したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が1スレッドの最大レス数(1000件)を超えています。残念ながら投稿することができません。

リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル13

1リリカル名無しA's:2010/03/29(月) 23:42:31 ID:lCNO3scI0
当スレッドは「魔法少女リリカルなのはクロスSSスレ」から派生したバトルロワイアル企画スレです。

注意点として、「登場人物は二次創作作品からの参戦する」という企画の性質上、原作とは異なった設定などが多々含まれています。
また、バトルロワイアルという性質上、登場人物が死亡・敗北する、または残酷な描写や表現を用いた要素が含まれています。
閲覧の際は、その点をご理解の上でよろしくお願いします。

企画の性質を鑑み、このスレは基本的にsage進行でよろしくお願いします。
参戦元のクロス作品に関する雑談などは「クロスSSスレ 避難所」でどうぞ。
この企画に関する雑談、運営・その他は「リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル専用したらば掲示板」でどうぞ。

・前スレ
したらば避難所スレ(実質:リリカルなのはクロス作品バトルロワイアルスレ12)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12701/1244815174/
・まとめサイト
リリカルなのはクロス作品バトルロワイアルまとめwiki
ttp://www5.atwiki.jp/nanoharow/
クロスSS倉庫
ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/
・避難所
リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル専用したらば掲示板(雑談・議論・予約等にどうぞ)
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/12701/
リリカルなのはクロスSSスレ 避難所(参戦元クロス作品に関する雑談にどうぞ)
ttp://jbbs.livedoor.jp/anime/6053/
・2chパロロワ事典@wiki
ttp://www11.atwiki.jp/row/

詳しいルールなどは>>2-5

738Masquerade ◆gFOqjEuBs6:2010/12/16(木) 20:24:28 ID:GyeeVd1I0

「馬鹿だったよ、俺は」
「ああ、そうだな」

 自分は何をしていたのだろう。
 家族を守りたいと言って、結局何も出来なかった。
 八神はやてを殺して、セフィロスを修羅の道に堕として。
 大切な者を奪われたセフィロスの気持ちは、痛い程に分かる。
 だからアンジールは、尚更引き返す事など出来なかった。
 その気持ちが分かるからこそ、止まる訳には行かなかった。
 大切な友の、大切な人間を奪った自分に、そんな資格はないのだ。
 それなのに……それなのに。

「結局俺は、只の道化か……最悪だな」

 そうして戦い続けた結果が、こんな惨めな終わりだったとは。
 全く予想していなかったのかと問われても、今はもう分からない。
 あの時別の選択を選んでいたら、こうはならなかったんじゃないか。
 そんな後悔がいくつ過るけれど、それはもう実現し得ない事。
 どんなに悔やんでも、現実は何も変わらないのだから。

「例え世界を敵に回しても、守るべきものがある――俺のおばあちゃんの言葉だ」
「そうだ……俺は、守るべき者の為に今まで――」
「ああ。お前は確かにどうしようもない馬鹿野郎だ。お前の想いに間違いは無かった」

 ただ、そのやり方を間違えてしまったのだ。
 家族を守りたいという意思を優先させ過ぎて。
 本当なら、戦えない全ての人々を、全ての命を、守りたかった。
 守って、守って、守り抜いて……人々の未来を守り抜きたかった。
 だけどその想いは、家族への愛が故に歪んで行き――こんな所まで来てしまった。
 今更やり直しようが無いし、失った時間も家族も、絶対に戻っては来ない。
 結局自分は家族の為と言いながら、何一つ成す事が出来なかったのだ。
 死に瀕した今だからこそ、ようやっと冷静に物事を考える事が出来た。

「俺は……兄としては最低だったな」
「ああ、お前は最低だ。だが、同時に最高の兄でもあった」

 刹那、アンジールの目頭が熱くなった。
 こんなどうしようもない自分に――最悪な自分に。
 まだ最高の兄だなんて言ってくれる奴が居たなんて。
 一滴の涙がアンジールの瞳から零れ落ちた。

「おばあちゃんはこうも言ってた。人は人を愛すると弱くなる――
 けど、恥ずかしがる事は無い。それは本当の弱さじゃないから。
 弱さを知ってる人間だけが、本当に強くなれるんだ。
 お前は誰よりも強く、立派な兄だったよ……アンジール」

 その言葉だけで十分だった。
 例え歪んで居ようと、アンジールを突き動かしたのは、妹達への愛だ。
 例え道化に堕ちようと、例え自分の中の弱さに翻弄されようと。
 その感情は元を辿れば、誰よりも強い愛情であった。
 そして今なら分かる。その弱さを認める事が、本当の強さなのだと。

739Masquerade ◆gFOqjEuBs6:2010/12/16(木) 20:28:25 ID:GyeeVd1I0
>>738 はミスです。
読む時はこちらで願いします。

///////////////////////////////

「馬鹿だったよ、俺は」
「ああ、そうだな」

 自分は何をしていたのだろう。
 家族を守りたいと言って、結局何も出来なかった。
 八神はやてを殺して、セフィロスを修羅の道に堕として。
 大切な者を奪われたセフィロスの気持ちは、痛い程に分かる。
 だからアンジールは、尚更引き返す事など出来なかった。
 その気持ちが分かるからこそ、止まる訳には行かなかった。
 大切な友の、大切な人間を奪った自分に、そんな資格はないのだ。
 それなのに……それなのに。

「結局俺は、只の道化か……最悪だな」

 そうして戦い続けた結果が、こんな惨めな終わりだったとは。
 全く予想していなかったのかと問われても、今はもう分からない。
 あの時別の選択を選んでいたら、こうはならなかったんじゃないか。
 そんな後悔がいくつ過るけれど、それはもう実現し得ない事。
 どんなに悔やんでも、現実は何も変わらないのだから。

「例え世界を敵に回しても、守るべきものがある――俺のおばあちゃんの言葉だ」
「そうだ……俺は、守るべき者の為に今まで――」
「分かってる。お前はどうしようもない馬鹿野郎だが、その想いに間違いは無かった」

 ただ、そのやり方を間違えてしまったのだ。
 家族を守りたいという意思を優先させ過ぎて。
 本当なら、戦えない全ての人々を、全ての命を、守りたかった。
 守って、守って、守り抜いて……人々の未来を守り抜きたかった。
 だけどその想いは、家族への愛が故に歪んで行き――こんな所まで来てしまった。
 今更やり直しようが無いし、失った時間も家族も、絶対に戻っては来ない。
 結局自分は家族の為と言いながら、何一つ成す事が出来なかったのだ。
 死に瀕した今だからこそ、ようやっと冷静に物事を考える事が出来た。

「俺は……兄としては最低だったな」
「……ああ、お前は最低だ。だが、同時に最高の兄でもある」

 刹那、アンジールの目頭が熱くなった。
 こんなどうしようもない自分に――最悪な自分に。
 まだ最高の兄だなんて言ってくれる奴が居たなんて。
 一滴の涙がアンジールの瞳から零れ落ちた。

「おばあちゃんはこうも言ってた。人は人を愛すると弱くなる――
 けど、恥ずかしがる事は無い。それは本当の弱さじゃないから。
 弱さを知ってる人間だけが、本当に強くなれるんだ。
 お前は誰よりも強く、立派な兄だったよ……アンジール」

 その言葉だけで十分だった。
 例え歪んで居ようと、アンジールを突き動かしたのは、妹達への愛だ。
 例え道化に堕ちようと、例え自分の中の弱さに翻弄されようと。
 その感情は元を辿れば、誰よりも強い愛情であった。
 そして今なら分かる。その弱さを認める事が、本当の強さなのだと。

740Masquerade ◆gFOqjEuBs6:2010/12/16(木) 20:29:43 ID:GyeeVd1I0

 戦って、戦って……家族の笑顔を信じて。
 戦って、戦って、戦い続けたその結果がこれなら。
 とんだ茶番だと言いたくもなるけれど、その想いに羞恥は無い。
 誰が何と言おうが、自分は家族の為に戦ったのだ。
 家族に謝罪するのは、あの世に逝ってからでも遅くは無い。

「最期に一つだけ……聞いてくれるか」
「ああ、何だって聞くさ……アンジール」
「……お前には……夢は、あるか……?」
「ああ……あるぞ。とびきりでかい夢がな」
「そうか……それは良かった」

 その答えに、自然と笑みが零れた。
 もう自分の命はそう長くは無いのだろう。
 自分の事だから、自分が一番分かっている。
 だから最期に一つだけ……これだけは、どうしても伝えたい。
 この戦いで最も信頼出来るであろう人物に――自分の信念を。
 そして、ここまで戦い続けて来た、自分の生きた証を、刻みたい。

「夢を持て――そして誇りも」

 誰よりも大きな夢を持っているであろうこの男に。
 かつての自分と同じ、守るべき立場にあるこの男に。
 消え入る意識の中で、どうしても伝えたい言葉を、紡ぎ出す。
 一言言葉を発する度に、その意識が薄れて行くけれど。
 そんな事は、構いはしなかった。

「どんな時でも……夢と誇りを、手放すな」

 自分にはついぞ出来なかった事を、託す。
 最期の最期で何もかもを手放してしまった自分の代わりに。
 愛弟子であるザックスと……自分と同じ誇りを持ったこの男に。
 例え自分が居なくなっても、彼らがきっと自分の想いを継いでくれるから。
 最期の瞬間にアンジールがその胸に抱いたのは、消えない夢と、誇りだった。




【アンジール・ヒューレー@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使 死亡確認】

741Masquerade ◆gFOqjEuBs6:2010/12/16(木) 20:32:11 ID:GyeeVd1I0
 



 キングと金居。
 コーカサスオオカブトとギラファノコギリクワガタ。
 世界最大の甲虫の祖たる二人の王が、月光に照らされ相対する。
 餌を求めて、夜な夜な動き出すのはカブトとクワガタの性とも言える。
 蜜のしたたる木の上で、カブトとクワガタが戦うのは最早日常の出来事。
 ただ一つ違うのは、ただの蟲ではなく、全ての先祖となった二人が出会ったという事。
 金の仮面に覆われた二人の視線が激突して、目には見えない火花が散った。

「どういう事、ギラファ? 僕達は仲間じゃ無かったの?」
「元の世界ではそうだったかも知れないが……今のお前は、ただの敵だ」
「らしくないなぁ。もしかしてこのゲームに乗っちゃったの?」
「さあ、どうだろうな? お前がその答えを知る必要は無い」

 それ以上の問答は不要だった。
 クワガタの祖たる黄金が、大地を蹴って駆け出す。
 一歩を踏み出す度に腐葉土で出来た地べたに足跡が刻まれる。
 それぞれのスートの王たる存在。その実力は拮抗していると言っていい。
 振り下ろしたクワガタのヘルターを、カブトのオールオーバーが受け止める。
 されど攻撃はそれで止みはしない。クワガタの武器は、一組の双剣なのだから。
 間髪いれずに叩き込んだスケルターは、しかしソリッドシールドによって阻まれた。
 昆虫の王者たるカブトの祖先ともなれば、生半可な防御力では無いという事か。
 闇夜に眩い火花を舞い散らせて、二人の王の戦いが始まった。

742Masquerade ◆gFOqjEuBs6:2010/12/16(木) 20:33:25 ID:GyeeVd1I0
【2日目 早朝】
【現在地 D-9 雑木林】


【キング@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康、コーカサスビートルアンデッドに変身中
【装備】ゼロの仮面@コードギアス 反目のスバル、ゼロの衣装(予備)@【ナイトメア・オブ・リリカル】白き魔女と黒き魔法と魔法少女たち、キングの携帯電話@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、おにぎり×10、ハンドグレネード×4@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ラウズカード(ハートの1、3〜10)、ボーナス支給品(未確認)、ギルモンとアグモンと天道とクロノとアンジールのデイパック(道具①②③④⑤)
【道具①】支給品一式、RPG-7+各種弾頭(照明弾2/スモーク弾2)@ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL、トランシーバー×2@オリジナル
【道具②】支給品一式、菓子セット@L change the world after story
【道具③】支給品一式、『SEAL―封印―』『CONTRACT―契約―』@仮面ライダーリリカル龍騎、爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具④】支給品一式、いにしえの秘薬(空)@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER
【道具⑤】支給品一式、
【思考】
 基本:この戦いを全て無茶苦茶にする。
 1.ギラファと戦う……?
 2.先程の紅い旋風が何か調べる。
 3.『魔人ゼロ』はもういいかな。
【備考】
※キングの携帯電話には『相川始がカリスに変身する瞬間の動画』『八神はやて(StS)がギルモンを刺殺する瞬間の画像』『高町なのはと天道総司の偽装死体の画像』『C.C.とシェルビー・M・ペンウッドが死ぬ瞬間の画像』が記録されています。
※全参加者の性格と大まかな戦闘スタイルを把握しています。特に天道総司を念入りに調べています。
※十分だけ放送の時間が遅れた事に気付き、疑問を抱いています。
※首輪が外れたので、制限からある程度解放されました。


【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】健康、ギラファアンデッドに変身中
【装備】バベルのハンマー@仮面ライダークウガA’s 〜おかえり〜
【道具】支給品一式、トランプ@なの魂、砂糖1kg×5、イカリクラッシャー@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、首輪(アグモン、アーカード)、正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、デザートイーグル(4/7)@オリジナル、Lとザフィーラとエネルのデイパック(道具①②③)
【道具①】支給品一式、首輪探知機(電源が切れたため使用不能)@オリジナル、ガムテープ@オリジナル、ラウズカード(ハートのJ、Q、K、クラブのK)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、レリック(刻印ナンバーⅥ、幻術魔法で花に偽装中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(シグナム)、首輪の考察に関するメモ
【道具②】支給品一式、ランダム支給品(ザフィーラ:1〜3)、マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS、かいふくのマテリア@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【道具③】支給品一式、顔写真一覧表@オリジナル、ジェネシスの剣@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、クレイモア地雷×3@リリカル・パニック
【思考】
 基本:プレシアの殺害。
 1.キングを封印する。
 2.キングを封印して、何としてでも元の世界に帰る。
 3.出来れば二度とこんな戦いに巻き込まれない様に、主催側も潰しておきたい。
【備考】
※放送の遅れから主催側で内乱、最悪プレシアが退場した可能性を考えています。
※首輪が爆発しなかったことから、主催側が自分達を切り捨てようとしている可能性を考えています。
※最早プレシアのいいなりに戦う事は無意味だと判断しました。
※首輪を外したので、制限からある程度解放されました。

743Masquerade ◆gFOqjEuBs6:2010/12/16(木) 20:34:03 ID:GyeeVd1I0
 


 空を舞うのは、無数の白の羽根。
 繊細で、美しくて、幻想的な光景であった。
 月光に照らされながら、空を舞う白の羽根を見上げる天道の瞳はやはり、何処か悲しげであった。
 ただ何をするでもなく、その場に佇んで、空から舞い落ちる羽根をぼんやりと眺める。
 天道自身、ここでどれだけそうしていたのか、自分でも分かりはしない。
 ただ空から振り続ける天使の羽根に魅了された様に、その場を動けなかった。
 やがて思い立ったように、その羽根の一枚を手に取る。
 それはまるで天使の羽根の様に柔らかかった。

 一枚、また一枚と、地べたに堕ちて行く。
 やがて全ての羽根が土に汚れた地べたに舞い落ちて、幻想的な夜は終わりを告げた。
 ただ、地面に落ちて汚れてしまった羽根と、何処か寂しげな満月の光だけが残る。
 誰も居なくなった静寂の中で、天道はその手に握り締めた純白の翼を見遣った。

「俺の夢は……妹が笑って暮らせる世界を創る事。その為に、俺はあの青空を守り続ける」

 残った一枚の美しい羽根。
 それに言い聞かせる様に、天道は呟いた。
 それはきっと、アンジールも同様に願って居た夢なのだろう。
 誰よりも妹思いで、誰よりも立派な兄であったアンジールの夢。
 自分はそれを受け継いだ。彼の夢と誇りを、その胸に刻みつけた。
 緑の光となって消えたアンジールに、改めて誓ったのだ。
 だから天道に、立ち止まる事は許されない。
 夢と誇りを守り抜く為にも――

「このふざけたゲームは、俺が潰すっ……!!」

 アンジールの羽根を握り締め、その瞳に再び強い怒りを宿らせた。
 こんなふざけたゲームの為に、誰よりも優しい兄の人生は狂わされた。
 妹を奪われ、運命の歯車を狂わされ、死ななくてもいい命が、散ってしまった。
 沸き起こる激情は、命を粗末に扱う主催者への激しい怒り。
 アンジールの分まで、何としてでも戦い抜こう。
 それが自分に出来る、せめてもの弔いだった。

 そんな時だった。
 ――ドゴォン! と、鳴り響いたのは何かの轟音。
 最初は断続的に、そしてやがて連続的に、鳴り響く爆発音。
 何者かがミサイルでも発射しているかのような炸裂音であった。
 聞こえる場所は、ここからそう遠くは無い。

 どうしたものかと思考する。
 キングは突然現れた別のアンデッドと共に何処かへと消えた。
 というよりも、もう一体のアンデッドがキングの身体を掴んで、森林の中へと転がり込んだのだ。
 恐らくはキングと敵対する関係にある別のアンデッドなのだろう。
 カブトに変身出来ない自分が向かった所で、戦い様がない。
 ならばやはり、爆発音が聞こえた場所へ向かうべきか。

 天道は知らない。
 爆発音の正体は、同じ頃に乱れ撃ちされたジェットスライガーによるもの。
 死を目前にした柊かがみが、誰にもミサイルを悪用されない様に放ったもの。
 あの少女の、人間としての最期の足掻き。言うなればその爆発音は、少女の魂の叫び。
 それを知らない天道は、とにかくそこで誰かと合流しようと脚を向ける。
 どっち道、カブトになれない今、キングを追っても犬死にするだけだ。
 ならば、仲間が居る可能性を信じて、天道は爆心地へ向かう。
 そこに誰か、共に戦うべき仲間が居ると信じて。


【2日目 早朝】
【現在地 D-8 荒れ地】

【天道総司@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】疲労(中)、全身にダメージ(中)、一時間変身不可(カブト)
【装備】ライダーベルト(カブト)&カブトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、パーフェクトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】アンジールの羽根@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【思考】
 基本:出来る限り全ての命を救い、帰還する。
 1.爆発音の場所へ向かい、誰かと合流、生き残った全員を纏める。
 2.首輪が爆発しなかった事による疑問。
【備考】
※放送の異変から主催側に何かが起こりプレシアが退場した可能性を考えています。
※首輪を外したので、制限からある程度解放されました。
※ハイパーフォームになれないので、通常形態でパーフェクトゼクターの必殺技を使うと反動が来ます。

744Masquerade ◆gFOqjEuBs6:2010/12/16(木) 20:37:07 ID:GyeeVd1I0
投下完了です。
途中重要なシーンで誤字を発見したので、修正ついでに台詞も修正しました。
最初はキングと金居の決着まで書こうと思っていたのですが、ここで切った方がいいかなと思ったので。
それでは、指摘などがあればよろしくお願いいたします。

745リリカル名無しStrikerS:2010/12/16(木) 21:28:51 ID:yClfzZYgO
投下乙です!
アンジール、お疲れ様……!
天道、彼の意志を継いで頑張ってくれ!

