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亡国の逃亡姫

1六道:2015/10/10(土) 19:50:18 ID:CnkZdM260
ストーリー:中世ヨーロッパ風の世界で、国民の革命に王妃の座を追われた亡国の姫が、人知れず山奥で出産する話です。

キャラクター:
アンジュリーゼ(18)…国民を先導する軍師による革命により国を追われる王妃。
炎上する城で国王と最後に契ったときに孕んでいる。

ナタリー(24)…アンジュリーゼお付きのメイド。アンジュリーゼと共に落ちのびる。

グレイデン(21)…国王でありアンジュリーゼの夫。
炎上する城と最後を共にする。

2六道:2015/10/10(土) 19:57:18 ID:CnkZdM260
「どうして、こんなことに…」
山道を走る馬上で呟く女性がいた。
その服は粗末な奴隷のような服を着ているが、身のこなしから気品が溢れている。
彼女の名前はアンジュリーゼ。とある国の王妃であった。
グレイデンという夫と共に善政を布いていた。
だが、時は民主化の流れに押されていた。
アンジュリーゼの国もその民主化の流れには逆らいきれず、軍師の先導する革命により城を追われたのだった。

アンジュリーゼは、城と命を共にした夫、グレイデンとの最後の契りを思い出していた…

3名無しのごんべへ:2015/10/14(水) 23:38:06 ID:L.9w2zro0
『まだここにいたのか、アンジュリーゼ。早く城から出ろ。逃げ遅れてはならぬ。』
火の手が上がり始めた城の中。
だが、アンジュリーゼのいた寝室には火の手は回っていなかった。
『ですが、グレイデン様…グレイデン様も共に…!』
『ならぬ。群集は私の命を狙っている。アンジュリーゼを群集の魔の手に落とすわけにはいかぬ。』
『でしたら!…でしたら、せめて、最後にグレイデン様の愛の証を…!』
『分かった。だが、時間はない。手短に済ませるぞ…』

そうして二人はアンジュリーゼの寝室で重なりあったのだった…
「…リーゼ様、アンジュリーゼ様!」
「はっ…」
グレイデンとの情事に思いを馳せ、集中しすぎていたようだ。
共に馬を並べて走っていたナタリーが、アンジュリーゼに声をかけていた。
「アンジュリーゼ様、もうすぐ国境です…そこまで行けば、無事に亡命出来ます!」
「分かりましたわ…!」
アンジュリーゼは鞭を入れスピードアップしていた。

4蓬莱:2016/01/11(月) 22:03:48 ID:0houVOMU0
 スピードアップした結果か、なんとかアンジュリーゼは辺境の村へとたどり着いていた。
その村の入口の前で、まさに崖といった断崖絶壁を登ってきたせいか、二人の馬は疲労困憊の状態で、一歩も歩けないようだった。
そこでアンジュリーゼとナタリーはその場で休憩することにした。
ここまで来れば追ってもなかなか追いつけないだろう。
馬もそうだが、馬上の二人も疲労困憊だった。
突如起きた革命により、着の身着のままで逃げてきた二人だったため、何も食物は持ってきていなかった。
ナタリーが気を利かせて、村の入口にある家屋に行き、食べ物と休息の場所を乞うた。
 住人は、ナタリーの身分を怪しんだものの、快く家屋の中に招いてくれ、食べ物を恵んでくれた。
アンジュリーゼが王妃だということは、絶対に明かしてはならぬ。
旅の者と身分を偽った二人は、馬小屋の傍らを与えられ、眠りにつくことになった。
が、その眠りは長くは続かなかった。
家の主人と息子と思われる若者が馬小屋に押し入り、一宿一飯の恩として二人の身体を貪ろうとやって来たのだった。

5六道:2016/01/11(月) 23:05:52 ID:z3ei4O3Y0
先にそれに気付いたのはナタリーだった。
(アンジュリーゼ様を汚らわしい輩の手に落としてはならない…)
そう考えたナタリーは、家の主人と息子に提案する。
『自分の持っている金銀と、自分の身体を差し出すから、主人には手を出さないでくれ』と。
その提案に乗った二人は、ナタリーを連れて、家の中へと入っていった…

6蓬莱:2016/04/20(水) 23:39:06 ID:/FscQJvM0
 小奇麗にはしているけれど、あまりにも小さい家ね。アンジェリーゼ様のお部屋ぐらいの大きさしかないわ。
二人に連れられて家の中に入るなりナタリーはそう思った。
村の中でもどちらかと言えば大きな部類に入る家だったが、
城に住み、王妃であるアンジェリーゼの世話係として仕えていたナタリーからすれば、とても小さな家に思えてしまう。
 入ってすぐ右手側にある寝室へと誘われる。どうやらここが主人の寝室らしい。
「おい。まずは服を脱げ」
 主人の方だろう。ひげの生えた年長の方がぞんざいな口調でナタリーに命令した。
なんでこんな平民の言うことを聞かなければいけないのか……。
忸怩たる思いはあるけれど、それはもちろん主君であるアンジェリーゼへの想いだけである。
 ナタリーは悔しさで顔を歪ませながらも服を脱ぎ始めた。
王妃とメイドとわかる格好では明らかにマズイということで、城にあった平民と同じような服を着ている。

7六道:2016/04/21(木) 18:26:51 ID:eVxxJINo0
「ほう、美しい身体をしている。来ているものも平民的ではあるが上質だ。
これは訳アリなんだろうな。」
ニタニタと、主人であろう髭の男は話しかけてきた。

(気持ちが悪い笑顔です。早く済ませないと…)

ナタリーの気持ちを知ってか知らずか、男の息子らしき青年は呟く。

「そう言えば、国王の妃が従者と逃亡したと言う噂も聞きますね。もしかすると…」

青年の言葉に身体を固くするナタリー。
だがすぐに、主人の
「まさか、そんなことは無いだろう。無駄口を叩かずに、こいつの身体を楽しもうじゃないか」
と言う言葉と愛撫に安堵を覚えた。
だが、ナタリーは安心はしない。

(バレないうちに、ここを去らないと…行為を終わらせたら、直ぐに逃げよう。)

そう、心の中で考えていた。
そんなことを露知らず、主人と青年は、ナタリーの身体を貪るように愛撫していた……

8蓬莱:2016/07/01(金) 22:11:18 ID:j1YMZZEg0
「んっ……、くはぁぁあ……! ふんっ、ぅうんんん……、ぁああん!」
 髭の男とその息子二人がかりで身体中を愛撫され、ナタリーは感じ始めていた。
「これはこれは……」
 無意識だからか、とくに意味のない言葉をつぶやきながら、髭の男がジュルリとつばを飲み込んだ。
本人が気づいていないだけで、アンジェリーゼ程ではないがナタリーも結構スタイルは良いのだ。
どうやらココが一番この女が感じるポイントらしいと当たりをつけた髭の男は、ナタリーの乳房を揉みしだいた。
「くぅ……んっ。はぅっ、うっ、んっく、ひぃいっ! ……んくぁっ、ふはぁっ、あぁうっ、うっ……」
 乳房を弄ばされて、身体からは電流のようななんとも言えない感覚に襲われるナタリー。
足フェチなのか、息子はずっとナタリーの足の指をしゃぶっていた。
「あぁっ……んっ! ふぅ、あぁ……あぁっ……。んっ、んはぁ……。くるッ! なんかくるぅッ!!」
 ピント店にそびえ立つピンク色の乳首を責め立てられ、ナタリーは生まれて初めての絶頂に達しようとしていた。
性の知識がないナタリーには、何か大きな濁流のような、得体のしれない何かがやってくるとしか認識できなかったが……。

9六道:2016/07/02(土) 00:32:06 ID:mvDBA97g0
「フッ…それはイク、と言うのだ、従者よ。そら、イけ!イッてしまえ!」
乳房を乱暴に揉みしだく主人。
だが、それすらもナタリーには快感だった。
「イクっ、イックゥゥゥ!」
プシャア、と愛液が陰部から吹き出す。
ハァハァと、荒い息をしているナタリーの腰を主人が掴む。
「休んでいる暇はないぞ、従者よ」
そう言うと主人はイチモツを一気に突き刺した。
「ツッ…」
純潔を奪われ、鮮血が股から流れる。
それでもナタリーは涙を流さなかった。
早くこの行為を終わらせて欲しい。
早くここから逃げなければ。
そう思うことで耐えようとしているのだった。

10舒龍:2016/07/25(月) 11:40:33 ID:2I1DTfis0
 それから主人とその息子に代わる代わる蹂躙され、やっと開放された時には夜が明けていた。
数回、いや数十回に渡りイカされ、また精を放たれ、ナタリーは動けなかった。
ようやく動けたのは、太陽が天高く登っている頃だった。
 その間、夜が明けるとともに仕事に出た二人は、
仕事も早々に引き上げ、家へと帰ってきた。ナタリーがまだ寝ているのを確認すると馬小屋へと向かった。
疲労困憊だったアンジェリーゼも、城の自室とは雲泥の差の環境にあっても、ぐっすりと眠りこけていた。
 二人はにやりと笑う。
ナタリーも上玉だったが、この娘のほうがスタイルもいいし、顔もいい。
どこか気品ある顔つきをしている。逃げたという妃かもしれない。
馬小屋のわらの間に寝こけているアンジェリーゼの顔を確認すると、
年かさの主人がそのアンジェリーゼの唇に自らの唇を近づけた。
その貪るような激しいキスに、さすがのアンジェリーゼも起きてしまった。
「……ッ! ぅううっ……、んんっ……」
 抗おうにも主人が馬乗りになっているので、アンジェリーゼには抗えず、この陵辱をただただ受けるしかできなかった。

