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アニメキャラ・バトルロワイアル3rd Part21

123名無しさんなんだじぇ:2015/03/16(月) 05:56:38 ID:tkVTtCrY
完結おめ乙

124 ◆MQZCGutBfo:2015/03/16(月) 07:47:38 ID:nQIVkWks
最終回投下お疲れ様でした!

阿良々木君の願い。非常に彼らしかったです。
ハッピーエンドでは決してないけれど。
しっかりと着地する、納得のいく結末でした。

そして、満月を背に、空を駆けるグラハムが本当に本当にかっこよかったです!(そればっかりか

>―――では何のために?

>決まっている。


>「このグラハム・エーカーの鬱積を晴らすためだ」

ああもう最っ高、最高でした!
グラコロ最高です。
ヴォルケインを辛うじて動かすスザクの狙撃するさまも、絵で想像できる程でした。


道中ちょこちょこした繋ぎしか書けませんでしたが、
だいたい一回は書いたことのあるキャラクター達を、物語の最後まで見守れたのは幸いでした。

アニロワ3完結、おめでとうございます!
そして、最後まで諦めず、完結まで続けた合作書き手さん方。本当にお疲れ様でした!!

125名無しさんなんだじぇ:2015/03/16(月) 09:10:28 ID:aaKeeg.6
長い長い物語、完結おめでとうございます。
総ての書き手さん、管理人さん、関係者の方々、そして読み手の皆さん
お疲れさまでした。
とても楽しかったです。またどこかで。

126名無しさんなんだじぇ:2015/03/16(月) 11:21:01 ID:PEjCVrpA
ああ、アニロワ3の完結おめでとうございます
最後まで、結末まで読めてよかったああ

127僕は…そのレスを…ぶっ壊す!!:僕は…そのレスを…ぶっ壊す!!
僕は…そのレスを…ぶっ壊す!!

128名無しさんなんだじぇ:2015/03/16(月) 20:16:22 ID:fe2kRrDU
投下乙
面白かったです
ただ15日に投下するって言ってたけど今日は16日だぞ
15日にしたのは投下宣言だけ
それでお付き合いくださいって…付き合えないだろ
16日じゃん
普通は投下するのは何時になりそうですとか遅くなりましたとかありそうなもんだが
それも無いってどうなってるのさ

129 ◆ANI3oprwOY:2015/03/16(月) 23:25:17 ID:lgBKVqEM

多くの感想ありがとうございます。
そろそろ一日が終わろうとしておりますので、
簡単ではありますが諸連絡を伴う挨拶をさせていただきます。

最後まで読んでくださった方々。
ここまで待っていてくださった方々。
本当にありがとうございました。
この物語に触れて頂いたこと、心から嬉しく思っています。

次に諸連絡です。
今後、エピローグの投下を予定しております。
具体的な日程は近日中に本スレに記します。


そして、もう一つ。
こちらは、まだまだ具体的な事柄が決まっていないのですが、
座談会のような物を企画する予定です。
最終回に関する事か、あるいは一話から振り返ってみたりするか。

予定は未定ですが、チャットを解放して参加したいただく形になると思います。
日程等は、追って報告いたします。



そして、もう一度。
ありがとうございました。
今はただ、それだけしか、言葉になりません。


では、今日のところは、これで失礼いたします。

130僕は…そのレスを…ぶっ壊す!!:僕は…そのレスを…ぶっ壊す!!
僕は…そのレスを…ぶっ壊す!!

131名無しさんなんだじぇ:2015/03/16(月) 23:46:41 ID:2SchPBaE
まさか生き残ってた参加者で一番戦力が乏しくみえたアララギくんが優勝者になるとは
書き手のみなさん、長い間お疲れ様でした。

132僕は…そのレスを…ぶっ壊す!!:僕は…そのレスを…ぶっ壊す!!
僕は…そのレスを…ぶっ壊す!!

133僕は…そのレスを…ぶっ壊す!!:僕は…そのレスを…ぶっ壊す!!
僕は…そのレスを…ぶっ壊す!!

134名無しさんなんだじぇ:2015/03/17(火) 00:47:05 ID:s2io5MuA
バトロワ物はROM専だったし感想を書き込む気も一切なかったけど
今回ばかりは書かせてくれ

ハッキリ言って、完結するとは思わなかった
これはもうエターナるなと数年間決めつけ続けてきたわ
そんで久々に来たらなんか更新されてんの 自分の浅はかさを思い知ったよ
しかも偶然最終話の 投下に立ち会う事ができた それだけでも感無量だわ
お疲れ様でした

135名無しさんなんだじぇ:2015/03/17(火) 09:35:23 ID:OzASgXRY
最終回投下乙でした。
ガンダムの力を捨てたグラハムが好きだ。
レイの声と共にヴォルケインを駆るスザクが好きだ。
言峰に決意を語る澪が好きだ。
どこまでも【殺し】合う式と一方通行が好きだ。
主人公をやる阿良々木さんが好きだ。
壊れながらゲイボルグをぶちかますインデックスが好きだ。
土壇場で普通の女子高生が唯の拳銃で殺し合うのが好きだ。
一方通行が幻想を夢見て、更に踏み砕くのが好きだ。
聖杯でなく、彼女は僕のものだと言うリボンズが好きだ。
生きたいと願うようになってしまったスザクが好きだ。
インデックスを見捨てられないグラハムが好きだ。
世界の終わりで最後まで笑うサーシェスが好きだ。
新しい夢を見つけた憂が好きだ。
終わることでやっと休めると安堵する澪が好きだ。
最高のハッピーエンドを選べない阿良々木さんが好きだ。
変わらず背負い続けるスザクが好きだ。
最後の最後に、セイギノミカタと同じ場所に辿り着いた悪党が好きだ。
つまり最高だってことだ。

136名無しさんなんだじぇ:2015/03/17(火) 22:05:01 ID:lIbgHscA
完結おめでとうございます!

グラハムとリボンズの戦い、ガンダムVSやってたのが懐かしいですw
衣が死んで腐りかけてたけど立ち直って、人間の強さと諦めの悪さを見せつけてくれました。
主催といえば遠藤が復活したのは驚きでした。「金で魔法を買った」の衝撃は今でも覚えています。

首輪ちゃんサーシェスが戦争屋として場を乱しに、相手がスザクで乗機はヴォルゲイン。
サクライズとの再戦が熱い、状況的には違うかもしれないですが因縁は燃えます。
最後まで生きて、戦って、樂しんで。個人的にはサーシェスが最後までよく生き残ったと思います。

合同でやることになってから長い間お疲れ様でした。
完結の瞬間(今日ではないですが)を見れて大変嬉しかったし興奮しました。

憂と澪の邂逅、式と一方通行の戦い、阿良々木さんの選択……。
信長との戦いとルルーシュの死を乗り越えたことを考えると……けいおん組

まとめたり書くのが下手で申し訳ないです。
個人的には一方通行が大好きです!
上条さんの死、瘴気と壁や外部因子に阻まれた悪党の最後は言葉に表せません。

投下お疲れ様です、完結おめでとうございます!

137名無しさんなんだじぇ:2015/03/17(火) 22:21:20 ID:oThcjxfY
最終話遅れて読み終わりました
一方通行どうなるんだろうとロワ中盤からずっと思ってただけに、くあーーーくあーーーって感じです
説明するのは難しいが、くあーーーって感じなんだ。うむ、くあー
あららぎくんもね、いいワケないけど選んだのが、な


わかりづらい感想になったけどよかった。おもしろかった。とにかく乙と言いたい
いいワケなくても選びたくなったぜ

138僕は…そのレスを…ぶっ壊す!!:僕は…そのレスを…ぶっ壊す!!
僕は…そのレスを…ぶっ壊す!!

139僕は…そのレスを…ぶっ壊す!!:僕は…そのレスを…ぶっ壊す!!
僕は…そのレスを…ぶっ壊す!!

140僕は…そのレスを…ぶっ壊す!!:僕は…そのレスを…ぶっ壊す!!
僕は…そのレスを…ぶっ壊す!!

141僕は…そのレスを…ぶっ壊す!!:僕は…そのレスを…ぶっ壊す!!
僕は…そのレスを…ぶっ壊す!!

142管理人◆4Ma8s9VAx2:2015/03/18(水) 23:54:36 ID:???
お願い

〇毒を吐くなら毒吐きスレへ
本スレはもちろんですが、無関係の人に迷惑をかけないよう
外部サイトへの書き込みも控えていただきたく思います

〇荒らしはスルー
荒らし、煽りと思われる書き込みにいちいち反応しないでください

〇本企画以外の話題は雑談スレや該当の場所で
詳細については管理人スレをご確認ください

143名無しさんなんだじぇ:2015/03/19(木) 06:14:40 ID:xsQumKLU
最終話投下乙です!
ほんと、よくぞ完走してくださいました。
今までこのアニロワ3rdに関わってきたあらゆる人々にあらん限りの感謝をこめて!

144名無しさんなんだじぇ:2015/03/21(土) 21:30:48 ID:U5mlaYTw
投下乙〜
最終回なのに削除されすぎw

145名無しさんなんだじぇ:2015/03/22(日) 20:05:09 ID:LDrKkZsA
やっと読み終わったよ、書き手の皆さんと管理人さん本当にお疲れ様でした

全キャラが活き活きと描かれてて、お腹一杯の最終回でした
阿良々木さんもうちょっと欲張ってもよかったんじゃないの、思わないでもないけどw

完結おめでとう!エピローグも楽しみにしてますよー

146名無しさんなんだじぇ:2015/03/28(土) 02:00:56 ID:ZUmZlxkA
素晴らしい最終回でした。
書きたいことがたくさんありますが、とてもではないですが書ききれません。
本当にお疲れ様でした。
エピローグと座談会楽しみにしています。

147 ◆ANI3oprwOY:2015/04/20(月) 23:47:09 ID:3hFQUrec
テスト

148 ◆ANI3oprwOY:2015/04/20(月) 23:58:58 ID:3hFQUrec

今週からエピローグの投下を開始していきます。
では、さっそくですが1話、投下します。

149ep.00 -Singing!-  ◆ANI3oprwOY:2015/04/21(火) 00:02:55 ID:GnBVTppo










追ってくる。
果てのない『くらやみ』の向こうから、何かが私を追ってくる。
逃げなければならない、今すぐ動かなければならないのに。

身体が、重い。
足に、力が入らない。


それはもう、すぐそこまで来ている、私のすぐ後ろまで。
早く逃げなくちゃ。
逃げなくちゃ。
逃げて、逃げて、どこまでも逃げて、たどり着かなきゃ、いけない、のに―――


挫いた足が、動かない。
身体が重くて進めない。
振り向けば目の前に、後ろから追ってくる怖いもの。



それを、私は――――



「……………っ!!」



そこで、いつも目が覚める。





◇ ◇ ◇

150ep.00 -Singing!-  ◆ANI3oprwOY:2015/04/21(火) 00:05:42 ID:GnBVTppo






「うぅ……寒いな……」




寒空の下、通いなれた道を私は一人で歩いていた。
とうに秋が過ぎ新年を迎えても、住み慣れたこの町の冬はもう暫く続く。
冷え切ったアスファルトを踏みしめつつ、いつもより厚着して家を出たのは正解だったと確信した。

少し早い朝の通学路、生徒の姿はいつもより少ない。
こう寒いと、みんな家を出たくなくなるのだろうか。

なんて言う私も、今日は、いつもより家を出るのが遅れている。
別に、私の目覚めの悪さは、寒さのせいじゃないけれど。

目が醒めたとき、目覚ましのアラームは既に1回鳴っていたし、朝食を食べているときも何だか気怠い感覚が取れず。
トーストを喉の奥に押し込み、制服に着替え、やっと意識を晴らして家を出た時には、何時もの出発時間から15分近くズレていた。
遅刻が危ぶまれるほど遅れたわけじゃない。けれど、気持ち早足で歩くとする。

もう何夜も連続で見ている悪夢。
削れていく睡眠時間。
私にとって、目下最大の悩みだった。

「おっす、みーおっ!」

そのとき後ろから、声が聞こえた。
と、同時、背中に衝撃。
誰かに叩かれたのだと、すぐに分かった、そこに誰が居るのかも。


「うわっ! って……なんだ、律か」
「なんだとは失礼なー」


勢いのあるハキハキとした喋り方。トレードマークのカチューシャ。
私の幼馴染であり、今に至るも友達である。
田井中律が、そこに居た。

「珍しいじゃん、澪がこの時間帯に登校なんてさー。どういう風の吹き回しなんだよ〜?
 ひっさしぶりに私と登校したくなったのかこのこのー!!」

いつもと変わらない。
明るく賑やかで、ちょっとうるさい。
私の、親友だった。


「別に……」

「素直になれよぅー、最近の澪ぜんぜん一緒に登校してくれなくなったじゃん。
 そろそろ私が恋しくなったてことなんだろー?」

律は満面の笑顔で、背中をバシバシ叩いてくる。
恋しくなったのはお前だろ。
なんて、軽口を言いかけて、止めた。

「……今日は……夢見が悪かったんだよ」

すると律はすぐに吹き出して。
『なになに怖い夢でもみたのかー? 澪はいつまで経っても怖がりだなー!』。
なんて茶化してくると、思っていたんだけど。
違った。

「……あ、ごめん」

気まずそうに、気遣うように、そして……心配そうな、顔をした。

「前生徒会長から聞いたんだよ、最近、ほんとに良く見るんだってな……嫌な夢」

151ep.00 -Singing!-  ◆ANI3oprwOY:2015/04/21(火) 00:07:42 ID:GnBVTppo


ああ、なんだ、和が話していたのか。しかも、その深刻さまで添えて。
そして私は、律に話していなかったのか。
思えば久しぶりだった。律と一緒に歩くのは、こんなにゆっくり、話すのは……。

「そ、そういえばさぁ、楽器店について来てくれるって話。あれいつになったら行くんだよー」

律は話題を変えようとする。
少し、無理のある笑顔で。

「こんど、な」
「こんど、こんど、って、澪最近付き合い悪いぞー?」
「……ごめん」
「うーん……ま……いいんだけど、さ」

律はすぐに引いてしまう。
実際、付き合いが悪くなったのは事実なのに。
心なしか、先ほどまでの元気が、私の大好きだった彼女の明るさに、影が差してしまったような気がした。
罪悪感に駆られる。
だから私は、大きめの声で、色々な事を誤魔化すことにする。