746リリカル名無しStrikerS:2010/12/16(木) 21:29:32 ID:.l.VjwPM0
投下乙です
アンジール終始妹のために戦い続けたお前はまさしく「兄」だったよ
それにしても>>735の時の金居もしかして鼻とか顎が尖っていたりするんだろうか

ところでアンジール殺しのボーナスが見当たらないようですけど、書き忘れでしょうか

747リリカル名無しStrikerS:2010/12/16(木) 21:41:53 ID:KnI4pRrc0
投下乙です

誰か死ぬと思ったがアンジールが…もう安らかに眠ってくれ…手段は間違えていたがそれでもお前は…
金居は首輪が外れたから…とも思ってたが、そうだよな…彼的はキングは放置できんか。でもそんなことしてる時間はないぞw
キング、このまま金居とタイマンか?、それとも…
そして天道はそっちに行くか。急げ、時間が無いぞ

748 ◆gFOqjEuBs6:2010/12/16(木) 22:04:35 ID:GyeeVd1I0
>>746
指摘ありがとうございます。
完全に見落していました。ウィキ収録時に修正しておきます。
また、アンジールの死亡時の描写と各状態表で思う所があるので、
その辺も収録時に修正しておきます。話の流れは変わりません。

749リリカル名無しStrikerS:2010/12/17(金) 00:20:03 ID:Bzp5bz520
投下乙です。

アンジールが遂に退場か……最後まで道化だったとはいえ、その生き方そのものは天道が認めてくれたのがせめてもの救いか……
で、合流に動いた天道は……ってかがみが乱発したミサイルの方に向かうのか!
そして賭博黙示録金居がついにキングに挑みアンデッド頂上決戦……他のキャラとの位置関係的にいよいよ最終局面だなぁ。

750 ◆LuuKRM2PEg:2010/12/31(金) 00:19:34 ID:NjnAvwz60
天道総司、ユーノ・スクライア、高町なのは(StS)、スバル・ナカジマ、ヴィヴィオを投下します

751Revolution  ◆LuuKRM2PEg:2010/12/31(金) 00:20:41 ID:NjnAvwz60

天の輝きは、次第に増していた。
地平線の彼方より昇っていく、太陽によって。
それでも、未だに風は冷たかった。
時刻はまだ早朝。
薄暗さの残る空には、星が煌めきを放っている。
肌寒い空気をその身に浴びながら、天道総司は歩いていた。
つい先程響いた、轟音の正体を突き止めるため。
位置から考えるに、スカリエッティのアジト付近だろう。
やはり、自分がいない間に何か一悶着が起こった可能性が高い。
高町なのはと八神はやては、険悪な雰囲気を放っていた。
むしろ起きないのがおかしいかもしれない。
その可能性を危惧した天道は、歩くスピードを速める。
一刻も早く、仲間達と合流するために。

「…………ん?」

その最中、彼は足を止めた。
何処からともなく、音が聞こえたため。
それは乗り物が動いているように、鈍かった。
鼓膜が刺激され、天道は反射的に振り向く。
すると目の前からは、黒と銀の二色に輝く巨大なマシンが、こちらに近づいていた。

「何ッ!?」

天道は目を見開く。
現れた機械は、エンジン音を鳴らしながら凄まじい勢いで接近していた。
それは彼の世界に存在する企業、スマートブレインが生み出したジェットスライガーと呼ばれるマシン。
しかし、天道がそれを知る術はない。
ジェットスライガーは、地面を抉りながら近づいてくる。
目前にまで迫った途端、その動きを止めた。
反射的に天道は構えを取る。
すると、ジェットスライガーの影から青髪の少女が姿を現した。
アジトに向かう前に合流した高町なのはの弟子、スバル・ナカジマ。

「天道さん!?」
「ナカジマ…………無事だったか」
「はい、あたしは大丈夫です!」

現れたスバルはジェットスライガーから降りると、力強く答える。
小柄な身体には、生傷がいくつか見られた。
しかしこの様子を見る限り、問題はないと思われる。

「他の奴らはどうした?」

天道は、疑問を口にした。
アジトの前に集まっていた仲間達が、他に誰もいない。
その直後、スバルの表情は曇る。
暗い顔をしながら、彼女は口を開こうとした。

「えっと、その……」
「スバル、天道さんっ!」

だが、スバルの言葉は遮られる。
上空から突然、声が聞こえたため。
それに反応して、天道とスバルは上を向く。
空からは、ドレスのような純白の衣装を纏った、高町なのはが降りてきた。
彼女の左手には、先端に真紅の宝石が付けられた黄金の杖、レイジングハートが握られている。

752Revolution  ◆LuuKRM2PEg:2010/12/31(金) 00:21:29 ID:NjnAvwz60

「良かった…………二人とも無事で」
「なのはさん…………!」

現れたなのはを見て、スバルは安堵の表情を浮かべた。
八神はやてを止めようとした恩師が、無事に戻ってきてくれたことに対して。
だがその直後、彼女の表情は再び暗くなる。

「…………なのはさん、天道さん。お話があるんです」

そこから、スバルは全てを告げた。
自分が柊かがみを止められなかったことを。
はやては彼女に殺されてしまったことを。
そして、かがみがジェットスライガーを初めとした支給品を、自分に託したことを。
それを聞いた天道となのはもまた、表情を暗くする。
瀕死の重傷を負ったかがみを助けて、生きる気力を取り戻させた。
だが、はやての凶行を止めることが出来ずに、こんな結果となってしまう。
しかし二人は、悲しみに沈むことはしなかった。
ここで倒れては、死んだ者達に手向けが出来ない。
スバルの話を終えた後、なのはは天道に話した。
彼が遠くに吹き飛ばされた間に、アジトで起こった悲劇を。
はやてがヴァッシュ・ザ・スタンピードや泉こなたを殺して、かがみを襲おうとした事。
その間に、ユーノ・スクライアがヴィヴィオを連れてE−7地点に避難した事。

「……なるほどな」

天道は頷く。
続くように彼も、自分に起こった出来事を話した。
キングやアンジール・ヒューレーと、戦いを繰り広げた事。
その最中に、捕らわれたフリードリヒを解放した事。
突然現れた謎のアンデットが、キングを連れ去った事。
キングの裏切りを受けたアンジールが、殺されてしまった事。
そして、キングは未だ自分達に襲いかかる可能性がある事。
全てを話した後、スバルは気づく。
天道となのはの首に首輪が巻かれていないことに。
戦いの余波によって、外すことが出来た正確無比の爆弾。
壊しても何も起こらないことを、天道となのはは伝える。
恐る恐る、スバルも首輪に手を掛けた。
渾身の力を込めて外したが、何も起こらない。

「どうして……?」

スバルは疑問の声を漏らす。
今までこれを解除するために奮闘していたのに、こんなあっさりと外れるなんて。
一体、自分達の苦労は何だったのか。
ルルーシュは、必死になって苦労したのに。
みんなは、こんな物に命を縛られていたのか。
そう思った瞬間、スバルの中で怒りが沸き上がってくる。
しかし、彼女はそれを抑えた。
激情に惑わされて、冷静さを欠くようなことはあってはならない。

753Revolution  ◆LuuKRM2PEg:2010/12/31(金) 00:22:39 ID:NjnAvwz60

「あたし達は……こんな物に縛られてたなんて」
「憤りを感じている場合ではない、今は残った二人との合流が先決だ」
「…………そうですね」

天道の言葉に、スバルは頷いた。
泉こなたや柊かがみ、そして自分に思いを託したティアナ・ランスターやギンガ・ナカジマや相川始。
そしてこんな戦いの犠牲にされた、たくさんの人達。
みんなの無念を晴らすなら、やるべき事は何か。
そう、主催者を倒して生きてここから脱出すること。
みんなも、それを願っているはずだから。

「ところで、あいつはどうした? お前達の所に向かっていた筈だが」
「フリードですか? あたしは知りませんけど……なのはさんは?」
「いや、私の所にも来てないけど…………」

なのはとスバルは、首を横に振る。
フリードはキングの元から解放した後、アジトに向かわせたはずだった。
それなのに、二人とも知らないと言う。

(まさか、戦いに巻き込まれた……いや、それはないだろう)

真っ先に思い浮かんだ最悪の可能性を、天道は否定した。
フリードはそれなりの知性を持つ龍。
ならば、危機を察してからそれを回避することも出来るはず。
もしくは、残ったユーノと合流を果たしたか。
それならば、二人が見ていなくても仕方がない。

「もしかしたら、他の二人と合流しているかもしれない。まずは急ぐぞ」

天道の言葉に、なのはとスバルは頷く。
そのまま三人は、ユーノとヴィヴィオが待つE−7地点に向かった。











E−7地点。
ユーノ・スクライアは、ヴィヴィオやフリードリヒと一緒に待ち続けていた。
はやての攻撃によって散り散りとなった、なのは達を。
このデスゲームに、タイムリミットが迫っている可能性がある。
しかし、自分達だけではどうしようもない。
今できることは、みんなの到着を待つことだ。

754Revolution  ◆LuuKRM2PEg:2010/12/31(金) 00:23:21 ID:NjnAvwz60

「あれは……?」

そんな中、ユーノは気づく。
目の前から、巨大なシルエットが近づいてくるのを。
見てみると、何かの乗り物に見えた。
その機体はユーノの前で止まる。
そして、運転席から現れた人物を見て、ユーノは驚愕した。
そこにいたのは、アジトの前で合流した二人。
天道総司とスバル・ナカジマだった。
彼らに続くように、バリアジャケットを展開した高町なのはも、空から現れる。
三人の顔を見て、ユーノは安堵の表情を浮かべた。

「なのは…………良かった、みんな無事だったんだね」
「心配かけてごめんね。ユーノ君、ヴィヴィオ」
「なのはママっ……!」

なのはの胸に、ヴィヴィオは飛び込む。
血に濡れた服を纏った少女を、母は受け止めた。
そして、ヴィヴィオの小さな背中を、なのはは両腕で包み込む。

「会いたかった…………会いたかったよ、ママ」
「うん…………ママも、ヴィヴィオに会いたかったよ」

母と娘は、ようやく再会を果たした。
狂気のデスゲームによって、離れ離れとなった親子。
涙を流し続けるヴィヴィオを、なのはは笑顔を浮かべながらゆっくりと抱きしめる。
それは、殺し合いと言う現状を忘れさせてしまうほど、暖かかった。
抱擁を交わしているなのはとヴィヴィオを、他の三人は見守っている。
天道は安堵の目線を向け、ユーノとスバルは柔らかい笑顔を浮かべていた。











集結した一同は、崩壊した車庫の前で会話を始めた。
天道、なのは、スバルの三人が繰り広げた戦いとその結果。
ユーノが訪れた場所に仕掛けられた罠。
このデスゲームに架せられた、タイムリミットの仮説。
未だ自分達に牙を向ける可能性がある、二体の怪物。
キングと、ギラファノコギリクワガタを模した謎のアンデッド。
なのはとスバルは、それが金居である可能性があると語った。
なのはは金居を、まだ戦いに乗っていた頃のかがみから、自分を助けてくれた人物と言う。
スバルは金居を、はやてと共に行動していた、謎の人物と言う。
一見すると、友好的に見えるかもしれない。
しかし、その内面は未だ知ることが出来なかった。
いずれにせよ、キングだけでなく金居に対しても何かしらの警戒をしなければならない。
一同は、そう結論を付けた。

755Revolution  ◆LuuKRM2PEg:2010/12/31(金) 00:23:53 ID:NjnAvwz60

「…………たくさんの人が、犠牲にされたんですね」

暗い表情を浮かべながら、スバルは不意に呟く。
六十人もの参加者が、既にもう七人しか残っていない。
その内二人が、危険人物の可能性がある。
同じ世界から連れてこられた恩師や親友達、そしてこの地で出会った人々。
ほとんどが、死んでしまった。

「もう、残った時間もそんなに無い…………」

支給された時計を、ユーノは見つめる。
その針は、既に五時を超えていた。
推測していたタイムリミットを超えるまで、もう一時間もない。
それでもユーノは決して、絶望することはしなかった。
例え、未来を迎えられる可能性が低いとしても、最後まで希望を捨てることはしない。

「なのはママ…………」
「…………大丈夫だよヴィヴィオ、ママがついてるから」

怯えているヴィヴィオを、なのはは優しく励ます。
二人はそれぞれ、後悔を抱いていた。
ヴィヴィオは、なのはやスバルを裏切ってこんな殺し合いに乗ってしまい、キャロ・ル・ルシエの死体を滅茶苦茶にした事。
それだけではなく、なのはと一緒にいた天道を襲ってしまった事。
なのはは、はやてやかがみを助けることが出来なかった事。
そして、たくさんの人を助けられなかった事。
それでも二人は、後悔に支配されなかった。
ここで立ち止まっても、何もならない。
真にやるべき事は、過ちを二度と繰り返さないと決意して、前を向くこと。

「…………」

残された仲間達の顔を、天道は見つめた。
この狂ったゲームに集められて、様々な悲劇に巻き込まれる。
しかし誰一人として、途中で屈することはしなかった。
そしてこれからも、倒れることはない。
いや、自分がさせない。
例え主催者が、どんな罠を仕掛けていようとも、必ず打ち破ってみせる。
ここにいる全員、誰一人として欠けるようなことは、これ以上絶対にあってはならない。
キングのよって殺された、アンジール・ヒューレーにもそう誓ったのだから。

「あ、そういえばみんな。もう一つだけ、言いたいことがあるんだ」

ユーノは、アジトの前ではやてと出会った際に聞いたことを話す。
この会場の中央に位置するエリア、E−5。
既に禁止エリアとなったそこは、参加者の望む場所に転送する魔法陣が存在するらしい。
そこに行けば、何かの手がかりが得られる可能性がある。
しかし、可能性としてはあまりにも低かった。
そこにある転送魔法陣が、残っているとは限らない。
仮にあったとしても、それが脱出に繋がるかどうかも不確定。
そもそも主催者が、参加者を助けるようなことがするはずがない。
それにそのような場所なら、制限の影響も強く出るはず。

756Revolution  ◆LuuKRM2PEg:2010/12/31(金) 00:26:00 ID:NjnAvwz60

「正直、分が悪いけど…………他に方法が無いんだ」
「ならば、やるしかないか」

ユーノの提案を、天道は受け入れる。
他の三人も、それに頷いた。
これで、ようやく彼らの行動方針が決まる。
まず、禁止エリアとなったE−5地点に行って、手がかりを探すこと。
ただし、キングと金居にも充分に警戒を向けなければならない。
この状況では、彼らが結託して自分に牙を向ける可能性も充分にあるからだ。

「一つだけ言おう」

全てが決まった直後、天道は口を開く。
彼の瞳には、確固たる意志と強さが感じ取れた。
そこに映るのは、残った仲間達。
高町なのは。
ユーノ・スクライア。
スバル・ナカジマ。
ヴィヴィオ。
フリードリヒ。
誰一人として視界から欠かすことなく、真っ直ぐな視線で見つめながら天道総司が言葉を続けた。

「一度しか言わない…………例え世界がどんな暗闇に包まれていようとも、太陽は必ず昇る。人の道を歩む限り、明日は訪れる」

天道は一語だろうと欠かさずに、言動に力を込める。
これは、おばあちゃんの言葉ではない。
天道自身が語る言葉だった。
彼の言葉を、全員はしっかりと耳にしていた。

「これ以上、誰一人として死なせない…………いいな!」

天道は静かに、それでいて大声で語る。

「わかりました!」

なのはは頷く。

「そうですね!」

ユーノは頷く。

「はい!」

スバルは頷く。

「うん!」

ヴィヴィオは頷く。

「キュ〜!」

フリードは頷く。

『『Yes!』』

レイジングハートとバルディッシュは、了承の合図としてその身体を輝かせる。
狂気の戦場に放り込まれ、生き残った者達。
ここにいる全員は皆、意志を持っていた。
絶対に、こんな不条理な戦いの犠牲にはならない。
そして散っていった者達の為に、前を進む。
揺るぎない思いが、彼らを動かす力となっていた。

757Revolution  ◆LuuKRM2PEg:2010/12/31(金) 00:26:39 ID:NjnAvwz60











それからなのははケリュケイオンを使って、龍魂召喚を行った。
フリードを巨大化させて、ユーノとヴィヴィオを自分達に追いつかせるために。
その提案には、フリードもあっさりと受け入れた。
今はタイムリミットが迫っている。故に、急がなければならない。
残る天道とスバルは、ジェットスライガーを上手く二人乗りして、空を飛んでいる三人に並んだ。
なのははバリアジャケットを展開して。
ユーノとヴィヴィオはフリードの上に乗って。
天道とスバルはジェットスライガーを操作して。
それぞれE−5地点を目指した。
この戦いに残された時間は、もう一時間を切っている。
果たして、如何なる結末を迎えるのか。
革命(レボリューション)の時は、訪れるのか。
それは、誰にも分からない。







【2日目 早朝】
【現在地 E−7】


【全体備考】
※まず、E−5地点に向かって脱出の手がかりを探そうと考えています。
※何かの罠があるかもしれない、と警戒しています。
※キングと金居を警戒しています。
※情報交換を交わしました。


【天道総司@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】疲労(小)、全身にダメージ(小)
【装備】ライダーベルト(カブト)&カブトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、パーフェクトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】アンジールの羽根@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【思考】
 基本:出来る限り全ての命を救い、帰還する。
 1.ここにいる全員を先導して、アルハザードから脱出する。
 2.主催側に警戒。
【備考】
※放送の異変から主催側に何かが起こりプレシアが退場した可能性を考えています。
※首輪を外したので、制限からある程度解放されました。
※ハイパーフォームになれないので、通常形態でパーフェクトゼクターの必殺技を使うと反動が来ます。

758Revolution  ◆LuuKRM2PEg:2010/12/31(金) 00:27:09 ID:NjnAvwz60
【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】全身にダメージ(小)、疲労(中)、魔力消費(中)、首筋に擦り傷、バリアジャケット展開中
【装備】とがめの着物(上着無し、ボロボロ)@小話メドレー、すずかのヘアバンド@魔法少女リリカルなのは、レイジングハート・エクセリオン(0/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ケリュケイオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式×2、ホテル従業員の制服、リボルバーナックル(右手用、0/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
 基本:誰も犠牲にせず極力多数の仲間と脱出する。
 1.これ以上誰も死なせずに、脱出する。
【備考】
※キングは最悪の相手だと判断しています。また金居に関しても危険人物である可能性を考えています。
※はやて(StS)の暴走を許すつもりはありません。
※放送の異変から主催側に何かが起こりプレシアが退場した可能性を考えています。
※首輪を外したので、制限からある程度解放されました。


