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【ジョン】オリジナルスタンドSSスレ【万】

438 ◆R0wKkjl1to:2011/10/03(月) 18:42:11 ID:VGGonkzkO
彼女は自分の生い立ちを知っていた。
いわば自分にとって唯一の理解者であった。


父に捨てられ、母を失い、味方だと思っていた兄に唯一の理解者を奪われる自分を案じての行動だった。

あの冷たい瞳は、他者の為に命を掛けられる……
その為に敵を容赦なく退ける
強固な意志の現れだったのだ。
あれこそが王の顔……この国をまとめ上げ人民に幸福をもたらす王の資格を持つのだ


どうしてかは分からないが、兄はおそらく、彼女の資質を知っていたのだろう。
彼女の資質を利用し、今より高みへの踏み台とするつもりなのだ。
……ならば、彼女を渡すわけにはいかない。


気が付けば、仁は九十九に向かって突進していた。
今までに経験したことのない、剥き出しの感情に突き動かされ自分でも何を言っているのか理解苦しむ叫び声を上げて。



九十九「今更暴れて何になる。馬鹿な弟だ……!」



仁を止めようとする周辺の護衛をスタンドで殴り飛ばして、一直線に走る!


仁「うおおおおぉッ!!」


九十九「イジメられて俺の後ろに隠れてたお前が……俺に勝つつもりかッ!!」



――ガッシイィイ!!


半身ずつしかない互いのスタンドの拳がぶつかると、拳が反発するように弾かれ、互いに体勢を崩す…


仁「ちいぃいっ!」

九十九「スタンドのパワーは互角……まぁ、当然だな
だがな……」


――バキャアッ!!

仁「ぐあッ!?」


九十九の拳が仁の頬を捉える!

ドドドドドドドド……

九十九「お前が御子神家で女とのんべんだらりと生きてきたその間……
俺はたった一人で王にふさわしい人間になるべくあらゆる学問、あらゆる格闘技を習得する為に、血の滲むような努力を重ねて来た……!」


九十九「元がまったく同じ二人の人間を分けるものは何だ?
環境……努力の差だッ!」


――ドガドガドガドガッ!!


怯んだ仁に容赦なく生身の拳の雨が降り注ぐ……!

439 ◆R0wKkjl1to:2011/10/03(月) 18:42:59 ID:VGGonkzkO
だがそれでも、仁には策があった。

10秒前に遡って、行動をやりなおせるスタンドが……
どこから攻撃が来るか分かっていれば避ける事は容易い


ゴゴゴゴゴゴゴゴ……


仁「見せてやる……これが俺の能力だッ!」

九十九「させるかあぁッ!!」



――ドバアァアアアァンッ!!


二人が同時に能力を発動させ
仁は『攻撃をかわし無傷で反撃した』という過去に
九十九は『傷だらけの仁にトドメの一撃を見舞う』という未来に互いが運命を変える


相反する過去と未来
あちらを立てれば、こちらが立たずの状況となる世界

輪ゴムの両端を互いにひねったかのように、そのしわ寄せは『現在』へと現れた


――バチイィイイイィッ!!



空間が破裂するような音と衝撃に、二人の体は吹き飛ばされ壁に叩きつけられる!

仁「ぐは…ッ!」

九十九「ぐあッ!?」


九十九「ちっ…どうやら二人同時に能力を使うと何も起こらないようだな……」

立ち上がり、鼻から出た血を指で拭いながら呟く九十九。

……一方、仁は起き上がるどころか指一本動かせない程のダメージを受けていた。
九十九が与えたダメージにより回避が遅れたため、衝撃をまともに喰らってしまったのだ。

ドドドドドドド……

九十九「俺の勝ちだな、弟。
二度とこの家の門をくぐる事は許さん
……が、兄弟のよしみだ。
最後にお別れくらいは言わせてやる
おい、縄をほどいてやれ」

440 ◆R0wKkjl1to:2011/10/03(月) 18:43:40 ID:VGGonkzkO
縄をほどかれ、自由となった鏡花は仁に駆け寄る。


鏡花「……仁ッ!」


仁「鏡……花……
ごめん……君を、守れなかった……
やっぱり俺は…兄さんに何一つかなわなかったよ……」


鏡花「……そうでもないわ」

そう言うと、鏡花は仁の耳元で何事か囁いた……


その言葉を聞いて、虚ろだった仁の瞳が見開かれる



軽く口づけを交わしたところで、鏡花は九十九のもとへ引きずり戻されるが
その顔に絶望の色はなかった。


九十九「何を話した…?」

鏡花「別に……
あんたのその声とその顔ムカつくから話かけないで」


九十九「フフッ!フハハハハハッ!!
これから嫌でも毎日拝む顔だ!早めに慣れておけよ?
いや……もう慣れてるよな。

仁をつまみ出せッ!!」




一の護衛に引きずられ、打ち捨てられ、仁の意識は闇の中に飲まれていった………

441 ◆R0wKkjl1to:2011/10/03(月) 18:44:27 ID:VGGonkzkO
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……


九十九「鏡花があの時言ったのはそれか。
あの時すでに身ごもっていたという訳か」


仁「そうさ……
そして、兄さんがいなくなれば一の力を全ていづみが握る事になる。

そうなれば、言い方はおかしいが『私と鏡花の勝ち』だ」



既に煙草の火は根元にまで達していた。
指先でそれを投げ捨て、仁はスタンドを発現させる……!


――ズズズ……


九十九「お互いにスタンド能力は使えない……
しかし、死にかけのお前と俺とじゃあ、あの時よりも差は広がっているぞ……!」



――ズズ……

九十九もスタンドを発現させ
お互いの距離を更に詰める。


仁「ふんッ!」

――グオォッ!


――バギイィ!


仁の拳が九十九の顔面を捉える……が、全く効いた様子がない。


ゴゴゴゴゴゴゴ………


九十九「……今のは、わざと殴らせた。
15年前の仕打ちに対して、俺なりの贖罪としてな……!

一撃も喰らわせられないまま死なれたら、お前が化けて出てきそうだしな」


仁「……やはり、兄さんは甘い。
あの時、あのまま私を殺しておくべきだったのに」


九十九「……何?」


――ボゴオォオオッ!!


背後からの衝撃と共に、九十九の胸から拳が生える!


九十九「な……!?」

――ズボオッ!

腕が引き抜かれると、口元からゴポゴポと血の泡をたたせた九十九が後ろを振り向く……


九十九「お……前は……?
そんな馬鹿……な……事が」

442 ◆R0wKkjl1to:2011/10/03(月) 18:45:21 ID:VGGonkzkO
前のめりに倒れる九十九に
仁は語りかける。

仁「兄さん……私が何故『仁』と言う名がつけられたか分かるかい?
母さんに聞いたんだよ……
『一 仁』を崩すと『一人二』
一人で二人、二人で一人。
兄弟が支え合う事を忘れないようにと、名づけたそうだ。

だが、全く違う意味だった……
それがどういう意味か分かる筈だ」



―ズグググ……ッ!!


九十九「が……!これ…は!?
スタンドが……奪われるッ!!」


九十九から立ち上る消えかけの煙のようなスタンドヴィジョンが仁のスタンドに取り込まれていく……!


仁「私たちの魂は、元来一つだったんだよ
……これで不完全だった私達は、完全になれた」


九十九「……お前が何を考えているかなんて、俺には……関係ない……
だが、いづみを泣……かすような真似は……するな!
あれはお前の娘かも知れないが……俺が育てた……俺の娘……」


言い終わる前に九十九は事切れ、その瞳からは生気が完全に失われる。


仁「……………」















――――――――――――


「先生!いい加減にしてください、完全に遅刻ですよ」

九十九「あぁ、すまない。
ちょうど話も終わったところだ」

ネクタイを締め直しながら九十九が階段を昇ってきた秘書に手をあげて合図を送る。

仁「それでは、失礼します」

九十九「あぁ、また来てくれ」

秘書に軽く会釈をして仁は出口へ向かって歩き出す。


九十九「さて……と、張り切っていきますか」





ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………

443 ◆R0wKkjl1to:2011/10/03(月) 18:46:30 ID:VGGonkzkO
投下完了です(^O^)

勝手に名前使ってしまいましてごめんなさい(>_<)

今回はボスの過去的な話でまるまる使ってしまいましたwww
名前からのこじつけでこんな話になった訳ですが
今まで全く出てこなかったキャラが引き金だったとかwww

444名無しのスタンド使い:2011/10/03(月) 22:41:56 ID:48HmRCac0
投下乙です!

元祖鏡花の作品はとっくの昔に投げられたのに、
名前だけ他のSSで生き残るとは思いもしなかったでしょうねww

445 ◆R0wKkjl1to:2011/10/04(火) 08:58:51 ID:TxHZRJ8kO
>>444
お米ありがとうございます(^O^)
ホント名前考えるのが億劫になってきたので無断借用してしまいましたorz

そして444は縁起が悪いので私のコメントで445にしておきますwwww


余談ですが、ジョン万のキャラには数字入りのキャラが多いです。
何の事はない言葉遊びですがwww

大和久礼司→0
一 仁 →1 2
風呂戸 十郎→10
一 九十九→1+99=100
一 いづみ→一泉→一千→1000
中条 万次郎→10000

こんな感じでww

446名無しのスタンド使い:2011/10/06(木) 09:32:16 ID:ilzaa5xQO
最後のシーンぞくっときたww
ボスの過去編ってやたら惹かれるんだよなー。面白い。
乙です!

447名無しのスタンド使い:2011/10/07(金) 04:06:58 ID:JpKHos5AO
リアルネームが仁な俺は勝った気がした
連載開始の頃はわりと気楽系かなと思ってたけどこんなシリアスな展開になるとはな〜
今後も期待してますぜ!

448名無しのスタンド使い:2011/10/07(金) 18:35:25 ID:e.6wvo2.0
むしろ、このドロドロさは昼メロみたいなww

449 ◆R0wKkjl1to:2011/10/07(金) 19:55:55 ID:BxdDfWVAO
みなさまおコメありがとうございます(^O^)
気が付けば3つもコメントがいただけるとは……旧避難所のおかげですかwww

>446
何で死んだのにまだ生きてるのか……その謎はおそらく皆様の想像通りですwww

>>447
リアルネームが仁ですかww裏山ww
私は年寄りみたいな名前なので自分の名前が嫌いです(>_<)
ジョン万は、お気楽に、わやわやとやろうと思ってたんですけど、潜在的にこういう話が好きなんですかねwww

>>448
確かに昼ドラにありそうですねwww

450 ◆U4eKfayJzA:2011/10/11(火) 22:46:28 ID:xjQse7DU0
まずは感想遅れてすいません。
今回の話で、ボスは進化を遂げたという事なのでしょうが、一体どのスタンドなのか気になります。
早く続きが見たいですな。乙でした!

>潜在的にこういう話が好き
失礼ながら、ホラー系の単発でも名を馳せてた時点で、顕在的に好きなのかと思ってました。

最後に、考察の〆でジョルナータが万次郎にクソなすりつけた上で簀巻きにして海に沈めて勝つなんてとんでもない結論をつけて本当に申し訳ありませんでした。

451 ◆R0wKkjl1to:2011/12/07(水) 20:06:38 ID:zfbo4dd2O
さて……

そろそろ……

更新を……しようか

未送信ボックスに埋もれた書き貯め分を掘り起こしてくるぜッ!


細切れになるかも知れませんが構わずコメント挟んで頂けるとうれしいです(^ω^)

452 ◆R0wKkjl1to:2011/12/07(水) 20:07:41 ID:zfbo4dd2O
討論とは名ばかり、互いの揚げ足取りばかりの大会議堂の扉が開け放たれる……

九十九「待たせたな」


九十九が入室した途端、それまでざわついていた広大な部屋は静寂に包まれる。


全員の顔を見回しながら歩みを進め、議長を退かしてその席にドッカと腰を落とす。

「横暴だ」「やりすぎだろ」などと、野次が飛ぶが気にする様子もなくこう切り出した。

九十九「日本を動かす政治家諸君、ごきげんよう。
そしてさようなら」


……次の瞬間、九十九の体は衆目の前から完全に消える。
それこそ非スタンド使いには……いや、スタンド使いでさえ手品と見紛うような一瞬で。


――ジリリリリリリリッ!!

それと同時に火災報知器のベルが場内に響く!

「なんだ!?」「火事か!?」「逃げろッ!!」


我先にと出入り口の扉に殺到する政治家たちだが、扉には表から鍵が掛けられているのか一向に開かない……


「あ、開かない!」「誰か助けてくれ!」

悲痛な叫びが通じたのか、場内に設置されたスプリンクラーから放水が始まった。


――シャアアアアア……


「これでとりあえずは安心……熱ッ!!?」



政治家達のスーツには穴が開き、そこから嫌な臭いのする煙がかすかに上がる……


ドドドドドドドド………



「こっこれは……!水じゃないぞ!


『酸』だッ!!」




「ッギャアアァアアアアアアーーーッ!!」



正に地獄絵図。
悲痛な叫びが響きわたる中、画面は小川の風景に切り替わり
柔らかな音楽と共にしばらくお待ち下さいのアナウンスが流れる……

453 ◆R0wKkjl1to:2011/12/07(水) 20:09:16 ID:zfbo4dd2O
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


江藤「おい……何だよ今の?」

中条「うおッ!?何だよ、いつの間に後ろに立ってたんだよ」
田村「今し方だ……そしたらTVに凄いぇ映像が流れてて、
お前ら誰も俺たちに気付かなくて……」


遥「御子神抜きにしても、今の奴、大概にゲスな野郎ね……」

比留間「……確かに、九十九様は尊大な面もありますが
意味もなく人を殺したりはしません……!
何か理由があったのです……」
中条「なんかそれ、意味があれば殺しても良いって聞こえるんですが……」

比留間「失礼。言葉のあやです。
何かそうしなければいけない理由が……例えば言うことを聞かなければいづみお嬢様を殺すと脅されていたとか……」


そこまで比留間が言い掛けて、不意にTVの映像が切り替わる。

溶けてボロボロになった椅子や机、その他なんだか分からない肉色の塊を背景に一際立派な玉座が置かれており、そこには九十九が深く腰掛けカメラに目線を送っていた……


九十九「国民諸君、ご機嫌よう。
先程のショーは楽しんで頂けただろうか?
人間が生きたまま溶かされるのを見る事なんて普通に生きていればまず無い。
正に歴史に残る悪行だ。
そして君たちは歴史の目撃者……もの凄い幸運だな。

さて、どうして私がこのような暴挙に出たか……
みんなそれを知りたがっているのだろう?


答えは単純明快……『革命』だよ
私はこの国には、ほとほと愛想がつきた。
だから私がこの国を変えようと決めたのだ……


各地に散らばる同志諸君、時は来た。活動を始めたまえ。


それから、異論があるものは国会へ来い。私は逃げも隠れもしない……私を止められるものなら止めてみろ!
以上!」


それだけ言って九十九は立ち上がり、画面から外れる……

454 ◆R0wKkjl1to:2011/12/07(水) 20:10:41 ID:zfbo4dd2O
遥「やっぱりゲス野郎だったわね……」

比留間「まさか……そんな筈が……」


橘「ごめんなさい、話の腰を折って申し訳ないんだけど
さっき大臣が『同志諸君』って言ってたけど……同志って?
やっぱり仲間がいるのかしら」

中条「あぁ、アガペーとか言う組織らしいぜ」


大和久「いや、それは御子神さんの組織……」

江藤「アガペーだって……?
じゃああの女が言ってたのは、この事だったのか」


比留間「あの女……?」

田村「動物園で襲われたんすよ……なんだか知らねえけど、一に関わった奴は自分たちの仲間以外殺すって。
しかもその女、俺と先輩を襲った殺人野郎と知り合いみたいな口振りで……」



ゴゴゴゴゴゴゴゴ……


遥「話が良く分からないけど、ここにいる全員が一と因縁があるってのは間違いないのよね
……それで?
どうするの?」


中条「どうする……って
話がいきなりデカくなりすぎて何がなんだか……」


比留間「無論、いづみお嬢様を助けに行きます」

江藤「俺も行くぜ……!
あの野郎を探し出してぶっ飛ばす」

田村「ちょ、先輩……そんな怪我で……」

橘「私も行くわ……」

江藤「お前は関係ないだろうが」

橘「あるわよ…!
あの蟹女の顔が気に入らない。だから痛めつけてやるの」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


中条「……まぁ、俺も兄貴に会って話を聞かなきゃ気が済まないからな……俺も行くよ」


大和久「僕も行く。何故か分からないけどそこに行けばO・Cと会えるような気がするし
いづみさんを見捨てる訳にはいかない」


遥「……決まりね
このまま突っ込んでもいいけど、色々と準備しなきゃいけないだろうから今日はやめておきましょうか」


比留間「では明日……正午にまたここで集合しましょう。
厳重な警備が敷かれているでしょうから、私が皆様を連れて永田町に向かいます」


中条「分かった……じゃあまた明日ここで」

455 ◆R0wKkjl1to:2011/12/07(水) 20:12:36 ID:zfbo4dd2O
―――――――――――――――――




その日は各々、帰宅の途につき
明日に向けて英気を養う事となる。



自宅の万年床に寝そべり、携帯をいじりながら
万次郎はなかなか寝付けずにいた……


――カチ……カチ……


無音の部屋に携帯をいじる音だけが響く。


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ニュー速VIP [規]
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1:一殺す (818)
2:【日本】国会テロ総合PART52【終了】 (511)
3:ラップ知らない俺がラップで日本を平和にするwwwwwwww (148)
4:PDB台詞当てクイズ (22)
5:萌え萌えメイド芽依子実況 (102)
6:【拡散】一を倒せる奴ら名簿【希望】(755)
7:もうアメリカ様に核落としてもらうしかない (2)
8:ポケモンを一匹思い浮かべてこのスレを(トランセル)開いてください (5)
9:格闘技やってる奴ら!出番だぞ!(49)





中条「………ん?」



ふいに画面が暗くなり、電話が鳴り出す。


……画面に表示された番号に見覚えはないが、タイミングがタイミングだけに何か大事な用かもしれないかと電話に出る。


中条「……もしもし?」


電話「………万次郎か?」


電話の声には聞き覚えがあった。



中条「……兄貴?」

兄「えらい事になっちまったな……」

中条「えらい事って……兄貴も荷担してんじゃねえかよ」


兄「いや、俺は一いづみの誘拐だけで、他は何も知らされてなかった。
マジだぜ、賭けても良い」


中条「にしたって……誘拐なんざ普通しねえだろ。
それに大学はどうしたんだよ?」

兄「……辞めた。
そんな事より、お前の事だからこっちに来るつもりだろ?
これは兄弟だから言うけど、絶対来るな。
次は守れるか分からねえぞ」


中条「……忠告として聞いておくよ。
ま、期待しないでくれ」

兄「……用件はそれだけだ。
じゃ、またな」



万次郎「…………」


ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

456 ◆R0wKkjl1to:2011/12/07(水) 20:14:55 ID:zfbo4dd2O
男「ウォオララララララアァーッ!!」


――ドババババッ!!


