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作品投下専用スレッド2

6424+1 ◆Ok1sMSayUQ:2015/06/14(日) 21:30:09 ID:GCAYWBHk0
「ということでだ。寝ろ」
「いや……」
「そないなこと言われてもな……」
「……」

 少女が『篝』という名になってからしばらくして。
 簡単な食事を取り(とは言ってもパンを齧るだけのことだったが)人心地ついたところで発されたオボロの言葉に、同行者の三人は当惑したように顔を見合わせた。

「なにのために野営の準備をしたと思ってるんだ」
「休憩のためやろ?」
「分かってるなら言うことを聞け」
「いやあのね、寝れると思ってるの」
「以下同文……」

 姫百合瑠璃に続いて不満の口をきいた綾之部可憐と篝に、オボロは難しい顔になる。
 むしろ喜んで提案を受け入れてくれるものだとばかり思っていたオボロは、どうやら戦場における考え方の違いに大いに隔たりがあるようだと改めて確信していた。
 常識、文化の違いと言えるならまだマシで、知識の基板そのものが違う。何せこちらが優秀な携帯食だと評価した『ぱん』なる食べ物をそこの可憐は「まずい」と一刀両断したのだから。
 しかも聞くところによると、より美味でより滋養も優れている携帯食があるらしく、オボロは慄然とした気分になったものだった。
 一事が万事そうなのだから、自らの常識は彼女らにとって時代錯誤の田舎者の考え方なのかもしれないという疑惑も生まれてくるというもので、オボロは説得するべきかどうか悩んだ。
 疲労は軽視していいものではない。休めと言ったのはこの一事に尽きる。
 たかが昼から夕刻にかけて歩きまわっただけかもしれないが、その程度と思っていると急激に体に来るのが疲労だ。
 しかもそのような時というのはあらゆる判断力が低下し、普段なら気付けるような事柄にも気付けなくなる。奇襲というものはその機を狙って行われるもので、
 それを幾度と無く実践し知悉したオボロにとっては早め早めの休息、特に眠るという行為は重要だった。ほんの少し目を閉じただけでも頭の冴えが違ってくる。
 彼女らには必要ないとも思えず、ならば別の手段をもって解決する手段があるのだろうかと考えてしまう。
 悩んだ末、オボロは正直に尋ねてみることにした。

「疲労は早めの対処をした方がいい。少し目を閉じるだけでかなり違ってくるもんだが……。何か他にいい方法があるなら教えてくれ」
「え? 寝ろってそういう意味なん?」
「……他にどんな意味があるんだ」
「朝まで寝ろって指示かと……」

 オボロは頭を抱えた。他の二人にしても同じ考えだったらしく、視界の隅で首を縦に振る姿が見えた。
 こいつらは俺より賢いのかバカなのか教えてくれ兄者ぁ! と叫びたくなった。さっきの悩みは一体何だったのか。

「……お前たちのいるニホンとかいう國は分からん……」
「な、なんやよう分からんけど、それくらいやったら大丈夫や。要は交代で見張りしながらちょっと休めってことやろ?」
「ああ……。まあ、もういい……。俺は後にするから、先にお前たちが寝てくれ」

 意図は伝わったのなら良しとする気持ちと、もうどうでもいいやという投げやりな気分が半分混ざった口調でそう言ったオボロに、
 今度は可憐が「……それはいいのだけど」と口を挟んでくる。

「貴方は大丈夫なの?」


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