「行こう、ゆっくり歩いてたら遅刻するぞ」
「……うん」

そこからは二人、とりとめのない会話を続けながら歩いた。
学校を目指して。


「……あ、澪。見ろよ、空」
「………降ってきたのか」


ちらちらと、粉雪の残る。
3年生の3学期。




私にとっての高校生活、最後の冬だった。












◇ ◇ ◇

152ep.00 -Singing!-  ◆ANI3oprwOY:2015/04/21(火) 00:09:17 ID:GnBVTppo




いつも通りの日常が過ぎていく。


窓際の席は少し寒いけど気に入っていた。
授業は私なりに真面目に受け、休み時間はボンヤリと窓の外を見る。
昼休み中には律、唯、ムギ、梓がやってきて、和も交えて雑談する。
そんな、いつも通りの平和な一日だった。




「ねえ」

放課後、隣の席から声がかかる。

「ねえ、元副会長」

「なんだよ、元会長」

「あなた最近、ずっと外ばかり見てるわね」

「窓際の席だからな」

ぶっきらぼうな言い方に、和が苦笑するのが分かった。
軽音部のメンバーとは、終ぞ同じクラスになることはなく。
けれど彼女とは2年、3年と連続して一緒だった。

『生徒会に入りたい』

なんて突然言った時、和は驚きながらも快く相談に乗ってくれた。
結果として、私は生徒副会長になって、彼女との付き合いは長く。
色々な事があったけれど。
もしかしたら今の私にとって、彼女こそが一番の理解者なのかもしれない。


「先生がよんでるわ」

「私を?」

「そう」


気怠く前を見れば、教壇の隣で、さわちゃん先生が私を見ていた。







◇ ◇ ◇

153ep.00 -Singing!-  ◆ANI3oprwOY:2015/04/21(火) 00:10:25 ID:GnBVTppo





「……と、言うわけなのだけど」


「そうですか」


「まずは、おめでとう、秋山さん。担任として嬉しいわ」


「ありがとうございます」


「でも、秋山さん……」


「なんでしょうか?」


「ごめんなさい、いまさら変な事を聞くんだけどね。
 あなたが2年の頃から、大変な努力をしていたのは分かっているの。
 恥かしがりのあなたが副生徒会長にまでなって。
 でも、本当に……これで、よかったの? あなたは―――」


「いいんです。両親も納得してますし。なにより私が、自分で決めたことですから」







◇ ◇ ◇

154ep.00 -Singing!-  ◆ANI3oprwOY:2015/04/21(火) 00:12:36 ID:GnBVTppo


「澪先輩」

背後から声をかけられたのは、職員室を出て、廊下を歩いていた時だった。
振り向けば、そこには後輩である中野梓が立っていた。
ギターケースを抱えて、私を見つめている。

「今日は、部活来られますか?」
「ごめん。引き継いだばかりの生徒会の様子を見にいきたいし、それに勉強もしなきゃ……いけないからな」
「そっか、そう、ですよね。先輩たちもうすぐ卒業、ですもんね」

何かをはぐらかす様に、梓は私から目を逸らす。
おかしなものだと私は思う。
はぐらかしているのは私なのに、どうして梓の方が気まずい顔をしているのだろう。

「梓は、これから部活?」
「あ、はい。唯先輩達、今日はちゃんと練習するのかなぁ……卒業ライブしたい、卒業旅行いきたい、って言ってるくせにだらけてばっかりで……」
「大丈夫だよ。あいつら受験終わったんだし、梓がビシッと言ってやればちゃんとやるさ」
「ほんとでしょうか……。でも先輩がいないとみんなの気が締まりませんから、大変なのはわかりますけど、たまには部活、来てくださいね」
「……うん」




梓と別れ、夕暮れの廊下を一人で歩く。
窓から流れ込むオレンジ色の光が、教室のドアや窓をぼんやりと照らしていた。
誰も居ない廊下、何処からか、楽器の音が聞こえてくる。
その音を聴きながら私は歩き続ける。穏やかな時間だった。

何も変わらない毎日。
何も変わらない日常。
だけど一つだけ以前と変わったことが確かにあった。

最近、部活をサボりがちだという事だ。


『でも、本当に……これで、よかったの? あなたは、みんなと同じ大学に行きたかったんじゃないの?』


さわちゃん先生は、きっとそう言いたかったんだろう。
勉強するから家に帰る、なんて嘘だ。
私の受験なら、今日、ついさっき終わったばかりだというのに。




推薦による、海外(ロンドン)の大学への留学試験―――無事合格だった。

155ep.00 -Singing!-  ◆ANI3oprwOY:2015/04/21(火) 00:14:12 ID:GnBVTppo


「……ああ、そうか、じゃあ、もう引き上げないと、いけないのか」

ふと、忘れ物を思い出す。
ずっと隠していたもの。
気まずいかもしれないけれど、今日、取りに行かなければならないモノだと思った。

階段を上ってすぐの音楽室に、それはある。
夕焼けの部室。
ここに来るのはいつ以来だろうか。
一年と少し前、ちょうど私が悪夢に悩まされるようになった時のこと。

徐々に部活に顔を出さなくなって。
最初はみんな心配していた。
けれど、理由を察したのか、すぐに何も言わなくなった。
友人としての関係は変わらなかったけど、気を使っているような雰囲気は感じていた。

部室のドアをゆっくりと開く。
楽器の音は無く、人の声もしない。
夕暮れ時の、空っぽの部室がそこにあった。
ちょうど今朝、観た悪夢の再現のような――――

「……………」

幸い、今はなぜか、誰もいないようだった。
みんなして梓の説得を振り切り、梓を巻き込んで練習をサボっているのだろうか。
その様子を想像するだけで、ほほえましい気持ちになる。

残念なような、ほっとしたような、おかしな感覚の中。
私は、早急に忘れ物を、置きっぱなしにしていた楽器と私物を、右手で拾い上げる。
今日持って帰らなければ駄目だと思った。
じき、出立の準備を始めなければならない。そしてここに来ることは、おそらくもう無いだろうから。


そうして、荷物を担ぎ上げた私は、こっそり部室を出ようとして―――




「あれ、澪ちゃん。帰ったんじゃなかったの?」




気がつけば、部室の入り口に、一人の少女が立っていた。

156ep.00 -Singing!-  ◆ANI3oprwOY:2015/04/21(火) 00:16:26 ID:GnBVTppo


「………ぁ」


平沢唯。
夕焼けに照らされた彼女に、私は絶句する
赤く染まった唯の姿に、私は、何を、連想したのだろう。


「あ、ああ……えっ……と、忘れ物、したんだよ。でもすぐ帰るから、ごめん、また明日っ……!」


言い訳できない大荷物で何を言ってるんだろう、私は。
早足で、唯の隣を通り抜ける。
通り抜けて、去ろうとした。その直前に、唯はぽつりと、呟いた。

「澪ちゃん……なんだか最近変わったね……」

足が、縫い付けられたように止まる。
ボンヤリとしているようで、その実、
誰よりも勘の鋭い唯は、もしかしたら見抜いていたのだろうか。

「私達と距離置いてるって言うのかな。ううん、もうちょっと曖昧な感触。
 壁って言うより、膜があるっていうのかな。あんまし上手く言えないんだけど……。
 なんか澪ちゃんの心が、遠くに行っちゃったみたいで……さわれなくなっちゃったみたいで……」

「な、なに言ってるんだよ唯。
 私はいつもどおりだ。そうだよ、これ以上の『いつどおり』が……他にあるもんか」

「そっか、うんそうだよね。でも……もし悩みがあるなら何でも言ってね。
 私達はいつでも相談に乗るから、だって最近の澪ちゃんはまるで――」

私は一歩後ずさる。
唯は優しく触れ合おうとしてくる。
指が、私の頬に伸びてくる。私の頬に、在る『傷』に―――

「『無理して澪ちゃんを演じてるみたい』だよ」

やめろ。
聞きたくない。
触れられたくない。



違う、私は――――触れたくないんだ。

157ep.00 -Singing!-  ◆ANI3oprwOY:2015/04/21(火) 00:18:03 ID:GnBVTppo


「私、行くから」


逃げるように、俯いて、顔を隠して、唯を押しのけるようにして、部室を出る。
逃げるように、逃げた、廊下の先に。

「み、澪……じゃん、どうしたんだよ……」


―――律が、いた。
―――律だけじゃない、ムギも、梓も、そこに居た。


「帰るんだ……」

もう誰の顔も見たくない。
律も押しのけて、今度こそ家路に着こうと。


「―――なあ澪。私も、みたんだよ、悪夢」


ああ、やっぱり、今の会話、聞かれちゃってたんだ。


「私たち全員が同じ夢を見てる。
 それは澪が、頑張る夢なんだ。唯、ムギ、梓、それに私の……為に、軽音部の為に、一生懸命になって。
 傷ついて、ボロボロになって、死にそうになって、それでも戦う、そんな夢なんだ。
 あれさ、本当は夢なんかじゃなくて……」

「――ッッ!!」

「……まってよ、澪ッ!」




もう、限界だった。

振り切るようにみんなを置き去りにして、私はそこから逃げ出した。





◇ ◇ ◇

158ep.00 -Singing!-  ◆ANI3oprwOY:2015/04/21(火) 00:19:38 ID:GnBVTppo




振り返らずに走る。

逃げる。

逃げている。

なにから?

私はなにから逃げている?

日常から逃げている。

仲間から逃げている。

あれほど取り戻したかった、全てから逃げている。

何故?

どうして、どうして私は―――


「……っ……っ……な………ん……でだよぉ……」


何も分らないまま走り続けて、気がつけば、小高い丘の上にいた。
走りつかれ、丘の上で蹲るように。
たった一人で、泣いていた。


「………なん……で」


夕暮れの空を見渡せる丘。

私の町を見下ろせる丘。

全てがここにあった。

全てが元通りになっていた。

あれほどに取り返したかった日常が、全て、ここにあるのに。



「なんで、私は…………?」


だけど、どうしても、日常に帰れない。
心のどこかにある、異物感が拭えない。

どうしてなのだろう。
何も変わっていないはずなのに。
なのに辛い。
苦しい。
日常を生きることが、仲間と接することが。

どうしても引っ掛かりを感じてしまう。
噛み合わない感触に耐えられない。
あれほど望んだ事のはずなのに。
やっとの思いで、地獄から抜け出したのに。
やっと、やっと、還ってこれたのに。

159ep.00 -Singing!-  ◆ANI3oprwOY:2015/04/21(火) 00:22:02 ID:GnBVTppo

殺し合いに生き残り、日常に帰還する事が出来たのに。
どうして私は、この安息に苦しみを感じているのだろう。
いったい何が変わってしまったのだろう。
私とみんなとの、ズレは、何処に在るのだろう。

ずっと、ずっと分らなかった。
だけど今日、やっと分ったような、気がした。

日常に異物感があるんじゃない。
この自分こそが、日常に紛れた異物なのだと、知った。
変わったのは世界じゃなくて、私自身だったんだ。

怖い。
怖いんだ。
何も知らない彼女達の無垢な瞳が。

単純に、純粋に、心配してくれる、その心が怖い。
こんな私を見つめる、その綺麗な目が怖い。

私のなかじゃ、何も消えていない。
何も、何も、無かった事には出来ない。

殺し合い。

あの地獄の痕跡は、確かにある。
左手首は今も満足に動かせず、ベースを弾くことは二度とできないかもしれない。
毎晩、見続ける悪夢。
そして何より、この頬に残る刀傷が、鏡を見るたびに思い出させる。

地獄の、殺し合いの、記憶を。
恐怖。
痛み。
絶望。
そして、罪。

傷は、消せない。
化粧で隠せても、消す事だけは出来ない。

憶えているし、分かっている。
私は、ただの人殺しなんだと。
自分の為に他人を傷つけた。
そのくせ、何の報いも受けていない。

地獄から解放された後。
戻る世界には、失った筈の全てが残っていた。

馬鹿げている。
殺したくせに、殺したくせに。一人で幸せな世界に戻ってきた。
こんなことは許されない。許せ、ない。

―――本当は誰一人救えなかったくせに。

私は、彼女達に案じてもらえる立場に無い。
両手は血で汚れきっている。
こんな手で彼女達に触れたくない。

私の好きだった平穏に、私が泥を付けてしまう。
関わるだけでみんなを汚してまう、そんな気がして。
何も知らない彼女達の純粋な心が怖くて、堪えられないんだ。

確信する。私はもう一生涯、あの陽だまりの中には戻れないんだろう。
気がつけば、そこからとてもとても、遠い場所に来てしまっていた。
日常を取り戻す為に、日常から遠く遠く離れて。
そしてもう、帰ることは出来ない。

たとえ目の前にあるように見えても、もう二度と、手に入れる事は出来ないんだ。
そう、悟った。
だって私はこれを、何よりも大切なモノを、気づかぬうちに、自分で捨ててしまっていたんだから。

160ep.00 -Singing!-  ◆ANI3oprwOY:2015/04/21(火) 00:23:56 ID:GnBVTppo

きっと、これが相応の罰なのだろう。
自分の為だけに、命を奪ったことへの報い。
結果を笑って迎えるほど、潔くはないけれど。
仕方の無いことなのかな。とは思う。


それに私は、なんでだろう、不思議と――――


「なんだ、じゃあ、やっぱり救えない……」


記憶を消してしまいたいとだけは、どうしても思えなかったから。
あの場所で、あの世界で、私が出会い、そして守ろうとしたモノ。
その正体を知っても、後悔できないのだから、本当に救いようがない。

命を懸けた。
人を殺した。
取り戻したいと本気で願った。

全力で、戦った。
あの地獄の中で、私は、何を失ったのだろう。
そして何を、得てしまったのだろう。

「痛いな……」

何処かに残る、傷が痛む。

「痛い……」

たとえば、片頬に残るモノ。
この傷を、残すと選んだのは私自身だ。

私が決めた。
私が、選んだ。

それだけが重要なことだったんだ、と。
定めたのも、私自身だった。

「…………っ」

両の手を、強く握り締める。
なんて馬鹿げた選択肢。
なんて、愚かな生き方なんだろう。

忘れてしまえばいいのに。
記憶を消して、それでふわふわと、帰還した緩やかな日常に身を任せればいいのに。

なのに私はまた、選んでいた。
罪を、思いを、あの場所で背負ったモノを、未だ持ち続ける事を。

「そっか。まだ、在るんだ。ここに……」

―――そう、私は、まだ背負ってる。
背負うと決めた、重い、思いの全て。
失った誰かへの気持ち。
殺した誰かに対する罪科。
共に戦った誰かの孤独。
約束した誰かへの憧れ。