男はスタンドを繰り出し、目にも止まらぬ速さでラッシュを繰り出す。



――スカッ……


男「うおッ!?」


敵を砕く筈の自身の両腕に振り回され、体勢を崩すが何とか踏みとどまり
瞬時に反撃に備えて腕で顔面を守る


だが、男の予想に反し反撃の一手は来ない……

男「……?」



――ヒタァ……


殴るでも触るでもなく、撫でるように背後から首筋に手を当てられる……!



「心拍数123……体温37.1℃……。
どうした?息が上がってるぞ?」

ドドドドドドドドドド……!


男「……!
っしゃならあーッ!!」


――ブオンッ!


大振りなバックブローが虚しく空を切る。


男「……っはぁッ…はあ……!
何なんだオメーよぉ!いきなり襲ってきやがって……
本体はどこだ?隠れてねーで出てこいッ!」


?「私には本体などいない。
故にエネルギーが枯渇すれば消えてしまう。
生きる為には君たちのようなスタンド使いの魂を補給し続けなければならないのだ……」


暗がりから姿を現した銀色の鎧をつけたそれは悪びれもせずそう答える。



―ッドゴウウッ!


男「かっ……」


目の前に敵は居た……だのに、背後から攻撃された
男は何が起こったのかも分からぬまま、その生涯を終える……



ゴゴゴゴゴゴゴゴ…………


?「……我ながら、ここまで燃費が悪いとは。
一日一人、スタンド使いの魂を奪わなければいけないのか……

さしあたって、スタンド使いが集まる場所は………国会だな。
矢が手に入れば問題も解決する……気乗りしないが仕方ないな」


足下に男の亡骸を携えた、銀色の甲冑は、月の光を浴びて鈍い金色の光を放っていた……

457 ◆R0wKkjl1to:2011/12/07(水) 20:16:52 ID:zfbo4dd2O
川上「礼司……起きてる?」


大和久「起きてますよ……」



隣のベッドでは風呂戸が高いびきをかいて眠っている。
大和久は家に戻らず、病院にいた。


川上「……相手は何人位いるの?」

大和久「さぁ……見当もつかないよ。10人…20人……もしかしたら100人かも」


川上「それも一般人じゃないでしょ?
たった7人でなんて無茶よ……」

大和久「無茶かどうかなんて問題じゃないんだ。
大事なのは立ち向かう事だよ」

川上「立ち向かう……
スタンドアップトゥ……か
スタンド能力は私にはないからよく分からないけど
スタンドを得るって、立ち上がる事なのね。
そこから何をするのか……
礼司達は戦う事を選んだ
私が何を言える訳じゃないけど、絶対に死なないで」


大和久「当然だよ、僕は死にに行くんじゃない。止めに行くんだ……
それにしてもスタンドアップトゥか……上手いこと言うね
それ、今度使わせてもらうよ」

川上「そうかしら?」


大和久「…………」

川上「……礼司?」


大和久「……ZZzz」


川上「寝ちゃったのか……」


大和久の布団を直してやり、そのまま音を立てないように川上は部屋を出ていった……

458 ◆R0wKkjl1to:2011/12/07(水) 20:20:05 ID:zfbo4dd2O
遥「はい、出来たわよ
お父さん持ってって」


上城「お、おぉ……
凄いな遥はこんな料理作れたのか」

遥「10年も自炊してれば嫌でも作れるようになるわよ」

上城「……そうか。それもそうだな」


テーブルには、ホテル並とはいかないが一般的にみて充分に立派な料理が次々に並べられていく。


上城「こ……こりゃ凄い(でも食材の量を考えて作って欲しかったなー
どうみても一週間分はあるぞ)」


遥「……あ」

上城「どうした?」


遥「いや……この箸、まだあったんだって思って」

上城「あぁ、お前が出て行くより前に買った箸か。
物持ちは良い方だからな」


遥「そっか……
あ、そういえばお母さんは?」
上城「今は南アフリカにいるよ、何やらおもしろい物を見つけたとか」

遥「ふーん……じゃ、食べましょうか?
いただきまーす」

上城「いただきます」


父と娘、2人の食卓にとりたてた会話は無い。

遥は気になっている事を聞いてみることにした

遥「国会があんな事になってるのに、普通にご飯食べてるのって……何か笑えるね」

上城「……まぁ、今更慌てたってどうにもならんからなぁ。
生徒達をほっといて逃げる訳にもいかんし
遅かれ早かれこうなるってのは誰しもが思ってたし、実際喜んでる人間の方が多いかもしれん。
それ位、今の日本は腐ってると感じている人間は多い……ま、外国にいたお前には分からないかもしれんが」

遥「ふーん……」

上城「いずれにしても、今日の事は成功すれば日本史の教科書に載るだろうなぁ」

遥「虐殺事件で?」

上城「まさか。
革命としてだよ、今の政府はこき下ろされて一が正義として記されるだろう
歴史ってのは勝者が都合の良いように描かれる」


遥「どこかで聞いたようなフレーズだけど……真実よね」


上城「さ、冷める前に食べないとな!
娘がせっかく作ってくれた料理だ!」



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

459 ◆R0wKkjl1to:2011/12/07(水) 20:22:14 ID:zfbo4dd2O
――ガチャ……


高級そうな装飾が施された扉が開き、一人の男が中へと入ってくる


薬「お、我らがボスのお出ましだ」


ベッドサイドに置かれた椅子から薬売りは立ち上がり、男を出迎えた。

御子神「……いづみは?」

薬「ご覧の通り、ぐっすり寝てるぜ」


ベッドで静かに寝息を立てるいづみの枕元には、薬売りのスタンド【スリーピング・フォレスト】が佇んでいる

薬「……眠れる森の美女ってか
それにしても、いきなりあんな事をするたぁ……度肝を抜かれたぜ」

御子神「人の為に働く意志のない政治家でも、賑やかし位にはなるさ」


薬「…………」

読みかけの本を伏せ、ゆっくりと立ち上がる薬売り。

薬「それじゃあ、アンタは一体何のために動いてんだい?」

御子神「……決まってる。
この子の為だ」

そう言うと、痩せて節くれた手でいづみの髪の毛を撫でる。


薬「何となくだがよ……アンタのやろうとしてる事が分かった気がするぜ」

御子神「そうか。
なら、追加の依頼を頼もうか。

……この子を守ってやってくれ
計画通り事が運べば良いが、土壇場で気が変わるかも知れないしな。
それから、私が死んだ後もこの子が成人するまで続けてくれ」
薬「……報酬は?
受けるか受けないかはそれ次第だ」

御子神「やはり君はプロだな……信用出来る
報酬は……そうだな、相応のポストを用意しよう」


薬「……まぁなんだ、つまりは俺にNo.2になれと」

御子神「まぁ、そういう事だな」


ゴゴゴゴゴゴゴ……

薬「ハハ……ッ!
世間に嫌われているギャング達……そいつらにすら、薄汚い物を見るかの様な目で見られるクスリの売人の俺が?
まるでシンデレラみてぇな話じゃねえか」

御子神「受けてくれるか?」


薬「あぁ……良いぜ
その依頼、受けよう。

だが、生憎俺は地位とか名誉なんざこれっぽっちも欲しいと思わねぇ……だから代わりに『女』だ
それも飛びっきりの上玉のな」


御子神「なるほどな……そういう事か、了解した。だが……意外とロマンチストなんだな」

薬「う、うるせー!」


御子神「ははは……」

460 ◆R0wKkjl1to:2011/12/07(水) 20:24:03 ID:zfbo4dd2O
女「結局戻ってきたのはこれだけって事……?」

男「まぁ、ビビって逃げた奴もいるだろうけどな」


御園「……警察の中にもスタンド使いは居る。
何人かは捕まったか殺されたか……


中島「ま、そんな奴らは、いてもいなくても変わらねえがな」

中条「御園さん、これからどうなるんですかね?」

御園「さぁな……俺たちの契約は侵入者を撃退するって事を考えれば分かるだろう?」

中条「やっぱ戦場になるんですかね……」


男2「君には覚悟も信念もないんだな。
……所詮、金で釣られたチンピラか
怖じ気付いたなら辞めれば良いさ、僕らがそれを見逃すと思うならね」


中条「……!!」


ゴゴゴゴゴゴゴ……



――ガチャッ…


唐突に部屋の扉が開き、血なまぐさい臭いが部屋の中に充満する。

中条「……?」

男2「なんだ?」


――ズルズルズル…………

何かを引きずるような音がしたかと思うと、誰もいないのにソファが人型に沈む。


御園「……上野か
姿くらい現したらどうだ?」

上野「あらやだ、すっかり忘れてたわ
……これで良いかしら?」


ソファに姿を現した蟹のような髪型の少女の両手には、大きなゴミ袋とポリタンクが握られている。


上野「井口、これ処分しといて」

そう言って無造作に袋を投げ出す上野

井口「やれやれ……
もうちょっと綺麗に殺してくれないかな?」

上野「あんたのがよっぽど汚いわよ」

井口「僕なら骨も残さないがな……で、『コレ』は誰なんだい?」

上野「ん?え〜っと……
裏切って逃げ出そうとした奴が2人、それと邪魔してきた奴が2人だったかな
ウフフ……流石に4人を一つの袋に詰めるのは苦労したわぁ〜」

中条「……」

男1「四人って……おぇー、絶対に中身を見たら気分を悪くするぜぇ〜」


無言でポリタンクと袋を受け取り、重たそうに引きずりながら井口は部屋を出ていく。


御園「さて……まだ来てない奴もいるが時間だ。
全員配置につくぞ」

461 ◆R0wKkjl1to:2011/12/07(水) 20:27:00 ID:zfbo4dd2O
御園「臼井、上野。
お前らは私と門の警備に当たれ」


臼井(男1)「おうよ」

上野「ったく……人使いの荒い男ね」


御園「中島と加賀屋は屋内の警備だ」

中島「まぁ、そうか…
俺の能力は屋内向けだしな!」

加賀屋(女1)「私の能力もね…」


御園「井口はいないが、宗谷と御子神の部屋へ続く通路を守ってもらう」


中条「あの……俺は?」


御園「……お前は医務室で、日野(バーン・バーン)の側にいろ。目を覚ましたら好きな場所につけ
……ついでに怪我があれば小倉に直してもらえ」


中条「……はい」



御園「全員配置につけ、御子神が軍と警察を掌握するまでの辛抱だ。
それが終われば我々の勝ちだ!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………












――――――――議事堂、正門前



『ザザ……ッ こちら搬入ゲート班。
突入準備出来ました』


トランシーバーから、次々に準備完了の報告が入ってくる……


「……部隊長、我々は何故こんなまどろっこしい事をしなきゃならないのですか?
今は国家の緊急事態なんですよ。空爆でもミサイルでも使えば……」

「あの中にいるのがテロリストだけとは限らないだろう。
それでなくても、自国領土にミサイルを撃ち込むなんざそうそう出来る事じゃあない
仮に撃ち込んで、仮に中に民間人がいたとしたらどうなる?」
「仮定に仮定を重ねてるじゃないですか……」

「……だからそれを調べるのが我々の任務だ。
人質の有無の確認、可能であれば白兵戦での殲滅だと言っただろ」


「そうでしたっけ……それじゃ早速行ってきますよ
人質がいなきゃ良いんですよね?」


――タッ……

若い士官はそう言うと、門に向かって走り出す。


「お、おいッ!前田ッ!
単独で動く馬鹿がいるか!」


髭を生やした上官が引き止めようと声をあげるが、前田と呼ばれた若い士官は既に門の近くにまで近づいてしまっていた。



ドドドドドドドドド……

462 ◆R0wKkjl1to:2011/12/07(水) 20:50:26 ID:zfbo4dd2O
とは言え、この上官は前田に絶大な信頼を寄せていた。

これまでに就いた様々な過酷な任務、その全てで、彼は目覚ましい活躍を見せていたのだ。
まるで映画の主人公かの如くどんなに危機的な状況でも、彼の活躍により部隊は任務を成功させてきた……

ルックスもイケメンで、頭も良く廻る。更に身体能力も常人を遥かに上回るあの若い士官は、まさしく天に愛された男。
これからの日本を背負って立つ逸材だと、上官は確信していた。



――ス……


正門にたどり着いた前田が、滑り込むように門の内側へと姿を消す。


(頼んだぞ、前田……日本の未来は今お前の肩にかかってい


――タタタタタタタッ……!!

上官がそう思うよりも早く、門の裏から銃声が響きわたる……!

「ッ!?」


待ち伏せされていたのか、上官達からは見えない場所で戦闘が行われていた

「……!前田の援護に回るぞ!ついて来いッ!」


……だが、振り向けば誰もついて来ようとはしない。
ただただ、目をまん丸にして正門を見つめていた

「……?」



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


上官は部下達の視線の先へと、ゆっくりと顔を向ける


「………………んなッ!!?」



臼井「何だこいつはよォ〜?
たった一人で乗り込んで来やがって……
もしかしなくても間抜けじゃねぇか?
ブハハハハハハッ……!」


コートを着た男の足下には、ボロ雑巾のように横たわる前田の姿があった……

御園「油断するな臼井……
非スタンド使いでは手に余る事は敵も知っている筈だ。
恐らくコイツは様子見の為の捨て駒だろう、次からは凄腕が来るぞ」


門の陰から現れたもう一人の男の周囲には、金属的な何かが無重力中でこぼした水のようにプカプカと浮いている……


「な……なんだ、あれは?」


ゴゴゴゴゴゴゴ……

御園「見ろ、増援が来ている」

臼井「髭なんか生やしやがって……ムカつくぜぇ〜!
だからぶっ殺すッ!!」


「……撃てッ!撃て〜ッ!!」

463 ◆R0wKkjl1to:2011/12/07(水) 20:51:51 ID:zfbo4dd2O
――ドババババババババババ……ッ!


50人程の部隊の持つ銃口がが一斉に御園達へ向けて弾丸を吐き出す!
秒間6発の弾を吐き出す銃によって瞬く間に数百発の弾丸が空間を埋め尽くした。


御園「フン……下がれ、臼井。 やれ、メタル・ジャスティス」


――ズギュウゥウンッ!


M・Jが姿を現すと、見当はずれの場所へと放たれた弾丸までもがその進路を変え、引き寄せられるようにして御園めがけて集まってくる

――ビチャビチャビシャビチャ……ッ!

そしてその全てが御園の手前で溶け、液体金属となって御園の周りを漂う……



ドドドドドドドドド……


「な……何だ?何かのトリックなのか……?
飛んでくる弾丸を集めて溶かした……?」


御園「俺に銃弾は効かない……」


依然、御園と臼井とは距離を保っている部隊ではあるが、敵に対するアドバンテージである銃を封じられ、浮き足立ち始める。


「狼狽えるなッ!総員AKB装填!……ってーーー!!」


御園「AKB……
……臼井ッ!スタンドで防御しろ!!」

臼井「あぁ?何言ってんだよ……銃弾なら全部あんたが……」

――ドギュゥウンッ!!

