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亡国の逃亡姫

44名無しのごんべへ:2019/07/21(日) 00:02:42 ID:TCCyLj1w0
「産まれたくないのかな…この子。私をこんなに苦しくして…痛くして…父親が居ない世界には産まれたくないって…」

息を整えながら、水分を口にしながらそんな事を思わず口にするアンジュリーゼ。

「弱気なことを言うんじゃないよぉ。アンジュリーゼさんを苦しくしてるのも、痛くしてるのも産まれたがってるから。
大体、産まれたくないならそういう行為をしたときに出来てなんかいないよぉ?」

優しく、それでいて強く、マリーはそう断言する。

「でしたら…良いのですが…んぁっ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

短く、激しくなる陣痛の荒波。股を閉じたくなるほどの股関節の痛み。
瞳を潤ませながら、必死にアンジュリーゼは息みを続ける。

その甲斐があってか、それから何回かの息みにより、頭頂部が少しずつ姿を現し始めていた。


「…これはやっぱりおかしくないか…?」
一方その頃、順調に進むナタリーの出産の様子を見ながらアルカは胎児の様子に違和感を持った。

「んぁっ、ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛っ…はぁ、はぁ…どうし、たの」
陣痛の波が収まったのか、息みをやめ息を整えながらナタリーが尋ねた。

「普通の子供ってのは頭から産まれるんだろ?
白いものに包まれたまま産まれそう…ってのは違和感がある。
…素人の俺じゃ判断できない。辛そうなところ悪いが、マリーさんに聞いてくる」

そう言って背を向け行こうとするアルカの手首を、強い力で握るナタリー。

「…アンジュリーゼ様には、アンジュリーゼ様にはくれぐれも心配をかけないよう…ん゛っ、ああ゛あ゛ァァァ!」

主人であるアンジュリーゼを不安にさせたくない。
そんな思いから握ったようだ。

「心配すんな。マリーさんに原因と対処法を聞いて、俺が対処法を出来るならやってみせるさ。
もちろんお前のご主人様には心配かけずにな」

そう話しまアルカは、息みを加えるために手首を力強く握っているナタリーの指をゆっくりと外し、早足でマリーとアンジュリーゼの元へ向かったのだった。

45名無しのごんべへ:2019/08/23(金) 22:37:52 ID:GSdDqf0gO
アルカに事情をきいたマリーはすぐさま思い付いた。
「それってナタリーさんまだ破水してないんじゃないかい?あんたその膜を手で破ってやれるかい?」
「えっ…!」
アルカは一瞬ためたらった。
しかしナタリーには自分が対応すると大見得を切ってきたばかりだ。
「わかったよ。やってみる」
急いでナタリーのもとへ戻った。

「はぁっ…はぁっ…ゔぅぅぅぅんっ…あぁぁっ!」
ナタリーは再び来た陣痛に合わせ息んできた。
息むたびに陰部から見えている白い膜が水風船のように膨らむ。
「おい、たしか破水ってやつをしてなかったよな?」
「はぁ、はぁ、はぁ…そういえば…ぐぅっうぅぅぅ!!」
「この膜を破れと言われた。やるぞ…!」
アルカは恐る恐る羊水で膨らんだ膜に触れる。
ぬるぬるとして、思いの外頑丈だった。
両手で膜を引っ張る――――

パシッ…ジョバァァ……

膜を破った瞬間、ナタリーの陰部から用水があふれでた。
そして本物の胎児の頭が見え隠れしている。

「ありがとう…ふぅっ、はぁっ…はぁっあああぁぁぁあっ!」
破水を皮切りに息みの衝動が増してきた。

46名無しのごんべへ:2019/08/28(水) 22:25:09 ID:OnJ2ew8M0
「ん゛ん゛ん゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛…」

どれくらい長い時間、陣痛の荒波に晒されただろう。
そんな感覚に襲われつつも、アンジュリーゼはひたすら陣痛に合わせ息んでいる。
気力や体力も限界を迎え、時折気を失いそうになりながらも股の痛みや腰、お腹の痛みで現実に戻るということを繰り返していた。

(今なら…息んでいる最中は目を閉じるな、という意味がわかりますわ…)