【ユーノ・スクライア@L change the world after story】
【状態】全身に擦り傷、疲労(小)、魔力消費(中)、強い決意
【装備】バルディッシュ・アサルト(スタンバイフォーム、4/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式×2(内1つ食料無し)、ガオーブレス(ウィルナイフ無し)@フェレットゾンダー出現!、双眼鏡@仮面ライダーリリカル龍騎、ブレンヒルトの絵@なのは×終わクロ、浴衣(帯びなし)、セロハンテープ、分解済みの首輪(矢車、ユーノ、ヴィヴィオ、フリードリヒ)、首輪について考えた書類
【思考】
 基本:なのはの支えになる。ジュエルシードを回収する。フィールドを覆う結界の破壊。
 1.ここにいる全員を何としても支えて、脱出する。
 2.ヴィヴィオを守る。
 3.ジュエルシード、レリックの探索。
 4.E−5地点の転送魔法陣を調べ、脱出方法を模索する。
 5.ここから脱出したらブレンヒルトの手伝いをする。
【備考】
※首輪を外したので、制限からある程度解放されました。
※プレシアが退場した可能性に気付きました。同時にこのデスゲームのタイムリミットが2日目6時前後だと考えています。


【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】疲労(小)、魔力消費(小)、全身ダメージ(小)、悲しみとそれ以上の決意、バリアジャケット展開中
【装備】リボルバーナックル(左手用、6/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ジェットエッジ@魔法少女リリカルなのはStrikerS、レヴァンティン(0/3)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
    スバルの指環@コードギアス 反目のスバル、クロスミラージュ(破損)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、治療の神 ディアン・ケト@リリカル遊戯王GX、
    ラウズカード(ジョーカー、ハートの2)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、ジェットスライガー(ミサイル残弾数0)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、ボーナス支給品(確認済、回復アイテムではない)
【道具】なし
【思考】
 基本:殺し合いを止める。できる限り相手を殺さない。
 1.ここにいる全員と一緒に、脱出する。
【備考】
※金居とキングを警戒しています。
※アンジールが味方かどうか判断しかねています。
※首輪を外したので、制限からある程度解放されました。



【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】リンカーコア消失、疲労(小)、肉体内部にダメージ(小)、血塗れ
【装備】フェルの衣装、フリードリヒ(首輪無し)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】なし
【思考】
 基本:みんなの為にももう少しがんばってみる。
 1.みんなと一緒に、生きて帰る。
【備考】
※浅倉威は矢車想(名前は知らない)から自分を守ったヒーローだと思っています。
※矢車とエネル(名前は知らない)を危険視しています。
※ゼロはルルーシュではなく天道だと考えています。
※首輪を外したので、制限からある程度解放されました。
※天道に対する誤解を解きました。

759 ◆LuuKRM2PEg:2010/12/31(金) 00:28:47 ID:NjnAvwz60
以上で、自分の本年度最後の投下完了です。
疑問点などがありましたら、指摘をお願いします。
それでは皆様、よいお年を。

760リリカル名無しStrikerS:2010/12/31(金) 07:58:18 ID:Mrf66MEIO
投下乙です
脱出なるか、対主催!?
そうだよな、キングと金居は勝手に二人で決着つけるだろうし、後は残ったメンバーがどう脱出するかが重要なんだよな
にしてもジェットスライガーに二人乗りは座席の構造的に危な過ぎるぞ天道w

一つ疑問なんですが、ユーノってはやてから魔法陣の話なんて聞いてましたっけ?
それと、何故その魔法陣が脱出への手掛かりに繋がるのかという考察が分かり辛かったので、もう少し考察に説明を入れた方がいいかもしれません

761 ◆LuuKRM2PEg:2010/12/31(金) 08:39:30 ID:NjnAvwz60
魔法陣の話に関しては、はやてと出会った際に情報交換したと本文に書きましたので
その時に、知ったというつもりで書きました。
指摘された部分を、修正or描写追加します。
もしくは魔法陣&移動パートをカットしようと思います。

762リリカル名無しStrikerS:2010/12/31(金) 08:53:51 ID:exOpJu7.0
投下乙です、

無事残り対主催が集結したか……キングと金居の動きが不穏ではあるものの首輪も全解除しようやく動けそうな……
とりあえず魔法陣に向かう方向になるが……間に合うだろうか……キングと金居の動きもあるしなぁ。

誰もアギトについて触れないのがちょっと可哀想に感じたお(なのはぁ……)……

指摘された点については描写追加で問題は無いと思います。
合流当時には描写されていなかったけど、実はそういう情報聞いていました的なパターンは何度かありましたし(例えば、放送遅れについて、はやてもユーノも放送直後の話ではなく後々の話で実は気付いていたと描写されている。)。
今まで話に出なかったのは、合流時点では禁止エリアになるから手の出しようが無かったからとすれば問題はないわけですし。

763リリカル名無しStrikerS:2010/12/31(金) 09:46:54 ID:U5z9BWms0
投下乙です
おお、対主催チームはそう動くか
これなら確かに上手い事地上本部に集まれそうだw
天道は天道でいい味出してたし、いよいよ戦いもラストスパートかな
……ん? 残り時間が一時間切ってるって事は、天道はもうこの会場でカブトに変身する事はないという事に……?
まあでも天道なら大丈夫か……だって天道だし。

764リリカル名無しStrikerS:2010/12/31(金) 09:59:14 ID:exOpJu7.0
この話の間で1時間経過したと考えれば一応変身は可能では? 状態表にも変身不能って無いからあり得そうですし。
まぁ、不能でも天道ならなんとなく大丈夫そうな気もするが。
それに、残り時間っていうのも厳密なものじゃない筈なのでので多少の誤差(数分〜数十分?)が出るだろうし。

765リリカル名無しStrikerS:2010/12/31(金) 16:44:24 ID:UYEROnUo0
投下乙です
もう終わりまで秒読み段階だな
あ、そういえばこれがなのはとヴィヴィオ待望の再会か(前はヴィヴィオが気絶していたので)
よかったよかった

ちょっと気になった点
最後の方でなのはがフリードを竜魂召喚していましたけど、あれケリュケイオンごとユーノに渡してしてもらった方が自然だと思いました
あと状態表ちらほらと不必要な文ありました(既に死んだ人に関する云々etc)

766リリカル名無しStrikerS:2010/12/31(金) 16:46:41 ID:UYEROnUo0
>>762
それは少し違うのでは
少なくともそのはやてとユーノの事例に関しては全員が共有できる情報で且つ「その人個人」の中で完結しているものであるので特に問題ではないでしょう
でも今回は他者からの情報によるものなので同じものと見なすのは少々違うと思います
その情報を知った時の話を書いた書き手がわざと伝えなかった可能性もあるので
しかし今回は該当部分が大雑把に書かれているのでこういう会話があってもおかしくないので問題はないと思います
ただしもし会話部分がもう少し詳しく書かれていれば何らかの修正が必要だった可能性があるでしょう

長々と書きましたが、つまりもしどこか他の場所で同じような事をしたら修正を要求される可能性があるので注意してください、と言いたかった
お節介かもしれませんが

767リリカル名無しStrikerS:2010/12/31(金) 16:47:29 ID:UYEROnUo0
追記:別に>>762だけに言ったのではなく、ここを見ている人全員へ

768リリカル名無しStrikerS:2010/12/31(金) 21:51:42 ID:hzhueTjo0
>>766
大部分に関してはその通りだと思うし、場合によっては修正される可能性が高いという事は確かかもしれません。
只、
>その情報を知った時の話を書いた書き手がわざと伝えなかった可能性もあるので
……この部分に関しては正直容認仕切れません。
というのもリレー企画である以上、前の書き手の意図を100%理解しきって話を書けるとは限らないと思っています。
例えば前述の通りわざと伝えなかったとしても、次の書き手がどう判断するかは次の書き手次第だと思っています。
意図しないリレーをされたくないのであればややこしい描写などせず最初からちゃんと描けという話だと思います。

何にせよ、氏の意見や自分の意見が絶対という事は無いという事だけは踏まえてください。

本題に戻りますが、ユーノ達の合流話『罪』(ちなみに実はこれもLuu氏が書いている)では

>ここに辿り着いてユーノ達と情報交換して、スバルからの伝言を伝えた。
その際に、向こうは既に首輪の解除を成功したと知る。
しかし、自分もはやても今のかがみの事だけは伝えていない。

とあるので、魔法陣の情報交換を行っている可能性はあると判断しても良いと思います。

769リリカル名無しStrikerS:2011/01/01(土) 01:24:37 ID:MePFKmCw0
>>765

ケリュケイオンごとユーノに渡して と言いましたが、
竜魂召喚はちゃんと心を通わせた人物でないと、
フリードが暴走してしまうので難しいうえに危険です(過去の作品で実際に暴走描写があります)。

あと、なのはがスバルにリボルバーナックル(右手用)を渡してないのは何でだろう?

770 ◆LuuKRM2PEg:2011/01/01(土) 11:47:49 ID:U.zoA8Zg0
皆様、新年あけましておめでとうございます
それでは修正次第、指摘された点を修正スレに投下させていただきます

771 ◆gFOqjEuBs6:2011/01/05(水) 20:17:22 ID:tZb6wLm60
予約分の投下を開始します。

772Uを目指して/世界が終わる前に ◆gFOqjEuBs6:2011/01/05(水) 20:21:28 ID:tZb6wLm60
 カブトの破壊剣と、クワガタの双剣が激突した。
 お互いの腕と、踏ん張る脚に振動が響き渡って、溜まらず数歩後退。
 突き刺す様な視線を交差させて、黄金の仮面の下でキングが嘯いた。

「ねえギラファ、もう止めようよ。僕達が戦う事に何の意味があるのさ」

 何を抜け抜けと、と金居は思う。
 自分達はアンデッドだ。戦わないアンデッドに存在意義などない。
 最後の勝者になって初めて、アンデッドとしての存在意義を証明出来るのだ。
 にも関わらず、このスペードのキングには戦う意思がないと言う。
 金居にはそれが理解出来なかったし、理解するつもりも無かった。
 故に、無言のうちに双剣を振りかざし、再びキングに肉薄する。

「シェアッ!」

 だが、コーカサスは微動だにしない。
 ギラファが振り下ろしたヘルターは、コーカサスに触れる前に盾に阻まれた。
 ならばとばかりに、矢継ぎ早にスケルターを振り上げるが、それも通りはしない。
 繰り出した攻撃は尽くコーカサスの盾に阻まれ、無駄に火花を散らすだけだった。

「はぁ……僕達に戦う意味がないって言ったのは、ギラファじゃないか」
「ああそうだ……確かにあの時点では俺たちに戦う意味など無かった……!」
「今だって無いよ。だって、そもそも僕に君と戦う意思がないんだもん」

 ギラファの剣を盾で弾き返して、コーカサスが告げた。

「戦う気が無いならそれまでだ。この場で俺が封印してやる」

 そう、あの時は確かに自分に他のアンデッドを封印する術は無かった。
 故にライダーシステムに頼るしか無かったし、アンデッド同士は結託するのが得策かと思えた。
 だけど、今は違う。今は、この会場の中に居る限り、この男を封印する術が、自分にはある。 
 この場で力でねじ伏せれば、それだけでキングを封印する事が出来るのだ。
 だからこそ、金居はこの場で何としてもキングを封印する。
 その為に剣を振り続けるのだが――

「別にいいよ。ギラファが僕を封印したいなら」
「何……?」

 予想外の言葉に、振り下ろす双剣が止まる。
 封印された時点で、アンデッドとしては死んだも同然。
 確かに封印された後も何らかの形で現実世界に干渉する事は可能だ。
 だが、それでも封印前と比べれば殆どの行動が制限されるし、封印されるメリットなど無い。
 故にキングの言葉を戯れ言と切り捨てようとした、その瞬間だった。
 おもむろにデイバッグに手を突っ込んで――

「ほら、これあげるよ」
「これは――!!」

 三枚のカードを、ギラファに向かって乱暴に投げつけた。
 それらは全てギラファの黄金の胸板に当たって、はらはらと舞い落ちる。
 落ちたカードを手にとり、その絵柄を確認した所で、ギラファは驚愕した。
 それはギラファも良く知る、自分達を封印する為のラウズカード。
 鎖だけが描かれた、何も封印されていない状態のそれの名は。

773Uを目指して/世界が終わる前に ◆gFOqjEuBs6:2011/01/05(水) 20:22:19 ID:tZb6wLm60
 
「これは……プロパーブランクのカード……! 何故貴様がこれを!?」
「ボーナス支給品って奴だろうね。別にいらないから、ギラファにあげるよ」

 仮面ライダー達はこのカードを使い、アンデッドを封印し続けて来た。
 それが何を意味するのか――つまりは、このカードさえ持って居れば、金居もライダーと同じ様に戦えるという事。
 といっても、今手元にあるプロパーブランクに対応しているのは、三体のアンデッドだけのみ。
 それぞれのカードに記された記号は、スペードのK、ダイアのK、コモンブランクで計三枚。
 そう、この会場で殺し合いに参加させられていた三体のアンデッドに対応しているのだ。
 故に、この瞬間から金居は、元の世界に戻ってからでも、キングを封印出来るのだ。

「これで俺はいつでもお前を封印出来る。お前は何が望みなんだ?」
「別に何も。僕は楽しければそれでいいからさ」

 嘲笑う様に告げて、キングの装甲が音を立てて消失した。
 そこに居るのは、最強のアンデッドなどでは無く、只の一人の少年。
 煩わしそうに黒の仮面とマントをその場に脱ぎ捨てて、髪の毛をかき上げる。
 微かに日が昇り始めた雑木林の中で、風に靡く赤いジャケットは酷く浮いて見えた。
 ともあれ、変身制限が掛けられたこの会場で、自ら変身を解除するのは、自殺行為。
 この場でキングを殺せば、ブランクを持った金居に敗北はあり得ない。

「僕はバトルファイトなんてどうだっていい。だから別に封印されたって構わない」
「解せないな。なら、お前は何のために今まで戦い続けて来た」
「だ、か、ら、言っただろ? 楽しければそれでいいってさ」

 呆れた様に笑いながら、キングがのたまった。
 プロパーブランクのカードを矯めつ眇めつして、考える。
 こいつは本気で自分と戦う気など皆無なのではないか、と。
 もっと別な何かを考えて、その上で金居に協力を持ちかけているのではないか。
 少しでも情報を得たい現状、キングを信じて、話を聞くくらいはしてやってもいいのではないか。

「いいだろう。お前の考えを聞いてやる」

 そこまで考えて、ギラファアンデッドは黄金の装甲を解除した。


 それから一時間足らず。
 二人は現状の情報交換を行った。
 といっても、この会場で起こった出来事にそれ程興味は無い。
 二人が今何よりも優先して行わなければならない情報は、主催についてだった。
 金居がこれまで主催側とコンタクトを取っていたという事実を知って、キングは神妙に頷いた。

「なるほどね。実は僕もプレシアから情報を与えられてたんだ」
「情報、だと……?」
「ま、簡単に言うと参加者全員の詳細情報って所かな」

 だから金居がワームのボスの時間停止に負けた事も知っている、と続けた。
 それを知っているという事は、キングの時間停止を利用しようとしていた事も知られているのだろう。
 となれば、キングに対してこの会場に来る前の出来事を隠し通す事はほぼ不可能と考えていいだろう。
 だが、何故カテゴリーキングの二人にだけ主催側とのパイプが用意されていたのか。
 今度はそんな疑問が残る。

「もしかしたら、プレシアは僕達をジョーカーとして利用しようとしてたのかも知れないね」
「やめてくれないか。仮にそうだとしても他の言葉を使って貰いたいな」
「あっはっは、そっか! ギラファはジョーカーと因縁があるんだっけ!」

 キングの言うジョーカーとは、奴――相川始――の事では無い。
 そうと分かってはいるのに、金居の中で言い様の無い嫌悪感が湧き起こる。
 全ての生命を滅ぼす奴を、自分達の存在意義を無にする奴を、金居は認めたくはなかった。
 冗談であったとしても、全ての生命の宿敵と同じ名前として利用されるなど考えたくもない。

「とにかく、そこまで殺し合いを促進させておいて、この終盤でこうも簡単に首輪を解除させるのが解せない」
「それなんだけどさ、多分プレシア死んじゃったんじゃないかなって僕は思うんだけど」
「お前もそう思うか」

 それに関しては、どうやらキングも同じ見解らしかった。
 プレシア死亡に至るまでの考察は、今まで何度も考えた通りだ。
 定時放送が不自然に10分送れた事。首輪が突然解除された事。
 それらから考えるに、少なくともプレシアの身に何も起こっていないとは考え難い。

774Uを目指して/世界が終わる前に ◆gFOqjEuBs6:2011/01/05(水) 20:22:55 ID:tZb6wLm60
 
「プレシア自身も、多分48時間くらいがタイムリミットだと思ってたんじゃないかな。
 でもそのタイムリミットが来る前に、この殺し合いは誰かに乗っ取られちゃった。
 なら、この殺し合いはどうなるのかな? 次の放送はあるのか、それとも……」
「下手をすれば俺達はこのまま、この世界ごと捨てられる可能性もある」
「ははっ、相変わらず察しがいいね、ギラファ」

 首輪が無い意味、もう何を話そうが盗聴される恐れは無い。
 二人は堂々と各々の見解を語り合い、一つの答えへと結び付けて行く。
 カテゴリーキングの二人の考察はだいたい同じで、自分達が危機的状況にある事に繋がってゆく。

「だとすれば……拙いな。この世界と心中だけは避けたいが……」
「ギラファ、一つ聞かせて欲しいんだけど、君はこの戦いで何を求めていたのさ?
 まさか何も考えずに殺し合いに乗ったら元の世界に帰れるなんて馬鹿な事考えてた訳でもないだろ?」

 当然だ。
 ギラファの目的は、二度とこんな殺し合いに巻き込まれない様にする事。
 その為に主催であるプレシアに従ったフリをしながら、最終的にはプレシアを殺す。
 主催側を完全に叩き潰して、完全にこんな殺し合いからはおさらばする。
 それが目的だったのに、当面の敵が見えなくなってしまった。
 それを告げると、キングは愉快そうに笑って、嘯いた。

「やっぱり僕の思った通りだ! ギラファならそういう事考えてると思ってたよ!」
「だが、今となってはもう、それを考えた所でどうしようもない」
「どうかな? まだ出来る事はあるかも知れないよ」
「何……?」

 不敵に笑うキング。
 それからキングの主導で、もう一度二人の行動を洗い直した。
 二人の行動に共通していたのは、この会場の中央部へ赴いた事。
 場所は違えども、二人は共通した魔法陣を目撃し、それで移動を行った。
 キングが知っている魔法陣は、確かに地上本部の頂上にあった筈だ。
 なのに、地上本部倒壊後には地下へと転移していた。

「プレシア達は、どうしても魔法陣が必要だったのかな?」
「そうだとして、それが何になる? この世界が放棄されれば魔法陣など関係ないだろう」
「うーん、それはそうなんだけど、どうしても気になるんだよね」

 わざとらしく顎に手を添えて、考える素振りを見せるキング。
 魔法陣がどうなろうと、今更そんな事は大した問題では無い。
 今はどうやってここから脱出するか、が重要なのだ。

「もしかしたらさ、その魔法陣、逆転の切り札になるかも知れないよ」
「何……どれはどういう事だ?」
「だって、どうしてもその魔法陣が必要だったとするなら、何の為に必要だったと思う?」
「知るか。この殺し合いの裏方の都合など……」
「なら、なんで必要な魔法陣を作りなおした直後に、あそこを禁止エリアになんてしたんだと思う?」

 金居の中で、確かな疑問が芽吹いてゆく。
 キングの言う通りだ。どうしても必要で魔法陣を作ったのだとしたら、そこを禁止エリアにする理由は何だ?
 どうせ禁止エリアにするつもりなのなら、魔法陣など作らずともそのまま捨て置けばいいのではないか?
 ならば、何故だ。何故奴らはもう一度魔法陣を作り直したのだ。
 殺し合いを続ける上で、どうしても必要だったから?

