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【ジョン】オリジナルスタンドSSスレ【万】

1 ◆R0wKkjl1to:2010/07/17(土) 00:59:21 ID:IwSrWuf2O
やっちまった・・・

Mr.ノープランこと私の(酉忘れ)行き当たりばったりの不定期更新の二作目www


当然ながら期待厳禁でお願いします・・・(>_<)

2010・7・17

489 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 21:47:25 ID:I.EiqbPkO
あれ?


これはWWW


なんてこったw


三月頃に続きを投下したと思っていたら、投下なんてされてなかった。
いや、冗談とかじゃなくてマジですよ?
もしかして妄想だったのか、それとも夢だったのか……


おかしいなぁと、思いつつも投下しないと始まりません。
がんばりますww

490 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 21:49:27 ID:I.EiqbPkO


――ガキイィイインッ!!




金属と金属がぶつかる独特の音に御園が顔をしかめる。


御園「……ちッ、こう耳元で耳障りな音を立てられるのでは、たまったものじゃないな」

比留間「そうですか? 私にはそこまででもありませんが」


――ガキイィンッ!


御園「それは耳が遠くなってるだけだろうッ!」

比留間「そうとも言いますな」

―ガキュイィッ!!




一進一退の攻防に見えたが、実際は御園の方が押されていた。

比留間「フンッ……!」


――ボッ!

御園「く……!」


比留間の突きを首の皮一枚でかわす御園に余裕の表情はない。

今までの相手との勝手の違いに御園は戸惑っていた


動作の緩急が全くと言って良いほど読めない……

通常、戦闘行為を行う際にはどうしても力みが生じるもので、格闘技を修めていれば攻撃がある程度ではあるが予測出来る。
攻撃をする時、受ける時は息を止め、力を込める急

そうでない時は、脱力し身体を休めると共に相手に注意を払う緩

人間である以上力んだままでは戦い続けられない。どこかで休憩を挟まなければ、力尽き果ててしまうのだ。



御園「ぐ……ッ!」


しかし、比留間の戦い方はそれとは少し違っていた
緩に見えて急、急に見えて緩
フェイントを織り交ぜながら攻め立ててくる……


気を抜くとどこで急の一撃が飛んでくるか分からないため、結果として御園は比留間の攻撃を力んだ状態で避けなければいけなかった。



――ガキイィインッ!!

比留間「……そろそろ、決めさせてもらいますよ」

491 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 21:51:18 ID:I.EiqbPkO
御園「………!?」


比留間「聞こえていませんか、そうでしょうね……あれだけ大きな音が耳元で鳴っていては」


――バッ!


砂埃が御園の顔の辺りで舞う

御園「ぐあッ!目潰しとは姑息な……!」


比留間「姑息で結構。『勝てば良かろうなのだ』ですよッ!」

――ゴオッ!


生身の部分をめがけて、鋼鉄の拳が振り下ろされるッ!


勝った。

比留間はそう確信していた。
目も耳も効かない状態でこの一撃を避けられるはずもない。



――スパアァアッ!


比留間「……?」



――………ゴトッ



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


御園「 俺が『近すぎる金属を溶かせない』だなんて……
一言も言ってないぞ」


比留間「……ッ!」



目潰しの効果が不十分だったのだろうか、金属と化した右腕が、音を立てて地面に落ちていた。

そして、破壊され使い物にならなくなった筈の御園の義手は、その形を変え『剣』の体をなしていた……


御園「輝彩滑刀……
事前調査不足だったな」

比留間「……それがあなたの奥の手と言うわけですか」


御園「……」


比留間の問いかけに、御園が気付いた様子はない。


比留間「(どうやら耳はまだ聞こえてないようですね……で、あるならば、勝機はこちら側にッ!)」






一度、御園と距離をとり、残った腕で懐から何かを取り出す。


比留間「覚悟は宜しいですか?」


――ググッ……


目一杯力を込め、比留間は分かりやすく拳を作り上げる。


御園「……(次の攻撃、何か仕掛けてくる気か。
だが、俺のスタンドが奴に負ける道理はない)」



比留間「参りますッ!」


――ダッ!!

492 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 21:53:25 ID:I.EiqbPkO
先ほどまでとは打って変わって、非常に直線的で分かりやすく振りかぶり拳を突き出す比留間。


御園「フンッ!」


――スパアァッ!


気合い一閃、比留間の残された腕がくるくると宙を舞い
鈍く重い音を立てて、御園の足下に落ちる。


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ



御園「……一体何を考えているんだ?普通に考えれば分かるだろう?」


比留間「フフ……あなたを倒せるのなら腕の一本など惜しくもない」


――ズズズズズズ………


それだけ言って比留間の全身が金属に変わり始める。


御園「……?何と言ったんだ?
まぁ、全身を金属に変えたところで俺の輝彩滑刀に切れない物はない」


言いながら御園は腕の刀を構える。



比留間「理由は……知りませんが……あなたは切り落とした私の腕を……溶かそうとしなかった……
情けをかけて、後の治療を考えていたのならば……その甘さ。
一時的に奪われた聴力と合わせて……あなたの敗因です」


御園「……腕?」

何とか聞き取れた『腕』と言う単語に、御園は足下に落ちた比留間の腕を見る。


いつの間にかか金属化が解かれ、切り口からは血がしたたっていた……

ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド

比留間「……(切った腕を即座に溶かしていれば気づけたでしょう。
耳が聞こえていれば、拳の中の電子音にも気づけたでしょう……つまり、そういう事ですよ)」


御園「………!!」




――ドッゴオオオォオンッ!!


御園のすぐ足下で、比留間の拳に隠された『爆弾』が
爆弾が爆弾たるたった一つのその役目を忠実に果たした。

493 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 21:57:56 ID:I.EiqbPkO
御園「〜〜〜ッ………!!」





金属化を解き、御園に息がある事を確認し、比留間はゆっくりと立ち上がる。



比留間「……スタンド使いがスタンドだけで戦うとは限りません。
能力の優劣にこだわって、可能性を見落とした。
それがあなたの敗因です」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


比留間(リヴィン・オン・ア・プレイヤー) ○ VS 御園(メタル・ジャスティス) ×――再起不能









――ザッ……


踵を返し、議事堂へ歩み始める比留間に御園が問いかけた。


御園「殺さないのか……?」


比留間「……まさか意識があったとは驚きです。
私の目的はいづみ様の奪還ですからね、今は一秒でも早く彼らに追いつかねば。
……それに、私は過去に人を殺しすぎた。
だからもう、殺さないことに決めているんですよ」


御園「……そうか。行くのは勝手だが、中にはスタンド使いがひしめいているぞ……せいぜい気を付ける事だな」


比留間「……感謝します」


振り返らず、ごく短い謝辞を述べ比留間は歩き出す。






ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ……

494 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 21:59:17 ID:I.EiqbPkO
――バンッ!


中条「くっそ!鍵がかかってやがる!」


議事堂の入り口に据えられた大きな鉄製の門……

早々に行く手を阻まれ、中条は苛立ちを露わにする。


風呂戸「……下がってな。
トレンダ・ホーンッ!!」


雄牛の角から熱波が放たれ、鉄の扉がチョコレートの様に溶ける。


大和久「す、すごいよ!」

風呂戸「その口調気持ち悪いな……ほら行くぞ」

――ザッ……

議事堂エントランスホールに足を踏み入れる三人。
広々としたホールに人の気配は無く、不気味なほど静まりかえっていた。


辺りに注意を払いながら二階へつながる階段に足をかけた所で頭上から声がかかる。


「……そこから上に来るな。
万次郎、命を無駄にするんじゃねえ」


中条「!」


見上げると、そこには中条の兄と見知らぬ女の姿があった……

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


中条「あ……兄貴……!」


中条(兄)「頼むから帰ってくれ……
俺が何のためにコイツらに雇われてるか、分からなくなっちまう。
俺たちにはまとまった金が必要なんだよ……」


中条「知ってるさ。
親父の仕事が無くなっちまったんだろ?
母さんから聞いた……
兄貴がそんな心配する事じゃねえんだ。
俺だってバイトしてでも高校位は出るつもりだったし、親父も今、必死に仕事を探してんだ。
兄貴は出来が良かったから『自分が何とかしないと』って思ってんだろうけど……全然、心配なんかしなくて良いんだ。
本当に家族が大切なら、こんな馬鹿な事に荷担しないでもいいだろ?
もう少し家族を信用しろよッ!」


兄「やめろッ!上がってくるんじゃねえ!!」

――ダンッ!