臼井「ぶべぁッ!?」


放たれた弾丸はMJの能力の影響を受けず、一直線に臼井の頭を打ち抜いたッ!


御園「マヌケが…だからガードしろと言ったんだ」



――キュインチュイン……ッ!

御園は液体金属で作った盾に身を隠し、倒れた臼井を引き寄せる


御園「さて……これはマズいな。
この盾がどこまで持ちこたえられる……?」

一転して防戦一方になる御園。

ドドドドドドドドド……

464 ◆R0wKkjl1to:2011/12/07(水) 20:52:45 ID:zfbo4dd2O
臼井「………ぶるあああああああああ!!
焦ったあぁあああ〜!
何なんだよ!?銃弾は効かないんじゃねえのかよ?」


起きあがった臼井の手には緋色の様な群青色の様な不可思議な色の弾丸が握られていた……


御園「AKB……これは48式か……
アラキニウム・バレット……

射程距離内であれば48人を貫通する程の威力がある」


臼井「……で、お前の盾でそれを防げるのかよ?」

御園「長くは保たないな……
全力で修復してはいるが、弾丸の数が多すぎる。
だが、AKBは非常に高価な弾丸だ。奴らもそう多くは持ち合わせていないだろう。
弾切れまで待つしか……」

――ビッシイィッ!

言い掛けて、御園の盾に大きな亀裂が入る!

臼井「おわッ……!
大丈夫かよぉ〜!?」


そう言う間にもAKB48が大粒の雨の様に御園と臼井の隠れる盾に降り注がれている。


ドドドドドドドドドド……!


御園「……仕方がないな。
ちょっと耳を貸せ」


――ゴニョゴニョ……


臼井「………ちッ。
やりたかねえが……やらなきゃいずれ死ぬんならやらなきゃならねえな……」



ゴゴゴゴゴゴゴ……

御園「合図で飛び出せ……3……2……1……
行けッ!」


――バッ!


盾の陰から臼井が駆け出す!


「あ!もう一人が飛び出したぞ!
生きてやがったのかッ!?撃ちまくれェーッ!!」


――ドババババババババババッ!!


無数の弾口が臼井に向けられ、激しく火を噴く!


臼井「……ッ!やってやるぜッ!!
【NUKEGE】ッ!!」

465 ◆R0wKkjl1to:2011/12/07(水) 20:54:10 ID:zfbo4dd2O
臼井「ゼリャアァアアッ!!」

――ドババババババッ!!


発現したのっぺらぼうのようなスタンドは、無数の弾丸に対しラッシュで対抗する……
打ち落とすでも、受け止めるでもなく
弾丸の横を僅かに叩き、軌道を逸らしていた。


「な……奴の目前で軌道が変わった!?」


臼井「銃弾から身を守るのにパワーなんざ必要ねえ……
軽くちょいと叩いてやれば、勝手に外れてくれるからなッ!」

御園「臼井め……やるな。
お前のおかげでこちらへの攻撃が薄くなった、ほんのちょっぴりだが……液体金属を攻撃に回せるぞッ」



――チュインッ!



――バスッ!


臼井「うぐ……ッ!?」


御園が反撃に出ようとした瞬間、臼井自らが軌道を逸らした弾丸が壁に跳弾し
臼井の足を貫く……!


臼井「くっ……そがあぁあああぁッ!!
何でこんな時に俺は運が悪いんだよぉーッ!」


――グラッ……

体勢を崩した臼井を指揮官は見逃さなかった。

「当たったぞッ!撃ち続けろ!!」


臼井「くそ……!ゼリリャリャアァーッ!」


臼井は体勢を崩しながらも、銃弾を防ごうとスタンドを操作するが
全てを捌ききる事は出来なかった


――バスバスバスバス……ッ!

捌き損ねた数発のAKBはその体を貫き、臼井はゆっくりと仰向けに倒れる……


御園「……!」


標的を一人打ち倒した事で弾幕は一旦止み、硝煙の臭いが辺りに広がっていく。



「残りは後一人ッ!
この勝負……もらったぞ」


合図と共に、数多の銃口が一斉に御園へと向けられた。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………

466 ◆R0wKkjl1to:2011/12/07(水) 20:57:30 ID:zfbo4dd2O
「いや、待て……
もしかしたら、まだ生きているかもしれない」


倒れている臼井に、いくつかの視線が集まる……


臼井「………(くそ……死んだフリで乗り切ろうと思ったのによぉ。
今また撃たれたら確実に殺されちまう……)」


指揮官が確認の為に臼井の身体を撃つように命令し、引き金が引かれようとする


それと、同時に臼井はボロ雑巾のよいな先ほど倒した隊員(前田)を捕まえると猛然と部隊に向かって走り出した!


臼井「撃てるモンなら撃ってみろおぉーッ!」


「な……前田を盾にッ!?
撃つな、撃つんじゃあない!」


装備をつけた男一人を盾に走るなどという事は、健康な状態でも難しい。
スタンドで補助をしているとは言え、人並みのパワーしか持ち合わせていないスタンドと大怪我をした本体……
限界はすぐに訪れ、その歩みが止まる。


臼井「ぶはあぁあッ!重ってえぇ〜……!」



時間にしてたった数秒の出来事であるが、その数秒は反撃に打って出るには充分な時間だった。



御園「射程距離内だ……!」


指揮官が気付くと、臼井の起こしたドサクサに紛れ、御園も部隊へと近づいて来ていた。
そして御園の周りに浮いている液体金属が先ほどと比べ、明らかに少ない事に違和感を覚える……


「……ッ!おい貴様!
その周りのぶよぶよをどこへやった!?
さっきより少なくなってるじゃないかッ!」



――ガチャガチャガチャガチャ……


銃口が一斉に御園へと向けられる……!

467 ◆R0wKkjl1to:2011/12/07(水) 20:58:28 ID:zfbo4dd2O
ドドドドドドドド……!

「答えろ!ぶよぶよをどこへやったッ!?」


御園「さぁ……自分の胸に手を当ててみれば分かるかもしれないな」


――ズギューーンッ!

兵士「うわッ!」

兵士「なんだ?武器が……引っ張られるッ!?」

兵士らの持つ自動小銃が次々と御園に引き寄せられ、その形を保てなくなっていく……!


御園「これでAKBはおろか、銃自体使えないな……
大人しく退却し、俺たちの邪魔をしないと約束するなら見逃してやる」


ゴゴゴゴゴゴゴ……


「……ッ!ざけるなぁッ!!
我々そんな脅しに屈する訳ないだろう!!」

臼井「NUKEGEッ!!」


――ドゴシャアッ!

「うぶッ!?」


臼井のスタンドに殴られ盛大に吹き飛ぶ指揮官。


臼井「御園……!交渉の余地なんざねえんだ……
俺は、こいつら全員ぶっ殺すぜ!」


――ボロボロ……ボロッ…!


「……う?な、何だ……髪の毛が……!?
髭が……!?
ぬ、抜けて行くぅ〜〜ッ!?」


兵士「あ、秋元大尉ッ!?
……貴様らあぁあああッ!!」

――バッ!


ごっそりと毛の抜ける指揮官を見て、兵士の一人が逆上して
臼井めがけて突撃を始める!

それを見た他の兵士達もつられるようにそれに続く……


「「うおおおおーッ!!」」

「「ぶっ殺せーーッ!」」


御園「臼井……余計な事を。
相手する外なくなったぞ……メタル・ジャスティスッ!」

468 ◆R0wKkjl1to:2011/12/07(水) 20:59:33 ID:zfbo4dd2O
――ボンッ!

――ボンッ!

――ボボンッ!


M・Jに呼応して、何かが破裂するかのような音が辺りに響き渡ると、突撃してきた兵士が次々に倒れ込んで行く……!


臼井「……?何をしたんだ?」


ドドドドドドドドドド………


兵士達が全て倒れると、辺りには小さな金属の球が無数に浮いていた。

兵士達は赤や青の顔色で胸の辺りを手で押さえながら悶絶している。


兵士「いッ……息がッ……
出来な……助け……!」



御園「腹膜にちょいと穴を開けたのさ……
体内に入り込んだ空気が肺を圧迫し、肺を膨らませる事が出来なくなる
お前がコイツらの目を引きつけている間に、俺は金属を細かくして、コイツらに吸わせた」


臼井「そんな事を……だが、何で殺さねえんだ?」

御園「お前は対人地雷がどうして人間の手足を吹き飛ばす威力しかないのを知らないのか?

殺せば死体はそこに捨て置いて新しい部隊がやって来るだけだ
だが、負傷者だった場合はどうだ?
助け出す人間、治療をする人間、医療器具、またその時間。
それだけ余計に人手も時間も金もかかる
殺すより生かした方が相手にとっては痛手なんだよ。

これはそれと同じだが、俺たちは時間を稼げれば良い」

臼井「なるほどな……」



御園「さて、お前は医務室に行って治療を受けてきた方が良い。
それくらいの時間は稼げた筈だから俺一人で大丈夫だろう」

臼井「すまねぇ…
差別や偏見の無い世界まで後少しか……
それまで生きてねぇとな……!」



御園「そうか……頑張れよ」

臼井「……お前、今、俺の頭を……」

御園「いや、見てないぞ」

臼井「そ、そっか……」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……













御園【メタル・ジャスティス】臼井【NUKEGE】……○
VS
秋元小隊……×

469 ◆R0wKkjl1to:2011/12/07(水) 21:01:16 ID:zfbo4dd2O
投下完了です(^O^)
新しく使用させていただいたスタンド
No.3110
【スタンド名】NUKEGE
考案者:ID:jntfOGiM0様
絵:ID:XNa04Lb/Q様
ありがとうございましたm(_ _)m

このままだとエタりそうなので2in1で投下させていただきましたwww

臼井さんは頭が薄いから臼井さんです
恐らく能力が戦闘に使われる事はないでしょうwww
太陽拳要員でしたがあまりにも扱いが酷くなりそうだったので頑張ってもらいました

これから主人公が現場に到着し、グダリ始めますが
『来年』もジョン万を宜しくお願いしますm(_ _)m

470名無しの九州沖縄:2011/12/07(水) 22:30:43 ID:CcEU1OH.O
更新O2/DC!
NUKEGEの名になんか見覚えがあると思ったら初期の自案だったwww なんか懐かしい気分だwww
臼井ってネーミングそのまんまだなwwwでも似合うGoodチョイス乙でし!
臼井とエガちゃんが戦ったらただでさえ薄いエガちゃんの頭がヤバいことになるなwww

471名無しのスタンド使い:2011/12/08(木) 01:21:14 ID:QqeZoQ2c0
更新乙です!
相変わらずMJ便利だなぁ……
ありがちな使い方だけど、銃弾を液体にしていなすって描写は、想像すると痺れますね
そしてAKBww

472 ◆R0wKkjl1to:2012/01/14(土) 20:16:13 ID:1lgOPkU2O
前回投下から既に一ヶ月が過ぎていたのか……

>>470
まさかの親御さんからのコメント……上手く扱えず申し訳ありません(>_<)

>>471
燃えますよねーwww
気にしてなかったけど、MJはスタンド使い相手だと勝った負けたするけど、非スタンド使いにはめっぽう強いんですね

AKBなら私はこじはるが好きですッ!!




それでは、あとちょっとしたら投下いたしますm(_ _)m

473 ◆R0wKkjl1to:2012/01/14(土) 20:27:41 ID:1lgOPkU2O
臼井「痛ててて………!」


御園「傷穴は塞いだからさっさと医務室に行ってこい……と、言いたいところだが……」


臼井「……?何だよ?」

御園「………新手だ」



臼井「新手だぁ〜?」



ゴゴゴゴゴゴゴゴ………!



臼井と御園の前に現れたのは、見覚えのある面々


中条と大和久、風呂戸、比留間、江藤、そして橘の高校生スタンド使いと老執事だった。



御園「あいつらは……
やはり来たのか」

臼井「知ってるのか?」

御園「昨日戦った、一の娘の取り巻きと護衛だ」

臼井「って事は……」

御園「全員スタンド使いだ。
全員それなりに腕が立つぞ」


ドドドドドドドドド………



比留間「いづみ様を返してもらいに来ました……
道を開けていただいていただけますか?」


御園「返す……?何の話だかサッパリだな
俺たちは父親の指示で彼女を連れ戻しただけさ」


比留間「……ならばその真意を九十九様に直接聞かせていただこう。
いづれにしろ、道を開けていただきます」


臼井「悪いが、誰も通すなって命令なんでね。
……そいつも無理だわ」


比留間「……話になりませんな。
それならば無理矢理にでも通らせていただきましょうか
【リヴィン・オン・ア・プレイヤー】……!」


御園「貴様の能力では俺には勝てない……さっきの戦いを見てなかったとは言わせないぞ?」

比留間「なればこそ……その油断が敗北を招く事になりますよ」



かけていた眼鏡をケースにしまい、構えをとる比留間

474 ◆R0wKkjl1to:2012/01/14(土) 20:28:51 ID:1lgOPkU2O
中条たちもスタンドを発現させ、構えをとってはいたが
比留間と御園の気迫に気圧されて動き出す事が出来ずにいた。


――ユラ……


比留間の後ろ、中条たちの後ろの何もない空間が揺らぐ


御園「……!なるほどな」

その揺らぎは、中条たちと相対している御園と臼井にしか確認出来なかった
……つまり、中条たちは揺らぎには気付いていない


御園「メタル・ジャスティス!」


――ゴオッ!!

御園がスタンド名を叫ぶのと同時に、何もない空間から腕が現れ拳をふるうッ!

標的は、怪我をしている江藤。

江藤「ッ!?」

比留間「!!」


予期せぬ襲撃により比留間に一瞬の隙が生まれる


――ボッゴオォオオッ!!



液体金属で作られた鉄球が、比留間のわき腹へ突き刺さる!

比留間「ぐ……ッ!」





江藤「……!(な、何だあぁああッ!?
防御すら間に合わないタイミングッ!俺……死んだ!)」

眼前までせまった拳に江藤は死を意識した


「ムヒー!」


――ドガッシイィッ!!



江藤「……………

…………え?」


拳は江藤には届かなかった。
血の滲んだシャツから現れた別の拳がそれを阻止したのだ



橘「あ……このモジャモジャ腕は……!」


ドドドドドドドドドド……!


アクモン「ムヒー!」


江藤「アクモンだぁーッ!!」

「ちいッ!」

――ズズズズ……

舌打ちと共に姿を現した上野。

上野「……どうやら、あんたらをぶち殺すのが待ちきれなくてクリスタル・エンパイアの操作に失敗したみたいね。
だが!次は同じ過ちはしないわ」

――……フッ


中条「!!……消えたッ!?」

上野は再び姿を消し、中条達の間に緊張が走る!

475 ◆R0wKkjl1to:2012/01/14(土) 20:29:50 ID:1lgOPkU2O
上野(次は……外させないわ
……冷静に、一撃でぶち砕く)


ゴゴゴゴゴゴゴゴ……


風呂戸「おいッ!また消えたぞ!
どこから来るッ!?」


中条「わからねぇ…!くそッ」


上野(まずは1人……!)



――グオッ!


振りかぶって、拳を突き出す。
見え見えのモーションだが、中条たちには見えていない。
見えていれば何のことは無い攻撃だが、見えていない中条たちに回避する術はなかった


上野(……もらった!)



「ムヒー!!(見え見えうるせぇー!)」


――メメタァ!


江藤の頭を砕くはずの拳は、逆に数発、毛むくじゃらの拳を叩き込まれるッ!


上野「っつあッ!
な、何で私の攻撃が見極められるッ!?」


能力が解除され、再び上野は姿を現す……
その腕からは血が滴り、拳からは白い物を覗かせていた。



ドドドドドドドド……

アクモン「ムヒー!ムヒッヒーッ!!」


?「……何でかって?
こいつが言ってるぜ……テメーからは腐った血の臭いがプンプンするってな」


――ズズズズ……

上野「てめぇは……動物園の」

JOY「また、会ったな?蟹頭、昨日のサルカニ合戦の続きをしに来たぜ!」


大和久「……城嶋さん!?」


――バアアアァーーン!



JOY「よ……
やっぱり心配で来ちまったぜ」


中条「だけど、どうやって……」

JOY「簡単さ、赤色を伝って来たんだよ
……じゃ、この女は俺に任せて、君たちは先へ行くんだ」



中条「………わかりました。
大和久ッ!風呂戸ッ!行くぞ!」

大和久「え、いや……でも」

風呂戸「でもじゃねえよ!
俺たちはいづみさんを助けに来たんだろッ!」




中条と風呂戸に手を引かれ、大和久は建物へ向かって走り出す!

476 ◆R0wKkjl1to:2012/01/14(土) 20:31:07 ID:1lgOPkU2O
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……


御園「上野の奴……一体何をしている
三人も逃しているじゃあないか」


――……スッ


入り口に向けて疾走する三人に向けて御園のM・Jが腕を差し出すと、液体金属は無数の矢へと姿を変える。


御園「殺しはしない……ちょいと入院が必要にはなるがな」



――グォッ!


