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アニメキャラ・バトルロワイアル3rd Part21

189ep.00 -アゲイン- ◆ANI3oprwOY:2015/04/23(木) 23:50:34 ID:iqjnDWS.


蛍光灯で白色化した無機質な部屋。
息苦しいほどに滅菌された室内。
その外側で、グラハム・エーカーはただ中を眺めている。
治療。研究。探究。検査。隔離。無駄な要素は全て捌けられて、ここは機能するのに必要な単語だけで構成されている。
ただただ機能的に、効率的なためだけの建造物。
窓もなく密閉された空間は清潔すぎて、どこを眺めても変わりばえがなくて。
色とりどりの華も飾りもなく。空の蒼も、遥かな月の光も、ここまでは届かない。
稀な症例の患者の治療と研究を目的とした特別病棟。
最先端の科学によって切り分けられた場所は、まさに異界だった。

そんな現代の結界の中で、なお厳重に隔離された部屋がある。
ガラス張りの四方系に閉じ込められた患者の少女は、外傷もなく置かれたベッドの上で安らかな顔で目を閉じている。
しかし―――小さな体中には、繋がれた大小さまざまなケーブル類。その先に接続している無数の機械装置。
少女の脳波や容体を観測する量子演算型のスーパーコンピューター。
最早少女を生かすために繋いでいるのか、計器同士の繋ぎに少女が使われているのか分からないほどに絡んだ病室。
危篤の老人でも、死病憑きでもこうはなるまいというほどの姿が、少女の状態がどれだけ「手遅れ」なのかを物語っている。

人工呼吸器をつけられた口は規則正しく息を吸って胸を上下させる。
近隣の医療施設に連れ込まれるまでに少女が負っていた傷はほぼ完治している。
体内の全箇所の激しい損傷。傷ついてない部分を探す方が困難な全損。
重傷と呼ぶのも生温い状態から、少女は回復を遂げた結果は発達した医療技術が脳死に至るまでの猶予を引き延ばしたのもあるが、
そもそもここまでの損壊を負ってもまだ、まがりなりにも生きていたこと自体が既に奇跡といえた。
連絡を受けて搬入された患者を診た医者の誰もが、まだ救命の見込みがあると信じられなかったのだ。

信じていたのは、ただひとり。
血に濡れた修道服に身を包んだ患者を抱えてきた、同じく血だらけのパイロットスーツを着た男のみだけだった。
その男も生きていることが不思議なら、這って動いたと聞けば冗談と笑いたくなるような傷だった。
ユニオン所属の軍人だと後に確認が取れるまでの間、二人を亡霊か何かと目を疑わなかった関係者はいない。
予定していた療養期間を大幅に前倒ししてパイロットとしての行動が承認されるまで回復して退院した様は、それこそ冗談のように映っただろう。

……悪夢のような奇跡は、そこで打ち止めだ。
ユニオン最新鋭の医療技術は少女の一命を取りとめさせたまでで、その意識を取り戻すだけには満たなかった。
筋肉や血管の再生は間に合った。各臓器も壊死になる事態までにはならなかった。
ただ人の意識を司る脳の機能だけは、著しい傷を残したままになっていた。
脳科学とて他部門に劣ってるわけでもないのに、脳細胞の再生だけが遅々として進められない。
何よりも医者達を震撼させたのは、その決定的な破滅の要因が過去観測されたことのない未知の因子によるものだと判明したことだ。
ここまで技術が進み過ぎていなければ分からなかったことだろう。
ウイルスや細菌ですらない、脳を破壊させる毒素以外なにも分からない事実が彼らをさらに恐怖させた。
施設内は軽いパニック状態まで陥るところだったが結局感染性はないものと結論づけられ、
より大きな専門的な治療研究が行われている施設へと搬入されて、俄かに街を騒がせた一件として幕を閉じた。


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