その場から一段上へ中条が階段を登る……

495 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 22:00:52 ID:I.EiqbPkO
風呂戸「中条!兄貴なら話が通じるだろ?
ここは一つ目をつむってもらって……」



中条「いいや!俺は兄貴の傲慢さには常々嫌気がさしてたんだ!
丁度良い機会だ、今日をもって俺は兄貴から卒業するッ!!」

兄「………!」

ド ド ド ド ド ド ド ド ド ……


無言のうちにスタンドを発現させる中条(兄)と女。

ピリピリとした空気が場に流れる。


兄「そこの二人は先に行ったら良い。
俺は万次郎以外と戦うつもりはない」

風呂戸「へ?」

大和久「……」

女「ちょっと、勝手に決めないでくれるかしら?
私の相手がいなくなっちゃうでしょうが」



兄「だ、そうだ。
悪いね、やはり君たちを通すわけには…………?」


女「……どうしたのよ?」

兄「シッ……何か聞こえるぞ」

中条「……何が?」



――……………………………ラ

――………………………ラオラ


――……ラォラオラ……



どこか遠くから声のような音が聞こえてくる。

それはやがて、はっきりとした音声として認識出来るほどに近づいてきた





「オラォラオラオラオラララオラオラオラオラララァーーッ!」



――ボゴオオォンッ!!


壁が粉々に砕かれ、砂埃が舞い上がる!



?「ゲッホッ!ェフ!
だから扉から行こうって言ったのによぉー!
明日打ち合わせに着ていくスーツが汚れちまったじゃねえか!」

?「男が小さい事でウダウダ言わないで……
スーツなら社長から貸してもらえるように後で電話しとくわよ」



そして、砂埃の中から一組の男女が姿を現す……

496 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 22:02:45 ID:I.EiqbPkO
中条「わ……渡部さんに、上城さん
何で、壁から?」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


上城「何でって……
敵が想像しないような場所から侵入しなきゃ」


中条「あ……そうですか」


風呂戸「ぶっ飛んでんな……」
大和久「そうかい?僕は力強くて素敵だと思うけどな」



女「あらら……なんかまた侵入者が増えたわね。
だけど、これで退屈しないで済みそうッ!」

――ドンッ!


女は床を蹴ったかと思うと、驚くべき跳躍を見せる。
二階から飛んだとはいえ、吹き抜けの天井まで届くほどの高さである。


風呂戸「高いッ!」


女「その二人は通してあげるわ……!代わりにこいつらをグチャグチャにするから!
まずは女!てめーからだぁー!
『チャールズ・グットイヤー』!!」


――ギュン!


天井近くで回転し、水泳のターンのように天井を蹴った女は、そのまま矢のような速度で上城めがけて飛んでくるッ!

渡部「速いッ!」


一瞬で上城の背後に回る女。
だが、その行動を予見していたかのように強烈なバックブローがにやついた女の横っ面を捉えた


上城「オラアアァーッ!!」

――ドバチィーーンッ!


錐揉みしながら吹き飛ぶ女……

渡部「ブラボーッ!」


上城「……………?」



ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

497 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 22:06:08 ID:I.EiqbPkO
余裕の表情の渡部と対照的に上城は困惑の表情をみせる。


上城「手応えが……おかしい」


女「びっくりしたー……
あんたなかなかやるじゃない。
まさか今の動きについて来られるなんてただ者じゃな」

上城「オラァ!」

言い終わる前に、女の顔面をスタンドの拳が直撃する。


――グニャ……



上城「……あんた、『ゴム』かなんかで出来てる訳?」


女「当たりッ!私のスタンドはゴムで出来てるし、触れた物をゴムに出来る!
……固い物より柔らかい物の方が壊れない」


グニャグニャと顔面を修復させながら女が答える……


上城「あんた、名前は?」

女「私?私は加賀屋……加賀屋敬よッ!」

上城「そう……カガヤケイね。覚えておくわ」


加賀屋「はッ!覚えておくって?
笑わせないで!私に打撃は通用しないんだ、お前は私に負けるんだよ!!」


――ドヒュンッ!


鞭のようにしなる蹴りが上城の体を数メートル吹き飛ばす!


渡部「姉御ッ!?」


ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド……


上城「……大丈夫。渡部、あんたはそこの二人と先に行きなさい。
すぐに追いつくわ」

渡部「…………」


渡部の視線の先には大和久と風呂戸の姿。

渡部「……了解ッ!」



中条兄も加賀屋も彼らを追うことはせず、エントランスには
中条兄弟、加賀屋、上城の四人だけとなった。




ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


中条(兄)「万次郎、お前が友達のために動くのは分からないでもない……だが、そのために兄貴に牙を剥くのか?
俺はお前の為にやってるんだぞ」


中条「ちげぇよ……兄貴が自分勝手だからさ」





加賀屋「『すぐに追いつく』……なんてのは不可能ね。
アンタは私の暇つぶしの為に死ぬんだから」


上城「お生憎様……暇つぶしで死んでやれる程、私はヤワじゃあないわ」

498 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 22:07:41 ID:I.EiqbPkO
中条「オラオラオラオラオラ!」


触手がいくつかの腕を形作り、ラッシュを繰り出す

兄「……」



――ブシュウゥッ!!


中条「……ぐあッ!?」


眼前に兄の姿は無く、代わりに砕けた足場が見える……

万次郎の体からは血液が吹き出し、一瞬何が起きたか理解出来なかった。


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ……


兄「俺は今までお前とどんな喧嘩をしようが、お前に対して能力を使ったことが無かった……
だが、今日ばっかりは使わせてもらうぜ」


兄「今の俺の速度は音速にちょっと欠けるってとこだ。
おそらく限界の3割ってとこだが、お前『程度』ならこれで充分だ」

中条「……!」

――ブオンッ!

背後からの声に反応したM・T・Bの裏拳が空を切る……


兄「……今のでまた速度が5キロ上がったぞ。
何か別の手を考えた方が良い」


中条「こ……のッ!」








―――――――――――――――――――



加賀屋「ほらほらほらぁ〜ッ!
どうしたのよ?あなたさっきから受けてばっかりじゃないの!」

上城「…………」


――ドガドガドガドガガガッ!

ゴムの伸縮性を利用した変幻自在の攻撃に、上城は直撃こそ避けているが防戦一方である。
そして、それにはいくつかの理由があった

一つ、初めの攻撃を防御した際に両手をゴムに変えられていた。力の加減を誤った動きを行えば伸びた手足のゴムの力で体ごとぶっ飛んでしまう事が想像できた。

二つ、加賀屋が上城の射程距離無いに入るのは攻撃の手足だけ。
腕が普段通りなら捕まえるのは容易いが、今の上城の腕では上手く捉えられない。

そして三つ、最悪な事に両足もゴムに変えられてしまった。
地面に踏ん張ることの出来ない両足では立っている事すらままならない。

つまりは、今の状態で攻撃を受けきっている事自体、奇跡的であった……

499 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 22:09:18 ID:I.EiqbPkO
加賀屋「ほらほらほらほらあぁ〜ッ!どうしたのよぉ〜!」



上城「……ちっ、うっとおしいわね!」

加賀屋「うふふふふッ!
あぁ楽しいわ!あんたのその余裕の表情が絶望に変わるのが待ちきれないッ!!」


――ギュン!


加賀屋が大きく振りかぶると、その腕が長く、長く伸びる。

上城「何か来るッ!」


加賀屋「行くわよ、必殺〜……」



――ドギュウウンッ!


弾丸のような速度で伸びてくる加賀屋の拳。
だが、間一髪で上城はそれを避けた。

上城「うぉ……!危っないわね!」


通り過ぎた拳を見送り、加賀屋へ向かって振り返ると






すぐ目の前に加賀屋の姿。


――ドゴオォッ!!

上城「……ぐはッ!」

加賀屋「今の感触……もしかしてアバラいったかしらねぇ?」


ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド



初めから最初のパンチは囮であり、本命は 伸びきった腕が縮む力を利用しての体当たり……

衝突した瞬間から形を変え、衝撃の力を逃がさず対象へと伝えるゴムの特性を利用しての体当たりである。


上城「……オラオラアッ!」

反撃に、上城のスタンドがタイヤのような模様の入った加賀屋のスタンドを殴りつけるが、効果がない。


加賀屋「打撃は効かないって……言ったでしょうがああああぁ!!」


そのまま馬乗りになり、二、三発上城の顔面を殴りつける加賀屋!


