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リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル13
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当スレッドは「魔法少女リリカルなのはクロスSSスレ」から派生したバトルロワイアル企画スレです。
注意点として、「登場人物は二次創作作品からの参戦する」という企画の性質上、原作とは異なった設定などが多々含まれています。
また、バトルロワイアルという性質上、登場人物が死亡・敗北する、または残酷な描写や表現を用いた要素が含まれています。
閲覧の際は、その点をご理解の上でよろしくお願いします。
企画の性質を鑑み、このスレは基本的にsage進行でよろしくお願いします。
参戦元のクロス作品に関する雑談などは「クロスSSスレ 避難所」でどうぞ。
この企画に関する雑談、運営・その他は「リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル専用したらば掲示板」でどうぞ。
・前スレ
したらば避難所スレ(実質:リリカルなのはクロス作品バトルロワイアルスレ12)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12701/1244815174/
・まとめサイト
リリカルなのはクロス作品バトルロワイアルまとめwiki
ttp://www5.atwiki.jp/nanoharow/
クロスSS倉庫
ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/
・避難所
リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル専用したらば掲示板(雑談・議論・予約等にどうぞ)
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/12701/
リリカルなのはクロスSSスレ 避難所(参戦元クロス作品に関する雑談にどうぞ)
ttp://jbbs.livedoor.jp/anime/6053/
・2chパロロワ事典@wiki
ttp://www11.atwiki.jp/row/
詳しいルールなどは>>2-5
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以上です。何か所か誤字等がありましたので、一部修正させていただきました。
禁止エリアに関しては、アイデアが浮かばなかったので、ひとまず◆Lu氏の案からアイデアをお借りしました。
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放送投下乙でした。
リニスとプレシア退場か……プレシアの最大の失敗はリニスを斬り捨てた事か……まー散々人を見下した愚者にとっては相応しい結末だろう。
そして前面に出てきたのがスカ軍団。首輪爆破オフしてくれるなんてお気遣い……ってちょっと待て、あと6時間で脱出って地味に難易度上がってねぇか?
しかもよくよく考えてみりゃ、放送10分遅れ程度の情報であんな事態察せるわけねぇって。地味に詰んだ?
……そういやプレシア直前話で金居に指示出してノリノリだった矢先での退場だったなぁ……まぁよくある話か(ねぇよ)
……しかし優勝者がアリシアになるか……これ真面目な話優勝者にとっては最悪な話だなぁ、実質優勝しても願いは叶えられず自身も消滅だからなぁ。
しかし場合によってはアーカードやナイブズやセフィロスやエネルがアリシアになっていたのか……(いやSSよく読めば、肉体もアリシアに再構成されるってあるけどね)
禁止エリア案は船着き場、映画館、温泉か……確かにこれが最後の放送ならば差し障りはないが……どうしようか?
(まぁ爆破装置がオフになっているから意味はないかも知れないけど、参加者は知らない話だからなぁ)
とはいえ違う場所でもwiki収録時に直せば済む話ですよね(極端に変な場所じゃない限り大きな影響は無いだろうし)
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投下乙です
リニスとプレシアの方が退場か
もしかしたら、とも思ったが……主催の座から転げ落ちたか
そしてスカ博士キター やっぱりお前もいたのかw
更に首輪爆破オフとかきつい事しやがったぞ
さて、これが最後の放送になるかどうか…
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キング、アンジール・ヒューレーを投下します
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アルハザードを舞台としたバトルロワイヤルという名目の、殺し合い。
プレシア・テスタロッサの手によって始められてから、既に二四時間が経過していた。
辺りは闇に包まれ、風が冷え切っている。
星々は輝いているが、それを見上げる者は誰一人としていない。
そんな空の下で、一つの建物がメラメラと音を鳴らしながら、燃え上がっていた。
静寂を破る火炎は闇を照らし、二つの人影を映し出す。
一人は、黒いマスクで顔を覆い、同じ色のスーツとマントに身を包む男、キング。
またの名を、魔王ゼロ。
本来は、世界を変えようと決意した少年、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの仮初の姿。
しかし今は、己の快楽の為に戦うカテゴリーキングの位が与えられたアンデットが、ゼロの名を名乗っていた。
その仮面を被るキングの前に立つのは、アンジール・ヒューレー。
本来は、遥か彼方の宇宙より地球に飛来した生命体、ジェノバの細胞を人間に埋め込む計画、ジェノバ・プロジェクトによって生まれた男。
しかし厳密には、ミッドチルダに流れたライフストリームと呼ばれるエネルギーから、ジェイル・スカリエッティが生み出したコピー。
アンジールは、ゼロと名乗る仮面を被った男の言葉に、困惑を感じていた。
この人物は、自分のことを『プレシア・テスタロッサ』が送り込んだ者と言った。
そして、手を組むのなら死んだ妹たちを生き返らせてみせるとも。
だが、そんなことは自分を騙す為の戯言で、本当は隙を突いて殺そうと企んでいるかもしれない。
しかし、ゼロは愛弟子であるザックス・フェアの名前や、既に折れたバスターソードの事を知っていた。
もしかしたら、この男と組めばクアットロ、チンク、ディエチの三人を、本当に生き返らせることが出来る――?
(いや、ここには奴もいた。もしこいつが奴と出会ったとすれば……!)
思い出されるのは、既に名前が呼ばれたかつての親友、セフィロス。
可能性は低いが、あの男がゼロに情報を売った可能性もある。
だが、今はそんなことはどうでもいい。
この男をどうするか。
もしも、自分を殺そうと企むのなら、答えは一つのみ。
連戦によって体に疲労を感じるが、死力を尽くせばあの奇妙な盾も砕けるはず。
自分の世界では、バリアやマバリアといった魔法も存在する。
攻撃を防いだ防壁も、それと同じ種類か。
「何を迷っている? アンジール」
アンジールが思考を巡らせていると、仮面の奥から低い声が響く。
それは鼓膜を刺激し、彼の意識を発生源に向けた。
地獄の業火を思わせるような炎を背に立つゼロの様子は、まさに「魔王」と呼ぶに相応しい。
テロリストの仮面を被るキングは、アンジールの様子を尻目に言葉を続けた。
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「先程の放送を聞いただろう? 貴様の愛する妹たちはもう誰もいない。皆、殺されたんだよ」
「――黙れッ!」
「だから決めろと言っている! 貴様は何の為に戦うか! 貴様が求める物は何か! そして、貴様は何を決意した!?」
激高は、呆気なくかき消される。
闇の中で響くゼロの言葉によって、アンジールの勢いは止まった。
表情から怒りが消えていき、再び元に戻る。
その様子を、マスクの下から眺めるキングは、笑みを浮かべていた。
しかしそれを声には出さない。
変声機があるから誤魔化せるかもしれないが、面倒は御免だ。
最も、そうなった場合はアンジールを始末すればいいだけのこと。
だがそれでは仮面ライダーカブト、天道総司の思い通りになる。
奴の狙いに嵌るのは、気に食わない。
今やるべきことは、餌をぶら下げる事。
「君が抱くクアットロへの思いはその程度か!? 君とチンクの絆はこの位で揺らぐ程度か!? 君がディエチに感じている愛情はこの程度か!?」
キングは、放送で呼ばれたナンバーズの名前を次々に言った。
そして、警戒心を解かせる為に「君」を使う。
一人一人告げる度に、アンジールの表情が崩れていった。
何ていう愚かなことか。
調べてみると、この三人はサイボーグらしい。
ならば、鉄屑で出来たガラクタの人形ということだ。
そうなると目の前にいるアンジールとは、人形にしか愛情を向けられない、愚かな男ということになるだろう。
このような奴の弟子になったザックスという人物は、哀れかもしれない。
出来ることなら、今のアンジールの顔をカメラに収めておきたいが、それは我慢だ。
もしも、タイトルを付けるのなら『ガラクタの人形を姉妹と呼ぶ、愚かで哀れな男』だろう。
仮面の下で笑みを作るキングは、愚かで哀れなアンジールを揺さぶるために言葉を続けた。
「そしてこの事実をオットーは知っている! 彼女もまた、姉妹の死に心を痛めているはずだ!」
「ッ……!?」
「君がやらずして、誰が妹を生き返らせるのだ!? 思い出せ。君にとって、妹とは何だ!」
――アンジール様が生き返らせてくれる。私は、そう信じています――
ゼロの怒号を聞いた途端、アンジールの脳裏に一つの光景が浮かび上がる。
ようやく再会できた、クアットロの姿。
そして、彼女が言った最後の言葉。
――私だけじゃありません。きっとディエチちゃんも、チンクちゃんも、そう信じているはずです――
――だからお別れは少しの間だけです。私達のためにも、アンジール様は……このデスゲームで最期の一人になってください……――
アンジールの中で駆け巡るのは、クアットロの声。
傷だらけの体にも関わらず、彼女は残る力を振り絞って、自分に託した。
クアットロと、チンクと、ディエチと、また一緒に暮らせるという願いを。
――……またお会いできる時を楽しみにしています――
彼女はこの言葉を残して、逝ってしまった。
全ては、自分の力が足りなかったせいで起こってしまった、忌々しい数時間前の出来事。
そしてプレシアの元にいるオットーも、この事を知っているはず。
彼女はきっと、いや絶対に不甲斐ない自分に失望し、憎んでいるに違いない。
だが、どんな罵りだろうと甘んじて受けるつもりだ。
二人は黙り込み、炎が燃える音だけが響く。
そんなアンジールの様子が気に食わないキングは、次のアクションを起こした。
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「…………所詮、君はその程度の男か」
「何……?」
「今の君を見たら、妹たちはどう思うだろうねぇ……?」
三回目の放送で名前が呼ばれた、キャロ・ル・ルシエの時のように、誘惑する。
今のアンジールなど、手に落ちるまでそれほど時間は要らない。
キングは確信を持ちながら、目の前の男を揺さぶり続ける。
「最も、君が一人で戦い続けるというのなら、私は別に……」
「待てッ!」
濁ったような声を、アンジールはかき消した。
仮面の下で、キングが笑みを浮かべていることを気付かずに。
「いいだろう……お前と手を組んでやる」
「良い返事が聞けて嬉しいよ、交渉成立だな」
「だが、分かっているだろうな……」
「心配は要らない。約束は必ず守る。でなければ、こんな話は持ち出さない」
アンジールは微かな可能性に賭けて、この男の提案を受け入れた。
キングが自称する魔王の名が、ゼロの名が、プレシアの配下であることが。
そして、妹達を生き返らせるという褒美が、全て嘘であることを知らずに。
屈強な兵士が、ただの人形と成り果てた事実に、キングは歓喜を覚える。
しかしそれを表に出すことは、しなかった。
「ではまずは、逃げ出したあの二人を追おう。市街地に向かうのはその後だ」
キングは提案を出すと、歩を進める。
その後ろを、アンジールは歩いた。
(ハハハハハハッ! 残念だったね、カブト。 君の狙いは外れたよ!)
心の中で大笑いしながら、キングは天道に対して侮蔑の感情を抱く。
あの男にバッグを少しだけ奪われたのは残念だが、これで御相子だ。
それ以上に、高町なのはには仮面ライダーデルタに変身するという、楽しみも待っている。
正義の味方を気取っている女が、あれを使って暴走するようなことになればどうなるか。
どうせベルトの毒が生み出す快楽に溺れ、狂った挙句に人を殺すに違いない。
ならば、その様子を携帯のカメラに残してやろう。
(そして、ウルトラマンメビウス……死んじゃったんだね、君。弱いくせに王様に刃向かったから、罰が当たったんだな!)
先程の放送で呼ばれた、ヒビノ・ミライの名前。
恐らく、自分が遊んだ際にアンジールに殺されたんだろう。
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諦めないなどと戯言を言っておきながら、この結果だ。
所詮、中途半端な力しか持たない弱者だったということ。
ウルトラマンであろうと仮面ライダーであろうと、自分に抗うなど無理だということだ。
(そういや、放送の時間が十分だけ遅れてたな……)
キングは充足感を覚えている一方で、疑問を感じている。
放送の時間が、少しだけ遅れていたのだ。
これまでは、一秒のズレもなくプレシアは情報を伝えている。
それが今回に限って、何故遅れていたのか。
(どうなってるんだ?)
