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【イベントB】欲望渦巻く魔都・異能都市【その9】

1名も無き異能都市住民:2014/09/08(月) 21:21:41 ID:9nrcReK60
<<ルールとか>>
・ここは、各スレでなんらかのイベント・クエスト・戦闘が発生した場合に使います。
・雑談も可能ですが、日常の範囲で済むかどうかは各自で判断してください。
・クエストスレはA・B・Cの3つがあります。開いている場所ならどこでも使って構いません。
・逆に、使用中の場合は混乱の元になりますので、同じクエストスレで2つのクエストを進行させることはやめてください。
・クエストで使われている場所を、クエスト以外のスレで使うことは『構いません』。
 時間軸が異なる・平行世界である、など解釈は自由です。
・またクエストスレと他のなりきりスレに、同時に現れることは『構いません』。
 ただしそれによって起こり得る弊害は自力でなんとかしてください。
・GM役をあらかじめ決めておくとスムースにことが運ぶかもしれません。
・識別をしやすくするために、トリップをつけると幸せになれるかも。

前スレ
【イベントB】折れた翼と恋の異能都市【第八話】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12841/1302460867/

254名も無き異能都市住民:2015/11/04(水) 22:17:09 ID:z7AfUdeQ0
>>253

問題の下水道に通じる道は、プレス工場近辺ですぐに見つかった。
下水道内の点検などを行う際に、作業員が出入りするための通路と
大雨の際に水を放出する大型の排水路を兼ねたこの通路。

奥は暗く、よどんだ下水の匂いが漂ってくる……。
こうした場所はホームレスやストリートチルドレンが住み着いている事も多く、
例のクローンたちが住居を構えている可能性も十二分にあるはずだ。

255ルファス:2015/11/04(水) 22:41:51 ID:7kPD2VV60
>>254

点検やメンテナンスが行われるような場所なら最低限の明かりは有るだろう、なら行動に支障は出ない。
予定の変更は無く、足音を少しだけ抑えながら内部への潜入を試みる。

狙いは警備や点検の人が通らず、その上で大きな水路から離れていない小道。

(ストリートチルドレンやホームレス、特に前者が下水に潜むのは此処が生活排水のお陰で凍死しない程度に暖かいからだ)
(だから、冷えきっていて体力を無駄に使うような場所、あまり大きな下水から離れた場所には行かないと思うんだが……)
()

256名も無き異能都市住民:2015/11/04(水) 23:12:32 ID:z7AfUdeQ0
>>255

ルファスに魔術の素養があるなら、気づくかもしれない。
下水道内に入って数分、どこからか魔術的に見られていることに。

ストリートチルドレンやホームレスがこのようなことをするだろうか?
いや、少なくともこういった魔術を使えるなら、よほどの事がない限り
くいっぱぐれることもない。つまりは『表』を歩けるような身分ではない
魔術師がこの先にいるということになる。

――カッ!!!

と、ふいにルファスに向けて投光器からまばゆい光が投げかけられ……。
同時に、いくつかの方向から銃撃が加えられた!

257ルファス:2015/11/04(水) 23:46:28 ID:mB285Y2E0
>>256

ルファスの魔術の才能は凡人レベル、修練を重ねれば術の行使が出来ないこともないかもしれない、程度の才能しか持ち合わせていない。
だが――素質が無いのと使われた場合の対策が無いのは別の話だ、強化された感覚は魔術による魔力の流れの変化に感付ける、結界などを張られても、其を破る為の道具なども有る。
寧ろ、対策が無い筈が無いのだ、この混沌とした都市でこうした仕事で生きているのだから。

投光器の光に視界が潰されるが足は止めず後方に跳躍、懐から拳銃を抜きつつ、投光器の辺りに銃弾をバラ撒く。


―――相手がこう動くなら、最早加減も容赦も要らないだろう。
これは悪くない展開かもしれない、襲撃は確実に何かに近寄れている証拠だし、何よりも“気が楽”だ。

258名も無き異能都市住民:2015/11/05(木) 00:16:54 ID:z7AfUdeQ0
>>257

ばりん、と音を立てて投光器が割れる。
同時に、少しくぐもった『女の悲鳴』が聞こえた。

『ヤロッ……!』
『ちっ……ダメだ、一旦引くよ!』

同時に、いくつかの話声。
それらはすべて同じような声色で……ひどく小百合のそれに似ていた。
排水溝の奥へといくつもの足音が逃げ去っていく。

259ルファス:2015/11/18(水) 23:47:23 ID:mB285Y2E0
>>258

複数の聞き覚えのある声、全部で何人いるか解らないが、複数人で武装してここに立て籠っていたようだ。
しかし、まさか本人が出てくるとは思っていなかった、何せ彼女の異能は……。

「ああ、成る程な、クローンのお前達は異能を使えないのか、まあ当然か、使えたらこんな惨めに引き籠る必要は無いだろうしな」
「――待てよ、逃げるな、俺はお前達の立場を大体知っているが千夜の関係者じゃない、どっちかと言えば敵対に近い関係だ、少し話を聞いてみないか、損はさせないさ」

260名も無き異能都市住民:2015/11/21(土) 22:45:36 ID:z7AfUdeQ0
>>259

しかし、帰ってくる言葉はなかった。
相手は相当にルファスを警戒しているらしい。

この調子では、再度の攻撃・奇襲に警戒する必要があるだろう……。

261ルファス:2015/11/24(火) 23:16:13 ID:mB285Y2E0
>>260

「……返答無しか、まあいいだろう、勝手に宣誓させて貰うだけだ」
「俺の目的は千夜がクローンを臓器の予備として作っていた証拠を掴む事」
「お前達が協力してくれるのが理想だったが、無理だというのならそれで構わない、例えば『黒沢小百合の死体』が複数並んでいるとか、そんな状況を記録する事が出来ればそれでも十分だ」
「……ああ、もう語ってくれとは言わんさ、何か『気が変わって』語りたい気分になった時にそうしてくれ」

言葉を最後に、異能の出力を引き上げる、靴音一つ、呼吸音一つ聞き逃さず、一人でも多く始末する為に。
言葉で解決する道は用意した、その道をわざわざ逸れる相手に慈悲など与えるつもりは一片も無い。
凄惨で猟奇的で衝撃的な、馬鹿が大喜びで食い付くような『絵』を描く塗料になって貰う事を今、青年は決めた。

262名も無き異能都市住民:2015/11/25(水) 20:32:24 ID:z7AfUdeQ0
「ど、どうするの……。」
「罠かも……罠に決まってる。」
「まって、私が行く。そのうちにみんなは――。」

異能により、囁き声がかすかに聞こえる。
同時に、『一人』の足音がルファスのいる方向に近づいてくることも。

『ぶ、武器を下ろしなさい……!』

……ルファスの前に現れたのは小百合に瓜二つの女。クローンだった。
震える手で、大型拳銃を握りゆっくりと姿をあなたの眼前にさらす。

263ルファス:2015/12/02(水) 14:47:00 ID:mB285Y2E0
>>262

おや、と内心で青年はこの展開を意外に思う。
わざわざ臓器のスペアになる事を拒み逃げ出しているのだから生への執着はあるとは思っていたが、疑心暗鬼になっている以上会話は困難だとも同時に思っていたのだ。
だが、これは決して悪くない方面での予想外だ、もしかしたら彼女は仲間を逃がすために囮となってだけかもしれないが……自分にとっては彼女達の誰もが本命なのだし、話に乗ってしまっても問題は無いだろう。

「話を聞く気が出来た、ってのなら悪くはないか……解った、銃を置くから早まって撃つなよ?」

それだけ言うと、前屈みになり銃を床に置き、軽く爪先で蹴り飛ばす。
からん、と音を立てて拳銃は床を滑り、二人の真ん中の辺りで停止するだろう。

「ほら、置いたぞ、お前も銃を捨てろ……とは疑う気持ちも解るから言わないが、銃口を向けるのをやめる位はしてくれよ?」

264名も無き異能都市住民:2015/12/05(土) 00:23:38 ID:z7AfUdeQ0
>>263

『悪いけれど、武器を捨てることはできないわ。
 あなたが身体能力強化系の異能者かもしれないでしょう……。』

小百合クローンはルファスに武器を向けたまま、
ゆっくりと拳銃に近づき、それを下水の水の中に蹴り落とす。

『貴方の目的は?千夜がクローンを作っている事を暴いて何をするつもり?』

少しだけ震える声で、クローンは問いかける。

265ルファス:2015/12/05(土) 02:05:51 ID:exCq1/m60
>>264

「まあ当然か、武器を仕込んでないとも限らない、魔術や異能も有り得るとなればそれは無理か」
「俺に目的なんて無い、依頼人の希望を叶えるために動くだけ……と言っても納得はして貰えないよな?」

守秘義務に反するのは不本意だが、今ばかりは仕方がないだろう、それに、本気で協力を求めるなら手札をある程度見せなければ信用は得られない。

「……レムのクローンの死体を見かけた記者が消されたんだ、その友人の記者から依頼を受けて真相を白昼に晒す為に動いている」
「悪いが、協力してくれると言って貰えない以上、これ以上詳しくは話せない……話す必要も無い気はするがな」
「あと、会話するなら場所を変えないか?ここの上が何処だかは知らんが発砲した場所に長居はしたくない」

266名も無き異能都市住民:2015/12/07(月) 20:00:31 ID:z7AfUdeQ0
>>265

「…………。」

レムの名前を出した瞬間、クローンは表情を一瞬ゆがめた。
おそらく、彼女はそのクローン個体に心当たりがあるのだろう。

「……わかった、とにかく話す場所は変えた方がよさそうね。ついてきて。」

クローンはあなたを手招きし、奥へと案内する。
暫く移動すると、鉄扉が現れ、その中へと招き入れられた。
中はすでに放置されて久しいようで、朽ちた掃除用具などが無造作に置かれている。

「No.160見てるんでしょう。中継をお願い。」

クローンが何処へともなく、声を発すると
わずかにあなたの感覚に違和感が生じた。
恐らく、この部屋は魔術か何かで誰かに見られている。

267ルファス:2015/12/14(月) 23:32:41 ID:3oYPXoVs0
>>266

信頼を得たとは間違っても言えないが、取り敢えず会話を試みて貰える程度には敵意を取り除けたらしい。
代価としてこちらは手札を殆ど晒す羽目になった訳だが、どうせ大した役ではなかったのだ、これから先に引ける札の事を考えれば悪くないだろう。