「どうせ首輪ももう無いんだ、ここでじっとしてるくらいなら、ちょっと行ってみない? 気になるんだよね、どうしても」
「構わないが……お前はそこへ行ってから、どうするんだ」

 それだけが気掛かりだった。
 キングは殺し合いには興味がないから、封印されても構わないとのたまう。
 だけれど、地上本部に向かった後どうするのか、明確なビジョンは未だ見えない。
 だから不安要素を今のうちに消しておくためにも、金居はキングに質問した。

「そうだなぁ……仮に魔法陣が必要だったとして、ギラファは何の為に必要だったと思う?」
「具体的にはわからないが、会場と主催側を繋ぐ何らかのパイプとして必要だった……とか、そんな所じゃないか」
「ま、そうなるだろうね。もしもこのそれで主催側の本拠地に乗り込めたなら、さ」

 口角を吊り上げて、心底楽しそうに続ける。

「僕は、プレシアの力が、欲しい」
「何だと……?」

 それは、キングが初めて告げた、「楽しむ」以外の欲望。
 否。それも元を辿れば、楽しむ為の過程に過ぎないのかも知れない。
 金居の神妙な視線と、キングの愉快気な視線が交差して、キングは語り出した。

775Uを目指して/世界が終わる前に ◆gFOqjEuBs6:2011/01/05(水) 20:23:27 ID:tZb6wLm60
 
「だって凄いじゃないか。プレシアはこんなにも沢山の世界に干渉する力を持ってる
 考えてもみなよ。その力と比べれば、僕達の世界のバトルファイトなんて取るに足らない。
 無数に存在する世界を全部、自分の自由に出来るとしたら、こんなに素敵な事は無いよ!」
「お前は、バトルファイトで優勝する事よりも、その力を望むのか……?」
「当然さ。だって馬鹿馬鹿しいんだよね。あんなちっぽけな世界で争い続けたって、僕は満足しない。
 ワームや人間達に邪魔されながらも頑張って戦い抜いて、世界を作り変えて、自分だけの楽園を創る?
 ……馬鹿馬鹿しいよ。そんな事をするくらいなら、まだ何が起こるか分からない無数の世界に僕は賭けたいんだ」

 それがキングの考えだった。
 思えば、この男は初めて出会った時にもそんな事を言って居た気がする。
 この男は、際限なく戦い続け、勝者を決めるだけのこの戦いに嫌気が刺していたのだろう。
 だから、「楽しむ」為に他者を利用し、全てをブチ壊して、何もかもを破滅させようとしていた。
 そんなキングに舞い込んだチャンス。全ての世界を自由に出来るという、途方も無い程の力。
 仮にそれが得られなくとも、それに賭けて動いてみるのは、十分楽しいゲームなのだろう。
 だからキングは、この新しいゲームを攻略する為に、金居に話を持ちかけた。
 そこまで分かって、金居はキングに向き直った。

「いいだろう……確かに、世界が無数にあるなら、どちらかの勝者を決める必要などない」
「そうそう。きっと僕達二人でだって持て余すくらい、世界は沢山あるんだ。
 なら元の世界のバトルファイトにこだわる必要なんてない。君があの世界にこだわるなら、君の好きにすればいい。
 仮にもしも僕の憶測が外れて、他の世界を手に入れられなかったとしても、それは単に僕がゲームオーバーってだけ。
 その時は、君が僕を封印して、元の世界に帰ってくれればいい。君にとって、デメリットはないだろ?」

 確かに、キングの言う通りだった。
 基本的にキングは、自分の封印に関しては元々こだわっていない様子だった。
 となれば、ブランクのカードを持っている今、この男を封印する事はそれ程難しい事では無い。
 それよりも寧ろ、キングの話に乗って、何らかの時間停止に対抗する手段を得た方が得策だと思える。
 ワームのボスにリベンジを果たした上で、金居は自分のバトルファイトで優勝する。
 それさえ出来ればいいのだから、二人の利害は一致している。

「分かった……次の放送まで時間もそれ程残されてはいない。とっとと地上本部跡地へ向かおうか」
「あっ……ちょっと待って」

 不意に、キングが神妙な面持ちで金居を遮った。
 次の放送があるかどうかも分からない今、ここでじっとしていたくは無い。
 少しでも可能性があるなら、一刻も早く行動に出たかったのだが――。

「あれ、見てよ」

 キングが指差したのは、彼方の空。
 普通の人間よりも圧倒的に強力な視力を持った金居には、それが見えた。
 日が昇り始めた空を駆け抜ける、一台の巨大マシンと、一匹の巨大な竜。
 それから魔法で空を飛ぶ女が一人と、竜の背には点々と人間の影も見えた。
 そして、奴らが向かっている方向は、恐らくは会場の中央方面。

「ほう……どうやら奴らも考える事は同じだったようだな」
「はは、ギラファ、これで尚更行く用事が出来たね」

 生き残った参加者達が、こぞって地上本部に向かっている。
 このまま先を越されて、奴らだけ脱出などされては、堪ったものではない。
 また、一緒に脱出したとしても、元の世界に帰れば、高確率で仮面ライダーは敵になる。
 ならばこの会場が朽ち果てる前に、奴らをこの手で倒しておくのも悪くは無い。

「これが、この場での最後の戦いになるか……?」
「さあ、どうだろうね。ここまで来たら流石の僕にもわかんないや」

 恐らく、嘘は言って居ないのだろう。
 地上本部に何があるのかは分からないが故に、キングにも今後の想像は出来ない。
 当然の事だ。だけれど、キングの性格を考えれば、奴らと一緒に脱出など考えている訳も無い。
 こいつの事だ。どうせ最後のお楽しみとか何とか言って、あの参加者共で遊ぶつもりなのだろう。
 それを止めるつもりも、邪魔するつもりもない。奴らがどうなろうが知った事は無いからだ。

776Uを目指して/世界が終わる前に ◆gFOqjEuBs6:2011/01/05(水) 20:24:01 ID:tZb6wLm60
 
「だが、どうやって向かう? 徒歩じゃ追い付けないぜ」
「大丈夫だよ。移動手段なら、ある」

 いいながら、デイバッグを逆さにした。
 ぐぐっと、口を前回まで広げて、そこから何かを取り出そうとする。
 このデイバッグには、質量などという物は関係ない。何だって収納できる、魔法の鞄だった。
 どんな原理か想像も出来ない鞄の中から、金色の何かが音を立てて落下を始める。

「これは……」

 それから間も無くして、それは完全に姿を現した。
 金色と黒のボディを輝かせて、どすんっ! と音を立てて現れたのは、一台のバイク。
 SMART BRAINのロゴを輝かせて、特徴的なフォルムを見せつけるそれは、仮面ライダーの乗り物だ。
 金居は見た事がなかったが、左サイドにサイドカーを装着したそのバイクの名は、サイドバッシャー。
 それをどうしてキングが持っているのか。そんな疑問を口にする前に、荷物の整理をしていたキングが口を開いた。

「ボーナス支給品、って奴だろうね。多分クアットロを殺した時の奴。
 ずっと気付いてたんだけど、使い道がないからそのままスルーしてたんだよ」
「まさかこんな所で役に立つとは……とんだご都合主義だな」

 呆れたように笑って見せるが、これ程の僥倖は無い。
 仮面ライダーのマシンを使えば、圧倒的なまでの加速が可能だ。
 これを使えば恐らくは、奴らに追い付く事だって可能。

「さあ、準備完了。運転は僕に任せてよ」

 邪魔な荷物を全てその場に置き去りにして、キングが運転席に跨る。
 ならば自分もとばかりに、自分の持つ余計な荷物を全てその場に捨て置く。
 思えば自分も余計な荷物を持ち過ぎて、やたらとデイバッグの中がごちゃごちゃしていた様に思う。
 金居がサイドカーに乗った事を確認すれば、キングはサイドバッシャーにエンジンをかける。
 ドルルルル! と轟音を響かせて、サイドバッシャーのライトに眩い明かりが灯った。
 ライトの光に照らされた一本の道。それは、これから二人が歩むたった一つの道のりだ。

 この先に、果たして何が待って居るのか。
 最後の戦いか。はたまたそれ以外の結末か。
 全ての世界を手にするか、何も得られずに終わるか。
 終わる世界を前に、二人の道化は最後の戦場へと赴く。

777Uを目指して/世界が終わる前に ◆gFOqjEuBs6:2011/01/05(水) 20:24:32 ID:tZb6wLm60
【2日目 早朝】
【現在地 D-9 雑木林】

【キング@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康
【装備】サイドバッシャー@魔法少女リリカルなのは マスカレード、キングの携帯電話@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、ハンドグレネード×4@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ラウズカード(ハートのA、3〜10)、
    RPG-7+各種弾頭(照明弾2/スモーク弾2)@ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL、爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸
【思考】
 基本:この戦いを全て無茶苦茶にし、主催を乗っ取る。
 1.地上本部へ向かい、魔法陣を調べる。
 2.地上本部に集まった参加者達で何か遊んでみる……?
 3.楽しむ事が出来たなら、最終的に金居に封印されても構わない。
【備考】
※キングの携帯電話には『相川始がカリスに変身する瞬間の動画』『八神はやて(StS)がギルモンを刺殺する瞬間の画像』『高町なのはと天道総司の偽装死体の画像』『C.C.とシェルビー・M・ペンウッドが死ぬ瞬間の画像』が記録されています。
※全参加者の性格と大まかな戦闘スタイルを把握しています。特に天道総司を念入りに調べています。
※十分だけ放送の時間が遅れた事に気付き、疑問を抱いています。
※首輪が外れたので、制限からある程度解放されました。
※キングが邪魔だと判断した支給品は全て捨てました。


【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】健康
【装備】バベルのハンマー@仮面ライダークウガA’s 〜おかえり〜
【道具】支給品一式、砂糖1kg×5、イカリクラッシャー@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、デザートイーグル(4/7)@オリジナル
    ラウズカード(ハートのJ、Q、K、クラブのK、ダイアKのブランク、スペードKのブランク、コモンブランク)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
    ランダム支給品(ザフィーラ:1〜3)、マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS
    ジェネシスの剣@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、クレイモア地雷×3@リリカル・パニック
【思考】
 基本:ゲームからの脱出、もしくは主催の乗っ取り。
 1.地上本部へ向かい、魔法陣を調べる。
 2.地上本部に集まった参加者に利用価値がないなら容赦なく殺す。
 3.最終的にキングが自分にとって邪魔になるなら、自分の手で封印する。
【備考】
※放送の遅れから主催側で内乱、最悪プレシアが退場した可能性を考えています。
※首輪が爆発しなかったことから、主催側が自分達を切り捨てようとしている可能性を考えています。
※最早プレシアのいいなりに戦う事は無意味だと判断しました。
※首輪を外したので、制限からある程度解放されました。
※金居が邪魔だと判断した支給品は全て捨てました。

【全体の備考】
※以下の支給品をD-9 雑木林に放置しました。
 ゼロの仮面@コードギアス 反目のスバル、ゼロの衣装(予備)@【ナイトメア・オブ・リリカル】白き魔女と黒き魔法と魔法少女たち
 おにぎり×10、菓子セット@L change the world after story、『SEAL―封印―』『CONTRACT―契約―』@仮面ライダーリリカル龍騎
 いにしえの秘薬(空)@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、顔写真一覧表@オリジナル、ガムテープ@オリジナル
 トランシーバー×2@オリジナル、トランプ@なの魂、正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪探知機(電源が切れたため使用不能)@オリジナル
 首輪の考察に関するメモ、レリック(刻印ナンバーⅥ、幻術魔法で花に偽装中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(アグモン、アーカード、シグナム)
 かいふくのマテリア@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、デイバッグ×8

778Uを目指して/世界が終わる前に ◆gFOqjEuBs6:2011/01/05(水) 20:37:24 ID:tZb6wLm60
投下終了です。
いやあ皆さん、2010年は色々とお世話になりました。
気付けば本スレで自作を更新するよりも、こちらの方がホームになっていたとうか。
というか正直ここで書いている時が一番自分らしさを出せている気がするんですよね、自分。
チャットやら何やらで色んな書き手さんと交流を持てたりとか、いい経験も沢山積めましたし。
そんなこんなで、最初はサブのつもりだったけど、気付けば他の何処よりも思い入れが強くなっちゃったんですよね、この企画。
そんな思い入れの強いロワ企画、もうすぐ終わりそうですが、今年も完結に向けて頑張って行きますので、よろしくお願いします。

さて、今回のサブタイトルの「U」は、ユートピア(理想郷)、アンデッドの二つです。
キングが望む理想郷へ向かって、二人のアンデッドは行動を共にするのですが、
今の今まで理想郷のくだりを本分に入れる事を完全に失念していたっていうね。
そんなこともあって、wiki収録時にはまた本文を多少弄る事になると思います。
そういう事にならない様に投下前によく考えて推敲すれば良かったと後悔してます。すみません。
それでは、また指摘やら何やらあればよろしくお願いいたします。

779リリカル名無しStrikerS:2011/01/05(水) 20:40:31 ID:PV5cpvPcO
投下乙です
ああ、キングと金居も地上本部に向かうか…………
果たして、どんな結末を迎えるだろう

780リリカル名無しStrikerS:2011/01/05(水) 21:11:17 ID:SgEI4in20
投下乙です
おお、これはもう「最終回」間近ですね
結局キングと金居は手を組んだ……って、前回の引きから考えられる対主催にとっては最悪のパターン!?
でも捨てた支給品大半が要らないものだけど、一部惜しい物がw
正宗は長いから使いづらいとして、用途不明だったとはいえレリックとかいふくのマテリアを捨てるなんて……
ん?キング、クロス作品読んだのならレリックやマテリアのこと分かりそうだが……流し読みじゃ無理か……?

781 ◆gFOqjEuBs6:2011/01/05(水) 21:19:21 ID:tZb6wLm60
あー……かいふくのマテリアについては最初は残すつもりだったんです。レリックも。
けど、よくよく考えたら金居視点ではあの球体を見ただけでマテリアだと判断するのは難しいかなー……と。
で、金居はそのまま他のと一緒にマテリアを捨て、キングもサイドバッシャーにかまけていた為に気付かなかった、と。
あと、この期に及んで唯一残ったマーダー組であるこいつらに回復品を残すのもどうかなー……と思いまして。

ちなみにレリックはもしかしたらヴィヴィオに使えるかもしれないので残したかったんですが、
花に偽装してるなら間違いなくいらないものとみなされるだろうと判断してそのまま捨てさせました。

782リリカル名無しStrikerS:2011/01/05(水) 21:22:55 ID:SgEI4in20
わざわざ返答してくださりありがとうございました

783リリカル名無しStrikerS:2011/01/06(木) 00:14:43 ID:ZrXvpXRk0
投下乙です、
キングとアンジールはここで組んでいよいよ地上本部最終決戦か……対主催がボロボロである事考えるとこれもう詰みかもしれんなぁ……
キングは遊ぶつもりで、金居も対主催側が脱出する事は阻止するだろうし……
……まぁ、キングと金居もある意味では対主催なわけですが(脱出目的的な意味で)
……ということはこれってある種スカ組、アンデッド組、天道組の三つ巴か?

784リリカル名無しStrikerS:2011/01/07(金) 02:00:06 ID:Z06J4xsQ0
投下乙です

このまま泥沼の可能性もあったが組んだか
対主催の面々にとってはまずいか
種スカ組もどう動くか…

785リリカル名無しStrikerS:2011/01/07(金) 03:28:43 ID:f/Ty.wQIO
種スカ組?

786リリカル名無しStrikerS:2011/01/07(金) 08:15:39 ID:8tFLBWBE0
スカはスカリエッティとして、種はなんだろう

787リリカル名無しStrikerS:2011/01/07(金) 09:58:04 ID:pRBAPN7w0
主催スカ組を略して主スカ組と書く所『主』を『種』と間違えて種スカと書いたんじゃ?

788 ◆HlLdWe.oBM:2011/01/15(土) 14:32:13 ID:gAI2iztE0
高町なのは(StS)、ユーノ・スクライア、ヴィヴィオ、スバル・ナカジマ、天道総司、キング、金居、ウーノ、ドゥーエ、オットーで投下します

789 ◆HlLdWe.oBM:2011/01/15(土) 14:33:22 ID:gAI2iztE0

「ちょっといいかしら、ウーノ」
「どうぞ」
「生き残りが魔法陣で脱出するとかどうとか言っているけど、放っておいていいの?」
「ああ、それね……ふふふ……」
「?」
「気にする必要はないわ、だって――」


     ▼     ▼     ▼

790 ◆HlLdWe.oBM:2011/01/15(土) 14:34:07 ID:gAI2iztE0


スバルが目を開くと、炎に蹂躙されるアスファルトとコンクリートの瓦礫が見えた。
それらは辺り一面に転がり、次いで焼け焦げた匂いが鼻の奥を刺激する。
目の前に広がるのは瓦礫と炎が作り出した光景。
こんな光景を以前にもどこかで見た覚えがある。

(あ、そうだ。あの時だ……)

4年前、大規模な火災が起きたミッドチルダ北部臨海第8空港。
あの時スバルはまだ幼かった。
火災の前から姉のギンガと逸れていた上に一人で燃え盛る空港を彷徨っていた。
そして徐々に周囲の炎の勢いが増す様子に怯えて、途方に暮れた末に立ち止まってしまった。

その瞬間、スバルの近くにあった天使像が倒れてきた。

あの時、自分はここで死んでしまうんだと本気で思った。

だがスバルは生きている――憧れの恩師である高町なのはの活躍で。

(あの時は助けられるだけだったな……)

あの時はただ見ているしかできなかった。
自分を助けに来た高町なのはという魔導師の雄姿は今もはっきりと覚えている。

それからだ、スバルが魔導師を目指したのは。

(そうだ、もうあたしは『誰かに助けられる』側じゃない! 今のあたしは『誰かを助ける』側だ!)

そのために今まで精一杯努力してきた。
この腕は立ち塞がる障害を突破するため。
この足は少しでも早く救助に向かうため。

(そう、こんなところであたしは寝ている場合じゃ……………………え?)