11六道:2016/07/25(月) 17:42:31 ID:9f3R7GS60
アンジュリーゼは理解してしまった。
これから何をされるのかを。
(グレイデン様以外の殿方に身体を許すわけにはいかない…!)
そう決意したアンジュリーゼは自分から脱ぎ始めた。
そして二人に話しかける。
口と胸で奉仕するから、性交だけは止めてください、と。

グレイデンの子種が実を結ぼうとしているのをアンジュリーゼは知らない。
だから、二人の子供を孕んでしまうことに恐怖を覚えたのだ。

二人は頷き、アンジュリーゼは胸で髭の男のイチモツを挟み、若い男のイチモツをくわえるのだった。

12蓬莱:2016/08/09(火) 13:39:54 ID:V8GjN8G60
「むぅ……。んんっ……、はぁ、ぁああん」
 狭くて汚い馬小屋にアンジェリーゼのため息にも似た嬌声と、
ジュボジュボという汚らしい卑猥な音が響き渡る。
「ぅんん……ッ、んんっ……、うッ! ゲホゲホッ!」
 視界いっぱいに青白い若い男の尻が広がる中、
二人とも同時に射精してしまい、口の中と顔いっぱいに二人の精液を浴びることになってしまった。
初めて味わった苦い味とその勢いに思わずむせてしまうアンジェリーゼ。
その様子をニタニタと汚らしい笑みで見つめる二人。
もちろん二人とも、これだけで終わらせるつもりは毛頭ありませんでした。
むせて身を捩るアンジェリーゼに、後ろから若い男が羽交い締めにして行動を封じます。
髭の男が、アンジェリーゼのたわわなおっぱいにむしゃぶりつく。
「ひゃぁああ……! あっ、ふぅん……。ぃいやぁああ! あっ! ぅうんん!」
 ようやく自分のされていることを理解したアンジェリーゼが身をよじって抵抗しようにも、若い男がしっかりとホールドしているため、身動きできません。
ふたりの精液でべたべたになった顔から血の気が引き、蹂躙されて精液まみれになった口からは絶望が漏れます。

13六道:2016/08/09(火) 23:32:23 ID:urV7cflE0
(いや…嫌ですわ!グレイデン様以外に肌を許すのは…耐えられませんわ!
ナタリー…お願いですわ!早く来てくださいまし!)
必死で願うアンジュリーゼの願いは届かないのか。
胸を蹂躙され、絶望の表情を浮かべるアンジュリーゼ。
男二人が、いよいよアンジュリーゼに手を出そうとしたときだった。

「ご主人様に、手を出す気か…約束が違うではないか!」
護身用の刀剣をかざした、ナタリーが馬小屋の入口に立っていた。
男二人が舌打ちをして、家に向かう。
アンジュリーゼはナタリーに駆け寄り、涙を流すのだった。
「森に行きましょう、アンジュリーゼ様…お忍びで避暑を過ごす為の小屋が有るはず。
そこで、密やかに暮らすのです…」
ナタリーも一筋の涙を流しそう語りかける。

そして二人は男二人に気付かれないよう森へと向かうのだった。

14名無しのごんべへ:2016/08/14(日) 23:53:42 ID:j41z3w.sO
逃げるように村を出ると、森を目指す途中で町に立ち寄った。
商業が盛んなようで、旅人や旅の商人がたくさん居ることもあり、ここなら人の目も誤魔化せるだろうと一泊することにした。
アンジュリーゼとナタリーは今後の資金を得るために、持っていた宝石や装飾品を売ること決める。
これはアンジュリーゼがある程度困らないようにと、グレイデンが託してくれたものだ。
宿の部屋で中身を確認していると…
「これは…!!」
アンジュリーゼが声を上げる。
なんと装飾品の中にグレイデンとの結婚指輪が入っていたのだ。
「ああ…グレイデン様…」
アンジュリーゼは指輪を握りしめ、瞳に涙を浮かべる。
それを見たナタリーの顔が綻ぶ。
「アンジュリーゼ様…それを売るわけには参りません!どうか大事になさってください…」
ナタリーはアンジュリーゼの手に自分の手を重て言った。
「ありがとう。ナタリー…」
アンジュリーゼは自分のはめていた指輪と、グレイデンの指輪をネックレスにして身に付けることにした。
(きっとグレイデン様が守ってくださるわ…)

その夜二人は久しぶり風呂に入り、汚らわしい男共の痕跡を洗い流し、暖かいベッドで寝ることができた。

翌日、町を立つ前に宝石類を売る。
もしもの時のために、僅かばかり手元に残すことにした。
一度にたくさん出すと怪しまれるので、少しずつ分けて別々の店に売った。
さすがは商業の町をだ。
思いの外高くさばけた。
そしてボロボロだった羽織を新調した。 一般的で安価な物だから、この方が怪しまれないだろう。

町を出て少しした所で休憩を取る。
アンジュリーゼはナタリーにナイフを差し出し、こう申し出た。
「ナタリー、今ここで私の髪を切ってくださいませんか?」
「…!!なぜそのような!?」
「これから二人で生きていくのです。長い髪は邪魔になります」
アンジュリーゼの瞳からは強い意思が感じられた。
「…わかりました」
一本に結われた長く美しい髪に、結び目に合わせてナイフを当てる。
「アンジュリーゼ様、いきますよ…!」
「ええ…お願いしますわ」

ザシュッ―――

一気に刃を入れる。
バッサリと切られ、長かった髪はボブカットほどにまで短くなった。

アンジュリーゼは湖面に映った姿で確認した。
「サッパリしましたわ。ありがとうナタリー」
何か憑き物が取れたかのように、清々しささえ感じる。
「これで心機一転、頑張って生きていきましょう」
アンジュリーゼはナタリーの手を握りしめる。
「はい!アンジュリーゼ様」
二人は誓いを交わし、湖をあとにした。

15名無しのごんべへ:2016/08/14(日) 23:55:23 ID:j41z3w.sO
数日後、ようやく目指していた小屋にたどり着いた。
お忍びで利用していた別荘のような物だ。
人目に付かない場所が幸いし、建物の中も馬小屋も以前来たときのままだ。
近くの湧き水も枯れていない。
そして二人はそれぞれの馬を抱きしめ、労をねぎらった。
「よくここまで頑張ってくれました…!」

二人はほっと胸を撫で下ろした。
まずは換気と埃を払うため掃除をした。

ベッドも衣類もちゃんと使えそうだ。

裏の畑を見に行くと雑草こそ生えてるものの、ある程度の作物は自生しておりどうにかなりそうだった。

その日の晩はナタリーが畑の作物で食事を作ってくれた。
「おいしい…おいしいですわ、ナタリー…」
久しぶりのまともな食事だ。
アンジュリーゼは感無量の表情で口に運んだ。

ようやく安心して眠れる環境を手に入れたのだ―――。


翌日―――

「私だってグレイデン様の妻になるまでは平民でしたのよ。畑仕事くらいなんてことありませんわ!」
「ですが…」
ナタリーが畑の手入れをしようとすると、アンジュリーゼもやると聞かない。
「ナタリーに頼ってばかりもいられませんの!」
主に働かせるのは心苦しいが、結局ナタリーが折れ二人で作業することにした。
確かにアンジュリーゼは王に嫁ぐまでは一市民であったため、家事も畑仕事も一通りのことは問題なくできた。
そこでナタリーが提案した。
「ここから馬で20分程の所に小さな町があります。私はそこに働きにいきます」
当座の資金は得たが、それだけを頼りにはできない。
そう思いナタリーは働くことにした。
「そんな!貴方ばかりに働かせるなんて!」
「アンジュリーゼ様は代わりに此処を守っていただけませんか?」
自分が働きにいく代わりに、アンジュリーゼには家事や畑を任せるというのだ。
王族であったアンジュリーゼの顔を知る者がいるかもしれない。万が一に追っ手がこの辺りまで来たら危険だ。
その旨も説明する。
「そうですわね…解りましたわ!ここの事は任せてくださいまし」
「はい!」

16名無しのごんべへ:2016/08/14(日) 23:56:56 ID:j41z3w.sO
翌日、早速ナタリーは近く町へ仕事を探しに行き、幸運なことにすぐに見つかった。
教育施設の清掃員として働けることになった。
メイドをしていたナタリーにとって願ってもない仕事だ。
週に3日ほどで良い。
二人で暮らしていくには十分だった。