「話が早くて助かる、了解だ」

罠に嵌められる可能性も無くはない、が、その可能性は薄いと勝手に青年は予想している。
彼女達は――正確には彼女達の顔は有名だ、故に表に出れずこうして下水に追い込まれている、行き詰まっている。
自分を“打開策”としてどうにか利用したいと思うのが自然な筈……だと思いたい。

「魔術の気配、で“中継”か、ここで話せばそっちの全員に説明しなおす二度手間は要らなくなると思って良いんだな?」

268名も無き異能都市住民:2015/12/16(水) 01:25:15 ID:ZxYW2hTc0
>>267

「その通りよ。まだあなたを完全に信用したわけではないから、
 私たちの『家』に通すわけにはいかない。だから、NO.160に中継してもらうってわけ。」

それで、とクローンはここで言葉を切り。

「……あなたはクローンを白日にさらすために動いていると言っていたわね。」

269ルファス:2015/12/16(水) 03:25:19 ID:3oYPXoVs0
>>268

「ああ、信用出来ないのは当たり前だろうし今はそれで結構だ」

まあ、妥当な所だろう。
寧ろすんなりと本拠地に通されたら逆に罠かと疑いたくなる。

「そうだな、それで間違いない、自分で言う台詞じゃ無いとは思うが、おかしな事は言っていないと思うが?」

270名も無き異能都市住民:2015/12/17(木) 00:56:17 ID:ZxYW2hTc0
>>269

クローンは、あなたをちらちらと見ながら
唇に手を当てて、考え込む。ルファスが信用に足るか、といえば間違いなくNO。
しかし、彼女たちに現状、取れる手段がなく逃げ回るしかできないのは明らか。

打開策の一つも、手に入れたいところではあるだろう。

「貴方に協力した場合のメリットを教えてほしいのだけれど。」

271ルファス:2015/12/17(木) 02:06:04 ID:3oYPXoVs0
>>270

クローンの彼女が悩むのも頷ける話だ、自分が逆の立場でも同じように悩むだろう。

「メリットか、そうだな、千夜が揺さぶられる結果そのものがそっちの利益になる、って回答は気に入らないか?」
「クローンを作って内臓抜いてポイ、なんて非人道的極まりない事を治安を維持する立場の連中の頭……アンタの元になった奴がやっていたと世間が知れば一騒動だろう」
「その機に乗じて逃げるなり、人権保護団体や千夜を嫌ってる勢力に匿ってもらうなり色々と出来るんじゃないか、それはそっちの利益になるんじゃないか、って事だ」

「……もし気に入らないならそれでも構わんが、その時は希望を提示してくれると助かる、これを跳ねられたら何を対価に提示すれば俺には解りかねるからな」

272名も無き異能都市住民:2015/12/19(土) 16:55:36 ID:ZxYW2hTc0
>>271

「…………。」

長考だった。無理もない、クローンにしてみれば
鼠の様に逃げ回る境遇から脱する千載一隅の機会でもあるが、
これに失敗すれば一挙に彼女たちのコミュニティは瓦解するだろう。

「……わかったわ。あなたを信じてみましょう。」

だが、クローンはルファスへの協力を申し出る。
それは、最低でもあなたの言葉を信じた、という事だ。
小百合の性格上、、このような手の込んだ真似はしないし、
他人にこんな後始末を任せる事はしないだろう、という推察からくるものではあるが。

273ルファス:2015/12/22(火) 23:56:43 ID:3oYPXoVs0
>>272

「オーケー、ならこれで交渉は成立だ、早速で悪いが要望と意見が一つずつ有るから聞いてくれ」
「まずは要望から、俺達の目的はさっき伝えた通りだ、だから……そうだな、そっちの中から数人此方に同行して貰いたい」
「誰が来て欲しいってのは特に無い……いや、千夜の暗部を暴くならアンタには来て貰いたいな、他の連中よりインパクトは大きいだろう」
「後は……居たらでいいが小百合クローンがもう一人欲しいか、並んで写真に写るだけでも十分だし、それ以上が狙えるなら尚更だ」

ヘンリーへ相談しようかとも思ったが、今はいいだろう。
まずは話を纏めてさっさと撤退したい。

274名も無き異能都市住民:2015/12/24(木) 21:59:26 ID:ZxYW2hTc0
>>273

「わかったけれど……その案はおそらくは無駄よ。
 黒沢小百合クローンは私以外にも6人いるけれど。過去に一度、
 TV局に私たちの写真と嘆願を送りつけたことがあるの。」

クローンはため息をついて頭を振り。

「テレビ局側には何の動きもなかったわ。
 おそらく、いたずらだと思われたんでしょうね。変身能力者とかその類の。」

275ルファス:2015/12/24(木) 23:55:07 ID:3oYPXoVs0
>>274

「病院でクローンから臓器を摘出している映像を俺達は持っている、ネットでその動画を流出させたりすれば、少しは話は変わらないか?」

駄目ならば他を考えるしかないだろう、だが、これ以上の証拠となるとクローンを生産していた施設くらいでしか手に入らないだろう。
彼女達が抜け出した時点で警備をそうとう厳重なものにするか、施設を引き払うか……なんらかの対処はされていそうだが。

「……嫌だったら答えなくていいが、興味と作戦を考えるついでに質問をしたい、お前達はどのくらいベースの人物の記憶を保持してるんだ?」

276名も無き異能都市住民:2015/12/25(金) 00:59:13 ID:ZxYW2hTc0
>>275

「うーん、多少は話題を呼ぶかもしれないけれど……。
 どうかしら。最悪、ヤバイものはもみ消されてしまう可能性は捨てきれない。」

小百合の強い点は年の上層部へのコネも広いところにある。
都市の治安維持の中枢に位置する小百合に、尻尾を振る者も多い。

「私たちは元の人物の記憶なんてのは残っていないわ。
 生物的には、ただDNAが同じなだけの別個体だもの。」

277ルファス:2015/12/25(金) 10:53:16 ID:2zgni/1k0
>>276

「話題にならないなら兎も角、揉み消されるならそれはそれで結構じゃないか、人間は中途半端に隠されるとより好奇心を持つものだからな」
「『何でこの動画消されてるの?』『まさか本当だったんじゃ?』そんな疑念を植え付けられれば大成功だと思うが……」
「ただ、千夜がより積極的に動く理由を作ってしまうのは確かだしな、今は保留にしておくか?」

やるにしても下準備を済ませてからだろう、ならこの話は後でもいい。
ただ、一応メリットが有りそうな事だけは説明しておく。

「……そうか、残念だが安心した、そっちから必要以上に敵意を向けられるって事は無さそうだな」

278名も無き異能都市住民:2015/12/26(土) 02:03:16 ID:ZxYW2hTc0
>>277

「私たちとしてはあなたに協力する事自体が大きなかけよ。
 毒喰らわばさらまで、中途半端はよくないし動画やってもいいけれど……。」

一度似たような試みが失敗しているせいか、
クローンは少しこの手について消極的であるようだ。

「……まだ完全に信用したわけではないわ。
 とはいえ、ここまで踏み込まれてはもし、あなたが千夜の手の内のものなら私たちは詰み。
 ついでに、本拠地でも見て行ってみる?」

279ルファス:2016/01/13(水) 23:44:25 ID:3oYPXoVs0
>>278

「自分で提案しておいてなんだが、ネットにバラ撒くのはやろうと思えば何時でも出来る、焦って結論を出す必要は無いだろう」
「……本拠地か、興味が無いとは言わないし、何よりこれから手を組むなら、一度顔を直接見せた方が良さそうだな……案内を頼んでもいいか?」

魔術、科学、どちらの技術でも遠距離からの会話は可能だろう、だが、それにも関わらず重要な取引などをする際に直接顔を合わせての会談が採用される事が多いのは、直接出向いて会うというプロセスに価値が認められているからだろう。
そして、裏社会では殊更その傾向が強くなる、騙し奪い殺すのが日常だからこそ、そうした礼儀が――場合によっては命懸けのそれが必要となるのだろう。
ルファスという人間は金を積まれれば他人の命を平然と奪える人間で、世間一般では『悪党』と呼ばれる人間だったが、『無法者』ではなく、故にその選択をした。

280名も無き異能都市住民:2016/01/15(金) 01:33:13 ID:ZxYW2hTc0
>>279

「聞こえたでしょう。No.160。転移をお願いできるかしら。」

『分かった、貴女がそういうのなら。』

次の瞬間だった。体がふわりと浮き上がるような違和感。
同時に、目の前がさあと暗くなる。まるで『箱庭』に接続する時のような、
自分の体が消失していくような感覚がルファスを包むだろう。

そして次に、視界が開けた時には……。
恐らく、同じ下水道のどこか、資材置き場かなにかであった場所に転移していた。
そこには、小百合クローンが5体ほどおり、皆一様にあなたを不安げに見つめている。

「みんな、さっきの話は聞いていたわね。
 これは賭けになることは重々承知よ。もし、あなた達の中で承服できないという
 者がいれば、そうそうに私が別の隠れ家を手配するわ。そして金輪際そこに立ち寄らないと誓う。
 どうかしら。」

リーダー格のクローンが、他の者たちに問う。
しかし、このクローンは信頼されているのか異を唱える者はいなかった。

281ルファス:2016/01/21(木) 22:15:30 ID:3oYPXoVs0
>>280

「異論は無くても別の隠れ家は用意した方が良いかもな、どの個体だかは知らないが、誰かが下水道に入る所を浮浪者に見られてる」
「個人でお前達を探してた俺に見つけられて、組織である千夜に出来ない……なんて事無いだろうしな」

「で、ええと、本題だ、単刀直入に言うが、何名か同行を願いたい、全員でも構わないが移動が難しくなるのと……嫌味な言い方を敢えてするが、千夜に補足されて皆殺しの展開は避けたいからな」

自分と同行したクローン、残るクローンどちらかが殲滅されても可能性は残るようにしたい。
それが素直な意見だ、流石に同時にこの人数は要らない。

「無論、全員生きてるのがどちらの立場でも最良だ、けれど、上手くいった可能性だけを追うわけにもいかないんだ、悪いとは思うが 、誤魔化し抜きで言わせて貰った」

282名も無き異能都市住民:2016/01/24(日) 02:22:39 ID:ZxYW2hTc0
「わかったわ。そうね……。」

『なら、私がついていくよ。護衛役としてな。
 残りのみんなはNo.160に任せればいいさ。』

と、話を聞いていたクローンの一人が名乗り出た。
両腰にさげたホルスターに大型拳銃を挿し、どうやら髪を染めているのだろうか?
銀色とアクセントにピンクのメッシュを入れた派手な個体だ。

