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221
:
「All right let's go!」
◆LxH6hCs9JU
:2010/09/14(火) 02:04:36 ID:ieErrbK.0
天上学園――そこは、生徒総数二千人を超える全寮制の学校である。
そしてその学園は楽園であるがゆえに、死後の世界でもあった。
『死んだ世界戦線』と呼ばれる少年少女たちがいた。
彼らたちは皆、現世で未練ある死を体験し、天上学園に送られた者たちである。
曰く――その学園で未練を晴らせ、青春を謳歌し速やかに成仏しろ、と。
それはいるかどうかもわからない神の意思であり、少年少女たちの意向を無視した暴虐でもあった。
少年少女たちは抗った。ふざけんな。そんな簡単に成仏なんてしてやるもんか。
いつまでも死にきらず、天上学園に居座り続ける少年少女たちに対し、神は天使を遣わした。
天使は少年少女たちを襲い、半ば強制的にその存在を成仏――つまり、消去していく。
ますますふざけんな。そんな運命には従わない。死んでたまるか!
――そうして集まったのが『死んだ世界戦線』なのである。
「Rebels against the god」
ここに一人、死んだ世界戦線のメンバーたる男がいる。
名前をTK。偽名か、それともイニシャルか、どちらにせよ本名は誰も知らない。
赤いバンダナを額に巻き、目元まで隠した特徴的な容貌。金髪は染めているのか地毛なのか、そもそも国籍すら不明。
ブレザータイプの学生服を上着として羽織っているが、その下はネクタイつきのワイシャツではなく普通のTシャツ。
耳にはピアス。首からはシルバーのつもりなのか、なぜか一組の手錠を提げていたりと、見た目からして不可解な点が多い。
ストリートファッションに身を包んだ外国かぶれのヤンキー、といえば多少は聞こえはいいかもしれないが、彼は戦線メンバーの中でも極めて謎な存在だ。
そんなTKが、この殺し合いという状況下でどう動くか――
それは戦線のリーダーであるゆり、戦線の中で特に彼と親しい松下、その他の誰にも予測することは不可能だろう。
極めてFreedom。極めてMysterious。極めてDifferent。それが戦線におけるTKの立ち位置であり役割だ。
ただ一点、共通する信念があるとすれば――それは「死んでたまるか!」という絶対の意思。
既に死んだ身の上であるTKにとって、死とは昼休みに流れるSoundのごとく安いものである。
しかし、これが命をかけたSurvival gameであるというのであれば、やはり死んでやるわけにはいかない。
想いは他の戦線メンバーとて同じだろう。ならば起こすべき行動のカタチは決まっている。
「All right let's go!」
TKにとって、戦線メンバー以外の人間はNPC(ノンプレイヤーキャラ)であり、狙い撃つべきTargetでしかない。
ゲームを企てた者があんな、白い羽を生やした天使の親玉――神みたいな存在であるのなら、なおのこと。
戦線メンバー以外の人間は人間ではなく、天使。あの生徒会長と同等に討つべきenemy。
彼はTKとして動き、死んだ世界戦線のTKとして行動を起こす。
自らを犠牲にギルドへの道を切り開いたあのときのように、TeamとFriendsのため障害を葬る牙となるのだ。
◇ ◇ ◇
鬱蒼とした山中の森を、間の抜けた悲鳴と共に駆け抜ける一人の少女がいた。
半べそをかきながら、必死に、追いすがる謎の人物との距離を開けるためひた走る。
「ひ、ひえ〜」
傍目から見れば緊張感に欠けるが、本人にとってはれっきとした恐怖の表れである涙声。
木々が生い茂る山の中を、懸命に突き進む。彼女の名前は、神北小毬という。
学校指定のブラウスの上からやや大きめなセーターを着ており、腰元からはチェックのスカートが覗く。
髪型はショートボブ。左右を二本の赤いリボンで結っており、走るたびにそれが揺れた。
顔は汗だくで、両の瞳は混乱と動揺のあまりぐるぐる回っている。ドタバタという音が聞こえてきそうな走り方だった。
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