油断は出来ないが、これでやっと安心して暮らせる……。
国を追われてからここに至るまで、1ヶ月以上がたっていた。

この頃からアンジュリーゼの体に異変が起きた。
「ゔ…げぇっ、げぇぇっ……はぁ、はぁ…」
頻繁に嘔吐するようになった。
最初の異変は少し吐き気がある程度だったが、 日に日に強まり、今では食べても戻してしまう事が多い。
ナタリーが心配すると思い、密かに吐いていた。
しかし、ついにナタリーに気づかれてしう。
その日のアンジュリーゼは起きがけから具合が悪かった。
どうにか朝食を取るも、顔色が良くないのが見てとれる。
ナタリーはそれに気付き心配した。
「アンジュリーゼ様…お体の調子が優れないようですが…」
「大丈夫ですわ。昨晩少し寝付きが悪くて、少々寝不足なだけですから」
アンジュリーゼは気丈に振る舞う。
この日はナタリーの仕事が休みなため、ナタリーが家の事を全てやると買ってでるが、アンジュリーゼもやるといって聞かない。
仕方がないので、とりあえず畑仕事を二人でやることにした。
しかし作業中アンジュリーゼは吐き気を堪えていたが、突然中からせり上がってくる感覚に襲われる。
「ゔっ…うぷっ」
腹と口を押さえ木陰に急ぐ。
「アンジュリーゼ様!?」
すかさずナタリーが気付き後を追った。
「げぇっ…ぅ゙げぇぇっ、げぇぇっ…げほっ」
木陰にしゃがみこみ激しく嘔吐した。
「アンジュリーゼ様…!」
ナタリーは背中をさすり続ける。
「うぐっ…げぇぇっ…はぁ、はぁっ…」
ひとしきり戻すと、ナタリーに支えられ家に戻った。
顔は真っ青だ。
「やはりお体の具合が悪いようですね」
ナタリーが神妙な面持ちで問う。
「ごめんなさい…きっと今までの疲れが出たのでしょう。心配なさらないで」
「いいえ、何か悪い病気だといけません!働きにいってる町に医者がいますので診てもらいましょう!」
ナタリーは強く受診を奨めた。
アンジュリーゼも素直に頷く。
医者に往診してもらいたいところだが、ここを他人に知られるのは万が一に備え避けておきたい。
ナタリーはアンジュリーゼを連れて町まで行くことにした。
「少しご辛抱ください」
二人で一頭の馬に乗り、ナタリーが手綱を取った。

17名無しのごんべへ:2016/08/15(月) 00:03:53 ID:tiyX7jGYO
町へ向かう道中―――。
「ナタリー…と…止まってください…」
絞るような声でアンジュリーゼが言う。
「はい?」
馬を止めると、アンジュリーゼは急いで馬を降り木陰に向かう。
「うっ…げぇぇ…」
再び嘔吐してしまった。
ナタリーも馬を降り、アンジュリーゼの背中をさする。
(早く医者に…!)
ナタリーの心配は募るばかりだった。

どうにか町医者にたどり着くと、早速診察してくれた。
男性の医者が問診をする。
アンジュリーゼはこの辺りに引っ越してきて(旅と言うことは伏せた)少し前から吐き気があったこと、日増しに強くなり嘔吐するようになったことを伝えた。
「ふむ…特に変なものを食べたわけでもないと…。疲れから来る胃腸炎の可能性が高い」
医者は整腸作用のある薬草を処方してくれた。
「これを煎じて飲んで、2、3日様子を見なさい。良くならなければまた来てもらえるかな?」
「わかりました」
待合所で待っていたナタリーに医者が言ったことを伝える。 ナタリーは少しホッとした。

医者に出された薬草は3日分あった。
しかしそれを煎じて飲んでも、まったく効果は見られなかった。
飲みきってから2日経ったが、相変わらずアンジュリーゼは吐いてばかりいた。
そう――この症状は胃腸炎などではなく、グレイデンとの契りが実を結んだ証だったのだ。
このときはまだ知るよしもなかった。

辛うじて食事はとれるものの、その後はほぼ嘔吐してしまっていた。
「うぷっ…げぇっ、げぇぇぇっ……うぅ……」
「アンジュリーゼ様…もう一度、町医者に診てもらいましょう」
ナタリーは背中をさすりながら再受診を促した。
「そうですわね…」

重い体を引きずり再び町医者を尋ねた。

18名無しのごんべへ:2016/08/15(月) 00:05:40 ID:tiyX7jGYO
「うーむ、胃腸炎ではないとすると…独身とは聞いていたが、月のモノは?」
アンジュリーゼはハッとした。
(そういえば…)
逃げるのに必死で気にも止めていなかったが、あの日以来、月経は来ていなかった。
「実は…!」
医者には月経が無いことと、夫が亡くなったためこの辺りに越してきたのだと、
自身の国が滅びたことは伏せて説明した。
「そうか、そう言う事情があったのか…」
医者は申し訳なさそうな顔をした。
気を取り直し、改めて診察をした。
まずは下腹部を触診する。
「ちょっと悪いが、乳首を見せてもらえないかな?」
「えっ…あ、はい…」
アンジュリーゼは一瞬戸惑うものの、服を脱ぎ乳房をさらけ出した。
(あ…!)
改めて自分の乳首を見た。
以前と色がかわり黒ずんでいたのだ。
「ありがとう。仕舞っていいよ」
アンジュリーゼはいそいそと服を着た。
そして医者は最後に脈に触れた。
「うん、どうやら妊娠しているようだ」
「先生…!!本当ですか!?」
「ああ。おそらく三ヶ月を過ぎたところだろう。吐き気はそのせいだよ」
医者は吐き気や乳首の黒ずみなど、妊娠したときの特徴を説明した。
「あ…ああ……」
アンジュリーゼの瞳から涙が溢れ、両手で顔を覆う。
(グレイデン様…!!)
グレイデンとの愛の証を授かることができた、言葉にならない程の喜び――。
あまりの号泣に医者も困惑したが、アンジュリーゼは涙をぬぐい、泣き笑いしなながらお腹に手を当てた。
「スミマセン…嬉しくて嬉しくて…!」
「そうか、それはよかった!」
医者も笑顔を見せた。
「しばらくは悪阻が続くと思うが…食べられるものはキチンと食べて、栄養をつけよう」
アンジュリーゼは医者の言葉をひとつひとつ噛み締めた。

診察が終わると、待合所にいるナタリーに抱きついた。
「ナタリー…!」
「アンジュリーゼ様、どうされました!?」
アンジュリーゼは早く帰ろうとナタリーを促した。
ナタリーは会計を済ませ、足早に馬を出した。

19名無しのごんべへ:2016/08/15(月) 00:11:16 ID:tiyX7jGYO
途中、アンジュリーゼはまた吐き気がやって来たので馬を止めた。
「…げぇぇ〜っ…はぁ、はぁ…」
ナタリーは背中をさする。
しかし妊娠を伝えるには調度よかった。
戻し終わり体制を整えると、アンジュリーゼはナタリーの目を見つめて言った。
「ナタリー、私のお腹にグレイデン様との赤ちゃんを授かったんです…!」
「ええっ!!」
ナタリーは驚き手で口を覆った。
「それは本当ですか!?」
「ええ、こうして吐いてしまうのはそのせいだと」
「あぁ…アンジュリーゼ様!おめでとうございます!」
二人は抱き締め合い喜んだ。
早く伝えたかったが、町でグレイデンの名を出すわけにはいかなかったので、人気のない場所まで待っていたのだ。
再び馬に乗ると、ゆっくりゆっくり家を目指した。
その間もアンジュリーゼは大事そうにお腹に手を当てていた。

20六道:2016/08/15(月) 01:01:51 ID:ZSf6RMDw0
アンジュリーゼの妊娠が発覚して2週ほど経った後。
アンジュリーゼは、妊娠のために暫くは安静をしていた。
その間もナタリーは甲斐甲斐しく働いていた。
だが、その生活もすこしづつ変わろうとしていた……

その原因は、ナタリーの胎内に芽吹いた、あの二人の種だった。
ナタリーが教育施設で仕事をして、仕事のために調理室を通った時。
「う゛っ……うぷっ……」
込み上げるような吐き気が、ナタリーを襲った。
ナタリーは走ってトイレへと向かう。
そして、便器に向かい嘔吐するのだった。
「うげぇ…っ、はぁ、はぁ、うぷっ…うげぇ……」
ひとしきり吐いた後、ナタリーはふと考える。
そう言えば、最近生理が来ていない。
普段から不順気味ではあるのだが、何となくそれだけでは無い気がしていた。
(私も、アンジュリーゼ様のように妊娠したのだろうか…)
ナタリーはそう考えていた。
だが、だとすればあの二人の子供だ。
アンジュリーゼのように、望まれて産まれる子供ではない。
ナタリーは悩んだあげく、妊娠していない可能性も考え、仕事を続けるのだった。

21名無しのごんべへ:2017/03/01(水) 09:33:23 ID:5cFC35Lc0
 しかし初めてのつわりから一週間後。
未だつわりのような吐き気は収まることはなく、むしろより強くなっていった。
調理室の前を通りかかろうとすると、思わずうずくまってしまうほどの吐き気に襲われる。
そのため、調理室前から教室担当へ配置換えになってしまった。
 教室担当になると、子どもたちと触れ合う時間も多くなる。
おとなしい子どもたちばかりなら可愛いものだが、やんちゃな子どもも当然居る。
廊下を走り回る子どもたちにぶつかって転びでもしたら、お腹の子は危ない。
しかし、アンジェリーゼ様と違って、自分に宿っているのは産まれるべきではない陵辱の結果の子だ。
むしろそうなって欲しいとナタリーは思っていたが、なかなかその機会は訪れないままだった。

