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278「クライストとお呼びください」 ◆LxH6hCs9JU:2010/09/18(土) 00:32:08 ID:SUHlMk1A0
「それでも、戦線のみなさんは神様に抗ったんですよね。それじゃあ、今回みたいな場合はどうするんですか……?」
「一部のメンバーやリーダーは、反抗を続けるかもしれませんが……無意味でしょうね」
「どうしてですか?」
「これです」

 竹山は自身の首に嵌められている輪を指した。
 首輪。
 反抗的な態度を取ると爆破する、と神に脅されたやつだ。

「これを嵌められてしまった時点で、僕たちの負けは決まったも同然です。これでは為すすべもありません。ですから」

 竹山は眼鏡を持ち上げ、渚を見据える。

「死んだ世界戦線は終わりです。悔しいですが、神の指示するとおり……この殺し合いに乗ろうと思います」

 首輪があるということは、神はいつでもこれを爆破することができる。死者百二十人、いつでもすぐに消せるのだ。
 これでは学園の頃のように居座り続けることなどできない。将棋で言えば詰みの状態。退路もなかった。
 しかし納得できない渚は精一杯、声を振り絞る。

「そんな……! どうしようもないのはわかりましけど……だからって、他のみなさんを殺すことはないと思います」
「んー、それはどうかな?」

 言う花梨は、状況を理解していないのではないかと思えるくらいあっけらかんとしていた。

「渚ちゃん、覚えてるかな? あの神様は、この殺し合いのことを遊戯、つまりはゲームって呼んでたんよ」
「ゲーム……ですか」
「そそ。これってさあ、つまりは人生最後のお楽しみタイムってことだと思うんよ。神様のお情けだね」

 悲壮感なんてものは、ない。明日は、普通にやってくる。楽観的な態度。だけど憎めはしなかった。
 手の平が知らず知らずのうちに汗ばんでいた。唇を軽く噛んでいる自分がいる。花梨の言葉を緊張して待つ。

「だってさ。なにもできないまま終わるよりは、みんなで楽しく遊んで終わりたいじゃん?」

 花梨はしあわせをおすそ分けするように、渚に向かって微笑んだ。
 閉じていた唇が、勝手に開いた。無意識のうちに、花梨の言葉を反芻する。

「みんなで、楽しく……」
「そ。だから渚ちゃんを花梨ちゃんチームにスカウトしちゃう! 人材は早めに確保しておくんが吉なんよ!」
「事前に説明されたルールを鑑みれば、単独で動くことほど無謀なことはありません。ここは共同戦線を張るべきでしょう」

 考える……どうしよう、と。
 竹山の言うことが嘘だとは思えないが、自分が死んでしまっただなんて信じられない。
 お母さんやお父さん、それに数少ない友達まで死んでしまったというのは、もっと信じられない。
 でも、否定したからといってどうにかなる話ではないのだ。これは殺し合いなのだから、結局のところ、殺すか殺されるか。
 いや、渚の場合はただ殺されるだけだろう。いや、殺されるのではない。成仏するのだ。なにがなんだかわからなくなってきた。

 ただ、花梨の瞳を見ていると……不思議なことに、本当に不思議なことに、不安な気がしない。

 これは殺し合いと説明されたが、それはゲームのルールでしかないんだ。
 バトルロワイアルというよりは、サバイバルゲーム。水鉄砲やエアガンを持ち寄って男の子がするような、あんな感じ。
 殺し合いと思ってやれば悲劇だが、果てに待つのが新たな人生への扉なのだとすれば、これはいっそ喜劇なんじゃないだろうか。


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