その時、スバルは自分の置かれた状態を理解した。
頭部と左腕以外は瓦礫の下敷き。
戦闘機人の身体でなかったら即死だったかもしれない。
この時ばかりは半分機械の身体がありがたく思えた。
その頭部と左腕にしても無事とは言い難く、特に頭部は額を切ったせいか出血で視界が若干赤く滲んでいる。

だがそのような怪我など、両足が瓦礫で跡形もなく潰されている事に比べたら些細な事だ。

「うそ……そ、そんな……ッ、アアアァァァアアアアア!!!!!」

両足が潰れた。
それは当然もう走る事はおろか歩く事さえ、いやそれ以前に大地に立つ事もできない事を意味する。
スバルは両足の痛みも忘れて、呆然としていた。
もうこれでは誰かを助ける事など出来ない。
これでまた自分は『誰かに助けてもらう』側に戻ってしまった。

(……こ、こんな事って)

そして、あの時と同じように何もできない。

(……こんな事って……あんまりだ)

その瞬間、火災で耐久度が落ちた瓦礫がスバルの頭上に落下してきた。
少し前までのスバルならこれくらいの危機など脱する事ができたはずだ。
だが両足を失い、夢が断たれた今のスバルには、抗う気力がなかった。
ボーナス支給品の蒼天の書も他の道具と一緒に瓦礫の下敷きでこの状況では使い道がなかった。

(みんな……ごめん……)

デスゲームで死んでいった者とまだ生きている仲間の事を思いながらスバルは死を覚悟した。
だがいつまで経っても予想していた衝撃は来なかった。
それは誰かが落下してくる瓦礫を破壊してくれたおかげだと気付いたのはすぐだった。

「え?」

それはまるであの時の再現。
赤く滲む視界の向こうに誰かが手に持った何かをこちらに向けて立っていた。
炎の中に立つその姿はまるで光のように輝いていた。

「なのはさ――」
「皮肉だな。姉妹揃って同じ相手に殺されるとは」


     ▼     ▼     ▼

791 ◆HlLdWe.oBM:2011/01/15(土) 14:35:37 ID:gAI2iztE0


昇りかけの太陽に照らされた荒廃した大地。
その地の名は“E-5”。
このデスゲームの会場の中心に位置するビル密集地であり、その中央には時空管理局地上本部がひときわ高く聳え立っていた。
遠くからでも見上げる事ができたその姿は本部の名に相応しく立派に威容を誇っていた。

だがそれは最早今となっては過去の話だ。

セフィロス、アーカード、キース・レッド、アレックス、天上院明日香、八神はやて。
人外の域に達する力を備えた者同士が幾度となく激戦を繰り広げたおかげで、E-5にあった建造物はことごとく崩壊してしまった。
その結果、現在この地は以前とは打って変わって殺風景な瓦礫の野原と化していた。
まだこの地が無事だった頃を知る者からすれば、あまりの変わり様に思わず目を疑った事だろう。

しかし残念ながらE-5の手前に降り立った5人の参加者はいずれも初めてこの地を訪れた者ばかり。
それゆえにそこまでの驚きが湧いてくる事はなかった。

高町なのは、ユーノ・スクライア、ヴィヴィオ、スバル・ナカジマ、天道総司。
さまざまな苦難を乗り越えて、5人の参加者は一堂に集い、今こうして一つの目的のために動き出していた。
この血塗られたデスゲームから抜け出し、元の世界へと帰還する事。
それこそが5人の目指すゴール。
そのためにはE-5にある転移魔法陣が重要な鍵である可能性が高い。
だから話し合いの末にE-5へ向かったのだが、目的地の上空に到着したところで厄介な問題が判明した。

その件の魔法陣がどこにあるのか見当が付かないのだ。

ユーノははやてとの情報をやり取りした際に『E-5には参加者を転移させる魔法陣がある』と聞いていた。
だがそれが具体的にどこにあるかは聞きそびれてしまっていた。
後から詳しく聞こうと思っていたのだが、その暇もないうちになのは達が合流して先程の騒動に巻き込まれた。
そして真相を知るはやては何も伝えないまま死んでしまい、情報源は消えてしまった。
なのは、天道、ヴィヴィオは魔法陣の存在を駅で合流した時に初めて知ったので詳しい場所など知っているはずなかった。
唯一スバルはデュエルアカデミアではやてが“月村すずかの友人”の名で送信したメールにて魔法陣の場所を知っているはずだった。
だが駅での話し合いで何も言わなかったように、かがみの襲撃に始まり衝撃的な事がありすぎたせいで忘却の彼方に追いやられてしまっていた。

つまり誰も魔法陣の正確な所在を知らない事になる。
しかし駅で集合した際にユーノ以外誰も魔法陣の存在を知らなかったのは不運としか言いようがなかった。
それでもE-5に向かったのは、E-5に行けば何かしらの手がかりがあると踏んだからだ。
まさかエリア1つ完膚なきまでに崩壊しているとは思っていなかった。

「とりあえず一旦小休止も兼ねて、今後の対策を練ろう」

フリードに乗って上空からE-5の惨状を目の当たりにしたユーノはそう提案せざるを得なかった。
残りの4人もその意見には賛成だった。
このまま捜索を開始してもいいが、やはり具体的にどうするか決めておいた方が無難だ。

「そうだ。なのは、今の内に回復魔法掛けるよ。5分ぐらいで終わらせるから」
「うん、ありがとうユーノ君。じゃあバリアジャケットは解除しておくね」

着地するや早々に開口一番ユーノはなのはに声をかけていた。
再び出立するまでの間に出来るだけコンディションを良くしておきたい。
そんな配慮を感じ取ったなのはも喜んでユーノの申し出を受け入れ、すぐに優しい緑の光の回復魔法がその身を包み始めた。
そして少しでも魔力消費を抑えようと思ってバリアジャケットの解除に入った。

だがなのははある事実を忘れていた。

792 ◆HlLdWe.oBM:2011/01/15(土) 14:36:07 ID:gAI2iztE0

『マスター! 待って下さい、今マスターの服装は――』

その事実に気付いたレイジングハートが制止の声を上げたが、既に遅かった。
淡い光と共にバリアジャケットが消えたなのはの姿は実に扇情的なものだった。
はやてとの激戦で着物風の服装は多大な被害を受けてボロボロの状態になっていた。
辛うじて下着こそ無事だが、逆にボロボロになった着物から覗く下着は独特の色気を醸し出していた。

「――きゃっ!?」

エースには可愛すぎる悲鳴と共になのははバリアジャケットを解除した事を激しく後悔した。
ハッと気づいて皆の方を見ると、スバルとヴィヴィオは困惑した表情を浮かべて立ち尽くしていた。
一方で天道とユーノの男性陣は紳士的にも明後日の方を向いていてくれた。
だが一瞬でも霰のない姿を見た事は疑う余地はないだろう。
さすがにこのままは不味いと思って何か変わりの服はないかとデイパックを漁ってみるが、そんな都合よく替えの衣服はなかった。
一応かがみが着ていたホテル従業員の制服があったが、血や土で盛大に汚れていたので使えそうもなかった。

「えっと、この際タオルでもいいから誰か身体隠す物持っていたりしない?」
「それならこれを着ろ」

ダメ元で聞いてみると、後ろを向いたまま天道がどこかの店のウェイトレスのような衣装を差し出してきた。
だがなのははそれに見覚えがあった。
いや見覚えがあるどころではない。
白いシャツに臙脂色のスカート、そして黒のエプロン。
間違いなくそれはなのはが幼い頃より見慣れている喫茶翠屋の制服だ。

「天道さん、その服どこで?」
「ああ、そこに転がっていたデイパックの中に入っていたんだ。たぶん誰かが落としていたんだろう」

余談だが、この天道が拾ったデイパックの元の持ち主の名はカレン・シュタットフェルト。
そして瀕死のカレンを助けようとしたのがこの会場に連れて来られたもう一人のなのは、つまり小学3年生の頃のなのはであった。
最終的にカレンを助ける事は出来ず、またその死にショックを受けて隙を見せたところで殺されてしまったが。

(そういえば最初に転送された場所が翠屋だったな。まだ1日ちょっと前なのに……もうだいぶ前みたいに思える……)

あの時、自分は深い怒りと悲しみですぐに動けなかった。
だがアリサの死に報いるためにという想いで立ち上がった。
それから様々な出会いと別れがあった。
柊かがみ、シェルビー・M・ペンウッド、武蔵坊弁慶、C.C.、アンジール・ヒューレー、八神はやて。
この地で出会い死んでいった者達の想いを無駄にしないためにも、あと一息だ。

「あともう一着子供用の制服もあったが、ヴィヴィオに着せてやれ」
「天道さん、ありがとうございます」

天道から渡されたもう一つの衣服。
それは半袖の白シャツにブラウンのスカート、そして薄緑色のベスト。
ミッドチルダにある聖王教会系列の魔法学校、St.ヒルデ魔法学院の制服だった。
それはなのはがヴィヴィオが進むべき未来として考えていた場所。
まさかその姿がこんな場所で見られるとは思わなかったので、正直ちょっと嬉しかった。


     ▼     ▼     ▼

793 ◆HlLdWe.oBM:2011/01/15(土) 14:36:54 ID:gAI2iztE0


なるほど、だいたい分かった。

中〜遠距離を得意とする砲撃魔導師/時空管理局が誇るエース魔導師/高町なのは。
防御と補助魔法を得意とする後方支援型/超巨大データベース無限書庫の司書長/ユーノ・スクライア。
格闘戦を得意とする陸戦魔導師/ギンガの双子の妹/スバル・ナカジマ。
聖王の器/レリックを埋め込めば聖王として覚醒/ヴィヴィオ。
天の道を往き総てを司ると豪語する男/仮面ライダーカブト/天道総司。
陵桜学園に通う女子高校生/仮面ライダーデルタ/柊かがみ。

高町なのはが無事であり八神はやての姿が見えない以上、この時点ではやてが生存している可能性は低い。
つまりこの6人が俺とキングを除いた生存者か。
もっともキングの言った事が正しければの話だが、いまさら嘘を付く理由もない。
それにいろんな奴から聞いた話とだいたい合っているから疑う必要はないな。

そうなると、ここから脱出するために俺が取るべき最善の方策は――。


     ▼     ▼     ▼

794 ◆HlLdWe.oBM:2011/01/15(土) 14:38:55 ID:gAI2iztE0


「やっぱり地道に探すしかないね」

なのはとヴィヴィオの着替え(着ていた衣服はホテル従業員の制服と一緒に放置)、及び各自食事などによる体力の回復に努めながら話し合った結果、そういう結論に至った。
はやての情報によるとE-5のどこかに魔法陣がある事は間違いない。
1km四方のエリアだが、5人もいれば決して探せない広さではない。
ちなみにはやての発言が嘘という可能性もあったが、あの時はまだ友好的な関係だったのでわざわざ偽の情報を混ぜる理由は低いと判断した。
それよりも問題はタイムリミットの方だが、こればかりはどうしようもない。
すでにユーノが予想したタイムリミットまで1時間を切っている。
正直なところ、これがラストチャンスと言っても過言ではない。

「ユーノ君、ヴィヴィオをお願いね」

既に出立の準備を終えた高町なのははユーノと視線を合わせながら約束を交わした。
はやてとの激戦で消耗した体力と魔力はユーノの回復魔法のおかげで、全快とまではいかないが、ある程度回復できた。
その手にケリュケイオンは装着されておらず、今は長年の相棒レイジングハート・エクセリオンのみ。
その身には気高き意志を示すかの如く純白のバリアジャケットを纏っている。
はやてとの戦いでカートリッジを使い切って魔力面で心配があったが、幸運にもその問題は解決できた。
天道が見つけたデイパックの近くに落ちていた別のデイパックの中にカートリッジが13発も入っていたのだ。
幸いレイジングハートにも使えるものだったので問題なく補充する事ができた。

「大丈夫、ヴィヴィオのことは任せておいて」

ヴィヴィオの後ろ姿を目に入れつつユーノはなのはの頼みを快く引き受けた。
元々司書長らしく落ち着いた感じの深緑のスーツは今となっては所々ボロボロになっている。
だが逆にそれが強い意志を秘めた瞳と合わさって一層頼もしく見える。
その手には本来の姿を得た白銀の飛竜フリードリヒの手綱が握られていた。

「なのはママも気を付けてね」

幼いヴィヴィオも状況の深刻さを感じ取り、手を振る事でなのはを安心させようとしていた
その首には捜索の手助けになるようにとユーノから渡された双眼鏡が掛かっていた。
さらにその身には遠い将来通う事になる真新しいSt.ヒルデ魔法学院の制服が映えていた。
そしてその小さな両手にはなのはから譲り受けたケリュケイオンが装着されていた。
ホテルでの戦闘の後遺症でヴィヴィオのリンカーコアは消失していたので、本来ならこの組み合わせは無理がある。
だが小休止中に改めて調べたところ、ヴィヴィオの体内にリンカーコアとは別の似たような働きをするものがある事が判明した。

実はこれはデスゲームを円滑に進めたためにプレシアが設けた仕掛けの一つであった。
本来ならデバイスは魔力源であるリンカーコアを持つ者しか扱えない。
だがそれでは参加者間で不公平が生じると考えたプレシアは事前に参加者に擬似的なリンカーコアを植え付ける事で解決しようとした。
支給品として大量のデバイスの類が配布される以上、その問題は見過ごせなかった。
そしてそれは擬似的なリンカーコアとしての働きの他にも魔力に類する力を魔力に相互変換する機能も備えていた。
そのため本物のリンカーコアに比べれば遥かに性能は劣る事になり、せいぜいデバイスの起動と張りぼてのバリアジャケットを展開する程度になった。
だがプレシアとしては最低限デバイスが起動するだけの力が備わればいいと考えていたので支障はなかった。
この仕掛けのおかげで別世界の魔力に類する力を持つ者や何の力を持たない一般人でもデバイスを起動する事ができたのだ。
もちろんなのは達はそこまで詳しい事情を知っていた訳ではなかったが、今は時間もないので深くは考えなかった。

795 ◆HlLdWe.oBM:2011/01/15(土) 14:40:14 ID:gAI2iztE0

重要なのはヴィヴィオが自ら皆の役に立ちたいと強く申し出た点だった。

当初なのはは今まで通り竜魂召喚を継続するつもりだったが、それはさすがに魔力の消費が大きすぎた。
なのはの身を案じたユーノとしてはこの後戦闘になるかもしれない状況でなのはの魔力消費は可能な限り抑えたいところだった。
そこで発言者であるユーノが自ら竜魂召喚を引き受けようとしたのだが、ここでヴィヴィオが自ら志願してきた。
みんなのために少しでもいいから頑張りたい。
それはただ純粋で幼いながらもヴィヴィオがずっと抱いてきた想いだった。
もちろん最初はなのはを筆頭に4人ともヴィヴィオの申し出を受け入れなかった。
だが実際フリードの様子を見ると、信を置いている順位は『新しく主になったなのは>お互いに向き合ったヴィヴィオ>キャロの同僚であるスバル・助けてくれた天道>ユーノ』が妥当に思えた。
なのはを避けるなら次点のヴィヴィオが受け継ぐのは自然な流れであり、最も上手くいく組み合わせであった。
結局最後はユーノが後ろで全面的に補佐するという事でなのはも納得した。
なによりヴィヴィオの真剣な願いを無碍にしたくなかったというのが真情だったのかもしれない。

「それじゃあ、また後で」

右手に嵌めたリボルバーナックルの調子を確認しつつスバルは皆を見渡しながら声をかけた。
その姿はストライカーの名に恥じぬ威風堂々としたものだった。
右手に尊敬する母の形見であるリボルバーナックル。
両足にはいつか仲良くなりたいと願う妹?が使っていたジェットエッジ。
そして身に纏うのは憧れの恩師のものを模した純白のバリアジャケット。
ちなみに左手用のリボルバーナックルはカートリッジだけを抜かせてもらって、天道が拾ったデイパックをもらって入れている。
最初は両手装備にしようかと思っていたが、やはりまだ『重い』ので慣れた右手だけにしておいた。
それからレヴァンティン、完全に破損したクロスミラージュ、ラウズカード(ジョーカー、ハートの2)、そして目下使い道がない蒼天の書も一緒にデイパックの中に仕舞っておいた。

「よし、行くぞ」

ジェットスライガーに乗り込んだ天道の号令が聞こえる。
その服装はユーノ以上にボロボロだが、それが逆に天道の不敵さを際立たせていた。
『これ以上、誰一人として死なせない』という誓いを必ず果たすべく、気力は十分だった。

E-5のどこかにある転移魔法陣の捜索にあたって5人は4手に分かれる事にした。
飛行魔法を使えるなのはとフリードに乗ったユーノとヴィヴィオは上空から。
ジェットエッジを走らせるスバルとジェットスライガーに乗った天道は地上から。
4手に別れたのは捜査範囲を広げて、時間を短縮するために他ならない。
だがこれは時間短縮というメリットとは逆に戦力を分散させるというデメリットも同時に生じてくる。
もちろん5人ともその可能性は考えたが、最終的に問題ないと判断した。
まず今の時点で5人を襲う可能性があるのはキングと金居のどちらか。
今までの話を総合するとキングと金居はお互いに種の存続を賭けて戦う間柄なので手を組む可能性は低いが、その可能性が皆無というわけではない。
だが万が一組んだところでE-5は一面瓦礫の山なので動く物があれば上空からはすぐに分かる。
つまりもし襲いに来ても上空の3人が容易に発見するため、対応は遅れずに行える。
だからこそメリットを重視して4手に別れて捜索するという案を採用した。

不屈のエースは両足に光の羽を纏って空に舞い上がる。
優しき司書長と幼き聖王は白銀の巨竜の背に乗って空に舞い上がる。
蒼きストライカーは両足のモーターを振るわせながら駆け出す。
天の道を往き総てを司る男は銀と黒の化け物バイクにエンジンをかけて走り出す。

今この瞬間、5人は最後の希望を求めて、行動を開始した。


     ▼     ▼     ▼

796 ◆HlLdWe.oBM:2011/01/15(土) 14:41:38 ID:gAI2iztE0


「うーん、これはギリギリかな」

スマートブレイン社製のサイドカー“サイドバッシャー”のハンドルを巧みに操りながらキングはふと呟いていた。
おそらく現在位置は森林地帯から平野部に飛び出た辺りなのでE-8辺りだろうか。
背後から差し込む朝日でサイドバッシャーの漆黒のボディーは一層輝いていたが、キングの心中は裏腹に若干曇り気味だった。
ついさっき上空からE-5に降りていく残りの参加者の姿が確認できた。
これから荒廃したE-5エリアの中心で魔法陣探しに取りかかるはずだ。
正直今から向かって間に合うかどうかは微妙なラインだ。
もしも到着した時に全てが終わっていたら興醒めどころの話ではない。
それでは何のために必死になってバイクを走らせているのか分からなくなってしまう。

「大丈夫だ、問題ない」

不意に横合いから合いの手が入った。
サイドカーに身を委ねるギラファアンデッドの人間としての姿である金居だ。
先程まではキングから残りの参加者の情報を聞いていたが、聞き終わるとしばらく黙っていた。
ギラファが持っていた茶釜の中に入っていた和菓子と大量の角砂糖を二人で食べていたので静かになったのはある意味当然だったが。
それがいきなり装備の具合に返答するかの如く軽い調子で言葉を振ってきたのだ。
だがその返事に面白い気配を感じ取ったキングは興味津津といった具合にほくそ笑んでいた。

「どういうこと?」
「言葉通りだ。あいつらの足止めをしたから『俺達が到着した時には全て終わっていた』なんて最悪な展開にはならないという事だ」
「へー、さすがギラファ! 手回しがいいね!」

ギラファがどうやって離れた場所にいる参加者の足を止めたのかは分からない。
だがこの慎重なアンデッドが自信を以て言っているのだ。
現にE-5にいる参加者は足止めを食らって途方に暮れているのだろう。

