んだら世界を壊す――いつか、そんなことを言った気がする。
それが出来る力を持っているから、この少女は恐ろしいのだ。
「ふぅ。いつまでもここにいたって仕方ないし、ちょっと休憩でもしよっかな」
睡眠の欲求はない。
食事の欲求も特にない。
休憩といっても、掲示板から目を離してぼーっとするだけだ。
主催側へ介入できないか探るのも急ぎすぎると、最悪首輪がドカン――無駄死にを晒す羽目になる。
無駄に死ぬのは御免だ。
たとえ、その刻限が遅かれ早かれやってくるとしても、そう思う。
―――だが。
玖渚友という少女は既に悟っていたのかもしれない。
気配は感じなかった。
ただ、警報音が鳴り響いた。
《死の気配》とでもいうべき何かが、どこかから迫ってくる。
施設内のどこで警報が作動したのか分からない現状、下手に動くのは余計危険を高めてしまう。
迫る悪鬼。
ドアが無惨に破壊される。
全てを予期したように少女は冷静だ。
冷静なままで、侵入者が何者だろうと有効に活用できそうな情報が書き込まれていないか掲示板を確認して―――玖渚友は、儚げな、散りゆく華のような笑顔で微笑んだ。
――そして、にこやかに玖渚は言うのだった。
「……なんで今なんだよぅ、いーちゃん」
《死》はすぐ背後にいた。
564
:
終わりの始まり《前編》
◆PKyKffdMew
:2012/10/13(土) 21:48:59
† †
「なんだこれは……罠か?」
真庭鳳凰は、五月蝿く鳴り響く警報に眉をひそめて呟く。
この会場に来てからというもの、鳳凰のまるで知らない技術を何度も目にした。
おかげで驚きは少なくなっていたが、甲高い音は実に喧しい。
早く事を済ませてしまおうと、鳳凰は一歩を踏み出す。
が、この警報音は真庭鳳凰にとってある意味好都合でもあった。
警報に慌てふためいた中の人間が、のこのこと己の前に出てくるかもしれない。
鑢の人間のような奴が出てきたら最悪と言う他ないが、一般人なら呆気なく殺してやれる。
苦痛を感じさせずに慈悲深く殺すのも――
あえて苦痛を与えることで情報を聞き出すようなやり方も――
――真庭忍軍十二頭領の実質的な頂点に立つ鳳凰には、雑作もないことだ。
「では行くか」
警報音は無視する。
刀や槍が飛んでくるような罠に比べれば、随分と易しい仕掛けだ。
身を守る必要がないのなら、こちらも気兼ねなく内部を探索できるというもの。
この害悪の跡地・斜道卿一郎研究所に備えられた、セキュリティ機構。
過去に《害悪細菌》を巡っての一連の事件の時には、これが一つの問題にもなった。
しかし、これは推理小説ではない―――ただの侵入劇だ。
立ちはだかる扉は、ついさっき手に入れた《腕》の試し打ちに最適だろう。
轟音を鳴らして、セキュリティは脆く儚く砕け散っていく。
「やはり重宝するな。しのびらしいやり方とは言えないが、威力は十全――いや、それ以上だ」
あの玖渚友をして万全と言わしめたセキュリティも、しのびの前には意味がない。
いや、この場合は彼の《腕》の前には、と訂正を入れるべきだ。
《殺し名》序列第一位の《匂宮雑技団》所属の殺し屋、匂宮出夢の腕。
素手から繰り出される威力とは到底思えない一撃が、扉も壁も、何だろうと破壊する。
忍んで押し入るより危険ではあるものの、速度を重視するなら断然此方だ。
「しかし見事な建築だ」
これでは、並のしのびでは忍び込めまい。
十二頭領の人間でも、正攻法なら結構な時間を食ってしまう筈だ。
不知火袴が一体何者なのか、疑問を深めながらも鳳凰は進む速度を落とさない。
出夢の腕はまだ若干の違和感を放っているが、この分ならすぐに適応することだろう。
より早く使い慣らすべく、鳳凰は腕を振るう。
疲労は訪れない。
この程度で疲れているようでは、しのびは廃業だ。
一流のアスリートを軽々凌駕する速度で駆ける鳳凰だったが、参加者の姿はなかなか見つからない。
無駄骨か――落胆が生まれてくるが、彼はすぐに落胆を撤回する。
それは、彼が一つの部屋のドアを破壊した時だった。
「あれは……」
見えた。
青色の髪の毛が否応なしに目立つ、小柄なシルエット。
からくりのようなものに向き合っているシルエットを、見て―――
「な……んだ……?」
―――真庭鳳凰は、気圧された。
深い深い、例えるなら海の底のような蒼色。
こちらまで吸い込み、同化させてしまいそうなほどに深い、深淵の蒼色――。
瞬間、たまらず鳳凰は駆けていた。
逃げるのではない。この場で、青い髪と蒼い瞳の少女を殺すためだ。
(あれは―――あれは、人間なのか!?)
化け物。
そんな陳腐なワードが脳裏を掠める。
あの目を除き込めば、きっと自分はあの深淵に引き込まれる――
普段の鳳凰ならば有り得ないと断じただろうことを否定する余裕は、今の彼にはなかった。
少女の後頭部を掴む。
掴んでから気付いたが、焦るあまり使ったのは出夢のものではない方の腕だった。
が、構わず鳳凰は少女を――顔面から床に向かって、叩きつける。
鈍い音がしたが、当たりは悪かった。
らしくなく動揺してしまったからだろう。
鼻血が床を紅く染めているものの、意識すら奪えていないようだ。
565
:
終わりの始まり《前編》
◆PKyKffdMew
:2012/10/13(土) 21:49:41
「済まんな。恨みはないが、ここで死んで貰うぞ。《化物》」
首根っこを掴み、壁まで小さな身体を放り投げる。
少女――玖渚の叩きつけられた床には、生々しい鼻血が溜まっていた。
丁度十本、彼女の身体の一部だった歯が無惨に折れ、散らばっている。
「か……ふ、あはは。酷いなあ、女の子は優しく扱うもんだよ」
「生憎我は真庭忍軍、つまりしのびでな。そんな作法は心得ていない」
鳳凰は玖渚の《目》を見ないようにしながら、彼女へ近寄っていく。
迫る。
潰れた鼻と折れた歯が、死の迫る実感を与えてくれる。
――しかしだった。
玖渚友には、この時《未練》が生まれてしまっていた。
別に死が怖いとか、そういう訳ではない。
ただ、掲示板で《彼》の書き込みを見てしまったのがいけなかった。
最期の時への未練を、玖渚に芽生えさせた。
迫る鳳凰から逃れるように、玖渚は鈍痛を放つ己が体に鞭を打って立ち上がる。
鳳凰を掻い潜って、携帯電話だけでも取れればいい――!
だが、相手は不意を突けるほど未熟なしのびではない。
かの真庭忍軍十二頭領、その中で最高の実力を持つ――《神の鳳凰》だ。
顔面に蹴りが飛んで、風に散らされる塵のようにあっさりと玖渚は壁へ激突する。
もう一度立ち上がっても結果は同じ。
鈍くて、しかし鋭い蹴りが飛んで、視界が一瞬で変わり、打ち付けられる衝撃が鈍痛としてやってくる。
「……黙って殺された方が楽だぞ」
鳳凰は冷静に言うが、その内心は混乱の真っ只中にあった。
あの深淵のような瞳を恐れて、自分は心を乱された。
が、いざ殺しにかかってみればどうだ。
弱者以下、まるで童子を相手にしているような感覚さえある。
可愛らしかった顔面も、あれだけの衝撃に晒されれば崩れてしまう。
頬骨が砕けたのか、次第にその顔は腫れあがりはじめている。
どこからどう見たって普通以下、弱者以下のステータスしか、精々あれは持っていないのではないか。
あんなものを――何故、自分は恐れたのだ?