御園「ッ!?」



――バキィイイイッ!!



御園の意識が三人に向いた瞬間、鋼鉄の蹴りが放たれた


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


比留間「あなたの相手は私です。努々お忘れなきよう……!」


御園「……老いぼれが」



死角からの蹴りは、屈んだ状態から真っ直ぐ上に向けて放たれた。

金属化した超重量のつま先は、槍のごとき威力を有しており
それを受けた金属製の義手はバラバラに砕かれ、避けきれなかったその顔は下顎から耳の前辺りまでパックリと裂け鮮血が溢れ出している……


比留間「色々と……あなた方の事は調べさせていただきました。
あなたは一流の殺し屋だった、それが何故か7年前からパッタリと殺しをしなくなっていますね。
何故……と、聞きたい所ですが生憎この戦いには関係のない事です
それよりも重要なのはあなたの能力………

金属製の義手義足を使うあなたが、自身の能力でその手足が溶けないのは何故か……
その答えは『近すぎる金属は溶かす事が出来ない』
………違いますか?」


御園「…………」


ドドドドドドドドド……

477 ◆R0wKkjl1to:2012/01/14(土) 20:31:57 ID:1lgOPkU2O
上野「……このアタシを相手にたった三人だとォ〜!?
随分ナメられたもんじゃねえかオイッ!」


JOY「……三人?」


江藤「てめぇにゃ個人的な貸しがあるんでな……!」

橘「三対一が卑怯だなんて思わないわよね?
……勝負する?」


ゴゴゴゴゴゴゴ……!


上野「構わねえさ……
アタシの頭を馬鹿にしたテメェらは絶対に許さない……絶対にだァーーッ!!」


橘「その言質ッ!とったぞ!!
【ダウン・タウン】!」


――バアアアァァァンッ!


橘が叫ぶと同時に4人の立つ地面に無数のパネルが現れる!

上野「!」

JOY「こ、これはッ!?」



橘「ごめんなさい、城嶋さん……
でも、私達に考えがあるの」


D・T「ルールを説明します。
指定した色のパネルに電流が流れますので、プレイヤーは制限時間内に安全なパネルへと移動してください。
尚、今回は3対1の変則マッチです。どちらかが戦闘不能になるまで続けられます。途中離脱は認められません。
またプレイヤーへの直接攻撃、パネルを破壊しようとする行為はペナルティとなりますので注意して下さい
今回のパネルは赤白青の3色……初めの色は『白』です。
ゲームスタート。プレイヤーは速やかに移動して下さい」

各々が足下を確認すると
江藤のパネルのみが白。


江藤「……よっと」

――タッ……


上野の隣へと移動をした


江藤「へへ……どうだい、カニねえちゃん
隣に敵がいるってのに殴れない気分はよ?」

上野「…………ちっ」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

手を出すことはしなかったが、上野が頭にきている事は明らかだった。

髪は逆立ち、こめかみには青筋をひくつかせ、強く結んだ口には血を滲ませている。


D・T「ターン終了です。このターン、脱落者はありません
……次の色は『青』
プレイヤーは速やかに移動してください」

478 ◆R0wKkjl1to:2012/01/14(土) 20:33:01 ID:1lgOPkU2O
JOYと上野が移動……


江藤のはパネルは『赤』なので動く必要はなかったが、上野の隣に移動する。


JOY「……あれ?別に動かなくても良いんだよな?」

橘「えぇ、パネルの色が違うなら動かなくても大丈夫です」


ドドドドドドドド………


上野「て……めぇ、何のつもりだ?あ゛ぁ!?」


江藤「いや……大したことじゃねえんだがよ、ちょいと気になったんでな」

上野「あ?」

江藤「お前の頭に乗ってるのって『タラバガニ』?それとも『松葉蟹』?
まさか髪の毛だけに『毛蟹』って訳じゃあねーよな?」



江藤の目的は単純……『挑発』だった




上野「……!」

―ザワザワッ!

上野の髪の毛がまるで本物の蟹のようにざわめくと同時に、その剛拳は江藤の身体を捉えていた


――ボッギャアアァッ!!


江藤「う……ぐぁッ!?」


片手では受けられないと瞬時に判断し、片腕を介助にあて両腕でその攻撃を受けた江藤だが
その介助した腕ごとへし折られてしまう!



橘「あぁッ!……まさか……そんな両腕がッ!?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!


上野「ふぅ〜……少しだけ、スッキリしたわ。
あんたが何か企んで私を挑発してたのは分かってた……
そして能力を使いたいって事もね。
大方、パネルに何かして私を移動出来なくさせるつもりだったんでしょ?
これで私はペナルティーを受ける……その隙に何かしようっつっても、その腕じゃあ無理よねェーーッ!!」


D・T「プレイヤー4。ペナルティです、電撃が流れます」


――バヂヂィッ!!


江藤「……この江藤透さまを……!
見くびるんじゃあねぇぜ……

腕の一本や二本折られたくらいじゃ俺は止められねえ!
セクシャル・バイオレットッ!!」

S・B「バルバルアァーッ!」

479 ◆R0wKkjl1to:2012/01/14(土) 20:34:46 ID:1lgOPkU2O
上野「んなっ!?こいつ……折れた腕で……!
させる……ギャッ!?」

――バッヂヂィッ!!

江藤を阻止しようと動こうとした上野にペナルティの電撃が炸裂する!


上野「(一瞬目の前が真っ暗になった……
こいつは喰らい続けるとヤバい……!)」


――ズゴゴゴゴゴゴッ!!


上野のパネルが隆起し、あっと言う間にかなりの高さまでせり上がる。


上野「ちぃ!これが目的だった訳ね」


江藤「橘……!後は任せたぜ」

ドドドドドドドド……


JOY「なんて高さだ……軽く30mはある。
あれじゃあ降りるのは不可能だッ!」

橘「任せて……ッ!D・T!次のターンよ!」


D・T「次の色は『赤』です。プレイヤーは(ry」


ゴゴゴゴゴゴゴ……


江藤のパネルは赤。身体を引きずりながら隣の白へ

橘、JOY共に青。移動はしない

そして上野は……赤。


移動しようにも他の色のパネルは遙か下方である


江藤「大抵のゲームにはあるんだよな……ハメ技ってのはよぉ。
さしずめコイツは、風神拳からの即死コンボって奴だな」


上野「……ぷ
あはははははははははッ!!

まさかこの私がこの程度の高さから降りられないとでも思ってるの……?」


橘「え?」

JOY「……!」



上野「なめんじゃねえぞ!!

地べた這い回るミミズみてえなてめえらの常識と!捕食者の私の常識とは違うんだよッ!!
お前らには到底降りられない高さでも、私は違う!
私のC・Eにはそれだけのパワーがあるんだッ!」


――グッ!


飛び降りようと足に力を込める上野……

480 ◆R0wKkjl1to:2012/01/14(土) 20:35:52 ID:1lgOPkU2O
橘「まさかッ!本気で飛び降りるつもり!?」

江藤「馬鹿野郎〜ッ!?死ぬつもりかぁあああ!!」




JOY「……どういう偶然だろうな。
彼女の能力が色パネルの能力だった事も
あの女がいるパネルが赤だって事も
アクモンの能力が赤に潜るって事も……まるでご都合主義じゃあないか

2人とも慌てる事はないさ。
カニは猿と違って高い木からは降りられないからね」



――ガクッ!


上野「ッ!?」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!


上野の足は、パネルから離れず飛び立つ事は出来なかった……正確には足首からすっかりとパネルに埋まっていた為、飛び立てなかったのだ。


上野「な……!こ、これはッ!?」


JOY「アークティック・モンキーズ……

お前の靴を赤の中に引きずり込んだ。
これでお前はもう動けない」


――バビヂッィイイッ!!

上野「うぎゃッ!!」


上野の身体に電撃が流れ、嫌な臭いのする煙が上がる……


上野「て……めぇーーッ!!
ぶっ殺すッ!!」


JOY「……出来もしないことを言わない方が良いぜ?」


――ゴガゴガッ!!

スタンドを使い、むちゃくちゃにパネルを殴る上野
亀裂がパネルに入ると同時にD・Tが上野の頭上に現れる……

D・T「パネルの破壊行為はルール違反です。ペナルティーとして電撃が流れます」


――バヂヂヂィーッ!

上野「があぁッ!?」



JOY「ちなみに教えておくと、その赤パネルを砕いたらお前の足も粉々になっちまうぞ」


上野「……!く……そ……!」

橘「完全に動きを封じたわッ!」

江藤「へへ……ざまぁみやがれ」




上野は為す術無し……
移動を封じられ赤パネルが指定される度に電撃を喰らい続ける

481 ◆R0wKkjl1to:2012/01/14(土) 20:36:57 ID:1lgOPkU2O
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……



数分後……

そこには痛々しげな表情でパネル移動を繰り返す三人の姿があった


橘「……(普通なら二、三発もらっただけで戦闘不能のはずなのに……
もう15発は耐えてる……早く終わってよ)」


三人にとって、これは既に戦闘などではなく
ただ相手が倒れるまで傍観し続けるだけの作業にも感じられた。
電気椅子の刑に処された死刑囚を、死刑囚が死ぬまで見続けなければならないようなものだった。




上野「ぐはッ……!!
クソ○○○どもおぉおおッ!!
やってやるッ!ペナルティがなんだってんだ!このままなぶり殺しになる位なら……
やってやんよぉおおッ!!」





――バゴオオォオンッ!!!



三人「ッ!」


大きな破壊音が響くと、砕かれたパネルと共に上野が降ってくるのが見える。


江藤「ペナルティ覚悟でぶっ壊しやがった……!」


――バヂイィイイッ!!

空中でペナルティの放電が発生し、上野の身体を貫くが怯む事なく一直線に橘めがけて降りてくる……上野のその顔は狂気に歪んでいるように見えた


橘「きゃあッ!?」

JOY「足を捨てたか……敵ながら見事な根性だ」


江藤「セクシャル・バイオレット!!」


――ズゴオオォッ!!

残った腕でパネルを隆起させ、上野を迎撃する江藤


だが


――……スカッ


江藤「何ッ!?」


JOY「……虚像か。
破れかぶれに見えてキッチリネタを仕込んできやがる
だが、それでも届かない!」

482 ◆R0wKkjl1to:2012/01/14(土) 20:38:27 ID:1lgOPkU2O
A・M「ムヒーー!!」


――ドゴドゴォッ!

A・Mが降ってくる赤パネルの中から何もない空間を殴り付けると、肉と骨のぶつかる音が響く。


上野「ば……!何故私の居場所が……!」


ドドドドドドド……


JOY「お前にも仲良くはねえみたいだが仲間がいる……
仲良くないとは言え、仮にも同じ志をもった仲間だ。
その仲間の為に見逃すべきでない敵は?
大怪我をした男?その彼女?
……違うだろ、狙うとしたら無傷の俺だ」


江藤「……すげ」

橘「だけどこれだと城嶋さんが……!」


JOY「釈然としない試合運びだったが……

やっぱ、ゲームを終わらせるのはハメ技でも裏技でもなく!

大技で魅せて終わらせるもんだぜッ!

いくぞ!アークティック・モンキーズ!!」

A・M「ムッッヒャアアアアアアアーーッ!」


上野「うッ!?」


――ドゴゴゴゴガゴゴゴガゴゴゴゴゴゴガァッーーーっ!!


上野の周囲にある赤い破片……
四方八方から拳が繰り出され、重力と慣性に逆らってその身体を空中へ押し戻す
その拳は同時に、また別の破片を空中へ弾き飛ばし、そこから現れた腕がまた上野を殴る。


江藤「……!」

格闘ゲーム初心者の頃、乱入してきた熟達プレイヤーに
受け身を取ることすら許されず画面端で浮かされたままライフを削られていく自キャラの姿と上野の姿が江藤には重なって見えた。



JOY「オラアァーーッ!!」

――ドゴシャアアアァッ!!


最後の一撃が上野を地面へと叩きつけ、砂埃が舞う

483 ◆R0wKkjl1to:2012/01/14(土) 20:39:17 ID:1lgOPkU2O
ゴゴゴゴゴゴゴゴ………


D・T「プレイヤー3、ペナルティです」


――バヂイィイイイッ!!

JOY「ぐっはッ!!
こいつは……効くぜ、お前こんな電撃を一体何発耐えたんだよ……」


上野「……さぁ……ね、覚えてないわ」


橘「……!良かった、生きてた……」


ボロ雑巾のようになってピクリとも動かない上野だが、意識は失っていなかった


上野「私の負け……全身の骨がバッキバキなのか、指一本動かせないわ
さっさと……殺しなさい」


江藤「!」

橘「ッ!」

JOY「…………」


ゴゴゴゴゴゴゴ……


勝敗判定を済ませたD・Tが消えると、沈黙がのし掛かる……

やがてその沈黙に対抗するかのようにJOYが低く、ハッキリとした口調で言葉を発した。


JOY「……殺しはもうしないって決めてんだ。悪いな」

上野「……もう?何よソレ、まるで昔は殺しをしてたみたいな言いぐさね……」


JOY「……」

――グッ……


上野の問いかけに、JOYは無言で襟首をめくる。

そこには黒いハートにJが描かれたタトゥーが刻まれていた


上野「黒いハート……

……あぁ、アンタ阿部のところの……
成る程ね……この私がやられる訳だ」

JOY「やっぱりジョーカーはアンタだったか」


江藤「……あの、話が見えないんだが
何を2人だけで変な方向に話をもっていこうとしてるんで?」


JOY「あぁ、ゴメンゴメン。
昔、同じ職場だっただけだよ」

橘「はぁ……そうですか」

484 ◆R0wKkjl1to:2012/01/14(土) 20:40:05 ID:1lgOPkU2O
JOY「ま、そういう事だ……治療が必要なら良い医者を紹介するから電話してこい。
足は俺が離れれば元に戻るからな」

上野「……騙したのね。
ぶっ殺してやりたいけど今は無理だから覚えてなさいよ」


JOY「はいはい……
じゃ、江藤君、橘さん、帰ろうか」



橘「歩ける?」

江藤「腕が折れてるだけだッ!歩けるわ!」





その場から動くことが出来ない上野は三人を見送る形となる。




ゴゴゴゴゴゴゴゴ…………


上野「……甘いわ……甘すぎる。
その甘さが命取りになるって分からないのかしら………

ま、私も今は動けないから見逃すけど、次は負けないわよ」


?「……負けたって言うのに随分と清々しい顔をしてるじゃあないか?」


上野「……ッ!あ、あんた…… いつからそこに居た訳?
答えなさいよ……御子神ッ!」

御子神「その質問の答えは
たった今とも言えるし、さっき来たとも言えるな」



先ほどまで影も形もなかったこの男が、急に現れた。
勿論、上野は御子神が『そういう能力』の持ち主だとは知っていたが、詳細は知らないのでいざ自分がその能力にあてられてみると驚愕せざるを得なかった。


御子神「……彼らは頭数に入っていない。
いづみと学友達がいればそれで良いのだ」


――ザッ


御子神はそれだけ言い残し、足早に去っていく三人へと近づく……


上野「……!」

485 ◆R0wKkjl1to:2012/01/14(土) 20:43:35 ID:1lgOPkU2O
――ドゴオォッ!!

御子神「……
……ゴフッ!」


御子神の胸からC・Eの腕が現れる。

上野「あいつらを殺すのはアタシだあぁッ!邪魔すんじゃねーーッ!」


全くの不意打ち……

腕が引き抜かれると同時に御子神の身体はその場へ崩れ落ちる

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


上野「はぁ……はぁ……!」

御子神「精神が肉体を凌駕する事もあるのだな。
全身骨折しても動けるなんて、驚いたよ」


上野「……!確かに、たった今殺ったはずなのに……
……ッ!?」


口から溢れる血液と胸元に感じる嫌な温かさ


御子神「だが、胸に風穴が開いて生きていられる人間はいない」


上野「馬鹿……な……!」


御子神「……」

――ザッ

物言わぬ骸となり果てた上野には一瞥もくれず、御子神は三人へと近づいていく





ドドドドドドドドド……


御子神「……君たち、関係者以外はご退場願うよ」


JOY「あ、すいません。
もう帰る所なんで見逃して下さい」

江藤「大体俺らは出口に向かってんだろうが
目ン玉機能してんのか?あ?」

御子神「そういうことを言ってるんじゃあないんだよ……
私の計画に君たちは含まれていないんだ。

……つまり」


橘「………

………え?」





――ドクドクドク……

JOY「………」

江藤「…………」



ドドドドドドドド……!

橘の両脇には血を流した2人の身体が横たわっていた。

橘「え…?えぇ?」


御子神「脇役は舞台袖に引っ込んでいろ」


――ボゴッオォッ!!