「No.47……そうね、じゃああなたについてきてもらおうかしら。
 残りのみんなはNo.160に従って。」

『と、いうわけだ。これでいいかいエージェントさん。』

283ルファス:2016/01/26(火) 02:58:41 ID:3oYPXoVs0
>>282

「ああ、こっちに残る方の戦力に問題ないならそれで構わない、自衛して貰えるなら此方も楽だしな」
「取り敢えず話もある程度纏まった、今から帰りの足を手配したいが、電話を使っても大丈夫か?」

流石に疑われてはいない、或いはそのリスクも承知で組んでいるだろうが念の為に確認を入れる。
些細な事だが、緊張している状態を考えると、気遣いすぎということもないだろう。

284名も無き異能都市住民:2016/01/29(金) 20:03:45 ID:ZxYW2hTc0
>>282

「ええ、問題ないわ。いざとなれば居残り組は
 No.160が何とかするわ。問題ない。ええ、電話もご自由に。」

No.160という個体はどうやらリーダー格の個体に相当信頼されているようで、
時折名前があがる。とにかく、任せておいてよいというならその通りなのだろう。

285ルファス:2016/02/05(金) 21:58:41 ID:dOQzZ8/w0
>>284

「オーケー、依頼人へ交渉が出来た事の連絡と、足の手配だけ済ませておく」
「多分手配が出来次第動く事になる、持つ荷物がどの程度有るかは知らんが、準備しておいてくれ」

取り敢えず、まずはヘンリーに交渉成功、帰還する、とだけ伝え、火急の用事がなさそうなら変なトークに巻き込まれる前にさっさと切る。
それが終われば『逃がし屋』へ連絡し、車を数台、街の何ヵ所にか用意させるだろう。
尾行は無い筈だが、万が一もある、今回は目立つターゲットを二人抱えている事も考えると、必要ないとは言い切れなかった。

286名も無き異能都市住民:2016/02/10(水) 23:41:19 ID:ZxYW2hTc0
「わかったわ。No.47。あなたも準備して。」
「はいなはいな。」

準備はそれからすぐに終わった。
元々、逃亡中の身さほどモノも置いていなかったのだろう。

移動の準備は万端だが……。

287ルファス:2016/02/22(月) 21:54:07 ID:zUj/TCAI0
>>286

「準備は大丈夫みたいだな、えーと、160だったか?工業地区の倉庫区画に一台車を用意させたんだが、その近くに送って貰うことは出来るか?」
「不都合なら、道さえ教えてくれれば徒歩で向かう、出来れば楽をしたい程度の気持ちだから無理なら断ってくれ」

準備が整ったなら早めに動くのが吉だろう、取り敢えず転移させて貰えても、して貰えなくとも、表に出て帰還することを優先する。

288名も無き異能都市住民:2016/02/22(月) 22:20:07 ID:ZxYW2hTc0
>>287

「できるわね、No160。」

『はい、問題なく。』

言うが早いが、奇妙な浮遊感がルファス達を包む。
そしてイデアの箱庭に接続する時と同じように、現実がぐらりと歪み……。
次の瞬間には、工業地区の倉庫区画のあなたたちは立っているだろう。

『お気をつけて、No96、No.47、そして名も知らぬエージェント。』

最後に、脳裏に涼やかな声が響いた。

2891:『ペルソナ抜き』:2016/03/15(火) 23:18:01 ID:p1won6CY0
「あ、あんたなんなんだよ…!?みんな、ひとりでに…っ!?」
「死にたくなかったらビクビクすんなって、言ってるだろ。
怖がるなよなぁ」

女物の着物を着た少女らしき人物が、
大の大人にビビられているという異様な状況。
周囲には昏倒している同じような大人たちと同じになるのかと、
男は恐怖していた。
発火能力を持つ男はあまりの恐怖に能力が上手く使えずにいる。

「だから殺しはしないって、寧ろ助けるっての」
「う、嘘だ!じゃ、じゃあ…こいつらは、どうなってんだ!」
「…運がなかったな、としか言いようが無いんだよなあ。
でもまあ死んではないよ、しばらくこのままだろうけどさ」
「そんなの信じられ――!?」

信じられるか、と言う前に男はビクンと震えると。
他の大人と同じように倒れ、死んだように動かなくなった。
はたから見れば少女が大人たちを襲ったようにも、見えるだろうか。

290防人鶫 ◆My6NsjkSfM:2016/03/16(水) 18:12:35 ID:NugK2bM60
>>289
この場所はどこなのか…
彼女は近くにいる誰かをじっと見る
「……ん、これは…」
周囲には倒れこんだ大人たちを見て首を傾げる。

「……そこにいる人、大丈夫ですか?
 …じゃなくて…」
と、あたりを見回し、改めて彼女を見る。

「…何をしてるんです?」
真剣な顔つきで答える。

2911:『ペルソナ抜き』:2016/03/16(水) 21:16:56 ID:p1won6CY0
>>290
「ん?ああ、人か…前にシン…なんだっけ、知り合いと一緒にいるのを見たっけ。
見ての通りだよ、助けしようとしたら、手遅れで皆お陀仏になっただけさ」

何でも無い見慣れたことのように少女は答えた。
まるでこの現場に何度も立ち会ったことがあるような口ぶりだ。
他意はないのだろうが、言い方のせいか、ますます疑いが強くなりそうだった。

「…あんたも速めに逃げといたほうがいいぞ。
『抜かれたくなかったらな』 そうなったら知らないぜ」

公安局もさっさと外出規制でもしてくれればいいのに、と付け加えながら、
手荒だが綺麗に切りそろえられた黒髪を掻きながら防人へと言う。
本当に心配しているのか、小馬鹿にしているのか掴めない、
明るいようでいて、どこか諦めを感じる声のトーンだ。

少女はこれといった武装は――暗記を見分けるすべがあれば、
着物の帯の裏に収まった四本の短刀が見えるかもしれない。
だが、どう見ても其れ以外の武装は見当たらない。

292防人鶫 ◆My6NsjkSfM:2016/03/16(水) 21:25:26 ID:NugK2bM60
>>291
「知り合い……はて、あなたの知り合いが誰なのかわかりませんけど…」
と、頭を軽く書きながら見つめる。

「手遅れですか……その割には随分と綺麗な顔で…
 …随分とあなた、慣れてるふうですね。
 普通だったらその……慌てそうなものですけど」
そういう彼女もどこか、ただならぬ空気を感じてか
ちょっと警戒する顔を見せる。

「『抜かれる』?……まるで犯人の手口をご存知のような……
 そんな感じがしますけど」
彼女の装備は……ちらりとだが短刀が見えた気がする。
暗器使い?と考えた。

「一体誰が、そんなことをやってるんでしょうかね……」
と、軽く近くにいた人に触れてみる。
身体が冷たかったりするのだろうか

2931:『ペルソナ抜き』:2016/03/16(水) 22:14:01 ID:p1won6CY0
>>292
「ん?ああ、お前くらいの年齢の時、
ヒドイ目にあったからな、ちょっとやそっとじゃ動じないよ」

思い出すのも億劫なように言う。
彼女にとって、忘れがたいが同時に辛い思い出なのだろう。
注意深く見れば、悲しみが混じっているように見える。

「少し前までは大人しくなってたんだけどな。
最近また増えてきたから探してるんだよ、『ペルソナ抜き』ってな。
…ああ、あんまり話題にならなかったっけ。死人も出たんだけど」

またさっきの表情に戻り、気怠そうに言う。
少女は触れるのを見て少々訝しげに見るが、それ以上は何もなかった。

「あんまり触らないほうがいいぞ。
マーキング付けられたら一瞬で『抜かれる』ぞ、能力」

大して報道すらもされていない事件の情報を、
事細かく記憶し、尚且つ自己一人で追っていると話す少女。
だが、それにしたら、何故少女だけが何も『抜かれて』いないのだろうか?

294防人鶫 ◆My6NsjkSfM:2016/03/16(水) 22:19:46 ID:NugK2bM60
>>293
「…見かけより年齢が高いんですか?
 私ぐらいって…」
彼女の言葉を聞いてちょっと首を傾げる。
「…いえ、あんまり昔のことを詮索するつもりはないけどね…」
と言って軽く頭を下げた

「ペルソナ……抜き?
 聞いたことないですね…はて…」
これだけのことが前にもあったのなら
どこかでニュースを聞いているような気がしたが、
鶫は皆目聞いたことがないように思える。

「マーキング?……
 っと、危ない危ない…
 それは親切に…で…その」
と、周囲の人から離れたところで…
次第に募ってきた疑問をぶつけてみる

「それだけの話を知っているのは何故です?
 …それに何故…あなたはこれだけの被害者がいて
 無事なんですか?」

2951:『ペルソナ抜き』:2016/03/16(水) 23:10:47 ID:p1won6CY0
>>294
「ん?特別だからな、抜かれない方法っていうのがあるんだよ。
抜く方法を知ってるっていうのもあるけど」

犯人のやり口を知っていて、尚且つ抜かれない方法を知っている。
事件に関して、重要な参考人に足りえる根拠になるだろう。
もしかしたら言っていないだけで犯人を知っているのかもしれない、
それとも言葉のとおり、犯人を追っているのかもしれない。

「…それと、あんまりここにいるとほんとに危ないぞ。
一回『抜かれる』と、意識も一緒に持っていかれる」

296防人鶫 ◆My6NsjkSfM:2016/03/16(水) 23:16:43 ID:NugK2bM60
>>295
「…方法を知っている……?
 むー、そうなると怪しい人にも見えてきますけど…」
と言って首を傾げる。
彼女の口ぶりからすると、あまり悪い人には思えないが…

「…じゃあ、これをした犯人のことを知っている…とかですか?
 …まさか、ここにその犯人がまた戻ってくるってことが……あるってことで…すか?
 できれば、その情報は街の人に知らせたほうがいいと思いますけどね…」
彼女は色々知ってるような気がする。
そうなるとちょっと好奇心を感じる。
…とは言え、ここにいると危ないということを踏まえると、
もしかしたら周囲にその敵がいるかもしれない。

2971:『ペルソナ抜き』:2016/03/16(水) 23:27:14 ID:p1won6CY0
>>296
「公安局には伝えたさ、犯人の居場所なんて知らないから、
やり口と被害に合いやすいやつ、時間帯をな。
…もっとも、ここ最近はおとなしかったから、すっかりマーク外されたみたいだけど」

言うと、ごそりと帯をいじった後。
――何の殺意もなく、防人の顔の右斜め上に短刀を投擲した。

投擲された短刀は何か、生き物を刺したような音と共に後ろの壁に突き刺さり、
突き刺さった短刀には何も『無かった』。まるで最初からそうであったように。

298防人鶫 ◆My6NsjkSfM:2016/03/16(水) 23:41:29 ID:NugK2bM60
>>297
「ああ、もう伝えていましたか。
 それならば大丈夫そうですね…
 と、思ったんですが、動きが鈍ると警戒も鈍ってしまう…」
と、そこまで言ったところで突然…

「!?」
突然自分の右斜め上になげられた短刀。
だがそれは自分を狙ったものではなく。

「後ろ?!」
振り向いたところには……何もない。
たしかに何かいたような音だったはずだが…

「…今のは一体…
 何が来た……んでしょう?」
一体何が起こったのか?
少し心配な表情を浮かべながら答える

2991:『ペルソナ抜き』:2016/03/17(木) 22:14:21 ID:p1won6CY0
>>298
「それが抜く方法さ。
でも殺したのは触手みたいなもんか。今は間に合ったけど、
次はないと思うぜ、そう言えばあんた、能力者だっけ?」

少女はそう言って、短刀を壁から抜く。
短刀に付いた切片を振り払って、帯になおした。

「しょうがないし、今日は俺の知り合いのところまでなら送――。
いや、お前…気づいてないだけか?」

少女の目には見えていた、骨ばった何かが、
防人の近くに迫っているのを――!