あの場所で出会って、そして失った彼女達の思いを。
そして、私自身の、選択を。

ぜんぶ、ぜんぶ、背負ってる。
きっとそれだけが、私があの地獄のなかで最後まで守り通した、たった一つのちっぽけな意地だから。

161ep.00 -Singing!-  ◆ANI3oprwOY:2015/04/21(火) 00:24:44 ID:GnBVTppo



いま、歌いたいと思った
遠く離れた世界まで響くように。

声は風に乗って、天に届け。
空を越えて、世界を超えて、どこまでも、どこまでも、どこまでも響き渡ればいい。

そしたら、また、歩き出せる気がするんだ。
どこかに行ける気がする。
この、重い体を引きずって、どこかへと。
どこかへと、どこまでも、私は、行きたいんだ。



『じゃあ、せいぜい頑張って――――』



不意に、世界に溶けた彼女の声が、私の背中を押した気がした。
私は、肺がいっぱいになるまで、息を吸い込む。
どこにも届きはしない、小さな声。
だけど、たとえ届かなくったって。




「――――――――――――」




今の私に出来る全力で、歌う為に――――















◇ ◇ ◇

162ep.00 -Singing!-  ◆ANI3oprwOY:2015/04/21(火) 00:27:03 ID:GnBVTppo








―――――遠い異国の風が、私の頬を撫でていく。












潮の匂いを感じながら、広大な野原を歩いて行く。
振り返ってもそこに、誰もいない。

一人きりの旅路。
もうどこにもいない4人分の幻影を引き連れながら、進む。

向かい風は強く、からだは重く感じるけれど。
希望を捨てられない私は、この重さとともに歩くだけ。


―――私はどこに行くのかな。


きっと永遠に届かない希望(おもい)を抱えたまま、飛ぶ事なんて出来はしないけど。
私は今も、背負ってる、それを誇りに。


―――私はどこまで行けるのかな。


どこまででも行いける。どこまででも行く。
翼を失って、飛べない私は、この二本の足でどこまでも。


想いを引き連れてどこまでも。

163ep.00 -Singing!-  ◆ANI3oprwOY:2015/04/21(火) 00:31:42 ID:GnBVTppo


「道なき道でも進もうよ」



どこまでも、行きたいと、願う。



「一緒に、踏み出すそこが道だよ」



音はもう私一人しかいなくて、だから標(しるべ)すら無くて、それでも。



「ビートで胸に刻む、誓い」


この想いだけは、消せないから。


「いつまでもずっと―――」


足は未だ、止まらない。




「――――Yes,We are Singing NOW」




「へえ、日本語の歌なんて、こっちに来てから久々に生で聞いたわ」




声を出し切った充足へと。
不意に、誰も居ない筈の背後から、誰かの呼びかけ、小さな拍手。



「上手いわね」


少し、嬉しくなる。
きっと此処から始まるモノもある、此処から変っていくモノがある。
そう信じられるから今は、予感と共に足を止め。
私はもう一度、私の後ろへと。

誰かの声に、まだ見ぬ何かに、振り返る。
きっと、そこに確かに在る、何かが。



「ありがと、あなたは――――」





私の、夢の続きだ。
























【アニメキャラ・バトルロワイアル3rd / 秋山澪 -To the next story!- 】

164 ◆ANI3oprwOY:2015/04/21(火) 00:32:51 ID:GnBVTppo
投下終了です

165名無しさんなんだじぇ:2015/04/21(火) 01:45:38 ID:fdVrQGkc
投下乙〜!
多分どういうことか全然分かってないのだけれど。
それでも、澪がまた歌を歌おうと思って歌ったことになんかじわりときた。

166 ◆ANI3oprwOY:2015/04/21(火) 23:33:46 ID:AGARX4jY
test

167 ◆ANI3oprwOY:2015/04/21(火) 23:35:03 ID:AGARX4jY
お待たせしました。エピローグ2話目投下します

168ep.00 -幻視光景- ◆ANI3oprwOY:2015/04/21(火) 23:37:58 ID:AGARX4jY



いつも通りの服を着て、街を一人で歩く。
外は寒く、空気が痛いくらいに張り付く。
まるで小さな針で刺されてるみたいで目が痺れる。
まだ冬が終わる日にはなりそうにもない。
雨が降ってないのは幸いだ。もし降っていたら骨まで響いていただろう。
病院生活はとっくに終わっているが、病み上がりの体に違いはない。
傷は完治してもも古傷のようなものは残っているらしく、こういう寒い日には体の節々が疼く。
切り傷の類はあまりなかった筈だった記憶だけれど、おかしな話だ。


世界の移動なんて大それた行為の実感もなく。
当たり前のように帰ってきた私は、その場ですぐに倒れた。
帰る前に治療をしておくなんて気前のいいこともなく、瀕死手前の状態のまま放り出されてだ。当然といえる。
まず止血した方がいいと思ったが、既に気力も体力ももう限界でとにかく休みたかったのだ。
家に帰る気、というのもしない。その時思い浮かべたのが、両儀の屋敷でもなく、自分の何もない部屋でもなかったからなのだろう。
先のことは考えず眠るように瞳を閉じたところ、暫くして慌ただしく近づいてくる足音が聞こえ、
現れた人にそのまま救急車に運び込まれて入院することになった。
容体は重症だったが命に関わるものはなく、時間を置けばどれも自然に治癒するものだった。
退院届はとうに出し終わり、こうして自由に出歩くこともできる。

……後で聞いたところによると、病院に連絡を入れたのはトウコだった。
どういういきさつがあったのか、私が遭った事態についてあっちはおおよそを把握していたらしく、
私が帰った時より少し前から根回しをしていたということだ。




『どうもこうもない。私に宛てられた役は最初から画面越しの観客だったということさ。
 元の世界との橋渡しの一要素に使うには、あの状態の私は適役だ。
 器が壊れればあそこの記憶は部外の私に流れる。箱の中の猫は自動的に観測された結果となる。
 劇を見聞きすることは出来るが、それ以外の行動干渉は一切受け付けない視聴者視点。
 世界を重ね合わせ過ぎた狭間の中で起きた物語が『在った』ということを確定させるための実数。
 生還者が鏡面界に囚われることのないための配慮とはいえ随分な念の入れようだよ、あの便利屋は。
 ……なのにその後始末を私に放り投げるとは、アフターサービスがなっちゃいないんじゃないかね。
 世界との癒着の綻びを剥がすのにどれだけ手間が要ると思ってるんだ。下手をしなくても私が見つかりかねんぞ。
 よしやはり二、三ほどは残しておくか。電話線程度の繋がりを維持すれば逆探知して引き摺り込めるんだがな……』

169ep.00 -幻視光景- ◆ANI3oprwOY:2015/04/21(火) 23:39:08 ID:AGARX4jY




何度も理由を本人に問い詰めているが、口に煙草を咥えて文字通り煙に巻かれている。
結局大半が分けのわからない上私情が混じり始めていたので、諦めて聞き流すことにした。

その中の報告で留まった一点。
私達、と言う通り、失踪したのは私だけではない。
礼園女学院から女生徒と、既に一人しかいない男性教師、関連性のない二人が姿を消している。
世界の矛盾を抑止するため働いた辻褄合わせなどとトウコが言っていた。
連れ去られた時間がそれぞれ異なっていたとしても、帰ってこれなかった時点で彼らの死は確定し現時点から消失したと。

分かっていたことだ。仮にここに生きた幹也が私を迎えにでも来ていたら、本当にどうしていたか想像できない。
ただ同時に、私を捜してくれたのがあいつでなくトウコだったということに、
何か期待していたものを裏切られたと感じてしまったのが無性に腹立たしい。
矛盾した在り方。相反する感情。
どちらも本当のことで、陰と陽はどちかも曖昧なのに、溶け合うことなく綺麗な境界線を敷いている。


街は変わり映えすることもなく、平穏そのものだ。
昔巷を震わせた殺人鬼の再来とか、少年少女が同時失踪したとか、物騒な話はまるで浮かばず。
道行く人や物にまとわりつく無数の線も、カタチを変えずそこにある。
その傷痕が、かつてないほど私の何かを急き立てる。

……早いとこ、目的のものを貰おう。足早にトウコの事務所へ向かった。



   





事務所の扉を開くと、机に座っていた黒桐鮮花と目が合った。
私を見るなり紙に紋様を記していた手を止めて、言葉もなく目つきを険しいものに変える。

「――――――」

無言で、ただ視線に意思を乗せて睨み付ける。
今すぐ飛びかかって喉笛を噛み千切らんとする激情を理性で抑えつけそれでも止められず漏れ出した、悪魔じみた表情。
これまでを遥かに超えるこの態度が、ここ最近私が見る鮮花の平常だった。

「何しに来たのよ、式」

きちんとした言葉を出せるぐらいに落ち着いたのか、割合そっけなく声をかけられる。
隠すまでもなく、声には黒々とした感情が乗せられてるが。

「用があるのはトウコの方だ。頼んでたのを貰いにきただけ……って、いないじゃないかあいつ」
「橙子師は外出中です。昨日また新しい綻びが発見されたとかで、その後始末に向かっています」

あくまで事務的に伝える鮮花。その態度よりも伝えられた内容の方に私は顔をしかめた。
日がなデスクに腰かけ煙草を指に挟んでいる眼鏡をかけた女所長は、この時ばかりは不在だという。

「なんだあいつ。自分から取りにこいって言ったくせに」
「それについては私から預かっているわ。はいこれ」

約束をすっぽかされ待ちぼうけかを食らうかとと思っていたところに、鮮花は座っていた机の隅に置かれていた小物入れを手に取った。
刀の柄より少し太い、特に変わり映えのしない眼鏡入れのケースだった。
そうか、と差し出されたそれを持ってこの場を立ち去ろうとする。
トウコの顔が見たいでもなし、留まる理由がなくなったから長居する理由もない。

170ep.00 -幻視光景- ◆ANI3oprwOY:2015/04/21(火) 23:40:52 ID:AGARX4jY


「……」
「……」


それが結局出来ないでいるのは。
私が握るケースの逆を掴んだ鮮花が、いつまでも手を離さないからだ。

早く離せ、と目で訴えてる。
嫌よ、と同じく目で返される。

「ケンカ売ってるつもりなの、あんた?」
「いや、それはオレの台詞だぞ」

引っ張る力を強めるが、鮮花の手は吸盤でもくっついてるかのようにぴったりと箱に張り付いて離れない。

「橙子さんも橙子さんよ、なんだって私にこんなものを渡して、よりにもよってこいつ宛てなんて任せるのよ……」

珍しいトウコへ苦々しい不満を口に出す鮮花の言葉の中で、流せない台詞が聞こえた。
今度は、私の琴線が触れて揺れた。

「まさか、見たのか」
「見てないわよ。けど眼鏡ケースに入ってるのが眼鏡以外だなんて普通想像しないでしょ。
 あんたに譲らない理由なんて、それだけでお釣りが出るくらいだわ」

手の力は段々と増していっており、箱がミシミシと軋むのを振動で感じた。
互いに譲らず、このままでは先に目的の品の方がおしゃかになってしまいそうな境になって。


「なんで、守れなかったのよ」


ぽつりと呟いたのは、安全装置を外して暴走しないようにするスイッチだった。
迸るほどの感情を、なるべく理路整然とした意味ある言葉へ変えて、正統に訴えるための準備。

「幹也も藤乃も死なせたのに、あんたはそんな風にしていられるのよ。
 結局あんたにとっては替えが効く相手でしかなかったってこと?
 あれだけ私から幹也を奪っておきながら返しもせず捨てていくなんて、そんなの卑怯にもほどがあるでしょう」

私が帰ってきて、トウコからその際の顛末―――黒桐幹也と浅上藤乃の死を伝えられた時、鮮花はそれこそ世界の終わりに直面したような顔になっていたという。
実際世界が滅ぼうが相変わらず泰然としていそうな性根の鮮花には、幹也の死は正しくこの世の崩壊に等しい災事だっただろう。
そこからは泣きもせず、嘆きもせず、元々刺々しかった私への態度を剣の鋭利さまで研ぎ澄まして、見た目は淡々と普段通りの生活を送っていた。


幹也達の死の責任を私に押し付けられるのが、八つ当たりだとは思わない。
だって私は、あいつの死体を見た。
体の硬直度や残っていた生乾きの鮮血から、直接斬りつけられてから数時間程しか経っていないと判断がついた。
つまり、決して間に合わない時間の差は無かった。いやそもそもあの島のどこかにいるのは確実なんだから捜そうとすればもっと早く気づけた筈なのだ。
たとえ後付けの結果論だとしても、死なせた事実には言い訳が利かない。

だから鮮花の怒りはもっともで、その矛先を私に向けるのはまったく正統だ。
……どれだけそれが恐ろしいことか知っていても、受け入れるしかない。

171ep.00 -幻視光景- ◆ANI3oprwOY:2015/04/21(火) 23:42:47 ID:AGARX4jY

「橙子師に頼んで修行の段階を上げる許可を貰ったわ。実戦だって礼園で経験済みだしいつまでも油断しないことね。
 門戸を叩きに来るのを覚悟しておきなさい」

本人の性格が表れてるような、堂々の宣戦布告。鮮花の目は、名前通りの鮮やかな翠(いろ)の中に煌々と烈火が宿っている。
しかも門戸を叩く、ときた。



本物の殺し合いを、あの場所では数知れず経験した。
快楽のため。狂気のため。野望のため。願いのため。誰かのため。
多くの動機が、他者が私を殺そうとする理由だった。


けどこの意思を向けられたことは、一度もない。
最後に戦った相手さえ、本質的には私に対しての殺意ではなかった。
あれは互いに、道にいた邪魔を払おうとしただけに過ぎない。
あの世界では私もただの参加者の一人。異常性なんて埋もれて消えるぐらい濃い場所にいたただの人。