目を閉じてしまったら、そのまま気を失いかねない。そうしたら、赤ちゃんも自分も危うくなる。
そうアンジュリーゼは感じていた。

息むのをやめても身体の中に戻る感覚はもうない。
もう少しで、グレイデン様の赤ちゃんの顔を見ることが出来る。

それだけを頼りに、アンジュリーゼは気力を振り絞りながら息み続けていた。

47名無しのごんべへ:2019/08/30(金) 04:41:30 ID:S5xrMcQc0

 絶え間なく押し寄せる激痛の中でアンジュリーゼは、ただ、ただ赤ん坊を産む事だけを考えていた。
 身体は火照り、赤く染まる肌を球の汗が流れ落ちてベットを濡らす。
 マリーによって押し開かれた股座の中心では、癌状に盛り上がった膣口から胎児の肌が覗かせている。

「あと、少しだよぉ。頑張るだよぉ」
「ふぅ……はぁ……ふぅ――」

 励ましの声に答える余力はない。一時でも長く息を整え、備える。
 そうして備えるアンジュリーゼに答える様に陣痛が再び押し寄せて来た。

「――んぅーーー、ん゛ん゛ーー!!」

 渾身の力で息む。
 押し出される胎児が限界まで張り詰めた股口をさらに押し広げようと歪に広がった膣口にはまり込んでいく。
 引きつるような痛み。
 唇を一文字に結び、飲み込む。
 引き下がらない。その決意がアンジュリーゼを後押しする。

「――ん゛ぁあ゛あ゛!?」

 息んで。息んで。息んで。
 長く息み続けた、その果てに股座に挟まった大きなモノが抜ける。
 羊水を引っ掛けながら娩出した胎児の頭部。その衝撃に声が漏れた。
 起こした上体をベットに横たえ、アンジュリーゼは肩を上下させる。

「頭が出たよぉ。もう、少しだねぇ」

 自身に励ます様に微笑みを向けるマリーの言葉に頭が追い付く。
 手を伸ばしたそこには、しっかりとした感触がある。
 あと少し。あと少しでこの子に会える。
 マリーにつられる様にアンジュリーゼの顔にも笑みが浮かぶのであった

48名無しのごんべへ:2019/08/30(金) 18:03:58 ID:qDsnC1oo0
「もう無理にいきまなくていいよお。後は呼吸を整えて居るうちに出てくるはずさあ」

マリーが優しく赤ちゃんの頭を支え、そうアンジュリーゼに語る。

気を失わないように、目を開けたままアンジュリーゼは息を整えた。

「もう少しで体が全部抜けるよお」

そうマリーが話してすぐ、アンジュリーゼは股の違和感がなくなったのを感じた。

「おぎゃあ!おぎゃあ!」
「おめでとうアンジュリーゼさん。元気な男の子だよお」

違和感がなくなると同時に産声が上がり、性別を告げた後マリーはアンジュリーゼに抱かせる。

「かわいい…目元はグレイデン様に似ていますわ…」
汗で張り付く髪を気にせず、アンジュリーゼは赤ちゃんを抱きながら笑みを浮かべていた。


「向こうは産まれたみたいだな」
「んっ、はぁ…はぁ…良かった…ンァァァァッ!」

一方その頃、ナタリーの出産も佳境を迎えていた。
破水も終わり、赤ちゃんの頭が現れようとしている。

アルカは、陣痛に苦しみ、息んだり叫んだりするナタリーを、よこしまな心を持ちながらも少し心配そうに見つめ優しく手を握っているのだった。

49名無しのごんべへ:2020/03/08(日) 01:33:47 ID:GFzMXBVw0
「…マリーさん、ナタリーを助けてあげて」

アンジュリーゼがそう呟いた。
ただ、マリーは首を振る。

「アンジュリーゼさんが1人でも大丈夫だと思ってても、疲れとか色々あって命の危険になりかねないから駄目だよぉ。
私がアンジュリーゼさんを大丈夫って判断したら、ナタリーさんの出産介助するからねぇ」

マリーはそう言いながら脈を測る。

「ナタリーさんには寄り添う人がいる。余程の
事があったら私に知らせると思うよぉ」

そんな声を聞きながら、アンジュリーゼは睡魔に身を委ね始めていた。


「んぁぁぁぁ…」

一方その頃アルカに身を任せていたナタリーの出産はなかなか進んでいなかった。
頭が見えたと思えば、隠れるを繰り返す。
それでも、少しずつは前進している。
だが、長引くと命に関わる。そう考えたアルカは悩んで伝えた。