一方で、アンジールもまた考えている。
先程の放送では、七人の名が呼ばれた。
クアットロの名前以外は、呼ばれても関係ない。
自分のやるべき事はただ一つ。
愛する妹達の命を、取り戻すこと。
だが、アンジールにとって気がかりなことが一つだけあった。
それは、呼ばれなかった名前が存在すること。
(あの男……生きていたのか)
三度に渡って戦いを繰り広げた、あの男が生きていたこと。
自分と同じように、望まぬ運命によって望まぬ力を得てしまった、あの男が生きていたこと。
自分の境遇と重なって見えた、あの男が生きていたこと。
そして、自分の手で望まぬ運命を断ち切った、あの男が生きていたこと。
妹達を守る盾の役割を託した、あの男が生きていたこと。
(いや、もう関係ない……俺は悪魔になると決めた。ならば、あの男も例外ではない)
アンジールは心の中で呟くが、あの男の顔が頭の中で思い浮かんでしまう。
振り払おうとするが、消えることはない。
続くように、あの男の声が聞こえた。
――そんな方法で家族を守ったとして……その人達が喜ぶのか!?――
――やっぱ……馬鹿みてぇか、俺?――
――……もう無理なんだ……意志だけじゃあ抑えきれない……もう言うことを聞かない……今すぐにでも離れてくれないと……僕は、君を、殺してしまう……――
それらは、アンジールの中で次々と蘇っていく。
覚悟はとっくに決めたはずなのに、何故こんな声が聞こえるのか。
今の自分にとっては、雑音に等しい。
消えろ。消えてしまえ。
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――だって君も見逃してくれたじゃん――
――ついさっきビルに叩き付けられた時のことだよ。……確実にトドメを刺せる状況だったのに君は攻撃しなかった。その借りを返しただけさ――
アンジールは念じるが、消えることはない。
それどころか、声はより一層増えていく。
そして、苦笑を浮かべるあの男の顔も。
声に比例するかのように、疑問も徐々に増えていく。
だが、今はそれに気を取られている場合ではないはずだ。
やるべき事は、妹達の蘇生。
アンジールの頭の中で浮かぶ男の顔。
もしも、もっと早く出会えてたら手を組めたかもしれない男。
戦場にも関わらずして、自分を助けようとした男。
そして、今もどこかにいるはずの男。
――ヴァッシュ・ザ・スタンピードの顔と声が、アンジールの中で浮かび上がっていた。
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【2日目 深夜】
【現在地 D-2】
【キング@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康
【装備】ゼロの仮面@コードギアス 反目のスバル、ゼロの衣装(予備)@【ナイトメア・オブ・リリカル】白き魔女と黒き魔法と魔法少女たち、キングの携帯電話@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、おにぎり×10、ハンドグレネード×4@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ボーナス支給品(未確認)
【道具①】支給品一式、RPG-7+各種弾頭(照明弾2/スモーク弾2)@ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL、トランシーバー×2@オリジナル
【道具②】支給品一式、菓子セット@L change the world after story
【道具③】支給品一式、『SEAL―封印―』『CONTRACT―契約―』@仮面ライダーリリカル龍騎、爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具④】支給品一式、フリードリヒ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具⑤】支給品一式、いにしえの秘薬(空)@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER
【思考】
基本:この戦いを全て無茶苦茶にする。
1.まずはアンジールと共に天道総司を追跡する。
2.他の参加者にもゲームを持ちかけてみる。
3.上手く行けば、他の参加者も同じように騙して手駒にするのもいいかも?
4.『魔人ゼロ』を演じてみる(飽きたらやめる)。
5.はやての挑戦に乗ってやる。
【備考】
※キングの携帯電話には『相川始がカリスに変身する瞬間の動画』『八神はやて(StS)がギルモンを刺殺する瞬間の画像』『高町なのはと天道総司の偽装死体の画像』『C.C.とシェルビー・M・ペンウッドが死ぬ瞬間の画像』が記録されています。
※全参加者の性格と大まかな戦闘スタイルを把握しています。特に天道総司を念入りに調べています。
※八神はやて(StS)はゲームの相手プレイヤーだと考えています。
※PT事件のあらましを知りました(フェイトの出自は伏せられたので知りません)。
※天道総司と高町なのはのデイバッグを奪いました。
※デイバッグを奪われたことに、気付きました。
※十分だけ放送の時間が遅れたことに気付き、疑問を抱いています。
【アンジール・ヒューレー@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】
【状態】疲労(中)、深い悲しみと罪悪感、脇腹・右腕・左腕に中程度の切り傷、全身に小程度の切り傷、願いを遂行せんとする強い使命感
【装備】リベリオン@Devil never Strikers、チンクの眼帯
【道具】無し
【思考】
基本:最後の一人になって亡き妹達の願い(妹達の復活)を叶える。
1.ゼロ(キング)と共に、参加者を殺す。
2.参加者の殲滅。
3.ヴァッシュのことが、微かに気がかり。(殺すことには、変わりない)
【備考】
※ナンバーズが違う世界から来ているとは思っていません。もし態度に不審な点があればプレシアによる記憶操作だと思っています。
※『月村すずかの友人』のメールを確認しました。一応内容は読んだ程度です。
※オットーが放送を読み上げた事に付いてはひとまず保留。
※キングが主催側の人間だと思っています。
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これにて、投下終了です。
誤字・脱字・矛盾点がありましたら、ご指摘をお願いします。
今回のサブタイトルの元ネタは「伝説のオウガバトル」の隠れマップ
アンタンジルで使われたサブタイトルからです。
そして、このロワの皆様へ。
自分はこのロワで作品を参加させていないにも関わらず
死者スレにて、自作品「地獄の四兄弟」からネタを使って頂いて
誠にありがとうございました。
心より、お礼を申し上げます。
そして差し支えなければ、これからもよろしくお願いします。
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投下乙です。あーやっぱりあんじーるはきんぐにだまくらかされたかー。
一応、キングは放送の遅れが気にしていたが……まさか主催陣で騒動が起こっている事なんて夢にも思わないだろうなぁ。
しかし天道達を追跡するのは良いが……どっちに向かうんだ?
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投下乙です
まぁやっぱりそうなるよなぁ…アンジールは完全に人形に成り果てたか
キングも放送遅れに気付いたけど…まだヒントが足りないか
で、キング…クロックアップで逃げたカブトをどっちに向かって追跡するんだろう?
あと支給品奪われた事にはもう気付いてるのか?
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投下乙です
アンジールはこの段階だとこの判断は正解だと思うな
今の状態で戦ったらアンジールの勝ち目薄だし、なにより生き残ることは大切だよ
>>430
気づいているよ
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投下乙です
まぁ、この段階でキングに喧嘩売ってもな…
アンジールが対主催になる道はあったんだがクア姉さんが断った時点で…
優勝狙いならこの判断は…でも1対1でキングに勝てるのか?
キングは放送の遅れには気が付いたが…
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高町なのは(StS)、柊かがみ、天道総司分投下します。
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Chapter.01 EGO〜eyes glazing over
「あれ……ここは……?」
気が付けば柊かがみは暗闇の中にいた。
「確かホテルで……」
冷静に意識を失う前の事を思い出そうとする。だが、何故かこれまでにあった事を思い出す事が出来ない。
「ダメ、思い出せない……」
かがみは周囲を見回した。暗がりだったが為に良くは分からなかったが、周囲には何人かの人間が倒れていた。かがみはその中の赤い髪の少年に触れるが、
「し、死んでいる……!?」
躰は冷たく、生気を感じる事は出来なかった。
「じゃ、じゃあ……もしかしてこの人達はみんな……」
倒れている者達は全て死体だった。
「なんなのよ一体……一体誰がこんな事を……?」
そう口にはするものの、それ以上考えようとはしなかった。それはまるで、脳内で警告を発していたかの様に――
それ以上思い出してはいけないと――
それでも何もしないわけにはいかない。かがみは慎重に周りを探り――それを見つけた。
「つかさ……」
そこにはかがみの双子の妹である柊つかさの死体があった。そしてすぐ傍には、
「浅倉……!」
頭部こそ失っていたがかがみにはそれが何かすぐに理解した。つかさを惨殺した浅倉威の死体であることを――そう、かがみは自分の眼前でつかさが浅倉に殺された時の事を思い出したのだ。
「な……何勝手に死んでいるのよ!! つかさを殺しておいて勝手に死んでんじゃないわよ!!」
胸に湧き上がるのは憎悪と憤怒、その感情が赴くままにかがみは物言わぬ骸を足蹴にする。
何度も何度も、何度も何度も、骨が折れる音がしようとも、内臓や筋肉が潰れる音がしようとも止まる事はない。
頭の中から『もうやめるんだ!』という声が響いても、
脳裏に蛇の甲冑を身に着けた者が桃色の髪の女性と栗色の髪の少女を襲うヴィジョンがよぎっても決して止まらなかった。
「はぁ……はぁ……」
そうして思う存分亡骸に暴行を加えたもののかがみの心は決して晴れなかった。むしろ逆に背筋に強烈な寒気が襲って来たのだ。
「なんなのよ……一体……私が一体何をしたっていうの……? 悪い夢なら覚めてよ……」
そんな時、脳裏に1人の少女の姿が浮かんだ。
「こなた……何処にいるの……?」
かがみはいるかどうかもわからない友人である泉こなたの姿を探した。
『カノジョニアッテドウスル? メントムカッテカオヲアワセルコトガデキルノカ?』
頭の中から声が響いてくる。
「うっさい……」
『オモイダセ、オマエハイママデナニヲシテキタノカヲ?』
「うっさい!」
『オマエハモハヤカノジョノ『トモダチ』デハナイ……タダノ『■■■■■』ダ!』
「黙れー!!」
頭から響く声を叫ぶ事で強引にかき消した。
「私は悪くなんかない……私が悪いわけじゃ……」
息切れしながらも周囲を見回す。そして、
「こなた……」
青い髪の少女――こなたの後ろ姿を見つけたのだ。かがみはすぐさまこなたの所へ向かう。
「こなた……良かった、無事だったのね……」
その声に反応したのか、こなたはゆっくりとかがみの方を向き――
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――次の瞬間、その首が落下した。
「え?」
かがみは何が起こったのか理解が出来なかった。そして――
「ああ……あぁーーーーーーー!!」
慟哭が暗闇に響き渡った――
「本当に五月蠅い餓鬼やな……」
と、立ちつくしたままのこなたの首無し死体の後ろから血に濡れた小刀を構えた関西弁の女性が現れた。
「あああああ……あんたがこなたを!」
かがみは目の前でこなたを斬首した女性を睨み付けるが、
「いや、本当はアンタの妹の方が良かったんやけどそうそう都合良い話にはならんからな……で、都合良くアンタの友達がいたっちゅうわけや」
その女性は全く悪びれる事無く言い放った。しかもその口ぶりでは本当ならばつかさを殺すつもりだったというではないか。
「何を言っているのよアンタ! こんな事しておいて只で済むと思って……」
「その言葉そっくりそのまま返すで」
かがみの怒号を女性は平然と返す。
「は? 何を言っているの?」
「質問を質問で返す様やけど……アンタ、さっき浅倉を何で足蹴にしたん?」
「何でって浅倉がつかさを殺したからよ! 本当だったら私が殺す筈だったのに……」
「つまり、家族や友人が殺されたからというわけやな。だったら私が何故こないな事したかわかるよなぁ?」
「え……?」
「アンタ……私の目の前で何をしたのか忘れたのか?」
「何の事よ……?」
かがみはその女性が何を言っているのかを未だに理解出来ないでいた。
「アンタの足下よう見てみ」
「足下……?」
と、足下に桃色の髪の女性の死体があった。
「これは……」
その死体を見て、かがみはこれまでに起こった事、そして『その瞬間』を思い出す。
「そうや……アンタが私の大事な大事な家族……シグナムを殺したんや! よりにもよって私の目の前でな」
『あー、あいつ、本当にイライラするわね』
そう言ってかがみは幸せそうにしている少女に対し攻撃を仕掛けた――その結果、彼女を庇う様に桃髪の女性シグナムがその攻撃を受けた。そしてその少女が彼女の名を叫ぶもののかがみは幾度と無く攻撃を続けた。
無論、シグナム自身深手を負いながらも応戦を続けた。しかし結果は惨敗、
『やった!! 勝った!! 殺した!!
