したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

◇月光裏街 =Moon Light Under the City= PartⅠ◇(

1スレ主様代理 ◆iCHkobYBCw:2010/03/13(土) 10:28:57
◇ City ◇
ここは月光裏街、一日中夜の街。
太陽は常にその姿を隠し、夜空には冴え冴えとした光を落とす、真っ白な月だけが浮かんでいる。
月光裏街にやって来るのは、皆、表の世界では生きられなかった者たちばかり。
今夜もここ月光裏街に、世にも不可思議な風が吹く−−

◇ Rure ◇
・基本何でもアリ(恋愛ALLジャンル、バトルも可)
・違反行為は禁止(過度のエロ、グロ等)
・登録はオリキャラのみで、キャラ設定は不要(ロール内で表現。自由度を上げるため)
・一期一会の精神
・次スレはコピペのできる方

(p:勢いに任せて建ててしまいましたが…大丈夫でしょうか?;
スレ主様に再建の許可をとっていませんので、一応"代理"という形で建てさせていただきました)

2エリス=ヴィオレッタ ◆7GIVPAr5O2:2010/03/27(土) 18:31:29
(PL:お久しぶりです。本体から失礼致します。
少々ネットが繋がらない状態…というか私情にて外国の田舎の方に行ってまいりました。
先日日本に帰ってきましたー、ただいまです。久しぶりに見てみたら親切にもスレッドを立てて下さった方がいたようで…
とても助かりました。本当にありがとうございます!まったりゆったりやっていきたいと思います。
というか…まだ参加者の方々はいらっしゃるのでしょうか?^^;  いらっしゃったらいるよーとでも
書き込んで頂ければ…また交流させて頂きたいです。では、本日はこれにて失礼いたします。)

3満月 ◆Agw9HWhObw:2010/03/28(日) 08:35:04
(pl:私も本体から失礼いたします。)

>>2 エリス様
(pl:えええ、エリスちゃんの本体様ー!良かった、まだいらしたのですね!
もしかしたら誰もいないのかな…なんて思ってしまっていたのです;
外国に行ってたのですか…お帰りなさい^^そして私は外国に旅立ちます←
あ、勝手に立てたのはこの満月の本体です;立てておいて何も書き込まずごめんなさいorz
私もまたエリスちゃんや他の皆様と交流していきたいと思っております。時間はかかると思いますが少しずつ復興していきましょう!
またエリスちゃんと絡めることを楽しみにしておりますーノシ)

4エリス=ヴィレオッタ ◆7GIVPAr5O2:2010/04/01(木) 18:37:34
(ぷらぷら、と暗闇の中に投げ出された青白い足が揺れる。エリスはベンチに座り、広さの割には少ないであろう電燈の光と月の光だけが、だだっ広い広場の割れた石畳を照らしているのを何をするでもなく眺めていた。ベンチの空いた左側には黒い猫が大人しく丸まっている。暗い人のいない広場のベンチに、以前とは違う、白いワンピースの少女と黒い猫という光景は「異常」とも取れるだろうが、それは外の世界の話で、この街では価値観も何もかもを放り出していいのだということを表しているようだった。ぷらぷらと足を揺らしながら、真っ暗に浮かぶ月を見上げて嬉しそうに笑ってはうふふだのくすくすだのと笑い声を零していた。少女の口の中では、イチゴ味の赤いキャンディが赤い舌で捏ね繰り回されて甘みを振りまきながら消えていく。がりっ、と小さくなってしまったそれにとどめを刺すように噛み砕くと、こくんと嚥下して)あまーいのは天国、じゃあにがーいのが地獄?……ぶっぶー、寂しい、のが地獄でしたー。……だぁれもいないねぇ、ねぇアリア。…二人っきりだねー。……もしかして知らない間に「深いところ」まで来ちゃったのかな?でもアリアがいるから「寒く」ないよ、ホントだよー(もう春だというのに、少女は長袖のワンピースを着ているというのに「寒い」というよく分からない表現を使いながら、常人には分からぬであろう言葉を口にしながら隣の黒猫を撫でる。青白い肌、シャンパンゴールドの長い髪に紫の瞳、黒い猫、真っ赤なストラップシューズは、御伽噺のようで。それが現実にあるのだというのだから、この街は精密に狂わされているのだった)

(PL:うぉぉ駄目だ久しぶりすぎて書き方をすっかり忘れてしまっていますね……!エリス本体です、こんにちは。これが今の私の精一杯です許してやって下さい……ホントに……orz
誰か参加者の方、もっかいエリスに構ってやってくれる方は是非絡んでやって下さい…!)


>>3 満月
(PL:よかった……人がいた……!スレを立てて下さってたんですね、本当にありがとうございます^^!
外国に行かれる、ということで……行かれる場所にもよりますが、気を付けて…!旅行などであれば是非楽しんできて下さい!)

5満月 ◆Agw9HWhObw:2010/04/17(土) 22:18:59
(p:遅くなりました;外国からは大分前に帰ってきていたのですが、体調を崩したりしてまして…orz というか、高校ってこんなに忙しかったんですね!暫く、ぽつぽつ来ることになると思います;)

>>4 エリス
(淡い月光に照らされた細い路地の壁に存在する影が揺れる度、カツン、という固体と固体がぶつかる音が響く。影の主である少女は灰色がかった柔らかな髪を靡かせ、白いワンピースから伸びるは細い足。確かな外観を持つ彼女の姿も、影となっては全てが一色、輪郭が曖昧で、壁と影の境界線がぼやけているという事実は現在の彼女の精神状態によく似ている。周囲を見回しても少女以外に「人」らしい人影はない。最も、少女にとっての「人」とは、少女が知る人物であり少女を知る人物であること。この街にとってそのような条件を満たす「人」は限られているために「人」が中々見つからないのは至極当たり前のことで、少女が「人」を求めて歩き回るのもまた当たり前のこと。最早歩く時はその動作をしていないと落ちつかないとでもいうかのように、白を纏う少女は両手を広げ、その身に風を受けながら歩いていた。「人」を探して、月が二度目の満月を迎えたこの日。路地からぬけでると、淡く朧だった光は、心なしか強まったように感じて、彼女は口元に小さく弧を描き、"何か良いことがありそうなのよ"とくつくつと喉を鳴らしながら内心で呟いた。そしてその呟きは的中。少女は「人」を見つけた。路地から出て374歩目のこと。変わらない、変わることのない、彼女にとっては自分という存在を証明してくれるというとても大切な「人」が、確かに目の前に存在していた。どこか弱々しくなっているという印象も受けたが今はそんなことがどうだってよいと感じる。今、ただ感じるのは"嬉しい"という単純にして大切なその感情。今すぐにでも走って飛びついて、彼女の温もりを感じたかったが、はやる気持ちを抑え、一歩一歩を踏みしめるように、彼女への道のりを大切にするかのようにゆっくりと歩いて、彼女の目の前に立つ。両手を広げたまま、はにかんだ笑いを零して小首を傾げると、たった一言、言葉を継げた)
――……見ーつけたっ。

6エリス=ヴィオレッタ ◆7GIVPAr5O2:2010/04/17(土) 23:47:54
>>5 満月

(ふわふわ、ゆらゆら、と意識が半液状の暗闇の中でたゆたうのを感じながら、ベンチに座り込んでいた。傍らにあるアリアの小さな体に左手を置いて、ゆるやかにただひたすら呼吸を繰り返していた。眠いのだろうか?それとも空腹か何かのあまり体が停止しようとしているのだろうか?いや、他人との接触がなさすぎて、きっと世界と私の境界がなくなりつつあるんだわとエリスは穏やかな気持ちで、そう思った。消滅するならそれでいい。それが愛おしい、敬愛してやまない『彼』の与えてくれた結末なら、何だって受け入れられる―…そう思っていた。しかし、聞こえる小さな足音にそんな暗い運命予想は消えていってしまった。しかし、一度ぬるま湯に浸かった意識はなかなか腰を上げてくれず、未だふらふらふわふわした意識を引きずりながら顔を上げる。明かりの少なすぎる中でも、その見慣れた顔ははっきりとわかった。徐々に意識が覚醒していく毎に、エリスの表情は嬉しそうに明るくなっていき)―――…満月、満月だぁ…。どうしてここに私がいるって分かったの?……ああ、でもそんなことどうだっていいわ。だって私、今凄く嬉しいんだもの!(彼女が許してくれたなら、至極嬉しそうに笑ったエリスは、目の前の満月にきゅうっと抱き着くだろう。好きよ、と全身で表すように)


(PL:満月ちゃん、お帰りなさい!体調を崩されていたということで…大丈夫でしょうか?(´・ω・)
衛星面がきっちりした外国の国ならいいですが、そうでない国に行かれていたなら、本当に気をつけて下さい…!
高校はかなり忙しいですよね…でも以前のようにゆっくりまったりやっていきましょう!^^)

7満月 ◆Agw9HWhObw:2010/04/18(日) 00:46:21
>>6 エリス
(翳っていた彼女の表情は時間の経過に比例して明るくなり、発せられた声音からは嬉々や喜々といった感情が滲み出ているように感じられた。温かみのある声で形成された"満月"という4文字の言葉を聞くと、元から微笑が浮かべられていた彼女の表情は更に明るくなる。目の前の人物、エリスに声をかけることに対して全くの不安がなかったわけではないのだ。もしも彼女が「人」でなかったら、もしもエリスが私を忘れていたら、もしもエリスの心に、一片の光さえもなかったとしたら――という、表に出さないものの内心の深層部にはそういった不安要素が蔓延っていたのだ。しかしそんな心配ももういらない。彼女は「人」で私を覚えていて、表情と声音をきく限りは四方八方暗闇という訳ではないようだ。それに加え、私も嬉しいし彼女も嬉しい。夜風に灰色の髪を靡かせた少女にとって求めていた情報はたったそれだけ、それだけの情報が入ればあとはもう十分。今日の天気も今の時刻も、いくつか向こうの通りを闊歩する人間の存在も何もいらない。今は目の前の彼女の笑顔と声音で頭がいっぱい。自分という存在がいることで喜んでくれているのが嬉しくて、"凄く嬉しい"と言う彼女の言葉にうんうんと何度も頷いて同意しながらにっこりと微笑む。誰かに求められたという事実に大きな幸福を感じ、それを笑みという形で全面的に押し出して。微笑みを讃えた表情に広げられたままの両腕は、彼女に対して、少なくとも拒否を感じさせるものではないだろう。降り注ぐ月光は、硬く冷たい石畳を柔らかく照らしていた)
今晩和、エリス。私だって、すっごく、すっ…ごく、嬉しいの…!お月様が、明るいから…良いことが起こりそうな予感がしてたの。きっと、あの予感はエリスと会えたことだったのね。


(p:ただいま帰りましたぁー!大丈夫です、数日ですっかりです^^
っへへ…旅行に行くと、必ずといっていい程、風邪を引いたりする私なので…環境の変化に弱いみたいです。衛生面は大丈夫でした(・ω・´)
ご心配かけてすみません;
はい、びっくりです…まさか8時間授業だなんて思ってませんでしたから…orz
でも、以前のように…いえ、以前以上にゆっくりかもしれませんが、宜しくお願いします^^)

8プラディジー ◆iM/eI.SIzs:2010/04/18(日) 15:33:21
(PL:さ、再建してくださってる…(;ω;)お久しぶりです!スレが消えてしまった悲しみで暫く引きk(ry)ってたプラディジー本体です!久しぶりに来てみたらあがっていたのでびっくりしました、満月様本当にありがとうございます^^/よければまたこのホームレスと絡んでやってください!)