ドドドドドドドド………


御子神「まさか上野が私に逆らうとは……準備はしていてもなかなか思うようにはならないか」








上野 【スタンド】クリスタル・エンパイア――死亡

JOY 【スタンド】アークティック・モンキーズ――死亡

江藤 透 【スタンド】セクシャル・バイオレット――死亡

橘 弥栄 【スタンド】ダウン・タウン――死亡




ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

486 ◆R0wKkjl1to:2012/01/14(土) 20:51:47 ID:1lgOPkU2O
投下完了です……

やりすぎちゃいましたm(_ _)m
台詞なしでリタイアさせるのは申し訳なさとやるせなさで一杯でした
アクモンもクリエンも(C・Eはちょっと台詞あるけど)セクシャルバイオレットもダウンタウンも大好きなのですが
(アクモンはWQ先生的な意味で
クリエンは蟹的な意味で
S・Bは個人的に
D・Tはイラスト的に)

なればこそ暴挙にでてみよう……と、思った次第でございます。本当にごめんなさい(>_<)


ちなみに上野とJOYの会話の回収はいたしませんwww
阿部さん言わせたかっただけです

487名無しのスタンド使い:2012/01/15(日) 10:13:11 ID:dKodIb.I0
投下乙です

これは予想外の展開……
特に江藤はマジで死ぬとは思わなかった

488 ◆Wpg/LGgJkM:2012/01/15(日) 16:02:00 ID:y5qBSaok0
コメントありがとうございます(^O^)

私にとっても予想外でしたwww
江藤大好きなのにやってしまった感がハンパない……

地味に取り返しがつかないかもしれないです。
当初彼らが死ぬ予定はなかったので

489 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 21:47:25 ID:I.EiqbPkO
あれ?


これはWWW


なんてこったw


三月頃に続きを投下したと思っていたら、投下なんてされてなかった。
いや、冗談とかじゃなくてマジですよ?
もしかして妄想だったのか、それとも夢だったのか……


おかしいなぁと、思いつつも投下しないと始まりません。
がんばりますww

490 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 21:49:27 ID:I.EiqbPkO


――ガキイィイインッ!!




金属と金属がぶつかる独特の音に御園が顔をしかめる。


御園「……ちッ、こう耳元で耳障りな音を立てられるのでは、たまったものじゃないな」

比留間「そうですか? 私にはそこまででもありませんが」


――ガキイィンッ!


御園「それは耳が遠くなってるだけだろうッ!」

比留間「そうとも言いますな」

―ガキュイィッ!!




一進一退の攻防に見えたが、実際は御園の方が押されていた。

比留間「フンッ……!」


――ボッ!

御園「く……!」


比留間の突きを首の皮一枚でかわす御園に余裕の表情はない。

今までの相手との勝手の違いに御園は戸惑っていた


動作の緩急が全くと言って良いほど読めない……

通常、戦闘行為を行う際にはどうしても力みが生じるもので、格闘技を修めていれば攻撃がある程度ではあるが予測出来る。
攻撃をする時、受ける時は息を止め、力を込める急

そうでない時は、脱力し身体を休めると共に相手に注意を払う緩

人間である以上力んだままでは戦い続けられない。どこかで休憩を挟まなければ、力尽き果ててしまうのだ。



御園「ぐ……ッ!」


しかし、比留間の戦い方はそれとは少し違っていた
緩に見えて急、急に見えて緩
フェイントを織り交ぜながら攻め立ててくる……


気を抜くとどこで急の一撃が飛んでくるか分からないため、結果として御園は比留間の攻撃を力んだ状態で避けなければいけなかった。



――ガキイィインッ!!

比留間「……そろそろ、決めさせてもらいますよ」

491 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 21:51:18 ID:I.EiqbPkO
御園「………!?」


比留間「聞こえていませんか、そうでしょうね……あれだけ大きな音が耳元で鳴っていては」


――バッ!


砂埃が御園の顔の辺りで舞う

御園「ぐあッ!目潰しとは姑息な……!」


比留間「姑息で結構。『勝てば良かろうなのだ』ですよッ!」

――ゴオッ!


生身の部分をめがけて、鋼鉄の拳が振り下ろされるッ!


勝った。

比留間はそう確信していた。
目も耳も効かない状態でこの一撃を避けられるはずもない。



――スパアァアッ!


比留間「……?」



――………ゴトッ



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


御園「 俺が『近すぎる金属を溶かせない』だなんて……
一言も言ってないぞ」


比留間「……ッ!」



目潰しの効果が不十分だったのだろうか、金属と化した右腕が、音を立てて地面に落ちていた。

そして、破壊され使い物にならなくなった筈の御園の義手は、その形を変え『剣』の体をなしていた……


御園「輝彩滑刀……
事前調査不足だったな」

比留間「……それがあなたの奥の手と言うわけですか」


御園「……」


比留間の問いかけに、御園が気付いた様子はない。


比留間「(どうやら耳はまだ聞こえてないようですね……で、あるならば、勝機はこちら側にッ!)」






一度、御園と距離をとり、残った腕で懐から何かを取り出す。


比留間「覚悟は宜しいですか?」


――ググッ……


目一杯力を込め、比留間は分かりやすく拳を作り上げる。


御園「……(次の攻撃、何か仕掛けてくる気か。
だが、俺のスタンドが奴に負ける道理はない)」



比留間「参りますッ!」


――ダッ!!

492 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 21:53:25 ID:I.EiqbPkO
先ほどまでとは打って変わって、非常に直線的で分かりやすく振りかぶり拳を突き出す比留間。


御園「フンッ!」


――スパアァッ!


気合い一閃、比留間の残された腕がくるくると宙を舞い
鈍く重い音を立てて、御園の足下に落ちる。


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ



御園「……一体何を考えているんだ?普通に考えれば分かるだろう?」


比留間「フフ……あなたを倒せるのなら腕の一本など惜しくもない」


――ズズズズズズ………


それだけ言って比留間の全身が金属に変わり始める。


御園「……?何と言ったんだ?
まぁ、全身を金属に変えたところで俺の輝彩滑刀に切れない物はない」


言いながら御園は腕の刀を構える。



比留間「理由は……知りませんが……あなたは切り落とした私の腕を……溶かそうとしなかった……
情けをかけて、後の治療を考えていたのならば……その甘さ。
一時的に奪われた聴力と合わせて……あなたの敗因です」


御園「……腕?」

何とか聞き取れた『腕』と言う単語に、御園は足下に落ちた比留間の腕を見る。


いつの間にかか金属化が解かれ、切り口からは血がしたたっていた……

ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド

比留間「……(切った腕を即座に溶かしていれば気づけたでしょう。
耳が聞こえていれば、拳の中の電子音にも気づけたでしょう……つまり、そういう事ですよ)」


御園「………!!」




――ドッゴオオオォオンッ!!


御園のすぐ足下で、比留間の拳に隠された『爆弾』が
爆弾が爆弾たるたった一つのその役目を忠実に果たした。

493 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 21:57:56 ID:I.EiqbPkO
御園「〜〜〜ッ………!!」





金属化を解き、御園に息がある事を確認し、比留間はゆっくりと立ち上がる。



比留間「……スタンド使いがスタンドだけで戦うとは限りません。
能力の優劣にこだわって、可能性を見落とした。
それがあなたの敗因です」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


比留間(リヴィン・オン・ア・プレイヤー) ○ VS 御園(メタル・ジャスティス) ×――再起不能









――ザッ……


踵を返し、議事堂へ歩み始める比留間に御園が問いかけた。


御園「殺さないのか……?」


比留間「……まさか意識があったとは驚きです。
私の目的はいづみ様の奪還ですからね、今は一秒でも早く彼らに追いつかねば。
……それに、私は過去に人を殺しすぎた。
だからもう、殺さないことに決めているんですよ」


御園「……そうか。行くのは勝手だが、中にはスタンド使いがひしめいているぞ……せいぜい気を付ける事だな」


比留間「……感謝します」


振り返らず、ごく短い謝辞を述べ比留間は歩き出す。






ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ……

494 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 21:59:17 ID:I.EiqbPkO
――バンッ!


中条「くっそ!鍵がかかってやがる!」


議事堂の入り口に据えられた大きな鉄製の門……

早々に行く手を阻まれ、中条は苛立ちを露わにする。


風呂戸「……下がってな。
トレンダ・ホーンッ!!」


雄牛の角から熱波が放たれ、鉄の扉がチョコレートの様に溶ける。


大和久「す、すごいよ!」

風呂戸「その口調気持ち悪いな……ほら行くぞ」

――ザッ……

議事堂エントランスホールに足を踏み入れる三人。
広々としたホールに人の気配は無く、不気味なほど静まりかえっていた。


辺りに注意を払いながら二階へつながる階段に足をかけた所で頭上から声がかかる。


「……そこから上に来るな。
万次郎、命を無駄にするんじゃねえ」


中条「!」


見上げると、そこには中条の兄と見知らぬ女の姿があった……

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


中条「あ……兄貴……!」


中条(兄)「頼むから帰ってくれ……
俺が何のためにコイツらに雇われてるか、分からなくなっちまう。
俺たちにはまとまった金が必要なんだよ……」


中条「知ってるさ。
親父の仕事が無くなっちまったんだろ?
母さんから聞いた……
兄貴がそんな心配する事じゃねえんだ。
俺だってバイトしてでも高校位は出るつもりだったし、親父も今、必死に仕事を探してんだ。
兄貴は出来が良かったから『自分が何とかしないと』って思ってんだろうけど……全然、心配なんかしなくて良いんだ。
本当に家族が大切なら、こんな馬鹿な事に荷担しないでもいいだろ?
もう少し家族を信用しろよッ!」


兄「やめろッ!上がってくるんじゃねえ!!」

――ダンッ!


その場から一段上へ中条が階段を登る……

495 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 22:00:52 ID:I.EiqbPkO
風呂戸「中条!兄貴なら話が通じるだろ?
ここは一つ目をつむってもらって……」



中条「いいや!俺は兄貴の傲慢さには常々嫌気がさしてたんだ!
丁度良い機会だ、今日をもって俺は兄貴から卒業するッ!!」

兄「………!」

ド ド ド ド ド ド ド ド ド ……


無言のうちにスタンドを発現させる中条(兄)と女。

ピリピリとした空気が場に流れる。


兄「そこの二人は先に行ったら良い。
俺は万次郎以外と戦うつもりはない」

風呂戸「へ?」

大和久「……」

女「ちょっと、勝手に決めないでくれるかしら?
私の相手がいなくなっちゃうでしょうが」



兄「だ、そうだ。
悪いね、やはり君たちを通すわけには…………?」


女「……どうしたのよ?」

兄「シッ……何か聞こえるぞ」

中条「……何が?」



――……………………………ラ

――………………………ラオラ


――……ラォラオラ……



どこか遠くから声のような音が聞こえてくる。

それはやがて、はっきりとした音声として認識出来るほどに近づいてきた





「オラォラオラオラオラララオラオラオラオラララァーーッ!」



――ボゴオオォンッ!!


壁が粉々に砕かれ、砂埃が舞い上がる!



?「ゲッホッ!ェフ!
だから扉から行こうって言ったのによぉー!
明日打ち合わせに着ていくスーツが汚れちまったじゃねえか!」

?「男が小さい事でウダウダ言わないで……
スーツなら社長から貸してもらえるように後で電話しとくわよ」



そして、砂埃の中から一組の男女が姿を現す……

496 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 22:02:45 ID:I.EiqbPkO
中条「わ……渡部さんに、上城さん
何で、壁から?」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


上城「何でって……
敵が想像しないような場所から侵入しなきゃ」


中条「あ……そうですか」


風呂戸「ぶっ飛んでんな……」
大和久「そうかい?僕は力強くて素敵だと思うけどな」



女「あらら……なんかまた侵入者が増えたわね。
だけど、これで退屈しないで済みそうッ!」

――ドンッ!


女は床を蹴ったかと思うと、驚くべき跳躍を見せる。
二階から飛んだとはいえ、吹き抜けの天井まで届くほどの高さである。


風呂戸「高いッ!」


女「その二人は通してあげるわ……!代わりにこいつらをグチャグチャにするから!
まずは女!てめーからだぁー!
『チャールズ・グットイヤー』!!」


――ギュン!


天井近くで回転し、水泳のターンのように天井を蹴った女は、そのまま矢のような速度で上城めがけて飛んでくるッ!

渡部「速いッ!」


一瞬で上城の背後に回る女。
だが、その行動を予見していたかのように強烈なバックブローがにやついた女の横っ面を捉えた


上城「オラアアァーッ!!」

――ドバチィーーンッ!


錐揉みしながら吹き飛ぶ女……

渡部「ブラボーッ!」


上城「……………?」



ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

497 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 22:06:08 ID:I.EiqbPkO
余裕の表情の渡部と対照的に上城は困惑の表情をみせる。


上城「手応えが……おかしい」


女「びっくりしたー……
あんたなかなかやるじゃない。
まさか今の動きについて来られるなんてただ者じゃな」

上城「オラァ!」

言い終わる前に、女の顔面をスタンドの拳が直撃する。


――グニャ……



上城「……あんた、『ゴム』かなんかで出来てる訳?」


女「当たりッ!私のスタンドはゴムで出来てるし、触れた物をゴムに出来る!
……固い物より柔らかい物の方が壊れない」


グニャグニャと顔面を修復させながら女が答える……


上城「あんた、名前は?」

女「私?私は加賀屋……加賀屋敬よッ!」

上城「そう……カガヤケイね。覚えておくわ」


加賀屋「はッ!覚えておくって?
笑わせないで!私に打撃は通用しないんだ、お前は私に負けるんだよ!!」


――ドヒュンッ!


鞭のようにしなる蹴りが上城の体を数メートル吹き飛ばす!


渡部「姉御ッ!?」


ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド……


上城「……大丈夫。渡部、あんたはそこの二人と先に行きなさい。
すぐに追いつくわ」

渡部「…………」


渡部の視線の先には大和久と風呂戸の姿。

渡部「……了解ッ!」



中条兄も加賀屋も彼らを追うことはせず、エントランスには
中条兄弟、加賀屋、上城の四人だけとなった。




ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


中条(兄)「万次郎、お前が友達のために動くのは分からないでもない……だが、そのために兄貴に牙を剥くのか?
俺はお前の為にやってるんだぞ」


中条「ちげぇよ……兄貴が自分勝手だからさ」





加賀屋「『すぐに追いつく』……なんてのは不可能ね。
アンタは私の暇つぶしの為に死ぬんだから」


上城「お生憎様……暇つぶしで死んでやれる程、私はヤワじゃあないわ」

498 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 22:07:41 ID:I.EiqbPkO
中条「オラオラオラオラオラ!」


触手がいくつかの腕を形作り、ラッシュを繰り出す

兄「……」



――ブシュウゥッ!!


中条「……ぐあッ!?」


眼前に兄の姿は無く、代わりに砕けた足場が見える……

万次郎の体からは血液が吹き出し、一瞬何が起きたか理解出来なかった。


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ……


兄「俺は今までお前とどんな喧嘩をしようが、お前に対して能力を使ったことが無かった……
だが、今日ばっかりは使わせてもらうぜ」


兄「今の俺の速度は音速にちょっと欠けるってとこだ。
おそらく限界の3割ってとこだが、お前『程度』ならこれで充分だ」

中条「……!」

――ブオンッ!

背後からの声に反応したM・T・Bの裏拳が空を切る……


兄「……今のでまた速度が5キロ上がったぞ。
何か別の手を考えた方が良い」


中条「こ……のッ!」








―――――――――――――――――――



加賀屋「ほらほらほらぁ〜ッ!
どうしたのよ?あなたさっきから受けてばっかりじゃないの!」

上城「…………」


――ドガドガドガドガガガッ!

ゴムの伸縮性を利用した変幻自在の攻撃に、上城は直撃こそ避けているが防戦一方である。
そして、それにはいくつかの理由があった

一つ、初めの攻撃を防御した際に両手をゴムに変えられていた。力の加減を誤った動きを行えば伸びた手足のゴムの力で体ごとぶっ飛んでしまう事が想像できた。

二つ、加賀屋が上城の射程距離無いに入るのは攻撃の手足だけ。
腕が普段通りなら捕まえるのは容易いが、今の上城の腕では上手く捉えられない。

そして三つ、最悪な事に両足もゴムに変えられてしまった。
地面に踏ん張ることの出来ない両足では立っている事すらままならない。

つまりは、今の状態で攻撃を受けきっている事自体、奇跡的であった……

499 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 22:09:18 ID:I.EiqbPkO
加賀屋「ほらほらほらほらあぁ〜ッ!どうしたのよぉ〜!」



上城「……ちっ、うっとおしいわね!」

加賀屋「うふふふふッ!
あぁ楽しいわ!あんたのその余裕の表情が絶望に変わるのが待ちきれないッ!!」


――ギュン!


加賀屋が大きく振りかぶると、その腕が長く、長く伸びる。

上城「何か来るッ!」


加賀屋「行くわよ、必殺〜……」



――ドギュウウンッ!


弾丸のような速度で伸びてくる加賀屋の拳。
だが、間一髪で上城はそれを避けた。

上城「うぉ……!危っないわね!」


通り過ぎた拳を見送り、加賀屋へ向かって振り返ると






すぐ目の前に加賀屋の姿。


――ドゴオォッ!!