「立ったら出産が進むかもしれない。重力の力が息む時に赤ちゃんが下がるのを進めるかもな」

そうアルカの声を聞いたナタリーは、無言で頷きゆっくりと立ち上がる。
そして、ナタリーは自分からアルカの首に手を回した。

アルカはナタリーのお腹や背中をマッサージしながら様子を見る。

ナタリーは、腰をグルグルとゆっくり回したり、前後左右に動かしながら陣痛に合わせて息んでいた。
重力とその動きが出産を進めたのか、ようやく1人目の頭が戻らなくなっていた。

50名無しのごんべへ:2020/04/08(水) 14:08:31 ID:g7uIR6ocO
大きな塊が陰部に挟まってる感覚が顕著になる。
この塊を早く排出したいと、いきみの衝動も強くなる。

「はぁ…はぁっ…んんんんあぁぁぁぁぁっ」

ナタリーは腰を低く落としいきんだ。
いきむたびにじわじわと退治の頭が露になる。
アルカもそれを必死に支えた。

「あああぁぁぁっ!痛ぁぁぁぁいっ!」

ナタリーが叫んだ次の瞬間――

バシャァ―

羊水の噴出と共に頭が排出した。

「ふあぁぁっ…はぁぁっはぁっ…」

ナタリーの足ががくがくと震えている。
大きな山をひとつ越えた。

ナタリーはアルカの首から手を離し、そのまま雪崩れるように四つん這いになった。

「おいっ大丈夫か!?」

アルカはあわてふためく。

「大丈夫…うぅっ…んんぅぅぅっ!」

再び来た陣痛にいきむ。
アルカがオタオタしてる間にも退治の体が出てくる。

「はぁぁぁっ…で、出るぅっ…アルカっ…!!」

アルカはハッとし、とっさにナタリーの尻の方へ回った。
胎児はすでに肩まで出ていて、今にも生まれ落ちそうだった。

アルカは胎児の頭を支える。

「いいぞナタリー!」
「はぁ…はぁ…あぁっ…あぁぁぁぁっ!」
ズルッ―バシャアァ―

大量の羊水と共に胎児が娩出された。

フニャっ…ンギャァ…

無事に産声をあげる。

51名無しのごんべへ:2020/04/09(木) 07:33:30 ID:4P.OPDto0
「はぁ…はぁ…」

疲労感に包まれ、横たわるナタリー。
だが、そのお腹はまだ膨らみを持っている。
アルカは臍の緒を処置しながら聞く。

「双子だったのか…大丈夫なのか?凄く疲れてるが」

「大丈夫。アルカがいるしマリーさんもいますから」

気丈に振る舞うナタリー。だが、その顔は不安そうだ。
腕の中の、親父や自分に似た子供。それを見て改めてアルカは話した。

「なぁ…こういうときにいうのもなんだが…やっぱりお前を支えたいんだ。駄目か?」

「ほんと、こんなっ、ときにっ何を…んぁぁっ!」

ナタリーを支えたい。そう伝えるアルカと、わずかなインターバルを置いて再び陣痛に苦しむナタリー。

「…すまん。まずはもう1人、だな」

腕の中の赤ちゃんを安全な場所に置き、アルカは改めてナタリーの介助を始めるのだった

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53名無しのごんべへ:2021/01/23(土) 17:36:23 ID:3ZuOJjk20
 再び襲いかかる陣痛の波に耐えながら、ナタリーはベッドに腰を下ろしていた。
一度の出産を経て、かなり体力の消耗が激しい。自力では立つのもやっとという有様だった。
その様子を見たアルカが、枕やシーツを使って即席の背もたれを作ってくれた。
背もたれに身を横たえ、大きく膨れ上がったお腹を撫で擦る。
そのお腹を見て、二番目の子もさぞ大きな子なんだろうとアルカは思った。
出産が終わってすぐにお腹がしぼむわけではない。
役目が終わった子宮を娩出する後産もあるし、伸び切ってしまった皮膚や筋肉がすぐに元に戻るわけではない。
現代では一般常識とも言えるこの知識も、妊娠や出産とは縁遠かったアルカが知るわけもない。
事実、未だ産み月にも入っていないせいか、また双子という事もあってかそれほど大きいというわけではない。