ああ。なんだろう、これは。
本気で憎まれてるのに、恨まれてるのに。
それがとても新鮮な気持ちに感じられているのは。


「誰が何と言おうが、幹也を見殺しにしたあんたを絶対に許したりなんかしない。
 いつか必ず―――私が殺してやるんだからっ!」


ねじれのないあまりにも正面的過ぎる殺意。
届く叫びは、胸に空いていた穴に向かって見事に直撃した。


そんなことを言える奴なんて、あいつしかいないと思っていたのに。
ひょっとしたらだけど。それは私にとって初めての体験だったのかもしれない。



「―――ああ。おまえなら、いいかもな」



気づけば、素直な感謝を口にしていた。
私の台詞に呆気にとられた鮮花はぽかんと口を開けて黙っている。
握力が緩んだのを感じ取って、その隙をついてケースを素早く指の間から引き抜いた。

「……あっちょっと!どういう意味よ、それ!ふざけてるの!?」
「言葉通りの意味だよ。その時が来たならよろしく頼むぜ。
 もちろん、オレだって黙って殺される気はないけど」

後ろで続けて文句を言う鮮花を放って事務所を出て行く。
頬が僅かに緩んだ安心した顔を今見せでもしたら、それこそこの場で殺し合いが勃発するかもしれなかったからだ。





172ep.00 -幻視光景- ◆ANI3oprwOY:2015/04/21(火) 23:44:21 ID:AGARX4jY




空にはぶ厚い雲がかかっていて、蒼い景色は隠れている。
今にも雪が降りそうな天気だったが、急ぎもせずゆっくりと帰り道を歩く。
その途中、無事回収したケースを開き、その中身に流石に顔をしかめた。

「……本気でケンカを売っているのはあいつなのかもな」

確かにデザインについて注文をつけてはいなかったが。これは、流石にないだろう。
文句を言いつつも、地味な黒色に縁どられた眼鏡をかけて、空を見た。

「―――――――――ぁ」

―――レンズ越しの世界は、とても綺麗に見えた。
昏睡から目覚めて以降見慣れた街並みが、まったく別の景色みたい。

万物の綻び、死を司る線はレンズにはまった視界の中だけ消えてしまった。
まだ式と識がひとつだった頃のような、ありのままの姿。
欠けるものもない代わりに、何も満たされることもない空虚な日々。

けれど、視えなくとも死はすぐそこにある。
眼鏡を外せば元通りの、両儀式の世界に引き戻される。
だからこんなのは、ただの気休めでしかないものだ。
今までにないお節介たちのせいで、以前よりずっと弱くなってしまった私。
この先の未来を生きていくのに必要な枷。

だっていうのに。喪われたかつての幸福な視界(せかい)を幻視できたことが、泣いてしまうくらい嬉しくて。
そんな頼りない繋がりに、私は寄りかかれてしまっている。



鮮花に真正面から怒りを突き付けられた時、本当は自分がどうなるか不安だった。
幹也を喪った虚しさと衛宮を殺した責に、押し潰されてしまわないか。

『―――精一杯生き続けなさい』

頑張れ、だなんて最後に残した声が、頭に留まって離れない。

『――そういう、特別を願うよ』

普通のやつが失ったものを取り戻そうと懸命に走る顔が、いつまでも忘れられない。

173ep.00 -幻視光景- ◆ANI3oprwOY:2015/04/21(火) 23:46:01 ID:AGARX4jY


埋まらない胸の孔には幾重にも糸が張り巡らせて、バラバラになってしまいそうな体を縛り付けている。
それらの縁が、どうにか私に前を向かせている。

これから先、夢の終わりに気付かされるときが何度か来る。
またおかしな出会いに巻き込まれるのはまっぴらだけど。
どうやら……あの最後について、まだ未練が残っているようだ。

死んだ人間が見えることなんてない。
遠くから自分を呼ぶ声なんて聞こえてこない。
でもこのまま忘れて放りっぱなしにするには、後味が悪くなるものが。
せめて"その日"が来るまでは――――――ことなのだろう。

生と死が螺旋する世界を俯瞰しながら、人を殺して残る喪失の痛みを忘却せず。
がらんどうの胸に僅かに生まれた、これから続く未来に思いを馳せる。

言い訳しようのない。なんて、無様。
けれど、それも受け入れる。
ほんの少しだけ癒えた孤独を背負って、私は日常を過ごしていく。
いつも隣にあった熱をもう感じることが出来ないことを、やはり寂しく感じながら……。






















【アニメキャラ・バトルロワイアル3rd / 両儀式 -To the next story!- 】

174 ◆ANI3oprwOY:2015/04/21(火) 23:46:51 ID:AGARX4jY
投下終了です

175名無しさんなんだじぇ:2015/04/22(水) 01:24:59 ID:k6Sp75vc
すげー、空の境界だ、これ。
お前なら、いいかもな、でもガツンと来たのに。
死の線のない空を見上げてからの喪われた〜寄りかかってしまっているにもってかれた。
言い回しやこういうの思ってしまう式が本当にかつて俺らが読んでどっぷりはまった空の境界だ。
ちょっと泣いた。

176名無しさんなんだじぇ:2015/04/22(水) 07:19:56 ID:U9r6XbPc
乙でした。
空いた胸の穴には誰かの思い出が詰まって、そしてまた生きていく。
式らしくない普通の人生にしてバッドエンド。
個人的に生還が一番意外だったのがこいつだ。

177 ◆ANI3oprwOY:2015/04/22(水) 23:49:42 ID:KPWgiLGY
test

178 ◆ANI3oprwOY:2015/04/22(水) 23:53:11 ID:KPWgiLGY
お待たせしました。エピローグ3話目投下します

179ep.00 -Re;quiem- ◆ANI3oprwOY:2015/04/22(水) 23:54:01 ID:KPWgiLGY


戦いの日々が続く。
トリガーを引き、連動して愛機(ランスロット)の持つ左手の剣が敵機の胴体を泣き別れにする。
右手に持つライフルから射出される熱線が風穴を空ける。
世界に争いは絶えない。
次元が違ったところでありようはそう違うわけでもなく、当たり前のように戦いが始まる。

数えきれない屍を重ね、夥しい量の血を流す。
戦争の在り方は人ではなく機械同士のものへと姿を変え、今や王の握るスイッチひとつで戦局が確定する。
死を見ることなく人を殺すそれは、直接殺し合ったあの場所よりもある意味で残酷な所業だ。

ナイトオブゼロの役割。ゼロレクエイム成就のための露払い。
即ちは、皇帝ルルーシュの剣として在ること。
ブリタニア領で倒れていたのを発見され現在の状況を把握出来るまでに回復してからの、枢木スザクの日常が続く。

刃向う者、逆らう者は全て消す。
人の意識を捻じ曲げる呪いで隷属させ、圧倒的な武力によって処刑する。
向かってくる数がいなくならない限り何度でも、何度でも繰り返す。

誰もが憎しみを込めて指さす。悪逆皇帝、歴代で最も暴虐で傲慢な独裁者と。
身を変えては権力者に尾を振る売国奴、裏切りの騎士と。



「それでいい。僕らは証のために罪を犯した。
 多くの戦いを起こし、多くの命を奪った。その怨嗟の声は当然のものだ」



この世の誰からも憎まれて。誰よりも惨たらしく死ぬよう望まれる。
そうなるように振る舞い、その通りに成るべく行動してきた。
人々の願い/怒りがひとつに集まり、頂点に達した瞬間。
悪逆皇帝は正義の反逆者の刃に倒れ、全ての膿を引き連れて血に沈む。
そこに―――礎になることを喜べと、傲岸に生贄を強いる神と、違いがあるといえるだろうか。



人の救世を豪語したリボンズ・アルマークにも、そこには大義はあった。
それによって救われる人も、あるいは本当にいたのかもしれない。
他者との軋轢はなくなり争いは地上から永遠に消え。
死すべき運命だった人と共にいつまでも生きられる。
世界の平和。どれだけ年月が経っても色褪せない完成された絵画。
根底の理念はどうあれ、目指した地平は同じだった。

全てを救えるとは言わない。
報われぬ人は出てくる。これは完全なる救済とは程遠い、目指す未来には遥かに遠い一歩に過ぎない。
平和が訪れても、死んでいった人の怨嗟、涙は無にならない。
過去の蟠りを消し去っても、人が変わらない限りいずれまた憎しみは芽吹く。
結果がどんなに美しく、過程の犠牲に見合うのだとしても、犠牲そのものを忘れていいはずがない。

ゼロレクイエムの役割の意味は贖罪であり、清算だ。
苦しみ、悲しみ、間違い続けながらも考え抜いた答え。
人の愚かさを知り、醜さを味わい尽くして、それでも人は明日を進めると信じた。
その一歩を踏み出すために、これまでの罪科の全てをゼロにする手段。

数えきれない過ちがある。
その時は最善と思った選択が誤っていて、望まない被害を生み出していった。
今度こそはと志しても、残る現実は後悔と絶望の連続だった。
もっと上手くやれたのかもしれない。そう思わなかった時などなかった。

180ep.00 -Re;quiem- ◆ANI3oprwOY:2015/04/22(水) 23:54:46 ID:KPWgiLGY



だけど、忘れてはならないこともある。
その失敗が、苦渋が、涙が、怒りがあったからこその、ゼロレクイエムなのだと。

悲劇を知った者がだけが、その重さを本当に知ることが出来る。
撃たれなければ、真の痛みは分からない。

……神との決定的な違いはそこだ。
遍く救済は同時に一方的な、安易な幸せの強制になる。
自分達はそれを良しとしなかった。罪も痛みも愚かさも、人類が未来を築くのに必要な枷。
傷ついて這ってでも進んでみせろと、突き放すように信頼を込めて後を押す。
その思いが、続く世界をここまで形作って来たことを無駄にはしたくないと、総ての意識が帰る場所で誓った。



「そうだ。だから、嘘にはしない。
 あそこにいたルルーシュが辿り着いた最期を、ただのあり得た未来に変えるわけにはいかない」



バトルロワイアルの真実。
平行世界も聖杯も、そこにあった出会いも、別れも。
そんな痕跡は、この世界の何処にも残してはならない。
残されていたメッセージには、ルルーシュの死―――ゼロレクイエムが完遂されたことしかなかった。
未来の情報、現在のルルーシュに伝えればより理想的な結果に導けるだろうものも、何も。
本人が一番分かっているのだろう。見えぬ明日を明確に知ってしまえば、自分は同じ道には進めなくなると。
同時に、この筋書きでいいとそう肯定している。この道で間違いはないと声なき後押しを聞いた己に送ったのだ。


だから全てに蓋をする。
ゼロレクイエムに協力する者、ルルーシュ本人にすらも約二日の失踪の理由を明かすことはしなかった。
どれだけ追及を受けようとも口を噤み、ただ計画に支障はないとだけ答えた。
最終的には行動で示すことで皆に納得をもらい、療養期間を除いて作戦の大幅修正もなく進行に移っていった。

変わるのは、独り知る己の心だけ。
歴史がつつがなく流れる裏で、禁忌の真実を隠し通す。
そうでもしなければ釣り合わない。地獄を生き残った枢木スザクが背負うべき責任。
体は鋼に。心は鉄に。
戦いにも似た激しさで、己を殺していく。

フレイヤを載せたダモクレスを持つ、シュナイゼル卿と黒の騎士団の連合軍にも。
そこにトウキョウ租界で死んだと思われたナナリーが生きて対立したことにも。
戦友だったジノも、射出されたフレイヤの相殺も、最後に戦うカレンの紅蓮にも。

不意に溢れそうになる思いを封殺し切って、ナイトオブゼロの役割を果たし抜いた。
最期の交錯。大破したランスロットの爆炎と共に、枢木スザクの人生は闇に消える。
死者になり、新たな仮面(ペルソナ)を被り表舞台に立つ頃には、自分の存在は世間に認知されなくなる。
全てを捨ててこそこの役割を果たすことが出来る。
身を隠し、名を無くし、身分も失せ、生者の資格さえ捨て去って。
何もかも削ぎ落としても、生きている自分に残るものがあるだろうか。

……時が来た。
託された、最後の命を果たそう。

181ep.00 -Re;quiem- ◆ANI3oprwOY:2015/04/22(水) 23:55:26 ID:KPWgiLGY











約束の日の空は、晴れやかな晴天だった。
世界を統一した皇帝の記念式典。
引き連れた反逆者を処刑する壮大なパレードの下で、英雄は復活する。
黒衣と仮面、個人としての記号を排除した無貌の出で立ち。
虐げられる無辜の人々の願いを背負って立ち上がる、名無し(ゼロ)の反逆主。

貫通した切っ先が艶やかに濡れ光る。
肉の感触を確かめるように、剣の柄を強く握り締める。
剣は確実に胸の中心、心臓を穿っていた。死を避けようのない、致命傷だ。
自らの血に濡れ、力なく倒れて寄りかかる皇帝。

ここに、鎮魂歌(レクイエム)は真に完遂した。



「これは、お前にとっても罰だ。
 お前は正義の味方として、仮面を被り続ける……」



外す意図を浮かべることも、感情の揺れが手元を狂わせることもなく、始めから決めた通りに滑らかに事を成した。
当然だ。
異界に連れ去られるよりも、ずっと前からこの結末を決めていた。
変えようなどと思ったことはなく、この手で今度こそ命を奪えることに安堵すらした。
ただ、事前に決める覚悟が二重になっていただけ。



「枢木スザクとして生きることは、もう無い。
 人並みの幸せも、全て世界に捧げてもらう……永遠に―――」



背中から剣を生やして、息も絶え絶えで紡ぐ声を聞く。
レンズ越しで横目に入る顔は血を失って蒼白になっている。
血の脈動も止まり、あと僅かの逡巡で死が訪れるのだと握った剣で感じ取れる。

この世界における、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの死。
枢木スザクにとって、二度目の光景を目の当たりにする。

同じ人間の死を二度経験しても、心は摩耗せず同じ感情を抱いている。
悲しみも、憎しみも、どちらも消えていない。
自分はやはりこれからもルルーシュを憎み、そして死を悼むだろう。
君が行ってきたこと。
君が目指したもの。
間違いも正しさも全て、空になった胸に留める。