22名無しのごんべへ:2017/03/02(木) 20:53:23 ID:QyX7bSdY0
その頃にはアンジュリーゼのつわりは少し楽になったようで、ナタリーはアンジュリーゼに働いて疲れているから、と誤魔化して食事を作ってもらっていた。
自分が作ると、嘔吐してしまうのか目に見えているからだ。
アンジュリーゼは酸味の効いたサラダを好んでいるようだ。
「ナタリー。最近疲れているからって家では食べないじゃない。職場では食べてる?
なんだか最近痩せたようよ。顔も青いし…」
アンジュリーゼは心配そうにナタリーに話していた。
「大丈夫ですよ、アンジュリーゼ様。キチンと食事しています。」
ナタリーはそう彼女に話していた。
それは半分は本当で半分は嘘だった。
食事はしているが、固形のものが口に合わず、スープを飲んで誤魔化していたのだ。
そんなナタリーを見て、アンジュリーゼは不安そうに眺めていた。

数日後。
教育施設が休日のこの日、ナタリーも休みを取っていた。
身体は怠く、眠気もかなりのものだ。
それでもなんとか体を起こし、ナタリーは居間へと向かう。
「おはよう、ナタリー。今日は休みだから、朝ご飯食べるでしょう?
私が作ったから、食べてね。」
そう言うと目の前にはライスとスープ、サラダが置かれていた。
ナタリーはライスの匂いで嘔吐感を感じつつ、アンジュリーゼの行為を無駄にしないようにとスープだけは飲み干していた。
「ナタリー…やはり、あなたどこか悪いんじゃないの?全然食べていないじゃない。」
「だ、大丈夫です!ほら、ライスもこのように…」
心配をかけないようにと、ナタリーは無理矢理ライスを口に運ぶ。
そして、口に入れた瞬間、ライスの匂いが一気に広がり、一気に気持ちが悪くなっていた。
思わず口を押さえ、洗面所へと向かう。
そしてナタリーは、嘔吐するのだった。

「ナタリー…あなた、もしかして妊娠しているの?その様子、まるで少し前の私みたいじゃない…」
アンジュリーゼは嘔吐するナタリーの背中を撫でながら、そう話す。
これ以上誤魔化せない。
そう考えたナタリーはアンジュリーゼに全てを話した。
アンジュリーゼの貞操を守るために、身体を許したこと。
そして、その結果身ごもってしまったかもしれないことを、だ。

23名無しのごんべへ:2017/09/14(木) 16:12:24 ID:XCEMaCK.0
 アンジェリーゼがてっきり激怒するかと思っていたナタリーだったが、
私のためにありがとうと頭を下げたアンジェリーゼだった。
 身重の女性二人では、力仕事は出来ない。かといって、生活のためにもある程度は仕方のないことだった。
二人して協力して畑を耕している内、季節は移ろい、気温は日に日に高くなっていった。
「ナタリー、少し休憩しなさい。あまり根を詰めると身体に毒ですわ」
 日陰で先に休憩していたアンジェリーゼがお腹に手を置きながら、声をかける。
6ヶ月目を迎えたお腹は、まだ肌寒い森の気候に合わせて少し厚手の服を着ているものの、その膨らみを隠せてはいなかった。
「そうですね。ではお言葉に甘えて……」
 ニッコリと微笑み、アンジェリーゼの隣に腰を下ろしたナタリーのお腹もまた、それとわかるほどの優しい膨らみを持っていた。
やはりナタリーは妊娠しており、4ヶ月目になろうというところだったが、そのお腹はアンジェリーゼと同じぐらいの膨らんでいた。
実は、ナタリーは双子を妊娠していたのだが、その事はまだ知らない。
また、たまたま街に用事できていた馬小屋の青年がナタリーの姿を見つけ、こっそり後をつけ始めたことも知らなかった。

24名無しのごんべへ:2017/09/17(日) 14:05:17 ID:qMF2Fp160
ある日、ナタリーは街で所用を済ませていた。
教育施設を辞める手続きをするためだ。
身重の身体で教育施設で働くには難儀だと考えたためだ。

その帰り道、路地裏近くを歩いていると手を引かれ路地裏に連れられた。
そこには馬小屋の青年がいた。
「なんのようですか、貴方」
「連れないなぁ…身体を許した仲じゃないか。それに、その腹…妊娠してるんだろ?」
「ええ。憎々しい貴方か貴方の父親の子です。子供に罪はないから産むつもりですけど」
「ふぅん?ところで、お前のご主人様、訳ありなんだろ?
噂にされたく…ないよなぁ?」
「…私になにをしろ、と」
「簡単な話さ。お前の身体か、手切れ金。1週間ほど猶予をやるから、考えてくれよな」

そう言って馬小屋の青年はその場所を去った。

隠れ家にもどりナタリーは考えた。
アンジュリーゼの元を去るか、手切れ金を渡すかと。
手切れ金を渡してもあの様な輩は度々金をせびりに来るだろう。
安全をきすためにも手切れ金を渡して、姿をくらますべきかもしれない。
ただ、その為には安全な避難先を探し、先に安定期のアンジュリーゼをそこに向かわせ、ナタリーも安定期になってからそこに向かわねばならない。


悩んだ挙句、ナタリーはアンジュリーゼに相談することに決めたのだった。

25名無しのごんべへ:2018/03/18(日) 13:21:10 ID:C1KlvES20
「そうだったんですか……。しかし、ここがダメとなると、どこかありましたか?」
 ナタリーから相談を受けたアンジェリーゼは眉を曇らせた。
6ヶ月になるアンジェリーゼは体調もいいし、すでに安定期に入っている。
しかし、ここを離れるとして次の行き先のアテはなかった。
とりあえず、ここを離れるのは確定事項として、どこか良さげな場所はないか、調べよう。
一週間という期限があるので、ギリギリまで探し、なかっても出発しようということになった。

 しかしその油断が命取りになることをまだ二人は知らない。
馬小屋の青年は既にナタリーをロックオンしており、その翌日早速牙を剥いた。
街へ出て、買い物をしたナタリー。
少し油断していたかもしれない。また、馬小屋の青年が近づいてきたのだった。
「よう。腹は決まったのかい? ……まあいいや、ちょっと顔貸せよ」
 苦々しい顔でだんまりを決め込むナタリーに、業を煮やしたのか、青年は力ずくでナタリーを路地裏へと連れ込んだ。
ナタリーだって、何も知らない乙女でもない。連れ込まれた路地裏で何が行われるか察し、
最近目立ってきたお腹を守るように手を這わせるのだった。

26名無しのごんべへ:2018/07/22(日) 01:00:57 ID:bX6F6Vb.0
ナタリーは深呼吸をし、青年に伝えた。

「私はまだ安定期ではないので、手切れ金を用意します。それで、貴方は満足なのでしょう?」

それに、青年はコクリと頷き続けて話す。

「ああ。俺自身は、な。親父の方は分からん。執念深く探す可能性もあると思うぜ。
それで付き合う事になるかもしれんから、そうなったら勘弁してくれ。」
「そ、そんな…」
「これは俺からの提案だ。この場所に居ても危ないなら、いっそ親戚に匿ってもらうのはどうだ?
高貴な血筋の嫁なら、旦那の親戚があるだろう?」


そこまで聞いて、ナタリーは思い出した。
この街から2つ、国境を越えるアイリッシャは、グレイデンの母が生まれた国だ。
そこは王家は政治を取らず、民衆が出した意見書を形式的に王家が採択し、民衆が政治を取るという形をとっている。
ここならば、安全に2人は出産できる。ナタリーは直感でそう思った。

それと同時にナタリーは不思議に思い尋ねた。
「なぜ、お前がそのことを話しに…後でお前の父上に叱られるのでは?」
「なーに、黙ってたらバレないさ。それと…なぜ話したかって?
なんでだろうな。犯してるうちに惚れたのかもな、お前に」
「な…っ、自己中心的にもほどがある!」
「だろう、な。アンタには叱られると思ったよ。じゃあな。
金は、約1週間後取りに来る。その後、お前さんが安定期になるころまでゆっくり家に帰るさ。」
「安定期に入ってすぐ逃げろということだな。わかった…色々ありがとうな…えーと…」
「アルカ。女の名前みたいってよく言われるぜ。ま、名前なんて忘れても構わないさ。」
「忘れることは出来ないだろうな。この、身体に刻まれた証のせいで…」
そう言ってナタリーは複雑そうな顔でお腹を撫でるのだった。

27ジャック:2018/10/24(水) 16:14:18 ID:YG6TZlps0
 一週間後、同じ路地裏でアルカは待っていた。
手切れ金を入れた袋を渡し、手でその重さを量っていたアルカはニヤリと笑った。
そして驚くべきことに、そのまま袋をナタリーに返したのだ。
「これは俺からのプレゼントだ。まあ、養育費と思って受け取ってくれ。親父には強盗に奪われたとか適当に言っておくから」
 唖然とするナタリーだったが、アルカは強引に袋をナタリーに握らせた。
「そう……。ありがたく受け取っておくわ。そうそう、あと1ヶ月後にはここを出るわ」
 ポツリと呟くナタリーの瞳はかすかに潤んでいた。
ナタリーが安定期に入るまで後二ヶ月と少しあったが、アンジェリーゼの事を心配したからだった。
ナタリーよりも2ヶ月早く妊娠したアンジェリーゼは、出発の時8ヶ月目になる計算だ。
アイリッシャまでは2ヶ月ぐらいは掛かる。そうすると、アイリッシャに辿り着くまでに産気づく可能性が高い。
主人であるアンジェリーゼに、そんな危険はマネはさせられない。
自分は少々厳しいが、双子を宿したお腹は日に日に大きく重くなっていく。出発は早いほうがいいだろうというナタリーの判断だった。
「そうか……、寂しくなるな。まあ、元気でな。俺が言うのも何だけどさ」
「ええ。あなたも、ね……」
 永遠の別れではない。近い内にまた会うことになる。ナタリーの胸には、確信にも似た予感があった。