あはははははははは!!! これで静かになったーーー!!!
あははははははははははははははははは!!!!!!!!!!』
その場にはもう1人銀髪の男性もいた為、かがみは戦いを続けていた。その一方、
『シグナムーーーーーーー!!!』
少女が悲壮な叫び声を響かせていた。しかしそれはかがみにとって達成感と充実感、言うなれば悦びを与えていた。そして笑いながら少女と銀髪の男性を仕留めるため動こうとしたが、
『妖艶なる紅旋風』
少女による魔法の言葉により世界は真っ赤に染まった――
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「あああああ……まさか……」
「どうした? 思い出せたか? そうや、アンタが私の大事な家族を奪ったんや」
「え……でもちょっと待って……」
だが、冷静に考えると何かがおかしい。
確かに目の前の女性はあの時少女が持っていた小刀を持っていた気がするし、目の前の女性の声が少女のものと同じなのも別段問題はない。
しかし、あの時の少女はどう見ても自分よりもずっと子供、見た目だけで言えばこなたと大差無いはずだ。しかし目の前の女性は自分より若干年上だ。
「アンタが何を考えているかは知らんし興味はない。重要なのはアンタがシグナムやエリオ達を殺したという事実や」
「う……」
かがみはふと後ろを振り返る。幾つかの死体の中に最初に見た赤髪の少年ことエリオ・モンディアル、眼帯の少女チンクの死体があるのが見える。どちらもかがみの手によって死を迎えた死体だ。
「ち……違う……アレは……」
「それだけやない。そこにある死体は全部アンタが殺した奴等や」
「え……?」
そう、かがみの周囲にはかがみ自身名前を知らない者もいるが他にもシェルビー・M・ペンウッド、金居、セフィロス、アレックス、L、万丈目準、ヒビノ・ミライ、チンク、スバル・ナカジマ、相川始、ヴァッシュ・ザ・スタンピードの死体があった。
「ちょ……ちょっと待って……百歩譲ってエリオやシグナム……それからそこの女の子までは私が殺したとしても……他は違うわよ……」
と、黒い服の少年こと万丈目の死体を指し、
「コイツなんか私にカードデッキを押しつけて殺そうとしたのよ、なんで私が殺したって事になるのよ?」
「アンタは押しつけられる前どうするつもりやった? 2人で協力してデッキのモンスターをどうにかしようと考えたんか? 違うやろ?」
「それは……」
「アンタはモンスターの餌にするつもりやったやろ? もし、アンタと万丈目の立場が逆でアンタが狙いに気付いたらどうするつもりやった?」
「デッキを押しつけて……逃げ……」
「せやな、普通はそうする」
「論点ずれてない? それでどうして私が殺したと……?」
「普通の性格やったら、人を殺したらショックを受ける……それに万丈目の奴他に使える武器何も無かったんやろ? そんな状態で凶悪な人間に遭遇したらどうなる?」
人殺しの経験がない人間が人を殺した場合、精神に大きな傷を受ける。当然後々の行動に影響を与えるのは言うまでもない。
また、万丈目はデッキ以外に使える武器を所持していなかった。装備と精神状態が悪化している状態では生き残れる道理は全く無い。
「だ、だからってそれは私のせいじゃ……」
「違うな、間違っているで。あの時点ではまだ猶予時間はそれなりに残っていた筈や。それまでにモンスターを倒せば2人とも生き残れた。アンタ自身が生き残れた事がその証拠や」
事実、デッキを押しつけられたものの餌にされる前に銀色の巨人メビウスがモンスターを倒したためかがみは生き残れた。
「つまり、アンタが餌にしようとせんかったら2人とも生き残れたという事や、アンタが万丈目を殺したというのはそういう事や」
「そ、そんなの屁理屈よ! 実際そんな都合良い話なんて無いでしょ」
「ああ、そうや。これは一番極端なパターン、実際にそうかなんて私も知らん。万丈目が本当に悪人やったのかも知れんからな」
「そうよ! 万丈目は悪人よ! だから悪くなんか……」
「けどそれはアンタが決める事やない。確実なのは万丈目が危険なカードデッキをアンタに押しつけたという事実だけや、万丈目の人格や真意は万丈目以外にわかるわけがない」
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彼女の指摘はかがみが今までに感じた万丈目への憎悪の正当性を完全に否定するものだった。かがみ自身認めたくは無かったが返す言葉が見つけられない。
「他の連中も大体同じや、アンタが襲った事が後々になって影響を及ぼした可能性は否定出来ないな」
「それは……」
かがみは金居、ペンウッドの死体を見る。あの時の事を冷静に思い出す限り、一歩間違えれば2人を殺していた可能性は多分にあるし、もしかしたらあの直後に死んでいた可能性はある。
勿論殺したという感触はなかったがそれはあくまでもかがみの主観、見えていない所で何が起こったかなどかがみにわかるわけもない。
セフィロスとアレックスにしても同じ事だ。目の前の女性の攻撃に巻き込まれて死んだ場合下手人は彼女という事になるがその切欠を作ったのは他でもないかがみだ。
また、Lに奪われたデッキを後々回収出来た事実から考え、L自身カードデッキのモンスターに襲われ負傷しその傷が元で数時間後に死亡したという可能性があるだろう。
元々かがみがデッキを持っていたという事実からこれもかがみの行動が影響したと言えなくもない。
ミライについてもある程度ダメージを与えた以上、後々の影響は否定出来ない。
スバル、ヴァッシュ、始に関しては彼女自身戦いをし向けていた為言うまでもない。
以上の事から少々乱暴な理論ではあるが彼等が死亡したのはがみの行動による可能性があると言えるのだ。
「うう……」
「それにな、まさかこれだけやと思っているんか?」
「え?」
「当たり前やけどあんたが殺した奴等にも友達や家族、もしかしたら恋人がいたかもしれん。その死を知って殺し合いに乗った可能性だってある……」
エリオ達の死を知り悲しみ嘆き怒り、それが元で修羅の道へ落ちた者が出てくる。そしてその者達は多くの参加者を殺していくだろう。
では、その元凶は何処にあるのだろうか? 修羅の道へ落ちる切欠を作ったかがみでは無いだろうか?
「そ……そんなのその人が勝手にやっていることでしょ! そこまで私に言われたって……」
「ほーこの期に及んでまだ自分を正当化するか、まぁアンタの言う通りこれは半分は言いがかりに近いと思う。せやけど、自分の行動は何がなんでも正当化するのに、相手の行動は正当化させへんってちょっと我が儘が過ぎると思わへんか?
大体、アンタがエリオやシグナム達を殺した以上、それが切欠でアンタを殺そうと考える事は流石に否定したらあかんやろ?
アンタがつかさを殺されて浅倉に憎しみやら殺意やらを抱いているわけやしな」
「だって……」
「それにな……そのつかさが死んだのだってアンタのせいかも知れないんやで」
「は?」
つかさが死んだ原因は自分? 何を言っているのだろうか? つかさは浅倉によって一方的に惨殺された筈だ、何処に自分の責任があるというのだ?
「そもそもの話、浅倉があんたを恨んであんたを苦しめる為にやった可能性だってあるやろ、あんたが私の目の前でシグナムを殺した様にな」
「ちょ……何を言っているのよ……浅倉が何で私を苦しめ……」
「確かその前にレストランで戦ったやろ、最初に仕掛けたのは誰や?」
「それは……」
レストランでの戦いを思い出して欲しい。確かに浅倉は戦闘目的でレストランを燃やし参加者を呼び寄せ、それに惹かれ始とかがみがやって来た。
しかし、あの戦いで最初に仕掛けたのは始でも浅倉でもなくかがみだ。始にはモンスターを、浅倉には機関銃による銃撃を仕掛けた。
戦いの切欠など問題ではない、浅倉が最初に奇襲を仕掛けたかがみを強く意識したという可能性は多分にあるだろう。
そして、つかさとかがみは双子であるが故非常に似ている。浅倉がかがみを意識しつかさに手を掛けたという説は大いにあり得る事だ。
「そんな……まさか……そんな事って……」
「曖昧な言い方はもう止めようか……ハッキリと言ってやる――
――アンタが自分の妹である柊つかさを殺した――」
-
「あああぁ……浅倉じゃなく……私が……つかさを……そんなことって……」
今までのかがみであれば感情的でも何でも否定しただろう。しかし、ここまでの話や自身の行動を振り返れば振り返る程、それらが今の結果を引き起こした可能性を強めてしまう。
故に最早かがみに女性の言葉を否定する事は出来ない。
「さてと……」
「……いっそ殺してよ……その刀でひと思いに……」
「何で私があんたの言葉に従わなあかん? そうやなぁ……あんた元の世界に家族や友達がいたよなぁ」
「!?」
その言葉から彼女が何を考えているのか想像がついた。
「ままままままままさか……父さんや母さん達、それにみゆき達をををを……」
「アンタの目の前で1人1人……」
「そ、そんなどうし……いや……そんな事して許されると思っているの……? そんなの私と同じ只の『人殺し』じゃない!!」
「違うな、アンタはその罪から目を背け続けていたやろ。けど私は違う、私は自分の……いや家族の罪まで全部含めて背負う覚悟がある!」
確かあの三文芝居を聞いた限り人殺しの罪を犯したシグナムを少女が受け入れていた様な会話だった。
それから考えても目の前の彼女が家族の罪まで背負う覚悟を持っており、同時に自身もまた家族の為に罪を犯す覚悟が出来ている事は理解出来た。
「そ……そんな……」
「安らかな死など与えへん……私やシグナム達が受けた苦しみ、存分に受けてもらう……恨むのやったら自分の愚かな行動を恨むんやな……まずは下手に抵抗されへんようその両手両足を斬り落とそうか……
まぁ、もしかしたらそれでショック死するかもしれへんけど……その時は私の読みが甘かったというだけの話や」
そうして、女性は小刀を構えゆっくりとかがみに近付いていき、遂にその小刀を振り下ろした――
どうしてこんな事になったのだろうか――
そんな事は考えるまでもない、因果応報にして自業自得でしかない――
だからこそ彼女の行いに関しては仕方の無い事かもしれない――
それでも幾ら自分もやった事とは言え、自分の行動と関係の無い家族や友人達が殺されて良いわけがない――
いや、それを望む事すらも今更自分勝手な理屈なのだろう――
悪い夢ならば覚めて欲しい――
だが――
この夢はまだ終わらない――
-
Chapter.02 Heavenly Stars
「やっと……会えたね……」
『はい、マスター』
高町なのははインテリジェントデバイスにして自身の相棒レイジングハートを手に感慨深い表情を浮かべていた。
放送が終わり、かがみから事情を聞いた後すぐに動き出さなければならない。故に、放送前に改めて自身の手持ち道具を確かめていたのだ。
ちなみにデイパックの中にあった仮面ライダーへの変身ツールであるデルタギアに関してはその手の道具に関しての知識が一番深い天道総司に渡しておいた。
その最中デイパックを探って見つけたのが前述のレイジングハートである。デイパックの奥の奥に埋もれていたが為発見が遅れていたのだ。
そしてデイパックの中にはヴィータのデバイスであるグラーフアイゼンも見つかった。
一方、天道のデイパックの中にチンクが使う武器であるスティンガーを確認した。現状の手持ち道具はこれで以上である。
今現在天道は見たところ放送を待ちながら身体を休めている模様。とはいえ、彼の表情を見る限り全く油断は見られない。不測の事態が起これば何時でも動けるだろう。
そしてなのはの傍らではかがみが眠っている。なのはの治療魔法やデュエルモンスターズの魔法カードのお陰で死に至るダメージ自体は回復出来た。
とはいえ未だ全快には至らず、仮に傷が治った所で腱を切断された手足の機能が回復するかどうかは不明瞭だ。