「そのギアス……確かに受け取った」



これより先、永遠に縛り続ける命。
願いにも似た呪いを受け取る。
その時頬を熱いものが流れ落ちる。
ああそうか。
俺はまだ、ここに。

182ep.00 -Re;quiem- ◆ANI3oprwOY:2015/04/22(水) 23:56:20 ID:KPWgiLGY



「――――――ありがとう、ルルーシュ。
 僕に生きろと、願ってくれて」


剣を引き抜く。
敵であり、友であった男との別れが済まされる。
血飛沫がこぼれ、ルルーシュの体が崩れ落ちる。





『――――――ああ、ありがとう、スザク。
 これでようやく、俺も明日に向かえる』





吹いた一陣の風。
それに混じって、遠い遠いの空から、声が聞こえた。




「―――、■■■■■……?」

呟いた自分の声は言葉に成りきらず、湧き上がる歓声に飲み込まれた。
見上げてもそこには何もない。
無限の彼方まで広がる、宇宙(そら)の先まで続いてそうな蒼い空があるだけだ。

血溜まりだけがある地面を眺める。
その下から聞こえるのは、少女のむせび泣く声。
ルルーシュの落ちた先、玉座の置かれた場所の真下に誰がいるのかを知っている。
刺した後の所作までは決めていないのだから、祭壇からずり落ちてそこに辿り着いたのは偶然でしかない。
けどその偶然が、あのルルーシュにも起きていたのなら―――ふたつ重なれば、それは運命と呼んでいいだろうか。
彼が戦うことを志した理由の起源。
永遠に悪名を背負うことになる男への最後にかける声が彼女であること。
世界を騙しおおせた嘘吐きに等しく同じ餞(はなむけ)があってくれるように。
そう、願った。










―――日は昇った。
さあ、次の道を歩き始めよう。


誰にも先が分からない、未知の明日が待っている。

183ep.00 -Re;quiem- ◆ANI3oprwOY:2015/04/22(水) 23:57:08 ID:KPWgiLGY

















ひとつ、訂正しなければならないことがあった。


ダモクレス攻略に向かう直前の日。
義手は生身と変わりない性能の腕だが定期的なメンテナンスは必要になる。
ジェレミア卿改造の際のマテリアルのお陰でさほど苦労なく調整が出来るようになったのは幸いだった。
調整にメディカルルームへ向かう通路の途中。


「……C.C.?」

翠の長髪をたなびかせて、C.C.が立っていた。
まるで、自分が来るのを待っていたかのように。

僅かに、心臓の鼓動が早まる。
帰ってから二人だけで話す機会は無く、そもそも以前からそんな関係でもない。
それが逆に、ルルーシュとは違って彼女への反応は曖昧になりがちになってしまうから。

「化け物扱いは慣れてるが、死人を見るような目で見られるのはさすがにそう多くないな。
 そんなにも、むこうの私は酷い死にざまだったのか?」



開口一番。
心臓を穿つような、握り締めるような一言。
開口一番にこの奔放な魔女は、特大の爆弾を放ってきた。
衝撃を顔に出さないよう必死になるあまり、体の中で鼓動の早さに対応できていない。

「安心しろ。周りには誰もいないし聞かせる気もない。
 私も、自分の死んだ体験談なぞ頼まれても語りたくはないしな。一生胸にしまっておくつもりだよ」

語る内容の意味お大きさを他所に、C.C.はいつも通りだ。
彼女にとって死の経験など慣れている……というのもあるだろうが。
どうあれ、C.C.はあの事実を知っている。殺し合いについての記憶がある。
そして今スザクに芽生えた疑念はC.C.に対してのものではなかった。


「ルルーシュは……知っているのだろうか」

最も恐れていること。
ここのルルーシュにも、バトルロワイアルの記憶が継がれているようなことはないだろうかと。

「知らない。この世界であそこの記憶を受けられたのはアーカーシャの剣とアクセスできた私―――つまりコードを持つ者だけだ。
 まあCの世界に接触したルルーシュもある意味資格があったが、私がカットしておいた。"余計なお世話だ"とな」
「……そうか。安心した。ありがとう、C.C.」

妨げになる可能性があった不安要素を除いてくれたことに、感謝の念を口にする。
するとC.C.は、苦い顔をして変な不満を垂れだした。

「……お前に感謝を言われるのは慣れんな。第一これはお前の為ではなくて―――ああくそ、調子が狂う。
 あっちの自分がやった事を思い出させるんじゃなかった。恥ずかしいったらない」

顔を手で覆い天に仰ぐ。
……普段見ない様子に少し驚く。本当に忘れたいぐらいの不覚があったようだ。
あそこで出会ったC.C.がどんな道を辿り、誰と関わってきたかはあまり知らない。
一人と妙に馬が合った会話をしていたが、それ以外にも彼女に変化をもたらす出来事があったのかもしれない。
死を望んでいた頃の魔女が、命を投げ出して庇い立てたくなるような。

184ep.00 -Re;quiem- ◆ANI3oprwOY:2015/04/22(水) 23:59:11 ID:KPWgiLGY



「しかしなぜ、今頃僕に?機会は他にもあったし、そもそも言う必要もなかったと思うけど」
「これが最後になるからな。お前は死者として扱われ新たなゼロになり、私は元の放浪者に戻る。互いの接点は消えてなくなる。
 ……言うかどうかは悩んだが、やはりお前だけでも知っておくべきだと思った。その責任があると、思ったから。
 ―――ああ、そうだ。最後に伝えたいことがあったんだ。
 私の言葉ではない、どこぞの坊やみたいな思考だけど」


言って、一端口を止め瞳を閉じる。
虚空に散った泡を拾い上げるような繊細な優しげな口調で、C.C.はその言葉を口にした。



「『ずっと、待っている』」



それは簡潔な、他愛ない再会の約束。
誰からの言葉かなど、聞くまでもない事だった。

「―――――――――――――――――――あぁ」

答えを返しはしない。第一言うべき当の本人はここにはいない。
出すべきでない言葉をぐっと堪え、面と向かって言い出すまで溜め込んでおく。
抱えた嘘が増えてしまったが、同じく消える僕が持っているぶんには構いはしないだろう。
いなくなる人間が存在しない出来事を憶えたところで、世の中に変わりはないのだから。
ゼロがゼロを抱えるだなんて、酷い矛盾だと思うけど。






それからはもったいぶった挨拶もなく、脇を通り過ぎてあっさりと別れる。
歴史に何も残らない会話は終えた。この内容が何かに記録されることは、永劫ない。
憶えているのは、二人の男と女。世界から"ない"ものとして認知される異端者。
死ぬことで人の社会から消え失せ。死なないが故に人の社会に混じれない。
そんな二人だけが識っている、この世界に一つもない物語。
失うだけ失って、新しく得るものがない人生に与えられたそれが―――最後の報酬だった。




















【アニメキャラ・バトルロワイアル3rd / 枢木スザク -To the next story!- 】

185 ◆ANI3oprwOY:2015/04/22(水) 23:59:46 ID:KPWgiLGY
以上投下終了です。

186名無しさんなんだじぇ:2015/04/23(木) 01:47:19 ID:pjIxORp.
投下乙!
スザクは二重の意味で仮面を被って演じ続けることになったんだな、ルルの最後の言葉はよもやと思ってたら……。
やはりそういうことだったか>アーカーシャ
思わぬ報酬を得て、思わぬ行き先ができて。
彼らもまた世界からは消える異端者たちだけど、明日へと向かうんだな

187 ◆ANI3oprwOY:2015/04/23(木) 23:46:55 ID:iqjnDWS.
test

188 ◆ANI3oprwOY:2015/04/23(木) 23:48:11 ID:iqjnDWS.
エピローグ4話目、投下します

189ep.00 -アゲイン- ◆ANI3oprwOY:2015/04/23(木) 23:50:34 ID:iqjnDWS.


蛍光灯で白色化した無機質な部屋。
息苦しいほどに滅菌された室内。
その外側で、グラハム・エーカーはただ中を眺めている。
治療。研究。探究。検査。隔離。無駄な要素は全て捌けられて、ここは機能するのに必要な単語だけで構成されている。
ただただ機能的に、効率的なためだけの建造物。
窓もなく密閉された空間は清潔すぎて、どこを眺めても変わりばえがなくて。
色とりどりの華も飾りもなく。空の蒼も、遥かな月の光も、ここまでは届かない。
稀な症例の患者の治療と研究を目的とした特別病棟。
最先端の科学によって切り分けられた場所は、まさに異界だった。

そんな現代の結界の中で、なお厳重に隔離された部屋がある。
ガラス張りの四方系に閉じ込められた患者の少女は、外傷もなく置かれたベッドの上で安らかな顔で目を閉じている。
しかし―――小さな体中には、繋がれた大小さまざまなケーブル類。その先に接続している無数の機械装置。
少女の脳波や容体を観測する量子演算型のスーパーコンピューター。
最早少女を生かすために繋いでいるのか、計器同士の繋ぎに少女が使われているのか分からないほどに絡んだ病室。
危篤の老人でも、死病憑きでもこうはなるまいというほどの姿が、少女の状態がどれだけ「手遅れ」なのかを物語っている。

人工呼吸器をつけられた口は規則正しく息を吸って胸を上下させる。
近隣の医療施設に連れ込まれるまでに少女が負っていた傷はほぼ完治している。
体内の全箇所の激しい損傷。傷ついてない部分を探す方が困難な全損。
重傷と呼ぶのも生温い状態から、少女は回復を遂げた結果は発達した医療技術が脳死に至るまでの猶予を引き延ばしたのもあるが、
そもそもここまでの損壊を負ってもまだ、まがりなりにも生きていたこと自体が既に奇跡といえた。
連絡を受けて搬入された患者を診た医者の誰もが、まだ救命の見込みがあると信じられなかったのだ。

信じていたのは、ただひとり。
血に濡れた修道服に身を包んだ患者を抱えてきた、同じく血だらけのパイロットスーツを着た男のみだけだった。
その男も生きていることが不思議なら、這って動いたと聞けば冗談と笑いたくなるような傷だった。
ユニオン所属の軍人だと後に確認が取れるまでの間、二人を亡霊か何かと目を疑わなかった関係者はいない。
予定していた療養期間を大幅に前倒ししてパイロットとしての行動が承認されるまで回復して退院した様は、それこそ冗談のように映っただろう。

……悪夢のような奇跡は、そこで打ち止めだ。
ユニオン最新鋭の医療技術は少女の一命を取りとめさせたまでで、その意識を取り戻すだけには満たなかった。
筋肉や血管の再生は間に合った。各臓器も壊死になる事態までにはならなかった。
ただ人の意識を司る脳の機能だけは、著しい傷を残したままになっていた。
脳科学とて他部門に劣ってるわけでもないのに、脳細胞の再生だけが遅々として進められない。
何よりも医者達を震撼させたのは、その決定的な破滅の要因が過去観測されたことのない未知の因子によるものだと判明したことだ。
ここまで技術が進み過ぎていなければ分からなかったことだろう。
ウイルスや細菌ですらない、脳を破壊させる毒素以外なにも分からない事実が彼らをさらに恐怖させた。
施設内は軽いパニック状態まで陥るところだったが結局感染性はないものと結論づけられ、
より大きな専門的な治療研究が行われている施設へと搬入されて、俄かに街を騒がせた一件として幕を閉じた。

190ep.00 -アゲイン- ◆ANI3oprwOY:2015/04/23(木) 23:52:12 ID:iqjnDWS.



そしてグラハムは今、生命活動を維持しているだけの亡骸(しょうじょ)をガラス越しに見つめている。
彼女に触れることは禁じられている。
面会するにも、このガラスの膜を隔てでしか許されていない。
それがいち軍人でしかない身分の男には破格ともいえる扱いであることも、本人は知っている。
某かの目論見が絡んでいるのか、それは彼にとってはどうでもいいことだ。

身元も家族も一切不明の孤児。貴重なサンプル。破界の因子。あるいは天界の落とし子(エンジェル)。
そんな名称が、少女のこの世界での扱い。
誰もその存在を知らず、思いを馳せることもない。
元の世界にいたであろう、彼女を真に思ってくれている人を置き去りにしたまま、修道女は今も眠りについている。
唯一の関係者たるグラハムですら、彼女の素性の全てを知っているわけではない。
初めて会った時から少女は人形のような振る舞いで、自分を見せることがなかった。

何を好みとして。
何を嫌に感じて。
何を願っていたのか。
男は何も知らない。

故に、名前を呼んだ。
扉の前につけられた名札と同じ言葉。
それは数少ない、唯一といっていい少女の素性の欠片だ。
本名であるかもあやふやだが、確かに彼女を示す言葉。
聞こえもしない壁に向かって、そう呼んだ。




「―――インデックス」




「やっぱりここかい。四年経っても行動に変わりがないのは生真面目というか、武骨というべきかな」

返らない声の代わりに背中からかかったのは、聞き馴染みのある親友の声。白衣に長髪の格好。
新部隊のモビルスーツ開発主任の座にまで上がったビリー・カタギリの姿がそこにあった。

「……ああ、そうか。もうあれからそんなに過ぎていたのか」
「ボケるのには早いよ、グラハム」

グラハムは微笑で友の邂逅を迎えた。
先の戦乱で多くを喪った身では、気心知れる人間はそれだけで安らぎをもたらしてくれる。
あの事情を打ち明けないでいる今でも、頼れる隣人として在るのは心から感謝の念を抱いてきた。

「カタギリ、どうしてここにいると?」
「そりゃあ、君が非番時に向かう場所といったらお姫様の元だとみんな知ってるからね。
 有名だよ?事故で昏睡状態に陥った少女に毎週必ず見舞いに来るナイトの噂はね」
「みな勝手にそう呼ぶ。迷惑千万だ」
「まあまあ。箔付けとでも思っておきなよ」
「それが間違いなのだがな―――」


"騎士の叙勲を受ける資格など、私にはありはしない―――"


「それでカタギリ、私に用か?」

思いは口に出さず封殺して、話題を別に向ける。
するとビリーは、待っていたとばかりの満足げな表情で、白衣のポケットから一枚のディスクを見せびらかした。
それが何であるかを即座に察して、流石のグラハムも目を見開いた。

191ep.00 -アゲイン- ◆ANI3oprwOY:2015/04/23(木) 23:52:59 ID:iqjnDWS.