上城「――うぐっ!」



加賀屋「アンタの顔や身体をゴムにはしないわよ?
このまま私に殴り殺されなッ!」

500 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 22:12:40 ID:I.EiqbPkO
――ムワァ……


中条のスタンド、M・T・Bの首もとの皮がめくれたかと思うと、辺りに何とも言えない臭気が漂いだす。


兄「感覚過敏ガスか……
息を吸わなければどうという事はないぞ、万次郎」


――ググッ……

兄のスタンドが低く構え、ダッシュスタートの構えをとる。


中条「分かってるさ、兄貴。
だけど、人間はずっと息を止めていられる訳じゃあない。
兄貴が息を吸った瞬間、俺の勝ちだ」


階段を背にして迎え撃つ構えの万次郎。



ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

兄「そうだな……だがそれは、お前が俺の息が切れるまで意識があればの話だッ!」



――ッドン!!


言い終わりと同時に、兄のアメフト選手の様なスタンドが地面を蹴る!


兄「オラオラオラオラオラオラオラオラオララオラララァ!」

中条「オ」


――ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴッシャアーーッ!!





一つの突きを繰り出す間もなく、万次郎の身体は宙を舞う。


時間にして一秒にも満たない間、無数の攻撃をその身体に浴び宙を舞った弟を掴み、兄のスタンドは無慈悲にも石で出来た階段に叩きつけた。



――ドグシャアーッ!


中条「ガフッ……!!
(お…おかしいッ!兄貴のスタンドは速く動けても、兄貴自身がそこまで速く動けないはずなのに……!
明らかに射程距離外だったのにここまで一緒に移動してきただと!?)」




ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ



兄「不思議だろうな……
俺のスタンド『タッチ・ダウン』の能力は物体を避ければ避ける程、速度が上がる能力だ。だが、速く動けるのはスタンドだけ……
その理由は、俺の肉体がその速度の衝撃についていけないからだが、それはコイツが解決してくれているんだ」

501 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 22:14:12 ID:I.EiqbPkO
言いながら、黒いコートをひるがえす兄。

兄「アラキニウムと呼ばれる鉱物に鉛を混ぜ込んだオートクチュールコートだ……値段は高級外車を買ってお釣りがくる程なんだぜ?
知っての通り、アラキニウムは他のどんな物質とも結合し、その特性を何乗にも高める」


中条「ごふっ…そんなん……知らねえし……」


兄「あ……知らないか。
まぁとにかく、このコートを着ていれば音速の壁をぶち破った時の衝撃のダメージを最小に抑えられるって訳さ」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


中条「……なるほどな。
どうりで……ガフッ!強い訳だ……
俺の負けだよ……兄貴」


兄「万次郎……分かってくれたんだな。
立てるか?かなり強く殴ったから、正直死んじまったかと冷や冷やしたんだぜ」

――スッ……

兄は中条に手を差し伸べ、中条がその手を掴む。


――グイッ!

兄「うおッ!?」


手を掴んだ瞬間、急に強い力で引っ張られ兄はバランスを崩す。





中条「ブワハハハハハハハッ!!
捕まえたぜぇ〜!このクソ兄貴がぁーーッ!!」


兄「こ……のッ!馬鹿弟がぁ〜!タッチ・ダ…」

中条「やってみろよッ!
何か勘違いしてるみたいだが、俺は今スタンド能力で痛みを消してるだけで、実際のHPは1なんだぜ!
てめーが音速で動いたり、殴ったりするだけで俺は『死ぬ』ぜッ!」


兄「うぬぅ……!卑怯なッ!」

中条「卑怯もくそもあるかッ!
兄貴にゃ、俺を殺す覚悟も度胸もねえのは分かってんだ!
それを逆手にとって『俺は俺を人質にとった』だけだ!」


兄「……ブラフだ!」

中条「……そう思うなら殴ってみろよ。
俺は逃げも隠れも……ガハッ!」


喋りながら、万次郎は鮮血を吐き出す。


兄「……!!」


中条「……ほらな、兄貴には出来ねぇ。
だから俺の勝ちだ」

502 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 22:16:22 ID:I.EiqbPkO
中条「FUCK OFFゥウオラオラオラオラォラオラオラ!!」


――ドゴドゴドゴドゴドゴドパアァアーッ!



拳打と白濁液のラッシュに兄の意識は飛びかかるが、辛うじて保つ事に成功していた……


――ザッ……

兄「ぐ……うぅ……」

中条「おら、兄貴。
服脱げ」


兄「ちょ……おまッ!
まさか実の兄のケツを狙って……」

中条「ち、違う!俺はホモじゃねえッ!
コート寄越せっての!」

兄「……何?コート?」

中条「すげぇコートなんだろ。
俺、たった今兄貴のパワー吸い取ったから、超スピード出せる訳よ。
それがないと折角の超スピードが無駄になっちまうんだわ」



兄「……そういう事か。
わかったよ、持ってけ。
俺はもう戦えない、お前の勝ちだ……万次郎」


中条「兄貴、あのさ……」

兄「ん?」



中条「兄貴が色々心配してくれるのも有り難いけど、学費位は自分で何とかするよ。
お年玉貯金もあるし、バイトすれば公立の学費なら何とかなるさ……いや、してみせるから
俺を信用してくれ」


兄「万次郎……」




「無駄無駄無駄無駄無駄ぁあーッ!」

「オラオラオラオラアァーッ!」



その時、二人の会話をかき消すほどの怒号がエントランスに響きわたる。



兄「あぁ〜……忘れてた。
万次郎、助けにいかなくて良いのか?
このままじゃ殴り殺されちゃうぜ?」


二人から少し離れた場所で、もつれ合い、殴り合う二つの影。

加賀屋が馬乗りのままメチャクチャに殴りつけている。
上城も負けじと下から殴り返してはいるが、ゴムの身体に衝撃は吸収されダメージを与えられていない。
どちらが不利なのかは遠目にも明らかだった……

503 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 22:17:57 ID:I.EiqbPkO
中条「無理。
今、瀕死だし。
女には俺の能力は効かないし。

それに、あの人がまだ諦めた顔をしてない」





ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ



上城「オラララァーッ!」


――ドドドドドムッ!


スタンドの拳が加賀屋の身体を打ち付ける。

上城「…………!」



加賀屋「…………くっくッ……


あはははははぁ〜!全ッ!然ッ!効かないわねぇ!

いい加減諦めてブッ死になぁーーッ!!」




上城「……あなたの事を思って忠告しとくけど、それ以上はやめた方が良い……
早くゴム化を解除した方が良いわよ?」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


加賀屋「…………は?
何言ってんだオメー?殴られすぎて頭おかしくなったか?

する訳ねーだろ!ボケェエッ!!」


――グオンッ!

体重を乗せた拳が上城の顔面めがけて振り下ろされる。




上城「やれやれ……
そう言うと思ったわ。
スター・ゲイザー!!」


――ドガッシイッ!


上城のスタンドがその拳を受け止め、掴んだまま加賀屋の腕の付け根へと手刀を振り下ろすッ!

加賀屋「無駄無駄あぁー!」

上城「ウオラアァーッ!!」











――ブッチィイイイイイッ!!


加賀屋「…………?」



――ビシャビシャビシャビシャ……


加賀屋「………え」


何が起きたのか分からないといった表情の加賀屋の視界には、肩口から吹き出す赤い噴水と
見慣れた腕を握っている敵のスタンドの姿があった。




加賀屋「ぃいいいいいいいいい………!!

痛ぎぃゃやあぁああああああああああああああーーッ!!?」



ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド

504 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 22:19:09 ID:I.EiqbPkO
上城「スター・ゲイザー……
あんたの身体を紫外線を放つように光らせた」

加賀屋「し……紫外線んッ!」


上城「 ゴムは紫外線によって劣化する……ちょいと時間がかかったせいで随分殴られたけど、これであんたは無敵じゃあないわね」



加賀屋「う……おぉッ!!」


――グオッ!


上城「無駄ァッ!」


――ガシッ!


加賀屋の苦し紛れに放った攻撃もあっさりと上城に掴まれてしまう……


上城「ウオラアアアァ……!!」

――グリグリグリグリ……!


掴んだ腕をそのまま捻る上城。
ゴムの弾力を失った加賀屋の腕は徐々に千切れはじめ、裂け目からは血が流れ出している。

加賀屋「ひぎッ!」


上城「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」


――ドゴドゴドゴドゴドゴドゴシャアーッ!!