その一方、なのはは手元にあるデバイス3機からこれまでの情報を整理する事にした。レイジングハートと話している内にデバイス達が何か記録しているのではと考えたのだ。
思えばこの6時間は殆どアンジール・ヒューレーやキングに振り回され殆ど何も出来なかった。他所でも殺し合いが繰り広げられている事を踏まえればどんな小さな情報でも欲しい所だ。
まず、ケリュケイオンから得られた情報だ。とはいえケリュケイオンは比較的早い段階でなのはと再会している関係もあり得られた情報は他2機より少ない。
とはいえ、全くというわけではない。ケリュケイオンの支給先はどうやらキャロ・ル・ルシエの知り合いという事がわかった。その後、ある人物がその参加者『喋るトカゲ』を喰うために襲撃したらしい。
しかし、その際に別の参加者が『喋るトカゲ』を助けたため事なきを得た。その後両名が自己紹介した事でアグモンとヒビノ・ミライという名前が判明した。
ここまでの話からなのはは前述の人物が誰なのかを推察する事が出来た。
武蔵坊弁慶は黄色の恐竜を喰おうと仕掛けた際に銀色の鬼によって妨害されたと語っていた。
つまり、ケリュケイオンの支給先は『喋るトカゲ』ことアグモン、アグモンを襲った人物が弁慶、それを助けたのが銀色の鬼ことヒビノ・ミライという事だ。
その後、アグモン達はキャロに似た声に惹かれ学校へ向かいクロノ・ハラオウンそしてヴィータと遭遇したらしい。しかしその時、凶悪な参加者が現れ戦闘になりその際にアグモンが殺害された事までは確認出来た。但し、残る参加者の生死は不明。
そしてその学校になのは達が辿り着き以後はペンウッドの手を経由してなのはの手に渡ったという事だ。
ちなみにケリュケイオンの記録にて殺害者が『インテグラルにくれてやれば、まあ、喜ぶか』と口にしていた事からその人物はアーカードだという事が推測出来た。
そしてなのは達が既に得ていた情報から判断してアーカードによってクロノとアグモンが殺され、ヴィータとミライは離脱。アーカードは何故かクロノの遺体を持ってそのまま移動したという事が推測出来た。
-
続いてグラーフアイゼンからの情報だ。グラーフアイゼンの支給先は危険人物である神父アレクサンド・アンデルセンだ。
アンデルセンは最初クアットロを襲撃したがその時にアンジールによって阻止されたという話だった。
但し、アンデルセン本人は完全な殺人鬼ではなくプレシア打倒を考えていたらしい。それ故にその後に出会ったヴァッシュと共闘する事にした模様。なお、このヴァッシュという人物は誰も死なせまいと行動をしていたらしい。
ところがそこに再びアンジールと遭遇、殺し合いに乗ったアンジール、そのアンジール達を殺そうとするアンデルセンだったがヴァッシュのお陰で何とか誰も死なす事無くアンジールを無力化した。
が、そこにアーカードの放送が鳴り響き、アンデルセンは2人を置いてその場所へ移動しアーカードとの激闘を繰り広げたものの巨大な光によって戦いは中断された。
その後、アンデルセンはチンクを襲撃したがそこにまたしてもアンジールが助けに入り両名は激闘を繰り広げた。だが、そこに炎の巨人の劫火に灼かれアンデルセンは死亡、その後はアンジールに回収された。
それ以降に関してはレイジングハートと重複するため、ここで話を区切りレイジングハートからの情報に移す。
レイジングハートの支給先はクアットロ。当然危険人物だと分かり切っていた為全く反応はしなかった。
前述の通りクアットロはアンデルセンの襲撃に遭いアンジールに救助されたがその際にレイジングハートはアンジールに渡された。そしてクアットロと共謀しシャマルを騙した後、アンジールは単独行動を取りアンデルセン及びヴァッシュと遭遇。
その為、アーカードの放送までの行動については前述の通り。その後、ヴァッシュもその場を離れたらしくアンジールは1人置き去りにされた。
そして放送でディエチの死を知ったアンジールは知り合いらしいセフィロスと八神はやてと遭遇。アンジールははやてを殺害したがその時にセフィロスが豹変したらしい。もっともセフィロスはこの場ではアンジールを殺そうとはしなかった模様。
その後、チンクを助けるためにアンデルセンと交戦したが炎の巨人の劫火によりチンクとも離れ離れになったらしい。
それから数時間彷徨い続け再びヴァッシュと再会。しかしその時のヴァッシュの様子は違っていて自身の強大な力を制御出来ず暴走状態になっていたらしい。
だが、なんとかヴァッシュの腕を切り落とす事でそれを止めた。但し、放送で呼ばれていなかった事から生存している模様。
そしてスーパーでなのは達と遭遇し、自身とグラーフアイゼンの入ったデイパックがようやくなのはの手に戻ったという事だ。
3つのデバイスから得られた情報は相当なもの。しかし、その中身を吟味する事である程度見えてくる事がある。
その中で現状一番重要なのがアンジールの情報だ。アンジールはクアットロ、チンク、ディエチの兄としてジェイル・スカリエッティの所にいたらしく、妹達を守る為に殺し合いに乗っていたとの事だ。
しかし、その3人の妹は既に死亡済み。それによりアンジールは修羅の道に落ちたらしい。
都合良くキングとアンジールが戦ってくれれば良いが過度な期待は出来ない。恐らく天道もその可能性は考えているだろう。両名が共闘する事になれば厄介なのは確実だ。
そのアンジールと関わった人物で今現在も生存しており重要な人物がヴァッシュだ。彼の性格は善良らしいが暴走する危険な力を有しておりそれにより誰か殺害したらしい。今現在も生存しているものの正直読み切れない所だ。
-
そんな中――
「あの銀色の鬼……ううん、ヒビノ・ミライ君だったかな……」
『彼がどうかしましたか?』
「アンジールを追った筈だったのに戻ってこなかった……」
この時点ではまだ放送が流れていない為断定は出来ない。しかし、状況から考えてアンジールによって惨殺された可能性が高い。
「もしもあの時、ちゃんと彼と話を出来ていたら……」
『仕方ありませんよ、緊迫していた状況でしたから』
「違うの、もっと早くケリュケイオンから話を聞いていたら……」
そもそもの話、なのはが銀色の鬼ことミライを警戒していたのは金居と弁慶から危険性を指摘されていたからだ。勿論それ自体は別段問題ではない。
が、ケリュケイオンからの情報を統合すればそれが間違いなのはほぼ明白だ。それを把握していたならば遭遇時に別の対応が出来た可能性はある。
つまり、ミライを死なせずに済んだ可能性もあったという事だ。
緊迫していた状況だから仕方がない? 確かにそういう見方はある。だが今回に関しては果たしてそうだろうか?
思い出して欲しい、ケリュケイオンがなのはの手に渡ったのは10数時間も前、ケリュケイオンから話を聞く機会は幾らでもあった筈だ。
何も得られないと思った? それこそ馬鹿げている。学校での惨劇の場に居合わせた以上、それに関する情報を得られた可能性は高い。
では何故それをしなかったのか?
1つ目として前述の通りケリュケイオンは一度ペンウッドの手に渡ってからなのはに渡された。つまり数時間のタイムラグがあったが為に学校での惨劇の事が頭から抜け落ちたのだ。
2つ目としてケリュケイオンを手にしてからはスペック確認を優先した為、それにより話を聞く事を怠ってしまったという事だ。それ以降は様々な事が起こり優先すべき事項が数々と出てきたために忘却の彼方に置かれてしまったということだ。
脳裏に去来するのはジュエルシード集めをしていた時、ジュエルシードの暴走によって海鳴市に巨大な大樹が現れた時の事だ。
実はなのははあの時、1人の少年がジュエルシードを持っていた事をある程度察知していた。にもかかわらずその時に特に言及しなかったが為に暴走を止められず大惨事を引き起こす結果を引き起こした。
勿論、あの当時はまだ魔法と出会って間もなかったし、それに加え連日のジュエルシード回収で疲労していた事もあった為ある程度は仕方が無かったと言える。
それでもその一件が自分なりの精一杯ではなく本当の全力でジュエルシード集めをする決意を固めさせた。無論、同じ事を引き起こさないためである。
だが、果たして今それが出来ているだろうか? 本当の全力ではなく自分なりの精一杯レベルでは無かったのだろうか? 現状を見る限りあの時と比べて進歩したとは言い難い。
『仕方が無い』の言葉で片付けて良いのは本当に全力を出した時だけだ。しかし、今回は違う。打てる手が十分にあった以上それを打たなかったのは怠慢以外の何物でもない。
少々乱暴な言い方ではあるがミライを殺したのはなのは、そういう解釈だって出来るという事だ。
そんな中、傍らで眠っているかがみを見る。かがみに関わる問題にしてもなのはが全く無関係というわけではない。
エリオを殺した事で動揺しているかがみへの対応を誤ってしまい、自身に支給されていたデルタギアを奪われる結果を引き起こしている。
状況から考えてシグナムを殺した事に関してはデルタギアの暴走によるものと考えて良い。
それ以降に関しては現段階では情報不足だが2人殺したともなれば精神に負う傷は相当なものなのは確実だ。
勿論、これらの事に関しても客観的に言えば『仕方がない』で片付ける事も出来る。 だが果たして本当にそうだろうか?
もし、かがみへの対応を誤らなければ? もしデルタギアを奪われなければ? 恐らくシグナムがかがみによって殺される事は無かっただろうしその後もチンクを殺す事は無かっただろう。
いや、それ以前に最初の銃声が聞こえる前に行動を始めていればエリオを死なせる結果すらも避ける事が出来た可能性もあっただろう。
そう、かがみをここまで追いつめてしまい多くの参加者を死なせてしまった要因の1つはなのはの行動によるものだという事だ。
-
なのはの脳裏にティアナ・ランスターとの模擬戦での一件が思い返される。
それはなのはの教導を無視して危険な行動を取ったティアナを一撃で仕留めた後、無抵抗状態になった彼女にもう一撃加えた時の一件だ。
この時のなのはの行動には明確な理由があったわけだがそれに関してはこの場では一切考慮しない。
そもそも、ティアナがそこまでの行動に至った動機を考えてみて欲しい。ティアナは兄の無念を晴らそうと強くなろうとしていた。
しかし周囲には才能に溢れた者が多すぎた。それ故にティアナは焦りホテル・アグスタでは誤射するという事態を起こしたのだ。
その失敗を取り返すために無茶な特訓を続け模擬戦での暴走に至ったというわけだ。
おわかりだろうか? なのは自身がもっと早くティアナの暴走を諫めきちんとした対話を行っていれば模擬戦での暴走は起こらなかっただろう。
更に言えばその後の対応に関しても正しい対応が出来ていたとは正直言いがたい。結果だけを見れば場は収まったわけだがそれはシャリオ・フィニーノ達が上手く立ち回ってくれたからに過ぎない。
しかし考えてもみて欲しい、それは本来ならばなのは自身が行わなければならなかったのではないか?
更に言えば、今回の対応が本当に最善だったのか? もう少し上手いやり方があったのではないだろうか?
あの時はガジェットの反応があったからそれを優先しなければならなかったのでは? 確かにそういう見方は出来る。
だが実際はそうではない。なのはは頭を冷やす必要性があると対話を翌日にしようとしていた。つまり、対話する気ならばもっと早く出来たという事だ。
それ以前に最終的に事が綺麗に纏まったのはある意味では幸運だったからでは無いだろうか? 場合によっては上手くいかず拗れた可能性だってあっただろう。
つまり――この一件が取り返しのつかない結果を引き起こしていた可能性だってあるという事だ。それこそ生死に関わりかねない程の――
そして、それと似た事をかがみを通じて繰り返してしまったという事だ。
エリオを殺した事でどれだけ精神的な負担がかかったのだろうかをちゃんと考えただろうか?