「……まさか、出来たのか。こんなにも早くに?一年と経っていないだろう」
「最近開発された学習装置の効きがすごくてね。指と頭が乗りに乗ってたんでつい、はりきってしまったんだ。
 実を言うと二日ぐらい徹夜続きでね。まだ脳が覚醒を保ってる間に君に渡したくて赴いた、というわけさ」

ああ、異邦な薬物なんかは使ってないよ、とばつが悪そうに笑う。
眼鏡で隠れていて気づくのが遅れたが、その目元には深い隈が作られている。

「無理を言ったのは私だというのに。君が倒れては元も子もあるまい。
 それとその装置を使うのは今後止めておけ。癖になるとそれこそ抜け出せなくなるぞ」
「言うなよ。僕よりもずっと無茶な立ち位置にいるのは君だろうに。
 それを思えば、これぐらいの無理は僕なりの道理で押し通すさ」

見開かれた目が謝意に閉ざされる。これは確かに己の失態といえるだろう。
自分の置かれた事情が、彼の友に開発の情熱の炎に油を注ぐ真似をしてしまったというのだから。


瀕死のインデックスを体を引きずって病院に預け、自らも緊急搬送され治療を受けて数日後。
軍の上層部……恐らくは、更に上の権限を持つ裏の組織との面会で、
グラハムはその異邦者(インデックス)に関するある条件を結んだ。
インデックスを施設に入れる条件、ではない。
頼まずとも向こうは無理にでも生かそうとするだろう。あちら側は、どうやら彼女の価値を知っているらしい。
どんな経緯でそれに至ったかは知れないが、その理由もどうせろくなものではあるまい。
そしてそれはグラハムにとっても在り難い。
如何に姑息な目的があるにせよ、少女の命を保たせるには最も優れた技術が揃う施設にいるのが一番だ。

呑んだのは、治療行為以外での彼女への過度の干渉の禁止の条件。
再生の名の許に少女の中身を玩弄する真似など、グラハムには断固として見過ごせない。
当然代償は存在する。
僅かに解析できた、彼女の脳内で見つかった紙片(データ)。
既存の科学者の手に余る、無数の未開技術の箱(ブラックボックス)。
その技術を利用した次世代機のテストパイロットにグラハム、機体開発にビリーが任命された。

「―――苦労をかける」
「お互い様さ」

正体も真実も知るグラハムは覚悟もできるが、ビリーにとっては完全に被害者の立場だ。
己の帰還が彼を、世界を歪めてしまっている。
世界に存在しないイレギュラー。文明の違う異人を引き込んだ結果が、徐々に顕れ出していた。


「けど―――そうだ、四年だ。四年費やした。
 最新鋭の設備、最先端を担うメンバー。それだけ揃ってもなお彼女が目を覚ますことはない。
 なぜ、あの娘がここまで厚い待遇で迎えられているのか。それは僕が近づける案件じゃない。
 それに君が深く関わっている事情も……打ち明けてくれないのは残念だけど、それは受け入れる気だよ」
「カタギリ?」
「大きな紛争は終わった。混乱の根源たるソレスタルビーイングの武力介入もここ数年めっきりない。
 例の新連邦の独立治安部隊だって、当初考えていたよりもずっと対策は穏健だ。
 ……けど、正直僕は不安だよグラハム。
 世界はゆっくりとだが平和に向かってる。そう思うべきなのに……なぜだか、不安が拭えないんだ。
 脈絡のない新技術の導入。唐突に発見された新物質。小規模だが原因不明の、怪異としか言いようのない事件の頻発」

何かが、進行しようとしている。それも相当に危険な段階にまで。
ビリーに限ったことではない。世界中の誰もが同じ、漠然とした不安を抱いている。
明瞭としない、霧の中を歩いているような恐怖に覆われていた。

「僕らは、何かを間違えたのかもしれない。
 本当なら『こうだった』という道を、いつの間にか踏み外してしまったじゃないか。
 船出の行き先を、どこか途方もない方角に向けてしまっているのではないか。
 科学者として情けない話だが―――そう思えてならないんだ」

地表の見えない海原。
光の届かない森林。
幽世へと繋がる、後戻りのきかない一本道。
足元も見えない闇に迷い歩き続けるうちに、その洞に足を入れる時が来る。
真綿で首を絞められるような、緩慢な絶望が世界を包んでいる。
愚痴をこぼす仲であっても、本気の弱音を吐くことはなかった友が吐露してしているほどに。
無論ビリーはグラハムを非難してなどいない。
彼なりに友の事情を汲み、こうして協力に尽くすのに嘘は混じっていない。
しかし変異が決定的になった時期は"そこ"なのだ。ガンダム掃討作戦から二日後に同行者を連れて発見された時から。
才能に溢れた技術者は気づいてしまったのだ。

192ep.00 -アゲイン- ◆ANI3oprwOY:2015/04/23(木) 23:54:30 ID:iqjnDWS.


男が案じたのは友の精神(こころ)だ。
自分では及びもつかない深い闇に触れてしまった、グラハムの身こそを第一に慮った。
部外者に気づけた事実を当事者が知らないはずはなく。
世界を揺るがした責任を抱えていくこれからの人生が、どれだけの苦境になるのかと―――




「そうか。ならば私が次の道を見つけて来るとしよう」

怪異の欠片を掴んで帰ってきてしまった男は。
靄のない、堂々とした声でそう言った。


「グラハム―――」
「確かに我々は間違えたかもしれん。あるべき世界は消え、未来には予想だにしない展開が待っている。
 だが世界とはそういうものだぞカタギリ。世は常に変わり、何があるかわからない。
 人間(われわれ)が戸惑うばかりの事でも、この世界では何度も起きた、有り触れた変化に過ぎない。
 四年前がそうだったように」

ソレスタルビーイングとて人の歴史が積み重なって生まれたものだ。
過去、歴史にその理想を初めて掲げた者から連綿と紡がれ編まれていった織物が、あの時完成しただけのこと。

「不安があるのは先が見えないというのなら、その先を手に持つ灯で照らしに行くまでだ。
 いつ闇に落ちるかも知れない愚かな真似だとしても回り道はない。私達にできるのはこれだけだ。これだけで十分さ」

永遠の夜はない。
空に暗雲が浮かぼうとも、雷鳴が鳴り止まなくとも。
いつか雨は止む。見上げた方向のまま突き抜ければ、空はいつでもそこにある。

何度倒れ折れ曲がろうと、空の月に手を伸ばした人類(ひと)の夢が叶ったように。
ただ己を信じて進み続ければ、道は自ずと見えてくる。
そこが目指す場所に続いていると、確信がある。

何故ならきっと、そこは誰もが生きる先に行き着く未来だから。
別々の夢を持ち、各々の思いがあり、そんなバラバラの人達が共に集えた時があの日にはあった。



―――それが星を開拓するような、人類史に挑む難行だというのなら。



「未来への水先案内人は、このグラハム・エーカーが引き受けよう」

宣誓をここに。
軍人はあり得なくなった結末と同様、宇宙(そら)を先駆ける流星になると決めた。


「……困った。本当に変わらないんだな、君は」

ビリーの表情には元の柔らかさに戻っていた。

「誤解だカタギリ。私は変わったさ。人が変われないわけはないんだ。生きて世界と向き合い続ける限りは、決してな」
「それもそうだね。これは昔に戻ったというべきなのかな。
 さてそれじゃあ、ここいらでお暇しよう。僕も僕の役目を果たすとするよ。
 ああ、そのデータはコピーだから持って行ってくれて構わないよ」
「それは情報漏洩ではないか?」
「ご安心を。二時間経ったら自動的にデータを削除するようプログラムしてあるさ」

いつもより物騒な台詞を残してビリーは去っていった。
やはり、あのシステムを使うのは戒めておくべきだろう。今度寄った際にはよく注視しておくとしよう。

「……流石カタギリ。仕事は完璧だな」

193ep.00 -アゲイン- ◆ANI3oprwOY:2015/04/23(木) 23:55:32 ID:iqjnDWS.








一時間経って、施設をあとにする。
真昼前に来たから空は今も青い。雲も少なく風も柔らかい、実に航空日和だ。
安いゼンマイ音が聞こえない本物の青空。
この空を、眠る彼女に見せてやれたらと切に思う。

首輪はかけられて体は縛られているが、なに、羽が折れたわけでもない。
背負う荷物の重さで比翼の羽ばたきは終わらない。人もモビルスーツも違いなく。
なにせこの体には二つ分の心が収まっている。そんな自分がここまで進めている。


「さあ。今日も、共に飛ぼう」

……ひとつの奇跡があった夜。
繋がる部分など何もなかった、砂粒程の可能性から生まれた心の通い。
奇跡を希望に。ただの不幸な偶然で終わらせないために。
その出会いを忘れない。その運命を離さない。

望む光景は遠く、星を超えても届くか分かなずとも、足は止めない。
男の誓いに二言はない。いつものように無理でこじ開けてでも、そこに辿り着くと既に決めた。
不安などない。日が落ちようとも、輝く月が道しるべになってくれる事を知っている。

いつか必ず、再会の日が来ると信じて。
闇の中にある未来に至る道を、男は進んでいく。























その、帰り道に。



見たことのある塊が、軍事寮の錆びついたフェンスに引っかかっているのを見つけた。

194ep.00 -アゲイン- ◆ANI3oprwOY:2015/04/23(木) 23:57:54 ID:iqjnDWS.







「――――――――――――――――――――」

袖の長い、ゆったりとした白色のローブ。
被った頭巾から覗く水色の髪。
外に干された毛布のような形をしたものが、目の前に吊り下がっている。

「――――――――――――は」

予想外の衝撃に声が漏れる。
記憶と一致する外見に眩暈がする。
都合のいい奇跡は起きないと真っ先に捨てていた。
そう考えていた光景が目の前にあることに、言葉が続かない。

「――――――――――――――」

なにせ本当に準備も覚悟もなかったのだ。
こんな喜劇の始まりのような現実を、どうして予思う浮かべてられようか。


―――世界は、何があるかわからない。


一時間前。
そう言った自分の言葉すら思い出せない。




「―――シス」
「お」

もぞりと動く小さな体。
聞こえた声に、身を震わせる。
歓喜なのか恐れなのか、どちらにしても今までの決意が残らず吹き飛んでしまいそうな感覚だけが事実だった。

起き上がる貌と目が合わさる。
瞳に映るのは、見たこともない表情でこちらを見る、あどけない少女。
飢えた目つきの修道女は、新たな奇跡の一言を口にした。

195ep.00 -アゲイン- ◆ANI3oprwOY:2015/04/23(木) 23:59:08 ID:iqjnDWS.










「………………………………おなか、へった」




















科学と魔術が交差する時―――――――――。









物語は、再び動き始める。

























【アニメキャラ・バトルロワイアル3rd / グラハム・エーカー -To the next story!- 】

196 ◆ANI3oprwOY:2015/04/23(木) 23:59:59 ID:iqjnDWS.
投下を終了です

197 ◆ANI3oprwOY:2015/04/25(土) 00:44:20 ID:0MANPVwo
エピローグ投下を開始します

198ep.00 -masterpiece- ◆ANI3oprwOY:2015/04/25(土) 00:50:20 ID:0MANPVwo




どこかで、誰かの息遣いが聞こえた。





「――――こうも頻繁に起こる異常(イレギュラー)の定義とは、いったい何処に在るのだろうね」




そこは氷点下まで冷え切った水槽(ビーカー)の中だった。
内部を満たす液体に漬されて、それは目覚める。
靄を裂くように薄く開けた風景は、依然、オレンジ色のおぼろげ模様。
こぽこぽと、浮き上がる泡が視界を過ぎていく。

規則的に聞こえてくる、空気の抜けるような音。
薄いオレンジ色の向こう側には、ガラス張りの壁。
窮屈なビーカーを満たす、弱アルカリ性の培養液。


「――――――」


どこかで、誰かの、気配を感じた。


「例えばそれは、『神の気まぐれ』と表現される現象だ」


浸されて、揺蕩う水槽の、その向こう。
オレンジ色のおぼろげの、ガラス張りの壁の、更にその向こう側。
鑑合わせになるかのように、もう一つ、水槽が置かれていた。

その先を、明確に認識することが出来ない。
未だ、明確な意識を持てない。
痛みは無い。
知識も無い。
個我は薄い、が―――――


「―――――――」


どこかで、誰かの、疼きに触れていた。

199ep.00 -masterpiece- ◆ANI3oprwOY:2015/04/25(土) 00:51:43 ID:0MANPVwo



「神様は大雑把な性格をしているいう。ふむ、なるほど、ここに証明されているな」


向かい合う水槽、設置されたもう一つの生命維持槽の向こうに、それはいた。
一人の存在。その形を定義することは困難だ。
男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見える、それは『人間』だった。


「君を送り返す『宛先』を間違えている。魂のラベルではなく肉体のラベルを『宛名』としたか。
 魂は、精神だけでなく肉体にも宿るという、その思想のもとであれば、決して間違った形では無かったのかもしれないが」


逆さに浮いた、その人間は問うている。


「たかが並行世界の厄介ごとで、プランに誤差を発生させられては困る」


アレイスター=クロウリー。
学園都市の最大権力者、学園都市総括理事長。
一つの世界の頂点にある者が、その『個』に、問うているのだ。


「私の街から好き勝手に持ち出して、返さぬまま自滅したのは看過できない事実だが。
 誤差は修正可能の範囲だ。
 そして君は差し詰め、今回の数少ない拾いモノという事だろう」




――――仕事を受けるか、と。




「『私の観測する世界において』欠けたのは超能力者が数人。
 幻想殺しを奪われた世界に比べれば軽度の損失だが、重大な誤差には違いない。
 その誤差を、君は修正するに足る働きを見せるか。
 あるいは、プランの短縮すら為して見せるか。
 だとすれば、今回の異変(イレギュラー)にも、価値は在ったと示せるかもしれない」