加賀屋「ミギャーーッ!!」



加賀屋が回転しつつ、血液をまき散らしながら壁に叩きつけられると、上城のグニャグニャだった手足が元に戻る……



ド ド ド ド ド ド ド ド ド……



手を握ったり開いたりして、元に戻った四肢の感覚を一通り確かめた上城は吹っ飛んだ加賀屋の側へと歩みより、首根っこを掴んで無理矢理に立ち上がらせる。

上城「おら、立てよ。
私をぶっ殺すんだろ?やってみろよ」

加賀屋「う……
うあぁあああーッ!もう勘弁して下さィーい!

腕も千切れて血が止まらないし、これ以上やられたら死んじゃいますッ!!」



中条「……!やりすぎだッ!
マジで殺す気かよ……?」

兄「ッ……!!」



上城「はぁん……まだ喋れる余裕があるのか。

これはもう5、60発殴っとくべきかしら?」

505 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 22:22:28 ID:I.EiqbPkO
兄「そこまでにしてやってくれ」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


上城「…………」


中条の兄が、いつの間にか上城の後ろに回り、振り上げた拳を掴む。


兄「ここはあなたと万次郎の勝ちだ。
先に進んでもらって構わないし、何なら敵の能力について知ってる事は全て話す……
だから、頼む。
こいつの治療をさせてくれ」


加賀屋「中……条……」


上城「………」

兄「…………」


無言のまま、しばし見つめ合う二人……



上城「……OK、その目は嘘をついてない。
あんたの事、信じるわ」


兄「すまない……恩にきるよ」


中条「兄貴……」





千切れた加賀屋の腕を拾い、断面を合わせるようにして固定をすると、ペットボトルに入った液体をかける。

傷口からはシュウシュウと嫌な臭いのする煙が上がり加賀屋が苦悶の表情を浮かべるが、驚く事に千切れた腕がくっつきかけていた。


中条「すげぇ……何だこりゃ」
兄「とあるスタンド使いの能力だよ、傷を治す事が出来る。
と、言ってもこれだけじゃ完治はしないんだけどな」

上城「……もしかして、その液体ってヨダレかしら?」


兄「あぁ……よく知ってるな
もしかして知り合いか何か?」

上城「直接知ってる訳じゃないんだけど、昔ちょっとね」

中条「おえぇ〜……ヨダレなのか」

――バシャッ!

中条「ぶあッ!?汚ったねえ!いきなり何すんだよ!?」


兄「お前も傷に塗っておけ。
この先の敵は俺みたいに甘くないぞ」




各々が薬を傷に塗り、それを癒す。
一段落した所で、上城が口を開いた。


上城「さて……と、それじゃあ色々と聞かせてもらおうかしら?」


兄「……ああ」

中条「(臭っせぇ……)」




ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

506 ◆R0wKkjl1to:2012/05/03(木) 22:23:29 ID:I.EiqbPkO
sage侵攻な上、中途半端ですが投下完了です(^O^)

セクターさん完結に触発されて投下致しましたwww
近いうちに一気読みする予定です!

私がこのスレをageるのはセクターさんにコメントしてからだッ!








しばらく書いてなかったら、誰が何をしているのか全然覚えてなくてヤバイです……

507名無しのスタンド使い:2012/05/10(木) 07:08:49 ID:t62HZDbk0
投下乙!

misonoさんが敗北……だと……
そして、久々のゴーナインシックスさんwww

508 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:24:15 ID:leoTJKYQO
>>507
ごめんなさい(>_<)レスくれてたのに気づきませんでした……
misonoさんは勝たせたかったけど、前作無双もした事だし退場していただきました。
死んでないのはまた別の話のどこかで出てくるかもしれないからですww



では投下していきます(^O^)

509 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:25:38 ID:leoTJKYQO
風呂戸と大和久、渡部の三人はエントランスの階段を登り、奥を目指す。

確信があるわけではないが、大事なものを隠すなら外から侵入してすぐの外周部分に隠す訳がないと相場は決まっているのだ。


風呂戸「……建物の中心を目指すぞッ!」


――バアンッ!

大きめの扉を開け放つと、そこは大会議場であった。
一が国会中継を乗っ取り、国に宣戦布告をしたその場所……

入り口から中央に向かってすり鉢のように低くなっており、部屋の中央には肉の玉座が構えられている。


風呂戸「……いねえか」

渡部「君、RPGの魔王じゃないんだから、いるわけないだろ」


「いや、案外いたりしてね?」

渡部「誰だッ!」


次の瞬間、玉座の影から男が姿を現す……


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


大和久「……え?
何であなたがここに……?」


風呂戸「…………!」


渡部「……誰だ?」





井口「そこのリーマンは初めましてだね。
僕は井口 優……『元』刑事だ」




大和久「な、何で……!」


井口「何でもなにも……僕は初めからアガペーの一員さ。
任務で刑事になって、警察の中に僕たちの驚異になる人物がいないか探っていただけだよ
あ、あと死体処理もやってるね」


大和久「角田さんは……」


井口「彼か……鉄球の技術は認めるがスタンドが使えないからねぇ……大した敵にはならないさ」


大和久「違う!あの人はあなたを慕って……」


井口「慕うぅ〜?
さっき僕は、警察の中に驚異がいるか調べてたって言ったよね?
話聞いてたかい?
相手が慕ってたら、こっちも応えなきゃならないのかい?」


大和久「……それでも」


――スッ……


言いかける大和久を風呂戸が制す。

風呂戸「分からないでもないが、落ち着け……。
お前は彼女を見つけだして来い、コイツは俺が相手をする」

510 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:26:54 ID:leoTJKYQO
井口「……たった1人で僕の相手が務まるとでも思っているのか?
断言しよう、君は僕に指一本触れられずに死ぬ」


――ズズズ……

言い終わると、井口の足下に溜まっていた水が蛇を形取る。


風呂戸「お前の能力は聞いているッ!
水が熱に勝てると思うなよ!?
トレンダ・ホーンッ!!」


T・H「ヴモオオオオオオオォッ!!」





ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド


互いにスタンドを発現させ、正面きっての真っ向勝負……
井口からは大和久と渡部が部屋から出るのが見えていたが、敢えて逃がした。
自分の能力であれば溶かすのに手間はかからないが、渡部の能力が分からない以上、敵を増やすのは得策ではないと判断したためだ。

井口「…………ん?」


だが、二人が出て行ったかと思えば、今度は別の1人が場内に入ってくる……
見覚えのある背格好、角刈りに決めた髪型……入ってきたのは角田であった。


井口「角田……?
フッ、噂をすれば影って奴だな。
どうやってここに来たか知らないが、警察も全く無能って訳ではなかったか」



風呂戸「よそ見してんじゃねーぜッ!!」



――カッ!


熱波がT・Hの角から井口へ、一直線に放たれる!


井口「……ふん、ヴリトラッ!」


――バジュウゥウウウッ!!


熱波を水の壁が防ぐと、大量の水蒸気が発生し、部屋の中を満たす……




風呂戸「水なんざ蒸発させてやれば良いだけだぜッ!」



井口「…………ふん」

511 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:27:55 ID:leoTJKYQO
角田「…………」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


井口「どうした角田。
僕に何か言いたいことでもあるのかな?」


井口の問いかけに、角田は答えない。
そして無言のまま、ポケットから鉄球を取り出し掌で回転させ始め、回転による空気の対流で周りの水蒸気を吹き飛ばす。


井口「……だんまりか。
まさかその鉄球を僕にぶつけるつもりなのか?」

角田「井口さん……私は……
私はあなたを助け出すために、血反吐を吐きながらも試練を越えて来ました。
だけどあなたは始めから御子神の手下だったんですか……」


井口「何故……?と、でも言うつもりかい?
答える義務はないな。僕にとって今重要なのは君が敵か味方かって事だ。
返答次第ではここで消えてもらう」


風呂戸「おいおいおいッ!
ちょっと待てぇーッ!!
俺は無視かよ!?てめーの相手はこの俺だろうが!」



ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド


井口「……ん?
いたのか……あぁ、すまなかったね。
それじゃ、一応言っておこうか
『ヴリトラは既に攻撃を終えている』」


風呂戸「……?」


――ツツー……


風呂戸の鼻から音も無く血が流れる。


風呂戸「ッ!
てめッ!一体何しやがったッ!?」



井口「別に何もしてないさ。
やったのは君だろう?
ヴリトラの同化した水を蒸発させて、蔓延させたのは君自身だ」

512 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:29:07 ID:leoTJKYQO
風呂戸「……ゴフッ!」

喉に違和感を感じ、せき込むと喉の奥から血が溢れてきていた……

井口「超強酸性の水蒸気だ……気管や肺が溶け始めての出血だな。
角田の様に風を起こして蒸気を遠ざけるか、私の様に水を操作して吸わないようにしなければ、鼻腔から侵入した蒸気は内側から溶かし始めるぞ……」



風呂戸「が…………ッ!
(あっけねえ……俺はこんなもんで終わりなのかよ……ッ!)」


――ガクッ

風呂戸は膝をつき、スタンドが薄くなっていく。


井口「ふふッ……あっけない!
実にあっけないよッ!」



――ズギュウンッ!