いや、結論から言えば考えていなかったと言わざるを得ない。あの場に遺体が無かった事からなのはは最初かがみがエリオを殺した事を信じなかった。故にそれは無いと頭から決めつけてしまったのだ。
そして放送でエリオが死亡した事が伝えられてもかがみが殺したという事に関しては深く考えていなかっただろう。その事を理解出来たのはモンスターとの大軍との戦闘を経た2度目の放送後の情報交換時だ。
結局の所、なのははかがみをデルタギアで暴走した不幸な少女としか見ていなかったという事だ。こんな甘い見通しで正しい対話など出来るわけがないだろう。
勿論、どういう風に対応すれば良かったかは今となっては誰にもわからない。しかし、その対応の甘さはまさしくティアナの一件と重なると言える。
しかもあの時とは違い今度はかがみを暴走させ何人もの死者を出してしまい取り返しの付かない事態を引き起こしてしまった。
勿論、暴走し何人も殺したかがみに責任があるのは言うまでもない。しかし何度も書く様に対応を誤ったなのは自身にも責任はあるだろう。
どちらにしても、かがみが目を覚ましたら今度こそちゃんと彼女と向き合わなければならないだろう。自分なりの精一杯ではなく、本当の全力で――
-
そんな中、天道の方に視線を向ける。自分とデバイスの情報交換の方は聞こえていたと思うが特に何か言うわけでもなく沈黙を保っている。一体彼は何を考えているだろうか?
思えば何度と無く彼には助けられ続けた。商店街での乱戦や先のアンジール戦、そしてかがみの治療、何れも彼の存在無くしては最悪な事態を迎えていただろう。
更に言えばヴィヴィオの話を聞いて此方の心中を察しヴィヴィオ救出を優先してくれてもいる。
その一方で自分は何をしていたのだろうか? 乱戦時にはフリードリヒを暴走させ、戦いは殆ど天道任せ、更に言えばフリードをキングに奪われ人質にされてしまう体たらく。せいぜい治療やサポートしか出来ていなかっただろう。
管理局のエース・オブ・エースと呼ばれておきながらあまりにもお粗末と言わざるを得ない。所詮はまだ19歳の小娘でしかなかったという事だ。
レイジングハートが無かったから本来の力が出せなかった? そんなのは言い訳にもならない。天道はカブトのベルトが無くても十分に戦っていたし、かがみを助けた時に関してはカブトの有無は関係ない。
断言しても良い。天道は自分達よりもずっとずっと強いと――彼の行動はそれを体現している。
だが何時までも彼に頼り続けてはいけない。そもそもこの殺し合いの参加者は自分達の関係者が中心だ。
主催者が自分達と関係の深いプレシア・テスタロッサである事を踏まえてもこの件は自分達の手で片を着けなければならないだろう。
正直な所、自分の無力さに心が折れないと言えば嘘になる。想いや願いとは裏腹に殺戮が繰り返される現実に目を背けたくなる。
しかし自分が膝を付くわけにはいかない。今もスバルやユーノ・スクライア達は現実に負けることなく戦っているだろうし、ヴィヴィオもきっと助けを求めている筈なのだ。
そんな状況で自分が諦めてどうするというのだ? 信頼出来る仲間もいる、相棒もこの手に戻ってきた。自分達の本当の全力を出し切れば乗り越えられない困難などこの世の何処にもないだろう。
ふと空を見上げれば綺麗な星々が輝いている。同じ星空の下でスバルやユーノ達も戦っている事だろう。そう考えれば自分はまだ戦える。
決して折れる事の無い、不屈の心を持って――
「高町」
そんな中、今まで沈黙を保っていた天道が声を掛けてきた。彼が次に口にした言葉は――
「状況が変わった、俺は今から西へ向かう」
-
Chapter.04 Destiny's Play
「……別の人に変身する魔法はありますし、スカリエッティの戦闘機人の中にも変身能力を持っていた人がいました」
「……わかった」
かがみが意識を取り戻した時、真っ先に聞こえてきたのはそんな会話だった。
「あ……あれ……私……? それにここは……?」
周囲を見回すとそこは森の中。
「あ、気が付いた? 天道さん、かがみが目を覚ましました」
と、なのはと天道は足を止めた。今現在かがみはなのはの背に背負われている状態だ。
「……あれ……それじゃあさっきまでのは……?」
状況を把握し切れていないかがみを余所になのはは彼女を降ろす。一方で天道は周囲の警戒を行っている。
「う……痛……」
と、地面に降ろされたものの両手足に激痛が奔り上手く立つことが出来ず腰を下ろした。
「大丈夫? このカードを使えば……」
と、なのははかがみにデュエルディスクの使い方を説明し、かがみは手際よくセットされているカードを発動した。それにより大分痛みが和らいだ。もっとも手足の違和感まではまだ完全には治らないが。
「あの……なのは……」
「ねぇ、今までに何が起こったか覚えている?」
「うん……あの関西弁のあの子に斬られた後……なのは達が……そうだ、こなた達は!?」
「大丈夫、今さっき放送があったけどこなたの名前は呼ばれなかったよ」
「お願い急いで! 早くしないとこなたがあの子に……!」
かがみの言い分では急がないとはやてにこなたが殺されるらしい。それが確かならば急がなければならないが、
「落ち着いて、今までに何があったのかもう一度話してくれる? 私と別れた後、一体何があったのかを……」
「それは……」
「あの時も言ったけど、辛い事は今度こそ私が受け止めるから……」
それはこの場で最初に出会った時と同じ真剣な眼差しだった。
「うん……あの後……」
-
そしてかがみはあの後に起こった事について語り始めた。ベルトの力に呑まれ暴走しなのは達と別れた後、銀髪の男性とシグナム、他1人の男性が戦っている現場に出くわし彼等に戦いを仕掛けた。
その後、かがみ自身はあっさり倒されたものの気が付くと銀髪男性、シグナム、そして関西弁の少女が和解する会話が聞こえた。どうやらシグナムと関西弁の少女は家族だったらしい。
「はやてちゃんだ……」
「でもそれを私は……」
が、それに苛ついたかがみは攻撃を仕掛けシグナムを惨殺、そしてはやてが手にした小刀の力によりかがみは再び倒されたのだ。
意識を取り戻した時にようやくベルトの力が切れ正気に戻っていたもののその時Lに拘束されており、ベルトもデッキもLに奪われていた。その後Lの所から何とか逃げ出したもののモンスターに追いかけ回されたことを語った。
そして何とか万丈目と遭遇したが彼の持っていた千年リングに宿るバクラによると彼は眼帯の少女を襲った危険人物と語っていた為、彼の持っていたデッキのモンスターの餌にしようかと目論んだが逆にデッキを押しつけられ逃げられた。
これまでに多くの人々に痛い目に遭わされ決定的な裏切りを受けた事で皆殺しにする事を決めたと語った。
その後、参加者の1人に襲いかかったがそこでタイムリミットを迎え餌にされそうになったものの銀色の巨人メビウスによってモンスターが倒された事で何とか助かったのだ。
メビウスから逃げ出した後、Lに奪われていたデイパックを運良く回収出来デッキもかがみの手に戻った。かがみは生き残るため参加者を皆殺しにしようとバクラの助言に従いつつエリアの端を超えてホテルに向かった。
その後ホテルからデュエルアカデミアに向かいスバル達と遭遇・襲撃しその際に眼帯の少女をモンスターに喰わせ殺した。
スバルに逃げられた後、煙の立ち上ったレストランに向かいそこで漆黒の鎧姿と緑の怪物の2つの変身体を持つ男性と浅倉と戦ったものの惨敗し浅倉にデッキを奪われた。
なんとかあの場で別の変身ベルトを手に入れ助かったが、ホテルに戻った後いきなり奇妙な場所に引き込まれた。
「かがみもあそこに……」
そこで浅倉によってつかさを目の前で惨殺されかがいは自暴自棄になり戦った。その後気が付いたら再びホテルに戻りヴァッシュと遭遇。
かがみはヴァッシュを利用しようと思い、後からやって来たスバルと戦わせた。そして自分と緑の怪物に変身する男の計4人を交えての乱戦になり敗れ、
「気が付いたら目の前にあの時の女の子がいた……それで……刀を突き付けられて……」
洗いざらい喋らされ、お前がシグナム達をを殺したんだと両手足を斬られ更に腹を刺されたと語った。
ちなみに今回なのはに語った内容はかがみの主観によるものではあるが、かがみ自身による一方的な決めつけによる要素は少なくなっており、自分から襲った部分に関しても概ね事実を述べている。
「そこに私達が現れたと……」
正直な所、同じ24時間でここまで悲惨な経験をしているとは予想外だった。遠くから周囲の警戒をしながらかがみの話を聞いていた天道の表情も真剣そのものだ。
一方のなのはもかがみの話には色々と思う事はある。
正直な所謝罪されても許されない部分は多分にある。幾ら状況がそうさせたといっても不可抗力と言って良いのはメビウスを襲った所までだ。
それ以降――チンクを殺しスバル達を襲った辺りからはそういった言い訳は通用しない。バクラの存在があったとしても最終的に行動を起こしたのはかがみである以上、当然彼女にも責任はある。
-
「……幾つか確認して良いかな? スバルはかがみをどうしようとしていた? スバルは一方的にかがみを襲ったの?」
「それは……」
かがみはスバルの言葉を思い出す。
『こなたは言ってました……貴方は怒りっぽいけど、根は優しい人だって……だから……』
『……こなただって、諦めずに戦ってるんだよ……それなのに』
『それでも、こなたがかがみさんの友達だって事に変わりはないでしょう!?
自分の世界の、自分の知る相手でなくとも、変わらず接してくれた人を、私は知ってる!』
何度と無く殺そうとした自分に対しずっと説得を続けて来た。あの時は口喧しい言葉だと思っていたが彼女はずっと自分とこなたを再会させようとしていたのは理解出来る。それを自分は……
「違う……スバルはずっと私を説得してこなたと私を再会させようとしてくれた……」
「そっか……」
実の所、なのはははやてやフェイトが危険人物になっているという話を聞いて不安な気持ちで一杯だった。
普通は有り得ないと斬って捨てる事だがこの状況どうなっているかは未知数、更に言えばはやてががかみを拷問する事実が余計に不安にさせた。
もしかしたらスバルやユーノも危険人物になっているのではないかと……本人が聞いたら怒りそうな事を内心で考えたのだ。
だが、かがみの言葉が確かならばスバルはずっと諦めずに戦い続けていたという事になる。ならば彼女の憧れの対象である自分もそれに応えなければならないだろう。
「もう一つ聞かせて……かがみははやてちゃん……その関西弁の女の子に何か言わなかった?」
はやてがかがみを拷問した事は恐らく紛れもない事実だろう。シグナムの家族でなおかつ関西弁を話し自分の事を『なのはちゃん』と呼ぶ者など彼女しかいない。
しかし、幾らシグナムを殺したとはいえヴィータならばともかくあのはやてが復讐のために一方的に拷問するとは思えなかった。
勿論これは自分の色眼鏡も多分にあるのは承知している。それでもここまでの凶行に至ったのは他に決め手がある様に思えた。
「……そういえば自分の行動を悪いと思っているのか聞いてきたけど……でも私は……自分は悪くなくてスバル達が悪いって……」
そう答えるまでは本心はどうあれ脅し程度にしか小刀を使わなかったが、以降は憎悪を隠すことなく怒りをぶつけてきた。
「はやてちゃん……」
はやての行動はやり過ぎ、それは変わらないもののそういう受け答えをされれば彼女が怒るのもある意味仕方がない。何しろ、自分自身そうやって返されて憤りを感じないわけがないのだ。
しかし、やはり友人だからこそはやての行動には何処か腑に落ちない点がある。
本当に復讐ならばいっそひと思いに殺せば良いのに何故死にかけの状態で放置したのだろうか? それ以前に復讐が目的だったのだろうか?