300防人鶫 ◆My6NsjkSfM:2016/03/17(木) 22:40:48 ID:NugK2bM60
>>299
「……能力者。
 あーそうですね。
 …敵が後ろにいたってことですか?」
振り向いてみるもののそこには誰もいない。
彼女に向けては慌てて頭を下げる。

「送っていただけるならばありがたいです…
 ぜひお願いしますー。
 …ん?」
彼女の言葉を聞いて不思議そうな顔を浮かべる。

「気づいてない…って言うと?」
妙な顔をしながらあたりを見てみる

3011:『ペルソナ抜き』:2016/03/17(木) 22:44:37 ID:p1won6CY0
>>300
「――避けろ!『抜かれる』ぞ!」

少女は防人に叫んだとともに駆け出す。
止めるか、それとも不可能と見て意識を刈り取るためか。
どちらにせよ、防人は避けなければ最悪の場合は能力を『抜かれて』しまう――!!

302防人鶫 ◆My6NsjkSfM:2016/03/17(木) 22:46:42 ID:NugK2bM60
>>301
「えっ…抜かれるって……どこから!?」
敵の攻撃がどこから来るのかわからない。
が……彼女の言葉を聞いてすぐさま


「…了解っ……!!」
おもいっきり地面を蹴って右方向へと飛んで行く。
急すぎたせいで受け身も取れないが、仕方ない!

3031:『ペルソナ抜き』:2016/03/17(木) 22:53:07 ID:p1won6CY0
>>302
少女は防人の立っていた位置に居た、
骨ばった何かを切り裂く様に短刀を振るう。
一閃の後、青白い炎のように燃え上がり、
骸骨のような何かを浮き上がらせ、そして『無くなった』。

「…マーキング付けられたか。まあいいか。
関係がなかったら外すだろうし、本当に抜くならもっと来るだろ」

口元にたれた汗を拭い、防人に向き直ると。

「速めに離れるぞ、いまのでマーク付けられた。
ここに行かれたあんた、抜かれるだろうしな。
殺気の骸骨みたいなの、見えなかったんだろ?」

304防人鶫 ◆My6NsjkSfM:2016/03/17(木) 23:01:25 ID:NugK2bM60
>>303
ドシャァッ!!
「あっ……いたたた……」
受け身を取らないまま倒れたせいで、ひどく痛む。
ゆっくり起き上がり辺りを見回した。

「…ん、敵が現れたんですか?
 …今たしか…」
青白い炎が燃え上がる様子を見て、彼女は息を呑む。

「狙われた……?
 しかも…私は全く見えなかったし…
 なんにも感じられませんでした…ね…」
彼女は体についた泥を払い落とし、穏やかでない顔で起き上がる

「…分かりました。
 その、マーキングってのはわからないですけど
 たしかにここは危険そうですね…」
彼女の言葉を聞いて頷く

「…と言っても、私だけだとさっきのみたいなのから
 とても逃げられそうにないですね…
 ここは、あなたの近くの方がいいでしょうか…」
といって、彼女の近くに行ってみる

3051:『ペルソナ抜き』:2016/03/17(木) 23:14:13 ID:p1won6CY0
>>304
近くで見ると少女の顔はとても中性的だった、
あどけない少女のような顔つきの中に覚悟を決めた少年のような強さを秘めている、
そんな、矛盾したものを感じるだろうか。

「ま、近くにいたら追ってこないだろ。
殺されるってわかってる相手に近寄るほどバカじゃないだろうし」

言うと、スマホらしきものを取り出し、電話をかけ始めた。
派手な赤い色のスマホはちょっと趣味が悪いかもしれない。

「ああ、矢野?オレだよ、オレ。
被害者一人連れてくから、部屋空けといてくれ。
ああ、オレの部屋でいいよ、どうせ何もないし」

306防人鶫 ◆My6NsjkSfM:2016/03/17(木) 23:21:58 ID:NugK2bM60
>>305
「はぁ、全く……困ったものですね……
 目をつけられるのは、慣れてるつもり…だったんですけど…」
すっかり意気消沈したようすである。
やばい相手に出会ってしまったと、ちょっと後悔している。

「…妙なスマホ…
 っと…矢野?…矢野…といえば…
 以前来たことがあるような…」
と、鶫は過去に聞いたことを思い出す

「探偵……の人でしたか?」

3071:『ペルソナ抜き』:2016/03/17(木) 23:46:20 ID:p1won6CY0
>>306
「ま、お勧めしないけど何度も襲われたら見えるよ。
落ち着いてから眼が覚めた被害者が何人か能力者になったらしいし」

意気消沈するのを面白がることもなく。
スタスタと歩き進める、普通に歩いているつもりだろうが、
その足運びは綺麗で、育ちの良さを感じさせる。

「ああ、学校からの腐れ縁だよ。
今は探偵やってる、物好きだよなあ。
ルディアの実家で会社経営でもしてればいいのに」

そんな事を言いながら、狭い路地を抜けていく。
すると、モダンな洋館のような建物が見えてきた。
近道成功、と小さく少女はつぶやいていた。

308防人鶫 ◆My6NsjkSfM:2016/03/18(金) 00:15:12 ID:NugK2bM60
>>307
「あんまり関わりたくはないですねー…
 能力をもう持ってる方ですし…
 あの妙な相手との戦闘は避けたいです。
 …でも、マーキングというのが付いてるんです…よね?」
先程から心配な様子で少女のあとをついていく。
彼女の足取りはおぼつかない。心配してるせいだろうか

「探偵はもしかしたら、むかしからやりたかった仕事なんですかねー。
 確かに会社員のほうが安定した収入が得られますし…
 っと、」
何気なく世間話的なことをしながら近道を通過する。

「あー、見覚えありますねー…」
と、モダンな建物を見つめながらうなずいた。

3091:『ペルソナ抜き』:2016/03/18(金) 21:15:09 ID:p1won6CY0
>>
「じゃ、ここまででいいだろ。
中にいる奴に部屋に案内してもらって、朝まで大人しくしてるといいぜ。
朝まで出歩かなければ、マークは外されるだろうしな」

少女はそう言うと、建物のベルを鳴らしたあと。
踵を返してまた夜の街へ向かおうとしている。

310防人鶫 ◆My6NsjkSfM:2016/03/18(金) 21:24:31 ID:NugK2bM60
>>309
「むう……度々感謝します……
 またしてもここにお世話になる…ということですね。」
と、申し訳無さそうな顔で答える。

「すいません…
 まぁ、あなたも気をつけてくださいね。
 …私はここに一晩居ることにします。」
と言って軽く手を振ってみる。

「犯人見つかるといいですね……」

3111:『ペルソナ抜き』:2016/03/18(金) 22:21:12 ID:p1won6CY0
>>310
「ああ、じゃあな。
精々アイツに迷惑かけてやってくれ」

くすっと小悪魔のように笑う。
防人の言葉に対して。

「ああ、今度こそちゃんと終わらせないとな――」

少女はゆっくりと闇に姿を消していった

(了、ありがとうございました)

312防人鶫 ◆My6NsjkSfM:2016/03/18(金) 22:50:38 ID:NugK2bM60
>>311
「…はい、がんばってくださいねー。
 …あ、できれば迷惑にならないようにします。」
と、彼女を見送っていった。

「……二度目ってなると流石に気まずいですね…」
一度目は重傷で、今回は自分から進んではいることになる。
…ちょっと恥ずかしそうな顔をしながら事務所に入っていくのであった。

//こちらこそ、ありがとうございましたーです

3132:『血に濡れた涙』:2016/03/22(火) 00:40:16 ID:p1won6CY0
「ちっ…クソ…まだ追ってくるのか…」

路地を上に下に、時に壁すら駆けて、
天沢裕太は異能都市公安局を含めた、治安維持組織より逃走していた。
理由は自身に『ペルソナ抜き』の容疑がかかったためだった。

「俺は知りたいくらいだ、アレの居場所なんて、なっ!」

血を流しすぎたか、と考えながら輸血パックを潰し。
粘性の血液床を作る。上を通った相手はたちまち絡め取られるシロモノだ。
ついでにさっき盗みとったフラッシュバンを投げ。
裏路地へ隠れる。

「どうせ長くは逃げられないだろうな、ここ…、
どこもかしくもカメラだらけだし」

足音が聞こえる、追手か?
それともただの通りすがりか。
どちらにせよ居場所が割れるのはまずい――。
意を決し、手を握った。

314防人鶫 ◆My6NsjkSfM:2016/03/22(火) 01:23:13 ID:NugK2bM60
>>313
「……………うう…
 最近落ち着いてた……気がしたんですけど……」
足音の主は、どこかつらそうな声を出しながら歩いている…
路地の向こうから見えてきたのは…以前であったことのある少女だろう。

「…ふぅ…
 はぁ…」
壁を背にして裏路地へと入り込む。

「ん……あれ?」
と、目線がそこにいた男性、裕太と重なった。

//どうも入らせていただきます。
//とりあえず今日の夜辺りに返します。

3152:『血に濡れた涙』:2016/03/22(火) 22:39:04 ID:p1won6CY0
>>314
「…お前…確か何時か見たな。
……こんなとこで何してる、治安維持が走り回ってる。
あんまりいると、捕まるぞ」

警告というよりもそれは脅しのような物だ。
ここから居なくならなければ場合によっては使う、と。
人質にすると宣言するような、眼。

316防人鶫 ◆My6NsjkSfM:2016/03/22(火) 22:57:41 ID:NugK2bM60
>>315
「…ん……
 あなたは…」
彼女はどこか気分が悪そうだ。
あの時にちょっと似ている…?