井口「ッ?」


井口が笑いかけたその時、角田の鉄球が風呂戸の身体へと向かう!

――ヒタァ……ッ


放たれた鉄球は、回転しながら吸いつくように風呂戸の身体へと張り付き、回転による風で水蒸気を払っていった


井口「角田……貴様」


角田「殺させません。私は市民の生命を守るのが使命なのです。警官なのです」


風呂戸「う……」

――ブルッ……

――ブルブル……ッ


風呂戸「(何だ……身体が……震えてるような妙な感覚が……)

……げほっ!」


咳と共に、血の混じったピンク色の水玉が風呂戸の口から吐き出される。



角田「回転による遠心力で気道内についた水だけを吹き飛ばした……
風呂戸くん、立てるかい?」


風呂戸「……あ、あぁ。
何とか……」


角田の肩を借り立ち上がる風呂戸。


井口「……フッ。
水を吐き出させるのにはちょいと驚かされたが、何の事はない。
くたばりぞこないのスタンド使いと鉄球しか使えない非スタンド使いが協力したところで……!

ヴリトラを直接ぶつけてやればそれで良いッ!!」

513 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:30:14 ID:leoTJKYQO
――ズゴゴゴゴゴ……!

井口の足下に溜まっていた水が巨大な蛇を形作る……!




井口「骨も残さず溶かしてやる」


――ズオォッ!!



言うやいなや、巨大な水の蛇は風呂戸と角田めがけて突進を始める!


角田「――速いッ!」


――グンッ!

風呂戸「うおッ!?」


突然真上に引っ張られるような感覚に驚きの声を風呂戸が発する。




――シュバアァアッ!

ほぼ同時に、二人の立っていた場所を水の蛇がよぎって行った。




井口「な……?なん……だと?」


井口の驚愕に、彼のスタンドも一時その動きを止める……



ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ……






井口が驚いたのは、攻撃を避けられたからではない。
それ位は予想していたし、次の手も当然考えていた。

しかし今、彼の目の前の光景は全くの想定外……いや、それどころか想像する事すら出来ない光景だった。




井口「……馬鹿な。人間にこんな真似が出来る訳がない。
出来るとしたらスタンド……
角田、お前まさか……!!」




角田「血反吐を吐くような壮絶な試練を乗り越えたと……言った筈です」



井口を見下ろすようにして角田が答える……



会議場は一階にあるが、その天井は吹き抜けになっており、
二階、三階を突き抜けて、四階相当の高さにガラス張りのアーチがある。その高さはおよそ20m。

角田は風呂戸を脇に抱え、そのガラスの窓枠に片腕で捕まり
井口を見下ろしていた。


つまり、男1人を抱えたままたったの一跳びで20mの跳躍を見せたのである

514 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:31:48 ID:leoTJKYQO
角田「お見せしましょう。これが私のスタンドです……

『ガリレオ・ガリレイ』ッ!!」


――ドギュルルルルルッ!!



井口「ッ!!」


角田が鉄球を天井に押し当てると、掴んでいる枠を中心としてみるみる大会議室の天井がよじれていき
ミチミチと音を立てながら千切られて行く……!


井口「角田……貴様そこまで回転の力を……ッ!!」


角田「鉄球の技術も波紋の技術もスタンドに近づく為の技術ッ!
鉄球の技術を高めた結果このスタンドが手に入ったのです!!」


――メキャメキャキャァーッ!

よじれに耐えられなくなった天井が派手な音を立てて落下を始める。

風呂戸「おっ、落ちるぞッ!」
角田「大丈夫です」


角田は慌てる様子もなく、すでにガラスの割れ落ちた枠の隙間から落下する天井の上へと移る。

角田「枠には触れないで下さい。『巻き込まれ』てしまいます」

風呂戸「巻き込まれる……?」
角田と風呂戸を乗せた天井は、落下しながら信じられないような早さでその形を変えて行く。

例えるならティッシュを中心からよじって、こよりを作り出すように
金属とコンクリートで出来た天井は、先端が鋭利に尖った『円錐』へと姿を変えた。



風呂戸「ッ!何だこれ!?」

角田「槍……いや、ドリルの方が格好いいな。
それより、君に頼みたい事がある」


角田は風呂戸に耳打ちをする……


風呂戸「……分かったけど。
だけどそれだとこっちもヤバいような……」

角田「説明している暇はない……だが大丈夫だ、信じてくれ」

風呂戸「……ま、いっぺん救われた命だ。
アンタに預けるぜ」

515 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:33:22 ID:leoTJKYQO
井口「何をごちゃごちゃとッ!
そいつを僕にぶつけるつもりなのだろう!?
やってみろ!たどり着く前に溶かしきってみせるッ!!」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ




回転のせいなのか、ゆっくりと落下する錐の先端を迎えるようにヴリトラが口を開く。
蛇特有の大きく開かれたその口の中に巨大な塊がズブズブと飲み込まれて行く……

だが蛇の腹が膨らむ事は無く、飲み込んだそばから天井を溶かしてしまっていた。


風呂戸「……!マジかよッ!?」


角田「……っ!」


――ズブズブズブ……!


嫌な臭いのする煙が立ち上り、風呂戸と角田の鼻をつく。


角田「まだあぁーーーッ!」


――ドギュンッ!


空中から、先ほどの錐とは対照的な驚く程の速さで鉄球が放たれる。


錐の広がりきった部分をヴリトラが飲み込もうとしているため、井口からは鉄球がどこを狙ったものかは分からない。



ヴリトラが錐を飲み込み終えた瞬間、井口の眼前には唐突に鉄球が現れる!


当たれば一撃必殺の重量と速度の鉄球……
しかし、井口は避けるどころか驚いた素振りすら見せなかった。



――ジュワワワァ……ッ!!



風呂戸「なにッ!?」



ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ



井口「くくッ……
貴様らの考えなんざお見通しさ。

巨大な落下物で私の視界を奪い、鉄球でトドメを刺す……
拙すぎて笑いを堪えるのに必死だったよ」



ヴリトラの尾が井口の体中を覆っている……

角田の放った鉄球は井口の体を叩く前に、強酸性の水により跡形もなく溶かされてしまっていた。


――……ブバッ!


それとほぼ同時に角田と風呂戸の鼻から血が吹き出す。
先ほどの煙を吸ってしまったのだ。

516 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:34:47 ID:leoTJKYQO
井口「これぞ最強の鎧……

貴様らの攻撃は僕には通用しない、勝負あり……僕の勝ちだ」



ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド


角田「そいつは……違いますよ。
今ので……今ので私たちの勝ちは決まったのです」


井口「……は?」




――ドズンッ!


奇妙な音を立てて井口が膝をつく……



井口「なんだ……!?
体……いや、水が……『重い』ッ!?」



角田「これがガリレオ・ガリレイの能力……!」


井口が原因を探ると、ヴリトラを組成している水にデジタルの時計のような装置が付いているに気付く。


井口「これは……まさか『重さ』かッ!」

角田「そう、先ほど『天井の重さを鉄球に移し』
その後、鉄球を介してあなたのスタンドに天井の重さを移しました」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


角田「更に言えば、重くしたのは水を構成する『水素』と『酸素』です……
これはどういう事かと言うと……」

井口「良い……分かってるさ。
『水蒸気爆発』を狙ってるんだろ?
君が鉄球を投げ、そいつがソレを溶かす……
溶けた鉄球が水に触れた瞬間、ドカンだ。
そして重くなった水素らは通常と違って上に逃げない。
爆風はいくらかいくだろうが、『軽く』なった君たちにとっては大した問題じゃあない訳だ」

517 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:36:06 ID:leoTJKYQO
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


井口「だが……それでも僕は、負けを認める訳にはいかない!
今更自分だけが、みっともなく命乞いできるかッ!」



――ググッ……グッ……!


重みで動きを封じられたヴリトラがゆっくりと鎌首を持ち上げる。



角田「な……!
ここに来てパワーが上がったッ!?」


井口「俺は無関係の人間を数え切れないほど殺した!
今更後には退けないのだッ!!」


――ズオォオオオ……!