だが、かがみからの証言ではこれ以上はわからない。こればかりははやて側の言い分も聞かなければわからないだろう。
「最後にもう1つだけ質問させて……はやてちゃんに聞かれた質問、あの時はそう答えたんだろうけど……今ではどう思っているの?」
「……」
暫しの沈黙……かがみの脳裏にはこれまでの出来事が浮かび上がる。流石に浅倉や万丈目の事等に関しては素直に認められないものの、シグナム達3人を殺した事やスバル達に仕掛けた事に関してはそうではない。
「私が……悪かった……と思う」
「じゃあ、かがみはこれからどうしたい?」
「……あの子……はやてって人や、エリオ達の友達、それにスバル達に謝りたい……今更許して貰えるなんて思えないけど……それから、こなたにも……」
その言葉通り、再び出会った所で復讐されるだけかもしれない。それでもそれがかがみの心からの答えだ。それを聞いたなのはは、
「わかった。大丈夫だよ、例えはやてちゃんがかがみを殺そうとしても私はかがみの味方、絶対に守ってみせるから」
笑顔でそう答えた。はやての真意が何であったとしても、かがみがシグナム達を殺すという許されざる罪を犯したとしても、その為に彼女が殺されるなんて誰が何と言おうとも、それが当事者のはやてであっても認めることは出来ない。
勿論、なのは自身かがみの罪を許す事は出来ない。それでもかがみがその罪と向き合い生きていこうとするならばそれを支えていきたいと思う。
――それが彼女をここまで追いつめる切欠を作ってしまった自分に出来る事なのだから。
-
どれぐらい時間が経過しただろうか? まだ放送から20分も経過していないぐらいだろう。かがみの証言等から考えてはやて達の集合場所は恐らくスカリエッティのアジトと言った所だ。
早急にそこに向かいはやて達と合流しその後ヴィヴィオを助ける為にゆりかごへ向かわなければならない。
しかし状況は芳しくない。生き残っている参加者は残り12人。なのは、天道、かがみを除けば残り9人、
この場においても無力な参加者を守りこの殺し合いを打破するために戦っているスバル、
なのは自身が魔法と出会う切欠を与えたユーノ、
聖王となって暴れてはいるが何とかして助け出したいヴィヴィオ、
友人ではあるがかがみに対する凶行の真意が気になるはやて
善良な性格らしいが暴走する力が気に掛かるヴァッシュ、
かがみの友人でスバルがずっと保護していたらしいこなた、
別れた後の動向がずっと不明瞭で信用しがたい金居、
自分達を掻き回し殺し合わせ様とするキング、
妹達を殺され修羅の道に落ちたアンジール、
それ以外の者は皆死亡した。それについて思う所はあるが今はそれについて想いを馳せる余裕はない。
9人の内味方及び保護すべき対象と言えるのはスバル、ユーノ、こなたの3人、
危険人物ではあるが何とか助け出したいのがヴィヴィオ、
一応味方といえるが完全に信用出来ないのがはやて、ヴァッシュ、金居の3人、
出来うる事ならば説得したいが厳しいと思われるアンジール、
そして最悪の敵とも言うべきキング。
この中で現状明確な危険人物はヴィヴィオ、アンジール、キングの3人。なのはとしては当然ヴィヴィオは助けるつもりであったし前述の通りアンジールも出来れば説得したい。
しかしキングだけは確実に打倒しなければならない存在と言えるだろう。殺さなければならない相手と言って良い。
殺しをする事に抵抗が無いといえば嘘になるしそれが受け入れがたい事に変わりはない。それでもキングの為に何人もの参加者が死に更に殺し合いを煽ろうとしている以上殺すという選択もやむを得ないだろう。
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一方で金居に関しても気になる所がある。金居の言動を思い返した所、銀色の鬼やペンウッドを疑ってかかっていた。
憤りは感じるもののそう思う事自体は問題ではない。しかし情報を纏めた所銀色の鬼ことミライやペンウッドが悪人という事はなかった。
勿論、金居が知り得ない事であり警戒心が強かったからと片付けられないこともない。しかしどうにも学校でのやりとりは完全に金居が主導権を握っていた事から踏まえても何かが引っかかるのだ。
そう、まるで金居が自分達の間に不和を起こして分裂させる事を狙うかの様に……勿論これだけならば趣味の悪い妄想だろう。
だが、ある一件が気になるのだ。かがみから聞いた所デッキには説明書が付属していたらしい。しかしなのは達もデッキを手にしてはいたが説明書は存在しなかった。
C.C.が持っていたデッキの説明書はフリードリヒによって使用不能になったとして、自分達が学校で手に入れたデッキの説明書は何処に行ったのだろうか?
デイパックはそのまま残っていたから中に残っているのが自然だ。だとすれば――誰かがなんらかの理由で処分したという可能性がある。
状況から考えて学校でデッキを使っていた人物はクロノと考えて良い。しかしあのクロノが説明書を処分するとは思えない。では処分した人物は誰なのか?
説明書を処分しなければどうなるのであろうか? 説明書にはモンスターに生きた参加者を喰わせなければ所有者が喰われるとあったらしい。それがあったからこそ万丈目はかがみにデッキを押しつけたのだろう。
それを知らずに平然と持っていれば持ち主がモンスターに喰われるだけという事だ。
なのはとペンウッドはそれを知らずにデッキを持っていた。放置すれば自分達が餌になるのは言うまでもない。つまり、説明書を処分した人物は2人を死なせる事を狙っていたという事だ。
そしてその容疑者はあの場で別行動をした弁慶と金居のどちらかに絞られ、言動などから考慮して金居がそれを行った可能性が高い。
金居は表向き自分達に協力してくれていた。しかし、味方の中に入り込んで内部から潰すという手法は存在する。
金居は本当は優勝を狙っていたのではなかろうか? いや、出会った当初はともかく放送を聞いたことで優勝狙いに切り替えた可能性もあるだろう。こちらが動揺している間に色々仕掛けていたということだ。
以上の事は推測レベルの話、確たる証拠があるわけではない。勿論、出来うる事ならば信じたい所だ。しかし思考停止し無条件に信用して取り返しの付かない事になるのだけは避けなければならない。
何にせよ、金居をこのまま味方として信用する事は避けるべきだ。もしかしたらアンジール、はやて、ヴァッシュ以上に危険な存在かも知れない。
「天道さん……」
移動を再開するため近くで周囲を警戒していた天道に声を掛け、
「話は聞いていた。それより、動けるのか?」
「私なら大丈夫だから……お願い、こなたを……」
かがみ自身生きていたいと思っても今更許されるとは考えていない。再びはやてと再会した所で殺されても文句は言えないだろう。
だが、自分の行動が原因でこなたが殺される事は望まない。せめてこなただけは助けて欲しい、それがかがみの本心である。
なのははそんなかがみの言葉を聞いてかがみ自身本当は優しい子だと感じだ。だからこそこなたは勿論のことかがみも助けようと思う。例えはやてと対立する事になってもそこを譲るつもりはない。
「わかったよ……でも、こなたはかがみが死ぬことを望んだりしないよね? だから……」
「うん……私も諦めない……」
とはいえまだ完全回復には至っておらず、それ故なのはに背負われている状態だ。それでも、彼女の言葉からは確かなる意志が現れていた。
-
そしてここ暫くの間殆ど沈黙を保っていた天道も只沈黙をしていたわけではない。
そもそも当初の予定では放送を聞いた後、かがみの意識が戻り彼女から事情を聞いてから移動を始めるつもりだった。しかし実際はかがみ覚醒時にはすでに移動途中だった。
天道が移動を前倒しした切欠は漠然としていれば見落としかねないある事が起こったから。それは0時丁度になっても放送が始まらなかった事だ。
天道自身最初の放送は聞き逃していたが2度目と3度目の放送は共に12時、18時丁度に行われた。にも関わらず今回は0時丁度から2、3分過ぎても放送が始まらなかった。
何故これまでは定時に行われた放送が今回に限って行われなかったのか? 定時に放送を行えない事情があったのではないのか? つまり、主催側でこのデスゲームに関わる重要な事が起こった可能性だ。
となればこのまま只時間を潰すのは得策ではない。状況が大きく動いたのならば急がなければならない。最悪殺し合いをやっている事態では無くなっている可能性もあるのだから。
故に移動を前倒しする旨を話しなのはもそれに賛同し移動を始めたのだ。動くとなればその足は速く早々に西端を越えて仮説通り東端の森に到達した。
そのタイミング、定時より10分遅れて4度目の放送が流れた。放送自体はプレシアが行っておりその内容に特別な情報は何も無かった。
いや、『特別な情報は何も無かった』事こそが異常であった。
定時より10分遅れての放送にも拘わらず仮眠を取ったから自分が行うという話だけで遅れについては何も言及していない。これまで厳密に行ってきた割にあまりにずさんではなかろうか? 遅れるにしても一言程度でも言及する方が自然だ。
そもそも本人が定時に行えない事情があるならば前回の放送同様、オットー辺りに放送を任せれば済む話だ。本人が出て直接何かしたわけではないのだからそれで十分事足りる。
では、なぜ10分遅れてでもプレシア自身で放送を行わなければならなかったのか? 少なくても前述の通りプレシアが行う必然性はない。
が、ここで見方を変えてみよう。放送を行う人物は『プレシアでなければならなかった』と考えればどうだろうか?