「そうだ、一つ聞いていいか」
「ん、なに?」

説明になっていない説明を終えたギラファはついでといった風に問いかけてきた。

「さっき言ったよな――『楽しければそれでいい』と」
「ああ、言ったね」
「何か具体的なプランでもあるのか?」

確かにE-5に着いたら生き残った参加者で遊ぶつもりだった。
最初それは漠然としたもので具体的には特に考えていなかった。
だが今こうして問われてみると、徐々に何をしたいのか頭の中で整理されてきた。

「そうだなー。最初はカブトと戦おうとも思ったけど、もう十分戦ったから後は僕の手で始末できたらいいや。
 ……ああ、そうだ。最後にあいつらに僕の力を見せつけてやりたいな」
「もう十分見せつけているんじゃないのか?」
「なんて言うかね、あいつらいくら脅しても諦めないから、最期にガツンと見せつけてやりたんだ」

それはキングが『最強』であるが故に。

「ねえ、『最強』vs『最強』って燃えない? もちろん真の『最強』は僕だけどね」


     ▼     ▼     ▼

797 ◆HlLdWe.oBM:2011/01/15(土) 14:42:37 ID:gAI2iztE0


それは突然現れた。
いや現れた時にはもう彼らの仕事は終わっていた。
彼らに与えられた仕事は唯一つ。

『身を呈してE-5にいる参加者を足止めしろ』

それは命令。
機械の身では決して抗う事が出来ぬ絶対遵守の力。
そして彼らは自らを犠牲にして4つの花火を作りだし、その命令を全うした。

そのために魔導師が地に落ち、戦士が地を這う事になろうとも、彼らの知った事ではない。
もうその身は命令を遂行した際にバラバラになってしまっている。

あとにはただ自らが為した仕事の成果が転がるだけ。


     ▼     ▼     ▼

798 ◆HlLdWe.oBM:2011/01/15(土) 14:43:26 ID:gAI2iztE0


目の前に広がる光景にデジャブを感じた。
アスファルトとコンクリートの瓦礫が辺り一面に転がり、次いで焼け焦げた匂いが鼻の奥を刺激する。
7年前、巨大隕石の落下という災厄によって壊滅した渋谷。
今ではエリアXと呼ばれる地域の光景と天道が今この瞬間目にしている光景は似ていた。
そしてあの時も天道は同じように傷だらけで災厄の真っ只中にいた。

「……ッ、みんなは――!?」

あれは小休止を終えて魔法陣を探そうと散らばった、まさにその時だった。
徐々に加速し始めたジェットスライガーが突然爆発した。
爆発の直前に何かがぶつかったような衝撃を感じた気もするが、その直後に意識が飛んだので定かなところは分からない。
その感覚を信じるならジェットスライガーは謎の物体の衝突で大破した事になる。
周囲に散乱する焼け焦げた破片が何よりの証拠だ。
だがいくらなんでも爆破を引き起こすような物体の接近を見逃したとは思えない。
何か危険が迫れば上空の高町やスクライアが知らせる手筈になっていたにも関わらずにだ。

(やはり高町達もやられたのか……)

上空を見渡しても見えるのは青い空を汚す不吉な灰色の雲だけ。
本来なら上空にいるはずの高町やフリードの姿はどこにもなかった。
おそらくジェットスライガーを襲った物に襲われたと仮定するのが妥当だろう。

「…………ッ」

だがそこまで考えをまとめたところで天道の身体はグラっとふらついた。
ジェットスライガーが爆破した時に負った傷はさすがの天道も無視できるようなものではなかった。
ジャケットとジーンズはほぼ焼け焦げて、その下の生身の身体には擦り傷と火傷が隙間なく刻まれている。
さらにその傷跡からの出血は個々は微々たるものだが、全体では正直危険な状態だ。
普段通り平気な風を装いながら、その実かなり危ない状態にある事は天道自身も理解していた。

「……不味いな。早くみんなと合流して――」
「あ、カブト見っけ」
「ちっ、キング!?」

相手を馬鹿にしたような特徴的な聞き覚えのある声。
そこにいたのは思った通り、色とりどりのアクセサリーで身を飾り付けた赤いジャケットの青年。
間違いなく生き残りの中でも最も危険な人物、キングだった。
ここで見つかった以上当然戦う他に道はない。
これまでのキングの行動からして話し合いなど全くの無意味だ。
だからいつものように右手を天高く掲げ、飛来してきたカブトゼクターを掌でつかみ取り、腰のベルトに装着して――。

「変し――ガッ!?」
「いつまでも敵が悠長に変身終わるまで待っているとか思っていたのかい?」

――「変身」の掛け声が天道の口から発せられる事はなかった。

目の前にいるのは青年という仮の姿を脱ぎ捨てたキングの真の姿、黄金に輝くアンデッドの王コーカサスビートルアンデッド。
その右手に握られた破壊剣オールオーバーの剣身は紛う事なく天道の腹部をカブトゼクターとベルトごと刺し貫いていた。
先程の爆破による負傷で天道の動きにはいつものようなキレがなくなっていた。
それはキングがコーカサスビートルアンデッドの姿に戻り、カブトへ変身が終わる間を与えずに天道に止めを刺すには十分すぎる隙だった。

「もう飽きたから君で遊ぶのも終わりだよ」

それは文字通り“天の道を往く”男の最期であった。


     ▼     ▼     ▼

799 ◆HlLdWe.oBM:2011/01/15(土) 14:46:55 ID:gAI2iztE0


「フリード!? ねえ、フリード! お願い、目を開けてよ……あああぁぁぁ……」
「……ぅ、ここは……いったい何が――」
『Mr.ユーノ、気が付いたのですね』

目覚めたユーノの耳にまず飛び込んできたのはなのはから託されたヴィヴィオの悲しき叫び声。
さらに続いて聞こえてきたのは親友のデバイスであるバルディッシュ・アサルトの気遣いが感じられる電子音。
そうこうするうちに意識がはっきりするにつれて周囲の様子が徐々に見えてきた。

アスファルトとコンクリートが織り成す瓦礫の平野。
少し離れた場所では何かが燃えているのか黒い煙が立ち上っているが、少なくともここまでは火が広がってくる事はないように見える。
そんな場所にユーノとヴィヴィオはいて、ヴィヴィオの腕の中には物言わぬフリードの躯が抱きかかえられていた。
その真っ白な小さな体躯は見事なまでに血で真っ赤に染まっていた。

「バルディッシュ? これは――!? そうだ! あの時、いきなり何かに襲われて――」

全て思い出した。
フリードの手綱を引いてなのはと共に上空へ飛び立った、まさにその瞬間。
突然地上で爆発音がしたと思ったら、次の瞬間フリードに何かが突撃してきた。
おそらく何らかの方法で姿を消していたのだろう。
だから誰も襲撃者の接近を察知できなかったのだ。
突然の襲撃にフリードも、フリードの背に乗っていたユーノやヴィヴィオも、何一つ対処する暇はなかった。
ただ襲撃されて墜落するだけだった。
だがなんとかヴィヴィオだけは抱き寄せてスフィアプロテクションで落下の衝撃を和らげようとした。

そこでユーノの記憶は途切れていた。

『フリードはあんな傷だらけになっても二人を守るために落下の衝撃を和らげようと必死に翼を動かして制動を掛けて、それで力を使い果たして……』
「そうだったんだ……」

つまり今こうしてユーノもヴィヴィオも大した怪我もなく生きているのはフリードのおかげなのだ。
おそらくユーノだけではここまで無傷では済まなかったはずだ。
だがそのためにフリードが死んでしまうなんて、やりきれない気持ちでいっぱいだった。

「ユーノ君……ヴィヴィオ……」

ふと気づくと、一緒に飛んでいたはずのなのはがすぐ後ろにいた。
もう既に状況を把握したのか、その表情は沈痛な面持ちだった。

「なのは、無事だったんだね」
「うん、さすがに突撃は防げなくて墜落したんだけど、スバルからもらったカードのおかげでその時負った傷はなんとか治せた」
「そっか、確か出発する前に渡されていたっけ」

唯一の回復アイテムである“治療の神 ディアン・ケト”がなのはに渡されたのはつい先程の事だ。
元々スバルが持っていたのだが「自分には効果が薄いと思う」という事だったので、一番無茶をしそうななのはに渡されたのだ。
その理由を聞いた時にはなのはも苦笑いしていたが、教え子の気遣いに対してとても嬉しそうだった。

「ごめん、私があのカード使わずにいれば、フリードを……」
「気にする事ないよ。フリードは墜落した時にはもう手遅れだったんだ。
 でも、そのおかげで僕もヴィヴィオもこうして無事に助かったんだ」
「そう、だったんだ……フリード、ありがとう……」

白銀の巨竜は志半ばにしてその小さな命を散らした。
だがここで足を止めるわけにはいかない。
フリードのためにも必ずや魔法陣を探し出して、皆でここから脱出しなくては。

800 ◆HlLdWe.oBM:2011/01/15(土) 14:48:01 ID:gAI2iztE0

「なのは、スバルと天道さんは?」
「私も探してみたけど、ユーノ君とヴィヴィオしか見つけられていないの」
「それなら早く見つけないと! なのははヴィヴィオの傍にいてあげて。僕が二人を探して――」
「待ってユーノ君! 私が探しに行く、私なら単独行動でも問題ないから」
「いや、でも……」
「大丈夫だよ、スバルも天道も強いから、きっと――」


「あ、その二人なら探さなくていいよ、はいこれプレゼント」


「「え?」」

突然瓦礫の向こうから姿の現した黄金の怪人。
なのははその怪人が誰なのか知っていた。
それは何人もの参加者を弄んだ最悪な参加者、キングの真の姿。
そのキングが投げた二つの物体は地面をバウンドしてなのはとユーノの下に転がって来た。
一瞬何か爆弾のようなものかと思ったが、その二つの物体がはっきりと見える位置まで来ると二人は言葉を失った。

天道総司とスバル・ナカジマの生首――それがなのはとユーノの足元に転がってきた物体の正体だった。

「天道さん、スバル……そんな、二人とも……」

なのはもユーノも今自分達が見ている光景が信じられなかった。
天道総司と云う男はどんな状況も打開するような頼もしい男だった。
スバル・ナカジマはどんな苦境にも屈しない立派な魔導師だった。
そんな二人がこんな短時間で死んでしまうなど信じたくなかった。

だがこれは紛れもなく事実――そう天道総司とスバル・ナカジマはもういない。

「ユーノ君。ヴィヴィオを連れて、少し離れていて」
「なのは……」
「ごめん、でもこんなところ、あの子にみられたくないの……だからお願い……!」
「分かった、でも危ないようだったら手は貸すよ」
「……ユーノ君にはいつも背中を守ってもらってぱなしだね」
「僕の方こそ……!? ぼ、僕達の事は気にしないで。全力全壊手加減なしで!!!」
「うん!」

なのはにエールを送るとユーノはすぐさま踵を返した。
今のなのはの顔には今まで見た事もないほど怒りで満ちていた。
これから始まるのはおそらく先程のはやて戦以上の激戦になるだろう。
だからこちらも相当の覚悟をしなくてはならない。
だが今回はただ避難するだけじゃない。
ギリギリ戦況が把握できる位置でヴィヴィオを守りながらサポートをするつもりだ。

「ヴィヴィオ、急いでここから離れよう」
「ぅ、ぅん、なのはママは?」
『ママなら大丈夫。この相手をやっつけたらすぐに行くから』
「わかった、なのはママ気を付けてね」

801 ◆HlLdWe.oBM:2011/01/15(土) 14:48:49 ID:gAI2iztE0

不幸中の幸いはヴィヴィオがフリードの死を悲しんでずっと泣いていた事。
そのためヴィヴィオは天道とスバルの生首を見ずに済んだ。
フリードの死に加えて天道とスバルの死まで知れば幼いヴィヴィオの受けるショックは計り知れない。
後々知る事になろうとも、今は知らずに済ませておく方がいい。

「さあ、こっちへ。バルディッシュ、どの辺りがギリギリ――」
「貴様がユーノ・スクライアだな?」
「え、グハァ!?」
「ユーノさ、きゃあ!!」

自分を呼ぶ声に振り向いたらいきなり見えない衝撃で吹き飛ばされた。
誰かに殴られたようだが、周囲にはヴィヴィオしかない。
いや、違う。
ヴィヴィオの様子がおかしい。
まるで誰かに捕まっているようにその場から動けないでいるのだ。

「まさか、ステルス能力!?」
「さすがに頭の回転が早いな」

その声と共に見えない襲撃者は不可視のマントを取り払って姿を現した。
黄色のハイネックに黒ジャケット、そして銀縁眼鏡を掛けた青年。
直接会うのは初めてで話にしか聞いていないが誰かは分かっている。

「君が金居か」
「ふっ、さすがに分かるか」

ユーノは先程の襲撃者は金居との勝負に勝ったキングだと思っていた。
だが事態はそれ以上に最悪だった。
おそらくキングと金居は何らかの条件で手を組んだのだろう。
その手始めの行動が先程の見えない襲撃。

「ヴィヴィオを離せ! 用があるのは僕の方なんだろ!」
「人質だ、悪く思うな。単刀直入に言おう、ここから脱出するための考えを聞かせろ」
「なんだって!?」
「早くしろ、さもないとこの娘の命が……」
「ひっ!?」

金居は有無を言わさぬ空気を前面に押し出して、ヴィヴィオの首筋に真紅のレイピアを当てていた。
急転直下追い詰められたユーノは悩んでいた。
正直に話すべきか話さざるべきか。
だがその悩む時間もあまりない事は肌で感じていた。
金居の様子からヴィヴィオの命を奪う事に躊躇いはないようだ。
少しでも対応を間違えればヴィヴィオの身に危険が及ぶのは誰の目にも明らかだった。

(くそっ、あと少しだったのに……)

ユーノの心中の焦りを嘲笑うかの如く、大地は静かに鳴動し始めていた。


     ▼     ▼     ▼

802 ◆HlLdWe.oBM:2011/01/15(土) 14:49:23 ID:gAI2iztE0


(ここまでは予定通りか、それにしてもキング随分と楽しそうだな)

金居とキングにとってここまでは順調な流れだった。
キングから残りの参加者の情報を聞いた段階で金居の目的はユーノ・スクライアとヴィヴィオの二人だった。
カテゴリーキングのアンデッドが二人。
6連装ミサイルや4連装バルカンの搭載が説明書で判明したサイドバッシャーのバトルモード。
茶道具一式と一緒にデイパックに入っていたC4爆弾。
スバル殺害時に手に入れたボーナス支給品であるステルス機能を備えたシルバーケープ。
そして途中で拾ったレリックなる赤い宝石。
これだけあれば武力面での問題は心配なかったが、やはり魔法などに関する知識面については不安があった。
だから残りの参加者の内で豊富な知識を持つユーノと次点でヴィヴィオはどうしても押さえておきたかった。
そういう事情もあって、先んじて会場に散らせていた完全ステルス機能を搭載したガジェットドローンⅣ型による足止めを決行した。
金居としてはただ足を止めてくれるだけで良かったのだが、命令に問題があったのか想定外に過激な方法を取っていたので内心驚かざるを得なかった。
正直なところユーノとヴィヴィオさえ手に入れば残りの参加者の生死はどうでもよかったので、結果的に問題なかったが。

(まあ、何も教える気がないならそれでもいい。それなら別の脱出方法に切り替えるまでだ)

金居はキングから残りの参加者の情報を得た際にある事に思い至っていた。
それはヴィヴィオと聖王のゆりかごを利用してここから脱出できないかというものだった。
ヴィヴィオにレリックを埋め込み、聖王のゆりかごを動かすように仕向ければ、ゆりかごの機能でここから脱出できるのではないか。
既に聖王状態のヴィヴィオは確認済みなので、この会場内でも条件さえ揃えばヴィヴィオを聖王として覚醒させる事は可能だ。
だがそのような抜け道をプレシアがわざわざ用意していたとは思えない。
十中八九ゆりかごの転移機能は封じられていると見ていいだろう。
だが一方でゆりかごがそれだけの航行に耐えうる構造である事は間違いない。
つまりあそこに避難すれば会場が消滅したとしても、無事でいられる可能性は十分にある。

(それにどちらも頓挫したとして、俺達が死ぬ事はない)

アンデッドはその名の通り不死の存在だ。
だがそれではゲームが成立しないので、制限を掛けられて今は不死でなくなっている。
それは首輪が外れた今でもそうだ。
だがもしもこの会場がなくなれば金居達を縛るものは名実共に皆無になる。
これがなのは達なら生存のために様々な心配があるが、アンデッドはそのような心配は要らない。
あとはどこかの世界の住人に拾われたところで移動手段を奪って元の世界に戻ればいい。
本当なら統制者に期待したいところだが、今のバトルファイトを見る限り一抹の不安がある。
だが今まで出会った参加者から聞いた話を総合すると、この世には時空管理局やそれに類する機関がいくつもある。
ここの参加者のうち、それらに属している者なら捜索の手は伸びているはずだ。
もっとも、皮肉なのはそいつらが助けたい奴らが既に全員死亡しているという点だが。

(だが俺達の力で成し遂げられるのならそれに越した事はない。さあ、ユーノ・スクライア、お前の答えを聞かせろ)

静かに鳴動する大地はさながら金居によるカウントダウンのようであった。

803 ◆HlLdWe.oBM:2011/01/15(土) 14:49:59 ID:gAI2iztE0


【2日目 早朝】
【現在地 E-5 瓦礫の山(なのはとキングから少し離れた場所)】

【ユーノ・スクライア@L change the world after story】
【状態】全身に擦り傷、疲労(中)、魔力消費(中)、強い決意
【装備】バルディッシュ・アサルト(スタンバイフォーム、4/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式×2(どちらも食料無し)、ガオーブレス(ウィルナイフ無し)@フェレットゾンダー出現!、ブレンヒルトの絵@なのは×終わクロ、浴衣(帯びなし)、セロハンテープ、分解済みの首輪(矢車、ユーノ、ヴィヴィオ、フリードリヒ)、首輪について考えた書類
【思考】
 基本:なのはの支えになる。フィールドを覆う結界の破壊。
 1.ここにいる全員を何としても支えて、脱出する。
 2.ヴィヴィオを助けたいが、どうしたらいいんだ……!?
 3.E-5地点の転送魔法陣を調べ、脱出方法を模索する。
 4.ここから脱出したらブレンヒルトの手伝いをする。

【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】リンカーコア消失、疲労(小)、肉体内部にダメージ(小)、血塗れ、金居に捕まっている
【装備】St.ヒルデ魔法学院の制服@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ケリュケイオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、双眼鏡@仮面ライダーリリカル龍騎、フリードリヒの遺体(首輪無し)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】なし
【思考】
 基本:みんなの為にももう少しがんばってみる。
 1,うぅ、ユーノさん……なのはママ……。
 2.みんなと一緒に、生きて帰る。
【備考】
※浅倉威は矢車想(名前は知らない)から自分を守ったヒーローだと思っています。
※矢車とエネル(名前は知らない)を危険視しています。