ゆっくりではあるが、ヴリトラが角田と風呂戸をめがけて飛翔しはじめる……


角田「井口……さんッ!」


角田の鉄球を持つ手が震える……

角田「うおおぉーッ!」


必死の叫び声をあげるが、その手は鉄球を離そうとはしなかった。



――ガシッ!


角田「ッ!」


不意に、震える腕を掴まれる角田。
腕を掴んだのは風呂戸であった……


ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド

518 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:36:52 ID:leoTJKYQO
風呂戸「おっさん……
あんたの気持ちは分かるつもりだ。
尊敬出来る上司だったみたいだしな……

何か理由がある筈だって、そんなのは俺だって思ってる。


だが、アイツは今、明確に、ハッキリと俺たちの敵だと宣言してるんだ。
もしアイツに子供がいて、その子供の命を助ける為にいるんだとして

……それでも倒さなきゃいけない」


角田「……!」


風呂戸「腹を括るんだ……!
その鉄球を落とすだけだぜ。
後は俺がやる……」




ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ



角田の震えはいつの間にか止まり……ゆっくりとその手から鉄球がこぼれ落ちた。



風呂戸「おおおおおおおおッ!!

トレンダ・ホーンッ!!


【ヒィイイイイト・ウェイヴ】ッッ!!」



――カッ!


雄牛の両角が赤く輝き、強烈な熱波が放射される。


落下する鉄球を熱波が覆うと、鉄球は赤熱した金属の滴となって登り来る水の中へと落ちる。

519 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:38:08 ID:leoTJKYQO
――ズズズズ……


中条「……?地震か?」


建物が大きく揺れ、天井からパラパラと粉が落ちてくる。


上城「……いや、これは爆発ね。
この建物内で起こってる……
もしかすると崩壊するかもしれないわ」



中条「やばいな。兄貴、自力で出られるか?」


兄「……何とかな。加賀屋を背負っててもいけるだろ」




おぼつかない足取りながら、加賀屋を背負い立ち上がる
中条達に背を向け、歩き出す……



兄「……ところで、上城さん」

背を向けたまま呟くように中条(兄)は言葉を発する。

上城「何かしら?」


兄「『時を止められる』って、本当ですか?」


中条「え?何それすごい」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


上城「今は……無理、止められないわ。
前に止められたのは、母のスタンドに【時間を遅くする】能力があったからよ」


兄「……だとするなら、あの男には勝てないですよ。
あいつは……御子神仁は化け物です。
体験した限りあの能力は
【過去を書き換える】能力と言えると思います。
格が違うとかではなく、次元が違う」


上城「過去を書き換える……
それはどの位前まで?」

兄「さぁ……多分、秒単位だと思いますが」


上城「そうよね、年単位で出来るならこんな事はしないか……」

中条「……?」


兄「とにかく、時間を止められないならばあの男には勝てないです」


上城「逃げろ。とは言わないのね」


兄「ははっ……、無駄だって分かってますからね。
なぁ、万次郎」

中条「ん?」


兄「御子神と戦っても勝てない。
だが、世の中に【絶対】なんて事は存在しない
だから可能性にかけろ。

【絶対】勝って、生きて帰って来い」


中条「……あぁ、まかせときな兄貴。
俺は約束を【絶対】に守る男だぜ」




ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

520 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:39:10 ID:leoTJKYQO
上城「渡部達はこっちに向かったわよね……」


中条「多分、そうですね。
あッ!あの扉!すげえ勢いでぶっこわれてますよ!
しかも何か焦げてるし。あそこで爆発があったんすかね?」

中条と上城は、中条の兄と加賀屋の脱出を見届けたあと
先に進んだ渡部、風呂戸、大和久を追って二階へやって来た。



――バカァンッ!

扉を吹き飛ばし、中へ入る二人。

そこは先ほどまで風呂戸達が戦っていた、大会議室……
と、言っても中にあった物は爆発で吹き飛んでしまっており、そこにはたった一つの物しか残ってはいなかった。

部屋の中央、おそらくは爆心地に真っ黒い何かが落ちている。


上城「………」

中条「……?それ、何ですか?」


上城「……人の腕、それも両腕。
アラキニウム生地の燃えカスがあるわ、熱に強いアラキニウムが燃えるなんてかなりの威力よ。
腕の持ち主はとっくに燃え尽きてるわね」

中条「げ……ッ、じゃあ人がいたって事ですか?」


上城「見て……何かを守るような形に握られてるわ。
ちょっと剥がしてみましょう」

中条「うひぃ〜……俺、あんまりそういうのは得意じゃないんですけど」

尻込みする中条に構わず、上城はベリベリと燃えカスやら指やらを剥がす。


上城「……あった。
守りたかったのはこれね」

そう言って差し出して見せたのは同じデザインの大小二つの指輪……


中条「これは……結婚指輪?
二つって事は、奥さんか旦那さんを亡くした人?」


上城「でしょうね。
ま、これで夫婦二人同じ場所に行けたって訳ね」


そう言って指輪を握り込むと、二つの指輪が星のようにキラキラと瞬き始める


上城「……ッラアアァァァアッ!!」

521 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:41:23 ID:leoTJKYQO
投げられた二つの指輪は、流星のように尾を引きながら空高く登っていく。

壊れた天井から差し込む夏に近い強烈な日差しの中でもハッキリと見える程、二つの光は輝いていた。





やがて、その輝きがすっかりと失せると、上城がゆっくりと振り向く……


上城「さ……いきましょう。
目的地はここじゃあないわ」



中条「あ……はい」




ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ……




本体】風呂戸 十郎
スタンド】トレンダ・ホーン
……生死不明(リタイア)

本体】角田
スタンド】ガリレオ・ガリレイ
……生死不明(リタイア)


本体】井口
スタンド】ヴリトラ
……死亡

522 ◆R0wKkjl1to:2012/06/30(土) 18:56:40 ID:leoTJKYQO
投下完了です(^O^)
駆け足気味です、本当は二話かけての所をカットして一話にしちゃいました

そして井口の動機もカットされてしまいました。
彼が爆発から守った二つの指輪と関係があるという事だけです


実際、自分が命をかけて戦う事になったら敵の戦う意味なんて関係ないなぁ……などと思いまして、大幅にカットwww

読者の皆様のご想像にお任せしよう、と。




それでこの間、ワールズエンド・ガールフレンドの単発を書いてみました。

【文章にしなくても伝わる】ってのが出来るのかな、と思いまして……また、そうした場合、読後感はどうなるのかなって。
あまり抽象的な事ばっかりでもいけないし、
この前の単発くらいが丁度良いか、簡単位ではないかと個人的には思っています。


皆様のご感想、又、参考になりそうな本など知っていましたら教えて下さいm(_ _)mよろしくお願いします


長文スイマセンorz

523名無しのスタンド使い:2012/07/03(火) 00:10:15 ID:OCVCZVyQ0
乙!!
指輪輝かせて飛ばすところの描写が好きだなあ
しかし遥さんの安定感はやっぱベテランやでぇ

524名無しのスタンド使い:2012/07/03(火) 11:26:43 ID:uXgDMwzo0
投下乙!
あえて想像の余地残すってのもいいね!

525 ◆R0wKkjl1to:2012/07/23(月) 22:38:32 ID:ioSAYOKcO
コメントありがとうございます(^O^)

>>523
たまには戦闘に関係ない使い方を……なんて思いましたww
作中設定で24ですからね……
子供の1人でもいたって良い年齢ですww

>>524
インセプションやアイランド的な終わり方ってなんか良いですよねww どっちなんだろう?って話をいつか考えたいです

526 ◆R0wKkjl1to:2012/07/23(月) 22:39:52 ID:ioSAYOKcO
上城「順番でいくと次はこの部屋ね……」


そこは大会議室から少し離れた控え室のような場所である。

入り口ドアを挟む形で、壁に背をつける二人……


上城「1、2の3でドアを蹴破るわよ……
1……


2の……


さ」



――バガアァアン!!


中条「ッ!?」


上城がドアを蹴破る前に、内側から吹っ飛んできた何かによりドアが破壊される……!

上城「……!
どうやら、当たりみたいね」



ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


扉をぶち破って飛び出してきたのは……先に進んだはずの渡部だった。
そして、部屋の中には



大和久「が……っ!」


胸ぐらを掴まれ、高く持ち上げられたまま暴れる大和久の姿。

持ち上げているのは、いづみの父【一 九十九】本人である……


中条「………!

てンめえぇぇぇえッ!!
何してくれてんだコラァッ!」


――ドバババババババアァーッ!!