主催がプレシアである以上、プレシア以外が行ってもプレシアは健在だとだれもが考える。しかし、今回に限ってはプレシアの存在を無理にアピールしているかの様に思える。
そう、まるで『放送を行っているのはプレシアです。何も問題はありません』と無理に見せているかの様な――それが意味することは1つ、『放送を行ったのはプレシアの姿を借りた誰か』という事だ。
つまり、何者かがプレシアの姿を借りて放送を行ったという事だ。そうまでしてプレシアが健在であるかの様に見せるという事は――
主催側で何かが起こり、プレシアが主催の座から転落した――
天道がその仮説に至れたのは彼の世界にいるワームの存在があったからだ。ワームは人間に擬態する能力を持っておりその際に記憶や人格をも引き継ぐ――そう、肉親が実はワームだったという話もあり得るという事だ。
つまり、放送を行った者はプレシアに擬態したワームという可能性もあるという事だ。
もっとも、天道の世界の常識だけで物事を計ってはならない。天道はなのはに全くの別人に偽装する能力や魔法が存在するかどうかの確認を行った。
なのは自身も放送の異常は感じており、天道の問いかけで彼女も同様の仮説に至る事が出来、天道に変身魔法の存在及び、スカリエッティの戦闘機人の中に変身能力を持つドゥーエがいる事を話した。
これにより、主催側の異変・プレシアの転落の可能性が非情に強まった事になる。となると、最早このデスゲームは瓦解寸前、脱出のため行動を急がなければならないだろう。
勿論、これらの事は完全に断定出来たわけではない。単純にプレシアが此方を攪乱するために10分遅らせただけという事もあり得る為、罠の可能性も考慮に入れなければならない。
しかし、どちらにしても早々に動かなければならないだろう。放送の真相が何であれ、参加者の中にはこの異常に気付き行動を起こす者が出てくるからだ。
天道は多くを語らない。それ故に放送やかがみの証言等から何を考え最終的にどうするつもりかまではなのは達の視点からはわからない。
だが、その瞳にはこのデスゲームを打倒し参加者達を救うという強い意志が宿っている――
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残り人数は12人、10分もの謎の放送遅れ、それらから鑑みてこのデスゲームは終盤に入ったと考えて良いだろう。
終焉を告げる歌は静かに奏でられ始めた――
そして、異なる運命を持った役者達はある一点へと集おうとしていた――
運命が繋がる――
【2日目 深夜】
【現在地 D-9 森林】
【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康
【装備】とがめの着物(上着無し)@小話メドレー、すずかのヘアバンド@魔法少女リリカルなのは、ケリュケイオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式×2、グラーフアイゼン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ホテル従業員の制服
【思考】
基本:誰も犠牲にせず極力多数の仲間と脱出する。絶対にヴィヴィオを救出する。
1.アジトに向かい仲間達と合流する。
2.天道と共にゆりかごに向かい、ヴィヴィオを探し出して救出する。
3.はやてからかがみを守る。
4.出来れば片翼の男(アンジール)と話をしたいが……。
5.極力全ての戦えない人を保護して仲間を集める。
【備考】
※キングは最悪の相手だと判断しています。また金居に関しても危険人物である可能性を考えています。
※はやて(StS)に疑念を抱いています。きちんとお話して確認したいと考えています。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。
※放送の異変から主催側に何かが起こりプレシアが退場した可能性を考えています。
【柊かがみ@なの☆すた】
【状態】両手首の腱及び両アキレス腱切断(回復中)、腹部に深い刺し傷(回復中)、つかさの死への悲しみ、サイドポニー、はやて(StS)に対する恐怖、なのは(StS)に背負われている
【装備】とがめの着物(上着のみ)@小話メドレー、デュエルディスク@リリカル遊戯王GX、治療の神 ディアン・ケト(ディスクにセットした状態)@リリカル遊戯王GX
【道具】なし
【思考】
基本:出来るなら、生きて行きたい。
1.アジトに向かい、はやてやスバル達に謝りたい。
2.こなたを守る。
【備考】
※一部の参加者やそれに関する知識が消されています(たびかさなる心身に対するショックで思い出す可能性があります)。
※デルタギアを装着した事により電気を放つ能力を得ました。
※変身時間の制限にある程度気付きました(1時間〜1時間30分程時間を空ける必要がある事まで把握)。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。
※第4回放送を聞き逃しました。その為、放送の異変に気付いていません。
【天道総司@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康
【装備】ライダーベルト(カブト)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、スティンガー×5@魔法少女リリカルなのはStrikerS、カブトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、デルタギア一式・デルタギアケース@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【思考】
基本:出来る限り全ての命を救い、帰還する。
1.アジトに向かう。
2.なのはと共にゆりかごに向かい、ヴィヴィオを救出、何としても親子二人を再会させる。
3.キング及びアンジールは倒さなければならない敵。
【備考】
※首輪に名前が書かれていると知りました。
※天道自身は“集団の仲間になった”のではなく、“集団を自分の仲間にした”感覚です。
※PT事件とJS事件のあらましを知りました(フェイトの出自は伏せられたので知りません)。
※なのはとヴィヴィオの間の出来事をだいたい把握しました。
※放送の異変から主催側に何かが起こりプレシアが退場した可能性を考えています。
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Chapter.03 REBIRTH 〜女神転生〜
何時まで経っても腕にも足にも激痛は奔らない。手足の感覚までおかしくなったのだろうか? それとも……
「何のつもりや?」
振り下ろされた筈の小刀はある者の右手の指だけで止められていてそこからは僅かに血も流れている。
「おかしいなぁ……はやてちゃんどうしちゃったのかな……」
その凶刃を止めたのはなのはだ。
「え……なのは……?」
「はっ、何もおかしな事なんてあらへん。私は目の前でシグナム達を殺した阿呆餓鬼に同じ事をしているだけや」
「少し頭冷やして……そんな事、シグナムやエリオが望んでいると思う? 誰も望まないよ」
「望むか望まないかは問題やない。コイツは私ら家族の絆を踏みにじり沢山の人を殺しておきながら自分は悪くない悪いのは私らって言い切ったんや。そんな奴を許せる道理なんかあるかい」
「それは……」
「そもそも、コイツは妹が殺された復讐を正当化しているんや。私がやろうとしていることも正当化されて然るべきやと思わへん?」
かがみがつかさを殺した浅倉を許せず殺そうと考えた以上、はやてがシグナムを殺したかがみを許せず復讐しようとする事を一方的に否定される道理はない。
「なのはちゃんにしてもエリオ達を殺されているわけやろ。まさかとは思うけど、エリオ達は死んで良くてそれを殺したかがみは死んじゃダメなんてアホな事言うつもりやないよな?」
「エリオ達が死んで良いなんて誰も思わないよ。でも今も生きているかがみを死なせてもダメだよ」
「寝言は寝て言えや。コイツが今まで何をしてきたか理解して言っているんか? コイツは自分の悪行を正当化し悪いことは全部他人のせいにして、スバル達を騙し殺し合わせたんや。
シグナム達が死んでいるのにコイツが生きているのは理不尽にも程があると思わへんか?」
「私だって許せるわけないよ! だけど……死んだ方が良いなんて事も絶対にない!」
「そうは言うがなのはちゃん、あんたも助けようとしたけど裏切られたんやろ? スバルやエリオも助けようとして裏切られた……コイツはそんななのはちゃん達の善意をまた裏切るで」
そう……なのはに裏切られたと言っても冷静に考えてみればそれは誤解によるものに過ぎない。エリオとスバルはそもそも助けようとしていて裏切ってなどいない。
他の人に関しても裏切られていたと思っているのは自分だけで、本当は助けようとしていたのかも知れない。にもかかわらず自分はそれを歪曲して受け取りその想いを裏切り踏みにじってきたのだ……
バクラに誘導された? いや、そんな言い訳は通用しない。確かにそうし向けていた所はあったのかも知れないが最終的にその選択をしたのは自分だ。そう、悪いのは自分なのだ。
「言っておくが、コイツは自分の都合の良い風にしか物事を考えへん。今ここでなのはちゃんが助けようとしても、裏切るって思って信じたりなんかせん。そんな奴をこのまま生かしておいても良いと言うんか?」
そう、なのはが自分を助けようとしていても心の底から信じる事は出来ないでいる。
「それでも私は裏切らないよ! それにかがみにだって元の世界に友達や家族だっている。その人達はかがみの事を信じて待っているんだよ!
それにかがみは本当は優しい子だよ! 家族や友達が死んで怒れるって事がその証拠じゃない!
だから今からでもやり直せる、今からでも死んだ人達の事を忘れずに殺した罪を背負って生きていく事だって出来るよ! はやてちゃん達だってそうだったんだから……」
こんな自分を信じてくれる……まだやり直せると言ってくれる……なのはは本当に私を助けたいと思ってくれていた……
なのはだって本当はエリオ達を殺された事は許せない筈なのに……それでも私を助けたいと……
正直な所、あまりに虫の良い話だと思うし今更皆に会わせる顔なんて無いと思う。
それでも、やり直せるならばやり直したい。今度こそきちんと罪と向き合って――
だって、こんなにも自分を信じて助けようとしている人がいるんだから――
長い夢が終わる――
彼女が目覚めた後どのような選択を取るのか――
その選択の末にどのような結末を迎えるのか――
それは今はわからない――
それでも――
呪われた運命を変える力は誰もが持っている――
今からでも生まれ変わる事は可能――
そう信じている――
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投下完了致しました。何か問題点や疑問点等があれば指摘の方お願いします。
今回も前後編で>>434-443(Chapter.01&02)が前編『救済N/EGO〜eyes glazing over』(約27KB)で、
>>444-451(Chapter.04&03(前後しているのは投下間違いではなく作劇の都合))が後編『救済N/Destiny's Play』(約23KB)です。
サブタイトルはまたしても『仮面ライダーW』風です……ロワ終了までに26個コンプ出来るのか?
『救済N』に関しては『なのは(Nanoha)が救済』&『悪夢(Nightmare)からの救済』という意味で、
前編及びChapter.01の『EGO〜eyes glazing over』は『仮面ライダー555』の挿入歌で、
後編及びChapter.04の『Destiny's Play』は『仮面ライダーキバ』の挿入歌です。
何れの曲名も何れサブタイトルに使いたかったのでこのタイミングで一気に使いました。
なお余談ですがChapter.02及びChapter.03のタイトルになった『Heavenly Stars』及び『REBIRTH 〜女神転生〜』は共になのはの中の人田村ゆかりの楽曲から取りました。
本当は何からきすた関係の楽曲で使えるのあれば良かったのに……都合の良い曲ねぇんだよぉぉぉ!!
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……見直したら状態表にチームスターズ部分が抜けていたため、天道の状態表の後に以下の部分追加します。
【チーム:スターズチーム】
【共通思考】
基本:出来る限り全ての命を保護した上で、殺し合いから脱出する。
1.まずは現状確認。
2.協力して首輪を解除、脱出の手がかりを探す。
3.出来る限り戦えない全ての参加者を保護。
4.工場に向かい首輪を解析する。
【備考】
※それぞれが違う世界から呼ばれたという事に気付きました。
※チーム内で、ある程度の共通見解が生まれました。
友好的:なのは、(もう一人のなのは)、(フェイト)、(もう一人のフェイト)、(もう一人のはやて)、ユーノ、(クロノ)、(シグナム)、(ヴィータ)、(シャマル)、(ザフィーラ)、スバル、(ティアナ)、(エリオ)、(キャロ)、(ギンガ)、ヴィヴィオ、(ペンウッド)、天道、(弁慶)、(ゼスト)、(インテグラル)、(C.C.)、(ルルーシュ)、(カレン)、(シャーリー)、こなた、かがみ、(つかさ)、(ミライ)、ヴァッシュ
敵対的:(アーカード)、(アンデルセン)、(浅倉)、(相川始)、(エネル)、キング、アンジール
要注意:(クアットロ)、はやて、金居、(矢車)
それ以外:(チンク)・(ディエチ)・(ルーテシア)、(ギルモン・アグモン)
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投下乙です
夢の中のはやてテラヤバスw
はやてもかがみもある意味では被害者であり加害者なんだな
誰が悪いでもなし、しいて言うならロワに巻き込まれたのが運のつきか
それにしてもなのはは気負いすぎな気もするが、そう思うのも仕方ないか
でもぶっちゃけケリュケイオンから情報を聞き出すとかこの話見るまで全く思いつかなかった、なぜだ?
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投下乙です。
夢とは言え相変わらずはやては黒いなぁ
そしてかがみ達と情報交換、主催側の異変にも気付いたか
一方で着々とアジトに集いつつある仲間達……
どんな形で一同が合流するのか楽しみだなぁ
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>>447で『かがみの証言等から考えてはやて達の集合場所は恐らくスカリエッティのアジトと言った所だ。』ってありますけど、
「Yな戦慄/八神家の娘」だとはやてはかがみにスーパーに向かっていると言っているのですが、それ以外に何かアジトと断定する判断材料があったのでしょうか?
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>>456
>>447にもある通り『かがみの証言等』とあるのでかがみの証言だけではなく置かれていた状況を踏まえてからの判断です。
かがみの証言からホテルから北上した事は確実。更に『Mの姿/マイナスからのリスタート』で既に天道が『ループを使い東側に逃げた』推測が成されています。
その為、ホテルより北に移動して(D-1の隣にある)D-9の近くで集合場所に使える場所はアジトという判断です。(なお、スーパーに向かったという証言は自分達のいた場所が激戦区であるスーパーなので犯人の偽装だと判断。)
ただ、指摘を踏まえると少々言葉足らずであったのは否めないため該当分を修正します。これならば問題は無くなったと思いますがどうでしょうか?