「……ね、え。最期にさ、話したい人がいるんだよ」
「話したい? ――残念だが我はここに来るまでこの施設で人は――」
「そこの、携帯。取ってくれないかな」
携帯。聞き覚えのない呼称だったが、力なく指差した方向を見ると、小さな機械が落ちていた。
鳳凰には勿論使い方が分からない。
何か妙なことをされるのではないかと鳳凰は思う。
例えばあれが何かの罠の作動装置だったとして、鳳凰に一矢を報いるつもりかもしれない。
ならば、無視した方が良いか――そう考えた時、鳳凰は再び《深淵》を見た。
「――――ッ」
蒼色だ。
幾度と死線を掻い潜ってきた鳳凰だから分かる、その蒼色が指し示す意味を。
あの目が送るのは《視線》じゃなくて、《死線》なのだ。
さっきより近くで見れば、尚更よく分かった。
奇しくも真庭鳳凰は、この地で彼女を目撃した同胞と同じ感想を抱いた。
猛毒の刀に狂った少女に斬り殺された、一人の同胞と、まったく同じ感想を。
――あれは、この世に存在してはいけない―――……!
566
:
終わりの始まり《前編》
◆PKyKffdMew
:2012/10/13(土) 21:50:49
気圧された鳳凰は、半ば反射的に玖渚へ携帯を投げ渡す。
ありがと、と呟くと玖渚は携帯を開き、何かを打ち込み始めた。
鳳凰にはその意味が分からない。
が、仕掛けのようなものが作動する様子もどうやらない。
何をする気なのか、分からない。
「えへへ……いーちゃん」
――だから、玖渚友が何故笑うのかも、分からない。
理不尽すぎる死が迫って、もう逃れる術はほぼ皆無だろう。
あの様子では、奇策の類を隠してもいないようだ。
援軍にでも来られれば話は別だが、それはかえって鳳凰にとっちゃ好都合。
一網打尽にすることが出来るのなら、そっちの方がありがたくさえある。
が、この少女とて鳳凰の力量を理解していないなんてことはあるまい。
表情を見れば一発で分かる。
彼女は何の策も有してはいないと。
ここで自分は死ぬ。
少女には厳しすぎる現実をしっかりと受け止めている様子だった。
哀れにも見えるその姿に、疑問こそ抱けど情けをかける鳳凰ではない。
お涙頂戴な展開にいちいち心を動かされていては、しのびなど勤まるものか。
しかし、どうしてこの青い少女は笑うのか―――
最期の時を前にして、何故あんな風に―――
幸福そうに笑うのか。
それだけが、甚だ疑問だった。
† †
―――本当、奇妙なもんだよな。
世界ってものは、時にぼくらが想像も出来ないような展開をプレゼントしてくれる。
お伽噺なんかを読んで、大抵の子供は待っているハッピーエンドに満足して頁を閉じるだろう。
けれど、中にはぼくみたいなひねくれた子供だっている筈だ。
ぼくほど終わっていなくたって、それこそ子供心の疑問だって構わない。
《現実でこんなことってあるの?》と思う子が、きっといる。
ぼくが偉そうに言えたことじゃないけど、その疑問にぼくが回答させてもらうとしよう。
いわゆるご都合主義。
漫画や小説の中では、《メアリー・スー》なんて言葉で表現したりもするらしい。
国民的な作品、たとえば某青狸が未来からやって来る作品なんかじゃあ、どう考えたってありえないような状況で必ず、何かしらの幸運が味方して危機を逃れる場合が多い。
――まあ、お茶の間の善良な子供たちだって、愛らしいキャラクターが見るも無残に粉砕されたり、処刑されたりする光景なんて見たくないだろうから、これは必要な措置だけどね。
そういう展開が見たい人は、古本屋に行けばいいんじゃないかな。
世の中、案外えげつない作品は転がっているよ――この世の中自体も、既にえげつないけど。
ぼくや鏡の向こうのあいつ、それに数時間前の《人間未満》なんかが生まれる世界だ。
どう考えたって平等じゃないし、どう考えたって神様の悪意が感じられる。
人類皆兄弟と言った人がぼくのことを見たら、果たしてどう言うだろう。
言葉に詰まるか、意固地になって自分の意見を押し通すか。
どちらかだろうね。
どちらでも同じことの、ただの下らない戯言だ。
閑話休題。
ぼくが回答するなら――《案外、そういうものだよ。この世界は》――と答えよう。
そういうものなんだよ。
ご都合主義に物事が進んでいく、ぼくはそれを何度も体験している。
天才たちの島でだって。
京都の殺人事件だって。
首吊りの学園でだって。
害悪の研究所でだって。
殺し屋相手の時だって。
そして、あの《根こそぎにラジカルな物語》の時だって――そうだ。
567
:
終わりの始まり《前編》
◆PKyKffdMew
:2012/10/13(土) 21:51:30
ぼくは何度も見えない何か、奇跡に助けられている。
あの《最悪》風に言うなら、《縁》の綱に掴まっている。
底の見えない闇に落ちそうになると、ぼくは決まって助かってきた。
もしもこの世から全てのご都合主義が消えたら、人間の死亡率は案外跳ね上がるかもしれない。
―――というか、あの赤い請負人みたいに、存在がご都合主義みたいな人もいるし。
あの人に限ってだけは、ぼくじゃあ語れない。
ぼくの想像をいつだって壁ごと《ぶち抜いて》しまう。
ただ一つ、《絶対に敵に回さない方がいい》とだけは言えるけども。
零崎の野郎だって相当面倒な目に遭ったらしいし。
少年漫画のように――――フラグをぶっ壊す。
青年漫画のように――――現実も知っている。
麻雀漫画のように――――頭だってぼくの比ではない。
彼女を敵に回して、一週間逃げられたら拍手ものなんじゃない?
だから今回のことだって、あの人に任せていれば万事解決――
「……そうは、いかないよな」
ではない。
少なくとも、そんな体たらくはいくらぼくでも不本意すぎる。
ぼくは誓った――次第に薄れている漠然な記憶だけど、ぼくは誓った。
《主人公》になる。
《主人公》として、この《物語》を終わらせる上での役割を果たして見せよう。
勿論――ハッピーエンドで。
ハッピーエンド以外の結末は、認めてくれない人がいるから。
「しっかし」
思わず溜め息が漏れる。
ほんとうに、嫌な縁だ。
ぼくの敵――《人類最悪》。
《人類最強》の、クソ親父。
つまり父親。
顔つきや性格も似たところはよく見れば結構ある。
漫画好き。ただし娘とはとにかく仲が悪い。
世界の終わりを求道し続ける一匹の狐、西東天。
名簿に名前を見たときから嫌な予感はしていたけど、こんな形で《縁が合う》とはなぁ。
隙だらけの殺しやすいあの人のことだ、案外ぽっくり殺されててもおかしくないのに――生きている。
きっと今頃、《物語》の終わりを妄想したりしながら子供のようにワクワクしているんだろう。
駒にされても、そこは変わらなそうだ。
いや、むしろ正義に燃えているあの男なんて見た日には、全身を数分間鳥肌が支配する。
平常運転。
平常運転が、危険運転。
免許停止を食らっても、何度でも舞い戻る最悪。
ぼくの、敵。
電話をかけた先に居たのが、よりによってあの最悪とはなあ。
全く――因果な人生だ。
あっちの反応に若干の違和感が無いわけでもなかったけれど、やっぱり平常の危険運転らしい。
変なことをやらかさないでくれれば、いいのだけど。
せめて《物語》を見守る程度にしていてくれたら、ぼくはもう何も言いませんから。