「…気が付いたらこんなところに…
 またどこかから飛ばされたのかもしれないです…」
と言ってふぅ、と座り込んだ。

「なんだか、妙なところに来てしまったみたいで…
 私も、そうしたいところなんですけど…
 ふぅ、ちょっと体調が…」

3172:『血に濡れた涙』:2016/03/22(火) 23:09:47 ID:p1won6CY0
>>316
「……能力の使い過ぎか。
あんたも逃げてるのか?」

取り敢えずとして栄養ドリンクを投げ渡す。
足音が聞こえてきた、不味いな。
飛ばされてきたとしたら厄介なことだ、躍起になってる相手に荷物は抱えてられない。

血を流す左をチラと見て。
…流し過ぎだな、抱えて走るとなれば20分が限度だろう。
それでも逃げきれまい、なにより――。
奴がこのタイミングを逃す筈が無い。

318防人鶫 ◆My6NsjkSfM:2016/03/22(火) 23:25:26 ID:NugK2bM60
>>317
「う…いえ、逃げてる…わけじゃないんですけどねー…
 なんでだか、こう体調が悪いというか……」
ため息を付きながら、投げ渡されたドリンクを

「…ん、ありがとうございます。」
嬉しそうな顔で飲み始めた。
少しは気分が良くなっただろうか…

「よくはわかりませんが…
 どうやらここはちょっとまずい状態みたいですね…」
と言ってあたりを見る

「…まさか、例のあれが…」
と言って心配そうにあたりを見る。ペルソナ抜きとかそういうのだろうか?

3192:『血に濡れた涙』:2016/03/22(火) 23:44:30 ID:p1won6CY0
>>318
ゆっくりと迫る影の形は俺には見覚えがあった。
これは――奴じゃない、だが……敵だ。

「おい、立てるか。
本命じゃないが……別のヤバいのが来た」

血を流す左から血液で長剣を作る。
輸血パックは後6つ、緊急用の代替血液は2つ。
十分といえば十分だが、守りながらは辛いか。
最悪、ペルソナを使うことも考えよう。

320防人鶫 ◆My6NsjkSfM:2016/03/23(水) 00:02:06 ID:NugK2bM60
>>319
「……ん、敵が来た…んですか?」
振り返って、彼の向いた方向を見る。
何かが居るようだ…


「…ひとまず、
 逃げられそうになさそうですね……
 ココは……」
そう言って両手にエネルギーを込める

「戦うしかないですね…」

3212:『血に濡れた涙』:2016/03/23(水) 00:12:43 ID:p1won6CY0
>>320
現れたのは180cm程の骸骨のような兵士――。
こいつらは見覚えがある、まさか……。

「アンサングウォーリアだと…!?
厄介なのが出てきたな、狙いは…防人だってのか」

狙う理由は分からないが……捕まえさせる訳にはいかない。
長剣を一閃するが、切られた部位は即座に再生した。
どうやら本気でアンサングの尖兵らしい。

「気をつけろ!こいつらはちょっとやそっとじゃ倒れやしねえぞ!」

5体のアンサングウォーリアは剣を握り、ゆっくりと迫ってきていた。

322防人鶫 ◆My6NsjkSfM:2016/03/23(水) 00:28:19 ID:NugK2bM60
>>321
「私が思ってたのとちょっと違います…ね…」
死神的なものが来ると思っていた鶫にとっては
その屈強そうな兵士は予想外である。

「…再生能力…
 こういうのは大抵は
 コアみたいなものがあるものですけど…」
そう言って両手のエネルギーを、持っていたオモチャの鉄砲に込める。

「……ひとまず一発!」
エネルギーを込めた弾丸を、兵士の頭部に向けて発射する。
人間で効きそうな部位を当ててみるしかないだろうということだ。

3232:『血に濡れた涙』:2016/03/24(木) 22:17:29 ID:p1won6CY0
>>322
「確か、一撃で高エネルギーをぶつけりゃ死ぬんだっけか
…相性最悪だな、クソが」

加速をかけてウォーリアを一体ずつ殴りつける。
硬いウォーリアは怯むが大したダメージはない。
しかし、弾丸を受けたウォーリアは一瞬では砂になる。
それを見た裕太は素早く戦術を変更。

「だったら・・・撃てる隙を作るか」

周囲に血を撒きながら、じりじりと距離を置く。

324防人鶫 ◆My6NsjkSfM:2016/03/24(木) 22:22:50 ID:NugK2bM60
>>323
「ふう……頼みますよ。
 素人なもんで、狙いは少々甘めなもので…」
一点への強烈な一撃…
これは鶫の得意とするところであった。
それならば自分の力を送り込んだ鉄砲の弾で撃破できる…!

「……次はこっちを!」
僅かな隙を見つければ、
鶫はすぐにそのウォーリアの一匹に一発弾丸を撃ちこむ。
接近してくるものが現れなければこのまま行けそうだが……

3252:『血に濡れた涙』:2016/03/24(木) 22:29:26 ID:p1won6CY0
>>324
接近する敵を器用に撒いた血を用いたトラップで止めていく。
こいつらは幸い知能は低い。大した敵にはならない。
…だが余りに弱すぎる。

「…まさか足止めか…?」

何度切っても再生する敵をきりながら。
周囲を伺う。何かがおかしいと感じて。

326防人鶫 ◆My6NsjkSfM:2016/03/24(木) 22:39:44 ID:NugK2bM60
>>325
「ふぅ、思ったよりもこいつらは…
 大したことのない相手ですねぇ!
 馬鹿正直に…突っ込むだけなんて!」
少しばかり鶫にも余裕が生まれてきた。
接近してくる相手から順々に撃破していく。
鶫の攻撃で敵は動かなくなるのだ。

「どうか…しましたか?
 この調子ならなんとかなりそうですが…」
と、なにか不安を感じているらしい裕太に声をかける。
少なくともここは袋小路ではない。
敵がある程度来なくなれば逃げの一手も可能では有るはず…
と、鶫は考えていた。

327ルファス:2016/03/25(金) 00:09:43 ID:/eXCKXlo0
>>288

ふと視界が歪み、気が付けば注文した通りの倉庫区画に立っている、自分の力に価値を感じていない訳ではないが、こういうとき本当に魔術というやつは便利だと少し羨ましく思ってしまう。

「……ああ、有ったぞ、あの車だ」

転移された場所から建物数件分距離をおいたところに、一般的な乗用車が一台無造作に止められている。
青年は懐からキーを取り出すと、クローン二人より先行し、周囲の様子を窺いながら車へと移動を始めるだろう。

/放置しすぎて他の方のロールが始まってしまった……本当にごめんなさい。

328名も無き異能都市住民:2016/03/26(土) 18:55:56 ID:ZxYW2hTc0
>>327

クローンたちはルファスに続き、周囲を警戒しながらも車に乗り込む。
幸い、周到な用意によって監視の目はこの車には届いていないようだ。

しかし、千夜にこれから喧嘩を売るにも等しいのだから
警戒はいくらしてもしたりない。特に、相手はあの偏執狂の権化ともいうべき
都市警備部門主任なのだから。

「で、これからどうするの?
 まずはあなたのアジトへでもいくのかしら。」

リーダー格のクローンが、声をかける。

329ルファス:2016/04/07(木) 03:11:37 ID:4sbqgDdY0
>>328

これから争う相手を考えれば警戒は幾らしても足りない状況だろう、当然それを怠るような真似はしない。
だが――実のところルファスはこの状況をそこまで絶望的に捉えてはいなかった。
理由は単純明快、この案件は恐らく一般の社員や警備員に触れさせる事が出来ないものだからだ。
想像だが動いているのは本人とクローン研究所(仮)の人間、もし存在するなら信用のおける私兵がそれに加わる程度だろう。

「ああ、問題が起きなければそうするつもりだ、依頼人のパパラッチと合流したい、マスコミ関係者なら事を大袈裟にしていく知恵も俺なんかより遥かにあるだろう」
「異論ややりたいことが有るなら遠慮なく言ってくれ、受け入れてやれるかは別問題だが検討はする」

330名も無き異能都市住民:2016/04/12(火) 23:42:21 ID:v8UDs3jk0
>>329

「分かったわ。とりあえずはあなたに従いましょう。
 この件については、ただ逃げ回っていた私たちよりも外部のあなた達のほうが
 情報を多く持っているだろうしね。」

『ふーん、私はまー、銃を撃つ機会があればなんでもいいなァ。』

護衛として突いてきたNo47なる個体が、指を銃の形にしてバァン、とつぶやく。
クローンたちは、ルファスに従うようだ。移動すれば問題なくヘンリーの隠れ家に戻れるだろう。
今の所、千夜……小百合側の動きは見えないがいつまでつづくことか。

331ルファス:2016/05/05(木) 22:24:01 ID:4sbqgDdY0
>>330

「了解、それじゃあ一旦は此方に合わせて貰うことにしよう……取り敢えずは合流だ」
「それと、ドンパチやるのは俺にとっても日常だからあまり強く言えんが、銃は撃たないで済むのが一番だ、大体面倒な事にしかならないぞ?」

暴力反対、なんて言う気は無いが、会話で決着が付くならそれが大体の場合最良だ、時には力で威圧する事も必要だが、間違いなく今の自分達は違うだろう。
そんな会話をしながらも車は走る、何の問題も無ければ、一度車を乗り換える以外特筆するような事はなく、ルファスの事務所に付くだろう。

332名も無き異能都市住民:2016/05/18(水) 20:26:39 ID:v8UDs3jk0
>>331

ううん、もうしわけない。
ちょっとロールを凍結してしまっていいだろうか。

なにやら気力が……。ごめんなさい。

333焔リンネ:2019/03/02(土) 21:04:20 ID:ciGK1LWQ0
―――――埠頭

いつもと同じだと思ってた。

焔リンネという存在は都市で生きるには余りにもか弱い存在だった。
不意の不幸に対抗するだけの力を持ち合わせて居ない少女が、嵐のような暴力に見合われたことは一度や二度ではない。
それでも、彼女自信が持っていた絶望の源が、ただそれだけのことと受け流せるまでに感じさせていた。