【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】健康
【装備】バベルのハンマー@仮面ライダークウガA’s 〜おかえり〜
【道具】支給品一式、砂糖1kg×5、イカリクラッシャー@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、デザートイーグル(4/7)@オリジナル、ラウズカード(ハートのJ・Q・K、クラブのK、ダイアKのブランク、スペードKのブランク、コモンブランク)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ジェネシスの剣@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、クレイモア地雷×3@リリカル・パニック、リンディの茶道具一式(お茶受けと角砂糖半分消費)@魔法少女リリカルなのは、C4爆弾@NANOSING、シルバーケープ@魔法少女リリカルなのはStrikerS、サイドバッシャー@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【思考】
 基本:ゲームからの脱出、もしくは主催の乗っ取り。
 1.ユーノから魔法関係の知識を聞き出す。
 2.地上本部へ向かい、魔法陣を調べる。
 3.魔法陣での脱出が無理なら、聖王のゆりかごでの脱出を試みる。
 4.最終的にキングが自分にとって邪魔になるなら、自分の手で封印する。


     ▼     ▼     ▼

804 ◆HlLdWe.oBM:2011/01/15(土) 14:51:35 ID:gAI2iztE0


「……………………」
「いいよ、いいねえ、その表情! そうだよ、そんな表情が見たかったんだよ!
 あははは、ねえ、もっとそんな表情を見せて僕を楽しませてよ!! もっと僕を笑顔にしてよ!!!」

キングは今の状況に満足していた。
アンデッド最強のコーカサスビートルアンデッドvs魔導師最強の高町なのは。
いつの世も最強同士の対決は胸が躍るものだ。

だがそれ以上にキングは気に食わなかった。

「そういえば君さ、元の世界では最強のエース魔導師らしいじゃん」
「…………」
「それは困るなあ、僕が最強なんだから。この僕を差し置いて最強とか許せないんだよねえ」
「……レイジングハート、非殺傷設定解除……エクシード、ドライブ……!」
『Ignition.』

それは高町なのはが自分を差し置いて『最強』と呼ばれている点だ。
『最強』はたった一人だからこそ『最強』なのだ。
それはアンデッドでも魔導師でも関係ない。
だからキングは最後に気に食わない幻想をぶち殺しに来た。
さまざまな世界で最強の魔導師と謳われた高町なのはを負かして力の差を見せつける事によって。
そのために天道とスバルを殺して、焚きつけやすいようにわざわざ生首を用意したのだ。
厳密にはスバルを殺したのはギラファだが、そのような裏事情を敢えて話す気はない。

「だからさ、白黒はっきりさせようよ」
「……私は、あなたを――」
「君を倒して這い蹲らせて教えてあげるよ、“一番強い”のはこの僕だってね!!!」
「――許さない!!!」

だが相手の存在を許せないのはキングだけではない。
高町なのはもまたキングを、そしてこんな悲劇を止められなかった自分を許せなかった。
戦闘用に特化されたエクシードモードを起動したのも、そんな覚悟の表れだ。
エクシードモードに切り替わった新たなバリアジャケットは常よりも純白のものとなり、あたかもなのはの決意を表す白装束のようだった。

そんなこれから始まる二人のバトルファイトに呼応したのか、大地は静かに鳴動し始めるのだった。


【2日目 早朝】
【現在地 E-5 瓦礫の山】

【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】全身ダメージ(小)、キングへの強い怒り、バリアジャケット(エクシードモード)展開中
【装備】翠屋の制服@魔法少女リリカルなのは、すずかのヘアバンド@魔法少女リリカルなのは、レイジングハート・エクセリオン(エクシードモード、6/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式×2、カートリッジ(残り7発)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
 基本:誰も犠牲にせず極力多数の仲間と脱出する。
 1.キングを倒す。
 2.魔法陣を探し出してユーノとヴィヴィオと共に脱出する。
【備考】
※キングは最悪の相手だと判断しています。また金居に関しても危険人物である可能性を考えています。

【キング@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康、コーカサスビートルアンデッド状態
【装備】キングの携帯電話@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、ハンドグレネード×4@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ラウズカード(ハートのA・3〜10)、RPG-7+各種弾頭(照明弾2/スモーク弾2)@ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL、爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸
【思考】
 基本:この戦いを全て無茶苦茶にし、主催を乗っ取る。
 1.なのはを完膚なきまでに叩きのめして、自分こそが最強だと思い知らせる。
 2.1が終わったら魔法陣を調べる。
 3.楽しむ事が出来たなら、最終的に金居に封印されても構わない。
【備考】
※キングの携帯電話には『相川始がカリスに変身する瞬間の動画』『八神はやて(StS)がギルモンを刺殺する瞬間の画像』『高町なのはと天道総司の偽装死体の画像』『C.C.とシェルビー・M・ペンウッドが死ぬ瞬間の画像』が記録されています。
※全参加者の性格と大まかな戦闘スタイルを把握しています。特に天道総司を念入りに調べています。


     ▼     ▼     ▼

805 ◆HlLdWe.oBM:2011/01/15(土) 14:52:16 ID:gAI2iztE0


時の庭園に備え付けられた唯一の脱出艇。
元々ここを本拠地として定めていたプレシアはまさかこれを使う日が来るとは思っていなかった。
但しプレシア亡き今乗り込んでいるのはプレシアを殺害したナンバーズの面々であった。

「ただいま、到着しました」
「おつかれさま、オットー。それではそちらの調整をお願い」
「はい、了解しました」

最下層の動力フロアでの仕事を終えたオットーとセッテとディードが脱出艇に乗り込んできた。
これで時の庭園の残る者はいない。
既に冥王イクスヴェリアと屍兵器マリアージュは処分済みだ。
元の世界に持って帰れば有効に使える可能性もあったが「人語を解するくせに作戦行動能力は昆虫並の変な兵器」ゆえに処分の指示が出ていた。
その他の証拠隠滅のため順次施設破棄を兼ねて、各所で自爆シークエンスが作動している。
ここでの痕跡を調べられてドクターの計画に支障が出ては本末転倒だ。
またここから脱出する際に時空管理局などの組織に捕捉されても同じ事だ。
そのため周囲の警戒は厳にしているが、幸い最も早いもので24時間後にしか気づかれないという事だった。

「オットー、ごくろうさま」
「はい、ドゥーエ姉さまもごくろうさまでした」

最後の仕事である夜天の書の破壊とジュエルシードの回収が無事に済んだ事は先程報告を受けていた。
夜天の書を破壊したところですぐに会場が消滅するという事はないらしい。
ある程度は余力で保たれるが、それも長くは続かずに徐々に会場は消滅していき、あと1時間程度で完全に消滅するという事だ。

「ディードとセッテは万が一に備えて戦闘状態で待機。ドゥーエは――」
「分かっているわよ。最後まで監視はしておくわ」

だが会場の参加者も哀れなものだ。
本当に魔法陣などというプレシアが用意したもので脱出できると思っているのだろうか。
その対策をプレシアが何も講じていないと思っているのだろうか。
だがどの道パイプである夜天の書は破壊された。

――それに行き先が分からないのではどうしようもあるまい。

ドクターはそう言っていた。
どこかに転移するためには転移先の座標を把握しておかねばならない。
しかし参加者は誰も時の庭園の座標を知らない。
だから最初から魔法陣で脱出するなど無理でしかなかったのだ。
先程ウーノにも同じような事を言われた。
だがウーノはその後で一つ付け加えていた。

――ゆりかごに揺られていれば、もしかしたら助かったのかもしれないのにね。


【天道総司@魔法少女リリカルなのは マスカレード  死亡確認】
【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS  死亡確認】

【全体備考】
※ジェットスライガーは大破しました。
※E-5の手前にとがめの着物・ホテル従業員の制服・フェルの衣装(全て着られる状態ではない)が放置されています
※E-5のどこかに天道総司の首なし死体(パーフェクトゼクターとアンジールの羽根の状態は不明、カブトゼクターとベルトは破壊されました)、とスバル・ナカジマの首なし死体(ジェットエッジは両足ごと、またその他の所持品及び持ち物は瓦礫に潰されました)が放置されています。
※なのはの足元に天道とスバルの生首が転がっています。
※ザフィーラの不明支給品は【リンディの茶道具一式@魔法少女リリカルなのは】と【C4爆弾@NANOSING】でした。

806リリカル名無しStrikerS:2011/01/15(土) 14:53:15 ID:gAI2iztE0
投下終了で

807 ◆HlLdWe.oBM:2011/01/15(土) 14:57:23 ID:gAI2iztE0
失礼、投下終了です
タイトルは「Round ZERO〜REQUIEM SECRET」です
誤字脱字、矛盾、疑問点などありましたら指摘して下さい

と、金居の状態表で修正
バベルのハンマー@仮面ライダークウガA’s 〜おかえり〜→道具欄へ
ジェネシスの剣@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使→装備欄へ

808リリカル名無しStrikerS:2011/01/15(土) 15:50:03 ID:4l6XpFjo0
投下乙です。
わー、やはりフルボッコか(まぁ全滅ENDも予想していただけにそれよりはマシだが……)……天道にスバル……
なのはがキングに勝てるかどうかも微妙だけどまだ金居もいるからなぁ……
……が、一番の問題はもうスカ側の脱出準備は完了していてこっち側は思いっきり脱出の糸口が見えない点……
……アレ、これキング&金居側からみても詰んでね?

後、本当にどうでも良いけど……

『新しく主になったなのは>お互いに向き合ったヴィヴィオ>キャロの同僚であるスバル・助けてくれた天道>ユーノ』

……ユーノォォォォォ

……それにしてもここまできて未だにユーノが生存している事が一番の驚きだなぁ……。


ちょっと1点だけ気になったんですが、

>そして彼らは自らを犠牲にして4つの花火を作りだし、その命令を全うした。

これがガジェットⅣ型の自爆なのはわかるんですが、支給された総数は5つだと思うのですが1つだけ残したんですか? それとも誤記ですか?

809リリカル名無しStrikerS:2011/01/15(土) 17:11:04 ID:XSjsPJLgO
投下乙です
僅かな対主催の内即二人と一匹が死亡。そしてスカ側はほぼ脱出準備を済ませて会場も一時間持たず消えるとか無理ゲーすぎだろ
こうなってくるとキングVSなのはも勿論気になるがユーノがどうでるかによって今後の展開が決まってくるな

初期はラッキースケベでサービス担当だったユーノがまさかここに来てこの役回りとは…

810 ◆HlLdWe.oBM:2011/01/15(土) 20:30:39 ID:gAI2iztE0
>>808
参加者一人につき一体が特攻したつもり(つまりフリードに二体特攻)で書いたのですが、その部分を書いていませんでした
wiki収録の際にそのように加筆修正しておきます



あと月報用にデータ(例によって合っているのか不安)
なのはR 197話(+11) 5/60 (- 5) 8.3 (- 8.4)

811リリカル名無しStrikerS:2011/01/15(土) 22:17:25 ID:QycZdi.g0
これ完結したら、第2次なのはロワとかあるのか?

812リリカル名無しStrikerS:2011/01/15(土) 23:05:12 ID:66wHgfkYO
乗る人がいれば始まるかもよ

813リリカル名無しStrikerS:2011/01/15(土) 23:25:38 ID:SLk5kWXoO
投下乙です
もう少しというところで天道とスバルは脱落か
ガジェットなんてすっかり忘れていたわ
あと金居の台詞に士やダグバがw

作中で金居がレリックを拾ったと言ってますが状態表にないのはミスでしょうか?

814 ◆HlLdWe.oBM:2011/01/16(日) 00:00:17 ID:L6Ng71Vo0
>>813
ミスです
wiki収録の際に書き加えておきます

815リリカル名無しStrikerS:2011/01/16(日) 00:32:27 ID:05m1g29s0
投下乙です

ここに来て天道とスバルが…これはきつい…
幾らなのはでもキングはきつい
そして博士らは既に脱出準備を済ませているのか…
詰みに近いな…

816リリカル名無しStrikerS:2011/01/16(日) 10:05:22 ID:u.WLhRmQ0
投下乙です
予想はしていたけど、まさかこんなに簡単に二人も脱落するとは……
というかなのは一人でキングに勝てるのかが不安だなあ
そうか、アンデッドは死ぬことないから、会場崩壊したら確実に助かるんだ
これは本格的にアンデッドの勝ち残りエンドもあり得るんじゃ……

817 ◆19OIuwPQTE:2011/02/03(木) 17:35:31 ID:ycBlxCLg0
予約分の投下をします。

818 ◆19OIuwPQTE:2011/02/03(木) 17:36:09 ID:ycBlxCLg0



   /01「決死の一手」



少し遠くで激しい戦闘音が聞こえる。
確認するまでもなく、なのはとキングが戦っているのだ。

それに引き摺られるように、仮初めの世界が鳴動する。
その振動でヴィヴィオの首筋に当てられた真紅のレイピアが僅かにぶれ、出来
た傷から血が一筋溢れる。
ユーノは思わず駆け寄りそうになるが、辛うじて自身を押し留める。

「どうした、応えられないのか?」
「………………ッ!」

そんなユーノの様子などお構いなしに、金居は答えを要求する。
ユーノは拳を握り、歯を食いしばる。
そして搾り出すように、ゆっくりと答えた。

819 ◆19OIuwPQTE:2011/02/03(木) 17:36:40 ID:ycBlxCLg0

「…………僕たちはこの【E-5】にあると思われる、“参加者を望んだ場所に転
移させる魔法陣”を使って脱出を考えていた」

その話し方から、ユーノが時間を稼ごうとしている事を、金居には容易に推測
できた。
だが金居は、ユーノが喋っている間は待ってやってもいいと判断した。

「もちろん、その魔法陣がまだ残っているとは限らないし、あったとしても脱
出に使えるかどうかは判断がつかない。
 それにもし脱出できたとしても、僕たちは首輪から解放されてずいぶん経っ
ている。
 当然、危険な罠だって用意されているはずだ」

その理由は、絶対的優位から来る余裕。
もとよりヴィヴィオを捕らえている限り、脱出に関する利は金居にある。

820 ◆19OIuwPQTE:2011/02/03(木) 17:38:19 ID:ycBlxCLg0

「それでも、僕達にはこれしか方法がなかった。
 たとえどんなに部の悪い賭けだろうと、どんなにリスクが大きかろうと関係
ない。
 僕たちは絶対に諦めない、最後まで足掻き続ける。そう誓ったからね」

それに自分はアンデット。何が起こったところで、容易に死ぬ存在ではない。
故に金居は、僅かでも情報があればいいと、ユーノを止めることをしなかった
のだ。

「だから僕たちはここに来たんだ。
 このエリアの何処かにある魔法陣を見付け出して脱出をするか、それが出来
なくても何かの助けになればいい、そう願って調査・解析するためにね」

そしてそこまで聴いて金居は、少しだけ襲撃を早まったか、と思った。
金居(ついでにキング)は一度、八神はやてと共に魔法陣による転移を経験し
ている。
つまりその場所も、その有用性も知っているという事だ。

821 ◆19OIuwPQTE:2011/02/03(木) 17:39:11 ID:ycBlxCLg0

だが自分たちは魔導師ではない。
つまり魔法陣を起動させることは出来ないということだ。
だがあと少し襲撃を遅らせていれば、ユーノ達を誘導し、魔法陣を起動させた
ところで、シルバーケープを使って紛れ込むなり、無理矢理便乗する事も出来
たかもしれない。
そうすれば、たとえ転移に失敗しようが、転移した先に罠があろうが関係ない。
もし失敗しても、その時はその時。予定通りに行動すればいい。
それに自分たちはアンデッド。
たとえどんな罠があろうが、この会場から出てしまえば決して死なないからだ。

だが、それほど深く考えることでもない。
何故ならここには、二人も魔導師がいる。
なのはの方はキングが殺すだろうから使えないが、魔法陣を起動させるだけな
ら一人だけでも十分すぎる。
従わなかった時は、殺せばいいだけだ。

金居はユーノの話を、そう結論づけた。

822 ◆19OIuwPQTE:2011/02/03(木) 17:39:44 ID:ycBlxCLg0


「それで話は終わりか?」
「残念ながらね……」
「そうか。
 ならばついて来い、お前たちには魔法陣を起動してもらう。魔法陣の場所も
知っている」
「――――――ッ!」
「もっとも、何かの隙に反旗を翻されても困るのでな。可能であるのならば、
いつでも起動可能なようにしてもらう。
 無論、拒否すれば殺す」
「わかった」

金居はそう言うと、ヴィヴィオに刃を当てたまま、魔法陣のある場所へと歩き
出した。
その時金居は、妙に物分かりの良いユーノに僅かな疑念を抱いたが、どうでも
いいことと捨ておいた。

それが、ユーノの決死の策の、微かな失敗と気づかずに。

823 ◆19OIuwPQTE:2011/02/03(木) 17:40:26 ID:ycBlxCLg0



   /02「エースオブエース その手の魔法」



地面に膝を付き、肩で大きく息をする。
対する相手は、傷一つなく、息も乱れた様子がない。
自らを最強と自負する敵――キングは、その言葉通りに圧倒的な力を持ってい
た。

最強となるのに、複雑な技や入念な策などいらない。
すべてを砕く剣と、すべてを防ぐ盾があればいい。
キングの所有する最強とは、つまりそういう類のものだった。

その剣は、まともに受ければなのはのシールド魔法であっても容易に砕いた。
その盾は、なのはの砲撃魔法を防ぎきり、キングの死角からの攻撃にも対応し
た。
かと言って、より強力な砲撃を行おうと足を止めれば、念動力でレイジングハ
ートを奪おうとしてくる。

剣技自体はそれほどでもなく、遠距離攻撃にも乏しいのが救いといえば救いだ
が、それでもその攻撃は苛烈だ。
防御し続ければ、容易に魔力を削られるので、回避するしかない。

824 ◆19OIuwPQTE:2011/02/03(木) 17:41:03 ID:ycBlxCLg0

それでも何度か攻撃は通っていた。
なのはが見つけた、キングの盾のただ一つの隙。キングが剣を振るって攻撃す
る瞬間の、その剣筋のライン。
いかなる理由からか、そこにだけは、盾によるオートガードが発生していなか
った。

なのははその僅かな隙に、幾度もシューターによる攻撃を行った。
だがその効果は薄く、ダメージを受けた端から再生していく。
今でこそ直接的な傷はないが、バリアジャケットはすでにボロボロだ。
このままでは、いつか決定的なダメージを受けてしまうだろう。

『大丈夫ですか、マスター』
「大丈夫、とは言いえないかな」

むしろ最悪と言ってもいい。
こちらの攻撃は殆ど効かず、あちらは一撃当てればそれだけで優位になる。
そうなる前に、どうにか効果的な一撃を当てなければならない。

「やっぱり、あれしかないかな」
『現状ではそれしかないでしょう』
「剣を交わしてその隙に砲撃を撃つか」
『盾の張れない零距離から、やはり砲撃を撃つ、ですね』

825 ◆19OIuwPQTE:2011/02/03(木) 17:41:33 ID:ycBlxCLg0

だがそれは、どちらもキングの剣を避けきることが前提となる。
なのはのバスターはその性質上、どうしても撃つ時に足を止めなければならな
い。
もし砲撃を躱されたり、逃げる時間を稼げるだけの効果がなければ、その瞬間
にキングの剣がなのはを捉え、殺されるだろう。