>>3満月
(PL:初めましてになるんでしょうか…お久しぶりです!ホームレス駄目男の本体です+再建してくださって本当にありがとうございました、自分も一応キャッシュは探していたのですがぜんぜんで…役立たずですいませんoyz外国に行ってらっしゃったんですか!自分は怖くて一生国内から出れそうになry)おかえりなさい!体調は大丈夫ですか?;満月ちゃんと絡めるのを楽しみにしていますねノ)

>>4エリス
(PL:お久しぶりです!またエリスちゃんと絡めるて嬉しいです^^帰国されたということで、遅ばせながらおかえりなさい!無性にコンビニまでいって苺味の飴ちゃんを買いたくなりました←)よし、今から行ry)
(深く、堕ちる。暗闇は遠くて、埋もれることさえ許されないのかと思うと、この世界も案外狭いんだなと感じる。この街は限りなく自由で、誰もが描くような幻想郷なのに、隅っこはどうしてこんなに。吐き出すとまだ真っ白い息が上へ上へと昇れば、跡形もなく消えていく。首に巻いただけの襤褸切れのように見えるマフラーに口元を埋めれば、今夜はどこで寝ようかとそんなことを考えながら夜道を歩いていた。決まった宿のない自分にとって、屋根があって寝転がれる程度に綺麗なところであればそこは”家”だ。一度眠った場所に留まらず、ころころと居場所を変える理由は自分にもよくわからない。永遠につきっぱなしの街灯の下は、懐かしささえ薄れるほど遠い昔に浴びた太陽の温かさをほんの少し、ほんの少しだけ思い出せるようで、すぐにその場から離れた。すると歩を進めるごと次第にはっきりと見えてくる人間の輪郭に、ぐるんと頭のなかの記憶が全てひっくり返る。目の前の少女のことを思い出したということ、だった。流れるようなシャンパンゴールドの髪に、青白い肌。まわりが淡色すぎるからこそ映える、二つのアメジスト。少女なのに、少女は少女でない。以前と違う洋服を着ている、ということすらも思い出したのか、なぜか目の前の少女は以前とは違って見えた。襟足の長い金髪を掻きながら近づけば、声をかけようとして開いた唇が閉じる。ベンチの上に丸々猫を見て、少女が独りではないことを知った。)
お前、こんなところで一人で何してるん―――……なんだ、こいつも一緒だったのか

9 ◆YQUUXN652Q:2010/04/23(金) 20:44:23
(この異世界は四月を否定しているのだろうか。指先を赤く染める冷たい風、湿気の帯びた地に張り付く枯葉、呼吸という行為すら憚られるほどの、静寂。住民の視点からすれば何ら変わりの無い景色であるが、それでも今年は昨年以上に“春”とやらを感じない。ここ数日は雨続きの荒れた空を仰ぐばかりだ。黒の外套とマフラーを未だ身に纏っている辺り、冷気は冬並みであることに違いない。―ふと小説の一場面を思い出す。穏やかな春風、碧碧と茂る草木、小鳥の囀り、全ては書物の作者によって作られたフィクションに過ぎなかったのだろうか。丁寧な描写から頭に浮かんだ景色は、決して幻想的ではなく、とても優しいものであったのに。戯言と寒さを紛らわすように両手に息を吐き出して、暗闇に白を燻らせる。所々ぬかるんでいる地面に気を払い、しゃり、と枯葉の潰れる控えめな音を楽しみ、次に静寂を破る何かを期待しながら小さく足を踏み締めた。彼の佇む此処は街外れの雑木林であり、数百メートル離れた先に湖沼がある。わざわざ赴いた理由を強いて挙げるとすれば、そんな気分だったから、であった。街灯や建物といった人工的な妨げが存在しないこの場から見上げる夜空は、どこか新鮮に感じる。悪い気は全くしない。何気なく視線を地面へ向ければ、雑草に隠れてひっそりと淡黄色が咲いていた。本来安らぎを覚えるはずのイングリッシュ・プリムローズがやけに浮いて網膜に映る。春の陽気に満ちた場にこそ相応しい花であるのだが、如何せん場所が場所であるが為にそれは孤立して見えるのだ。けれど、柔らかな月光を浴びてその存在を知らしめている五弁花もまた綺麗だと思う。周囲と同化せず凛と咲くその姿は、自分とまるで正反対だ。不意にひんやりとした風が花弁を撫ぜ、彼の肌身を震わせる。止めば、何事も無かったかのように愛らしい淡黄色を此方に向けた。――視線から逃げるように見上げる空は相変わらず漆黒に満ちており、光源たる満月もまた、変わらず自分を見下げているのだ)
――…君は、自分を愚弄しているみたいだ


(pl:今晩は、お久しぶりです。再建感謝致します。今年は本体が受験生である為、返事等ものんびりペースになりそうですが、今後もどうぞ宜しくお願い致します。ええと、文章のgdgdさについてはノータッチで;返事し辛いよー、という場合は、絡み文を用意して下されば此方から喜んで参りますので^^)

10満月 ◆Agw9HWhObw:2010/04/23(金) 21:46:09
>>8 プラディジー
(p:いえいえ、お礼を言われる程のことではございませんとも…!此方こそ再びお会いできて光栄です。といっても絡んだことはほぼ皆無ですが;外国に行くと、祖国の温もりがよく分かります!はい、体調は大丈夫ですよー^^。ただ今絡み文をちょこちょこ作ってます。何れ投下しますから、その際、絡んでくださったら嬉しいです。もちろん貴方様が投下してくだされば此方から絡みにいきますよー!)

11満月 ◆Agw9HWhObw:2010/04/23(金) 21:46:27
>>9
(肺から汲み上げた二酸化炭素を多く含む吐息を出すと同時に空中を白く染め上げたそれは僅かに空中で待機した後、溶け込むように消えた。息を吐く度に目の前が白くなるのが面白くて、以前はそれで何かを形作れないものかと試行錯誤したものだが、今は消えてしまうのが何だかどうしようもなく寂しくて、何度も何度も絶え間なく息を吐いては、暗闇の中に白を残した。しかし回数を重ねる度に白は薄まり、やがてどれ程息を強く吐いても白など現れることはない。白に近い柔らかな灰色の髪と、白いワンピースを纏った少女は、心にぽっかりと穴が空いたような感覚に陥る。何かで埋めたいと無意識に強く願った少女は、跨っていた太い木の枝に体を押し付けて、ぎゅう、と固くてちくちくとした痛みを感じる太い枝を抱きしめる。少女の現在地は、街外れの雑木林、立ち並ぶ木の中でも一際しっかりとした根を張る木の枝の上だった。何故そのような場所にいるのか、大した理由はない。いつものように腕を広げ、時折くるりくるりとワンピースの裾を広げて回転をしていたら雑木林の中にいて。ふと見上げた大きな木、上へと登ってみれば輝く月に手が届くかも、何て思って、気がついたら木の突起に手をかけていたのだ。登り終えると少女は満足感で胸を満たされていて、月を見上げたり、木の枝をぺたぺた触ったり、吐息で遊んだりしていた。しかし吐息による白という遊び道具をなくし、体を枝上に寝かせた少女の視線は自然と下ろされる。平常心から好奇心、好奇心から達成感、達成感から落胆・寂寥へと模様を変えていた少女の次なる心は退屈で、手持ち無沙汰になった少女は小さく吐息をついた。それと同時に風が吹き抜け、少女の髪を後方へと靡かせる。何気なく髪先の行方を追った少女の視線は月明かりに導かれるようにしてある一点で止まる。少女がうつ伏せになっている枝は巨木の中腹であるために、枝葉が生い茂り、地上を見据えるには些か簡単ではないがそれでも少女はジッと見つめて耳を澄ます。すると夜の冷気よりもすーっと溶け込んでくるのは聞き覚えのある声と、独特の雰囲気を放つように感じる言葉。もしかして、私は知ってるのかしら?何て思って、知ってる人にはご挨拶、知らない人には初めまして、が定石だから挨拶をしようと思い立つが、能に染み込むのは、少女にとっては少し小難しく感じる言葉。それは少女にいくつかの疑問を浮かび上がらせる。彼は月を"君"と称し、"愚弄しているみたいだ"と月の感情を表す言葉を口にした。彼は月と口でも利けるのだろうか?何て疑問が生まれて、知らないことは知りたい、という思いが優先的であった今日の少女は、挨拶よりもまず先に疑問を彼に向かって放った。とはいっても、少女の現在地から彼までは離れているうえに木が枝葉というカーテンで少女の姿は隠されているに等しく、少女の声は、"満月"から発されているというより、森から発せられている、と感じさせてしまうかもしれないものだった。)
――ねぇねぇ、"君"って、お月様のこと?貴方は、お月様の言いたいこととか、言ってることとか、分かるの?
(p:わっ、お久しぶりです!再びお会いして絡むことが出来て嬉しいです。受験生さんでしたか…私も去年体験しました。辛く苦しいことではあると思いますが、無理せずに頑張ってくださいね^^)