主催の座を奪ってゲームを台無しにするくらいまでぼくの脳は想像しているぞ。
過大評価のように見えるかもしれない。
でも、こればかりは実際に《最悪》に触れた者でなければ分からないだろう。
常識の枠を外れた位置じゃないと、測れない。
常識の枠を易々と踏み越えるやつを、捉えられない。
彼と関わる上で、《ありえない》を想定しないのは擁護のしようがない程の愚策だ。
568
:
終わりの始まり《前編》
◆PKyKffdMew
:2012/10/13(土) 21:52:25
致命的すぎる判断ミス。
ぼくも、随分と彼の《最悪》さ加減には振り回された。
そしてさっき、人類最強さえも振り回す、《人類最悪の遊び人》と、言葉を交わした。
何かを得たわけではない。
何かを失ったわけではない。
戯言をぶつけただけの、子供の雪合戦にも等しい一瞬があっただけであって。
――真宵ちゃんもいることだし、控えたってのもあったけどね。
真宵ちゃんが狐さんに出会ったら、多分思いっきり振り回されて倒れちゃいそうだ。
微笑ましいようだけど、生憎ぼくにロリィタ趣味はない。
友のやつといい姫ちゃんや出夢くん、真宵ちゃんを見るに、どうにもぼくの周りにはロリィタもしくは少女が集まりやすい傾向にあるようだが、誤解しないでくれと言っておこう。
そりゃ、姫ちゃんにセクハラを働いたことはあったけどさ。
でも真宵ちゃんは実は歳上なんだよなぁ……っと、駄目だ駄目だ。
この先を考えるとぼくの中の何かが終わってしまうような気がする。
こういう時はメイドさん、ひかりさんのことでも考えよう。
ああ、ひかりさんはほんとに可愛いなあ。
「戯言さん」
「なんだい」
「いえ、何だか顔が人面犬みたいな笑顔になってたので」
「人面犬っ!?」
人面犬とはまた懐かしいものを。
大体人面犬みたいな笑顔ってなんだ。
きみは人面犬なんて激レアな珍獣に出会ったことがあるのかい。
しかし、ひかりさんのことを考えるとにやけてしまうのは仕方のないことだ。
仕方がないったら、仕方がない。
誰が何と言おうと仕方ない。
「ところで真宵ちゃん、早いところ次の電話を掛けようぜ。まだ掛けてない場所が結構あるんだから」
真宵ちゃんは口を尖らせる。
電話をかけられること、それは確かに今のぼくらの持つ中で最大のアドバンテージだ。
どんどん積極的にかけて、情報をゲットしたり、合流の約束を立ててみたり。
使い方は多様だ。
こんなものを渡すなんて主催側は、まるで反抗されることを前提にしているかのようだ。
そう考えると少し不気味だけど、今のところぼくや真宵ちゃんの首が吹き飛ぶ様子はない。
支給品をどう使おうが自由ということなのか―――許容範囲の内なのか―――
―――殺し合いに反抗されることさえも想定の内なのか。
まあ、考えても仕方がない。
今できることをやっていくしか、ないんだから。
「そうですね。次はどこに掛けましょうか―――あれ?」
携帯電話を持っていた、真宵ちゃんが突然疑問符を発した。
何ということはない、ただ電話を掛けるだけの動作で。
逆にどうして今まで気付かなかったんだとも、いえるくらいの。
真宵ちゃんのとびっきり単純な疑問が――芽生えた。
569
:
終わりの始まり《前編》
◆PKyKffdMew
:2012/10/13(土) 21:53:06
「戯言さん。これって、電話しか出来ないんですか?」
――盲点だった。
電話オンリーでも不思議ではないのだけど、他に機能がある可能性を一切考慮していなかった。
インターネットの接続が出来たらそれで一件落着かもしれない。
……そこを見落としている主催じゃないとは思うけどね。
でも、やってみる価値はあるとぼくは思った。
「んー……確かに、電話以外にも機能があったら便利だね」
「ちょっと試してみます。電話をかけるのはそれからでいいですか?」
「うん。そこは真宵ちゃんにお任せするよ」
ぴこぴこと、ボタンを押す音が聞こえる。
真宵ちゃん的にも、あの後電話を掛けた場所が誰も出なかったことで退屈だったのかな。
ところでどこに電話を掛けたんだろう。
でも今声を掛けたら、何をかは分からないけど邪魔しちゃいそうだ。
《戯言さんは運転に集中してくださいっ!》って感じで、怒られちゃうかもしれない。
くわばらくわばら。
――それから、きっと一分も経っていないだろう内に、真宵ちゃんが嬉しそうな声をあげた。
「やりましたよ戯言さん! なんか変な画面に飛びました!」
「え、本当かい?」
ぼくはブレーキを踏んで、車を止める。
いくらなんでも、また横転しかけては敵わない。
携帯電話を渡して貰うと――ディスプレイに表示されているのは、どうもネット掲示板のようだった。
こういうのは玖渚の領分だけど、掲示板くらいならぼくだって使えるだろう。
まさか難解なプログラムを使わないと書き込めない、なんてことはないだろうし。
スクロールしてみると、この掲示板はバトルロワイアルにおける情報交換の場らしい。
要注意人物の名前も載っているようだったが。
ぼくにそれを注視する余裕があったかと言われれば、答えはノーだ。
「――――デッド、ブルー………!」
◆Dead/Blue/。
DeadBlue。
デッドブルー。
《死線の蒼》。
この名前を使いそうな奴など、ぼくの知る限りただ一人だ。
管理人を勤めているらしいけど、そういうところもあいつらしい。
だからぼくは、思わず声に出してしまう。
「玖渚……!」
思いもつかないところで《縁》はぼくらを結んだ。
真宵ちゃんがポカーンとしてぼくを見ていた。
ぼくは―――真宵ちゃんに説明をする前に、ボタンを打っていた。
なんか、ずいぶんと下手糞な書き込みになってしまったけど。
570
:
終わりの始まり《後編》
◆PKyKffdMew
:2012/10/13(土) 21:53:52
† †
当掲示板はバトルロワイアルについて情報を交換するためのものです。
参加者のスレ立ては制限させていただいておりますが要望スレに書き込んでいただければ早急に管理人が対応します。
ただし、情報の真偽等については保証できませんので全て自己責任でお願いします。
管理人◆Dead/Blue/
1:探し人・待ち合わせ総合スレ
1 名前:管理人◆Dead/Blue/ 投稿日:1日目 午前 ID:kJMK0dyj
会場の人を探したり待ち合わせをするためのスレです。
マーダーに利用される可能性もあるので書き込みの際は慎重に!
2 名前:◆Dead/Blue/ 投稿日:1日目 午前 ID:kJMK0dyj
テスト
3 名前:◆Dead/Blue/ 投稿日:1日目 午前 ID:kJMK0dyj
死んだような人間の目をした男性と顔面刺青の男性を探しています
博士のところにいると言えばわかるはず
顔面刺青の男性へ、現在あなたの妹さんと一緒に行動しています
4 名前:名無しさん 投稿日:1日目 午前 ID:LyseDGhp
090-XXXX-XXXX
ぼくだ
2:目撃情報スレ
1 名前:管理人◆Dead/Blue/ 投稿日:1日目 午前 ID:kJMK0dyj
会場の中で目撃した人物について語るスレです。
名前も知らないのが大半でしょうから必ずしも鵜呑みにしないように!