だが、躊躇している余裕もない。
魔力には限りがあるし、倒すべき敵もまだいる。
さらには残された時間もあと僅かしかない。


なのはは少しでも可能性を上げるために、“最後の切札”の使用を決意する。
立ち上がってレイジングハートを構え、キングを睨みつける。

応じるように、キングも一歩ずつ踏み出してきた。
そしてここまで頑張ったなのはに、彼なりの賞賛を送った。

「さすが最強のエースって呼ばれるだけの事はあるね。まさかここまで粘るな
んて。
 けど、本当の最強は君じゃない、この僕だ。
 だからさあ、早く死んじゃってよ」

その言葉になのはは、キングが優勝するために戦っているのではないことを知
った。
キングは、ただなのはが最強と呼ばれているのが気に入らないだけなのだと悟
った。
そして感じたのは落胆と、激しい怒り。
そんな事のために二人を殺したのかという、憎悪にも似た感情だった。
だからその間違いを正すように、自らの考え、あるいは感情を口にした。

826 ◆19OIuwPQTE:2011/02/03(木) 17:42:05 ID:ycBlxCLg0

「…………くだらないよ、そんな事」
「ん? なにか言った?」
「くだらないって言ったの。
 誰が強いとか弱いとか、どっちが最強だとか。
 私にはどうでもいい事でしかない」
「……なんだって?」

それは、キングにとっては信じられない言葉だった。
思わず自身の耳を疑い、なのはへと訊き返す。

「それは、一体どういう意味なのかな」
「言葉通りの意味だよ。
 私は別に、自分が最強だなんて思ってないし、最強になりたい訳でもない。
 私はただ、誰にも悲しい思いをしてほしくなかった。
 私の知りうる限りの世界では、みんなに笑顔でいて欲しかった。
 だからせめて、自分の手の届くところに居る人たちだけは助けようって、一
生懸命に頑張っていたの。
 そうしたらいつの間にか、最強のエースオブエースだなんて呼ばれてただけ」

もともと「高町なのは」という少女は、どこにでもいるような、人より少し優
しいだけの女の子でしかなかった。
彼女が魔法を手にした理由ですら、偶然彼女に魔法の素質があり、偶然ユーノと出会い、そして必然的に彼女は、自分に出来ることをしようとしたに過ぎな
い。

「私はね、みんなが笑顔でいてくれるのなら、強くなんかなくていい。
 みんなが幸せでいられるのなら、世界で一番弱くたってかまわない」
「……………………」

それはつまるところ、この戦いにおけるキングの理由の全否定。
もしキングが「僕が最強でいいよね」と言えば、なのはは「うん、いいよ」と
返すだけの、無意味な独り相撲でしかなかった。

827 ◆19OIuwPQTE:2011/02/03(木) 17:42:36 ID:ycBlxCLg0

だが、なのはにとって、この戦いの理由は違った。

「この手の魔法は、悲しみと涙を撃ち抜く力。
 泣いている人たちが、笑顔になれる場所まで導く翼。
 だから、笑いながら平気で人を傷付けるあなたなんかには、
 絶対に負けないッ!!」

なのははただ、キングが許せないだけ。
キングかこれまでにしてきた非道に怒り、
これからもするであろう凶行を阻止しようとしているだけだった。


「…………もういい。君、つまらない」
「ッ…………!」

キングはその事実を理解すると同時、心の内に在った熱が冷めていくのを感じ
た。
後に残ったのは、怒りにも似た嫌悪感。
どうしてこんなヤツが、最強の称号を持っているのかという、拒絶にも似た感
情だった。

キングが気だるげに足を踏み出す。
そこには先ほどまでの、“遊び”に対する気の緩みはない。
普段キングは、その圧倒的優位な状況から、相手をなぶる様に戦う。
そのキングが、今度は自分から動く。そこに如何なる差異が生じるのか。
それを見極めるため、なのはは限界まで集中力を高めていく。

「こんなつまらない戦いなんか、早く終わらせよう」
「レイジングハート! ブラスターシステム、リミット1、リリース!!」
『Blaster set.』

“最後の切り札”の一枚目を切り、不屈のエースオブエースは、最後の死闘へ
と赴いた。

828 ◆19OIuwPQTE:2011/02/03(木) 17:43:33 ID:ycBlxCLg0



   /03「反撃の時」



「ここだ」

周囲には粉砕されたコンクリや亀裂の走ったアスファルト。目の前には『魔力
を込めれば対象者の望んだ場所にワープできます』と書かれた看板。
金居が案内したそこに、目標とした転送用の魔法陣があった。

「さあ、とっとと起動可能にしろ」
「……わかりました」

だが、その感慨にふける間もなく、金居が魔法陣の起動を急かす。
ユーノは言われたとおりに魔法陣に魔力を流し込み、同時に“解析”を掛ける。
そして魔法陣の緑色の光がある程度強まった頃、ユーノが口を開いた。

「駄目ですね、この魔法陣はある程度魔力を注ぎ込めば自動で起動するタイプ
で、待機状態にする事は出来ません」
「そうか」

その事に金居は僅かに落胆するが、もともと魔法陣を待機状態にするのは保険
であり、出来なかったところで、さしたる問題は無かった。

「なら―――」
「ああそうだ、一つ言い忘れてた事がありました」

ないと思うが、そのまま魔法陣を使われて逃げられても面倒だと、ユーノに魔
法陣から離れるように言おうとして、その直前でユーノに口を挟まれる。
その事に僅かに苛つきながらも、その言い忘れた事とやらを聞く事にする。
その理由は先ほどと変わらない。
つまりは“余裕”からだ。

「何だ、言ってみろ」
「はい、わかりました。
 これは直接的には、脱出とあまり関係がありませんけど、それでも言ってお
きます」

だがその口ぶりから、金居はユーノへの警戒を僅かに強める。
ユーノは魔法陣へ手を当て、金居に背を向けたままだ。

「このデスゲームにおいて僕たちは、首輪と言う制限か掛けられていました。
 と言うより、首輪があったからこそ、このデスゲームが成立したと言っても
過言ではありません。
 ですがこの首輪は、ある時期を境に、容易に外せるようになってしまいまし
た」

829 ◆19OIuwPQTE:2011/02/03(木) 17:44:05 ID:ycBlxCLg0

それは今この会場に生き残っている人間なら、誰でも知っている事だ。
それをなぜ今さら語るのか。

「その時期とはおそらく、第四回放送。
 向こうに何か事情があったのなら、前回と同様代理に任せればよかったはず
です。
 それなのに、何故か十分遅れでプレシアが放送したあの時からでしょう。
 僕たちは、あの時点でプレシアがこのデスゲームから去った可能性があると
考えました」
「そんな事は俺も気付いている。それがどうしたと言うんだ」
「それは即ち、このデスゲームの破綻を意味しています。
 その理由は、一度放送の代理を行った人物です。
 彼女たちはナンバーズと呼ばれ、様々な能力を有しています。
 おそらく十分遅れの放送を行ったのも、変身能力を持つ彼女の姉妹でしょう」
「だからそれが何だと言うんだ。
 無駄口を叩くだけならば今すぐにでも殺すぞ!」

ユーノの回りくどい言葉に、金居は段々と苛立ちを募らせていった。
だがそれさえも、ユーノの決死の策の一つだった。

「問題は彼女たちの背後、創造主とも言える人物です。
 名前はジェイル・スカリエッティ。
 研究者でもある彼の目的はおそらく、このデスゲームに使われた技術でしょ
う。
 そしてプレシアを退場させた時点でスカリエッティの目的の前提条件はク
リア。
 後は早々に離脱するだけ、長居をする必要なんて何処にもない。
 証拠となるモノを処分して、さっさと退散すれば良いだけです」

そこまで聞いて、金居にもユーノの言いたいことが予想できるようになった。
そしてそれと同時に、内心に僅かな疑念と不安、強い焦燥が湧きあがり始める。

「目的を達成した時点で、彼にとって僕たちの結末はどうでもいいでしょう。
 そして、ここが人工的に作られた世界であるのなら、その破棄は容易です。
 この世界を構成するにあたって核となるモノを、停止か破壊すればいい。
 そうすればこの世界は自動的に崩壊し、後には何も残らない」

830 ◆19OIuwPQTE:2011/02/03(木) 17:45:02 ID:ycBlxCLg0

世界全体が鳴動している。
心なしかそれは、先ほどよりも大きく聞こえた。

「……お前は、何が言いたい」
「タイムリミットですよ、このデスゲームの。
 僕たちが考えたゲーム終了のリミットは約一時間。
 次の放送までです。そして―――」

否。それは気のせいではない。
確実に、そして着実に大きくなっていく。
そしてユーノは、己が策の成就を宣言した。

「そのリミットは、もうすぐだ」

瞬間。
一際大きな振動が、仮初の世界を揺らした。
その振動によって金居は、僅かに体勢を崩す。
それと同時、ユーノが光と共に消えた。

「転移か!」

そう判断した金居は、ようやくユーノの策に気付いた。
彼はずっとこの機会を待っていたのだ。
そして自分は、ユーノの策にまんまと乗せられたのだと気付いた。
次にどこに逃げたのか、何故ヴィヴィオを平気で見捨てたのか。
そう考え、再び訪れた振動に足を取られる。
その直後だった。

「ケリュケイオン!」
『Set up.』

背後から逃げたはずのユーノの声がした。
思わず振り返り、同時に抱え込んだヴィヴィオの体が光る。
その光に一瞬眼が眩んだ。
瞬間、警戒の薄かった真正面から身体を断ち切られた。

831 ◆19OIuwPQTE:2011/02/03(木) 17:46:01 ID:ycBlxCLg0

「グウッ!?」
『Plasma Smasher.』
「――――――ッ!!」

痛みに耐えながら、即座にその方向へとレイピアを振るうが、ゼロ距離から放
たれた砲撃魔法によって吹き飛ばされる。
大したダメージはない。即座に体勢を立て直し、襲撃者を睨みつける。
そこには黒い戦斧を構え、自分のデイバックとシルバーケープを抱えたユーノ。
隣には何故か服装の変わったヴィヴィオがいた。

「ッ!! 逃がすか!!」

金居は即座に赤いレイピアで斬りかかる。
だがアンデッドに変身していない金居では、その行動は僅かに遅かった。
ユーノはシルバーケープを着こみ、ヴィヴィオを抱えると、

『Sonic Move.』

その音だけを残して消え去った。
遅れてレイピアが空を切る。
金居は振り抜いた姿勢のまま動かない。

この結末の理由。
それはこの事態を予想していた者と、そうでない者の、心構えの差だった。

「くそぉ!!! 次は殺すッ!!」

近くの瓦礫へと、力の限りレイピアを叩きつける。
行き先は簡単に予想が付く。
金居はアンデッドへと変身し、彼らが向かうであろう場所まで駆けだした。

832 ◆19OIuwPQTE:2011/02/03(木) 17:46:32 ID:ycBlxCLg0





「ここまでくれば、とりあえずは大丈夫か」

バルディッシュによる高速移動を解除し、岩陰に隠れる。
その際、シルバーケープによる光学迷彩も一緒に解除する。

「ヴィヴィオ、怪我は大丈夫?」
「大丈夫。でも私よりユーノさんの方が」
「僕だって大丈夫だよ。こんな傷、スバルや天道さんの受けた痛みに比べれば、
どうって事ない」

そう言うユーノの肩口は、明らかに血で滲んでいた。
これは不意打ちを行った際に受けた傷だった。



先の不意打ちにおいて、重要な役割を担ったモノが三つあった。
それは「念話」と「バリアジャケット」、そして「会場の崩壊」だ。
本来リンカーコアを持たない者に、念話もバリアジャケットの装着は行えない。
だが、ヴィヴィオには疑似リンカーコアが残っていたおかげで、一応だがそれ
らの行使が可能だった。

更にユーノは、魔法陣を調べた際にそれを通じて会場の状態を“解析”し、崩
壊が起こり始めるおおよその残り時間を割り出したのだ。
結界魔導師であり、スクライアの一族として幾つもの遺跡を発掘した事のある
彼にとって、それは容易な事だった。

そして念話によって彼らは、金居に知られる事なく奇襲を計画する事に成功し
たのだ。
後は会話によって金居の注意をヴィヴィオから外し、
転移によってユーノが逃げたと金居が誤解したところを不意打ちし、
バリアジャケットを装着する際の一瞬の光を目くらましに利用したのだ。

833 ◆19OIuwPQTE:2011/02/03(木) 17:47:14 ID:ycBlxCLg0



「ヴィヴィオ。僕はソニックムーブでの移動に専念するから、君は金居のデイ
バックから使える物がないが探してくれ。
 可能な限り揺らさないようにするけど、一応ヴィヴィオも気をつけて」
「うん、わかった。ヴィヴィオ、頑張る」
「ありがとう、ヴィヴィオ。
 バルディッシュ、頼んだ」
『Yes, sir. Sonic Move.』

目的地はなのはの元だ。
キングと金居が組んでた以上、なのはを一人にしておくのは危険だと判断した
からだ。
もし金居がなのはの元へ向かった場合、あの強敵相手に二対一となってしまう。
それでは流石のなのはでも勝ち目が薄い。
だから、たとえ戦力にはならなくても、足止めくらいにはなってみせる。
心の内で、ユーノはそう決意した。

ヴィヴィオを所謂お姫様抱っこで抱え、再びバルディッシュによる高速移動を
再開する。
その直前、ユーノは抑えきれない感情を呟いた。

「なのは、無事でいてくれ」

834 ◆19OIuwPQTE:2011/02/03(木) 17:48:05 ID:ycBlxCLg0



   /04「オーバードライブ・ブラスター」



迫り来る一撃を寸でのところで回避し、即座にゼロ距離から砲撃を撃ちこむ。
ダメージの確認をする間もなく即座に離脱する。
直後、先ほどまでいた空間を剣が切り裂く。
そこに再び砲撃を撃ちこむが、今度は盾に防がれてしまう。

「しつこいなあ、さっさと死んでよ」
「ッ――――!」

土煙の中から振るわれた一撃を上体を逸らして躱し、
そこに撃ちこんだ砲撃の慣性で距離を取る。

息が上がる。
背中は冷や汗でぐっしょりだ。
体力よりも精神の消耗が激しい。
レイジングハートを持つ力が覚束なくなる。
対するキングは、まだ疲れた様子も見せていなかった。

間違いなくダメージはある。
だが、それ以上に相手の回復力が高いのだ。

「レイジングハート、まだ行ける?」
『もちろんです。ですが切りがありません』
「そうだね。生物である以上、頭か心臓を潰せば倒せるはずだけど。
 相手もそれは理解しているからね。そこだけは絶対に守ってる」

状況は非常に厳しい。
何度か直撃させた砲撃は、確かにキングにダメージを与えている。
だがそれ以上にキングの再生が速い。
再生にもいつか限界が来るはずだが、このままではこちらの限界が先に来る。

「どうにかして盾を破壊するしか、無いかな」
『ですが、それは容易ではありません。
 あの盾の破壊には、おそらくスターライトブレイカー級の威力が必要でしょ
う。ですが』
「そんな余裕。簡単には与えてくれないよね」

先ほどの交戦でもそうだった。
あの盾は複数同時に出現する事も可能らしく、シューターによる同時攻撃も防
がれていた。
それではブラスターユニットによる支援は期待できない。

835 ◆19OIuwPQTE:2011/02/03(木) 17:48:35 ID:ycBlxCLg0

さらにどれ程強固にバインドを掛けても、キングはそれをすぐに破ってしまう。
制限から解放されたカテゴリーキングが相手では、せいぜい数秒程度の拘束し
か出来ない。
通常のバスターでもぎりぎりなのだ。
その程度の時間では、キングを相手にスターライトブレイカーを使う暇はない。

「けど、このままじゃどうしようも―――」
「考え事は終わった?」
「――ッ! しまった!!」

突如飛来したエネルギー弾を回避する。
少し考えに没頭しすぎた。
そしてその隙は致命的だった。

こちらの行動を先読みしたのだろう。
回避した先にキングが現れる。

(回避……だめ! 間に合わな―――!!)
「バイバイ、最強の魔導師さん」

振り下ろされた剣が地面を砕き、その衝撃で土煙が舞う。
この一撃には、どんな相手だって耐えられないだろう。
ましてやなのはは防御すら出来なかったのだ。
生きている筈がない。
だというのに。

「………………。
 つまんないなあ、また邪魔が入ったよ」

土煙が晴れる。
そこには、ある筈の高町なのはの死体は無かった。

「なのはは僕が守る。絶対に死なせない!」
「ユーノくん?」

声のした方向を向けば、そこに高町なのははいた。
ユーノ・スクライアに抱かれるような形で。

「ユーノさん……なのはママ、苦しい」
「あ、ごめんねヴィヴィオ」
「ごめんヴィヴィオ。もう少しだけ我慢して」

間にヴィヴィオを挟んでいたが。

836 ◆19OIuwPQTE:2011/02/03(木) 17:49:42 ID:ycBlxCLg0


「邪魔しないでくれるかなあ」
「そんな訳にはいかないよ。
 なのはは絶対に殺させない」

そんなことはお構いなしに、キングは苛立ちを見せ始める。
対するユーノも、堂々とキングに言い返す。

「もうウザいんだってば!」

その事に更なる苛立ちを募らせたキングが、ユーノに向かってエネルギー弾を
放つ。
だが、それがユーノに届くころには、ユーノ達は姿を消していた。

「ああもう! イライラする!!」

その事に切れたキングは、なのは達を探すついでに周囲に当たり散らし始めた。





そこから僅かに離れた位置で、ユーノはなのは達を下ろすと座り込んだ。

「大丈夫? ユーノ君」
「少し、無茶をし過ぎたかな」
『ご苦労様です』

その手にはバルディッシュが握られ、ヴィヴィオが見つけた足にはマッハキャ
リバーが装備されていた。
あの一瞬ユーノは、マッハキャリバーによる加速と、バルディッシュのソニッ
クムーブを併用する事によって、辛うじてなのはを助ける事に成功したのだ。
だが、元より戦闘向きでないユーノが人二人を抱えて行うには、大きな負担と
なったのだ。

837 ◆19OIuwPQTE:2011/02/03(木) 17:50:12 ID:ycBlxCLg0

「でも、ありがとうユーノ君。おかげで助かったよ」
「どういたしまして。
 でもそれよりなのは、伝えなきゃならない事がある」

感謝もそこそこに、なのははユーノの真剣な表情に気を引き締める。

「キングと金居が手を組んだ」
「……ッ! ユーノ君たちは大丈夫だったの?」
「なんとかね。でも、おかげで魔法陣の場所がわかった」

なのははその事に、僅かに安堵する。
会場の振動はどんどん強まっている。
この分では、いつ崩壊が始まるか判った物ではない。

「それでなのは。君はこれからどうする。
 敵はキングと金居だけじゃない。まだスカリエッティ達が残っている筈だ。
 それに残り時間も少ない。
 生き残る事を優先するなら、今すぐ魔法陣へ向かった方がいい。
 それだけは言っておくよ」

その言葉に、なのはは少し思案する。
強大な敵。見つかった脱出への糸口。
自分のするべき事。護りたいモノ。
そして。

「ここで……。ここでキング達を倒す」

それがなのはの出した答えだった。

「今ここで脱出しても、キング達は会場の崩落と一緒に死ぬかもしれない。
 けど、もし何らかの形で助かったとしたら、きっとまた同じことを繰り返す。
 そんな事、私は絶対許せないから」
「……わかった。それなら、出来る限り僕もなのはを手伝うよ。
 まず、今わかってるキングの情報を、出来るだけ詳しく教えて」




掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板