12 ◆YQUUXN652Q:2010/04/25(日) 04:53:05
>>11満月
(慮外な展開だ。あくまで至当に雑木林を支配していた静寂を突如裂いたのは、動物の鳴き声でも雨音でもはたまた世界の崩壊する音でもなく、あどけなさの残る高音であった。上空の月を仰ぐ形でその場に立ち尽くしていたのだが、どういう訳かその得体の知れぬ“音”が聞こえたのも上方からであったのだ。当然の事ながら満月や樹木が自分の言葉の意味を汲み取って問いを返しただなんて現象が起こったのではない。異質を兼ね備えたこの街を対象とすれば、それが起こり得る可能性も無きにしも非ず、と言ったところだが。見解の差異とは面白いものだ。下らない思慮を巡らせるのを止め、至って単純に考えれば声の主がこの近辺に居ることは明確である。一度聞いた声とはなかなか忘れないもので、彼は一人の少女を頭に思い浮かべていた。第一印象は“人間らしい”人なだけあって、投げ掛けられた問いからも子供のような純粋さを感じ取れる。実際に月と意思疎通が図れたとしたら、この街での暮らしはどれほど不自由なものとなるだろう。朝から晩まで暗闇に孤立して浮かぶ“彼”の相手をしてやるだなんて真っ平だ。可笑しくて、思わず口元をぎこちなく綻ばせる。最も木の葉に埋もれている彼女の視点から、彼の表情まで伺うことは難しいだろうけれど。さて、以前よりかくれんぼの範囲が広い為―当人は“隠れている”気は満更ないだろうが―自分から見つけ出すのは面倒だ。場所が分かった所で仰視し続けるのは疲れるし、だからと言ってこの太い幹を登っていく自分も想像出来ない。彼女はよく登る気になったものだ。取り敢えず声のした方向へ視線を向けて、淡白な誘い文句を紡ぐ。次いで地面に降りることを促すように両手を差し伸べた。同時に、恐ろしいほどに綺麗な相貌から降り注ぐ青白い薄光が、彼の無機質な表情を浮き立たせる。ふと脳裏を過ぎったのは、今の“彼”の名も彼女の名も、満月であるという今更な共通点であった)
うん、正解。生憎だけど、そんなもの分からないよ。自分はあまり月が好きじゃないからね、暗闇は照らすし、綺麗すぎるし。さっきのはちょっとした愚痴だよ。
…それにしても、君はまた自分の見えない位置から話しかけるんだね。ちゃんと顔を見せて。もし退屈なら、自分と少し歩かない?

13のせ ゆ ◆w9zlmQlObk:2010/04/28(水) 00:22:09
(いつまでも途絶えることのない道。そう、それの存在は今の自分がそう信じてるだけで、消えぬものなどこの世に存在しないのだと何かは語りかけてくるが、それを拒絶するのが人間である。きっと、自分もそのうちの一人。でも、自分はもうすでに多くの物を失っている、─はずだ。でもそれも比べる物が無いからこそ言える言葉であって、それの比べる対象が出てきてしまえば自分などちっぽけなものなのだ。下らないと片づけられてしまえばそれで終わり。そう、大きなものを背負うほど立派な人間なんて地球上にいるとしたらひとつまみだとか贅沢なことはないし、そんなものがあるとしたら人間の驕りだろう。そう、自分も、そう、相手も、そう、そう、そう───…。)
───、……あ、いちご、なくなっちゃった。
(はっ、と一人の少年が目を覚ますと、そこはたまたま散歩でみつけた曰く付きのありそうな小屋の中にのせゆは居た。静かすぎる空気、古くとも趣のある小屋、美しすぎる月、──良い物ばかりがそろってもそれが良いとはかぎらないのだと、自分の分からぬ範囲で理解する。人間は、本当の美しさを目の前にすると出てくる答えは"綺麗"でも"すごい"でも"素敵"でもない。不思議なことに"恐怖"、なのだ。驚くほどの不安を駆り立てられて、何かを締め付けられるような苦しさが自らを襲う。でも、ひくことはできない。それらは人を魅くから身体は拒絶をするどころか拒絶するどころか求めてしまう。人間の全てである脳も。のせゆは思考回路の回らぬ頭で突き刺すように窓から顔を映す月光にゆっくり顔を傾けると、そこには邪魔なほど茂る林の間からひょっこり顔をだす月が。兎の姿は確認できない。…まだ休憩中のようだ。しばらくそのままぼうと一点を見つめ続けるが今のそこには何もない。気づけば恐怖がいるが、まだ気づく様子もなく、30分すぎたか。月が消えようとすることにやっと兎は腰を上げた。掌には何かぐしゃりとにぎり潰されていた物があり、それは匂いを残すだけで姿は無い。すん、と鼻を甘く、自分の大好きなものの匂い。ゆっくり掌を開くと、そこには花のようにピンク色の綺麗な包み紙が一つ。──ああ、そうだ。全て自分が食べてしまったのだ。煙草等の存在を知らないような少年が言うのも可笑しいが、口元が寂しかった気がした、…はずだ。そして気づいたら最近買ったばかりの飴は全てなくなっていて、自分がもっている以外の包み紙は車いすの周りにちらばっていた。/長くなってしまったので一度切ります)

14のせ ゆ ◆w9zlmQlObk:2010/04/28(水) 00:22:25
(床に目を移して、目を細めてみる。多少埃が沈む床と鮮やかなピンクの包み紙が散らばる様子は不愉快なはずなのに何故か目が離せなくて、ただ一点を見つめてみる。不思議な歪みがそこにあると言うのだろうか。嗚呼、定規で引き直さなければ。こんなに曲がった線じゃ駄目だ、駄目駄目駄目駄目駄目。円形にも四角形にもなれない可哀想。 でも、綺麗な真っ直ぐな線を描くために定規なんて無意味なのだと心のどこかで思っている自分が居た。先生に言われたことはないだろうか?真っ直ぐな線を引くためには定規をあててひくと良いよ、きちんと押さえてずれないようにね、と。当時はどうしていただろうか。素直にそんな渡された定規で線をひけていただろうか。歪んだ世界で生まれた生き物が作った歪んだ物で本物を歪み以外を描けるののが不思議でならない。どうして?何で?今ではそれらは疑問へと変わってしまう。人は今立っている場所と、この広い地球と何度の関係で立っているのかな、綺麗に立てているのかな。ですがごめんなさい、俺は揺らいでいるようです。ぐしゃぐしゃの頭を軽く掻くと、普段の姿と異なる雰囲気の溜息が漏れた。綺麗に、しなくちゃ。)

(PL:キャラどころかロルすら何か邪気を感じてしまいます…。どうもこんばんは、お久しぶりでございます。の せゆの本体です。スレが無くなってしまってから、初書き込みでしょうか?あまり顔出しできなくて申し訳ないです。最近掲示板でROMぐらいはしていたのですが、書き込む時間が無くて文章力の劣化が見えていて本当にこんなのでいいのかっていう感じです;改めて、これからもあまり顔を出すことが減ると思いますが、それでもよければお相手してやってくださいませ。よろしくお願いします!(・ω・´)

15エリス=ヴィオレッタ ◆7GIVPAr5O2:2010/05/08(土) 20:41:03
>>7 満月
(突然流れ込んできた幸福の暖かさに、頭と体がぐらぐらふらふらする。追いつかない、追いつかない。彼女の薄い体に縋りつくようにして腕をまわして、彼女の肩口に額を擦り寄せる。あたたかい、ひとが、そんざいしている。まるで猫がぐるぐると喉を鳴らしながら擦り寄るように、犬がパタパタと尻尾を振りながら体を寄せるように、エリスもひたすら満月に身体を寄せていた。「うふふ」と、幸せが微笑みになって毀れ落ちてきた。その微笑みは冷たい冷たい石畳の上をするすると滑って、誰もいない暗闇に消えていった。頭がぶるぶる震えて「幸せだよー!」って叫んでいるのが分かる。一旦体を離して満月の顔を真正面から見て、えへへーと嬉しそうに笑った。酷く邪気のない、屈託のない微笑みが青白いともいえる肌の上に広がっていた。まるで素敵なものを与えてもらった子供のように、逸る言葉を拾いながら――…)あの、ね、あのね……満月、私ね、ずっと寂しくて…。でも、もう寂しくないよ!だって満月が来てくれたもん!えへへ、嬉しい…嬉しいなぁ……もう誰もいないと、思ってたの。(最後につぶやいた言葉は、トーンの落ちた少し暗い声色だった。誰もいない深海に、知らぬうちに溺れてしまっていたのだと思っていた。でも違った。光が在った。「しあわせだよ」と何処か拙い口調で言うと、ふわっと微笑った)

>>8 プラディジー
(先程噛み砕き嚥下したあの苺味の飴玉の破片が、口の中のどこかの粘膜を傷つけたのか何だか口の中が鉄のような味がする。ことり、と首をベンチの縁に乗せて鈍色の空を眺めていた。月の真横の空は綺麗に照らされるけれど、光から離れた空は暗いまま。不幸ね、と口の端から憐れみでも何でもない、ただの感想のそれが零れおちてゆく。ふと前方に人の気配を感じて其方を見てみれば金色の髪の、彼。わぁ、と子供のように歓声を上げて笑う。まるで踊るようにベンチから立ち上がると、白いワンピースが暗闇でひらりと翻って、暗闇に残された白の残滓は滲んで消えていった。以前と変わらない真っ赤なストラップシューズが石畳とぶつかっているのにも厭わず、くるくると彼の周りを回るように色々な角度から彼をしげしげと眺める。)ほんとだ、本物のプラディジーだ!…すごぉい、本物だ。……でも、プラディジーがいるってことは、ここは「街の奥」?それともまだ世界とつながってる場所なの?(彼の真正面で足を止めると、上に位置する顔を真っ直ぐに見上げて本物だと繰り返しながら嬉しそうに笑ったのち、ぽつんと呟くようにして言葉にされた疑問に、彼にとってはよくわからないであろう質問を投げかけて)

>>9 >>13 黒・のせゆ
(PL:お久しぶりです!かなり遅れてしまって申し訳ありません…!orz/またお会いできて凄く嬉しいです、またお話しできるのがこんなに…こんなに幸せだなんて……!(*´д`)
駄文になりますが、一応絡み文が>>4にあります。よければ絡んでやって下さい!)