2 名前:名無しさん 投稿日:1日目 午前 ID:MIZPL6Zm
黒髪で長髪の女性が返り血を浴びているのを見た
もしかしたら殺し合いに乗っているかもしれない
3:情報交換スレ
1 名前:管理人◆Dead/Blue/ 投稿日:1日目 午前 ID:kJMK0dyj
情報交換をするためのスレです。
4:雑談スレ
1 名前:管理人◆Dead/Blue/ 投稿日:1日目 午前 ID:kJMK0dyj
雑談をするためのスレです
5:要望スレ
1 名前:管理人◆Dead/Blue/ 投稿日:1日目 午前 ID:kJMK0dyj
管理人への要望等はこちらに
掲示板管理者へ連絡
571
:
終わりの始まり《後編》
◆PKyKffdMew
:2012/10/13(土) 21:54:38
† †
玖渚友といえば、その名前を抜きに《ぼく》の人生は語れないといっていい程、大きな存在だ。
無論、ぼくにとって。
そして、ある意味では世界にとって。
幼い日の砂場で青い髪の《少年》と出会うことがなければ。
ぼくの人生はもっと平穏だったろう――同時に、今以上に無価値だったと思う。
ぼくはあいつから一度逃げた。
だけど結局は情けなく帰ってきた。
あいつは笑ってぼくを受け入れた。
あいつはそういう奴なんだ――昔から、そういうやつだった。
崩れた砂の城を寸分狂わず再生させる、記憶力。
凄腕のハッカー、クラッカーを従えてなお惹き付ける、天才的頭脳。
体は生きているのが不思議と言われる欠陥品。
青色のサヴァン。
玖渚友のことをぼくは大嫌いだし、大好きだ。
あいつは以前に《いーちゃんのいない世界は壊す》と言ったことがある。
いくらなんでもぼくはそこまでではない。
けれども、あいつの為に必死になれるくらいにはあいつが好きだと、この前の一件で自覚した。
どうなのかはぼくにも分からないけどね。
だけどただ一つ言わせてもらうなら。
《縁》の巡り合わせにこの時ばかりは感謝しようと思った。
神様のご都合主義に平伏してやってもいい、それくらいの安堵をぼくはしていたようだ。
それほどに玖渚友の存在はぼくの中で大きくて、ぼくの中で中心を担っている。
「戯言さん、どうかしたんですか?」
「ちょっと知り合いが見つかってね。少し連絡を取ろうと思って、番号を書き込んだんだよ」
何気に掲示板の下の方に《管理者へ連絡》みたいなところがあったけど、時すでに遅し。
でも、番号がバレたくらいじゃ大した痛手はないだろう。
こんな狭い会場の中の情報網には所詮限りがある。
それに、玖渚の奴なら気を利かせて削除してくれるかもしれないし。
あいつはずっと画面の前にべったりだろうから、もうすぐ電話が来る筈だ。
車を停めたまま待つこと数分――携帯電話が着信音を鳴らす。
待っていましたと言わんばかりに携帯を取り、電話に出る。
「もしもし」
『ちゃお、いーちゃん』
――受話器の向こうからは聞き慣れた声が案の定聞こえてきた。
少女期の幼さをまだ残したこの声は、間違いなく玖渚友本人のものだった。
騙りは有り得ない。
騙りがあったとして、ぼくはきっとそれを見抜いてやる自信があった。
それほどまでに――ぼくらの縁は固い。
鏡の向こうの《あいつ》よりも。
人類最悪の《狐》よりも。
恐らくは、何度もお世話になった《請負人》よりも、ずっとずっと固い縁で結ばれているのだ。
《絆》ではない。
ぼくらの関係は、そういう青春ドラマチックなものではない。
もしも互いにあと少しでもまともだったなら、そういう甘酸っぱい関係にもなれたのかもしれないな。
でも――ぼくはあいつに、プロポーズをした。
戯言抜きでだ。
戯言遣いらしくないなんてものじゃない。
572
:
終わりの始まり《後編》
◆PKyKffdMew
:2012/10/13(土) 21:55:42
それからあいつの真実を知った。
錆び付いた自動車をいきなり動かしたように、焼き切れる体。
停止し続けられなくなった体の無茶な成長が、彼女の命を危機へと晒していること。
ぼくはその認めたくない現実に、向き合わなければならない。
あの戦いで――
世界の命運を懸けたあの戦いで――
ぼくは。
『お互い災難だねぇ。いーちゃんのことだから無事だとは思ってたけど』
「全くだ。ぼくの方だってこの《半日未満》でいくつもおかしな目に遭ってきたぜ」
おかしな目に遭っているのは、比較的いつものことだけれど。
付け足して言うなら、それで何回も病院送りにされているけれど。
最近じゃ病院が住処とか、不本意なことを言われてるけれど。
でも――さすがのぼくだって、ここまで突飛な事態を経験するのは、恐らく初めてだ。
『ま、いーちゃんだし。心配はしてなかったよん、僕様ちゃん。うにっ!』
そうかい。
嬉しそうにはしゃぐその声が、どうしてかすごく久しぶりにさえ聞こえた。
《最悪》と決着をつけたんだから――ぼくは、玖渚とも決着をつけなきゃならない。
一方的に《呪い》を解いていきやがったお転婆娘と。
筈だったんだけど―――こんなことになるなんて、まったく出鼻を挫かれた気分だ。
一難去ってまた一難。
泣きっ面に蜂、は少し違うか。
『ところでいーちゃん。僕様ちゃん、いーちゃんに言っておかなきゃならないことがあるんだよね』
ぼくが話を切り出す前に、玖渚は声色を変えないままで切り出した。
何の話だろう。
そんな風に悩むことは、もはや戯言だ。
あいつとぼくの間にある決定的な問題といえば―――玖渚友自身のことしかない。
そう、思っていた。
そうであってくれれば良かったのだ。
向き合っていこうと思っていた問題にあっちから触れてくれるなら、拒むことはない。
けども――世界はとことん、残酷なものだと。
『僕様ちゃん―――たぶん殺されちゃうよ』
ぼくは、思い知る。
「………何、だって?」
視界がぐにゃり、と揺らぐのを感じた。
数瞬遅れて、異常なのはぼくの体だと気付く。
目眩がした。突きつけられた事実を、体が必死に拒否しようと抵抗する。
でも、逃れられるわけがない。
電話の向こうの《彼女》の声が、希望論を嘲笑うように真実を突きつける。
まるで――戯言のように。
『下手しちゃってさー。今も近くに居て、最後のお願いで電話してるんだ』
「た……助かる手段はないのか? 武器は? 仲間は?」
ぼくは必死になって、そんなつまらない質問をする。
アホらしい。武器があったとして、玖渚友の運動神経で使いこなせるものか。
大体、話を聞く限りの状況――《最後のお願い》。
情けを掛けて貰っている以上、もう既に彼女は詰んでいるのだ。
仲間が居たとしても、玖渚はこうして《詰んでいる》。
それを見るだけで、彼女を守る存在が機能しているかどうかなど、火を見るより明らかなのに。
573
:
終わりの始まり《後編》
◆PKyKffdMew
:2012/10/13(土) 21:56:53
『武器はないし、あったとしても使えない―――実はもう結構ボロボロなんだよね。鼻も潰れちゃってるし、歯もそうだなあ、結構折れてると思う。脳震盪は分からないけど、もしかしたら頭蓋骨に損傷があるかもしれないね。
仲間はいる――けど、僕様ちゃん自身で遠くへやっちゃったんだ。セキュリティを過信しすぎてたよ、卿壱郎博士の研究所にいるんだけどね。多分さっちゃんより凄いかも。物理的な破壊に関してなら、だけど』
なんてこった。
これじゃあもう本当に―――手遅れじゃねえかよ。
チェスで例えるなら、白のキング以外空いている盤面に、全て黒の駒が並んでいるような状態。
《圧倒的な詰み(チェックメイト)》。
遅すぎた。せめて後少し早ければ、まだ事態は違ったのかもしれない!
けど、その怒りを真宵ちゃんにぶつけてしまうのは筋違いだ。
これは要するに、またぼくの《性質》が招いたことなのか。
策士曰く――――《無為式》。
とうとう、玖渚友か。
そう、来るのかよ……。
「友……」
『そんな声出さないでよ。どうせ、僕様ちゃんはもう永くなかったんだから』
まるで、長年の嘘を打ち明けるように玖渚は言う。
だけどぼくは驚かない。
知っているから――《停止》を止めたサヴァンの向かう先を。
「知ってるよ。言わなくていい」
『ありゃ。いーちゃんって戯言を極めすぎて、人身掌握術まで身につけたの?』
「戯言だよ」
『うん、戯言だね』
玖渚友が惚けているだけなのか、それとも何かぼくの知らない異常が起きているのかは知らない。
関係ないといえば冷たく聞こえるかもしれないが、その通りなのだ。
今回は、ぼくにはどうすることもできない。
今までみたいに、戯言を遣ったって変えられやしない。
ぼくはここで―――玖渚友を、プロポーズをした相手を、永久に喪う。
どこの誰とも知れぬ殺人者の手で、《今まで通り》理不尽に、また一つ喪う。
ぼくに出来ることは、もう思い付かなかった。
「友。ぼくにしてほしいこと、あるか?」
――だから、そんな気休めを唱える。
電話越しで出来ることなんて限られてるのに。
しかし電話の向こうの彼女は嬉しそうに、答えるのだ。
予想はつく。
自惚れかもしれないが、玖渚友の《愛してる》をぼくは何度も聞いた。
最後の最後くらいは、ぼくの方から言ってほしいと。
そんな答えを、脳内で幻視する。
『そうだねえ――――いーちゃんには、生きていて欲しいな』
違った。完膚なきまでに、徹底的に違った。
おいおい。よりによって最後に、お前はまたぼくに新しい呪いを刻むのかい。
夢見てたのは、ぼくの方だったか。
そうだなあ――玖渚友は、こういう奴だもんなあ。
「言われるまでもねえよ。だが心得た」
『うにっ。それでいいのだ』
受話器の向こうで、にへら、としたあいつの笑顔が脳裏に浮かんでくる。
出来損ないの脳内スライドショーが始まりかけたが、それをどうにか抑えた。
そう、言われるまでもない。
ぼくは死にたくない――生きていたいよ。
されど、ぼく一人ごときのちっぽけな自分可愛さより、格段に重みは増した。
死んではやれない。そういう《呪い》なんだから。
574
:
終わりの始まり《後編》
◆PKyKffdMew
:2012/10/13(土) 21:57:29
「じゃあそろそろ、お別れか」
『そうなるね。思えば長い付き合いだったよ』
そうだな。長い付き合いだった。
時間的にはどうであれ、ぼくらの付き合いは長かった、そう心から思えるくらいには。
飽き飽きして、一度は逃げたこともあるけど。
でも――もうおしまいだ。
玖渚友は死んで、戯言遣いは生きる。
「あ、出来たらでいいんだけど」
『なあに?』
「お前を殺す人に、代わって貰えたりする?」
『ちょっと待ってね』
玖渚の、《ねー、いーちゃんが電話代わって欲しいみたいなんだけど》という呑気な声がする。
まったく、これから死ぬ奴の態度とは到底思えない。
本当に変わらないよな、お前は。
いや、もしかするとぼくの知らないところで、変わったりしていたのか?
