したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

作品投下専用スレッド2

492レクイエムは誰がために  ◆92mXel1qC6:2011/09/27(火) 04:33:12 ID:oc4bCHTY0

その想いを察したのだろう。
誤解から朋也が襲ってしまった青年は僅かに躊躇を見せた後、女性の手を引き背を向ける。

「あんた、名は!?」
「音無、音無結弦だ!」
「俺は香月恭介、こいつは須磨寺雪緒だ! ……すまん」
「いいんだ、こういう役には慣れてる」

恭介は振り返ることなく問いかけ、そしてそのまま、雪緒と共に遠くへと消える。

「岡崎、お前も早く逃げろ!」
「けど、この状況は俺が。残るなら、俺が!」

しかし朋也の方は、この事態を招いてしまった責任を感じているのだろう。
逃げることをすぐにはよしとしてくれなかった。

「肩の壊れてるあんたじゃ、死にぞこないの俺以下だ!」
「っ、どうしてそれを!?」
「これでも医者を目指してたからな。気づくさ」

それでも朋也達をここに残すわけにはいかなかった音無は、弱みにつけ込むことも辞さない。
痛いところを突かれ朋也の抵抗の意思が薄れたと見るや否や、バイクの衝突のダメージからようやっと立ち直ったシルファに有無を言わさず命じる。

「シルファ、無理やりでも連れていけ!」
「れ、れも、れも、わたしはご主人様達も護れなくて。欠陥品で」
「メイドロボなんだろ! 人間を護るんだろ!? それがお前の夢なんだろが!」

シルファはメイドロボだ、人に仕えるものだ。
音無はその習性を利用して、シルファに命じることで、朋也を、シルファ自身も逃がそうとしているのだ。

「だったら、果たせ!」
「っ! う、くっ、うああああああああああああああああああ!」
「シルファ!? 待て、離せ! 音無、音無いいいいい!」

シルファが意を決し、顔をくしゃくしゃにしたまま、朋也を担ぎ、走り去る。

(そうだよ、それでいいんだよ、シルファ。
 俺が人を救えて満足できたように。お前なら人を守れて満足できるさ)

納得できず音無の名を呼び続ける朋也の声も、既に聞こえなくなっていた。
安心したからだろう。
あれだけ祐介が振り解こうとしても離さなかった音無の腕から、力が抜け落ちていく。
地に伏せる音無。
ようやく解放された祐介は疲れ果てた声で吐き捨てた。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板