16のせ ゆ ◆w9zlmQlObk:2010/05/23(日) 23:00:36
>>4(エリス)
(どこからか虚しい音が聞こえる。壊れかけたメリーゴーランドなんて目じゃない、その中にいたら自分自身が壊れながらも拒絶故に目も耳を塞ぎ、断末魔がすり切れるまで叫んでしまいそうな…、そんな暗闇の中にいる感じがする。無意識のうちに気持ち悪くなった気分を落ち着けさせようと車いすの後から一本の瓶を取り出して、その液体を口にする。昔は違和感を感じて飲もうとしなかったが、今ではぐびぐびと喉に通してしゅわと広がる炭酸が心地よい。──…いつもなら美味しく感じる砂糖が大量に投入されてるこの飲み物ですら胸焼けを感じてしまいそう。なんなのだろうか、この妙な感情。それは自分のでは無いと感じるもので、逆にそれが恐ろしく感じる。まるで、他人に侵されている感じばかりが胸を満たして心臓が痛い。ふらつく頭をたたき起こして、何かを求めた。この街だからこそ見つけた大きな価値のあるものを、何処ぞ何処ぞと。きいきい音を鳴らしながら散った花を細いタイヤですりつぶし、空を見上げながら手は止まらない。止まってしまったら、私は歩む事を諦めることになるから。ごわごわした髪がどうも邪魔、探してる物がもうすぐ見えそうなのだ。それなのに前髪が邪魔をする。でも手を止めてはいけないから、見つけるまで、今、そこに。)
───…、エリス?
(見つけた、輝く白。ぽっかり開いた広場の中にだけにしか興味が無いように求めた物は広場にいる少女、エリスにふりかかっている。驚いたものだ。こんな感情の先に彼女がいるなんて。息も絶え絶えに必死に動かした手の痛みなども忘れて彼女に近づいて、声をかけた。──自分が求めていた物はそう、月。月だった。でも、今ここにくるとそれが違うと否定される、もう自分で自分がわからない。それでも何をすればいいのかだけは分かっているようで、また無意識のうちに月を見上げた。錯覚してしまわぬように。)

(PL:遅くなってしまい申し訳ないです;ロルがなかなか上手く書けないで試行錯誤したつもりなのですがダメダメですね…。なんだかよくわからないものでごめんなさい;改めましてお久しぶりでございます。の せゆの本体です。また仲良くしてやってくださいまし(´;ω;`)よろしくお願いします!)


(PL:後、絡み文を投下されている方から順に絡んでいきます。すぐには文をかけないかもしれませんが、気長に待ってくださればそのうち車いすがつっこんできますので…!少々お待ちを…!)

17満月 ◆Agw9HWhObw:2010/05/28(金) 17:55:39
(p:返信が遅すぎて申し訳ありません;
どんなに遅くなろうともレス蹴りだけはいたしませんので、おせんべいでも食べながら気長にお待ちいただけると幸いです。つ【お煎餅(海苔)】)

>>12 黒(p:すみません、入りきらないので2回に分けます;)
(幾枚もの葉や縦横無尽に伸びる枝に視界を阻まれながらも、僅かな一点へと差し込む月明かりが照らす先には人影がいることが分かる。自身が発した問いに対する彼からの解答を待ちながらも、ジッとその一点を凝視して、その人影の正体は誰なのかと思考を巡らせる。照らされているとはいえ、暗闇が支配権を持つこの街、この空間においては人影を突き止めることはできない。目で正体を捉えることは困難だと察した少女は、次いで声音と独特の雰囲気から辿ろうとしたが、その矢先に彼からの解答。辿る行為は後回しにされたようで、少女は解答を"うんうん"と小さな声を出しながら何度も頷きながら聴き、頭の中で反芻する。彼の言った言葉の意味を真剣な面持ちで考えて、やがて一つの結論が出されたことを告げる小さな呟きが出される。納得したように一度大きく頷くと、解答に対する返答を一語一語考えながら、ゆっくりと答える。彼は月をあまり好きではないと言ったが、少女は本心から月が好きだ。月の輝きも、神々しさも、切なさも、温かさも全て。そう、全て好きだ。だから少女は実感した、彼と自分は違う、人はそれぞれで、だから人なんだ、と。少女にはまだ難しいことや哲学的なことは分からないが、瓦礫と化した館から発掘した本の中に、人間性についてだとか、小難しいことが多々記されており、読んだ当初はただ文字の羅列を目で追っているような感覚だったが、今漸く、あの本に記されていたことがほんの少しだけ分かった気がする。理解をできたことが嬉しくて、元より高音な声を更に幾分高くして、少女は彼に返答する。くすくすと楽しげな笑いを含ませながら、月が好きだと、貴方を見つけられた、と。今現在の少女の表情を誰も見ることはできないが、誰か見られるものがいたならば、恐らく少女の表情は喜悦に満ちていることだろう。"

18満月 ◆Agw9HWhObw:2010/05/28(金) 17:56:29
"また"=再び=二度目・再来=経験。彼が何気なく発したであろう言葉を少女の耳は逃さなかったようだ。元より彼は自分を知っているのかもしれない、という期待を持っていた少女は特にそういった言葉に過敏に反応する。それにより、彼が自分を知っている、自分が彼を知っているという期待と予想は確信へと変わり、少女は正体を突き止めるために唸り声を上げながら記憶を辿る。当初は期待だったからだろうか、中々正体を突き止めることができなかったというのに、確信に変わったことによりより明確に記憶を辿り、忽ち答えを導き出す。声と、独特の雰囲気と、喋り方と、"また"。それらから導かれる彼の正体は闇と似て非なる"黒"。答えを手に入れた少女は嬉々とした様子で彼の名前を何度も呼びながら笑う。知ってることが嬉しくて、正体を突き止められたことが嬉しくて、歩かないかと誘われたことが嬉しくて。満面の笑みを表情に浮かべながら、彼に"すぐ降りる"と告げた少女は、幹から地面へと降りようとするものの、一分一秒でも早く彼に会いたかったためか、些か…否、かなり無謀な手段に出る。そっと枝から地面を覗き込んで、少女が脳裏に浮かべた言葉は"大丈夫"。そして次の瞬間には、あろうことか枝に華奢な腕だけでぶら下がり、掛け声とともに下の枝を求めて手を離す。少女の現在の装備は白いシルクのワンピース、赤いカチューシャ、タイツに、黒いTストラップシューズ。この装備で巨木の中腹にまで上り詰めた行動力もある意味では賞賛に値するかもしれないが、枝を伝っておりようとする少女の行動力や思い切りはとても褒められたものではないし、大丈夫なものではない。案の定、下の枝へと移ることは叶わず、枝葉を揺らす音と共に少女は落下していく。が、生い茂る枝葉が障害となったらしく、落下のスピードはさほど速くはない。顔を片腕で覆い庇いながらも、何とか地面に一番近い枝を掴んだ少女は間一髪で地面に叩きつけられるという現象は起こらなかったようだ。片腕で自身の体を支えることはキツイ。顔を庇うのをやめてもう片方の腕も枝を掴んでから下を見て地面が近いということを認識すると、両腕を離して地面へと降り立ち、"ふーっ"と安堵の溜息を大きくついて。)
……ふぅん…やっぱり、貴方は貴方で、私は私なのね。私は、お月様、大好きよ。明るいし綺麗だし、それに、お月様が照らしてくれたから、貴方を見つけられたんだもの。お月様に、感謝なのよー。
また?またってことは、会ったことがあるから…うーんと…えっと……あ――!黒!黒ね、黒でしょ?わぁ、何だかすっごくすっごく嬉しいの。うんうん、すぐそっちに行くから、ちょっと待っててほしいのよ。せーの――っ…わ、わわ…わ…っきゃー!

19満月 ◆Agw9HWhObw:2010/06/06(日) 22:30:13
(p:すみません、微妙に入りきらないので2回に分けますね;)

(満月という名の少女は普通の歩行ができないのだろうか。今宵も両手を広げて、数歩進んではくるりと回り、一歩跳んではくるりと回る。歩みと回転を繰り返しながら、石畳が敷かれた街の一角を徘徊する。紺碧の空に懸かるは純白といえる月、陽光が注がれることのない街に降り注がれるのは清明なる月光、月の恩恵をその身に受けるのは樹木か、建造物か、少女か、それとも世界か。何が、誰が、どれ程恩恵を受けるのか、どれ程"恩恵"としているのかは定かではないが、少女は純粋に自身を照らしてくれる月に感謝している。出来るならば月を抱き締めて、普段自分が貰っている温かさの何十分の一でもいいから返したかった。私はいつもこれの何十倍の温かさを貰っているのよ、ありがとうお月様。そう云いながらぎゅうっと抱き締めたくて、空に浮かぶ月を見ては、手を伸ばせば届くのではないかと、空に手を伸ばしてみる。でも届かないから、背伸びして、腕も限界まで伸ばすのに、全く届かない。だがそれでも少女はその行為をやめるという選択肢は思いつかず、今宵もまた葉が生い茂る木の横で立ち止まると、回れ右をして月の方向へと体を向けると手を伸ばす。届かない。それどころか、大好きなお月様が生い茂る葉が妨げとなってところどころ姿を隠されてしまっている。すぐに"移動する"という案を思いついた少女は、今度は前と後ろ、どちらに移動するかを考えた。少女がこれまでに読んだ書物と、"満月"として生まれてから今日までの人生経験、つまりはこの街に来てからの経験に基づき考えてみる。何か物を見る際、あまり近すぎては見づらく、全てを見ることはできない=遠い方が見やすい。イコールで繋がれた二つの文章は、繋ぐものではない。しかし少女の脳内でしっかりと、二本の直線で結ばれてしまった二つの文章から、導かれる行動は一つ。少女は腕を伸ばした状態のまま、緩慢な動作で後方へと一歩、二歩、と下がっていく。これにより月は葉という妨げがなくなり、その全貌を少女の瞳に映らせるかと思われたが、寧ろ余計見えづらくなった。

20満月 ◆Agw9HWhObw:2010/06/06(日) 22:30:47
どうして見えないの?伸ばしていた腕を下ろして首を捻る。何故なのかしら、と思案しながら右、左、右、左と首を定期的に捻る。上を見上げて下を見下ろして左を向いて右を向く。この行動に何ら意味はなく、ただ何となく、思案する際の付加行動。だがしかし、時として、意識して行った動作でなくとも、無自覚に行った動作で、何かが引き起こされたり、何らかのキッカケになることがある。そう、今みたいに。右を向いた少女の目に飛び込んできたのは古いがどこか情緒のある掘立小屋。一瞬にして目を奪われ、思案することなど忘れて食い入るように壁やドアを見つめる。ジッと、ただ、ただ静かに。少女が小屋を見つめて十数秒、ひゅう、と風が街を吹きぬけて少女の頬を撫で、曖昧な満月の意識を覚醒させる。小屋を見つめていたのはほんの十数秒、しかし満月にとっては永遠とも刹那とも感じられる時間、惹かれた小屋。この中に何があるのか分からないけれど、だけど魅せられてしまった。満月は恐る恐る小屋に近づいて、取っ手に手をかけようとするが、生じた気の迷いから手は宙で止まる。空けていいの?空けることは許されるの?常識から考えるならばあけるべきではない。だがこの街は精密に狂わされた街。常識と非常識はイコールで結ばれてもおかしくはない。何より、満月は小屋の中を見ずにはいられない、見ずにはいられないのだ。そっと取っ手に手をかけて、ぐっと強く握る。はやる鼓動をすぅっと深呼吸しておさえながらも、コンコン、と一度ノックをしてから、取っ手を引いた。ガチャン、と金属特有の音が小さく響くと同時にドアと壁が離れ、小屋の中には開いたドアから外の空気が流れ込む。空気に遅れてそっと小屋の中を覗き込むと、そこに存在していたのは歪んだ時間と車椅子と一人の、"知っている"少年。見知った人物を見つけたことが嬉しくて、そこに歪んだ時間が存在していることも気にせずに小屋の中に踏み込むと、名前を呼びながら彼の傍に寄ると嬉々とした様子で微笑んで。)
――…のせゆ…?のせゆ……!こんにちは、えへへ、会えてすっごくすっごく、嬉しいのよー!
(p:遅くなりまして申し訳ないです、お久しぶりです満月です!久々にのせゆと絡めてとても嬉しいです…へへ、のせゆ可愛い!本体は変態ですが満月は変態ではないので、どうぞ宜しくお願い致します!)