上城「……ぐはッ!」

加賀屋「今の感触……もしかしてアバラいったかしらねぇ?」


ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド



初めから最初のパンチは囮であり、本命は 伸びきった腕が縮む力を利用しての体当たり……

衝突した瞬間から形を変え、衝撃の力を逃がさず対象へと伝えるゴムの特性を利用しての体当たりである。


上城「……オラオラアッ!」

反撃に、上城のスタンドがタイヤのような模様の入った加賀屋のスタンドを殴りつけるが、効果がない。


加賀屋「打撃は効かないって……言ったでしょうがああああぁ!!」


そのまま馬乗りになり、二、三発上城の顔面を殴りつける加賀屋!


上城「――うぐっ!」



加賀屋「アンタの顔や身体をゴムにはしないわよ?
このまま私に殴り殺されなッ!」

500 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 22:12:40 ID:I.EiqbPkO
――ムワァ……


中条のスタンド、M・T・Bの首もとの皮がめくれたかと思うと、辺りに何とも言えない臭気が漂いだす。


兄「感覚過敏ガスか……
息を吸わなければどうという事はないぞ、万次郎」


――ググッ……

兄のスタンドが低く構え、ダッシュスタートの構えをとる。


中条「分かってるさ、兄貴。
だけど、人間はずっと息を止めていられる訳じゃあない。
兄貴が息を吸った瞬間、俺の勝ちだ」


階段を背にして迎え撃つ構えの万次郎。



ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

兄「そうだな……だがそれは、お前が俺の息が切れるまで意識があればの話だッ!」



――ッドン!!


言い終わりと同時に、兄のアメフト選手の様なスタンドが地面を蹴る!


兄「オラオラオラオラオラオラオラオラオララオラララァ!」

中条「オ」


――ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴッシャアーーッ!!





一つの突きを繰り出す間もなく、万次郎の身体は宙を舞う。


時間にして一秒にも満たない間、無数の攻撃をその身体に浴び宙を舞った弟を掴み、兄のスタンドは無慈悲にも石で出来た階段に叩きつけた。



――ドグシャアーッ!


中条「ガフッ……!!
(お…おかしいッ!兄貴のスタンドは速く動けても、兄貴自身がそこまで速く動けないはずなのに……!
明らかに射程距離外だったのにここまで一緒に移動してきただと!?)」




ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ



兄「不思議だろうな……
俺のスタンド『タッチ・ダウン』の能力は物体を避ければ避ける程、速度が上がる能力だ。だが、速く動けるのはスタンドだけ……
その理由は、俺の肉体がその速度の衝撃についていけないからだが、それはコイツが解決してくれているんだ」

501 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 22:14:12 ID:I.EiqbPkO
言いながら、黒いコートをひるがえす兄。

兄「アラキニウムと呼ばれる鉱物に鉛を混ぜ込んだオートクチュールコートだ……値段は高級外車を買ってお釣りがくる程なんだぜ?
知っての通り、アラキニウムは他のどんな物質とも結合し、その特性を何乗にも高める」


中条「ごふっ…そんなん……知らねえし……」


兄「あ……知らないか。
まぁとにかく、このコートを着ていれば音速の壁をぶち破った時の衝撃のダメージを最小に抑えられるって訳さ」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


中条「……なるほどな。
どうりで……ガフッ!強い訳だ……
俺の負けだよ……兄貴」


兄「万次郎……分かってくれたんだな。
立てるか?かなり強く殴ったから、正直死んじまったかと冷や冷やしたんだぜ」

――スッ……

兄は中条に手を差し伸べ、中条がその手を掴む。


――グイッ!

兄「うおッ!?」


手を掴んだ瞬間、急に強い力で引っ張られ兄はバランスを崩す。





中条「ブワハハハハハハハッ!!
捕まえたぜぇ〜!このクソ兄貴がぁーーッ!!」


兄「こ……のッ!馬鹿弟がぁ〜!タッチ・ダ…」

中条「やってみろよッ!
何か勘違いしてるみたいだが、俺は今スタンド能力で痛みを消してるだけで、実際のHPは1なんだぜ!
てめーが音速で動いたり、殴ったりするだけで俺は『死ぬ』ぜッ!」


兄「うぬぅ……!卑怯なッ!」

中条「卑怯もくそもあるかッ!
兄貴にゃ、俺を殺す覚悟も度胸もねえのは分かってんだ!
それを逆手にとって『俺は俺を人質にとった』だけだ!」


兄「……ブラフだ!」

中条「……そう思うなら殴ってみろよ。
俺は逃げも隠れも……ガハッ!」


喋りながら、万次郎は鮮血を吐き出す。


兄「……!!」


中条「……ほらな、兄貴には出来ねぇ。
だから俺の勝ちだ」

502 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 22:16:22 ID:I.EiqbPkO
中条「FUCK OFFゥウオラオラオラオラォラオラオラ!!」


――ドゴドゴドゴドゴドゴドパアァアーッ!



拳打と白濁液のラッシュに兄の意識は飛びかかるが、辛うじて保つ事に成功していた……


――ザッ……

兄「ぐ……うぅ……」

中条「おら、兄貴。
服脱げ」


兄「ちょ……おまッ!
まさか実の兄のケツを狙って……」

中条「ち、違う!俺はホモじゃねえッ!
コート寄越せっての!」

兄「……何?コート?」

中条「すげぇコートなんだろ。
俺、たった今兄貴のパワー吸い取ったから、超スピード出せる訳よ。
それがないと折角の超スピードが無駄になっちまうんだわ」



兄「……そういう事か。
わかったよ、持ってけ。
俺はもう戦えない、お前の勝ちだ……万次郎」


中条「兄貴、あのさ……」

兄「ん?」



中条「兄貴が色々心配してくれるのも有り難いけど、学費位は自分で何とかするよ。
お年玉貯金もあるし、バイトすれば公立の学費なら何とかなるさ……いや、してみせるから
俺を信用してくれ」


兄「万次郎……」




「無駄無駄無駄無駄無駄ぁあーッ!」

「オラオラオラオラアァーッ!」



その時、二人の会話をかき消すほどの怒号がエントランスに響きわたる。



兄「あぁ〜……忘れてた。
万次郎、助けにいかなくて良いのか?
このままじゃ殴り殺されちゃうぜ?」


二人から少し離れた場所で、もつれ合い、殴り合う二つの影。

加賀屋が馬乗りのままメチャクチャに殴りつけている。
上城も負けじと下から殴り返してはいるが、ゴムの身体に衝撃は吸収されダメージを与えられていない。
どちらが不利なのかは遠目にも明らかだった……

503 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 22:17:57 ID:I.EiqbPkO
中条「無理。
今、瀕死だし。
女には俺の能力は効かないし。

それに、あの人がまだ諦めた顔をしてない」





ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ



上城「オラララァーッ!」


――ドドドドドムッ!


スタンドの拳が加賀屋の身体を打ち付ける。

上城「…………!」



加賀屋「…………くっくッ……


あはははははぁ〜!全ッ!然ッ!効かないわねぇ!

いい加減諦めてブッ死になぁーーッ!!」




上城「……あなたの事を思って忠告しとくけど、それ以上はやめた方が良い……
早くゴム化を解除した方が良いわよ?」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


加賀屋「…………は?
何言ってんだオメー?殴られすぎて頭おかしくなったか?

する訳ねーだろ!ボケェエッ!!」


――グオンッ!

体重を乗せた拳が上城の顔面めがけて振り下ろされる。




上城「やれやれ……
そう言うと思ったわ。
スター・ゲイザー!!」


――ドガッシイッ!


上城のスタンドがその拳を受け止め、掴んだまま加賀屋の腕の付け根へと手刀を振り下ろすッ!

加賀屋「無駄無駄あぁー!」

上城「ウオラアァーッ!!」











――ブッチィイイイイイッ!!


加賀屋「…………?」



――ビシャビシャビシャビシャ……


加賀屋「………え」


何が起きたのか分からないといった表情の加賀屋の視界には、肩口から吹き出す赤い噴水と
見慣れた腕を握っている敵のスタンドの姿があった。




加賀屋「ぃいいいいいいいいい………!!

痛ぎぃゃやあぁああああああああああああああーーッ!!?」



ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド

504 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 22:19:09 ID:I.EiqbPkO
上城「スター・ゲイザー……
あんたの身体を紫外線を放つように光らせた」

加賀屋「し……紫外線んッ!」


上城「 ゴムは紫外線によって劣化する……ちょいと時間がかかったせいで随分殴られたけど、これであんたは無敵じゃあないわね」



加賀屋「う……おぉッ!!」


――グオッ!


上城「無駄ァッ!」


――ガシッ!


加賀屋の苦し紛れに放った攻撃もあっさりと上城に掴まれてしまう……


上城「ウオラアアアァ……!!」

――グリグリグリグリ……!


掴んだ腕をそのまま捻る上城。
ゴムの弾力を失った加賀屋の腕は徐々に千切れはじめ、裂け目からは血が流れ出している。

加賀屋「ひぎッ!」


上城「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」


――ドゴドゴドゴドゴドゴドゴシャアーッ!!




加賀屋「ミギャーーッ!!」



加賀屋が回転しつつ、血液をまき散らしながら壁に叩きつけられると、上城のグニャグニャだった手足が元に戻る……



ド ド ド ド ド ド ド ド ド……



手を握ったり開いたりして、元に戻った四肢の感覚を一通り確かめた上城は吹っ飛んだ加賀屋の側へと歩みより、首根っこを掴んで無理矢理に立ち上がらせる。

上城「おら、立てよ。
私をぶっ殺すんだろ?やってみろよ」

加賀屋「う……
うあぁあああーッ!もう勘弁して下さィーい!

腕も千切れて血が止まらないし、これ以上やられたら死んじゃいますッ!!」



中条「……!やりすぎだッ!
マジで殺す気かよ……?」

兄「ッ……!!」



上城「はぁん……まだ喋れる余裕があるのか。

これはもう5、60発殴っとくべきかしら?」

505 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 22:22:28 ID:I.EiqbPkO
兄「そこまでにしてやってくれ」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


上城「…………」


中条の兄が、いつの間にか上城の後ろに回り、振り上げた拳を掴む。


兄「ここはあなたと万次郎の勝ちだ。
先に進んでもらって構わないし、何なら敵の能力について知ってる事は全て話す……
だから、頼む。
こいつの治療をさせてくれ」


加賀屋「中……条……」


上城「………」

兄「…………」


無言のまま、しばし見つめ合う二人……



上城「……OK、その目は嘘をついてない。
あんたの事、信じるわ」


兄「すまない……恩にきるよ」


中条「兄貴……」





千切れた加賀屋の腕を拾い、断面を合わせるようにして固定をすると、ペットボトルに入った液体をかける。

傷口からはシュウシュウと嫌な臭いのする煙が上がり加賀屋が苦悶の表情を浮かべるが、驚く事に千切れた腕がくっつきかけていた。


中条「すげぇ……何だこりゃ」
兄「とあるスタンド使いの能力だよ、傷を治す事が出来る。
と、言ってもこれだけじゃ完治はしないんだけどな」

上城「……もしかして、その液体ってヨダレかしら?」


兄「あぁ……よく知ってるな
もしかして知り合いか何か?」

上城「直接知ってる訳じゃないんだけど、昔ちょっとね」

中条「おえぇ〜……ヨダレなのか」

――バシャッ!

中条「ぶあッ!?汚ったねえ!いきなり何すんだよ!?」


兄「お前も傷に塗っておけ。
この先の敵は俺みたいに甘くないぞ」




各々が薬を傷に塗り、それを癒す。
一段落した所で、上城が口を開いた。


上城「さて……と、それじゃあ色々と聞かせてもらおうかしら?」


兄「……ああ」

中条「(臭っせぇ……)」




ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

506 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 22:23:29 ID:I.EiqbPkO
sage侵攻な上、中途半端ですが投下完了です(^O^)

セクターさん完結に触発されて投下致しましたwww
近いうちに一気読みする予定です!

私がこのスレをageるのはセクターさんにコメントしてからだッ!








しばらく書いてなかったら、誰が何をしているのか全然覚えてなくてヤバイです……

507名無しのスタンド使い:2012/05/10(木) 07:08:49 ID:t62HZDbk0
投下乙!

misonoさんが敗北……だと……
そして、久々のゴーナインシックスさんwww

508 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:24:15 ID:leoTJKYQO
>>507
ごめんなさい(>_<)レスくれてたのに気づきませんでした……
misonoさんは勝たせたかったけど、前作無双もした事だし退場していただきました。
死んでないのはまた別の話のどこかで出てくるかもしれないからですww



では投下していきます(^O^)

509 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:25:38 ID:leoTJKYQO
風呂戸と大和久、渡部の三人はエントランスの階段を登り、奥を目指す。

確信があるわけではないが、大事なものを隠すなら外から侵入してすぐの外周部分に隠す訳がないと相場は決まっているのだ。


風呂戸「……建物の中心を目指すぞッ!」


――バアンッ!

大きめの扉を開け放つと、そこは大会議場であった。
一が国会中継を乗っ取り、国に宣戦布告をしたその場所……

入り口から中央に向かってすり鉢のように低くなっており、部屋の中央には肉の玉座が構えられている。


風呂戸「……いねえか」

渡部「君、RPGの魔王じゃないんだから、いるわけないだろ」


「いや、案外いたりしてね?」

渡部「誰だッ!」


次の瞬間、玉座の影から男が姿を現す……


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


大和久「……え?
何であなたがここに……?」


風呂戸「…………!」


渡部「……誰だ?」





井口「そこのリーマンは初めましてだね。
僕は井口 優……『元』刑事だ」




大和久「な、何で……!」


井口「何でもなにも……僕は初めからアガペーの一員さ。
任務で刑事になって、警察の中に僕たちの驚異になる人物がいないか探っていただけだよ
あ、あと死体処理もやってるね」


大和久「角田さんは……」


井口「彼か……鉄球の技術は認めるがスタンドが使えないからねぇ……大した敵にはならないさ」


大和久「違う!あの人はあなたを慕って……」


井口「慕うぅ〜?
さっき僕は、警察の中に驚異がいるか調べてたって言ったよね?
話聞いてたかい?
相手が慕ってたら、こっちも応えなきゃならないのかい?」


大和久「……それでも」


――スッ……


言いかける大和久を風呂戸が制す。

風呂戸「分からないでもないが、落ち着け……。
お前は彼女を見つけだして来い、コイツは俺が相手をする」

510 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:26:54 ID:leoTJKYQO
井口「……たった1人で僕の相手が務まるとでも思っているのか?
断言しよう、君は僕に指一本触れられずに死ぬ」


――ズズズ……

言い終わると、井口の足下に溜まっていた水が蛇を形取る。


風呂戸「お前の能力は聞いているッ!
水が熱に勝てると思うなよ!?
トレンダ・ホーンッ!!」


T・H「ヴモオオオオオオオォッ!!」





ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド


互いにスタンドを発現させ、正面きっての真っ向勝負……
井口からは大和久と渡部が部屋から出るのが見えていたが、敢えて逃がした。
自分の能力であれば溶かすのに手間はかからないが、渡部の能力が分からない以上、敵を増やすのは得策ではないと判断したためだ。

井口「…………ん?」


だが、二人が出て行ったかと思えば、今度は別の1人が場内に入ってくる……
見覚えのある背格好、角刈りに決めた髪型……入ってきたのは角田であった。


井口「角田……?
フッ、噂をすれば影って奴だな。
どうやってここに来たか知らないが、警察も全く無能って訳ではなかったか」



風呂戸「よそ見してんじゃねーぜッ!!」



――カッ!


熱波がT・Hの角から井口へ、一直線に放たれる!


井口「……ふん、ヴリトラッ!」


――バジュウゥウウウッ!!


熱波を水の壁が防ぐと、大量の水蒸気が発生し、部屋の中を満たす……




風呂戸「水なんざ蒸発させてやれば良いだけだぜッ!」



井口「…………ふん」

511 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:27:55 ID:leoTJKYQO
角田「…………」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


井口「どうした角田。
僕に何か言いたいことでもあるのかな?」


井口の問いかけに、角田は答えない。
そして無言のまま、ポケットから鉄球を取り出し掌で回転させ始め、回転による空気の対流で周りの水蒸気を吹き飛ばす。


井口「……だんまりか。
まさかその鉄球を僕にぶつけるつもりなのか?」

角田「井口さん……私は……
私はあなたを助け出すために、血反吐を吐きながらも試練を越えて来ました。
だけどあなたは始めから御子神の手下だったんですか……」


井口「何故……?と、でも言うつもりかい?
答える義務はないな。僕にとって今重要なのは君が敵か味方かって事だ。
返答次第ではここで消えてもらう」


風呂戸「おいおいおいッ!
ちょっと待てぇーッ!!
俺は無視かよ!?てめーの相手はこの俺だろうが!」



ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド


井口「……ん?
いたのか……あぁ、すまなかったね。
それじゃ、一応言っておこうか
『ヴリトラは既に攻撃を終えている』」


風呂戸「……?」


――ツツー……


風呂戸の鼻から音も無く血が流れる。


風呂戸「ッ!
てめッ!一体何しやがったッ!?」



井口「別に何もしてないさ。
やったのは君だろう?
ヴリトラの同化した水を蒸発させて、蔓延させたのは君自身だ」

512 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:29:07 ID:leoTJKYQO
風呂戸「……ゴフッ!」

喉に違和感を感じ、せき込むと喉の奥から血が溢れてきていた……

井口「超強酸性の水蒸気だ……気管や肺が溶け始めての出血だな。
角田の様に風を起こして蒸気を遠ざけるか、私の様に水を操作して吸わないようにしなければ、鼻腔から侵入した蒸気は内側から溶かし始めるぞ……」



風呂戸「が…………ッ!
(あっけねえ……俺はこんなもんで終わりなのかよ……ッ!)」


――ガクッ

風呂戸は膝をつき、スタンドが薄くなっていく。


井口「ふふッ……あっけない!
実にあっけないよッ!」



――ズギュウンッ!

