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仮投下スレpart1

566終わりの始まり《前編》 ◆PKyKffdMew:2012/10/13(土) 21:50:49
気圧された鳳凰は、半ば反射的に玖渚へ携帯を投げ渡す。
ありがと、と呟くと玖渚は携帯を開き、何かを打ち込み始めた。
鳳凰にはその意味が分からない。
が、仕掛けのようなものが作動する様子もどうやらない。
何をする気なのか、分からない。

「えへへ……いーちゃん」

――だから、玖渚友が何故笑うのかも、分からない。
理不尽すぎる死が迫って、もう逃れる術はほぼ皆無だろう。
あの様子では、奇策の類を隠してもいないようだ。
援軍にでも来られれば話は別だが、それはかえって鳳凰にとっちゃ好都合。
一網打尽にすることが出来るのなら、そっちの方がありがたくさえある。

が、この少女とて鳳凰の力量を理解していないなんてことはあるまい。
表情を見れば一発で分かる。
彼女は何の策も有してはいないと。
ここで自分は死ぬ。
少女には厳しすぎる現実をしっかりと受け止めている様子だった。
哀れにも見えるその姿に、疑問こそ抱けど情けをかける鳳凰ではない。
お涙頂戴な展開にいちいち心を動かされていては、しのびなど勤まるものか。


しかし、どうしてこの青い少女は笑うのか―――
最期の時を前にして、何故あんな風に―――


幸福そうに笑うのか。
それだけが、甚だ疑問だった。


† †


―――本当、奇妙なもんだよな。
世界ってものは、時にぼくらが想像も出来ないような展開をプレゼントしてくれる。
お伽噺なんかを読んで、大抵の子供は待っているハッピーエンドに満足して頁を閉じるだろう。
けれど、中にはぼくみたいなひねくれた子供だっている筈だ。
ぼくほど終わっていなくたって、それこそ子供心の疑問だって構わない。
《現実でこんなことってあるの?》と思う子が、きっといる。
ぼくが偉そうに言えたことじゃないけど、その疑問にぼくが回答させてもらうとしよう。

いわゆるご都合主義。
漫画や小説の中では、《メアリー・スー》なんて言葉で表現したりもするらしい。
国民的な作品、たとえば某青狸が未来からやって来る作品なんかじゃあ、どう考えたってありえないような状況で必ず、何かしらの幸運が味方して危機を逃れる場合が多い。
――まあ、お茶の間の善良な子供たちだって、愛らしいキャラクターが見るも無残に粉砕されたり、処刑されたりする光景なんて見たくないだろうから、これは必要な措置だけどね。

そういう展開が見たい人は、古本屋に行けばいいんじゃないかな。
世の中、案外えげつない作品は転がっているよ――この世の中自体も、既にえげつないけど。
ぼくや鏡の向こうのあいつ、それに数時間前の《人間未満》なんかが生まれる世界だ。
どう考えたって平等じゃないし、どう考えたって神様の悪意が感じられる。
人類皆兄弟と言った人がぼくのことを見たら、果たしてどう言うだろう。
言葉に詰まるか、意固地になって自分の意見を押し通すか。
どちらかだろうね。
どちらでも同じことの、ただの下らない戯言だ。

閑話休題。
ぼくが回答するなら――《案外、そういうものだよ。この世界は》――と答えよう。
そういうものなんだよ。
ご都合主義に物事が進んでいく、ぼくはそれを何度も体験している。

天才たちの島でだって。
京都の殺人事件だって。
首吊りの学園でだって。
害悪の研究所でだって。
殺し屋相手の時だって。
そして、あの《根こそぎにラジカルな物語》の時だって――そうだ。


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