21名無しさん:2010/06/26(土) 14:53:57
支援age

22プラディジー ◆iM/eI.SIzs:2010/07/04(日) 01:13:11
>>9
(PL:ご無沙汰しております、ホームレスの本体です。遅くなって申し訳ありません;/また黒様とお話できるなんて夢みたいです、嬉しくて指が…!受験ということでお忙しいとは思いますが、自分も亀レスなのでゆっくりお話できたらなあと思います!)

(漆黒というより濃い紺色をした夜空にぽっかりと浮かんだ満月は、今夜も変わらない表情と角度で自分を見下げている。幾年幾日経っても一向に沈む様子を見せない満月は、その淡い輝きと聖母の様な微笑の裏に酷く傲慢で嫉妬深い一面を隠し持っているような気がして、其れを予感から確信に変えてみせようと無駄な足掻き、何度こうして夜空を仰いだだろうか。空を見上げる度、如何してか其処に浮かぶ満月も人の表情をしているような気がしてならないのだ。此処では、此の街では私が全てよ、と。自分にはないものを持つ太陽に静かに嫉妬の念を燃やして、自分の存在を肯定、嫌でも其処を動こうとしない。けれどきっと太陽も同じように、自分にはないものを持つ満月相手に焦れていることだろうに。擦れ違いばかりの彼らはお互いの事を恨み羨みながら、お互いの姿を見ることなく一生を終えるのだろう。そう思うと滑稽だと思う反面、酷く真面目な気持ちになった。此の気持ちは、一体何だろうか。――彼にとって、次に静寂を突き破る何かは此の男の足音になった。彼のように枯葉の音にさえ気を止めて進んで行く思慮深い歩き方とは違い、ずかずかと無遠慮に辺りを踏み散らすような歩き方をする自分だからこそ、彼の耳に届く音は彼の望む物とは違う唯の雑音と成り果ててしまったのかもしれないけれど。普段通りの歩き方に加え、少し急いて足早な歩調だったせいもあるかもしれない。男は今夜もまたモカコーヒー色をした薄っぺらいコートに身を包み、首にはくすんだ茶色のショールの様なものを巻きつけた格好で此の雑木林の中を歩いていた。所々解れたり煤けてしまっているコートやショールを今でも大事に愛用しているのは他でもなく、唯毎日着替えられるほどの着替えを所持していないという間の抜けた理由であった。其れでも中途半端な所で散発された金髪と首から提げた金色の懐中時計がまだ見れる程度に綺麗なのは、決まった宿すらない此の男にも多少なりとも稼ぎがあることの証拠なのだろう。男がこうして雑木林に訪れた理由は、なんとなく、唯それだけ。実は自分よりも先に此の雑木林の中に居た相手と似たり寄ったりな理由だという事なんて知る由もないことだが、彼の後姿を見つけて数十秒、空を見上げる以外に何も行動を起こさない所を見ると相手は何か用があって此処に来たわけではないということがよく分かった。空に、何かあるのだろうか。声を掛けるのも忘れ再度相手と同じように空を―否、満月を見上げてみれば、まるで空白のコマに小さな吹き出しが付け足されたかのような声で。――愚弄しているみたいだ――呟くような其の言葉に驚いて双眸を見開く。自分から相手まで十数メートルの距離はある、彼がそれほど大きな声で独り言を呟くとも思えない。なのにやけにすんなりと耳に届いた其の呟きに、自分よりも若いはずの彼の背中に哀愁染みたものを見た気がした。気づけば一歩踏み出していて、今にも闇に溶け込んでしまいそうな外套を身に纏った相手に声を掛けてしまっていた。こうして分かったような口を利いてしまうのは、自分の悪い癖だろうか)
―――…愚弄されてるように感じんのは、お前が自分を下に見てるからじゃないのか?

23エリス=ヴィオレッタ ◆7GIVPAr5O2:2010/07/17(土) 14:00:21
>>16 のせゆ
(吐き気がしそうなほど濃密な闇が、月の光も届かない路地裏の入り口から此方を見つめてくる、微笑みかけてくる。柄にもなくエリスは、恐怖を感じた。いやだ、見ないでと口の中で呟いてその闇を睨み付けたって、彼らは口角を上げてにたりと笑うだけ。いやいやいや、とまるで駄々を捏ねるように首を振って視線を下げて、逃げる。ひゅう、と細く開いた唇から毀れ落ちる吐息が青白い膝を伝って、消えていく。どうにかこうにか再度上げた視線の先には、不敵に笑う暗闇なんかいなくて、車いすの、子が一人。あ、と軽やかな声が思わず出て、ふらりと立ち上がる。隣にいた黒猫が不思議そうに見上げていた。金色のまつ毛が瞬いて、紫色の瞳を大きく見開いてその姿をしげしげと見つめる。ああ、のせゆだのせゆだ。嬉しそうに微笑んだ少女は、まるで踊るようなステップで相手に近付くと、屈託なくうふふと笑って)―…のせゆ、のせゆだぁー……うふふ、ねぇのせゆ、あのね、来てくれてうれしい。わたしね、ずーっと寂しいなって思ってたの。そしたらね、のせゆが来てくれたの。(まるで幼い子のような口調で、それでも酷く嬉しそうに語りかける。車いすに座った相手の視線に合わせるようにかがんで、「のせゆ、」と愛おしそうな声色で。)

(PL:お久しぶりです、ごめんなさい……orzもう多くは言いません、ごめんなさい!
受験に向けての準備は着々と進んでおります← AO入試に向けて頑張っております。リアルです^^←
まぁ相変わらずスローモーですが、まだまだ頑張りたいと思いますのでよろしくお願いいたします!)

24 ◆YQUUXN652Q:2010/07/19(月) 14:19:06
>>4エリス
(街灯の淡い橙色が、暗い街に点々と浮いていた。光の周囲に蛾の群れが纏わり、舞う姿が影となって地に伸びている。鱗粉を撒き散らしながら不恰好に飛び回るその様は、決して蝶のように美しく人の目に映ることはないだろう。自身が蛾で在ることに対してのプライドなど微塵も感じられない、その行為は、単なる生き物としての習性に過ぎないのだ。当然のことながら、闇を恐れて光を求めた訳ではない。それを知ってもなお、遺憾に思うのは自分の“黒”に対する執着故だろうか。ぼんやりと思慮に耽りながら歩く中、足音がやけに響いて聞こえるのが街の静寂を暗に仄めかしているようで―それが再び彼の思慮を深める材料となる。無意味な徘徊を嗜む内、ふと気がつけば、ただっ広い広場に出ていた。中央に聳え立つ象牙色の噴水は、月明かりを浴びながら水飛沫を上げている。静寂の中に響く水音からは、水面に波紋の広がる様が容易に想像できた。電灯もベンチも、まるで一つの作品のように規則的に配置されている。異質な街からこの広場だけが切り取られているような、そんな錯覚さえ覚えて。彼から数十メートル、歩数にして五十歩程であろうか―離れた位置に“   ”がいた。見間違うはずがなかった。白いワンピースの裾を風が撫ぜ、その先で真っ赤なストラップシューズがぷらぷらと揺れている。金色も、青白い肌も、二つのアメジストも、場を形成する雰囲気そのものが彼女だったのだ。あ、と零れるよう口を開けて、無意識に駆け出していく。例えるとすれば街灯の光に誘われた蛾の、それだ。多くの疑を問う前に、彼女の隣に佇む黒猫を褒める前に、謝る前に、少しでも早く近付きたかった。ベンチに座っている彼女を、壊れ物を扱うようにそっと抱き締める。単なるエゴだ、と自分を咎めた―が、ふわりと漂う甘い苺の香りにそれすらも忘れて、思い出した様に呟いた)
…ああ、エリスだ……

25 ◆YQUUXN652Q:2010/07/19(月) 14:33:57
(pl:申し訳ありません、本体より皆様宛のレスを書くのを忘れていましたorzこんにちは、お久しぶりです。漸く推薦入試用の評定が確定しましたので、取り敢えず一段落つきました。ロルがあまり得意でないので、長期休暇といえど相変わらずのんびりとした返信となってしまいますが、気長にお待ち頂けると有難いです^^)

26 ◆YQUUXN652Q:2010/08/01(日) 20:57:27
>>13のせゆ
(喧騒の「け」の字も感じられない、街外れの雑木林。彼が歩む度にくしゃりくしゃりと鳴る雑草も、どこか趣き深い数種の虫の音も、無許可の侵入に歓迎の意を示しているように聞こえる。虚空、と表現するには些か賑やかな夜空の下、彼は無意識に月を仰ぎ見た。月と彼との視線を結ぶ間には、背丈の高い木々の葉が視界をフレームのように覆っていた。生温い夜風に揺れてさわさわと静かな喋り声を上げる木々を咎める者は誰一人居らず、彼が網膜に欠けた月を焼き付ける際に、被写体を悠然と囲う役割を素直に担っていた。しかしながら一枚の写真として脳裏に刻まれた絵は、彼の理想図とは全く異なるものである。宝石など比較の対象とも成り得ない程、写真はただ美しかった。無数に輝く星も、闇を淡々と照らす月も、この上なく綺麗だ。それこそ、文句の一つも零れないほどに。彼がこの絶景を理想と結びつけることが出来なかったのは、当然ながら価値観の差異の問題である。この男―いや、青年といった方がいいだろうか―における夜空の主体は、背景の“黒”に他ならないのだ。本来、人間があまりの美しさを前に恐怖心を抱くなんてことはざらではない。手の届かぬ美と人間の間に、接点はない。自身と接点を生み出すことが出来ないと分かっているものに対して正気を保てる人間が居るとすれば、それは極稀だ。では彼が最高の美として崇める黒色は接点を生み出すことが出来ないか、と問えば「そうでもない」。身体的にも精神的にも黒と同化することは“いずれ”可能だ。これでは先程の定義に矛盾が生じるが、全く問題はない。答えは、異常だかrrrr――――長い長い思慮を意図的に区切る。いい加減、埒が明かないと判断したのだ。小さく溜息を吐き、次に目を向けた先は一軒の古びた小屋。不思議と木々に馴染んで佇むそれに、微塵の警戒心も持たず歩み寄る。無邪気さを孕んだ声を、時間にして数秒前、確かにこの耳で聞いたのだ。義務も役割もないこの月光裏街という一種の世界において、何かを得る為に要されるのはまず積極性だ。扉の前に立ち、木製の扉を軽くノックする。次いで入室許可をこの小屋の主に得ようと、控えめな声を静寂に響かせた。)
今晩は、そして失礼。散歩の足休め、小屋の主である君への好奇心、ただ何となく…―うん、全部当て嵌まるかな。君が好きな理由をとってくれればいいよ。取り敢えず中に入れてくれると嬉しいんだけど、入っていい?

