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妊婦の私が異世界ではエルフで聖戦士で

6名無しのごんべへ:2018/10/25(木) 00:06:16 ID:xi73pE2M0
森の奥深くを進もうと歩きはじめると、徐々に霧に囲まれ始めた。
「これは幻惑の魔術だ。ダークエルフの村は、こうやって魔王の目から逃れている。」

そう話すのは、今朝せっかく寝ていたところを叩き起こしてくれた男エルフ、ウルヴだ。

エルフにしてはすこし茶色く、彼曰く日焼けしたとのこと。
体系的には…モリモリマッチョマン…って感じ?
弓を得意とするのか、引く方の腕が特に太い。
足はその割には華奢にも見えるが、走って射るための最低限の筋肉しかつけてないとは彼の言葉。
森の入り口までに雑談して得た情報だ。

「うーん…どうしましょう…」
「簡単だよ。聖戦士である事を思いながら、目を閉じて感覚のまま進む。
そうすりゃつけるよう、この魔術はなってんだ。」
そうウルヴは話してきた。

さっそく私も目を閉じて聖戦士である事を考え続ける。
そうすると、背中を押すような風が吹いてきたのを感じる。
おそらく、風に身を委ねるように進むと着くのだろう。
そう感じた私は転ばないよう気をつけながら足を進めた。
ウルヴも、時折体を支えてくれていた。

「ついたみたいだぜ、聖戦士サマ」
ウルヴの言葉に目を開けると、そこには農村が広がっていた。
「とりあえずマターニア様からは、まずは村長とその娘の「ヘンクツな黒魔導師」と話をしてほしいってさ。場所は覚えてる。行くぜ。」
場所は覚えている。その言葉に少し気になりながらも、私はウルヴの後ろをついた。

「話は聞いておる。魔王の復活、それによるエルフとダークエルフの共闘の申し込み、と。
だが、われわれからしたら遺恨のまだ残るエルフとの共闘の話は先送りにしたい。
私個人の意見では協力したいのじゃが、なにぶんほかの老人たちが以前のエルフとの戦いを未だに根に持っておってな…」
村長の家のテーブルにつき、椅子に座るなりそうきりだす村長。

魔王を倒してからしばらくはエルフとダークエルフは仲が良かったが、だんだんと仲違いをするようになり、小競り合いも起きていた。

私は、森に向かう前に、ダークエルフについてホリィから聞いたそんな話を思い出しながらためいきをついた。

「そこで、だ。娘のハラームを仲間にして魔王や仲間を倒してほしい。その旅が再度の友好の証になろう。」
そう話して村長が頭を下げる。
「…私はまだ納得してないわ。だいたい、なんでエルフの男がいるパーティに入らなきゃいけないの。
万が一妊娠したらどうするってのよ!」
同席した娘…ハラームから、そんな声が出た。

黒い帽子に、ウルヴより黒い肌。白い短髪で、いかにも黒魔導師って感じだ。

「…そういえば、なぜそこまで妊娠を拒むのですか?
私たちは、赤ちゃんがいれば魔力のキャパシティが増える…みたいな話を聞いたのですが」

私がそうたずねると、

「それは貴方達エルフ、の場合。つまり、聖戦士とか白魔導士の話ね。
私たちダークエルフ、黒魔導師になると話が変わってくるのよ。
赤ちゃんは、基本的に聖のエネルギーを持つ。
私たちが子宮で子供を育てると、黒魔法の威力が激減するのよ。
だから、妊娠したダークエルフは基本的に家庭に入る。出産後また研究したりパーティに入るってのはアリだけど…
妊娠したまま旅なんて不安しかないわ!」

ハラームはそう断言した。

このままでは話は一向に進まない。

そう思った私は、「明日またお話ししにきます」と言って対策を立てる事にした。

帰り際にふと周りを見ると、優しそうな目でハラームを見るウルヴと、目を背け悲しそうにするハラームが目に入った。
(これはひょっとして突破口になるかも)
そう考えた私は、ウルヴにハラームとの関係を確かめる事にした。


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