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◇月光裏街 =Moon Light Under the City= PartⅠ◇(

42 ◆YQUUXN652Q:2010/10/11(月) 07:56:46
(気怠げに響く雨音が辿々しく、緩徐に空間を満たす。常時漆黒を飾る星や月は鈍色の雲に覆われその姿を隠していた。雨音は静寂を掻き消し、暗雲はこの街の象徴を奪う。束の間の理想は返って現実を付けられる種しかならず、決して快いものではない。雨は無常を示唆し、時に人間に諦観を植え付けるのだ。雨避けには些か頼りない木の葉の屋根の下、太い幹に背中を預けていた彼は、無表情に雨脚を眺めていた。雨の匂いは難なく鼻腔を擽り、湿気を帯びた風はひんやりと心地よく肌を撫ぜる感触を残す。何気なく視線を地に落とせば、土に敷き詰められた枯葉が軽く雨を弾き、その甲斐もなく枯葉の層の合間から漏れ出した雫が土を濡らしていく様が目に見て取れた。腰を屈め、意味もなく一枚の枯葉を手に取る。茶色の表面に透明の粒が浮いていて、老いた葉にはそぐわない潤いを印象付けられた。軽く揺らすと呆気なく雫は散り、手で握ればくしゃりと音を立て砕け、細末となった。手の平を開き、崩れた枯葉を風に散らす。それは閑散とした地面に安易に溶け込んで、彼の目には追えなくなった。また、木の葉の屋根から雨漏れした雫が彼の髪や黒色の外套に落ち、流れ、後に染みとなって消える。軌跡を残し、絶える。その無常――言い様のない焦燥感に駆られ、彼は左胸に手を這わせた。奥でとくとくと波打つ鼓動が手の平から伝わり、それに安堵を覚え、小さく息を吐く。自身の鼓動と雨音が手を組んで、跳ね、沈み、けれど確かな音を奏でて鼓膜を振動させる。一貫性に欠ける忙しない音色は月光裏街を至当に支配しているが、雨脚が徐々に遠のいてきた今、平生の支配者である静寂が再び街を包容するのにそう時間はかからないだろう。心臓を圧迫するよう左手で強く押さえ付ければ、黒色の外套に深い皺が刻まれた。そして鼓動が一層大きく跳ねたような錯覚が、彼を満たす。決して枯葉や雨の行く末と己を重ねた訳ではなく、光陰を惜しんでいる訳でもなく、自分は無常の一部なのだと純粋に喜びを覚えたのだ。世の叡智を再確認し、静かに悦に浸る。彼は、夜霧に霞む視界の中、淀んだ漆黒を仰いだ。薄い雨雲の奥に潜む月光が作り出す造形美―朧げな黄色の丸い輪郭―を、雨宿りの暇潰しにと、飽く事無くぼんやり眺めているのであった。)
…今日は随分と大人しいんだね、いつもは自己主張が激しいくせに


(pl:お久しぶりです。受験の方は推薦を無事頂くことができ一段落つきましたので、その報告も兼ねソロルを投下させて頂きました。面接等全て終えたら再度顔を出させて頂きますので、レスのお返事はもう暫くお待ち下さい。季節の変わり目という事もあり気候も不安定ですので、皆様体調には十分お気をつけて^^)


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