27 ◆YQUUXN652Q:2010/08/01(日) 20:58:22
>>17満月
(彼女は笑った。木の葉の壁に阻まれてその表情を直接目にすることは出来なかったが、過去に脳裏に刻まれた彼女の顔が嬉しそうに歪む姿を想像して、不思議と悪い気はしなかった。孤独に浮かぶ真ん丸い月から溢れる蒼白い光を体中で受けて、思う、確かに彼女は“満月”だと。特別黒色を好み月を非とする彼ではあるが、決してその魅力を理解していないわけではない。他の人間同様、月に魔力のような美を感じ取った上で、彼は黒を選んだのだ。静謐に響く無邪気さの入り混じった少女の高い声は難なく彼の鼓膜を振動させ、彼女の異質さと温かさを印象として明確に伝えるのだ。彼女は与える側の人間だと、そういった意味合いであの弧月と重なるのだ。-――そう思った矢先、木の葉や枝の悲鳴と共に彼女が降ってきた。「すぐ降りる」と告げた彼女の言葉を理解する前の出来事である。自分は決して、悠然と降り注ぐ月明かりと彼女の姿を重ねたわけではない。感情と表情があまり噛み合わない彼であるが、流石にこれには驚きを露にした。人並みの感性は持ち合わせているようだ。あ、の音に口を開いている間に目前の枝に細い両腕でぶら下がっている彼女の姿があり、何事も無かったかのように地に足をついた。決して賢明な判断とは言えぬ行動を咎めようとしたが、彼自身にも非がある為に出掛かった言葉を直前で飲み込んだ。そもそもの原因は、自分が彼女を散歩に誘ったことにある。お陰で、彼女の身を包む白いワンピースに緑や茶の斑な模様が浮いていた。感謝と謝罪、双方の意を持ってその木屑や木の葉をぱっぱと払ってやり、そこで漸く一息つく。そもそも雑木林に足を運んだ理由はこの茂みのもう少し先にある湖にこそあり、郷愁との遭遇は予期せぬものだったのだ。気分転換にと傍観的に今の状況を眺めると、何とも奇妙なコントラストに薄い微笑さえ漏れた。彼の外装はというと、季節にそぐわない外套、長い丈のズボン、古びた革靴、襟足を掠める髪、瞳―そのどれもが黒に染まっており、露出した顔と手がやけに浮き出て見える。一方正面に佇む少女を印象付ける色は、白。相反的な色を持つ彼女を連れて歩み出そうとする彼の姿を、上空の月は滑稽だと思うだろうか。月の意志など知る由もない彼は、何食わぬ顔で「行くよ」と簡易な言葉を告げた)
それだけ君に好意的な言葉を向けられたら、あのお月様も大喜びだと思うよ。でも、月の真似事はよくないな。君は月光みたいに「降る」存在じゃないでしょ?
――…これでよし、と。これから月に会いに行くのに木の葉まみれじゃ面目立たないでしょ、満月。

28 ◆YQUUXN652Q:2010/08/01(日) 20:59:07
>>22プラディジー
(濃密な静寂を裂く、雑草の悲鳴。泰然とした空気を保っていた雑木林には少々そぐわない荒い足音を、背中越しに受ける。上空と背後、双方からの力強さから逃げるように視線を真正面に戻した。生い茂る草、地を這う根、幹に伝う蔦―森を形成する自然の姿は当然のことながら違和感を帯びておらず、そういった場所は人の手に汚染されて行く世界において人間に安らぎを与えてくれる。人の傲慢な態度故に自分の身が削られようと、自然は偽善に満ちた優しさを振り撒くのだ。彼は無意識にそれに縋り付いたのかもしれない。蒼白い月明かりを受け背の高い木の葉の屋根が地面に影を落とす。生温い夜風に揺られさわさわと音を鳴らしながら彼らを悠然と包み込むそれが、酷く心地良く思えた。「――じゃないのか」唐突に問いを突きつけた声には、覚えがあった。男の低い声は決して横暴ではなく、寧ろ優しさを含んだ、注意を促すような、そんな色を持っていた。足音との意外な喰い違いの発見にくすりと意図的な微笑を零して一度顔だけ振り向く。美しい金髪は、彼女と少し似ていた。全身に黒色を纏う自分ほどではないが、髪の色と首から掲げた懐中電灯を除いて比較的暗色の服装である為暗闇に馴染んで目に映る。表情は―如何せん彼との間に距離がある為、はっきりとは見えない。既知の人物、更に悪意のない声色から判断して、自ら彼の元へ歩を進める。積み重なった枯葉と雑草がしゃくしゃくと柔らかな音を立てた。今、沸々と湧き出る興味の対象は目前の彼の思考にある。思慮に思慮を重ね、自己判断のみが頼りの結論を出すのが彼の常である。それ故に、外部からの肯定・否定の意見は自分の嗜みのいい薬となるのだ。彼―プラディジーの前に立ち、彼を仰ぎ見る。自分より背の高い人間と会話する機会など久しく無かった為、現状に妙な新鮮さを感じる。先程のやけに確信付いた物言いに多少焦心を駆られたものの、然程気負いはしていなかった。自分が主体である話題への興味は蝋燭の火を吹き消すより早く、綺麗に失せたからだ。“黒”における会話とは、太陽と月のように恨み羨み合う関係性とは全く異色な、単なる一方的な利己心の押し付けにすぎない。彼は躊躇いなく口を開いて、エゴを孕んだ言葉の羅列を紡いだ)
…面白い見解だね。君がそう思うならそれでいい。ただ、自分は卑下も自尊もしちゃいないよ。いつだって興味の対象は、外にあるからね。
君の口の利き方も歩き方も雰囲気も、自分にはないものだ。羨ましいよ。…君みたいになりたいという訳ではないけど。

29名無しさん ◆/.cctdIyes:2010/08/07(土) 02:56:21
初めまして、今はまだ名無しのファンです。
以前からちまちまと見させて頂いていて、皆様のキャラの素晴らしさとレベルの高さにふおおってなったり色々な事をしていました。いや、すみません。
今更、というよりもスレの雰囲気を壊してしまいそうで怖いのですが…流れを切ってしまうのですが、俺のような奴が参加しても大丈夫でしょうか?
レベルはまだまだここの方々と釣り合わないとも思いますが、自分なりに全力を尽くして皆様に追いついていきたいと思います。
それでは、後程御返事を頂いてからということになりそうですが…今回は支援上げも兼ねて、失礼しました。

30   ◆Agw9HWhObw:2010/08/07(土) 20:33:19
(月光が差し込む美しい場所がありました。そこは森の奥深く、深く。大木が軒を連ねる筈の場所に、不自然な程綺麗な円形でくり貫かれたようなところでした。生い茂る木々に囲まれ、優しく柔らかすぎる風が吹き込むと、土から養分を吸い取る雑草が、草が揺れました。場所の中心には、これまた見事な円形の湖があります。暗闇で水中の様子までは克明には分かりませんが、清澄であることは明白でした。しかしこの場所は異常でした。元より異常な街の一角に位置しているのですから、異常であることに異常はありません。街は正常なまでに異常であり、異常なまでに正常であり。ですからこの限定された場所が異常だというのは、この街の外、といっても書物でしか私は認識したことがありませんし、書物に書かれていた街が正常なのか、異常なのか、それとも存在しないのか、別の世界でのものなのか。理解はできませんし理解する術もまた私にはありませんけれど、ですが数多ある書物の中、多くの共通点として、森の中は五月蝿いということでした。風の声、木々の声、草花の声、水の声、空気の声、虫の声、動物の声――。森というのはウルサく、サワガシイというのが、共通点の一つとしてありました。しかし、此処は静かでした。風は吹き、木々は揺れ、草花は擦れました。しかし風は優しすぎました。揺れているというのに音はしませんでした。余りにも優しすぎるその風は、冷淡にも感じます。木々も草花も、優しい風を感じながらも、冷たさを感じ取ったのでしょうか。とにかく此処は、静か過ぎる。あまりにも静かなので歌を歌ってみました。喉から虚空へと開放された私の声は明朗に静かなる土地に響きました。響いた、とはいっても、この場所が静かすぎるために、私の声が大きく聞こえただけに過ぎません。大きすぎる私の声は段々と小さくなっていき、やがては消えました。ぽつん、と世界に一人だけ取り残されたような感覚が私を襲います。此処はどんな世界でどんな場所で今は何時で季節はいつで浮かぶ星はいくつで象られる星座はいくつで木々は何本生えていて湖の直径はいくつで円周は何mで世界の中心はどこで中心から見たらこの場所はどの方角に位置しているのか私は誰なのか。声にこそ出しません。出したら私は一人だと実感してしまいます。嫌でも思い知らされてしまいます。ああ、もしもこの世界が、今私のいる場所が完全なる暗闇であったなら。完全なる暗闇でなくともいい、私が盲目で、ただの透明であったなら。私は私だと、此処にいるのは、地に足をつけて立っているのは私だと気づかずに済んでいたのに。上空に浮かぶ月を見上げました。今宵の月は、この場所と、湖と同じように美しい円の輪郭をしていました。美しい、と本心から思いました。けれど不思議と私はお月様が憎くなりました。月がそちらが君が貴方が貴女がお前があんたが貴殿が貴公が主がそちが貴君が御身が貴様が汝がお月様が。私を照らすから。私は孤独を感じるのではないか。私は私を認識してしまうのではないか。私は世界を認識してしまうのではないか。私は、私は愛を認識し、感じ、欲し、求めてしまうのではないですか。私は誰かを愛したかった。私は誰かに愛されたかった。私は誰かに求められたかった。私は誰かを求めた。それと同時に私は自分自身の欲求を、本能を、自覚したくなかったのです。ですが私には求めることはできませんでした。求めることはできました、けれど求めるものは私を求めることはないからです。だから私は風を求めて感じました。別のもので欲求を満たしていました。多くは風であったけれど、時に食欲や、書物や、空想などの、軽いものでからっぽに満たし続けて。