上城が動くよりも早く、中条は一に飛びかかり、触手拳のラッシュを繰り出す……

しかし



一「フフ……頭に血が上るのが早いのか、先手必勝を考えているのか知らんが、まだ甘い」



――ガバッ!


中条「ッ!」


一は吊り上げた大和久をそのまま中条と自分の間に移動させた……


それはつまり、大和久を盾にした形になる。


中条「くッ!」


――ドゴオッ!

527 ◆R0wKkjl1to:2012/07/23(月) 22:41:32 ID:ioSAYOKcO
寸止めに成功するが、手痛い反撃をみぞおちに受け悶絶する中条……


一「これで全員か……?」


中条「うぇッ!……ぜ、全員だぁ?」

上城「……!」


薬「江藤 透、城嶋 丈威、橘 弥栄……
こいつらは死亡確認が取れてる。
後は風呂戸 十郎、それと刑事の角田。
この二人は生死不明だが、あの爆発だ……生きてても頭数には入らないだろうな」


そう言いながら薬売りが姿を現す……
その右腕にはビデオカメラ、左腕にはいづみを抱えていた。


中条「……ビデオカメラ?
いや、それより今何て言った?
……三人が死んだ?」

上城「あんたは……ッ!」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

薬「いよぉ……久しぶりだな?
予想通り、イイ女になってんじゃねえか」



中条「うるせえ黙れッ!
それより今なんつった!?」


一「聞こえて無かったのか?
君らのお仲間は『死んだ』のだよ」


中条「………!!
てめええええーッ!!M・T・B!!」


一「ッ!?」


一が想像していたよりも速く。
そして鋭く。

中条のスタンドが一の顎を【文字通り】打ち抜く……!


――ドビチャァーッ!


そう、文字通り。

打ち抜かれた顎は、周りの皮膚と肉を引き連れて壁に激突した。



一「…………?
フッ!ビャバャヒャヒャヒャ!ア!ヒャハャッヒッ!!」

一は一瞬、目を丸くした後
ぶっ飛んだ顎も溢れ出る血液も気にする素振りすらなく笑い出す……!

顎が無い男が高笑いをしているという、不気味この上ない風景だったが、中条も上城もその男から決して目を離さなかった。

528 ◆R0wKkjl1to:2012/07/23(月) 22:42:57 ID:ioSAYOKcO
一「いやはや!これは素晴らしい……
今のスピードは君の兄さんの能力かね?吸い取ったんだろう?
それともキレると強くなるタイプなのか?」


中条「え?」

上城「……これがッ!」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

中条が吹き飛ばした一の顎は、何事もなかったかのようにくっついていた……


いや、実際に何もなかったのだ。



一「これが俺の能力だ……
10秒前の過去を現在に被せるッ!

今のは、回避できず殴られた過去に回避して殴られなかった過去を被せた訳だな。
どうして回避出来たかって?
攻撃される事が分かっていれば避ける事など造作も無いのさッ!」



上城「ペラペラと良く喋る口ね。
顎が無い方が男前だったわよ?」


一「まぁそう言うな。
これから、君たちと俺とで対戦するんだ……
俺の能力を知らないと勝負にならないだろ?」


上城「勝負……?」


薬「あぁ、勝負だぜ。
このオッサン対お前ら全員のな。
そしてその様子は、俺がこのカメラで全国に向けて放送する」


中条「何が目的だ?国家転覆とは関係ないじゃねえか……」


一「無いさ。
だが、君たちは自衛隊さえ突破出来なかった我々の防衛線を越えてここまでやって来た……

その君たちを殺す事で、逆らっても無駄だと全国に知らしめるのさ」



ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


一「ほら、返すぞ」


乱暴に放り投げられた大和久を中条がスタンドで受け止める。


中条「大和久……!大丈夫か?」

大和久「……な、何とか……」

上城「渡部、いつまで寝てるつもり?」

渡部「イテテ……いや、起きてましたけどね?
口を挟むタイミングを逃しちゃって」





薬「勝負は30分後、お前ら四人、こっちは一人。
逃げるなら勝手だが、この娘の命はなくなると思え」

529 ◆R0wKkjl1to:2012/07/23(月) 22:43:59 ID:ioSAYOKcO
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


その後、別室へ通された四人の前には白衣を来た若い女性……いや、どう見ても中学生にしか見えない少女が待ち受けていた。


少女「みなさんはじめまして。
これから最終決戦へ赴くみなさんに、出来る限りの【治療】を施させていただきます」


中条「はぁ?治療だ?」

少女「はい、治療です。
ほらゲームとかだと、ラスボスの前に回復ポイントがあるじゃないですか。
それと同じです。
ま、ここにセーブポイントは無いんですけどね」


ニッコリと満面の笑みを浮かべる少女。

中条「……嘘くせえな」


上城「いや、やってもらいましょう。
……彼から」


上城はそう言って大和久を指す。


中条「いや……確かに大和久が一番ダメージを受けてますけど。
もしかしたら罠かも……」

上城「だからこそよ。
彼は今、スタンドを使えない……つまり、一との対決では役に立たない。
言い方を変えるなら【今、この中で一番死んでも構わない人間】なの」


その言葉を聞いた時、万次郎は頭の中で血液が沸騰したかのような感覚に陥いる。



――バゴオッ!


次の瞬間粉々に砕かれた机が宙を舞った……


中条「…………!」


目を充血させ、上城を睨みつける万次郎の拳からは血がポタポタと滴り落ちる。


中条「……あんたの!
言いたい事は分かる……!
だけどその言い方は……ッ!!」


大和久「……僕なら大丈夫さ、中条くん。
上城さんの言うとおりだ。
少しでも多くの人が生き残れるようにするにはそれが一番なんだ」


中条「大和久……」


大和久はそう言って、ふらふらと立ち上がり、少女の側へ近づく。


少女「話はついたみたいですね。
時間もあまりないですから、早速始めましょう

【ゴー・ナイン・シックスさん】!お願いしゃーッす!!」

530 ◆R0wKkjl1to:2012/07/23(月) 22:45:18 ID:ioSAYOKcO
596「ウシャアァーッ!
……小娘ェー!お願いしゃーすッテ何ジャこらッ!?
あ!?アンマシ調子コイテット噛ミ殺スゾ!?」

少女「あはは……ごめんなさい
ほら、それより早く治療してあげないと……」

596「……ちっ、ンナ事イチイチ言ワレナクテモ分カッテンヨ……
今、あいつヲ止メラレルノハ、こいつラシカイネーンダロ?」


少女は何も言わず、ただコクリと頷く。

596「シャーナイワ、今回ハ大目ニ見トイテヤル。
……デ?最初ハドイツナンダイ?」


大和久「……僕だ」

596「うほっ!いい男!
オネエサンガ、ソノ怪我治シテアゲルワ……イラッシャイ」

大和久「(何か間違ってるような気がするけど……まぁ、この際触れないでおこう)……はい」


釈然としない顔でゴー・ナイン・シックスさんと呼ばれるスタンドに近づく大和久……


少女から飛び出したこのスタンドは巨大な顔のみという風変わりな風体であった。

色気たっぷりの大きな大きな唇がテカテカと光を放つ
果たしてこれはグロスなのか
それともヨダレなのか……


596「イタダキマァ〜ッス」


――ブヂュルルルーッ!

大和久「ぐあぁああッ!?」


突然、ゴー・ナイン・シックスさんの口の中へと吸い込まれた大和久の体をヨダレと舌が弄ぶ……


大和久「ぬわーーーーーー!」

531 ◆R0wKkjl1to:2012/07/23(月) 22:46:29 ID:ioSAYOKcO
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


いづみ「……はっ!
あれ?ここどこ……?」


薬「よぉ、目ェ覚めたかよ?」

いづみ「あんたッ!アタシをさらってどうするつもり!?
比留間は!?礼二はどこッ!?」


一「いづみ、彼らは大丈夫だ。
無事でいるよ」


いづみ「あれ?お父さん……

いや、違う……!あなたは誰!?」


目の前にいる男は、どう見ても自分の父【一 九十九】である……
立ち居振る舞いから話し方、雰囲気までもが完璧に父のそれであったが、今、目の前にいるこの男とは【魂の波長】が合わない事をいづみは感じ取っていた。


一「……まいったな。
まさか一瞬で見破られるなんて、予想外だ」

薬「俺には良く分からねえけど、【家族】ってそういうもんなんじゃねえの?」


一「家族……か」

いづみ「おいおい、無視してんじゃないわよッ!
あんたが誰なのか答えなさいッ!
さもないと……【キャッツ・グローブ】!!」


キャ「でっしいぃいいいッッ!!」


――バアァーンッ!


