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32DISTANCE ◆Sick/MS5Jw:2010/09/05(日) 00:44:24 ID:hGXBmDyk0
「ま、気長に行くか……何せ俺たちゃ、うったわれるぅ〜、ものぉ〜、っとくらぁ」

男の足音と鼻歌じみた節回しが、遠ざかっていく。
それでも少年は動けない。
やがてそれらの音が消え、更にしばらくの時が過ぎても、少年は蹲ったまま、動かない。
動かない少年の上を、風が吹き抜けていく。
梢が、ざわめいた。

「……じまったら……」

微かな、声だった。
ざわめく梢に紛れるように、消え入るように。

「……死んじまったら、おしまいだ?」

少年が、声を漏らす。
その声が合図ででもあったかのように。

「わかってんだよ、んなこたぁ……」

少年が動き出す。
震える拳を握って、引き剥がすように、顔を上げた。

「俺たちゃもう―――」

泥に塗れたその顔が、光に照らされて歪む。
置き去りにされた刀の、陽光を反射した光だった。

「もう、終わってんだよ……!」

突き立つ刃のすぐ側を、小さな蟻が、這っていた。
叩き潰したのは、拳である。
鳶の舞う高く青い空から遠く離れて、震える拳で虫を潰し、独り地に伏す少年の名を、野田という。

死を越えて在る、それは存在の、筈だった。


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