28名無しのごんべへ:2018/10/24(水) 19:33:56 ID:ZBW8w2EA0
「ようやく一息つけますね、アンジュリーゼ様」
「ええ、ここなら安心して産めそうです」
長旅を終え、少しほこりの積もった家に入り、アンジュリーゼとナタリーはお腹を撫でながらそう会話した。

森から出て街に入り、資金から捻出して馬車を買って出発し、アイリッシャの領地内に入ったのが数日前。
予定より早く隠れ家についた2人は、お腹を少し気にしながらもソファーに座る。

「これもアルカの忠告と、アイリッシャ国王のご厚意のおかげですね」
「ええ。国王には頼りきりになってしまいましたわ…」
ナタリーの語りかけに、アンジュリーゼはうなづいたあとそう話した。

ナタリーがアイリッシャ国王に手紙を送ったのがアルカと別れてすぐ。
1ヶ月ほど先に行くつもりだったが、アイリッシャ国王の「ナタリー殿のお話から察するに急を要する」との返事で、
アイリッシャ国内の隠れ家を早急に用意してもらえた2人は、少し計画を前倒しにして隠れ家に向かった。
隠れ家は、アイリッシャ国の首都から少し離れた田舎町に用意されていた。
首都へ向かう道が近く、人の出入りが多いため追っ手などに気付かれにくい場所との事で選ばれたと返事の手紙に書かれていた。

「しかし…やはりずいぶんとお腹が大きくなってしまいましたね」
「クスクス。ナタリーの方が大きくなってるんじゃないかしら?」
ナタリーがお腹を撫で、アンジュリーゼはそれを見ながら少し笑みを浮かべた。

旅を少し強行したものの、なんとか早産も起こさずこの隠れ家に着いた。
しかし、アンジュリーゼも産み月が近く、ナタリーも双子ということを考えると同時に陣痛や出産を迎える可能性がある。
馬車内で産気づかないで良かった。2人はそう安堵をしていた。

「うーん…流石に疲れが出たかしら。久しぶりにゆっくりとベッドで寝れそうね。
旅の途中では、追っ手に合わないか心配でしたもの」
「そうですね…すこしほこりっぽいですが、今日は休みましょう。
流石に私も疲れました…」
アンジュリーゼが背伸びをしながらナタリーに話しかけ、ナタリーもアンジュリーゼに語りかける。
2人の信頼は旅のおかげでさらに強くなっていた。

「そういえばナタリー、出産の時はどうするのかしら?」
「そうですね…産婆さんを呼べればいいのですが、なにぶん私の赤ちゃんもアンジュリーゼ様の赤ちゃんもいつ産まれるかも予想ができませんからね…
おそらく、私たちでなんとかしなくてはいけない可能性が高いのでは…」
アンジュリーゼの言葉に、そう返すナタリー。

2人は、不安を消すようにお腹を撫で続けていた。

29舒龍:2019/01/03(木) 14:17:57 ID:kmO5fYKk0
 翌朝。
久しぶりに柔らかいベッドでゆっくりと休息をとった二人は、朝食を摂っていた。
隠れ家の傍らには小さいながらも畑が用意されており、誰かが手入れしているのか、ちょうど食べごろの野菜もあった。
自由に使ってくれて構わない。と国王のお許しを頂いていたので、さっそく朝食の食卓に瑞々しい野菜が並んだ。
コンコン……、コンコンコン。
玄関の扉がノックする音が聞こえ、二人は顔を見合わせた。自然とお腹の子を守るように手が動く。
「あぁ……。国王からの特使が参ったのでしょう」
 ナタリーが何かを思い出した風につぶやく。国王から何か用事があるときは、独特なリズムでノックをすると決めていた。
それを思い出したのだ。
よっこいしょっ。と掛け声を上げて大儀そうに椅子から立ち上がったナタリーは、玄関へと向かう。
コン……、コンコンコンコン。
ナタリーも独特なリズムでノックを返す。
「国王の特使で参った。開けてもらえるかな?」
 意外にも若い女性の声だった。声からは、凛とした雰囲気が感じ取れる。
ナタリーが扉を開けると、銀色の鎧に身を包んだ若い女性が立っていた。
「そなたは、ナタリー殿かな? 耳寄りな情報を持って参った。というのは、産婆のことだ」
 カタリナと名乗った女性は、産婆を手配することを告げに来たのだった。

 予定より早く着いたとは言え、アンジェリーゼのお腹はすでに限界近くまで膨らみ、
最近少し膨らみの頂点が下がってきたような気がする。長らく医師の診察を受けていないのでわからないが、そろそろなのは間違いなかった。
あと予定日まで2ヶ月あるはずのナタリーもまた、双子を宿しているせいか、お腹の大きさだけを見るとアンジェリーゼよりも遥かに大きい。
出産経験もないふたりだけで産むことになるのかと不安に思っていた頃にちょうどもたらされた吉報だった。

30名無しのごんべへ:2019/01/08(火) 01:37:15 ID:ssg8xgEU0
夕方には産婆はこの家に着く。そう伝えカタリナは足早に去っていった。
近く、国王が退位し息子が即位をする。それ故に騎士団も護衛や見張りで猫の手も借りたいくらい忙しいと前々から言っていた。

「無事に退位の式典と戴冠式が終わればいいですね」
「えぇ…隣国も少し気になりますからね」

ナタリーの言葉にアンジュリーゼはそう返事をした。

隣国が傭兵を集めているという噂がこの近くまで流れている。
退位の式典や戴冠式で人手が足りないこの時期に、もしも隣国が出兵すれば、首都に向かう道が近くにあるこの街も戦火に焼かれる可能性は少なくない。

「そうならないように手を尽くすのが、私の務めです」

カタリナはそう話していたが不安はぬぐいきれない。
そんな不安からか、旅の疲れが一気に来たのか、お腹の張りはいっそう強くなったように2人は感じていた。


コンコン……、コンコンコン。

赤い夕日が窓から差し込んでいるのをお腹を撫でながら2人がボォっと眺めていると、独特なリズムで玄関のドアが叩かれた。

「どうやら産婆さんが来たようですね」

ふう、と息をして気合いを入れ、ゆっくりとナタリーが立ち上がる。

コン……、コンコンコンコン。

カタリナが来た時のようにナタリーはノックを返した。

「カタリナさんに産婆さんを頼まれたのできたよぉ。入れて欲しいんだぁ」

この地方でたまに見かける独特な訛りで話す女性の声。

ナタリーが扉を開けると、赤みがかった短髪に、恰幅がいい女性。
腕には産まれて半年ぐらいであろう赤子が抱かれている。

「私はマリーって名前なんだよぉ。こう見えて5児の母親なんだぁ。
1番下の子以外は旦那と義理の親と肉親に任せてきたから、2人の子供が産まれるまでの間、しばらくここに住まわせてもらうよぉ。
よろしくねぇ」

丸っこい顔のマリーは、そう言って頭を下げたのだった。

31名無しのごんべへ:2019/01/12(土) 17:40:09 ID:c0h8WOwU0

「二人ともこれに着替えて欲しいんだよぉ」

 連れて来た末っ子をアンジュリーゼ、ナタリーに預け持ってきた荷物を片付けたマリーの言葉に二人は目を瞬かせた。
 眠る赤子をマリーに返せば、彼女は慣れた様子でおんぶ紐を通して背負う。そして、そのまま立った二人の身体に持ってきた古着を当てサイズを確認して頷く。
 新品ではないにしろ、痛んだ様子も見られない服――貫頭衣をそれぞれマリーは手渡した。

「私の御下がりなのは悪いんだけども、二人の恰好はキツキツで見てられないんだよぉ。私の村じゃ産み月を迎えた妊婦は皆これ着て過ごすんだべ」

 マリーの言い分はもっともで、二人とも逃亡生活の中で妊娠の経過に合わせて衣服を新調する事は出来ないでいた。路銀はほぼ宿泊費と馬車への貯金に溶けてしまった。
 その為、サイズの合わない服を無理矢理緩くすることで誤魔化し誤魔化し対応する他に手段がなかった。

「さっさ、脱いで脱いで。手伝うだよぉ」
「あ、ありがとうございます」

 マリーの手伝いを経て、アンジュリーゼは下着を残して上着とスカートを脱いだ。
 まだ会って時間を置いていない人に裸身を見られている為か、頬が少し赤くなる。

「うーん……下着もサイズあってないだ。あとで当て布探してくるからそれも脱ぐんだよ」
「……はい」

 下着を脱ぎ、マリーの手伝いを経てアンジュリーゼは貫頭衣を着た。
 身体の部位を圧迫しない衣服。その解放感に酔いしれる。妊娠して敏感になった乳首が服と擦れるのが難点であるが、後に当て布が来るのであればそれも問題ではない。