井口「ッ?」


井口が笑いかけたその時、角田の鉄球が風呂戸の身体へと向かう!

――ヒタァ……ッ


放たれた鉄球は、回転しながら吸いつくように風呂戸の身体へと張り付き、回転による風で水蒸気を払っていった


井口「角田……貴様」


角田「殺させません。私は市民の生命を守るのが使命なのです。警官なのです」


風呂戸「う……」

――ブルッ……

――ブルブル……ッ


風呂戸「(何だ……身体が……震えてるような妙な感覚が……)

……げほっ!」


咳と共に、血の混じったピンク色の水玉が風呂戸の口から吐き出される。



角田「回転による遠心力で気道内についた水だけを吹き飛ばした……
風呂戸くん、立てるかい?」


風呂戸「……あ、あぁ。
何とか……」


角田の肩を借り立ち上がる風呂戸。


井口「……フッ。
水を吐き出させるのにはちょいと驚かされたが、何の事はない。
くたばりぞこないのスタンド使いと鉄球しか使えない非スタンド使いが協力したところで……!

ヴリトラを直接ぶつけてやればそれで良いッ!!」

513 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:30:14 ID:leoTJKYQO
――ズゴゴゴゴゴ……!

井口の足下に溜まっていた水が巨大な蛇を形作る……!




井口「骨も残さず溶かしてやる」


――ズオォッ!!



言うやいなや、巨大な水の蛇は風呂戸と角田めがけて突進を始める!


角田「――速いッ!」


――グンッ!

風呂戸「うおッ!?」


突然真上に引っ張られるような感覚に驚きの声を風呂戸が発する。




――シュバアァアッ!

ほぼ同時に、二人の立っていた場所を水の蛇がよぎって行った。




井口「な……?なん……だと?」


井口の驚愕に、彼のスタンドも一時その動きを止める……



ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ……






井口が驚いたのは、攻撃を避けられたからではない。
それ位は予想していたし、次の手も当然考えていた。

しかし今、彼の目の前の光景は全くの想定外……いや、それどころか想像する事すら出来ない光景だった。




井口「……馬鹿な。人間にこんな真似が出来る訳がない。
出来るとしたらスタンド……
角田、お前まさか……!!」




角田「血反吐を吐くような壮絶な試練を乗り越えたと……言った筈です」



井口を見下ろすようにして角田が答える……



会議場は一階にあるが、その天井は吹き抜けになっており、
二階、三階を突き抜けて、四階相当の高さにガラス張りのアーチがある。その高さはおよそ20m。

角田は風呂戸を脇に抱え、そのガラスの窓枠に片腕で捕まり
井口を見下ろしていた。


つまり、男1人を抱えたままたったの一跳びで20mの跳躍を見せたのである

514 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:31:48 ID:leoTJKYQO
角田「お見せしましょう。これが私のスタンドです……

『ガリレオ・ガリレイ』ッ!!」


――ドギュルルルルルッ!!



井口「ッ!!」


角田が鉄球を天井に押し当てると、掴んでいる枠を中心としてみるみる大会議室の天井がよじれていき
ミチミチと音を立てながら千切られて行く……!


井口「角田……貴様そこまで回転の力を……ッ!!」


角田「鉄球の技術も波紋の技術もスタンドに近づく為の技術ッ!
鉄球の技術を高めた結果このスタンドが手に入ったのです!!」


――メキャメキャキャァーッ!

よじれに耐えられなくなった天井が派手な音を立てて落下を始める。

風呂戸「おっ、落ちるぞッ!」
角田「大丈夫です」


角田は慌てる様子もなく、すでにガラスの割れ落ちた枠の隙間から落下する天井の上へと移る。

角田「枠には触れないで下さい。『巻き込まれ』てしまいます」

風呂戸「巻き込まれる……?」
角田と風呂戸を乗せた天井は、落下しながら信じられないような早さでその形を変えて行く。

例えるならティッシュを中心からよじって、こよりを作り出すように
金属とコンクリートで出来た天井は、先端が鋭利に尖った『円錐』へと姿を変えた。



風呂戸「ッ!何だこれ!?」

角田「槍……いや、ドリルの方が格好いいな。
それより、君に頼みたい事がある」


角田は風呂戸に耳打ちをする……


風呂戸「……分かったけど。
だけどそれだとこっちもヤバいような……」

角田「説明している暇はない……だが大丈夫だ、信じてくれ」

風呂戸「……ま、いっぺん救われた命だ。
アンタに預けるぜ」

515 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:33:22 ID:leoTJKYQO
井口「何をごちゃごちゃとッ!
そいつを僕にぶつけるつもりなのだろう!?
やってみろ!たどり着く前に溶かしきってみせるッ!!」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ




回転のせいなのか、ゆっくりと落下する錐の先端を迎えるようにヴリトラが口を開く。
蛇特有の大きく開かれたその口の中に巨大な塊がズブズブと飲み込まれて行く……

だが蛇の腹が膨らむ事は無く、飲み込んだそばから天井を溶かしてしまっていた。


風呂戸「……!マジかよッ!?」


角田「……っ!」


――ズブズブズブ……!


嫌な臭いのする煙が立ち上り、風呂戸と角田の鼻をつく。


角田「まだあぁーーーッ!」


――ドギュンッ!


空中から、先ほどの錐とは対照的な驚く程の速さで鉄球が放たれる。


錐の広がりきった部分をヴリトラが飲み込もうとしているため、井口からは鉄球がどこを狙ったものかは分からない。



ヴリトラが錐を飲み込み終えた瞬間、井口の眼前には唐突に鉄球が現れる!


当たれば一撃必殺の重量と速度の鉄球……
しかし、井口は避けるどころか驚いた素振りすら見せなかった。



――ジュワワワァ……ッ!!



風呂戸「なにッ!?」



ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ



井口「くくッ……
貴様らの考えなんざお見通しさ。

巨大な落下物で私の視界を奪い、鉄球でトドメを刺す……
拙すぎて笑いを堪えるのに必死だったよ」



ヴリトラの尾が井口の体中を覆っている……

角田の放った鉄球は井口の体を叩く前に、強酸性の水により跡形もなく溶かされてしまっていた。


――……ブバッ!


それとほぼ同時に角田と風呂戸の鼻から血が吹き出す。
先ほどの煙を吸ってしまったのだ。

516 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:34:47 ID:leoTJKYQO
井口「これぞ最強の鎧……

貴様らの攻撃は僕には通用しない、勝負あり……僕の勝ちだ」



ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド


角田「そいつは……違いますよ。
今ので……今ので私たちの勝ちは決まったのです」


井口「……は?」




――ドズンッ!


奇妙な音を立てて井口が膝をつく……



井口「なんだ……!?
体……いや、水が……『重い』ッ!?」



角田「これがガリレオ・ガリレイの能力……!」


井口が原因を探ると、ヴリトラを組成している水にデジタルの時計のような装置が付いているに気付く。


井口「これは……まさか『重さ』かッ!」

角田「そう、先ほど『天井の重さを鉄球に移し』
その後、鉄球を介してあなたのスタンドに天井の重さを移しました」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


角田「更に言えば、重くしたのは水を構成する『水素』と『酸素』です……
これはどういう事かと言うと……」

井口「良い……分かってるさ。
『水蒸気爆発』を狙ってるんだろ?
君が鉄球を投げ、そいつがソレを溶かす……
溶けた鉄球が水に触れた瞬間、ドカンだ。
そして重くなった水素らは通常と違って上に逃げない。
爆風はいくらかいくだろうが、『軽く』なった君たちにとっては大した問題じゃあない訳だ」

517 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:36:06 ID:leoTJKYQO
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


井口「だが……それでも僕は、負けを認める訳にはいかない!
今更自分だけが、みっともなく命乞いできるかッ!」



――ググッ……グッ……!


重みで動きを封じられたヴリトラがゆっくりと鎌首を持ち上げる。



角田「な……!
ここに来てパワーが上がったッ!?」


井口「俺は無関係の人間を数え切れないほど殺した!
今更後には退けないのだッ!!」


――ズオォオオオ……!

ゆっくりではあるが、ヴリトラが角田と風呂戸をめがけて飛翔しはじめる……


角田「井口……さんッ!」


角田の鉄球を持つ手が震える……

角田「うおおぉーッ!」


必死の叫び声をあげるが、その手は鉄球を離そうとはしなかった。



――ガシッ!


角田「ッ!」


不意に、震える腕を掴まれる角田。
腕を掴んだのは風呂戸であった……


ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド

518 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:36:52 ID:leoTJKYQO
風呂戸「おっさん……
あんたの気持ちは分かるつもりだ。
尊敬出来る上司だったみたいだしな……

何か理由がある筈だって、そんなのは俺だって思ってる。


だが、アイツは今、明確に、ハッキリと俺たちの敵だと宣言してるんだ。
もしアイツに子供がいて、その子供の命を助ける為にいるんだとして

……それでも倒さなきゃいけない」


角田「……!」


風呂戸「腹を括るんだ……!
その鉄球を落とすだけだぜ。
後は俺がやる……」




ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ



角田の震えはいつの間にか止まり……ゆっくりとその手から鉄球がこぼれ落ちた。



風呂戸「おおおおおおおおッ!!

トレンダ・ホーンッ!!


【ヒィイイイイト・ウェイヴ】ッッ!!」



――カッ!


雄牛の両角が赤く輝き、強烈な熱波が放射される。


落下する鉄球を熱波が覆うと、鉄球は赤熱した金属の滴となって登り来る水の中へと落ちる。

519 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:38:08 ID:leoTJKYQO
――ズズズズ……


中条「……?地震か?」


建物が大きく揺れ、天井からパラパラと粉が落ちてくる。


上城「……いや、これは爆発ね。
この建物内で起こってる……
もしかすると崩壊するかもしれないわ」



中条「やばいな。兄貴、自力で出られるか?」


兄「……何とかな。加賀屋を背負っててもいけるだろ」




おぼつかない足取りながら、加賀屋を背負い立ち上がる
中条達に背を向け、歩き出す……



兄「……ところで、上城さん」

背を向けたまま呟くように中条(兄)は言葉を発する。

上城「何かしら?」


兄「『時を止められる』って、本当ですか?」


中条「え?何それすごい」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


上城「今は……無理、止められないわ。
前に止められたのは、母のスタンドに【時間を遅くする】能力があったからよ」


兄「……だとするなら、あの男には勝てないですよ。
あいつは……御子神仁は化け物です。
体験した限りあの能力は
【過去を書き換える】能力と言えると思います。
格が違うとかではなく、次元が違う」


上城「過去を書き換える……
それはどの位前まで?」

兄「さぁ……多分、秒単位だと思いますが」


上城「そうよね、年単位で出来るならこんな事はしないか……」

中条「……?」


兄「とにかく、時間を止められないならばあの男には勝てないです」


上城「逃げろ。とは言わないのね」


兄「ははっ……、無駄だって分かってますからね。
なぁ、万次郎」

中条「ん?」


兄「御子神と戦っても勝てない。
だが、世の中に【絶対】なんて事は存在しない
だから可能性にかけろ。

【絶対】勝って、生きて帰って来い」


中条「……あぁ、まかせときな兄貴。
俺は約束を【絶対】に守る男だぜ」




ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

520 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:39:10 ID:leoTJKYQO
上城「渡部達はこっちに向かったわよね……」


中条「多分、そうですね。
あッ!あの扉!すげえ勢いでぶっこわれてますよ!
しかも何か焦げてるし。あそこで爆発があったんすかね?」

中条と上城は、中条の兄と加賀屋の脱出を見届けたあと
先に進んだ渡部、風呂戸、大和久を追って二階へやって来た。



――バカァンッ!

扉を吹き飛ばし、中へ入る二人。

そこは先ほどまで風呂戸達が戦っていた、大会議室……
と、言っても中にあった物は爆発で吹き飛んでしまっており、そこにはたった一つの物しか残ってはいなかった。

部屋の中央、おそらくは爆心地に真っ黒い何かが落ちている。


上城「………」

中条「……?それ、何ですか?」


上城「……人の腕、それも両腕。
アラキニウム生地の燃えカスがあるわ、熱に強いアラキニウムが燃えるなんてかなりの威力よ。
腕の持ち主はとっくに燃え尽きてるわね」

中条「げ……ッ、じゃあ人がいたって事ですか?」


上城「見て……何かを守るような形に握られてるわ。
ちょっと剥がしてみましょう」

中条「うひぃ〜……俺、あんまりそういうのは得意じゃないんですけど」

尻込みする中条に構わず、上城はベリベリと燃えカスやら指やらを剥がす。


上城「……あった。
守りたかったのはこれね」

そう言って差し出して見せたのは同じデザインの大小二つの指輪……


中条「これは……結婚指輪?
二つって事は、奥さんか旦那さんを亡くした人?」


上城「でしょうね。
ま、これで夫婦二人同じ場所に行けたって訳ね」


そう言って指輪を握り込むと、二つの指輪が星のようにキラキラと瞬き始める


上城「……ッラアアァァァアッ!!」

521 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:41:23 ID:leoTJKYQO
投げられた二つの指輪は、流星のように尾を引きながら空高く登っていく。

壊れた天井から差し込む夏に近い強烈な日差しの中でもハッキリと見える程、二つの光は輝いていた。





やがて、その輝きがすっかりと失せると、上城がゆっくりと振り向く……


上城「さ……いきましょう。
目的地はここじゃあないわ」



中条「あ……はい」




ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ……




本体】風呂戸 十郎
スタンド】トレンダ・ホーン
……生死不明(リタイア)

本体】角田
スタンド】ガリレオ・ガリレイ
……生死不明(リタイア)


本体】井口
スタンド】ヴリトラ
……死亡

522 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:56:40 ID:leoTJKYQO
投下完了です(^O^)
駆け足気味です、本当は二話かけての所をカットして一話にしちゃいました

そして井口の動機もカットされてしまいました。
彼が爆発から守った二つの指輪と関係があるという事だけです


実際、自分が命をかけて戦う事になったら敵の戦う意味なんて関係ないなぁ……などと思いまして、大幅にカットwww

読者の皆様のご想像にお任せしよう、と。




それでこの間、ワールズエンド・ガールフレンドの単発を書いてみました。

【文章にしなくても伝わる】ってのが出来るのかな、と思いまして……また、そうした場合、読後感はどうなるのかなって。
あまり抽象的な事ばっかりでもいけないし、
この前の単発くらいが丁度良いか、簡単位ではないかと個人的には思っています。


皆様のご感想、又、参考になりそうな本など知っていましたら教えて下さいm(_ _)mよろしくお願いします


長文スイマセンorz

523名無しのスタンド使い:2012/07/03(火) 00:10:15 ID:OCVCZVyQ0
乙!!
指輪輝かせて飛ばすところの描写が好きだなあ
しかし遥さんの安定感はやっぱベテランやでぇ

524名無しのスタンド使い:2012/07/03(火) 11:26:43 ID:uXgDMwzo0
投下乙!
あえて想像の余地残すってのもいいね!

525 ◆R0wKkjl1to:2012/07/23(月) 22:38:32 ID:ioSAYOKcO
コメントありがとうございます(^O^)

>>523
たまには戦闘に関係ない使い方を……なんて思いましたww
作中設定で24ですからね……
子供の1人でもいたって良い年齢ですww

>>524
インセプションやアイランド的な終わり方ってなんか良いですよねww どっちなんだろう?って話をいつか考えたいです

526 ◆R0wKkjl1to:2012/07/23(月) 22:39:52 ID:ioSAYOKcO
上城「順番でいくと次はこの部屋ね……」


そこは大会議室から少し離れた控え室のような場所である。

入り口ドアを挟む形で、壁に背をつける二人……


上城「1、2の3でドアを蹴破るわよ……
1……


2の……


さ」



――バガアァアン!!


中条「ッ!?」


上城がドアを蹴破る前に、内側から吹っ飛んできた何かによりドアが破壊される……!