31   ◆Agw9HWhObw:2010/08/07(土) 20:34:32
私は全てを愛し、憎み、嫌い、恐れ、慈しみ、愛で、思いやり、微笑みました。月はそんな私も照らしてくれていました。だから私は月が大好きで、それ以上に嫌悪していました。今、その嫌悪はとても大きく、揺ぎ無いものでした。壊れてしまえばどんなにか。しかし壊すことは叶わなくて、私は手近にあった小石を拾い上げて。水面に写る月を掻き消すために、湖の中央目掛けて小石を投げ込みました。トポン、と小石が湖に沈み、引き込まれる音が耳朶を打ちます。ようやく私ははっきりとした音を聞けた気がしました。小石が落ちた水面は、波紋を広げて、月を揺るがしました。ですが月の姿は波紋に揺られて揺れるだけで、むしろその美しい円形を使って湖全体に広げているような。私は再び、小石を投げ入れました。石を投げ入れ、手のひらほどの石、顔面程の大きな石も――頑張って、投げ入れました。水飛沫が舞って堕ち、再び湖と同化して、大きな波紋は一時的に波となりましたがすぐに波紋となって散っていきます。私はどうしても月を消したかった。実物を消すことは叶わない。ならばせめて水面の月だけでも消したかったのです。私は湖に飛び込みました。胸の辺りまで沈みましたが、足元は藻や水草、どうやら小魚もいるようで、足を動かすのは気が引けました。私は小魚や水草や藻を消したいわけではないのです。私は泳いで湖の中央まで行きました。酷く不恰好であったでしょう。水に濡れた純白のワンピースは肌に纏わりつき、重い鎖のように体の自由を制限します。長く白髪とも銀髪とも灰色ともいえる髪を漂わせながら、私は何とか中央について、脚をつけようとしましたが中央は深いようです。足が届きません。ですが水面下で足をじたばたとさせていると、ほんのちょっと、水底に沈んでいる岩の尖った先端に、つま先をつけることができました。ふぅ、と一息をついて。水面を荒々しく波立たせます。体の動きを随分封じられていますものの、私が身を捻れば水面は波立ち、月を揺らすことができました。ああ、ああ――満月が消えています。それもそのはず、私は湖の中央、水面に移る月の中に位置しているのですから。わざわざ波立たせることもなかったのですね。ふふふ、と私は小さく喉を震わせて、笑ってみました。そして慎重に、ですが、両腕を広げて、いつも風を感じるためにやっていたように、くるりと回転してみます。最も、今大きく感じるのは水でしたが、頬に風を感じることができました。もう一度月を見上げます。私は今貴女を消しています。口元が歪むのが分かりました、恐らく私は笑っているのでしょう。ぽた、と私の輪郭から水が滴り堕ちました。先ほど波立たせたときにかかった湖の末端でしょう。私は頬を撫でました。雫は暖かかった。湖は暖かいのでしょうか?ですが私が今、全身に感じている湖は、冷たいです。私は不思議に思って、湖を見つめました。ですが私が見つめたのは、月に照らされ、水面に移る私。満月は、涙で頬を濡らしていました。ああ、なるほど。そうだったのね。と私は理解します。私が一番消したかったのは、満月という名の、私なのね。それに気づかず、変わりに似ても似つかない存在であるが同名の月を消そうとするなんて。何て愚か者なのでしょうか、私は。ぽろぽろと涙が溢れて湖に堕ちます。私の涙は湖と同化できるのでしょうか?同化できるのならば、どうか私も、満月も、同化してはいただけないでしょうか。

32   ◆Agw9HWhObw:2010/08/07(土) 20:39:14
愚かなことだとは理解しております。ですがどうか、その私の愚かさに免じて、私を同化していただけませんか。月のように写るのではありません。藻や水草のように生え、生きるのではありません。魚のように泳ぐのではありません。石のように、岩のように存在しているのではありません。私を湖の底へと沈めて、そしてゆっくりと、長い年月をかけて――そう、ゆっくりと緩慢に、静かに。同化させてはいけませんか。この世界から、私という存在を消して、湖の一部から、湖へと。私は岩から足を外しました。そして目を閉じて、ゆっくりと湖の底へと沈んでいきます。全てが湖に覆われるのを、包まれるのを感じました。静かに、ですが確実に私は水底へ。頭の中に、浮かんでくる色彩があります。目を閉じていれば見るのは瞼の裏なのに。何故か目前に浮かぶそれらはよく見知った顔であります。たくさん彼女らには、彼らには、言いたいことや、してあげたいこと、一緒にしたいこと、たくさんありました。そのへんに転がっている石についてお喋りしたり、笑いあったり、一緒に紅茶を飲んだり、お菓子を食べたり、何でもいいから時間を共有したかった。ですがそれも土台無理な話です。私は明確に、確実に、彼らを求めていたし、強く拒絶し、時間を共有することを、嫌悪していたのです。ジレンマでしたが、それももう終わり。三日月は隣でその手を握り、半月は運命の旅路を共に歩み、満月は月光を幻想の鏡に、闇の月は真実を写し取る。偽の白月は眠りの中で夢を見ることにさせていただきましょう。私の奥底に眠る、彼方の記憶を。それでは皆様、良い物語を。Raechel=F=P=Grantchester)

(p:諸事情により、もうこの街には来れなくなると思います。そのため、今回勝手ながら、満月が湖に沈む、という形で、存在を消させていただきたいと思い、ソロルを投下させていただきました。皆様とこの街で紡いでいく物語はとても楽しいものでした、幸せなものでした。本当に感謝しております。ありがとうございました。満月が再び湖から出てくることはなく、皆様とお会いすることは恐らくないでしょうが、皆様の幸せを、満月共々願っております。本当にありがとうございました)

33PulaDizzy Dimitri ◆iM/eI.SIzs:2010/08/08(日) 03:57:48

(歌が聴こえた様な気がしたのです。何処で、叫ぶような、囁くような、呟くような、普通にお喋りするような、そんな声で紡がれる歌が聴こえた気がしたのです。だからという訳ではないけれど、やけに頑なに静寂を守った森の中を男は急ぎ、何かに急かされ、自らを叱り付け、何処の誰かに指摘されたその足音を響かせていきました。一体誰がこんな場所を造ったのか、其れもまた潤んだ瞳から逃げてきた自分には語る資格もないのでしょうが、綺麗な円形にくり貫かれた草原の広場に、枯れた男は立っていました。けれど。何の根拠からか此処から歌声は産まれた、そんな不確かな確信を抱いていたにも関わらず、歌声の主は其処にはいません。此処にはいません。何処にも、彼方にも、此方にもいません。そうして泡の溶けた湖を見て、男は、何故如何してか理解するのです。察するなんて紳士なことを男は死んでもしませんが、ただ、静かに荒立った心を摑みながら理解したのです。一瞬ざわりと心が揺れたような気がしたけれども、周りの風が、草が、森が、空が、月が、野暮にざわめくようなことをしないので、自分の手もただ、そっと其処にあったはずの髪に触れるように宙を撫でるだけに留まりました。自分の胸元の位置を只管、そっと。そうして中央が波打っているように見える湖に近づき、近づき、水際までやってきても男の足は止まらずに、皮製のブーツが半分ほど浸ってしまいながらも進んでいくと、ちゃぷちゃぷと揺れる水面にそっと手を翳してみます。冷たいはずの表面は何故か熱を孕んだように感じられ、其の侭ずぷりと腕を沈めて。嗚呼、まるで誰かの熱を、体温を、涙を、声を感じるように熱い。その熱に直接触れられないのならせめてと水面に唇を寄せ、その感触に何時ものように笑ってみせれば、誰に薄情だと言われた気がしてならないのです。ほんの少し濡れた唇を手元で拭って、それ以上進むことはやめて水際に戻ろう。変わらず空に浮かび微笑み続ける満月と顔を合わせると、何を感じ取ることも出来ない自分に馬鹿らしい苦々しさを感じるから。歩き出すことが前向きと呼ばれるなら、自分はゆっくりと後退しようか。この温くて冷たい湖に、静かに沈んでいった此の街の象徴とも言える存在を其の名に持った少女のことを、じわりと胸に留めながら)
I kiss a coffin in my country at parting time.―――The name was a thing only for you till the last so that you disliked a full moon how long.

(PL:満月ちゃんも本体様もお疲れ様でした。どうしようかと迷ったのですが、僭越ながらお話足りなかった分をせめてと満月様のソロルに対してのソロルを描かせて頂きました。御迷惑でしたら申し訳ないのですが、どうか枯れた男の最後の言葉として受け取ってくだされば嬉しいです。本当にお疲れ様でした、二度目ですが本物の満月のようにきらきらしてくるくるしてる満月ちゃんが大好きでした。空に浮かんでる満月よりも、近くにいる満月ちゃんが宝物でした。)

34Rose witch ◆sMF.3Y8lA2:2010/08/08(日) 14:38:26
(彼は目が見えませんから、星を見ることなんて出来ません。それでも星を見る為の展望台はお気に入りの場所な様で、街から姿を消し掛けている現在でも此処で姿を見ます。腐り掛けた鉄柵に細長い手を乗せ、今宵も変わらない満月を見続けます。そうすれば彼は思い出します。一人の小さな───少女なら湖の底。彼は後ろを振り返りましたが、耳元に囁いた人は其処には居ませんでした。心悪い幻覚ではないかと彼は手を胸元に撫で下ろしましたが、一粒が睫毛から落涙しました。その涙は冷たい手に落ち、また硬いコンクリートに落ち、其処からまた手よりもコンクリートよりも冷たく硬く暗い場所へ堕ちて行きました。彼は自身でも状況に追い着けず驚いてしまう程、心に多大な衝撃を受け涙を流したのです。ですが少女が湖の底に居ると言う事を耳にし、それに涙を流すのならばそれは少女が湖の底に居ると言う事を認めてしまっている訳です。勿論認めたくない彼は涙を拭おうと手を当てますが、涙は拭えず止まることはありません。それどころか頬を伝い高い鼻を伝い落ち行き、水溜りを作るだけです。そんな彼は終に膝から崩れ落ちてしまい、片手を地面に付けやっとのことで自身を支えます。何が証拠となり彼をこんなにも悲しませるのか分かりませんが、彼は耳が良かったからきっと沈み行く少女の涙の音も聴こえてしまったのでしょう。泣きじゃくる事しか出来ない私を、貴方は許さないで下さい。とくんと熱い胸が鳴ったのは私が生きているからです。)