「アンジュリーゼさんは腰が細いんだよぉ。それがちょっと心配だぁ。次、ナタリーさんも服を脱ぐだよ」
「分かりました」

 産婆としての経験から得た鑑識眼からアンジェリーゼに一言残したマリーは続いてナタリーの衣服を脱がしにかかった。
 服を脱ぎ、同じようにナタリーの裸身が白昼の下に晒された時マリーの手が止まる。視線の先は臨月であるアンジュリーゼのお腹よりも一回り大きくなっている妊婦腹に固定されている。
 そして注意深くナタリーの腰付きを確認し、最後にお腹を触り顔色を曇らせた。

「どうしました?」
「ナタリーさんは子供産むの始めてだべな?」
「はい。そうです」
「ナタリーさんのお腹には二人赤ん坊がいるんだよぉ」
「え?」

 アンジュリーゼよりも大きくなっていくお腹。
 その経過をナタリーは自分の血筋は子供が大きくなり易い、そう考えていた。
 路銀を残す為に自身が医者に掛かることを避けていたためにナタリー自身が双子を妊娠しているという認識は今のいままでなかった。

「双子の出産は体力勝負だよぉ。それに加えて初産ともなれば中々重い出産になることも覚悟しとくんだぁ。頑張って手伝うから安心してなぁ」

 マリーの残した言葉がナタリーには重くのしかかった。



 その晩、マリーは二人に村の郷土料理を御馳走した。

「村の中じゃ、これを食べればお産に耐えられるし、生まれた子供も健やかに育つと言われてるんだよぉ。もりもり食べてなぁ」

 豊富な栄養が五臓六腑に染み渡る様な感触を得ながら二人は出された料理を完食するのであった。



【ダイジェスト】

 ・二人の服装が気になったのでその描写を入れました。 服装チェンジ 産前の貫頭衣。
 ・地の文では既に表現されていましたがナタリー自身が双子を認知した描写がないような気がしたので入れました。 ナタリー、双子の認知。
 ・マリーの村に伝わる安産祈願の郷土料理を食べました。

32名無しのごんべへ:2019/01/17(木) 23:54:45 ID:zs80Dogs0
この家に着いて3日目、2人は久し振りに快眠出来た。
貫頭衣を借りたからか、お腹の締め付けもほぼなくなり、腹の張りは幾分楽になっていた。

「2人ともゆっくり過ごすんだよぉ。特にナタリーさんは双子だからねえ。産み月も前倒しされる可能性があるんだぁ。
これくらい膨らんだお腹なら経験上少し早くてもきちんと育つとは思うんだけど、念のためべさ」
マリーの用意した朝ごはんを食べていると、赤ちゃんに授乳しながらマリーはそう伝えた。

「そうですか…目安としてはどれくらいでしょうか」
「そうだねぇ、理想としてはアンジュリーゼ様の出産より後に出産したら確実なんだけどねぇ。
今の様子だと、同時期か少し早いくらいかなぁ?」

ナタリーの質問にマリーはそう答えた。

「そう、ですか。正確にはわからない、と」
「んだ。こればかりは赤ちゃんが出たいか出たくないかで変わるからなぁ。
のんびり屋さんならいいけど、せっかちだったら気をつけないとなぁ」

マリーはそう話し笑顔になる。
自然と、ナタリーからも笑みがこぼれた。

食事を済ませ、流しにマリーが食器を持っていく。
そして、水につけて汚れが落ちやすくする合間に、少し話をした。

「しばらく前からお腹が張ることが増えたんですが、なかなか消えなくて。」

アンジュリーゼがそんな事を話す。

「私もです。正直不安で…」

ナタリーも暗い顔でそう呟いた。

「それはなぁ、身体が出産に向けて準備体操してるんだよぉ。
不安になりすぎないで、自然体でいるのが一番さぁ」


マリーがそう励ましたが、ナタリーはまだ不安そうだ。


「それに、これは忌まわしき行為で出来た子供で、愛せるかが…」

そう、ナタリーは未だに、 アルカとその父親に犯されたのがトラウマだったのだ。

「大丈夫だよぉ。この地方では昔から子供は親を選んで産まれて来るって言ってなぁ。
愛されるって確信できる女性のお腹にしか宿らないっていうんだぁ。
だから、大丈夫。ナタリーさんは必ず子供を愛せるよぉ」

ナタリーはその言葉を聞いて、思わず涙を流す。
その頭を、マリーは優しく撫でるのだった。

33名無しのごんべへ:2019/02/28(木) 21:54:07 ID:Ip8Ozhzo0

 あくる日の朝、普段と変わらずナタリーが用意しているであろう朝餉の匂いに釣られアンジュリーゼは目を覚ました。

「あら? ……?」

 違和感を感じ、お腹を撫でる。
 何処か何時もと違い張っているような。気のせいか。
 首を捻りつつもお腹を撫でるだけ。ここ数日、唐突にお腹が張ることは何度かあったが慌てふためいてナタリーに泣きついたのは最初の一度のみ。
 その際に、ナタリーに「よくあることだよぉ」と笑いながら諭されたのだ。



「うー……ん?」
「どうかしましたか?」

 再び違和感が襲ったのは朝餉を食べ終わった際だった。
 マリーが食器を片付けをし、ナタリーと共に一休みしている間にお腹が張る。お腹が張ることは日常に溶け込んでいたのだが、今度のそれはいつも感じているモノとは違う。
 
「お腹が張ったような気がしたの。もしかしたら陣痛かもしれないわ」

 理由は明確に言葉に出来ない。しかし、アンジュリーゼはそう捉えていた。


「まだまだ先のことだよぉ」
「それは……よくあるお腹の張りという事だったんですね」

 椅子にアンジュリーゼを座らせ、貫頭衣を捲り上げお腹を触り、股口を開き確認したマリーの言葉にアンジュリーゼは、また自身がまた勘違いしていたのだと思い直す。
 昨日の話を聞いて気が急いている。落ち着こう。自分が焦っても何も始まらないのだから。
 そんなアンジュリーゼを裏切るようにマリーは首を横に振る。

「アンジュリーゼさんが感じているのは陣痛で間違いないんだよぉ。ただ、まだまだ先の事だからリラックスしてていいんだよ」

 陣痛。マリーの口から出た言葉にアンジュリーゼの頭の中は真っ白と化すのであった。

34名無しのごんべへ:2019/03/01(金) 01:09:14 ID:jUSIRkEo0
「…リーゼさん、アンジュリーゼさん。大丈夫かい?」


真っ白な頭の中に、マリーの声が認識できた。
それと同時に、アンジュリーゼは我に帰る。


「大丈夫ですわ。少しぼぉっとしただけです…」


そう気丈に返事はしたものの、アンジュリーゼは不安でいっぱいだった。

(こんな時、グレイデン様が居てくれたら…)
どんなに心強いか。そんなことを考えてしまうアンジュリーゼ。
群衆へと剣を振るうグレイデンの背中を見ながら走り、一息ついた所で炎上し崩れ落ちた城を見たアンジュリーゼは希望を持たないよう努力した。


だが、それでも。
『陣痛が始まっている』と聞いたアンジュリーゼは、そんな希望にすがりそうになるくらい不安だった。


少し硬くなったお腹と、少し硬くなった身体をアンジュリーゼが少し震わせていると、優しくマリーは手を握っていた。

「大丈夫だよぉ。誰でも不安だし、まして旦那さんがいまここにいないってなおさら不安だと思うよぉ。
でも、大先輩の私もいるし、ナタリーさんもいる。
安心して、リラックスして、じっとその時まで待ってねぇ」

そう話すマリー。その声に安心したのか、アンジュリーゼは少しお腹を気にしながらも笑顔を見せるのだった。




「アンジュリーゼ様の様子はどうだったのですか?」

アンジュリーゼの部屋から出たマリーが居間にいくと、ナタリーがそう聞いてきた。

「多分陣痛が始まってるんだと思うんだぁ。ここ数日は大変になるだろうねぇ」

「そうですか。では、私もお手伝いを」

「ありがとう。絶対に無理はしないでよぉ。ナタリーさんもいつ陣痛が始まるかわからないからねぇ。
ナタリーさんにはアンジュリーゼさんと寄り添ってお話をしてもらおうかなあ。
あまり体に負担がかからないし、アンジュリーゼさんも不安は少なくなると思うよぉ」

「わかりました。出産の知識はそこまで詳しくないので、その辺りはお願いしますね」

そう言いながらナタリーはアンジュリーゼの部屋に向かう。

(お腹の張りが軽くなるまで本当は歩きたくないのですが…仕方ないですね。)

そんなことを考えながら。

アンジュリーゼが、部屋でお腹の様子を見ている間ゆっくりしていたナタリーだが、お腹の張りは少し気にしていた。
気にはなるが、歩けないほどではないのでゆっくりとアンジュリーゼの部屋に向かうナタリー。


だが、ナタリーは出産の知識が少ない故に気付かない。
長引くお腹の張りと、アンジュリーゼの部屋までの移動が引き金となり本格的な陣痛が始まろうとしていることをー

35名無しのごんべへ:2019/04/09(火) 11:23:34 ID:/61zJArw0

「はぁ、はぁ……あ、あ゛あ゛あ゛!!」
「アンジュリーゼ様、息を整えて、まだ…っ。力んではいけません」

 陽が傾き始めた頃、家中にアンジュリーゼの絶叫が響き渡った。
 半狂乱に陥ったアンジュリーゼを励ましながらナタリーは腰を擦る。
 献身的に主に尽くす様子だが、胸には焦りと不安が溜まり始めている。