まあそこは――ぼくの想像にお任せ、ってことになるか。
『代わったぞ』
――その声に、聞き覚えがあった。
「あなたでしたか、鳳凰さん」
『何となくそんな気はしていたがな。やはりおぬしだったか』
真庭鳳凰。
スーパーマーケットで出会った、マーダー。
あの時は戯言で上手く撒いたのだが――ここで、絡んでくるか。
「願いを叶える保証がない。ぼくの言葉を、覚えていますか」
ぼくはあの時と同じように、戯言を吐く。
希望にすがろうとするでもなく、ただ普段通りに、ぼくの最高にして最低の武器は機能する。
だがしかし、鳳凰さんはぼくの武器を鼻で笑い飛ばして、あっさりと否定した。
子供をあしらうような気軽さで、戯言は意味を成さなくなる。
『ああ、覚えているともさ。だが我は止まれん。望みがあるならそれに懸けるだけだ―――たとえ途方に終わるかもしれなくとも、我らの里はそんな僅かな希望にもすがらねばならぬ。そういう状況にあるのだ』
騙されているかもしれない。
しかし、鳳凰さんはそれを考えた上でもなお、殺すことを選んだようだった。
皮肉にも、ぼくの戯言のせいでより強固になって、その意志は今こそぼくに牙を剥く。
『悪いが、我はもうおぬしの言葉に耳を貸す気はないぞ。ただ――』
底冷えするような声で。
真庭鳳凰は、やはり只者ではなかったと再認識させられるような声で。
『――殺すだけだ』
この時、ぼくは敗北した。
玖渚友を救えるかもしれない、一世一代の戯言遣いをしくじった。
だけどぼくには、彼に言わなきゃならないことがある。
絶対に、これを伝えなくてはならない。
ぼくという人間に残されたささやかな意地に懸けて。
「鳳凰さん。玖渚を殺すんですね」
『何度も言わせるな』
「そうですか。じゃあ―――」
575
:
終わりの始まり《後編》
◆PKyKffdMew
:2012/10/13(土) 21:58:08
負けないくらい冷たい声で。
ぼくだって、言ってやる。
「――あなたは、ぼくの敵です」
沈黙が、しばらく続いた。
数えていないし数える気もならなかった。
数秒だったのか、それとも数分だったのか。もしかすると、一瞬にすら満たないかもしれない。
沈黙を打ち切ったのは、鳳凰さんの方だった。
『そうか』
ただそれだけの言葉を残すと、通話は再び玖渚に戻ったらしかった。
ぼくのあれが効いたかどうかはともかく、あれで怖じ気付くような人じゃないみたいだったし。
結局、ぼくは――玖渚を救えなかった、ってことになるんだろう。
《なるんだろう》じゃなくて、《なる》の方が正しいな。
『いーちゃん、随分な啖呵切ってたね。部分部分しか聞こえなかったけど、格好良かったよん』
「そいつはどうも」
それじゃあ、そろそろだな。
《縁》を切る瞬間が、やってくるわけだ。
この世とあの世で、いよいよぼくらは別たれる。
死後の世界なんて存在自体が戯言だけども。
こんな時ぐらいは――――そんな《幻想(ユメ)》を見たって、いいだろう?
「今度こそお別れだ。そして最後に、お前に言いたいことがある」
『奇遇だね。僕様ちゃんも、最後にいーちゃんに伝えておきたいことがあったんだよ』
ぼくは笑う。
玖渚も――友も笑ってくれていると信じて。
ぼくらは、その言葉を交わし合う。
「 「――――」 」
こうして、ぼくの世界は一つの終わりを迎えた。
† †
576
:
終わりの始まり《後編》
◆PKyKffdMew
:2012/10/13(土) 21:58:39
「ふぅ」
通話を終えたぼくが、息と共に吐き出したのはそんな何てことのない言葉だった。
我ながら締まらない男だと思わないでもない。
だけど、もしシンキングタイムがあったってぼくはきっと、同じことを言ったんじゃないだろうか。
世界の終わり。あの男が追い求めたものは、ひょっとするとこういう感覚なのかもしれない。
「戯言、さん?」
心配そうな顔で、ずっとぼくを見ていた真宵ちゃんが口を開く。
その表情は、まさに何を言っていいのか分からない、というものだった。
声をどうかけたらいいのか分からない、とも言う。
幽霊も気を遣うんだと思うと少しだけ可笑しくなった。
心配しなくてもいいよ、真宵ちゃん。
ぼくは―――折れないから。
あいつに呪われたんだから。
「大丈夫だよ。―――ただ、一つの世界が終わっただけさ」
真宵ちゃんに分かってくれとは言わない。
でも、ぼくは世界が終わる瞬間を感じた。
確かに、ぼくらの住んでいる世界が終わる様子はどこにもない。
それ以前にまず、この殺し合いが終わる様子さえない。
想影真心――もとい《人類最終》を使った計画は、ぼくらが阻止した。
だからこれは、史上最小の、ぼくだけの世界の、ぼくだけの終わり。
誰にも危害を及ぼさずに、たった一つの言葉をもって終わるほど、ちっぽけな世界。
玖渚という存在の消失によって――ぼくの世界は終わった。
皮肉なもんだ。
世界の終わりを阻止した者が、世界の終わりを望んだものより先に《そこ》へと至る。
なんて、戯言――――。
「それじゃあ真宵ちゃん、電話をかけてくれ。ぼくも運転に戻るよ」
「え……でも、いいんですか?」
真宵ちゃんが戸惑う気持ちは当然だ。
目の前で人生の別れ話をしていたのに、すぐに立ち直れる人間なんて余程の冷血漢くらいだろう。
そう思われても構わない。
構わないけれど、ぼくはこの殺し合いを終わらせて、《生き延びる》。
たとえ何人をこの《無為式》で犠牲にしようとも、生き続ける。
そして、なるだけ生かす。
それがあいつの――玖渚友の最後に望んだことならば、ぼくがやることは決まっている。
戯言抜きで。ぼくはあいつの《呪い》に嵌まってやろうと思う。
「いいんだ。ぼくらに出来ることをするしかない――止まっていることほど無益なことはないよ」
言うなり、ぼくは車を再度発進させる。
ああ、時間にして数十分と経っていない筈なのに、このハンドルの感覚がいやに懐かしい。
携帯を真宵ちゃんに渡すと、あとは今まで通りに往くだけだ。
うん、ぼくはまだ使い物になる。
戯言遣いは、《青色サヴァン》を喪ってもまだ、やっていけそうだよ、玖渚。
「……戯言さん。何があったのか私には分からないし、こんなこと言える立場じゃないと思いますけど。戯言さんは、強いひとだと思います」
真宵ちゃんが、ぼくの方をしっかりと見つめてそんなことを言う。
その目には、つい数時間前までにはなかった、はっきりとした強い意志があるようだった。
「それは違うよ、真宵ちゃん。ぼくは誰より弱いんだ」
ぼくは誰より弱い。
これほどぼくを正確に表現できる自己紹介はないと思う。
肉体的に見れば、そりゃあ周りが化物じみてるから霞んでしまうけれど、ごく一般的な――それか、一般より少し上くらいのパラメーターだろう。
しかし、それでもぼくは弱い。
誰が何と言おうと、誰に叱責されようと―――弱いんだ、ぼくは。
577
:
終わりの始まり《後編》
◆PKyKffdMew
:2012/10/13(土) 21:59:14
「じゃあ、戯言さんは弱いとしましょう。だったら、余計に貴方は凄い人だと私は思いますよ」
真宵ちゃんは引き下がらない。
「だって―――貴方は弱いのに、ちゃんと走り続けているじゃないですか」
戯言ってものだよ、それは。
ぼくはそう言おうとしたが、言葉が喉まで出かかったところで止めた。
根こそぎの物語。
玖渚友との死別。
二つを乗り越えたぼくに、何かしらの変化が起きていたのかもしれない。