今日も、同じだと、思っていたのに。

その槍で突かれることには何の感情も抱かなかった。
幾度となく繰り返された、死と蘇生をもう一度経験するだけ。
この後、この人の狙いが何であろうとも、私自身がどうなろうと、次の日には同じベッドの上で、目覚めるだけ。

「なんなんですか、アナタ……っ」
身体中の血が抜けていく最中でも冷静さを保てるだけに死を受けいれたリンネが意識を裂いたのは相手のことだった。
いつもの、暴漢や強盗まがいの人間とは明らかに違っていた。
頭から布を被り、身体の殆ども覆われているが、一目見て筋肉量には貧しいと解るほどの細身で。
一歩、一歩と迫ってくる足音が重い。人の脚や、革の靴じゃない、夜空に響く冷たい音。
暗がりの中でも気づく、黄金の輝きを放っていた、大凡戦闘用には見えない豪奢さを誇る槍。

違う、いつもと違う、何かが。
身体が寒気を覚える。不思議と不安を覚える。何にも怯える必要は無いのに。
恐怖の感情が止まらない。いつもと同じ、大丈夫。何度も思い返しても、焦りは消えない。
胸元から溢れて溺れ落ちていく血を掬い上げる。この、身体から出て行った熱はどこで取り戻されるのだろう。

もしかしたら、このまま、蘇らないとしたら――――――

334アーリル:2019/03/02(土) 21:23:13 ID:ORmT3UkU0
>>333
なぜ、この場に赴いたのか、自分でも分からなかった。
虫の知らせ、或いはなんとなく海を見たくなった。理由はどうでも良い。
が―――

彼女が……彼女が……
アイリスが大事にしようとしていた少女が槍に貫かれていた光景だった。
埠頭に来たのは偶々だが、この場に居合わせのは少女…アーリルにとっては幸運と言えた。――件の少女が貫かれている点を除けば、だが。

『リンネ…』
「リンネ……さん!?」

まずい。この状況は不味い。少女の僅かな“騎士としての経験”が警鐘を鳴らす。
即座に自身の得物である槍を取り出し、手にする。この場に不似合いな、布を被る人物に向けて槍を向けて。
すでに血も出している。そして、彼女がアイ■■をこの世にもう一度呼び戻せる可能性を持つ“人”

「少し、耐えてください!リンネさん!私はアーリル!■■リス兄様の血筋の者です!
 子女に対する加虐行為、騎士として見逃せません!」

何を使えと言うのか。
このアーリルという名乗る少女の力であろう炎が突如埠頭に現れる。
身長145cmの小さな体と真紅の槍が白い布の者に立ち塞がろうとしている。

「――――お覚悟を」

アーリルが槍を握った時点で、この場を支配する空気が変わる。
威圧感に。一瞬で凍てつくような、そんな冷たいプレッシャー

335焔リンネ:2019/03/02(土) 22:05:04 ID:ciGK1LWQ0
>>334

怖い。怖い。怖い。
身体から血が抜けていく感覚。段々と死が迫ってくるのを感じる。
いつもなら怖くないはずなのに、何度だって経験してきたはずなのに。

暗黒の奥底に叩き込まれたかのよう、目は見えているが、何にも光を感じない。
今まで覚えていたようなものは何でもなかった。これが、絶望なのだと初めて知った。
この感触をずっと求めてたはずなのに、直面してみればこんなにも苦しいものだったなんて。

遠くで誰かの声が聞こえる。強く叫んでいる。
誰の声だっていい。何を叫んでいようが関係は無い。私が死んだとしても、誰にも……。


介入者の放つ空気が、矛先を変える。
リンネに刺さった槍を引き抜きアーリルへと向けられる。
黄金の槍の中腹にまでべったりと、赤い、しかし黒く濁った血液が混ざっていた。
アーリルに対して、見下ろす巨躯。2mを越すだろう背丈。顔は布地によって隠されていて伺えない。
黄金の槍を握る閉める華奢な掠れた包帯に巻かれ、そこからは何かが零れ落ちている。それ以外は布を巻いたような外套によってハッキリとしない。
「未だ、足りないのか……?」
一つ、小さな呟きが夜風に澄んだ音として渡る。
その途端、足元が大きく揺らぐ。埠頭の舗装された筈のコンクリート片が崩されている。黄金の輝きを放つ砂の粒に変えられていく。
謎の人物から広がっていく砂地がゆがみ、3つの鴉を形取り、アーリルへと迷うことなく向かって行く。

336アーリル:2019/03/02(土) 22:28:23 ID:ORmT3UkU0
>>335
スカートにカーディガンの姿の少女は首から下が真紅の炎に包まれる。
その後に現れたのは、違う姿だった。
一見する限り、ふくらはぎまで届きそうな軍服に見えるだろうか。
軍服とはいっても、ファッション性も有しているようにも見られる。
白を基調に、黒、或いは金といった色彩に彩られたそれはシンプルな形状。
首には赤いリボンタイ。首から肩にかけて様々な文様が刻まれたマント。
前身頃は左バスト部分まであり、縁は黒、黒の上から金の装飾が。
ウエストには革のベルト。軍服の間から見える足には縁に金で彩りが添えられた黒いスカート。そして黒のストッキング。
足の動きを阻害しないよう、かつ美しさも強調するためか、腰から下の軍服はヒラヒラと柔らかな動きを見せる。
腰から上が軍服のようで、腰から下はマーメイドドレスといった具合だ。そして、白い紐が通る黒いブーツ。
装着した者に美しさを添えるもの。そして多くの貴重な品を使用し強化されたそれは礼装ともバトルドレスともいえるものだ。
花の髪飾りが、揺れた。

「リンネさん。少しの間我慢できそうですか?我慢出来そうに無ければ、私の炎の力をお使い下さい!
 貴方なら――大丈夫なはずです!」

少女――アーリルの体から熱波が吹き荒れる。
リンネを除いてコンクリートやコンテナをを融かす。その少女の出力、見た目に似合わない。
吹き荒れる炎はリンネに集まる。リンネに熱<力>を与えようとしているのか。
リンネに力を使っている分だけ、この白い布の人物に使うほどの余力はあまり残していない。

「(交わせば面倒。潰せば数が増えて結局一緒。)」

「リンネさん……!生を諦めるな!貴方には未来があります!その未来は貴方だけのものではないのです!」

アーリルは、この、黄金の槍を持つ偉丈夫に心当たりなんてないし、生き死には関知する気も無い。
だが、リンネをこれ以上虐めるのなら……兄様が大事にしようとしていた少女を虐めるというのなら。

「リンネさんは殺させなんてしない。彼女は兄様…■イリ■兄様が大事に思っている人です。
 貴方がどなたが存じ上げませんが……邪魔なんてさせませんよ…!」

――我が魔槍を振るう時
燃えさかる劫火が槍を灼く。白布の人物が放ったカラスを撃ち落とそうと
虫を払うかのごとく、簡単に振るわれた。

337焔リンネ:2019/03/02(土) 23:15:39 ID:ciGK1LWQ0
>>336

何故、名前を知っているのか。
さっきの叫びを思い起こしながらゆっくりと飲み下していく。
久々に聞いた名前に、少しだけ活力を覚えた。
「だったら、放っておいて……ください。私のことは、知っているはず、です」
声が震えている。記録から知る限りでも、こんなにも怯えることは無かったはず。
アーリルの差し出した炎を受け取る。彼女がこんなにも恐れることは無かったはず。
「未来。そう、未来が……」
項垂れたまま力無く、口にした彼女の希望。
明日、どのように死のうとも、今よりも怖い瞬間なんか訪れ無い筈。歪だが、それが確実な希望だった。
だが、幾ら目を閉じていても先は見言えない。絶望を現すように、闇が広がるだけ。瞼の裏がこんなに暗いだなんて、知らなかった。
「どうして、どうして、どう、して……!!」


白い布の人物の足から砂地は絶えず拡大していく。
鴉を砂の粒に戻そうとも、幾らでも弾はある状態だ。
気付けば、リンネとかの者の周囲は既に変化を終えてアーリルの足元にも及ぼうとしていた。
「なんだっていい……キミで、試させてもらう」
不確かな足場の上を駆けるには早い。歩幅もあるが、それ以上に馴れている。
駆けつけてくるその脚が、僅かに布地から漏れた。黄金の鉤爪だ。
同時に、足元からさらに2体。新たなカラスが飛び立つ。そして、血に濡れた黄金を突き出してくる。

338アーリル:2019/03/02(土) 23:44:10 ID:ORmT3UkU0
>>337
「もちろん貴方のことは知っています!アイ■ス兄様の記録<記憶>からも知っています。
 貴方の気持ちは私には分かりません。今、抱えている気持ちも、何もかも。そんなの話してくれないと分からないじゃないですか!
 察しろ?そんなおバカな言い訳は聞きません…よ!」

アーリルは足を一踏み。
するとどうだろうか。炎は更に燃え上がり、埠頭は炎上する。
炎上する業火は焦熱の地獄への舞台装置の一つに過ぎない。
燃えさかるそれはリンネに吸われていくことは分かる。それでも出力は衰えない。

「私に分かることは少ないです。リンネさんの力と、この状況。そして、貴方の命が危機に瀕していること程度です。
 生きるだとか、死ぬだとか……。死んでも蘇るから大丈夫だとか……!そんなものは関係無いんです!!
 ――貴方は気付いていますか?貴方の体は治っても、心は泣いているんです。傷ついているんです!今だってそうじゃないですか!
 諦めていない。だからもっと、もっと!もっと!!自分に素直になって下さい!」

アーリルはアリスと出会ってから、少し素直になった。
それがきっかけで、少し感情的になることも多い。

「貴方を死なせたら…兄様を前にして、どんな顔をすれば良いのですか!擦り切れた心は……誰にも治せないんです。
 だから傷を瘡蓋にする強さを……!!貴方の側には…。」

――私“たち”がいます。……吸血鬼になってくれればもっと良いんですけどね?