いづみの体からキャッツが飛び出し、そのまま一へ飛びかかる!

いづみ「キャッツ!コードテイルよ!」


キャ「でしッ!」


――グリンッ!


一「うおッ!?」


鈍重そうな体躯であるにも関わらず、空中で一回転……

そのまま、縦の遠心力を利用した強烈な尻尾の一撃が、一の首を打った!


いづみ「見たかっ!」

一「ぐッ……!」


薬「……(なかなかやるじゃねえか)」

532 ◆R0wKkjl1to:2012/07/23(月) 22:48:14 ID:ioSAYOKcO
「フンッ!」

――ドグシャアァー!


一のスタンドの拳が、キャッツ・グローブの顔面にめり込む……

キャ「でじいぃいいーッ!
痛いでし!痛いでしッ!」


一「……残り8秒。楽しませてもらおう。

オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァアーッ!!」



――ドゴドゴドゴドゴドゴドゴ……ッ!


無慈悲に振り下ろされ続ける鉄槌に、キャッツ・グローブの顔面は原型を留めない程に変形し、それに応じて本体であるいづみの顔もみるみる腫れ上がっていく……


キャ「やめ……ッ!や……でし!
………で

……や

………

…………………」


殴られ続けるうちにキャッツ・グローブの存在が薄くなっていく。

一「オラアァー!」


――ドグシャアァアー!!


最後の一撃は、キャッツには当たらず床を砕く
キャッツ・グローブはすっかり消え失せてしまっていた。



一「んー……死んでしまったか?
後2秒残っていたんだがな」


いづみ「……ごぼっ」


いづみは言葉を発する事すら出来ず、ただ血の塊を口から吐き出した



ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ






一 いづみ
【スタンド】キャッツ・グローブ
――脳挫傷により死亡(リタイア)













ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

533 ◆R0wKkjl1to:2012/07/23(月) 22:49:51 ID:ioSAYOKcO
――ドゴオォッ!

キャ「でしぃっ!?」


次の瞬間、キャッツ・グローブは首根っこを掴まれ床に叩きつけられる。


いづみ「がはッ……!?」


一「気乗りはしないが……少々、教育が必要だな」

一の首には攻撃を受けた痕跡は無い

いづみ「やっ……ぱり……!
その能力は、父さんとは違う……ッ!!」


薬「おいやめろッ!計画と違うだろうが!」


一「安心しろ……この娘には傷一つ付けん。
二度と逆らう気も起こせないくらい、お仕置きをするだけさ」

いづみ「……!何を」


一「フンッ!」

――ドグシャアァー!


一のスタンドの拳が、キャッツ・グローブの顔面にめり込む……

キャ「でじいぃいいーッ!
痛いでし!痛いでしッ!」


一「……残り8秒。楽しませてもらおう。

オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァアーッ!!」



――ドゴドゴドゴドゴドゴドゴ……ッ!


無慈悲に振り下ろされ続ける鉄槌に、キャッツ・グローブの顔面は原型を留めない程に変形し、それに応じて本体であるいづみの顔もみるみる腫れ上がっていく……


キャ「やめ……ッ!や……でし!
………で

……や

………

…………………」


殴られ続けるうちにキャッツ・グローブの存在が薄くなっていく。

一「オラアァー!」


――ドグシャアァアー!!


最後の一撃は、キャッツには当たらず床を砕く
キャッツ・グローブはすっかり消え失せてしまっていた。



一「んー……死んでしまったか?
後2秒残っていたんだがな」


いづみ「……ごぼっ」


いづみは言葉を発する事すら出来ず、ただ血の塊を口から吐き出した



ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ






一 いづみ
【スタンド】キャッツ・グローブ
――脳挫傷により死亡(リタイア)

534 ◆R0wKkjl1to:2012/07/23(月) 22:51:45 ID:ioSAYOKcO
いづみ「はッ……!」


一「どうだったかな?なかなか貴重な体験だったと思うが……」


スタンドは抑えつけられているが、いづみの体には傷一つ付いていなかった。


いづみ「……!」


一を睨みつけるいづみだが、その顔は蒼白く、手足は小刻みに震えていた。

一の能力によっていづみの死はなかった事になった……だが、魂に刻み込まれた傷はなかった事にはなっていないのだ。


薬「……そのへんで止めとけ。
精神が死んじまう」


一「ふむ。それもそうだな」


――パッ……

拘束が緩まるとキャッツ・グローブはいづみの背中にそそくさと身を隠す

キャ「い……今のは何なんでしかッ!?
ぼこぼこ殴られて死んだと思ったのに、気が付いたら怪我一つなく抑えられていた……
催眠術だとか」

いづみ「うるさい黙れ」

キャ「………」


薬「それだけ言えるなら精神は大丈夫そうだな。

まったく、大した精神力だぜ
……お、そろそろ時間だ」



薬売りが時計に目をやるのとほぼ同時に、部屋の扉が開く。


――ガチャ……



ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド






中条「待たせたな……!」

大和久「一さんを返してもらう」

上城「その娘を取り返して、その後アンタの持つ『矢』を破壊させてもらうわ」

渡部「……ええい!ままよッ!」




ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド


一「来たか……ちょうど体も暖まって来たところだ
さっそく始めようか……!


四人まとめてかかってこい」

535 ◆R0wKkjl1to:2012/07/23(月) 22:53:55 ID:ioSAYOKcO
――コンコン……

管尾「越智先輩、起きてますか?」


管尾が病室へ入ると、ベッドから些かダルそうな様子の越智が顔を向ける。


越智「あぁ……君は、管尾仁……美ちゃんだね」


管尾「大丈夫ですか?顔色が良くないですけど」

越智「うん……まぁ、具合は良くないね」

そう言って床に視線を落とす越智。

管尾「……?」


越智の視線の先にはバランスボール程の大きさに膨れ上がり、蛹のようにカチカチに固まったハロー・ナスティーが居た。


越智「……(HNがこんなになるまで噂を喰ってもまだ実行されない……
改変するにはどれだけ必要なんだ?)」


管尾「先輩、ネット見てますか?」


越智「え?……あ、うん。見てるよ。

テロリスト集団が自衛隊の駐屯地はおろか米軍基地まで制圧したってね。
警察は市民の暴動を抑えるのに精一杯だし……これが日本オワタってやつかな?」

管尾「ふふっ、オワタって懐かしいですね。
それより……ちょっと見ていただきたいサイトがあるんですけど」

越智「……」


管尾はおもむろにモバイルPCを取り出し、とあるサイトを表示して越智へ向ける……


管尾「2chにあるニュー速VIPです。
ここの『一を倒せる奴らの名前』ってスレを見て下さい」


越智「あぁ、それか……
そこに『彼ら』の名前と情報が載ってるよね
バラしちゃうけど、それを最初に書き込んだのは僕さ……
これが現実になれば一を倒せる……!」


――ポロ……ッ


唐突に、管尾の眼から涙がこぼれる

越智「え!?何?どうしたの?」


管尾「せ……先輩がvipperだったなんて、嬉しくて……!
学校でも話が出来る人がいなくて……」

越智「いや、たまたま人が多そうだったのがVIPで、僕はどちらかと言うと文学……」

管尾「ちなみにこれが私の建てたスレです、デュフwww」

越智「(うわー……、引くわぁー)」



ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ……

536 ◆R0wKkjl1to:2012/07/23(月) 22:54:29 ID:ioSAYOKcO
投下完了です(^O^)
新し……く?使用させていただいたスタンド
No.451
【スタンド名】ゴー・ナイン・シックスさん
考案者:ID:dUphVbVMO様
絵:ID:zXRixBaHO様

ありがとうございましたm(_ _)m



なんだかやっと自分の中で終わりが見えてきました……

やはり行き当たりばったりは苦しい……何も考えずボスを選んだのがこんなに苦しいとはww
なんか昔もこんな事言ってた気がしますね

次からは書き溜めしようかしらいや、書く予定は無いんですけどねwww

537名無しのスタンド使い:2012/07/23(月) 23:35:05 ID:jJldapTM0
投下乙!
ジョン万もとうとう最終決戦かぁ……

それにしてもHNは本当になんでもアリだなwww

538名無しのスタンド使い:2012/07/24(火) 00:27:53 ID:QzYqrJu2O
コメントありがとうございます(^O^)

HNは時間があれば、何気に作中最強ですねww
彼が電通に就職したら大変な事になってしまう……


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