(なんて……タイミングが悪い)

 空いた片手を貫頭衣の裾を抜け大きく膨らんだ自身のお腹に回す。あまりにも固く、そして熱い。
 アンジュリーゼの出産に合わせる様にナタリーにも陣痛が襲い掛かっていた。
 まだ間隔が長く、痛みも浅い。ナタリーはこれ幸いにと誤魔化しながらアンジュリーゼの介抱を続けている。
 慣れる事が出来ない陣痛に翻弄されるアンジュリーゼは、枕を抱きしめながら息を整える。その身体は白い肌がほんのりと赤くなるまでに火照り、球の汗が固く張ったお腹を伝う。
 美姫として国王グレイデンに召し上げられたアンジュリーゼの裸身は均整のとれた美しいモノで、お腹が膨らんでもなお人を惹き付ける。むしろ、生命の神秘が新しく美を引き立たせる要素として加わったと言っても過言ではない。
 20にも満たない少女の姿にナタリーは一瞬、見惚れてしまった。

「っぁ。……ふぅ、ん。アンジュリーゼ様、お水になります」
「ありがとう」

 現実に引き戻すかのようにナタリーのお腹が張る。
 年の功故か、それとも半狂乱に苦しむアンジュリーゼを見ていた為か、ナタリーは取り乱す事無く平然を装う。
 陣痛の波が過ぎ去り、アンジュリーゼが落ち着きを取り戻す頃合を見て水差しからコップに水を注ぎ、手渡す。

「不安だわ……まだこれからなのに、私耐えられるのかしら」
「大丈夫ですよ。アンジュリーゼ様ならきっとグレイデン様に似たお子様を生めます」

 表情に影曇るアンジュリーゼを根拠もなく励ますが、それはナタリーにも突き刺さる言葉であった。
 双子を宿した自分は、果たして出産に耐えられるのだろうか。ホントはアンジュリーゼの様に寝台に身を横たわらせた方が良いのではないか。

(理想は……アンジュリーゼ様の出産を終えてからが良いのだろうけど……)

 硬く張る自身のお腹がそれは許さないと言わんばかりに熱を持ち始めているのをナタリーは感じるのであった。

36名無しのごんべへ:2019/04/10(水) 00:08:54 ID:TjUs7Wb20
「ふーっ、ふーっ…あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
「うん、大分広がってきたねぇ。もう少し我慢すれば息めるよぉ」

マリーが触診をして、子宮口の広がりを確認してそうアンジュリーゼに話をした。

「早く…早く開いてぇぇぇッッッ!!!」

アンジュリーゼの陣痛はだんだんと強さを増し、痛みの時間が長く感覚は短くなっていた。
ほんのり赤かった肌の赤みが増し、汗の量も増えていた。
アンジュリーゼはもう少しで息むことができるという言葉を信じ、必死に息みを逃そうとする。
だが、どうしても慣れないからか、時折叫び声を上げていた。

「っ、ふぅ…もう少し、もう少しですから頑張って…くぅっ…だ、さい…」

一方、ナタリーはアンジュリーゼの腰を撫でたり、汗を拭いたり甲斐甲斐しく世話をする。
だが、そのせいだろうか。
アンジュリーゼの陣痛が進むのと同じくらいのペースでナタリーの陣痛も進んでいた。

(叫んでしまえば、楽になれるだろうか)

ふとそんなことを考え、ナタリーは首を振る。

(いや、アンジュリーゼ様が心配する。それに、双子を生むためにも体力は温存しないと)

冷静に、そうナタリーは判断してアンジュリーゼのそばにいた。

だが、それでも時折唸るような苦しそうな声を出すナタリー。
アンジュリーゼは自分の出産で手一杯で気付いていなかったが、アンジュリーゼの触診をするために部屋にいたマリーは気付いてしまったのだった。

37名無しのごんべへ:2019/04/27(土) 10:19:45 ID:01FGIczw0

「……」

 陣痛が過ぎ、寝台を四肢を投げ出し疲労困憊の体を示すアンジュリーゼの横に佇むナタリーをマリーは注視していた。
 先ほどから、いやずっと前からマリーはナタリーの様子に違和感を抱きつつも初産故か慣れない出産の経過にパニックを起こそうとするアンジュリーゼの世話に意識を割いた。
 脳裏にはその可能性が過る。臨月に至ってはいないもののナタリーは双子。はち切れそうな大きなお腹は何時出産が始まってもおかしくない事を表している。
 小休止。このタイミングしかないとマリーは感じる。

「ナタリーさん、こっちに来るだよ」
「……はい」

 アンジュリーゼの寝台の脇からナタリーの寝台に誘導する。
 その際のナタリーの表情が曇ったのを見て、マリーはいよいよ確信した。

「失礼するだよ」

 貫頭衣の裾を捲り上げ、丸々としたお腹を触診する。
 熱を持ち、巌のように固く張った肌。
 
「今度は中を確認するだよ」

 指先を油で濡らし、ナタリーの股座に差し込む。
 その途端、ナタリーが蠢く。膣内は侵入を拒むかのようにマリーの指を締め付ける。

「っあ゛!?」
「力を抜くだよ! 気張ったままじゃ触診が痛いんだよぉ!」
「っ、はいぃ……」

 ナタリーが深呼吸を繰り返すと幾分か指の締め付けが和らぐのを感じる。
 ゆっくりと慎重に掘り進めるマリーは漸く指先が突き当りに差し掛かったのを感じ取った。

「徐々にではあるけどもぉ、開いてきてるだよぉ。ナタリーさんはぁ、双子なんだからぁ無茶しちゃダメだよぉ」
「すみません……」

 自身を慮る言葉にナタリーは深く反省するしかなかった。
 ナタリーに水差しから汲んだ水を手渡し、マリーはアンジュリーゼの方へ向かう。
 長丁場は確定した。ナタリーの経過次第では修羅場にも成りうる。
 だからこそ、物事を一つ一つ確実に終わらせていこう。その思考がマリーにはあった。


【ナタリーの第一子を幸帽児にして、子宮口が全開になって力んでも中々降りてこないって展開はどうでしょうか。 破水のタイミングは会陰から頭が飛び出た瞬間に。】

38名無しのごんべへ:2019/04/28(日) 00:47:11 ID:08IVvoUo0
「ん、ふぅ…ふぅ…あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛…」
「もう、少し…っ、もう少しで息めますから…頑張って、くっ……ださいぃぃっ…」

ナタリーの触診からしばらく後。アンジュリーゼは未だ息み逃しを続け、ナタリーはアンジュリーゼを励ましていた。
アンジュリーゼの体は赤みを増し、ナタリーが何度体を拭いても汗が流れる。瞳も潤んで時折涙が溢れている。
時折叫んだからか、声も少しかすれ気味になって来ていた。
ナタリーは、時折襲う陣痛に耐えながらアンジュリーゼを励まし続けていた。


「アンジュリーゼ、様。お水、です。」

間隔がますます短くなるアンジュリーゼの、僅かな陣痛の合間にナタリーはコップに入った水を手渡そうとする。
だが、ちょうどナタリーの陣痛が来ていたため、コップを持つ手が震えていた。

「はぁ…はぁ…ナタリー、貴方にも、もしかして陣痛が…」

流石のアンジュリーゼも、その様子を見てナタリーに陣痛が来ているのを勘付いてしまった。

「…はい。ですが、アンジュリーゼ様はアンジュリーゼ様の出産に集中してください」

そう言ってコップを渡すナタリー。アンジュリーゼは心配そうにナタリーを見ながらその水を飲んだ。



「ナタリーさん、貴方に会いたいって人が来てるよお。ナタリーさんの部屋に待機してもらってるけど、部屋まで行けるかい?」

アンジュリーゼが水を飲み終え、ナタリーがコップを受け取った頃、マリーがそうナタリーに話しかけた。

「私に?誰だろう…?」

心当たりはない。…いや、1人だけいた。犯された相手の1人、アルカである。

(何か問題でも起きたのだろうか)

幸い、陣痛は収まっている。
ゆっくりと、子宮をあまり刺激しないように歩きながらナタリーの部屋まで歩いて行った。

「よう、久しぶりだな。…なんだか忙しい時に来ちまったみたいだな」
「…挨拶はいいです。今日は何の用ですか。」
「簡単に話すと親父が、死んだ。だから、探そうとするやつらはもう居ないはずだ。」
「そう、ですか。これからどうしますか?貴方は」
「さぁてな。未来のことなんてわからないさ。親父の後は継ごうかとは思ってるがな」

アルカはそう苦笑いをする。
ナタリーは、そのアルカの姿を見てなんとも言えない気持ちになっていた。
「…さて。俺は帰らせてもらう。じゃあな」

そう言って立ち去ろうとするアルカ。
その腕を、思わずナタリーは掴んでいた。

「この手はどういう事だ?ナタリー…」
「ごめんなさい…っつ…、アルカ、立ち会ってくれませんか?出産に」

ナタリーはそうアルカに頼んでみた。
その腕を掴む力は、陣痛がくるのと同時に強さを増していた

39名無しのごんべへ:2019/05/23(木) 11:58:40 ID:OsfzIeC60

 縋る様に両手でアルカの腕を掴むナタリー。立ち尽くすアルカ。
 ナタリーの苦し気な呼吸が静かな部屋に溶けていく。

「……どういうつもりだ?」

 アルカの疑問はもっともなものだ。
 強姦した。孕ませた。お金を強請った。
 身体から始まった関係だったが、気丈な彼女に惚れ、告白し、そして振られた。
 何処までも自身の主人を優先し、犯されてもなお気丈に振る舞ったナタリーが不安気に瞳を揺らし、アルカを頼る。その心境をアルカは掴む事が出来ない。

