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作品投下専用スレッド2

34 ◆Ok1sMSayUQ:2011/02/22(火) 20:35:55 ID:XHilZQxA0
 芳野祐介が見つけたものは、色々な『残骸』だった。
 ピクニックやお花見で使うようなビニールシートの上に、それらは乗っている。
 つまみ食いしたかのような、虫食い状態のおせち料理。
 ――プラス、穴空きの人間。
 まるで掘削作業でもされたかのように、横たわる少女の、胸部に握り拳ほどもある穴が空いている。
 よくよく見れば、かつて芳野も通っていた学校の女子制服である。
 あの頃と全く変わっていないという懐かしさが半分。よりにもよってというすわりの悪さが半分だった。
 恐らくは即死だったのだろう。死人の顔にしてはあまりにも安らかである。苦痛の一切も感じさせない。
 そういえば、と芳野は思った。
 俺は、俺の殺した人間の死に顔を見てもいない。
 二人ほど殺したはずだ。この娘と同じくらいの年頃の娘と、まだ子供そのものの少女を。
 彼女らの末期の顔を、芳野は覚えていなかった。

「戦の場で」

 首筋に、何かが押し当てられていた。
 視線を横にずらせば、見えるものは、歪な形をした剣であった。
 ギロチンだな、と芳野は感想を抱いた。

「呆けているのは感心しませんわ」

 雪が降るような、ただそこに積もってゆくだけの、落ち着き払った声音は女のものだった。
 何の感情も含まれてはいない。路傍に転がる石ころに向けるものと同質である。
 しかし女は、彼女は、石ころを蹴り飛ばしはしなかった。
 ならば、と芳野は語り始める。

「運試しをしてみないか」

 返事はない。刃が僅かに傾いた。
 処刑の時間に、戯れている暇はないと言いたげに、鈍色の光が芳野の網膜に映る。

「じゃあ、その前に推理をしてみせよう」


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