そうじゃなくて、ただの気紛れだったのかもしれない。
それは誰にも分からない――ぼく自身にだって分からないことを、他の誰が知っているというのか。
「最初は怖いひとだと思いましたけど、戯言さんは――いい人です」
笑うその顔は、もういないぼくの《弟子》に似ているような気がした。
子供なのに、子供らしくない面を持っている。
ていうかファーストコンタクトの時の件についてはぼくなりに反省してる。
いくら何でも子供相手に、しかも初対面の相手にとる態度じゃどう考えてもなかった。
今こうして険悪じゃない関係を築けているのは、結構奇跡的なことだったり。
「だって、そうじゃなかったら―――あんな別れ方、できないと思うから」
―――ああ、そうかな。
ぼくはあいつに―――胸を張れる別れ方が、出来ただろうか。
ばいばい、玖渚。
楽しかったぜ。
【一日目/昼/F-3】
【戯言遣い@戯言シリーズ】
[状態]健康、精神疲労(中)
[装備]箱庭学園制服(日之影空洞用)@めだかボックス(現地調達)、巻菱指弾×3@刀語、ジェリコ941@戯言シリーズ
[道具]支給品一式×2(うち一つの地図にはメモがされている)、ウォーターボトル@めだかボックス、お菓子多数、缶詰数個、
赤墨で何か書かれた札@物語シリーズ、ミスドの箱(中にドーナツ2個入り)
[思考]
基本:「主人公」として行動したい。
1:電話をかける
2:―――ばいばい、玖渚。
3:真宵ちゃんと行動
4:できたらツナギちゃんと合流
5:豪華客船へと迂回しつつ、診療所を経由し、ネットカフェ、斜道卿一郎研究施設 いずれかに向かう
6:不知火理事長と接触する為に情報を集める。
7:展望台付近には出来るだけ近付かない。
[備考]
※ネコソギラジカルで西東天と決着をつけた後からの参戦です。
※第一回放送を聞いていません。ですが内容は聞きました。
※夢は徐々に忘れてゆきます(ほぼ忘れかかっている)
※地図のメモの内容は、安心院なじみに関しての情報です。
※どこに電話をかけたかは、次の書き手さんにまかせます。
※玖渚友が殺害されたことを確信しました
578
:
終わりの始まり《後編》
◆PKyKffdMew
:2012/10/13(土) 21:59:44
【八九寺真宵@物語シリーズ】
[状態]健康、精神疲労(中)
[装備]携帯電話@現実、人吉瞳の剪定バサミ@めだかボックス
[道具]支給品一式、 柔球×2@刀語
[思考]
基本:生きて帰る
1:戯言さんと行動
[備考]
※傾物語終了後からの参戦です。
※真庭鳳凰の存在とツナギの全身に口が出来るには夢だったと言う事にしています。
※日之影空洞を覚えていられるか、次いで何時まで覚えていられるかは後続の書き手様方にお任せします
※掲示板の携帯IDはLyseDGhpです
† †
「終わったよん」
玖渚友は、通話を切るとやけに明るい声色でそう言った。
まるで親しい友人に話しかけるような口調を聞いて、まさか会話の相手がこれから自分を殺そうとしている相手だと思う者は居ないだろう。
現に彼女は、一切の恐怖を目の前の男――真庭鳳凰に対して抱いていない。
いや、正確に言うならば《死》そのものを、怖いと思っていない。
何故なら彼女の肉体は、生きていることが不思議なくらいの欠陥品なのだから。
「それで、僕様ちゃんを殺すんだっけ。いいよ、一思いにやっちゃって」
当の鳳凰も、彼女の様子を異常だとは感じていた。
一度は手を組んだ奇策士。
鳳凰自身の手で殺めた否定姫。
異常な女性といえば真っ先に浮かんでくる二人だが、それとはまた違う異常性だ。
どこから見ても幼児体型で、おまけに戦闘能力は殆ど皆無といっていい。
なのに―――彼女の物腰には、一切の恐れがないのだ。
暴力を振るわれることにも、もはや目の前にまで迫った死に対しても。
何も恐れず――ただ、笑う。
鼻が潰れ、歯が折れ、砕けて笑顔を見せる度に痛々しく口腔に隙間が覗く。
普通なら失神していてもおかしくはない。
「ま、最後にいーちゃんと話せたから満足だよ。我が生涯に一片の悔いなし」
鳳凰の時代から数百年後、とある漫画が生んだ台詞を使う玖渚。
しかしその台詞が引用だと知らない鳳凰はより混乱を極めるだけだった。
滑稽でさえあっただろう――真庭忍軍の事実上の頭が、これほどの困惑を示す様子は。
だがそれも仕方ない。
相手は《死線の蒼》――とびきりの異常(アブノーマル)なのだから。
「では」
「うにっ」
鳳凰は炎刀を使わずに、素手で終わらせることを決めた。
一撃で、この真庭鳳凰の心を乱す存在を消し去るためだ。
匂宮出夢の片腕――掲げて、降り下ろす。
最期の瞬間、玖渚友は一言を遺した。
その言葉の意味は、難解でも何でもない。
鳳凰どころか、この世に生きるほぼ全ての人間が理解できる、簡単すぎる辞世の句。
「だいすき」
首に凶器の腕が直撃する。
勢いのまま玖渚の下顎を吹き飛ばし、首の骨までも破壊した。
《死線の蒼》に与えられた終わりは呆気なく。
それ故に―――安らかな終わりを、サヴァンの少女に与えた。
579
:
終わりの始まり《後編》
◆PKyKffdMew
:2012/10/13(土) 22:00:21
† †
「――化物め」
玖渚の死体を見下ろして、鳳凰は一言そう漏らした。
あの蒼色は、もう二度と動かない。
首があらぬ方向を向き、首の皮一枚で繋がっているような状態だ。
小柄な体躯に見合わぬ鮮血を吹き散らして、首の骨も間違いなく粉砕に近い状態で折れている筈。
下顎は吹き飛んで、数本の隙間が開いた歯がずらりと並んでいるのが確認できた。
間違いない。絶対に死んでいる。
「本当に、まともな輩の方が少ないのではないか………?」
鳳凰は溜め息混じりに呟いた。
ここまで来ると、もう溜め息しか出ない。
虚刀流の姉、口だらけの化物、橙色の破壊者、そして目の前の蒼色の死線。
何故真庭忍軍の方がまともに見えるのだ。
「やはり、厄介以上に面倒だな――願いを勝ち取るにしろ、それまでの過程が過酷すぎる」
だが止まれん、と鳳凰は付け足した。
真庭の里の復興。
その悲願は、ちょっとやそっとの壁で諦められるほど軽いモノではない。
どんな手段を用いようと、生き残れればそれで構わない。
しのびらしく、上手く立ち回っていかなければなるまい――鳳凰は一人、殺戮の現場を後にした。
脳裏に思い出されるのは、玖渚友が通話を切る前に言った言葉。
あの言葉を言った瞬間だけ、彼女が普通の少女に見えたのだ。
【一日目/昼/D-7斜道卿壱郎の研究施設】
【真庭鳳凰@刀語】
[状態]健康、精神的疲労(中)、疲労(小)
[装備]炎刀『銃』(弾薬装填済み)、匂宮出夢の右腕(命結びにより)
[道具]支給品一式×2(食料は片方なし)、名簿×2、懐中電灯、コンパス、時計、菓子類多数、輪ゴム(箱一つ分)、ランダム支給品2〜8個、「骨董アパートで見つけた物」、首輪×1、真庭鳳凰の元右腕×1
[思考]
基本:優勝し、真庭の里を復興する
1:西へ向かう
2:本当に願いが叶えられるのか――しかし、止まる訳にはいくまい。
3:今後どうしていくかの迷い
4:見付けたら虚刀流に名簿を渡す
[備考]
※時系列は死亡後です。
※首輪のおおよその構造は分かりましたが、それ以外(外す方法やどうやって爆発するかなど)はまるで分かっていません
※「」内の内容は後の書き手さんがたにお任せします。
※炎刀『銃』の残りの弾数は回転式:5発、自動式9発