200ep.00 -masterpiece- ◆ANI3oprwOY:2015/04/25(土) 00:52:04 ID:0MANPVwo





どこかで、誰かが、熱を発した。



「答えを聞こう、来訪者(マーセナリー)」


ごぼり、ごぼり、と。
沸騰する水槽の内側で、熱が昇る。
泡立ち昇るモノに紛れるようにして、ゆっくりと、それの口元がつり上がる。

目の前の存在に、新たなる雇主に、向かい合うようにして。
水槽のなかを揺蕩う茶髪の少女―――傭兵は、次なる始まりへと凄絶に微笑みかける。


「はッ――――俺は、高いぜ?」


どこかで、誰かが、願っていた。
もう一度、始めろと。
終わらせるなと、呼んでいた。

ああ、また願われてしまった。
ならば仕方ない。
是非もない。
もう一度始めようじゃないか、仰せのままに、己のままに。

さあ、火を起こせ。
赤く染めろ。
地獄の中心で踊り狂え。
異なる世界と世界が交わる時、物語は始まる、ならば――――







「さあ、次の物語(せんそう)を始めようぜ」
















【アニメキャラ・バトルロワイアル3rd / アリー・アル・サーシェス -To the next story!- 】

201 ◆ANI3oprwOY:2015/04/25(土) 00:52:31 ID:0MANPVwo
投下終了です。

202 ◆ANI3oprwOY:2015/04/25(土) 00:55:07 ID:0MANPVwo
次回のエピローグが最後の投下になります。

203名無しさんなんだじぇ:2015/04/25(土) 00:55:37 ID:1Pg.X4/Y
了解です。

204名無しさんなんだじぇ:2015/04/25(土) 02:56:17 ID:2qzElevs
投下乙です
まさか、あそこから生存するとは思わなかった
グラハムの世界のインデックスと同じくそれぞれの世界に異物が混じったわけだがこっちからは悪い予感しかしないw

205名無しさんなんだじぇ:2015/04/25(土) 15:56:27 ID:kp2Uwn.k
投下乙です

言われてみれば主人公もラスボスも欠いてOO世界はかなりの変節を遂げたんだよな……。
人は変われるがOOのテーマだっただけにグラハムの言は感慨深い。
最後のインデックスはまさに始まりだけど、記憶はどうなってるんだろ。
流れ的に一巻みたいにまっさら状態なのかもな―

そしてトレードするかのようにまさかのサーシェス
お前生きとったんかい!
しかもまずいのが雇い主になっちまったしwww
物語始まりすぎだろ!w

206 ◆ANI3oprwOY:2015/04/26(日) 01:05:23 ID:GiCCKhws
テスト

207 ◆ANI3oprwOY:2015/04/26(日) 01:06:35 ID:GiCCKhws
エピローグを投下します。
今回で最後のエピローグになります。

208ep.00 -続物語- ◆ANI3oprwOY:2015/04/26(日) 01:10:24 ID:GiCCKhws


後日談。
と言うよりは、これからの話。

今日、二人の妹、火憐と月火に叩き起こされ、僕は家を出た。
そして再開した日常に沿って学校を目指す……ではなく、学習塾跡に向かう……でもなく、駅への道を歩いている。
この町の外へ、出る為に。


あの地獄のような体験のあと。
怪我が完全に治るまでは学習塾跡に身を寄せる事になった。後で聞いた話だけど、結果的にに僕は一週間の失踪状態にあったらしい。
ボロ雑巾のような服装になって帰ってきた僕を、今回も家族は何も言わずに迎え入れた。
春休み自分探しの旅の時に比べればまだ短い期間だったし、それ自体は不思議なことじゃなかったけれど。

でも、僕の感覚的には、そんなふうには思えない。
数年くらい、ずっとあの場所に居たような気がした。
長い長い無間地獄から、漸く解放されたような気持ちになった。
もっとも、その解放が、晴れやかな気分になる事とは、限らないけれど。


「――――」
「――――」


近くで話す妹達の声を耳にしながら、僕は目を閉じて眠ったふりをする。
暗い視界で、列車の揺れを感じる。
僕と、僕の家族を乗せた車両が、街を離れていく。
遠い場所へと、連れていく。

別に引っ越す予定とかは、今のところない。
だけどそんな話は家族内で挙がっているらしい。
原因は両親の都合と、そしてもう一つ……。

今日は今後の事を考える機会として設けられた、家族全員の小旅行だ。
こんな時間はいつ以来だろうか。
遠い、行った事の無い土地の、行った事の無い場所へ。
僕の大事な人達と一緒に出かけていく。

大事な人達。
僕に残された人達。
そう、まだ、こんなにも、僕には大事なものが残っていた。
あんなにたくさんのモノが奪われて、取り落として、失って、それでも僕には、残っていた。


『あの場所で、君が見て、聞いたことはすべて真実だ。なんて、今さら僕がいう事じゃあないね』

元の世界に戻った後。
学習塾跡で傷を治しながら身もだえる僕に、忍野メメはそう言った。
完治は絶望的だった。
傷を受けすぎた僕は、血を流し過ぎた吸血鬼の身体は、まさに満身創痍で、そのままでは間違いなく死んでいただろう。

『だけど君が今から、この帰還した世界で目にするものは、あの場所における結果と食い違うかもしれない』

痛みと絶望で絶叫していた僕には、忍野が何を言っているのかまるで理解できなかった。

『幾重にも重なり合う並行世界からの強制召喚。それは一つの世界観を、全て一つの世界から抽出していたわけではない』

でも、いまなら、まあ、分からないでもない。

『時系列も、設定も、微妙にバラバラだった。それは僕らの間ですら、そうだった』

動けるようになった僕が家へ帰った後。
次の日、学校へ行き、街の様子を見回った時だ。
僕はようやく気付いた。僕の記憶と、僕の認識と、確かにこの街は食い違っている。

209ep.00 -続物語- ◆ANI3oprwOY:2015/04/26(日) 01:12:15 ID:GiCCKhws


例えば、生きている筈のない人が、生きていたりした。
それが誰かを、僕はここでは語らない。
けれど、一方で、記憶の通り、死んでいる人もいた。
いや、死んでいるという表現は適当ではないのだろう。

『歴史の修正。アラヤはなんと言っていたかな。ともあれ、世界そのものが矛盾を消そうとするんだよ。
 だから彼ら彼女らは、最初から居ない事になった』

結果として、僕の世界は都合よく組み替えられた。
その更に、結果として、僕の町は『おかしく』なった。
明らかに今までと違う怪奇が、頻繁にみられるようになった。

『なあ、忍野……』

激痛に白む思考の中で、僕は忍野に、一つだけ聞いたのを憶えている。

『お前……は……どっちなんだ……?』

目の前に立つ忍野は、はたしてどちらなのかと。
あの場所で、あの世界で、出会った忍野なのか、あるいは、と。

『ん? さあね、どっちであろうと、僕にはそれを証明する術は無い。そっちで勝手に定義すればいいだろ』

僕のこだわりを忍野は突き放す。
そして彼は言った。

『ところでさ、阿良々木君、このままじゃ死んじゃうと思うんだけど、生きたい?』

僕はそれに何と答えたのか。

『そっか、じゃあ頼むのは僕じゃないよね?
 君を何とかできるのは、ここじゃ一人だけだ。君はそれを分かっていたから、ここに来たんだろ?』

朽ちた学習机に腰かけた忍野の背後、穴のあいた壁際、膝を抱えて座り込む、金髪の少女。
彼女へと僕は―――

『たす……けて…………忍』



以降、街の怪奇は日に日におかしくなっていく。
人に被害が及ぶことも多々見られるようになった。
それは事件のようであったり、事故のようであったりする。
家族の中で、引っ越しの話が出たのも、無関係ではないだろう。

『最後に、一人の男の話をしよう。彼はとてつもなく自尊心の高い男でね、自分の事を神様だと思っていた。
 そして本当に神様になろうとした。神様になって、人間を救おうとした。
 邪魔をする馬鹿な人間どもを滅ぼしてね』

忍に血を吸われ、抱きしめられた僕が、彼女の肩越しに聞いた。

『神様は強かった。己こそが神であり、そして人を救う存在なのだと信じていた。
 だから、負けるはずが無いと。
 己に対する信仰こそが、彼の強さだった。それは無敵の強さだった』

忍野の最後の語りだった。

『でもね、彼が信じていたのはたぶん自分じゃなくて、鏡に映った自分だったらしい。
 だから鏡が割られそうになったとき、彼はいとも簡単に無敵の自分を見失って、失敗した』

薄れていく意識の中で、僕は思った


『まるで、普通の人間みたいだな』


強さも、弱さも、何もかも。
自分の目にする誰かの、瞳(かがみ)の中に。

だからそれを壊されることを、どうしても恐れてしまう。
それはなんて、人間らしい感情なのだろう。

目覚めると、忍野メメも、忍野忍も、そこにはいなかった。
壁の孔から差し込む朝日だけが、あの日、倒れた僕を迎えていた。

210ep.00 -続物語- ◆ANI3oprwOY:2015/04/26(日) 01:13:03 ID:GiCCKhws






「って……げ、不味いぞ」



なんて、考え事というか、回想をしながら動いていたからか。
いつの間にか僕は家族とはぐれてしまっていたようだ。
なれない旅行なんかするから、そりゃあトラブルも多発する。

僕らの街からもう随分と離れた、都会の駅。
先程までは乗り換えを待ちつつお土産コーナーを見たりなんかして、はしゃぐ妹達を眺めていた……筈なのだけど。
こっそり黙ってトイレに行って戻って来てみれば、見事に置いて行かれていた。

「ケータイも通じない……か」

目前のコンコースは人でごった返していた。
あたりまえだけど、僕の知る街の風景はそこにない。
僕の知らない街の、知らない人達がたくさんいて、まるで違う世界に来たかのようだった。

なんだか、妙に落ち着かない。
ごく最近まで違う世界に拉致られていただけに、どんな些細な変化にも敏感になってしまうのだろうか。
それを差し引いても心配になる。
妹達は、家族は、僕に残された、数少ない、大切な者、なのだから。

それに、もう間もなく、乗り換えの列車が来るだろうし。
早いところ合流して安心したい。
そう思って、僕が駆け出そうとした、その時だった。

「……………っ!?」

ありえないモノが、僕の視界の隅を流れていった、気がした。


「……」


雑踏の中に、見覚えのある亜麻色の髪を、見たような気がした。
いつか、どこかの世界で、僕の隣を歩んでくれた少女の―――

「……馬鹿か、僕は」


すぐさま、目を凝らすも、亜麻色の髪はもう見えない。
雑踏の中に消えていた。
最初から無かったように、いや、本当に最初から無かったのだろう。


白昼夢。


何を都合の良い幻想を見ているんだろう。
未練、なのだろうか。
女々しいにもほどがある。

『時系列も、設定も、微妙にバラバラだった。それは僕らの間ですら、そうだった』

忍野の言葉を思い出す。
だとすれば、『いま僕のいる世界における彼女』が、何処かに存在するのかもしれない。
なんて、想像したことは、否定できない。それはきっと僕の後悔の確たる証拠であって。
だけど実際に会えることを期待するなんて、おめでたいにも程がある。




自分自身に呆れながら、溜息と共に歩き出す。
もう、少女の姿は何処にも見えない。
幻想は消えてしまった。
その事実にどこか安心して、僕もまた雑踏の中に踏み込んでいった。

211ep.00 -続物語- ◆ANI3oprwOY:2015/04/26(日) 01:14:01 ID:GiCCKhws



















「お姉ちゃ〜ん」



その、踏み出す足が、止まった。


「お姉ちゃ〜ん! 次の電車行っちゃうよ〜!」


背後から聞こえた声に、堪らず、僕は振り返る。


「うーん、どこに行っちゃったんだろう……?」


数メートル離れたところに、途方にくれる少女がいた。
亜麻色の髪を頭の後ろで束ね、ポニーテールにした、一人の女の子。
僕は、彼女の名前を知っていた。

「ひら……さ……」

目が合う。
咄嗟に、逸らす。

思い描いていた、幻想が目の前に在った。
確かに、そこに、彼女はいる。
でも、だから、何だっていうんだ。

分かっていた、彼女は僕の知る彼女じゃない。
僕があの場所で出会った彼女とは、別の女の子だ。
僕は彼女の事を知っているけれど、彼女は僕の事を知らないのだ。
何も、何も、彼女はしらない。
だから僕も、気づかなかったふりをして。


「あの、すいません」

「……っ!」

いつの間にか、少女は目の前に居た。
僕の辛気臭い顔を覗き込むようにして、立っていた。

212ep.00 -続物語- ◆ANI3oprwOY:2015/04/26(日) 01:18:39 ID:GiCCKhws


「な、……なん……だ?」

裏返った声で、僕はなんとか言葉にする。

「人を探してるんです……ええっと……」

そう言って、少女は両手を頭の後ろに回し、髪の毛を降ろそうとした。

「あ……ああ」

僕は、彼女が何を言いたいのか、分かっていた。
だから続きを待つでもなく。

「あっち、だと思う」

先程、雑踏の中に見かけた、とある方角を指さした。

「どうして……分かったんですか?」

「さっき、君にとても似ている人を、あっちで見かけたから」

そういう事にした。嘘はついてない筈だ。
今目の前に居る彼女が幻想でないのなら、先ほど見たものも、きっとそうだろう。

「お姉さん、か……?」

「はい。家族旅行、なんです」

「そっか、奇遇だな。僕も家族旅行でさ……妹達と離れちゃって、いま探してるとこなんだ」

会話、していた。してしまっていた。
もう話すことは無いと、二度と会う事は無いと、思っていた人と。


「そう……なんですか、えと……それなら」

「じゃあ、僕は行くよ」


そのまま喋り続けていたら、馬鹿な事を口走ってしまいそうだったので。
早々に切り上げてしまうとする。

あり得ない奇跡だった、幻想だった。
だからもう、十分なのだ。
今度こそ、余計な未練を感じてしまう前に、少女に背を向けて、歩き出す。

「あの……」

何かまだ、言いたい事でもあるのだろうか。

「あ……」

僕は聞こえないフリをする。
感傷に耐えきれなくなる前に。
聞こえないことにして、歩き続ける。

「あ………………」

そして一気に、駆け出そうと足に力を込めて。

「あ……ら…………」

……気のせいか、何かが、近づいているような。

「あ……ら……ら……ぎ、さん」


………嘘だろう。
流石に、振り返ってしまっていた。
ずるい。それは反則だった。
そんな事されたら、言われたら、僕は振り向くしかないじゃないか。

213ep.00 -続物語- ◆ANI3oprwOY:2015/04/26(日) 01:20:18 ID:GiCCKhws


「なん……で、だよ……」

乾いた笑いすら浮かべながら、僕は、平沢憂と向き合っていた。


「わたし……あなたの……物語(ユメ)を見ました……」


僕の知らない人だらけの、駅の雑踏の中で。
初めて出会う彼女は、切なく、微笑みながら言った。

「だから、伝えなきゃって、思ったんです。私じゃない、『誰か』の代わりに」

そのとき、たぶん、僕は、彼女の瞳の中に、確かに見た。
あの戦いの中から戻った、僕自身の、今の姿を。



「阿良々木さん、ありがとう」



その、意味を、価値を。


「そう、伝えます。あなたに伝えたかった、『誰か』の代わりに」


やっと、知る事が、出来ていたんだ。


「君の…………」


だから僕は、もう少し、欲張ることにした。
ありえない約束をしたと、それを憶えている。
あの場所に残してきた、たった一つの誓い。
最後の戦いの前、出会った掛け替えのない人達と。