「打算的な言い方をすれば…ぁ、はぁ……今、この家に人手が足りていません。猫の手でも借りたい状況です
。」
「……」

 陣痛をやり過ごしながらナタリーは言葉を紡ぐ。

「ただ……ただ、この子達の父親として貴方には出産に立ち会って欲しいと思っただけです。」
「それは……つまり、そういう事でいいんだな?」

 告白の答え。
 喜色を上げるアルカを咎めるようにナタリーは眉尻を吊り上げる。

「勘違いしないでください。私は母親として父親である貴方に関係を求めるのです」
「おお、そうしといておくよ。今のうちは」

 一人の女ではなく子を持つ母親としての選択。
 そう言い訳するナタリーの返事をアルカは満面の笑みで受け止める。
 何処までも気丈に立ち振る舞う女をぐずぐずに溶けるまで惚れこませ、落としてやる。
 たった今、アルカの胸の内にどす黒い独占欲に塗れた欲望が沸き立った。


――ありがとぉ。助かるよぉ。
 出産の介助を申し出たアルカに産婆のマリーは肩の荷が軽くなったことを素直に喜んだ。
 アルカにアンジュリーゼの裸を見せることに難色を示したナタリーに合わせて、寝台の代わりになるモノを有り合せのモノで用意した(ナタリーの寝台はアンジュリーゼの部屋に移してしまった為)。
 何かあればマリーを呼ぶという形で手筈を整えたナタリーとマリーの介助を受けるアンジュリーゼの経過に変化が起きたのは太陽が水平線に沈んだ直後の事だった。

40名無しのごんべへ:2019/05/24(金) 00:43:02 ID:mHM20XQc0
「あ゛ぁ゛ぁ゛…ん、ふぅーん!」
激しい陣痛の荒波がアンジュリーゼを襲う。
息みを逃すのも厳しくなり、ダメだと思いながらもついお腹に力が入っていた。

そんな時だ。パン、とアンジュリーゼはお腹で弾けたような音を感じた。
股近くの寝台のシーツが濡れていく。

「アンジュリーゼ様!っ、ううぅ…」
異変に真っ先に気付き心配そうな叫び声を上げ、寝台に寝ていたナタリーは身体を起こそうとする。
だが、そのタイミングで陣痛が襲い思わず前屈みになっていた。

「どうしたんだい?急にナタリーさんの声が聞こえたけど…」

そう言いながらマリーはアンジュリーゼの様子を見て瞬時に気づいた。

「破水したんだねえ。触診してもいいかい?」

ブンブンと、勢いよく首を縦に振るアンジュリーゼ。
元王妃ではない、ただの産婦がそこにいた。

「うん、完全に開いてるね。よく頑張ったねえ。もう息めるよお」

息む事ができる。
その言葉を聞いたアンジュリーゼは、安堵の笑みを浮かべた。
「もうすぐこの苦しみから解放される」そう言う意味の笑みなのだろう。

「ナタリーさん、悪いんだっけどもアンジュリーゼさんの方が先に生まれるかも知れないから、私が付きっ切りで介助するよお。
ナタリーさんは安静にして、私が万が一出産の介助が出来ない時のためにアルカさんに付き添ってて欲しいんだよお」

マリーはそうナタリーに話し、頭を下げるのだった。

41名無しのごんべへ:2019/07/13(土) 08:23:07 ID:WIZ11kSA0

「ふっ、ん゛。む゛む゛む゛む゛む゛む゛む゛む゛む゛!!」

 ベットに横たわったアンジュリーゼは、上体を起こし開いた太ももを掴み息む。
 陣痛の波に合わせて腹の中の赤ん坊が確かに下がった様な感覚を得た。

「はぁ…はぁ…」

 波が収まれば力尽きる様にベットへ身体を鎮める。
 気を利かせたマリーが背中にクッションを入れたお蔭で息んでる最中でも姿勢制御は心持ち楽になっている。

「息んでる最中は目を閉じたらダメなんだよぅ。気をつけてねぇ」
「……はい」

 産婆の意図する事は初産であるアンジュリーゼには上手く伝わらない。
 が、頼れる産婆が指示することだ。きっとそうなのだろう。
 余裕のないアンジュリーゼは、気持ち改め息を整える。深く、強く息む為に。
 そんなアンジュリーゼの都合を知ったことかと陣痛はすぐに押し寄せてきた。

「ぁ、う、ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛――」

 身体を貫く陣痛。
 下りる赤ん坊。
 
「――ん゛ん゛ん゛ん゛!! っあ、ああああ゛!?」
「口を開けたら息めないよぅ!」

 股座の奥で確かに何かが嵌った感覚。
 同時に股間から割れる様な痛みがアンジュリーゼを襲う。一文字に引き締めた口から絶叫が漏れた。

「こんなの…股が割れちゃうぅ!!」 
「割れないんだよぅ。大丈夫、皆そうやって赤ん坊生んでるんだから」

 子宮から押し出される赤ん坊の頭が軟化したとはいえ、狭い股関節の隙間を無理矢理押し広げる。
 まるで爆弾が爆発したかのような。激痛にアンジュリーゼは溜まらず首を振る。
 息めない。息んだら股間が壊れてしまう。
 そんなアンジュリーゼを嘲笑う様に陣痛は合間を待たず、押し寄せた。

42名無しのごんべへ:2019/07/13(土) 23:12:53 ID:8bzrXhEc0
「ふうっ、ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛」
股が裂ける、股が破壊される。
そんな感覚になりながらも、アンジュリーゼは苦しみから解放されようと必死に息む。

「ん゛ん゛ん゛ん゛、っあ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
息みを続けるも、あまりの痛さ、息苦しさに口を開けてしまう。
そこには、 元王妃の威厳、プライドなどをかなぐり捨てるように、鬼のような形相で息み、獣のように叫びをあげるアンジュリーゼが居た。


「アンジュリーゼ、様…っく、あぁぁ…」

少し離れた場所で、アンジュリーゼの叫びを聞いたナタリーが心配そうにそう呟く。

「心配なのか?アンジュリーゼの事。」
「ああ。アンジュリーゼ様には今頼れる相手が私とマリーさんしか居ない…だからこそ最後まで付き添いたかったんですが…」
「成る程、打算的とはいえナタリーには俺がそばにいてやれるからな」

そう呟くアルカは、陣痛で苦しむナタリーがもたれかかることが出来るように座り、ナタリーはそれに甘えるように体を預けていた。
いやらしいことをしない、許可するまでは何もしない。
そう言う条件の元、アルカの「ナタリーの身体や心を支えてやりたい」と言う提案を飲み込んでからしばらく過ぎ。
いつのまにか、それが定位置になっていた。

短く強まる陣痛。それとともに増える不安。
全てを包むように、アルカはナタリーを支えていた。

43名無しのごんべへ:2019/07/20(土) 21:48:33 ID:qTmM7QYs0

 アンジュリーゼ同様にナタリーの出産も次の段階へと進もうとしていた。
 個として見ると妊娠満期とはほど遠く、小さな胎児も二人連なれば妊娠満期であるアンジュリーゼよりも一回りも大きくなる。
 アルカがお腹に回した手からは熱く火照った肌が巌のように硬くなる感触が伝わってきた。
 と、不意にナタリーがその腕を握りしめ息を詰める。

「うぅ!! んぅぅ、んんんんんん……」
「おぃ、もう息んでいいのか?」
「も、もう限界です。赤ちゃんが降りてきて、ぁ。ああ! んっぐ、あぁ!!」

 アルカはナタリーを横たわらせ、正面に回った。
 巨大な太鼓腹がでかでかとその存在を主張し、腹越しに苦し気なナタリーの呼吸が聞こえてくる。
 出産の介助が出来ないアルカは、マリーの様に触診することが出来ない為に大きく開きかけた股座の口を指で押し広げて、中を覗き込むくらいしか取れる手立てもない。

「赤ん坊だ。赤ん坊が下りてきてるぞ」

 アルカが見たのは蠢く肉の奥底から顔を出した白い塊。
 アルカの言葉にナタリーもようやく息めると安堵の笑みがこぼれる。
 だが、二人は知らない。アルカが見たのは胎児の頭ではなくそれを包む羊膜。
 破水することなく被膜したままに子宮口から顔を覗かせた胎児はナタリーの息みに合わせるようにゆっくりと下りていくのであった。




「ぅう゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!」
「その調子だよ」

 ところ変わって、アンジュリーゼ。
 押し広げられた股関節の痛みには既に気にもせず、ただただ一刻も早くわが子を抱きしめたい一心で息む。
 同時に股口が盛り上がり、胎児の肌が晒される。が、息むのを止めた途端に胎児は奥へ隠れてしまった。

「はぁ…はぁ…」
「焦らなくてもいいんだよぅ。着実に前に進めてるんだよ」

 肩を上下させ、疲労の色を隠せないアンジュリーゼを励ますと同時にマリーは水差しからコップに水を入れ、ゆっくりと息を整えるようにとアンジュリーゼに指示をするのであった。


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