「くぅ……っ! ぅんんっ……! んはぁあ……ぁああ!!」
 一際大きい陣痛にナタリーの顔が激しく歪む。自然と獣のような咆哮が口から漏れ出た。
大きく開かれた股の間に目をやると、かろうじて胎児の金色の髪が見え隠れしている。
陣痛の波に合わせて大きく息んだ後、真っ赤な顔ではぁはぁと荒い息を付き息を整えているナタリーの汗を拭いてやり、
額にへばりついた前髪をかき分けてやりながら、アルカの胸に未だ嘗てない感情が迸っていた。
性的欲求でもなく、独占欲でもなく、それは愛とも言えるものだった。

54名無しのごんべへ:2021/01/24(日) 17:32:00 ID:1CiIod.20
「なぁ…何かして欲しいことはないか?」

苦しむナタリーに何か出来ないか…アルカは思わずそう問いかけた。

「そうですね…んっ、胸がキツいので、少し母乳を搾ってくれませんか。
 1人目を産んでから、どうにも気になって…」
「本当にいいのか?上手く搾れるかもわからないぞ」

ナタリーの言葉にアルカが少し戸惑う様子を見せた。
アルカ自身も近くの農家の手伝いで牛の搾乳をした経験はあるものの人間の搾乳は流石に経験がないこと、
牛のお産を進めるために搾るという話を聞いたことがありナタリーを苦しめないかという気持ちになったからである。

「お願いします…んぅぅ、胸が楽になれば出産に集中できるので」

ナタリーの言葉に意を決して、アルカは胸の辺りまでナタリーの服をはだけさせた。
下着を取り外すと初めて見た時とは変わり黒に近い色の乳首が現れた。

(すげぇ…愛しいと同時にエロいと思う)

ほんの少しだけ性的欲求が湧いたが、それ以上に胸が温かくなる。
アルカは初めて接した時とは違いおそるおそる胸に手を向けた。

(重い…)

最初に感じた感覚はそれだった。最初の時もそれなりの大きさに感じたが重いという感覚はなかった。
指に力を入れてみると、少し跳ね返すような感覚。
胸に母乳が溜まっている、という感じだろうか。

(こりゃあ…確かに胸がキツいのもわかるかもしれない)

そんなことを考えながら、アルカは搾り出すように手を動かし始める。

「んっ、ふぅっ、ふぁっ…うぐっ!?」

少し感じるように声を出し、乳首から少し液体が見え始めた頃、ナタリーが急に苦しそうな声を上げた。
どうやら、陣痛が強くなったらしい。
思わず手を止めたアルカだが、ナタリーが首を横に振るのを見て再び手を動かす。
赤ちゃんにあげられるように哺乳瓶に当てた乳首から少しずつ母乳が溜まり始める。
両方の胸をある程度搾り出して出る量が少なくなったのを確認してアルカは哺乳瓶を外した。

「ありがとう…アル、カ…これで、胸は、楽ゥゥゥゥ…」

胸は楽になった…と言いたかったのだろうか。
それより先に、搾乳の影響で陣痛が強くなりナタリーが唸り始める。

それを見たアルカは、ナタリーの背中を撫でたり手を握ったりして励まし始める。

それは、まるで出産をする妻を必死に励ます夫のようだった……

55名無しのごんべへ:2021/05/25(火) 13:21:01 ID:y2RxLm5s0
「さあ頑張るんだ」
「ふううううーっ!!」
強い収縮が来たことで、自然とナタリーはいきみたくなってくる。
アルカは腰をさすって落ち着かせる。
「よしいいぞ、もう少しだ」

56名無しのごんべへ:2022/01/12(水) 11:13:23 ID:07Xswz2g0
「ふぅ、やっとアンジュリーゼさん処置が終わったよ。
ナタリーさんの様子はどうだい?」
アンジュリーゼの後産などの処理を終えたマリーがナタリーのところへやって来た。
「一人産んで、もう一人の陣痛が来たところだ。」
陣痛に耐えるナタリーに変わり、アルカがそう答えた。