足場は砂に変わろうとしている。それはもう目前まで迫っており。
正直、足場なんてどうしようにも無い。
だったら……

339アーリル:2019/03/03(日) 00:30:29 ID:ORmT3UkU0
撤退できるだけの状況を作り上げればいい!
アーリルはつま先に槍を乗せ、槍を蹴り上げる。
空中に浮いた槍を追いかけるようにアーリルの体も空中へと。

「――――――flash Crimson」

赤き閃光の名を冠する、アーリルの必殺技といえるそれは白布の者に一直線に向かう。
突き出すほどに近くにいる以上、足場や互いのリーチの違いの関係もあり有効な攻撃方法でもあった。
このまま状況が緊迫した状態では、いずれ自身は海に墜ちる。
それまで自身の炎の力を使い、リンネに力を与え続ければ、リンネの力で動いてくれれば……素早く撤退出来る準備は出来ている。

340焔リンネ:2019/03/03(日) 01:29:22 ID:ciGK1LWQ0
>>338

燃え盛る炎が暖かった。
熱い、とか、そういう物の方が正しいのかもしれないけれど、真っ先に感じられるのは温もりだった。
焦熱の中で思い出されていく、かつて手を差し伸べてくれた人の名前、姿、心強さ。
がむしゃらな想いが、情熱的な掛け声が、炎の温もりが、あの時投げかけられた優しさ、重なる。
涙が零れ落ちていくのを抑えられない。
「だって、私には、どうせ」
出来ることなら、会いたくなかった。
「だって、私は」
あの優しさが、怖くなった。
「だって――――」


振り抜いた槍からすぐさま手を離して勢いを槍に持っていかれることを防ぐ。
宙に放り出された黄金は瞬く間に砂に返って、風に流れ地面に落ちてしまえば跡形もなく消える。
そうして身軽になった身体を翻し、頭上から降り注ぐ赤い閃きを見据える。
足元から砂がせり上がり鳥脚の者を護るように覆い隠していったが、アーリルの放った槍は容易くその防御癖を貫き通す。
相手としても、直撃を避けるための防御だったようで、その為に身を翻らせ砂の上で体勢を取り戻す姿が見えた。
その動きで布は大きくはためいて、衝撃で砂地を滑っていく身体にブレーキを掛ける、真っ赤なグローブを填めた左手が見えた。


「――――その、手」
リンネが小さく呟きを漏らした。
鳥脚の者が見せた左手の赤は、少女の右手に填められているものと同じだ、見間違える筈がない。
「教えてください、あなた、誰なんですか。
 教えてください。そして、私についてのことも」
少女の身体から灰色の炎が一気に噴き上がる。
彼女の身体を焼き尽くし、胸の穴を修復する。安定しない足元を、一歩ずつ確かに踏みしめながら。

「私、死にたくないです」

灰の炎がリンネ自身を燃やしながらの背中で大きくなっていく。
「ただ一つ、確かなのはこの命―――――」
やがて巨大な腕が彼女の傍へ。そして、身体が組み上がり最後に出来上がったのは犬の頭。
燃え盛る灰の巨人がリンネの右肩へ寄せた頭にそっと手を上げて優しく撫でる。
「――――そう、あなたの名前、アヌビスって言うんですね」


鳥脚の者は纏っていた布をただし、体勢を整える。
右側に砂の山がせり上がってくると右手を差し込み、新たな黄金を引き抜いた。
それは、一度目とは違う、不可思議に宙に浮いた先端を持ち、翼にも似た意匠の刃を持った槍。
「Arize!!<目覚めよ!!>」
透き通るような声が耳に届く。
するとたちまち、砂の山がいくつも立ち上りそれぞれが人を模っていく。
軽装の鎧を身に付けた、黄金の剣を携えた彼らはさながら砂の兵士といったところか。
数は全てで5つ。アーリルに向けて2、リンネに向けて2、護身用に1といった配分。

341アーリル:2019/03/03(日) 01:51:27 ID:ORmT3UkU0
>>340
「戻れ。」

アーリルの一言。そして左腕を掲げれば、魔槍は不可思議な軌道で赤い閃光を引きアーリルの手元に戻ってくる。
魔槍を再び携えたアーリルに迫る砂の兵に目を向ける。

アーリルは速度と攻撃力が高いが紙装甲というタイプだ。
だから速度では簡単に負ける気はしないし、槍裁きも手前味噌ではあるが『まぁまぁ』だとは思っている。
だから、砂など気にかけずに。

アーリルの姿がブレる。
何も妨害されなければ、一瞬ののち、砂の兵の横につき、眉間目掛け槍を突き出すだろう。

アーリルの力で埠頭は業火の熱量と温度は際限なく上昇していく。
その場にいるだけで、灼熱の地獄に墜ちていく。死を連想させる焦熱地獄へ。
あるものすべてを灰燼へと返す炎。

「(焦熱へと進め。地獄の焦熱の先はすべてが死する破滅の世界!進められるものなら掛かってこい!)」

砂漠と化した埠頭に彩を添える炎。その様は正しく太陽が照らす熱砂蠢く砂漠。
その中の蟻地獄。今にも落ちていく可能性を秘めるそこにはリンネの命が掛かっており。
アーリルにとって、炎は生まれたころより親しんできたもの。故にどれだけ高温になろうにも何も感じないどころか心地よい。
この、あらゆるものを溶かし焦がしていく炎は身近なもので『あって当たり前』なもの。
だが、この白布の人物はどうか。やせ細っているのは見て取れるが、見るからに砂の世界の住人!
そして布。疑似的な昼の砂漠近くまで気温が上昇している中では、この白布の人物にとっては『庭先』といったところか。

「明日を知るのは、今日を生きた貴方だけなんです!――明日の貴方は昨日を知らないのです。
 だから生きて!諦めないで!貴方はもう……孤独じゃない!一人じゃない!」

――だから……私を。私たちを頼ってください。

私の力を吸ってでも。私の力なら“幾らでも吸ってもらって構わない”
アーリルの力から、僅かに流れ込んでくるのはアイリスの気持ちのほんの一かけら。
砂漠の中の一粒の砂。それでもリンネを心配する気持ちが含まれている。
何故ならアーリルはアイリスの血と力を持っているからで。

アイリスが望んでいたのは、アイリス自身がリンネの後ろ盾になることだった。
だから吸血鬼にならなかったのは残念ではある。吸血鬼になれたのなら、心も、肉体も護れる。
それだけの力がアイリスにはあったし、それ以外にも様々な力があるのがアイリスだ。
それだけに残念だった。

そして、目に映るグローブ。
そう、アイリスの記憶<記録>を参照するならば、必ず目につくグローブだ。
それが、左右。
そもそもグローブや手袋といったものは、手に嵌めるもの。即ち二つで1つ。
じゃあこの白布の人物は一体――?
それにリンネの傍にいる犬頭の灰の巨人はいったい……

342焔リンネ:2019/03/03(日) 02:28:14 ID:ciGK1LWQ0
>>341

アーリルに迫る人型が頭を撃ち抜かれゆっくりと倒れ伏しながら砂の粒に戻っていく。
だが、向けられた兵士はもう一人。砂の塊ならではの、捨て身の剣技で迫ってくる。

リンネに迫る砂の兵士は犬頭の剛腕が容易くかき消す。
真っすぐに放たれた拳が上体全てを弾き飛ばし、形を保てなくなった人型は脆く崩れ去る。
もう一方が黄金を突き刺そうとしても左腕で払いのけられ消滅する。

「ふう。熱いですね……だけど、今は立ち止まっている場合じゃない」
砂の兵が崩れ去っただけ高く盛られた砂山を蹴散らしながら進む。
明確な足取り、強い意志で鳥脚の者へと向かい、距離を詰めていく。
まだ二人の距離は少しある。しかし、この余りにも巨大な灰の巨人の腕ならば、届く。
「アヌビスさん!」
彼女の声に呼応して間髪入れず、右の拳が振り下ろされる。
同じタイミングで、黄金の柄を砂地に差し込めば地面から巨大な砂の腕が突き上がり、即座に粉砕され砂が舞い上がる。

砂塵が晴れた後には……誰もいなかった。
拳に相対するのが目的ではなく、大きなものを砕けさせて目くらましにするのが目的だったのだろう。
後に残るのは二人の少女と、犬頭の巨だけ。

343アーリル:2019/03/03(日) 02:34:07 ID:ORmT3UkU0
>>342
アイリスの優しさがリンネを責めていたのだろうか。
アーリルには分からなかった。

「まだまだ行きますよ!耐えてくださいねリンネさん……?」

アーリルがいるだけで。その場で力を使う意思を出すだけで際限なく熱くなる。
気温はどんどん上昇していく。既に日中の砂漠の気温をたやすく凌駕している中で、更に上昇していく。
リンネの気持ちも知らず、気温は上昇し、さらにアーリルの力に還元されていく。
この場に限れば、熱砂の上で見下ろしながら嗤う疑似的な太陽。人の形をした太陽。
この力を一点へ向けるとどのようになるのだろうか。
このままアーリルを放置すればするほど気温は上昇し、焦熱の地獄へと堕ちていく。
全てを灰燼に帰す死の世界。この間も気温は上昇し続けている。
埠頭そのものが危なくなるまではもう少し時間がある、というところだろうか。

「(でも、大丈夫。)」

アーリルの力に晒され続けても、リンネなら大丈夫だ、とアーリルは思っていた。
リンネも炎の使い手だ。『ほんのちょっと』熱くなったところで問題はないだろう。
埠頭そのものを使用不可にするくらい、アーリルにとっては不足はないし、護るべき対象であるリンネが
自力で動けるようになった以上、こちらに天秤は傾いていると実感している。
でも…相手がいなくなった。

「…あれ?せっかく体が温まってきたところですのに……。」

アーリルの槍すらも燃え始めた。その熱すらもアーリルに還っていく。
炎を携えた槍を横薙ぎするとどうだろうか。暖かな日中の気温に落ちていく。
でも、なんだか消化不良。

「…えーと、とりあえず、初めまして、でしょうか。リンネさん。」

344焔リンネ:2019/03/03(日) 02:51:41 ID:ciGK1LWQ0
>>343

「き、消えた……?」
リンネは戦闘に関して全くの初心者である。
暴威に晒されたことは幾度となくあっても一度たりとも抗ったことなんか無かったのだから。
大気中に散らばった砂の粒から目を慣らす方法を知らず、消えたことに気がついたのは完全に視界が晴れてからだった。
消えてしまってはしょうがない、と溜息を一つ吐くと炎の巨人も消え去った。

「熱い……」
かの者が消えても埠頭の一帯は砂漠のままで。
焦熱が収まっていく中でもその余波は暫く残り、さらには照りかえしによってここだけが異様な熱さを誇っていた。
居てもたってもいられなくなり、ブレザーを脱ぎ降ろす。汗で張り付いた前髪を掻き上げたところで、声に身体を向けた。
「……はじめまして。えっと……アーリルさん」
名乗りを思い出しながらぽつりと返す。
リンネには面識はないが、彼女は『色々と』、知っているのだろう。
「私は、大丈夫なはずだったのに……いや、大丈夫じゃなかったかもしれない。
 不思議と、怖かったんです……救ってくれて、ありがとうございます。
 あの人には逃げられてしまったけど、私には……希望が出来た」
感謝の言葉が綴られるが、俯きがちな視線なまま。