※支給品の食料は乾パン×5、バームクーヘン×3、メロンパン×3です。
※右腕だけ《一食い》を習得しましたが、まだ右腕での力の細かい制御はできないようです
※D−7・斜道卿壱郎研究施設内部が一部破壊されています
580
:
終わりの始まり《後編》
◆PKyKffdMew
:2012/10/13(土) 22:00:47
† †
「 「愛してるよ」 」
【玖渚友@戯言シリーズ 死亡】
581
:
◆PKyKffdMew
:2012/10/13(土) 22:01:18
投下を終了します。
582
:
誰でもない名無し
:2012/10/15(月) 18:24:53
仮投下乙です
玖渚の異常っぷりが素晴らしい
八九寺も着々とヒロインの道を歩んでますなあ
いーちゃんももっと取り乱すかと思ったけどなんとかなりそうで一安心
ですが、前話で出てたハードディスクの解析について何も言及されてなかったのがちょっと気になったかな…
583
:
管理人 ◆VxAX.uhVsM
:2012/10/23(火) 23:36:24
仮投下から一週間以上経ち、◆PKyKffdMew氏の反応がない状態が続いています。
指摘点もある状態で投下をするわけにもいかないので、10月24日の0:00より7日間反応がなかった場合は破棄とさせていただきます。
もし破棄されても他の書き手さんに予約が取られてなかった場合は破棄された日にちから1週間後に再予約可能としたいと思います。
584
:
誰でもない名無し
:2012/10/24(水) 15:57:08
age
585
:
◆0UUfE9LPAQ
:2012/12/03(月) 14:42:50
連投規制くらったのでこちらに
586
:
◆0UUfE9LPAQ
:2012/12/03(月) 14:43:07
それと同時に、船の影に入る。
こんな時間だと、影ってほぼないんだけどね。
ちょっとだけ更に歩くことになるけどこれは気分の問題だ。
「放送は船の中で待とうか。冷房もきいているだろうし」
「そうですね、さざれ言さん」
「ぼくは別に国歌の歌詞にあるような小石じゃないからね」
「失礼、噛みました」
「違う、わざとだ」
「噛みマスター」
「ぼくはまだ噛まれマスターになった覚えはないよ」
そもそもなんだよ、噛まれマスターって。
【一日目/昼/G-2 豪華客船】
【戯言遣い@戯言シリーズ】
[状態]健康
[装備]箱庭学園制服(日之影空洞用)@めだかボックス(現地調達)、巻菱指弾×3@刀語、ジェリコ941@戯言シリーズ
[道具]支給品一式×2(うち一つの地図にはメモがされている、水少し消費)、ウォーターボトル@めだかボックス、お菓子多数、缶詰数個、
赤墨で何か書かれた札@物語シリーズ、ミスドの箱(中にドーナツ2個入り)
[思考]
基本:「主人公」として行動したい。
0:放送を待つ
1:真宵ちゃんと行動
2:玖渚、できたらツナギちゃんとも合流
3:豪華客船を探索して、診療所を経由し、ネットカフェ、斜道卿一郎研究施設 いずれかに向かう
4:不知火理事長と接触する為に情報を集める。
5:展望台付近には出来るだけ近付かない。
[備考]
※ネコソギラジカルで西東天と決着をつけた後からの参戦です。
※第一回放送を聞いていません。ですが内容は聞きました。
※夢は徐々に忘れてゆきます(ほぼ忘れかかっている)
※地図のメモの内容は、安心院なじみに関しての情報です。
※携帯電話から掲示板にアクセスできることには、まだ気が付いていません。
※携帯電話のアドレス帳には零崎人識のものが登録されています。
※参加者が異なる時期から連れてこられたことに気付きました。
【八九寺真宵@物語シリーズ】
[状態]健康、精神疲労(小)
[装備]携帯電話@現実、人吉瞳の剪定バサミ@めだかボックス
[道具]支給品一式(水少し消費)、 柔球×2@刀語
[思考]
基本:生きて帰る
0:放送を待つ
1:戯言さんと行動
[備考]
※傾物語終了後からの参戦です。
※真庭鳳凰の存在とツナギの全身に口が出来るには夢だったと言う事にしています。
※日之影空洞を覚えていられるか、次いで何時まで覚えていられるかは後続の書き手様方にお任せします
6
結論から言えば、りすかは意識を取り戻していた。
電話の着信音で目を覚ましていたが、二人は電話に気を取られ、気づかれることはなかったらしい。
手足を拘束されていて、しかもカッターナイフも手元になかったため、起きているのを悟られないように情報収集に努めるしかなかった。
話を聞く限り、今すぐ殺すつもりはないらしく、しかもこれから移動させられるようなので創貴と会えるチャンスが広がると思いあえて寝たふりを続けていたのだが、感づかれてしまったようだ――
587
:
◆0UUfE9LPAQ
:2012/12/03(月) 14:43:36
「あんたが十中八九曲識のにーちゃんを殺したのは見当ついてるんだ」
人識は目を閉ざしたままのりすかに告げる。
起きていようが寝ていようが同じことだと言わんばかりに。
「まず最初におかしいと思ったのが兄貴のデイパックが2つあったことだ。
もちろんそれだけならなんもおかしくねえ、どっかの誰か殺してぶんどったのかもしれねえしな。
ただし、中に地図やら食糧やらの『全員に共通で支給されたものが入っている袋』がなければ話は別だ。
地図や名簿はともかく、食糧やら水はあった方がいいに越したことはないからな。
つまり、兄貴は2つ目のデイパックをどっかから拾ってきたんだ。
それがどこかなんて確かめるまでもねえ、曲識のにーちゃんのとこに決まってる。
そしてあんたはどうなんだろうな。
兄貴の前じゃやりにくいからさっき確認させてもらったが、一つの袋の中に二人分のが入ってる。
なんでわざわざそんなことをしたのかと思ったが中身見て納得したよ。
片っぽの食糧がカップ麺だったんだもんな。
お湯がない状態でそんなもんもらっても食えるわけがねえ、だからあんたは食糧をいただいたんだ。
食糧が入っている袋ごと水やら地図やらもな。
しかしだとすると疑問が残る。
どうして武器まで持っていかなかったのかってな。
中に入っていたのが自分には使えないものだったから?
それにしたって糸はともかくハンマーは立派な凶器だ、他の人に渡る可能性を残すより自分で持って行った方がいいだろ。
そんでもってあんたが持ってた武器らしい武器はあの時に持ってたカッターナイフだけだ。
つまりあんたは隠し玉らしい隠し玉がなければあのカッターだけで曲識のにーちゃんを殺したということになる」
いつしか容疑者から犯人と断定されていることにりすかは気づかない。
人識の話に呑まれていってしまっている。
もちろん、りすかに反論の余地は残されているのだが、創貴がいない今りすかが人識を相手に会話を成立させらるかというと、難しい話。
「だがそんなもん俺には関係ねえ」
しかし相変わらずりすかの反応を気にせず続ける人識。
「あんたが曲識のにーちゃんを簡単に殺せる力を持っていようが持っていまいがそんなの知ったこっちゃねえんだ。
そもそも零崎なら『かもしれない』ってだけで十分殺す理由になる。
俺があんたを殺さないのは人類最強がこの会場にいるから、ただそれだけだ。
出夢のときは手加減なんてできるわけねーから結果的に殺しちまったけどな。
基本的にナイフしか俺は使わねーけど殺すだけなら簡単にできるんだぜ?
