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◇月光裏街 =Moon Light Under the City= PartⅠ◇(

24 ◆YQUUXN652Q:2010/07/19(月) 14:19:06
>>4エリス
(街灯の淡い橙色が、暗い街に点々と浮いていた。光の周囲に蛾の群れが纏わり、舞う姿が影となって地に伸びている。鱗粉を撒き散らしながら不恰好に飛び回るその様は、決して蝶のように美しく人の目に映ることはないだろう。自身が蛾で在ることに対してのプライドなど微塵も感じられない、その行為は、単なる生き物としての習性に過ぎないのだ。当然のことながら、闇を恐れて光を求めた訳ではない。それを知ってもなお、遺憾に思うのは自分の“黒”に対する執着故だろうか。ぼんやりと思慮に耽りながら歩く中、足音がやけに響いて聞こえるのが街の静寂を暗に仄めかしているようで―それが再び彼の思慮を深める材料となる。無意味な徘徊を嗜む内、ふと気がつけば、ただっ広い広場に出ていた。中央に聳え立つ象牙色の噴水は、月明かりを浴びながら水飛沫を上げている。静寂の中に響く水音からは、水面に波紋の広がる様が容易に想像できた。電灯もベンチも、まるで一つの作品のように規則的に配置されている。異質な街からこの広場だけが切り取られているような、そんな錯覚さえ覚えて。彼から数十メートル、歩数にして五十歩程であろうか―離れた位置に“   ”がいた。見間違うはずがなかった。白いワンピースの裾を風が撫ぜ、その先で真っ赤なストラップシューズがぷらぷらと揺れている。金色も、青白い肌も、二つのアメジストも、場を形成する雰囲気そのものが彼女だったのだ。あ、と零れるよう口を開けて、無意識に駆け出していく。例えるとすれば街灯の光に誘われた蛾の、それだ。多くの疑を問う前に、彼女の隣に佇む黒猫を褒める前に、謝る前に、少しでも早く近付きたかった。ベンチに座っている彼女を、壊れ物を扱うようにそっと抱き締める。単なるエゴだ、と自分を咎めた―が、ふわりと漂う甘い苺の香りにそれすらも忘れて、思い出した様に呟いた)
…ああ、エリスだ……


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