345アーリル:2019/03/03(日) 03:05:18 ID:ORmT3UkU0
>>344
アーリルにとっては、砂漠の気温が気持ちいいくらいだった。
砂漠と化した埠頭、そこに広がる光景に消化不良からくる不満が目に見えていた。術者がいなくとも、効果が残っている以上
離れるべきだと思っていたが。
アーリルの首から下が業火に包まれれば、服装が変わっていた。
こげ茶のローファーに黒いタイツ。
黒いプリーツスカートにカーディガンから覗くのは白いシャツ。

「この状況です。槍の携帯をお許しください。
 一刻も早くこの場を離れるべきだとは思いますが、まあいいでしょう。」

槍に火を灯し、照明の代わりとする。
するとアーリルの全体像が見えてくるはずだ。

「私は騎士でもあります。騎士が護るべき人を守るのは当然です。
 しかし、あの力は本当でしたのね。いえ、疑っていたのではないのです。信じられなかった…
 いや、『奇跡』を見たと言えばいいでしょうか。」

リンネとは正反対でアーリルは実に堂々としたものだった。そして笑みを返す。
騎士として胸を張れる行為をできたし、『希望』の命を救えたのだから、何も恥ずべき行為をしていないのだから。
その所作すべてにアイリス以上に自信が溢れていた。

346焔リンネ:2019/03/03(日) 03:22:27 ID:ciGK1LWQ0
>>345

リンネはいつも通り、制服姿だった。
何処に居て、何をしているときにも、この恰好をしている。
会話に花を咲かせる友達も居らず、遊びに興じるほどの余裕も無く。
ひたすらに孤独であった少女には、彼女にとっての必要最低限の生活しかしていなかったのだ。
つまり、私服が無い。

やはり、アーリルは力のことも知っている。
アイリスからは、色々聞かされているのだろうと、推測できた。
「この力なんか、持っていてもいいことは無いです。
 誰かを護れるあなたが持っていれば話は別でしょうが、私なんかが……」
やはり、うつむきがちの視線は、アーリルを拒んでいるように感じられるだろう。
それが真実であると裏付けるように、
「あの、今日は……ありがとうございました、本当に。
 私は、もう帰ります……あなたも、帰り道には、気を付けて」
と、早々に話を切り上げてアーリルの前から去ろうとする。

347アーリル:2019/03/03(日) 03:36:32 ID:ORmT3UkU0
>>346
「そのままで結構ですので、一つだけお伝えしなければならないことがあります。
 私の所為でアイリス兄様はタナトスのお迎えが来ました。」

―嗚呼、どうして。
――顔を見ないのか。

「つまり、兄様はもういないのです。もう、一生。どれだけ望んでも私は兄様に会えません。
 この世界に残したのは、一掴みの髪だけです。この髪が兄様がいた証でもあるのです。」

アーリルの頬に涙が零れた。
愛してくれた兄はもう二度と会えない、話はできない。
どこからか手にした瓶の中身。それはアイリスの髪だった。
リンネの知る、あの姿は小さな瓶の中に収まってしまうのだ。

「――だから貴方に助けてほしかった……。
 あなたの力なら、兄様をこの世に戻せる可能性がある、と私は考えたのです。」

348焔リンネ:2019/03/03(日) 03:50:59 ID:ciGK1LWQ0
>>347

余りにも予想外な展開に、振り返って、歩み始めようとした脚が止まる。
思わずもう一度半回転して、アーリルに向かい合う。あの儚げな雰囲気を思い返す。
アイリスが簡単に死ぬとは思えなかった、何かが、あったのだろう。

「私には、
 私には…。
 私には……」

未だに、リンネの朱の瞳が向けられることは無かったが、その頬に涙が伝っているのは明らかだった。
死んだことが悲しいんじゃない。戻せることが嬉しいんじゃない。

「私には、あのひとに合う資格なんて、ありません……っ」

349アーリル:2019/03/03(日) 04:10:00 ID:ORmT3UkU0
>>348
「私と兄様は、貴方方の言う、いとこの関係に相当します。
 私は幼少のころ、死の淵に立っていたらしいのですが、兄様と大お婆様から『血と力』即ち命を頂戴して
 今、この場に立っております。私の死は血を絶やすことに繋がるのです。ですので、生かされました。」

アーリルは俯いき、瓶を撫でた。
それでも、アイリスとアスカリオテが出来なかったこと、しなかったこと。
幼いころ、アイリスに撫でてもらったように。

「そして、私には兄様と大婆様の記憶を記録として受け継いでいます。
 ですので貴方の名前も力も知っていたのです。」

リンネの様子を見ようにも、目がぼやける。
涙が止まらないのだ。一度堰を切った涙の堤防は止まらない。
何せ、希望の星は墜ちたのだから。

「なぜ兄様だったのか。なぜ大婆様だったのか。それは私には分かりません。
 ですが、兄様は髪を遺し、大婆様はお持ちの武器とこのカーディガンを遺して下さいました。」

アイリスは、初めから分かっていた。
だからリンネに、自分の未来を見るなと伝えたのだ。
死ぬ自分に未来なんてない。それが分かっていたからだ。
眷属にすれば、少しでも心の拠り所ができる可能性も考えていたのだ。
でも、アーリルの希望は、今、この瞬間。リンネの言葉により希望は消え去った。

「……そう、ですか。会いたくなければ避ければいいじゃないですか。お礼はするでしょうが、それ以降は無理に会うこともないでしょう。
 お互い他人の振りをすればいいですもの。簡単なことですわ。」

アーリルは涙を浮かべたまま、歩き始める。
帰り道なんて気にしなくてもいい。それより、この髪の方がアーリルにとって大事なものなのだから。
リンネとすれ違う時、呟いた。

「……兄様、ごめんなさい。会いたいよぉ…兄様……。」

350名も無き異能都市住民:2019/03/03(日) 04:23:46 ID:ORmT3UkU0
>>349に追加

「…リンネさん。会う資格だとか、は私には分かりません。
 理由をお教えくださいませんか?このままでは、私は我慢できそうにありません。」

ごめんなさい、とつぶやいた後、背中越しにリンネに言葉を投げた

351焔リンネ:2019/03/03(日) 04:40:30 ID:ciGK1LWQ0
>>349

アーリルの反応でハッとした。
自分は今、何をしでかそうとしていたのか。
この可能性を経ってしまうことが意味することを。

違う。
気付けばすれ違ったばかりの肩に手を伸ばし、縋りつく。
違う、違う。
多くの人にとって死は永遠だったのだ。それが、たとえ、如何に強くて高潔なものだとしても。

「だって、ダメだったんですよ、私!
 あのひとがどんなに優しくして、あったかくしてくれて、気遣ってくれても!
 初めは言われた通り労わろうとしました、でも、ダメだったんですよ、やっぱり……。
 一人が怖くて、本当に死ねたらいいな、なんて思っちゃって、気付いたら、元に戻ってしまってた。
 でも、何度やっても、なにをやっても、やっぱりダメで。
 目を覚ます度に、私はみじめだって、あのひとに叱られるって思ったら、それが怖くって。
 だから、できれば会いたくなかった。あのひとにも、あなたにも。でも……このまま死んでいてほしいなんて思ってません……会いたいです。私も」

これを離したら、死んでも死にきれない。
蘇ったとしても、生きる価値を失ってしまう。真の意味で。

352アーリル:2019/03/03(日) 05:15:44 ID:ORmT3UkU0
>>351
リンネの手でも、アーリルの歩みは簡単に止まった。
小さな体。それでもはっきりと、小さな震えは伝わるだろう。
涙が一筋、零れた。
星がまた、瞬いたからだ。

「兄様はおそらく怒らないでしょう。そうか、と笑みを浮かべて何がいけなかったのか、まず考えるでしょう。
 かつて死にたがった貴方は、死にたくないとはっきりと口にしました。」

そして、アーリルの雰囲気が唐突に変わる。
リンネのいうあの人――アイリスの持つ、雰囲気に。

『君は変わったよ、リンネ。ああ、もちろんいい方向にね。
 君が昨日を向くのではなく、明日を向いたこと。それが僕にとって最高の報せさ。』

金髪の蒼い瞳。ポロシャツにヴィンテージジーンズ。
いつか会った姿のアイリスだったか。そんな姿を幻視させるほど、アーリルの口調や纏う雰囲気はアイリスだった。

『君が未来を視た。つまり、この子が此処にくると分かっていた。だがこの状況までは分からなかったのだろうね。
 寂しかったんだね。気付いてやれなくて申し訳ない。
 君はね、もう一人じゃない。一人だから怖いけれど、二人なら恐怖は薄くなる。三人、四人だったらどうなのだろうね。
 だから、顔を上げてごらん、リンネ。今日は星が綺麗だ。』

言葉はアイリスのもので。アーリルの体を使って、アイリスが話していると錯覚させるほどリアルなものだった。

「死を望む貴方は、今日死亡しました。今生きているのは、生を望む貴方です。
 ――お願いします。兄様を救ってください。」

瓶から髪を取り出し、リンネに差し出した。
男性とは思えないほど、サラサラでつややかな髪。そして潤沢な魔力を含むアイリスの髪。
これでダメなら、もうあきらめる。腹を括ったと思わせる強い瞳だった。

353焔リンネ:2019/03/04(月) 01:12:11 ID:ciGK1LWQ0
>>352

「アイリス……さん……?」
嘗ての言葉が思い返される。
アイリス自身の未来には、もう触れない方が良い。そう忠告されたことだ。
その言いつけだけは守ってきた。あの言葉の意味が今になって解る。
あのひとは、何れ、近いうちに死を迎えることに気付いていた。
命のレールの終着点まで程ないことを、きっと、あらかじめ知っていた。

そうだ。今日は何故、未来を見なかったのだろう。
正確には、埠頭に足を運んでいる自分までは見た。だから、ここに来ていた。
それより先のことは見ていない。しかし、ここでアーリルの頼みに乗らないはずはないと言い切れる。

「私、やります。それを、ください」
この炎の力を使った。それも、命を取り戻すようなことをしたら。きっと、怒るのだろう。
それでもいい。怒られても良いから、会いたい。
魔力のことはわからない。それでも、髪の一束だけでも訴えかけてくるものは伝わってくる。それだけに、あのひとは大きな存在だったのだろう。
灰の炎が溢れ出てくる。手を覆って、髪まで渡って。このあとは、どうなるか。


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