「…ううー、うーーッ、…ア…アンジュリー…ん゛っ、ああ゛あ゛ァァァ!」
かなり強い陣痛が来てる様子だが、それでも主人であるアンジュリーゼが心配なようだ。

57ジャック:2022/03/29(火) 15:20:58 ID:wX7Hw.1o0
「大丈夫だよぉ。アンジェリーゼさんの出産は、無事終わったよ。後は、自分の事だけ考えなぁ〜」
 ナタリーの出産の状態をチェックしたマリーが優しく声をかける。
朴訥としたマリーの口調は場を和らげる。ナタリーも、陣痛の合間に微笑む。
「しかし……、んっ、ぁああ〜……。んっ! くぅう……ん、はぁああ〜……!」
 何かを言いかけたが、またもや襲いかかる陣痛の波に言葉を続ける事が出来ない。
最初の出産が功を奏したのか、第二子の出産の進みは早いようだ。陣痛もかなり強いものになっている。
インターバルもほぼない状態になっている。
第一子の出産を終え、かなり体力の消耗が激しいが、回復できる時間がかなり少ない。
「大丈夫だぁ〜。みんなこうやって産んできたんだぁ。ナタリーさんも出来るよぉ〜」
 マリーも必死に励ます。ただ声をかけているだけではない。胎児の進み具合などを逐一チェックしている。

58名無しのごんべへ:2022/04/16(土) 15:51:30 ID:.Fmei17g0
(やれやれ、ようやくマリーさんが来てくれたな。俺はもう付き添わなくても)

一抹の寂しさを感じながらアルカは離れようとした。だが…

「ッはぁ、はぁッ…何をやり切ったつもりでいるんです。
 私を支えるつもりなら…この子たちの親になるつもりなら……責任、をォォ…」

陣痛で言葉が途切れたが、『責任をとって最後まで見守ってください』と言いたかったのだろうか。
ナタリーはアルカの手首を掴んで苦しそうにそう話した。

「ッ!あぁ、ああ!俺は最後まで付き合ってやる!だから、もう少しだけ頑張れ…!」

掴まれた手を開かせ、しっかりと両手に包むように握りしめる。
ナタリーはその手を力強く握りしめ、うなりながらいきみを加える。

「その調子だよぉ。少しずつ頭が見えてきたねぇ」

マリーが優しく語りかける。

ナタリーの出産は、ようやく終盤に差し掛かろうとしていた…

59ジャック:2022/07/17(日) 09:04:20 ID:MSP7WOwQ0
 マリーが言う通り、第二子の児頭も見え隠れするようになってきた。
排臨という状態で、陣痛の合間にも頭が引っ込まなくなると発露という。
この状態になるとあとは胎児の体が出てくるだけなので、だいぶと楽になるはずだった。
だが、ナタリーが宿した双子は、平均よりもだいぶと大きく育っていた。
予定日まであと2ヶ月あるにも関わらず、単胎を宿して臨月になっていたアンジェリーゼよりも、そのお腹は大きかった。
ナタリー自身は血筋のせいかと思っていたが、それにしては胎児は大きく育ちすぎていた。
「ふぅぅうう……ぅうんんっ! ふぁあああんっ! ぅううんんんんっ!!」
 ほぼインターバルなしに次の陣痛がナタリーを襲う。
顔を真っ赤にして息むナタリーの広げた足の間から、引っ込みかけていた赤ちゃんの頭が再びググッと顔を出した。
第二子は羊膜が破れていたのか、胎児の頭が露出していた。
 その様子を見たアルカはホッとした。チラリと見たマリーもホッとした様子を見せている。
「この子は、ちゃんと破水してるよぉ〜。も少しでずっと頭が出た状態になるよぉ〜」
 胎児の状態を確認したマリーが、安心させるようにナタリーに語りかける。
この朴訥とした口調で大丈夫と言われれば、不思議な説得力があった。

60名無しのごんべへ:2022/07/19(火) 22:30:07 ID:21v0Nu3Q0
「ふぅう゛ぅ゛ぅ゛ゥ゛ゥ゛ン!ふぅう゛ぅ゛ぅ゛ゥ゛ゥ゛ァ゛ァ゛!!」

大きな頭を出そうと必死にいきむナタリー。だが、呼吸をするのを忘れたのか、酸欠で目の前がチカチカとかすみ始める。

「ダメだよぉ?お母さんが苦しいと、赤ちゃんが苦しくなるからねぇ。しっかり深呼吸するんだぁ」

マリーの言葉に、ナタリーは深呼吸をしながら空気を取り込む。
だが、股にハマりつつある赤ちゃんの頭のせいで、どうしてもいきみたいという考えが拭いきれない。

「ん、ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ァ゛ァ゛ァ゛!なんで、赤ちゃん出てきてくれないのッ」