上城「……!
どうやら、当たりみたいね」



ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


扉をぶち破って飛び出してきたのは……先に進んだはずの渡部だった。
そして、部屋の中には



大和久「が……っ!」


胸ぐらを掴まれ、高く持ち上げられたまま暴れる大和久の姿。

持ち上げているのは、いづみの父【一 九十九】本人である……


中条「………!

てンめえぇぇぇえッ!!
何してくれてんだコラァッ!」


――ドバババババババアァーッ!!


上城が動くよりも早く、中条は一に飛びかかり、触手拳のラッシュを繰り出す……

しかし



一「フフ……頭に血が上るのが早いのか、先手必勝を考えているのか知らんが、まだ甘い」



――ガバッ!


中条「ッ!」


一は吊り上げた大和久をそのまま中条と自分の間に移動させた……


それはつまり、大和久を盾にした形になる。


中条「くッ!」


――ドゴオッ!

527 ◆R0wKkjl1to:2012/07/23(月) 22:41:32 ID:ioSAYOKcO
寸止めに成功するが、手痛い反撃をみぞおちに受け悶絶する中条……


一「これで全員か……?」


中条「うぇッ!……ぜ、全員だぁ?」

上城「……!」


薬「江藤 透、城嶋 丈威、橘 弥栄……
こいつらは死亡確認が取れてる。
後は風呂戸 十郎、それと刑事の角田。
この二人は生死不明だが、あの爆発だ……生きてても頭数には入らないだろうな」


そう言いながら薬売りが姿を現す……
その右腕にはビデオカメラ、左腕にはいづみを抱えていた。


中条「……ビデオカメラ?
いや、それより今何て言った?
……三人が死んだ?」

上城「あんたは……ッ!」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

薬「いよぉ……久しぶりだな?
予想通り、イイ女になってんじゃねえか」



中条「うるせえ黙れッ!
それより今なんつった!?」


一「聞こえて無かったのか?
君らのお仲間は『死んだ』のだよ」


中条「………!!
てめええええーッ!!M・T・B!!」


一「ッ!?」


一が想像していたよりも速く。
そして鋭く。

中条のスタンドが一の顎を【文字通り】打ち抜く……!


――ドビチャァーッ!


そう、文字通り。

打ち抜かれた顎は、周りの皮膚と肉を引き連れて壁に激突した。



一「…………?
フッ!ビャバャヒャヒャヒャ!ア!ヒャハャッヒッ!!」

一は一瞬、目を丸くした後
ぶっ飛んだ顎も溢れ出る血液も気にする素振りすらなく笑い出す……!

顎が無い男が高笑いをしているという、不気味この上ない風景だったが、中条も上城もその男から決して目を離さなかった。

528 ◆R0wKkjl1to:2012/07/23(月) 22:42:57 ID:ioSAYOKcO
一「いやはや!これは素晴らしい……
今のスピードは君の兄さんの能力かね?吸い取ったんだろう?
それともキレると強くなるタイプなのか?」


中条「え?」

上城「……これがッ!」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

中条が吹き飛ばした一の顎は、何事もなかったかのようにくっついていた……


いや、実際に何もなかったのだ。



一「これが俺の能力だ……
10秒前の過去を現在に被せるッ!

今のは、回避できず殴られた過去に回避して殴られなかった過去を被せた訳だな。
どうして回避出来たかって?
攻撃される事が分かっていれば避ける事など造作も無いのさッ!」



上城「ペラペラと良く喋る口ね。
顎が無い方が男前だったわよ?」


一「まぁそう言うな。
これから、君たちと俺とで対戦するんだ……
俺の能力を知らないと勝負にならないだろ?」


上城「勝負……?」


薬「あぁ、勝負だぜ。
このオッサン対お前ら全員のな。
そしてその様子は、俺がこのカメラで全国に向けて放送する」


中条「何が目的だ?国家転覆とは関係ないじゃねえか……」


一「無いさ。
だが、君たちは自衛隊さえ突破出来なかった我々の防衛線を越えてここまでやって来た……

その君たちを殺す事で、逆らっても無駄だと全国に知らしめるのさ」



ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


一「ほら、返すぞ」


乱暴に放り投げられた大和久を中条がスタンドで受け止める。


中条「大和久……!大丈夫か?」

大和久「……な、何とか……」

上城「渡部、いつまで寝てるつもり?」

渡部「イテテ……いや、起きてましたけどね?
口を挟むタイミングを逃しちゃって」





薬「勝負は30分後、お前ら四人、こっちは一人。
逃げるなら勝手だが、この娘の命はなくなると思え」

529 ◆R0wKkjl1to:2012/07/23(月) 22:43:59 ID:ioSAYOKcO
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


その後、別室へ通された四人の前には白衣を来た若い女性……いや、どう見ても中学生にしか見えない少女が待ち受けていた。


少女「みなさんはじめまして。
これから最終決戦へ赴くみなさんに、出来る限りの【治療】を施させていただきます」


中条「はぁ?治療だ?」

少女「はい、治療です。
ほらゲームとかだと、ラスボスの前に回復ポイントがあるじゃないですか。
それと同じです。
ま、ここにセーブポイントは無いんですけどね」


ニッコリと満面の笑みを浮かべる少女。

中条「……嘘くせえな」


上城「いや、やってもらいましょう。
……彼から」


上城はそう言って大和久を指す。


中条「いや……確かに大和久が一番ダメージを受けてますけど。
もしかしたら罠かも……」

上城「だからこそよ。
彼は今、スタンドを使えない……つまり、一との対決では役に立たない。
言い方を変えるなら【今、この中で一番死んでも構わない人間】なの」


その言葉を聞いた時、万次郎は頭の中で血液が沸騰したかのような感覚に陥いる。



――バゴオッ!


次の瞬間粉々に砕かれた机が宙を舞った……


中条「…………!」


目を充血させ、上城を睨みつける万次郎の拳からは血がポタポタと滴り落ちる。


中条「……あんたの!
言いたい事は分かる……!
だけどその言い方は……ッ!!」


大和久「……僕なら大丈夫さ、中条くん。
上城さんの言うとおりだ。
少しでも多くの人が生き残れるようにするにはそれが一番なんだ」


中条「大和久……」


大和久はそう言って、ふらふらと立ち上がり、少女の側へ近づく。


少女「話はついたみたいですね。
時間もあまりないですから、早速始めましょう

【ゴー・ナイン・シックスさん】!お願いしゃーッす!!」

530 ◆R0wKkjl1to:2012/07/23(月) 22:45:18 ID:ioSAYOKcO
596「ウシャアァーッ!
……小娘ェー!お願いしゃーすッテ何ジャこらッ!?
あ!?アンマシ調子コイテット噛ミ殺スゾ!?」

少女「あはは……ごめんなさい
ほら、それより早く治療してあげないと……」

596「……ちっ、ンナ事イチイチ言ワレナクテモ分カッテンヨ……
今、あいつヲ止メラレルノハ、こいつラシカイネーンダロ?」


少女は何も言わず、ただコクリと頷く。

596「シャーナイワ、今回ハ大目ニ見トイテヤル。
……デ?最初ハドイツナンダイ?」


大和久「……僕だ」

596「うほっ!いい男!
オネエサンガ、ソノ怪我治シテアゲルワ……イラッシャイ」

大和久「(何か間違ってるような気がするけど……まぁ、この際触れないでおこう)……はい」


釈然としない顔でゴー・ナイン・シックスさんと呼ばれるスタンドに近づく大和久……


少女から飛び出したこのスタンドは巨大な顔のみという風変わりな風体であった。

色気たっぷりの大きな大きな唇がテカテカと光を放つ
果たしてこれはグロスなのか
それともヨダレなのか……


596「イタダキマァ〜ッス」


――ブヂュルルルーッ!

大和久「ぐあぁああッ!?」


突然、ゴー・ナイン・シックスさんの口の中へと吸い込まれた大和久の体をヨダレと舌が弄ぶ……


大和久「ぬわーーーーーー!」

531 ◆R0wKkjl1to:2012/07/23(月) 22:46:29 ID:ioSAYOKcO
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


いづみ「……はっ!
あれ?ここどこ……?」


薬「よぉ、目ェ覚めたかよ?」

いづみ「あんたッ!アタシをさらってどうするつもり!?
比留間は!?礼二はどこッ!?」


一「いづみ、彼らは大丈夫だ。
無事でいるよ」


いづみ「あれ?お父さん……

いや、違う……!あなたは誰!?」


目の前にいる男は、どう見ても自分の父【一 九十九】である……
立ち居振る舞いから話し方、雰囲気までもが完璧に父のそれであったが、今、目の前にいるこの男とは【魂の波長】が合わない事をいづみは感じ取っていた。


一「……まいったな。
まさか一瞬で見破られるなんて、予想外だ」

薬「俺には良く分からねえけど、【家族】ってそういうもんなんじゃねえの?」


一「家族……か」

いづみ「おいおい、無視してんじゃないわよッ!
あんたが誰なのか答えなさいッ!
さもないと……【キャッツ・グローブ】!!」


キャ「でっしいぃいいいッッ!!」


――バアァーンッ!


いづみの体からキャッツが飛び出し、そのまま一へ飛びかかる!

いづみ「キャッツ!コードテイルよ!」


キャ「でしッ!」


――グリンッ!


一「うおッ!?」


鈍重そうな体躯であるにも関わらず、空中で一回転……

そのまま、縦の遠心力を利用した強烈な尻尾の一撃が、一の首を打った!


いづみ「見たかっ!」

一「ぐッ……!」


薬「……(なかなかやるじゃねえか)」

532 ◆R0wKkjl1to:2012/07/23(月) 22:48:14 ID:ioSAYOKcO
「フンッ!」

――ドグシャアァー!


一のスタンドの拳が、キャッツ・グローブの顔面にめり込む……

キャ「でじいぃいいーッ!
痛いでし!痛いでしッ!」


一「……残り8秒。楽しませてもらおう。

オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァアーッ!!」



――ドゴドゴドゴドゴドゴドゴ……ッ!


無慈悲に振り下ろされ続ける鉄槌に、キャッツ・グローブの顔面は原型を留めない程に変形し、それに応じて本体であるいづみの顔もみるみる腫れ上がっていく……


キャ「やめ……ッ!や……でし!
………で

……や

………

…………………」


殴られ続けるうちにキャッツ・グローブの存在が薄くなっていく。

一「オラアァー!」


――ドグシャアァアー!!


最後の一撃は、キャッツには当たらず床を砕く
キャッツ・グローブはすっかり消え失せてしまっていた。



一「んー……死んでしまったか?
後2秒残っていたんだがな」


いづみ「……ごぼっ」


いづみは言葉を発する事すら出来ず、ただ血の塊を口から吐き出した



ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ






一 いづみ
【スタンド】キャッツ・グローブ
――脳挫傷により死亡(リタイア)













ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

533 ◆R0wKkjl1to:2012/07/23(月) 22:49:51 ID:ioSAYOKcO
――ドゴオォッ!

キャ「でしぃっ!?」


次の瞬間、キャッツ・グローブは首根っこを掴まれ床に叩きつけられる。


いづみ「がはッ……!?」


一「気乗りはしないが……少々、教育が必要だな」

一の首には攻撃を受けた痕跡は無い

いづみ「やっ……ぱり……!
その能力は、父さんとは違う……ッ!!」


薬「おいやめろッ!計画と違うだろうが!」


一「安心しろ……この娘には傷一つ付けん。
二度と逆らう気も起こせないくらい、お仕置きをするだけさ」

いづみ「……!何を」


一「フンッ!」

――ドグシャアァー!


一のスタンドの拳が、キャッツ・グローブの顔面にめり込む……

キャ「でじいぃいいーッ!
痛いでし!痛いでしッ!」


一「……残り8秒。楽しませてもらおう。

オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァアーッ!!」



――ドゴドゴドゴドゴドゴドゴ……ッ!


無慈悲に振り下ろされ続ける鉄槌に、キャッツ・グローブの顔面は原型を留めない程に変形し、それに応じて本体であるいづみの顔もみるみる腫れ上がっていく……


キャ「やめ……ッ!や……でし!
………で

……や

………

…………………」


殴られ続けるうちにキャッツ・グローブの存在が薄くなっていく。

一「オラアァー!」


――ドグシャアァアー!!


最後の一撃は、キャッツには当たらず床を砕く
キャッツ・グローブはすっかり消え失せてしまっていた。



一「んー……死んでしまったか?
後2秒残っていたんだがな」


いづみ「……ごぼっ」


いづみは言葉を発する事すら出来ず、ただ血の塊を口から吐き出した



ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ






一 いづみ
【スタンド】キャッツ・グローブ
――脳挫傷により死亡(リタイア)

534 ◆R0wKkjl1to:2012/07/23(月) 22:51:45 ID:ioSAYOKcO
いづみ「はッ……!」


一「どうだったかな?なかなか貴重な体験だったと思うが……」


スタンドは抑えつけられているが、いづみの体には傷一つ付いていなかった。


いづみ「……!」


一を睨みつけるいづみだが、その顔は蒼白く、手足は小刻みに震えていた。

一の能力によっていづみの死はなかった事になった……だが、魂に刻み込まれた傷はなかった事にはなっていないのだ。


薬「……そのへんで止めとけ。
精神が死んじまう」


一「ふむ。それもそうだな」


――パッ……

拘束が緩まるとキャッツ・グローブはいづみの背中にそそくさと身を隠す

キャ「い……今のは何なんでしかッ!?
ぼこぼこ殴られて死んだと思ったのに、気が付いたら怪我一つなく抑えられていた……
催眠術だとか」

いづみ「うるさい黙れ」

キャ「………」


薬「それだけ言えるなら精神は大丈夫そうだな。

まったく、大した精神力だぜ
……お、そろそろ時間だ」



薬売りが時計に目をやるのとほぼ同時に、部屋の扉が開く。


――ガチャ……



ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド






中条「待たせたな……!」

大和久「一さんを返してもらう」

上城「その娘を取り返して、その後アンタの持つ『矢』を破壊させてもらうわ」

渡部「……ええい!ままよッ!」




ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド


一「来たか……ちょうど体も暖まって来たところだ
さっそく始めようか……!


四人まとめてかかってこい」

535 ◆R0wKkjl1to:2012/07/23(月) 22:53:55 ID:ioSAYOKcO
――コンコン……

管尾「越智先輩、起きてますか?」


管尾が病室へ入ると、ベッドから些かダルそうな様子の越智が顔を向ける。


越智「あぁ……君は、管尾仁……美ちゃんだね」


管尾「大丈夫ですか?顔色が良くないですけど」

越智「うん……まぁ、具合は良くないね」

そう言って床に視線を落とす越智。

管尾「……?」


越智の視線の先にはバランスボール程の大きさに膨れ上がり、蛹のようにカチカチに固まったハロー・ナスティーが居た。


越智「……(HNがこんなになるまで噂を喰ってもまだ実行されない……
改変するにはどれだけ必要なんだ?)」


管尾「先輩、ネット見てますか?」


越智「え?……あ、うん。見てるよ。

テロリスト集団が自衛隊の駐屯地はおろか米軍基地まで制圧したってね。
警察は市民の暴動を抑えるのに精一杯だし……これが日本オワタってやつかな?」

管尾「ふふっ、オワタって懐かしいですね。
それより……ちょっと見ていただきたいサイトがあるんですけど」

越智「……」


管尾はおもむろにモバイルPCを取り出し、とあるサイトを表示して越智へ向ける……


管尾「2chにあるニュー速VIPです。
ここの『一を倒せる奴らの名前』ってスレを見て下さい」


越智「あぁ、それか……
そこに『彼ら』の名前と情報が載ってるよね
バラしちゃうけど、それを最初に書き込んだのは僕さ……
これが現実になれば一を倒せる……!」


――ポロ……ッ


唐突に、管尾の眼から涙がこぼれる

越智「え!?何?どうしたの?」


管尾「せ……先輩がvipperだったなんて、嬉しくて……!
学校でも話が出来る人がいなくて……」

越智「いや、たまたま人が多そうだったのがVIPで、僕はどちらかと言うと文学……」

管尾「ちなみにこれが私の建てたスレです、デュフwww」

越智「(うわー……、引くわぁー)」



ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ……

536 ◆R0wKkjl1to:2012/07/23(月) 22:54:29 ID:ioSAYOKcO
投下完了です(^O^)
新し……く?使用させていただいたスタンド
No.451
【スタンド名】ゴー・ナイン・シックスさん
考案者:ID:dUphVbVMO様
絵:ID:zXRixBaHO様

ありがとうございましたm(_ _)m



なんだかやっと自分の中で終わりが見えてきました……

やはり行き当たりばったりは苦しい……何も考えずボスを選んだのがこんなに苦しいとはww
なんか昔もこんな事言ってた気がしますね

次からは書き溜めしようかしらいや、書く予定は無いんですけどねwww

537名無しのスタンド使い:2012/07/23(月) 23:35:05 ID:jJldapTM0
投下乙!
ジョン万もとうとう最終決戦かぁ……

それにしてもHNは本当になんでもアリだなwww


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