『――――ここにいる全員、生きて、また会おう』


そんな、今はもう、決して叶わない約束すら、いつか果たせるって。
信じられる気が、したから。


「君の夢……聞かせてくれないか……?」


その言葉に、少女は満面の笑みで。



「私は――――」



幸せを抱きしめるように、答えてくれた。




「いつか、私だけのユメを見つけたい。それが、いまの私の夢です」

214ep.00 -続物語- ◆ANI3oprwOY:2015/04/26(日) 01:21:59 ID:GiCCKhws




やがて、違う雑踏に消えていく僕たち。



「また明日」

一瞬の交差の後、異なる道を歩みだす。
背を向け合って、別々の場所へ。

「さて、と……」

少女と別れ、妹達を探す道へと戻りながら。
僕は胸元のペンダントを引っ張り出した。

「僕も、いつか、お前の礼を、しなきゃいけないな」

ペンダントの先に、不満顔でぶら下がっている、僕の命の恩ガメ。
何処かの世界で、誰かが、いつの間にか僕の胸元に潜ませていたもの。

最後の時、僕の心臓を穿つはずだった致命傷をおし留めていた存在。
そして、僕にとっては数少ない、あの世界から持ち帰った、生きた証明だった。

「これからよろしく。とりあえず一緒に、旅行をたのしもうか」

案外、この旅行は、単なる家族旅行では終わらないのかもしれない。
旅行先で起こる一波乱。また違う物語。亀物語。

それが終わったら、また次の物語が待っている。
やがて戻るいつもの街。そこで僕はまた、何かに出会うんだろう。
変わってしまった街と、人と、新たな怪奇。もう一度、向き合ってみようと思う。

逃げずに、もう一度。僕は、次の物語を始め、そして終わらせ続けよう。
それはきっと、言葉遊びの続きでしかないけれど、僕はこの――――


青春を、終わり失くして続けよう。


「また明日」


そんなことに思いを馳せながら、僕は妹達を探しに走る。
焦ることは無い。
何処かで、また彼ら彼女らの物語と、交差することもあるだろう。

たとえ違う世界に別れていたって、僕らは一度出会えた。
だったらまた、その道が重なることも、ある筈だろう。


「また明日、だ」


その明日がいつになるかは分からない。
だけど『明日』は、誰にでもやってくる。

今日を、一つ、一つ、越える限り。
だから僕は、ひとまず今を生きる事にする。



――――そうして、次の物語が始まる。

誰かがそこにいる限り。
始まり、終わり、また始まり、そして続いていく物語。




僕はそれを、いつか誰かに語り継ぐ。











【アニメキャラ・バトルロワイアル3rd / 阿良々木暦 -To the next story!- 】

215 ◆ANI3oprwOY:2015/04/26(日) 01:24:08 ID:GiCCKhws
投下終了です。

216 ◆ANI3oprwOY:2015/04/26(日) 01:34:39 ID:Q370ZayY
挨拶諸連絡は後日お伝えします。本日はありがとうございました。

217名無しさんなんだじぇ:2015/04/26(日) 20:29:09 ID:Bshxk30g
おー。
エピローグ投下最後ってことはこれが最終投下でいいんですよね?
お疲れ様でした。
そっか、今度こそ本当に終わっちゃったか。
いや、この話的には終わり失くしたと言うべきか。
終わり失くす、けど終わりがなく続いていく。いい言葉遊びなエピでした

218名無しさんなんだじぇ:2015/05/01(金) 00:00:26 ID:kir8mSF6
あ、投下来てた

投下乙です
みんな濃いなあ

219名無しさんなんだじぇ:2015/05/01(金) 00:19:26 ID:tCUAIon2
これでアニロワ3rdも本当に完結か・・・

220名無しさんなんだじぇ:2015/05/04(月) 21:38:51 ID:SgGKNfo2
投下乙〜
なんか中途半端ですな

221 ◆ANI3oprwOY:2015/05/07(木) 00:42:44 ID:NRxdg.Dw

アニメキャラ・バトルロワイアル3rd 全ての投下が終了いたしました。
長い間の応援ご愛読、誠にありがとうございます。
その全てが我々の励みとなりました。

以前告知した、アニ3書き手座談会の日程等が決定しましたので、ここに報告致します。

日時:5月16日(土) 21時〜1時くらいまでを想定しています。

また、『書き手限定でのチャット』になりますので、入室の際はトリップが必要になります。
ご了承くださいませ。

チャットの場所等の詳細はまた後日に連絡します。

222名無しさんなんだじぇ:2015/05/08(金) 00:38:10 ID:cdcs/1tQ
ご報告有り難うございます。
書き手によるチャットとのことですが、このロワで一話二話書いたけどトリ忘れたという場合、他のロワでのトリ使ってもいいですか?
また読み手はしていたけれど、このロワでは書いていない書き手の場合は自ロワのトリで参加できるのでしょうか?

223名無しさんなんだじぇ:2015/05/09(土) 20:48:54 ID:OUQWwuW2
チャットのアドレスどこでしょうか

224 ◆ANI3oprwOY:2015/05/12(火) 00:21:31 ID:0Xt0OdeA

アニ3書き手座談会に関して詳細の告知です。

日時は変わらず、


5月16日(土) 21時〜1時くらいまで。


【参加される場合は、必ず以下の説明を読んで頂くようお願いいたします。】

書き手チャットになりますので、参加される場合『必ずトリップを付けて頂く』ようお願いします。
基本、アニ3で書いたことのある方向けになるので、アニ3のトリップを付けて頂くことになりますが、
初期のみ書かれていた方など、トリップを忘れている方もいると想定されるので、

『他ロワ企画のトリップによる参加でも可』とします。

アニ3で書いたことが無くとも、他企画でのきちんとしたトリップを付けて頂ければ、問題なしとします。
勿論、アニ3で書いたことのある方であれば、入室後にどの話を書いた方なのか教えて頂けると幸いです。

ただし、『過去にトリバレしているトリップ』や『初出のトリップ』は当然ですが不可とします。

これらに則らない場合は、まことに勝手ながら入室をお断りする事となります。
また迷惑行為、荒し行為等が在った場合は、ご退出願うこともありますので、ご了承ください。


チャットのURLは当日にお知らせします。


質問等あれば気軽にどうぞ。
では、今夜はこれにて失礼します。

225 ◆ANI3oprwOY:2015/05/12(火) 00:27:40 ID:0Xt0OdeA
>>222


質問

『書き手によるチャットとのことですが、このロワで一話二話書いたけどトリ忘れたという場合、他のロワでのトリ使ってもいいですか?
また読み手はしていたけれど、このロワでは書いていない書き手の場合は自ロワのトリで参加できるのでしょうか?』

について。


告知>>224の通り、2点とも可となります。
ただしいずれの場合でもトリバレしたトリは不可とします。

226 ◆ANI3oprwOY:2015/05/12(火) 00:28:25 ID:0Xt0OdeA
>>223


告知>>224の通り、当日お知らせします。

227名無しさんなんだじぇ:2015/05/13(水) 03:17:15 ID:udAClT46
このロワをずっと読んできた読み手は参加できないのに
このロワで一度も書いてない書き手は参加できるって
もはやアニロワ3rd関係ないじゃん

企画に無関係なイベントの宣伝は他所でどうぞ

228名無しさんなんだじぇ:2015/05/13(水) 10:49:15 ID:crOx.KcA
書き手側はこのロワをずっと読んできた(苦笑)読み手に向けてずっと書いてきたわけじゃねーから
何の貢献もしない企画の寄生虫向けのイベントじゃないからすっこんでろや

229名無しさんなんだじぇ:2015/05/16(土) 20:56:00 ID:2SuMSlX.
単純に身元証明できるかどうかということかと
文句があるなら読み手はトリ無しでないと信用出来ないような環境にするべきではなかった

230期限切れです:期限切れです
期限切れです

231名無しさんなんだじぇ:2015/05/17(日) 14:14:01 ID:/qXOLxRE
>>228
最後まで読んでくださった方々。
ここまで待っていてくださった方々。
本当にありがとうございました。
この物語に触れて頂いたこと、心から嬉しく思っています。
(書き手側はこのロワをずっと読んできた(苦笑)読み手に向けてずっと書いてきたとは言ってない)

座談会のような物を企画する予定です。
(何の貢献もしない企画の寄生虫向けのイベントとは言ってない)

こういうことですか?分かりません><

232名無しさんなんだじぇ:2015/05/17(日) 15:03:21 ID:u67NBMNM
自分の態度を客観的に見てみたらウジ虫かどうか判断できるんじゃない?
まともに思考できる頭があればだけど

233名無しさんなんだじぇ:2015/05/17(日) 18:04:15 ID:/qXOLxRE
怖いな〜
アニロワ3ピリピリしてますわw

234名無しさんなんだじぇ:2015/05/17(日) 19:59:50 ID:Co1FykrU
入室不可はともかくROMさえさせてもらえないほど
切り捨てられてたんだという事実を最後の最後に教えられたわけだが
終わったことだからもうどうでもいいや

235名無しさんなんだじぇ:2015/05/17(日) 22:05:40 ID:nA9w6Ruc
書き手さんからするとうじ虫扱いですかw
待ってて感想書いた結果が読み手締め出しとか笑えるな
他ロワの書き手を太鼓持ちにして読み手への不満でも語ってたんですか

236 ◆ANI3oprwOY:2015/05/18(月) 00:34:54 ID:rOdr8dug
昨夜のチャットには、たくさんの書き手方にご参加頂きありがとうございました。
アニメキャラ・バトルロワイアル3rd、ひとまずこれで企画終了となります。


WIKI制作者様、地図製作者様、したらば管理人様、MAD並びにイラスト各種支援を下さった多くの方々、
合作に加わって下さった方も含め、この企画でssを一度でも書いて下さった全ての書き手、
この企画のssを一度でも読んで下さった全ての住人、


数多くの声がここまで辿り着く助けとなりました。
その全てにこの上ない感謝を。



これまで本当にありがとうございました。



アニメキャラ・バトルロワイアル3rd 書き手一同

237名無しさんなんだじぇ:2015/05/18(月) 01:20:19 ID:MELi5RSc
合作に加わって下さった方も含め、この企画でssを一度でも書いて下さった全ての書き手

ここだけで良かったんじゃねw
座談会で書き手しか呼ばなかったんだからw

238名無しさんなんだじぇ:2015/05/18(月) 01:26:19 ID:sABhUNFM
私みたいな寄生虫向けに書いていただきありがとうございましたー

239名無しさんなんだじぇ:2015/05/18(月) 01:29:40 ID:sABhUNFM
私みたいな寄生虫向けに書いていただきありがとうございましたー
さようならー

240名無しさんなんだじぇ:2015/05/18(月) 11:59:28 ID:OBYl4oLk
>>236
お疲れ様、楽しかったよ

241名無しさんなんだじぇ:2015/05/19(火) 00:15:51 ID:j1EK6Qzc
数年ぶりに覗いたらちょうど完結しててビックリした〜。
未読了だけども、無事終わったようで良かった。お疲れ様でした。

242名無しさんなんだじぇ:2016/03/09(水) 04:14:18 ID:8nXA3wZU
最終回が投下されてから、そろそろ一年になるんだなあ、と思い懐かしくなって今更ながら感想? のようなものを。
アニロワ3っていうのは、本当にすごい、奇跡的な作品だ。
何度も何度も崩壊の危機を乗り越えて、それでも例えゆっくりでも歩みを止めること無く完結を果たした。
単純なリレーを放棄して合作に移行したことは賛否あるかもしれないけれど、だからこそ完成度が高く、テーマ性が強く、そして最後まで辿り着くことが出来たんだと思っている。

他と比べてどう、とは言うべきではないのかもしれないけれど、アニロワ1や2に比べると、書き手にとって非常に辛い立場だった。
その空気に耐えきられずに途中で書き手をやめた自分には、それでも書き続けた書き手の方々が眩しかった。
内容だけではなく、そういった外部的な批判にも負けない姿には、見ていてとても勇気をもらえた。
完結まで辿り着くことが出来た時には、我がことのように嬉しくなってしまった。
それぐらい、自分にとっては思い入れのある企画だ。

アニロワ3というロワは、企画としては成功とは言えないのかもしれない。
途中から見ていただけだった自分にとっても痛々しいことがたくさん起こり、完結まで時間がかかったことも読み手が離れる原因になったのだと思う。
けれど、それを差し引いても、アニロワ3という物語は、数多くのロワの中でも随一と言っていいテーマ性と完成度の高さを持っていると思っている。個人的には。
ここで言うことに意味は無いかもしれないけれど、途中で読むことをやめてしまった人にも改めて、
完結して時間も経った今だからこそ、企画ではない純粋な物語としてアニロワ3を読んで欲しいな、と願っている。

唐突な自分語りと長文感想失礼しました。

243名無しさんなんだじぇ:2016/04/13(水) 13:58:09 ID:AE0TNem.
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244名無しさんなんだじぇ:2016/04/22(金) 21:04:39 ID:gZ3FBTQ6
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245名無しさんなんだじぇ:2016/04/28(木) 23:17:49 ID:CHibtqTM
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246名無しさんなんだじぇ:2016/05/10(火) 11:55:05 ID:aICYtdpc
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247名無しさんなんだじぇ:2016/05/13(金) 04:01:24 ID:DlHi1i4c
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