ジタバタと思わず身体を動かしてしまう。
それを見ながらアルカは、「ナタリーは頑張ってる。もう少しだけ、辛抱してくれ」とただ優しく頭を撫でる事しかできない。

マリーが停滞している出産を進めるように股座に手を置く。
ナタリーのいきみに合わせて、マリーは会陰をグイ、と広げた。

「あ゛ぁ゛ァ゛ァ゛ぁ゛ぁ゛!!ざげる゛っ゛!裂゛け゛ち゛ゃ゛う゛ぅ゛ゥゥ!!!」

股が裂けるような痛みに思わず身体をよじらせるように動いてしまう。

「大丈夫。ここはそんな簡単に裂けたりしないよぉ。」

マリーの言葉通り、捲り上がるような状態ではあるものの、裂ける事はないまま大きな頭が少しずつ姿を現す。

そして、ようやく。

「んぁぁぁぁぁああぁぁぁぁ!!!」

長い叫びのあとに、マリーの手の中にズルン!と胎児の頭が抜け出てきたのだった。

61名無しのごんべへ:2022/09/09(金) 08:55:38 ID:ltFnjsyI0
「頭が出てきたよぉ。もうちょっとだぁ〜」
 マリーが朴訥とした口調でナタリーを励ます。
「ふぅううんっ! はぁあんんっ!!」
 一瞬微笑んだものの、すぐに次の陣痛の波が来てナタリーは力いっぱい息んだ。
「そうだよ、その調子だよぉ。もう少しで産まれるからなぁ」
 出産が佳境に入ったことを知ったマリーがさらにナタリーを励ます。
「……くぅううっ! ふぅううんんっ! ぅうんんんんんっ! くぅわぁああ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」
 一際大きな陣痛がナタリーを襲う。ナタリーはまるで獣のような叫び声を上げる。
すると、ズボッと大きな音がして赤ちゃんの丸々とした身体が姿を現した。

62名無しのごんべへ:2022/09/19(月) 15:17:12 ID:9cfM2aY60
「よし!後もう少し!!」
ジュルリッ!!
オギャアオギャアッ!!!
大きな音共に赤子は無事産声を上げた。
疲労感に包まれ、横たわるナタリー。
マリーが臍の緒を処置をしているうちに寝てしまったようだ。

63名無しのごんべへ:2023/09/04(月) 16:23:24 ID:Ni0OIjLo0
 こうして壮絶なナタリーの出産も無事終わりを迎えたのだった。
新たな命を生み出す大仕事をやってのけたアンジュリーゼとナタリーは、そろって翌日の昼近くまで眠っていた。
マリーが甲斐甲斐しく産まれた三人の赤子の世話役を買って出て、
アルカは使った物の整理や、室内の清掃を快く引き受けていた。
アルカは忙しく手を動かしながら、ナタリーと今後の事を話し合わないといけないなと考えていた。

64名無しのごんべへ:2023/12/08(金) 18:37:33 ID:Fe0otmlQ0
 それは、ナタリーとアンジェリーゼ、二人の壮絶な出産から一ヶ月が経った頃だった。
「なあ、ちょっといいか?」
 動けるようになるとメイドとしてのサガなのか、積極的に家事を手伝おうとするナタリーをアルカは呼び止めた。
忙しいのに何事だと目顔で抗議をするものの、大人しく着いてきたナタリーに、人気のない所まで誘導する。
家の中から畑の道具類をしまっていた納屋のような建物まで着た時、アルカは口を開いた。
「出産に立ち会えっていうから、立ち会ってやったぜ。それでよ、父親の役目はいつまですれば良いんだ?」
 出産に立ち会った後、産まれたばかりの我が子たちを見て、アルカの中に何かが芽生えた。
この子たちを命がけでも守ってやらねばならない。それは父性と呼べるものだったが、彼自身はその事を知らない。
だが、マリーに教えてもらいながら、おしめを替えたり、沐浴させてあげたりと積極的に育児を手伝っていた。
素直にナタリーの事を愛している。ずっと側にいたい。そう言えればよかったのだが、無性に照れくさくなってしまった。
だから、いつまでここに留めておくんだというような口調になってしまった。
「そうね……。子どもたちが成人するまで、かしら。父親がいないと思われると困るもの」
 ナタリーもまた、いつしかアルカの事を愛していたが、ふたりが出会ったきっかけを考えるとなかなか言い出せないでいた。
「そうか、分かった。成人まで、だな」
 この世界では15歳の誕生日で成人したと見做される。
それまでの期間限定ではなくて、死がふたりを分かつまでずっと一緒にいたいと密かに思うアルカだった。

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