例えば、俺が今持ってるこのナイフで刺し殺せる。
日本刀を使えば斬り殺せる。
この手を使えば縊り殺せる
曲絃糸を使えば絞め殺せる。
拳銃を使えば撃ち殺せる。
ハンマーを使えば殴り殺せる。
青酸カリの毒を盛って殺せる。
シュッレッダー鋏を使えば刻み殺せる。
兄貴からくすねた手榴弾を使えば爆ぜ殺せる。
兄貴に協力してもらえばトラックで轢き殺せる。
同じようにトラックで圧し殺せる。
ガソリンぶっかけて火をつければ焼き殺せる。
ざっと手持ちの道具だけでこれだけ方法があるんだ、殺しても死なないやつはいても殺し続けて死なないとは限らねえ――っと」
話を中断した人識は突如鳴りだした携帯電話を触る。
自分の方を見ていないと判断したりすかは薄目を開けて気づかれないように周囲の状況を確認しようとした。
しようとしたことを激しく後悔することになる。
見て、しまったから。
携帯電話の画面を見る瞳に存在していたから。
まるで、この世の混沌を全てない交ぜにしてぶち込み煮詰めたような、奇妙に底のない闇を。
588
:
◆0UUfE9LPAQ
:2012/12/03(月) 14:45:16
闇を刻み込んだような、深い眼を。
神を使い込んだような、罪深い瞳を。
瞬間に理解してしまう。
さっき言っていたことは本当なのだと。
血が流れない手段で殺されてしまえばあっけなく自分が終わりを迎えてしまうことを。
恐怖で、目を瞑る。
が、更に追い打ちをかける言葉を聞いてしまう。
「『もしツナギという小学校高学年くらいの女の子を見かけたらぼくたちは豪華客船にいると伝えてくれ』、ね……」
仲間の名前を聞かされて思わず体が反応してしまう。
手がぴくり、と動いたのを人識は見逃さなかった。
「ふーん、こいつはそのツナギってのと知り合いなのかね。まあどっちでもいいんだけどよ」
どっちでもいい、というのはまさしく額面通りである。
これ以上真偽を追及するつもりはないらしく、慣れた手つきで戯言遣いからのメールに返信していく。
関係するかもしれないとわかった時点で殲滅の対象に入るのだから。
そして、携帯電話をしまうと同時に液体の入った小瓶を取り出し、りすかに告げる。
逃げ場はないと言い聞かせるように。
「何かできるとは思えねーけど、一応警告しておく。
少しでも怪しい素振りを見せたらこいつを飲ますか嗅がすかする。
2年くらい前に俺自身が身を以て体験したからわかるが拷問にはうってつけのもんだよ。
何せ、自分の意思で体は一切動かせないのに感覚ははっきり伝わってくるんだ。
反射行動を取ることすら許されない、相手にされるがまま、なんてのはどういう気分なんだろうな。
ま、俺が説明してやることもできなくはねーけど、それは実際になってからのお楽しみってことで」
目をとじたままのりすかの眼前で小瓶を軽く振り、音で中身があることを示すと再びデイパックにしまう。
りすかは動かない、否、動けない。
かつて渡瀬記念病院でツナギと初めて相対したときと同じかそれ以上に恐怖してしまっている。
本来なら遅れをとることなどまずない魔法を使えない一般人に対して。
(キズタカ……早く会いたいの……)
声にならない思いは届かない。
一方で人識もりすかに聞かれているだろうことをわかって呟く。
「ま、今の状況なら簡単に逃げ出せるんだけどそれが原因で兄貴に死なれるなんてことになったら寝覚め悪いし最後まで付き合ってやるか」
今度こそ独り言を。
「兄貴の足手まといになるのだけは――ごめんなんだ」
気まぐれな彼にしては珍しく、ぶれることのない本音を。
トラックは走り続ける。
589
:
◆0UUfE9LPAQ
:2012/12/03(月) 14:45:39
【一日目/昼/C-4】
【零崎人識@人間シリーズ】
[状態]健康、腹八分目
[装備]小柄な日本刀 、グリフォン・ハードカスタム@戯言シリーズ
[道具]支給品一式×5(内一つの食糧である乾パンを少し消費、一つの食糧はカップラーメン一箱12個入り)、医療用の糸@現実、千刀・ツルギ×2@刀語、七七七@人間シリーズ、
奇野既知の病毒@人間シリーズ、携帯電話@現実、手榴弾×1@めだかボックス、青酸カリ@現実、S&W M29(6/6)@めだかボックス、大型ハンマー@めだかボックス
[思考]
基本:兄貴の違和感の原因をつきとめる
1:兄貴の信用を得るまで一緒に行動する
2:時宮時刻と西東天に注意
3:ツナギに遭遇した際はりすかの関係者か確認する
4:事が済めば骨董アパートに向かい七実と合流して球磨川をぼこる
5:哀川潤が放送で呼ばれれば殺人をしないつもりはない
[備考]
※曲絃糸の射程距離は2mです。
※曲絃糸の殺傷能力(切断・絞殺など)は後の書き手さんにおまかせします。
※りすかが曲識を殺したと考えています。
※携帯電話の電話帳には戯言遣いが登録されています。
※参加者が異なる時期から連れてこられたことに気付きました。
【零崎双識@人間シリーズ】
[状態]健康、腹八分目、悪刀・鐚の効果により活性化
[装備]箱庭学園指定のジャージ@めだかボックス、カッターナイフ@りすかシリーズ、軽トラック@現実
[道具]支給品一式(食糧の弁当9個の内3個消費)、体操着他衣類多数、血の着いた着物、カッターの刃の一部、手榴弾×2@めだかボックス
[思考]
基本:家族を守る
0:クラッシュクラシックに向かう。
1:目の前の零崎人識を完全には信用しない
2:りすかが目覚めたら曲識を殺したかどうか確認する
3:他の零崎一賊を見つけて守る
4:零崎曲識を殺した相手を見付け、殺す
5:真庭蝙蝠、並びにその仲間を殺す
[備考]
※他の零崎一賊の気配を感じ取っていますが、正確な位置や誰なのかまでははっきりとわかっていません
※現在は曲識殺しの犯人が分からずカッターナイフを持った相手を探しています
※真庭蝙蝠が零崎人識に変身できると思っています
※鐚の制限は後の書き手さんにお任せします
【水倉りすか@りすかシリーズ】
[状態]手足を拘束されている、零崎人識に対する恐怖
[装備]無し
[道具]無し
[思考]
基本:まずは、相棒の供犠創貴を探す。
1:この戦いの基本方針は供犠創貴が見つかってから決める。
2:――――――?
[備考]
※新本格魔法少女りすか2からの参戦です。
※治癒時間、移動時間の『省略』の魔法は1時間のインターバルが必要なようです。(使用可能)
なお、移動時間魔法を使用する場合は、その場所の光景を思い浮かべなければいけません。
※大人りすかについての制限はこれ以降の書き手にお任せします。
590
:
◆0UUfE9LPAQ
:2012/12/03(月) 14:46:05
支給品紹介
【携帯電話@現実】
病院坂迷路に支給。
普通の携帯電話。
櫃内様刻のものと同じく登録情報(電話番号・アドレス)以外のデータは入っていない。
【奇野既知の病毒@人間シリーズ】
病院坂迷路に支給。
小瓶に液体状で入っており、気体にして拡散させれば原作と同じ症状を引き起こす(制限により持続時間は20分)。
そのまま全量を被験者に投薬すれば永遠の眠りに導くこともおそらく可能。
【S&W M29@めだかボックス】
零崎人識に支給。
通称マグナム44、装弾数6発の回転式拳銃。
発砲したときの反動が凄いため片手で撃つのは多分不可能。
宗像君はどうやって撃つつもりだったんだろうか。
【手榴弾@人間シリーズ】
零崎双識に支給。
ベリルポイントお手製の手榴弾、3個入り。
自爆用だったことから考えるとおそらく爆風で狭い範囲を殺傷するコンカッションタイプ。
【青酸カリ@現実】
零崎双識に支給。
小瓶に粉末状で入っている。
致死量を超えて投与した場合、適切な処理をしなければ15分以内に死亡させる。
【軽トラック@現実】
零崎双識に支給。
一般的な白の軽トラ。
【大型ハンマー@めだかボックス】
零崎曲識に支給。
宗像君は片手で一本ずつ持っていたけど実際同じことをやろうとしたらかなり筋力がいるはず。
宗像君凄い。
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