(p/私もお一言お添えしたいのでレスをお借りします。本当に本体様、満月ちゃん共々長い時間お疲れ様でした。私の方は本当に驚きと淋しさで胸が沢山になってしまい、その為、彼の方も物凄く泣き虫になってしまって…。気の利いた言葉のひとつも言えずに申し訳無いです。再度、本体様、長いお付き合いと素敵な満月ちゃんを有難う御座いました。満月ちゃん、おやすみなさい。)

35 ◆YQUUXN652Q:2010/08/08(日) 21:17:26
(街外れにある廃墟と化した館、その玄関の分厚い扉はヒトの侵入を拒むように硬く閉ざされていました。一昔前、黒猫と共に彼が初めて此処を訪れた時に一風変わった少女に出迎えてもらった、そんな朧げな記憶を頼りに足を運んだのです。ほんの数時間前、彼は森のとある湖を覗いていたのですが、そこには幾ら探しても探しても痕跡一つ見当たらないのです。それから彼は街を歩きました。広場を通り、路地裏を抜け、木箱を覗き、空を仰ぎ、街路を駆けました。しかし平生の街並みと何ら変わりはありませんでした。最後に訪れたこの館に淡い期待を抱いて、扉の片側を力任せに押す、押す、そして押したところでギギギと悲鳴を上げた扉から小さな隙間を作り出すことが出来たので、その間に自らの体を押し込めて館内に入りました。館内は電気も人気もありませんでした。しかし散らばっている多くの書物や薄汚れた絨毯が、此処にかつて人が居たことを示唆しています。それ以外は所々崩れている痛々しい壁や割れた窓ガラスから月明かりが差し込むばかりでした。そう、街は、自然は、世界は、何一つ変わっていませんでした。彼女の存在一つを欠いて。彼は、暗い館内の壁に背中を預けました。屋根が破れ、辛うじて残っている天井の骨組みの間から丸い月が姿を見せています。これ以上行く当てもない彼は、月を、満月を仰ぎました。―――どれほどの時間が経ったでしょうか。月が緩慢にずれていくに連れて彼の影も形を変えていくのですが、当の本人は床に足裏を縫い付けられたかのようにその場を離れません。視線も上空の月に注がれたままです。食い入るような視線の先、段々と輪郭のぼやけていった満月が、遂に、ぐにゃりと歪みました。そして彼は月が姿を変えたのが嬉しいのか、にんまりと笑うのです。もう既に、彼の頬には幾筋もの涙の跡が滲んでいました。新たに溢れた雫が渇いたその上に新たな筋を残していき、輪郭へ顎へと伝って、黒色の服にじんわりと染みを作るのです。そんな中涙を拭う動作が全く見られないのは、涙のお陰で視界が滲み、月が歪む姿を網膜に刻み付けたいからです。彼はあの湖を訪れた時から、気付いていました。彼女を彼女たらしめる身体はもう存在しないということを。どこを探しても過去を追っても無駄な足掻きに過ぎないということを。しかし錯乱した今の彼の脳内では、ただ一つの感情が渦巻くばかりでした。寂しい、寂しい、寂しい。そして彼は、飽くことなく泣いて、また笑うのです)

(pl:およそ三年半ですね。本体様満月様共々、長い間本当にお疲れ様でした。楽しく、有意義な時間を共に過ごせたことを幸せに思います。ソロルの方は黒が少し狂っていますが、それだけの悲しみを汲み取って頂けたら嬉しいです。最後の挨拶だというのに感情的になってしまいましたが、本体共々心から、悲しさ異常の感謝を申し上げます。長い間本当に有難う御座いました、大好きです。本体様の御健康と御多幸を心よりお祈り申し上げます)

36のせ ゆ  ◆w9zlmQlObk:2010/08/09(月) 02:23:33
(恐ろしいほど透く湖がそこには存在しました。あくまでそれは点在しているわけでもなく、ただそこに居るだけの物なのです。草が茂る、林が茂る、その中にぽつんと、ただあるだけの物に感情を持とうと言うものは愚かだとなんとなく感じていた自分はどこかに偏在していました。いつ読み進められたかも分からぬような本を守り抜いて投げ捨てた彼はどこにも居たりはしませんでした。ですが、それが過去の物だと言うことは確実にありました。しかし、それを月の下に晒す日など確実にありませんでした。そう、僕が決めたのです。いいえ、決めたというのはずるいでしょうか、決められていたのです。そして目の前にあるそれも決められていたのでしょう。ですが、そう思うのは不謹慎で、これまたずるい物だと悟りました。でももう届かないのです、手も声も涙も俺の息も。明るい色の布なんかは取り払い、私は足を捨てました。今はこんなものこそ不要なのだと悟ったのです。あれもこれも不要だと、ただ息をはいているだけで浮かび上がってくる頭を冷やそうという項目で自らの喉を絞めようとしました。ですが気づけば涙すら乾いていたのです。感情ですら不要だと、思われたのです。拒絶したのは湖からでした。そう今は想いたくて自己満足でそう思っています。すると、彼は不思議なことに彼が分からないことを湖に語り始めました。僕が決めたことを破ろうとゆっくりではありますが言葉をつなげるのです。その姿には子供の我が儘を越える高ぶりが"そこ"にはありました。もちろん僕は許しません。彼から言葉を奪い、決して戻らぬように呪いをかけてあったのですから。彼はがんばりますがそれは伝わらないのです。それでも彼はやめません。それで僕は嘲笑われた感覚に陥りました。僕がわからないと困ったような顔をしているのは彼のせいなのです。でも彼も目の前の事はどうしようもないのです、彼自身何もわかってはいないのです。きっと、それには理由がないからでしょう。でも目的だけはありました。)───おれの名前、は、のせ ゆ  だよ。こんばん、は。 こんば、ん  こんばんわ、こん、 は。(時間は無慈悲にも彼を置いていきます。ですがそれでいいのです。貴方と一緒に居られるのならば何も構ったりしないのです。やっぱり、あなたの、 は、きれいだね。思い出すためにおれも をがんばってきれいにしたんだよ。だからあれは、からまっちゃったけど、あなたにやってほしい、からあんなにいたくても がまんしたんだ。今ど はあなたのほしいものをもって むかえに行くからちょっとまってね。音に反応するのは何一つありません。ただ今も息苦しいだけなのです。助けてほしいだけなのです。でも、求めたりはしないのです。

37のせ ゆ  ◆w9zlmQlObk:2010/08/09(月) 02:24:00
( あるところに恐ろしいほどに透く湖が彼の目の前に存在しました。私は鏡のように綺麗なまんまるを写すそれをがむしゃらに愛しました。いえ、こういう言い方はずるいでしょうか、愛しているのです。見えない暗闇が中心にはありますが、恐れる理由なんて何一つありません。ただそこに居るから、私もここに居るんです。本音はもっと近くに居てあげたいけど、その必要はありません。だって私がここに居るのなら、貴方もここにいると、信じていたいからです。──…ほら、寒いでしょうから、この赤い毛布を使ってください。今日はゆっくり寝て、つかれを取ってください。そしてまた疲れたらあの赤い毛布で休みましょう。お休みなさい、お疲れさま。それくらいの言葉は不器用ですが捧げられますから、今は安心して目を閉じてください。)


(PL/満月ちゃんや満月ちゃん本体様お疲れ様でした。長い間、私にとってとても大きくて大切な物を共存させていただいたことをこの場で心よりお礼を申し上げたいと思います。とても楽しい日々を送らせて頂いた感謝も込めて手慣れてないですがソロルを投下させていただきました。ソロルで何かおかしな感情が多く見受けられたら邪気を失った子供の悲しみと思ってください。もう此処で会うことはない、という言葉を見るたびに胸が締め付けられるかのように痛くなりますが、のせゆ が満月ちゃんと過ごした日々を大切にできるように私もさようならという言葉を涙とともに拭いたいと思います。最後に改めてお疲れさまでした、とても素敵な満月ちゃんが今も眩しいほどに大好きです。言葉足らずな挨拶でしたが失礼しました。)

38エリス=ヴィオレッタ ◆7GIVPAr5O2:2010/08/11(水) 00:01:49
(今日も、美しい夜です。何の変わりもなく月は微笑んでくれています。少女は軽い足取りで森を歩き、その隣を黒猫は小さな歩幅ながらもきちんとついてゆきます。そう、何の変わりもない夜なのです。随分と長いことこの街にいる少女にとって、人が消えることなんて日常茶飯事でした。しかし、今回は少しばかり具合が違います。ぴんと透明感と静寂が張り詰めた泉の縁に、少女は立ちました。ああ、静かだ、と息を吸い込み湖面を見つめます。足元に座った黒猫が、小さく鳴きました。にゃあ、と何かを訴えるように。すると少女は、柔らかに微笑みながらしゃがみこみ、黒猫の頭を撫でて、言いました)…違うよ、あの子は不幸なんかじゃないの。私より少し早く「あの人」の所へ行っただけ。フシアワセだなんて、真逆だよアリア。―…きっと向こうは、ここよりもずぅっと綺麗で、シアワセな場所。だから泣かなくていいのよアリア。あんな暗い街にいるより、きっとシアワセだよ。(泣かなくていい、あの子はシアワセだ。そう繰り返しながら、少女はアメジストから一筋、また一筋と涙を流していました。しかし口元は慈悲の微笑みを湛え、「あの子」の幸せを信じてやまない、そんな様子でした。ぐるぐると黒猫が喉を慣らしながら少女に擦り寄ると、少女は愛しそうに黒猫を抱き上げ頬を寄せます)…アリアも、きっと同じ場所にいけるよ。…私は、分かんないなぁ。…たくさん、人を苦しめちゃったから。……ほら、アリア。ちゃんと「ばいばい」するのよ。(少女は腕の中の黒猫の右前足を取って、湖面に映る月に向かってゆらりと振りました)…ばいばい。…だいすきだよ、って。


(pl:本当にびっくりしてしまって、あまり何も言えません…。本当に長くお付き合いさせて頂いて、エリスも私も満月ちゃんが大好きでした。あんな脆弱なエリスを支えてくれたのは、満月ちゃんでした。本当に何も上手なことは言えません。ごめんなさい。でも、大好きでした、いや、大好きです。今までありがとうございました。満月ちゃんと本体さんのご多幸を心よりお祈り申し上げます)


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板