どれぐらい時間が経過しただろうか? まだ放送から20分も経過していないぐらいだろう。かがみの証言等から考えてはやて達の集合場所は恐らくスカリエッティのアジトと言った所だ。
この部分を以下の通りに修正、
どれぐらい時間が経過しただろうか? まだ放送から20分も経過していないぐらいだろう。
かがみの証言から考えはやて達がF-9にあるホテルから北上したのは確か。そして会場のループを使いかがみをD-1に置き去りにした事を踏まえはやて達の集合場所はループ地点であるD-9に近いC-9のスカリエッティのアジトと言った所だろう。
なお、スーパーに向かったという話だが先程まで自分達が戦っていた危険な場所なのでその部分ははやてがすぐにアジトに向かわせるのを避ける為の偽装だろう。
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重ね重ね失礼します。色々考え該当部分を以下の通りに再修正。
どれぐらい時間が経過しただろうか? まだ放送から20分も経過していないぐらいだろう。
かがみの証言等から考えてはやて達はF-9にあるホテルから北上したのは確か。そして会場のループを使いかがみをD-1に置き去りにした事を踏まえはやて達の集合場所はループ地点であるD-9に近いC-9のスカリエッティのアジトと言った所だろう。
なお、スーパーに向かったという話だが先程まで自分達が戦っていた危険な場所なのでその部分ははやてがすぐにアジトに向かわせるのを避ける為の偽装だろう。なお、このことは既にかがみにも説明している。
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なるほど、素早い対応乙です
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天道総司、ヴァッシュ・ザ・スタンピード、ユーノ・スクライア、高町なのは(StS)、八神はやて(StS)、スバル・ナカジマ、ヴィヴィオ、泉こなた、柊かがみ
この9名を投下します
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夜空は、とても美しかった。
数え切れないほどの星々と満月に照らされ、その光は地上を照らしていく。
一切の濁りが見られないほど、神秘的な黒い色に満ちていた。
二つの輝きに包まれた辺り一帯は、静寂に満ちている。
夜という世界を象徴するかのように。
この世界の出来事を何も知らなければ、平和な場所だと誰もが思うだろう。
しかし、ここは破壊と殺戮に満ちたアルハザードと呼ばれる戦場。
プレシア・テスタロッサの手によって、数多の世界から集められた多くの人間が、強制された殺し合いを行う場所だ。
僅かな安堵だろうと、抱く者は誰一人としていない。
そんな世界に、微かな微風が流れていた。
木々に生えた葉と、地面に生えた草が音を立てて揺れていく。
暗闇で満ちている森林の中を、三つの人影が進んでいた。
その先頭を、一人の青年が周囲を警戒しながら、足を動かしている。
頭髪は癖が強く、鍛え抜かれた長身痩躯の肉体を、ジャケットとジーンズで包んでいた。
天道総司は辺りを見渡しながら、思考を巡らせている。
十分という遅れがあった先程の放送。
時間に関する真相もそうだが、それ以外にも思案するべき問題がある。
あの中では、キングとアンジール・ヒューレーの名前が呼ばれなかった。
これが意味することはただ一つ。あの二人は未だに生きていること。
潰し合わせる為に離脱したが、それが失敗に終わってしまった。
それどころか、あの二人が共闘するという最悪の可能性も存在する。
だが、優勝という道を決めたアンジールが、何故そのような選択を選んだか。
可能性は低いが、キングが何か余計なことを吹き込んだかもしれない。
(俺は……一体何をやっている)
天道は、自分自身に憤りを覚えた。
突然、この会場に連れてこられたという失態もそうだが、これまでに多くの命が失われている。
偉大なるおばあちゃんから、多くのことを学んだはずだ。
ひよりを守るために、ワームとの戦いに備えて七年間、体を鍛え続けたはずだ。
そして天の道を往き、世界を照らす太陽の神、仮面ライダーカブトに選ばれたはずだ。
それにも関わらずして、このザマだ。
(だが、今は悔やんでいる場合ではない。まずは急ぐことが先決だ)
ここで悲しみと後悔に溺れ、止まることは許されない。
それでは、この戦いを仕組んだ主催者、そしてキングの思う壺だ。
あの放送では、後ろに歩く高町なのはと柊かがみの知る人間で、呼ばれていない者がいる。
-
なのはの幼なじみである、八神はやてとユーノ・スクライア。
愛弟子である、スバル・ナカジマ。
娘である、ヴィヴィオ。
グラーフアイゼンからの情報で知った人物、ヴァッシュ・ザ・スタンピード。
そして、かがみの親友である泉こなた。
ヴァッシュとはやてに関しては、まだ不確定な部分がある。
しかしそれでも、残された彼らの命は救わなければならない。
それが自分の使命なのだから。
「なのはさん!?」
天道が考えながら歩いていると、突如として声が響く。
後ろから聞こえてきたそれによって、彼は反射的に振り向いた。
見ると、なのはは驚愕の表情を浮かべている。
彼女の視界の先には、見知らぬ一人の少女が立っていた。
短く整った青い髪、僅かに跳ねた毛先、宝石のような輝きを持つ瞳、小柄な背丈を包むレディーススーツ。
その背中には、更に小さい体格の少女が背負われている。
「スバル……それに、ヴィヴィオ!?」
現れた二人の少女を見たなのはの声は、震えていた。
そこには、安堵と驚きが込められている。
◆
スバル・ナカジマはヴィヴィオを背負いながら、辺り一面に生えた雑草と木の根を踏みしめながら、先を進んでいた。
視界はとても暗く、足下が不安定なので、先程のように慌てて進んではいけない。
それにもし転ぶような事をしては、背中にいるヴィヴィオにも響いてしまう。
ホテルで繰り広げた戦いのせいで身体はボロボロで、顔色も悪い。
そんな彼女に無理をさせては駄目だ。
だから、移動のペースを落とす必要がある。
C−9地点にあるジェイル・スカリエッティのアジトに着くまで、時間がかかるというデメリットはあるが、焦るわけにはいかない。
もしそれで集中力を乱し、殺し合いに乗った者の襲撃を受けては全てが無駄となる。
そんなことになっては、こんな下らないことで命を奪われた人達の、無念は晴らせない。
スバルは唇を噛みしめながら、自分に言い聞かせた。
(始さん、ヴィータ副隊長…………ッ!)
四度目の放送で呼ばれた七人の名前。
その中で、知っている人が呼ばれてしまった。
出会って間もない自分を、命を賭けて守ってくれた相川始。
彼はアンデットという生命体だったらしいが、それは違う。
始さんは正真正銘の人間で、立派な仮面ライダーだ。
それだけは、紛れもない事実。
そして、未熟な自分を一生懸命に鍛えてくれたヴィータ。
彼女は尊敬する恩師、高町なのはと一緒に多くのことを教えてくれた。
訓練はとても厳しかったが、それがあったお陰で今の自分がある。
だからこんなところで止まっている場合ではない。
もしも泣くようなことをしたら、それこそ二人に対する侮辱になる。
今やるべき事は、一刻も早くアジトへ向かい、こなたやヴァッシュ達との合流だ。
(こなた、ヴァッシュさん、なのはさん、八神部隊長……無事でいて下さい!)
幸いにも、まだ名前の呼ばれなかった人達もいる。
だが、安堵などしていられない。
-
ヴァッシュやなのはやはやてはともかく、こなたは一般市民だ。
リイン曹長が一緒にいるとはいえ、彼女をこれ以上待たせては何があるか分からない。
こなたの身を案じながら、スバルは足を進める。
その最中だった。
「…………え?」
突然、近くから音が聞こえる。
草木を踏むような、ほんの僅かな足音が。
常人ならばあっさり聞き逃してしまうだろうが、彼女は戦闘機人。
察知するのは、造作もない。
スバルは呟きながら、歩みを止めてしまう。
たった今、音が聞こえてきたことを意味するのは、たった一つのみ。
この近くに、誰かがいること。
それは一つだけでなく、複数に聞こえる。
彼女は反射的に、物陰に隠れた。
(どうしよう……)
誰がいるにしても、警戒しなければならない。
殺し合いに乗ってないなら良いが、そうでない可能性もある。
もしも、近くにいるのが後者ならば、自分はひとたまりもない。
疲労が溜まっている上に、左腕も折れている。
加えて背中には、ヴィヴィオがいるのだ。
こんな状況で戦いなどやっても、負ける結果しか思い浮かばない。
気が付くと、足音がこちらに近づいていた。
木の陰に身を潜めているスバルは、覚悟を決めてそちらを覗き込む。
その瞬間、彼女は目を見開いた。
「えっ、まさか……!?」
驚愕の表情で、スバルは口を開く。
闇に包まれた木々の間から現れたのは、見知らぬ青年。
しかしその後ろには、合流を望んでいた高町なのはの姿があった。
さらになのはの背中には、この戦いに乗っていた筈の柊かがみもいる。
背負われているかがみの顔からは、一切の殺意が感じられない。
何故彼女が、なのはと一緒にいるのかは分からないが、話を聞く必要がある。
そう思ったスバルの行動は、決まっていた。
「なのはさん!?」
◆
一同は合流してから、互いに情報を交換している。
これから向かうアジトに、こなたとヴァッシュとはやてが待っていること。
かがみに重傷を負わせたはやて。
ホテルで起きたヴィヴィオの暴走。
危険人物であるキングとアンジール。
はやてと一緒にいた、金居という謎の男。
ヴァッシュに渡した千年リングという、危険な支給品。
そして、罪を償うと決意したかがみ。
「ごめんなさい、本当にごめんなさい……!」
なのはに背負われたかがみは、涙を流しながらスバルに謝罪した。
大切な人を、三人も殺してしまったことに。
何も理解しようとせずに、自分を助けようとした彼女を殺そうとしたことに。
そして、スバルを支えてくれた人やこなたを否定したことに。
そんなかがみの様子を見て、スバルは安堵を覚えた。
-
「大丈夫ですよ、かがみさん」
彼女は微笑みながら、優しい声で告げる。
スバルには、確信が出来た。
生きる力を取り戻した今の彼女なら、こなたと会わせても大丈夫。
初めはきっと、罪の意識に悩まされるだろう。
でも、そんな苦しみをかがみさん一人に背負わせたりはしない。
なのはさんや、一緒に説得してくれた男の人みたいに、彼女を支えてみせる。
「こなたも、絶対に喜んでくれますよ。かがみさんが元に戻ってくれたことに」
「うん…………」
「これから、一緒にやり直せば良いんです。だから、頑張りましょう」
弱々しいかがみの呟きに、スバルは笑顔で答えた。
その瞳は今までとは違って、殺気と言った負の感情は一片たりとも感じられない。
ふと、かがみはスバルに背負われているヴィヴィオに視線を向ける。
そして、彼女は左腕を掲げた。
「ねえ、スバル……これをその子に使ってあげて」
「え、でもそれって……!」
「私はもう大丈夫だから、お願い…………!」
かがみは、自分の命を助けた白い大きな腕輪、デュエルディスクをヴィヴィオに渡そうとしている。
これは彼女の出来る、せめてもの償いだった。
見ると、なのはの娘であるヴィヴィオの顔色はとても悪く、息も荒い。
このまま放置しては、自分のように命の危険に晒されてしまう。
もうこれ以上、誰かの命が失われるのは嫌だった。
そんなかがみの意志を察したのか、天道は口を開く。
「いいだろう」
「え、ちょっと……!?」
「ありがとう……」
スバルの抗議は、かがみの声に遮られた。
天道はその行動を見て、おばあちゃんより教えて貰った大事な言葉を思い出す。
子どもは宝物。この世でもっとも罪深いのは、その宝物を傷つける者だ……と。
そしてもう一つ。
小さな親切を受けたら、大盛りで返しなさい……と。
かがみが取り戻した『献身』の感情を、無駄にするわけにはいかない。
幸いにも、命に別状がない段階まで体の調子を取り戻した。
天道はかがみの腕からデュエルディスクを外し、スバルの背で眠るヴィヴィオに取り付ける。
その瞬間、小さい呼吸は徐々に整っていき、身体の擦り傷も治り始めた。
出来るならば、かがみの時のように回復に時間を置きたいが、そういうわけにもいかない。
まずは、ナカジマが言っていた仲間達の合流が、先決だ。
「とにかく、そのアジトに向かうぞ。行動に移すのは合流してからだ」
「分かりました」
天道の言葉になのはが頷く。
彼は再び先頭に立ち、前に進み始めた。
その背中を見たスバルは、ハッとしたような表情を浮かべる。
勢いに流され、呆気に取られてしまった彼女は、大事なことを聞き忘れていたのだ。
耳打ちするように、なのはに尋ねる。
-
「あの、なのはさん」
「ん、どうかしたのスバル?」
「そういえば、あの人は一体……?」
そう、名前を聞き忘れてしまった事。
ヴィヴィオやこなた達、そしてかがみの事に気が向かっていたので、そこまで行かなかったのだ。
そんなスバルの疑問を、なのはは答えようとする。
「ああ、あの人はね――」
「おばあちゃんはこう言っていた」
しかし彼女の声は、あっさりと遮られた。
それをしたのは、決まっている。
なのはでもない。
スバルでもない。
ヴィヴィオでもない。
かがみでもない。
声の主である男は、突然足を止めた。
そのまま、背後に振り向く。
「俺は天の道を行き、総てを司る男――」
彼は天空に向かって、堂々と左腕を高く掲げた。
まるで、世界は自分を中心に回ってる、と宣言するかのように。
その直後、木々の間から光が射し込まれてくる。
彼を照らすスポットライトとなるように。
それは月の輝きであるはずなのに、とても眩しく見えた。
例えるならば、世界全てを包み込む太陽の光。
スバルは、不意に目を細める。
その一方で、男は強い意志の込められた瞳を向けたまま、最後の言葉を口にした。
「俺の名は……天道 総司」
「…………へ?」
名乗りを上げた天道に対し、スバルは呆気にとられるしかできない。
どういう反応を取ればいいのか、彼女には分からなかった。
変人。
会って間もない人間に対して失礼かもしれないが、そんな印象を持ってしまう。
それと同時に、スバルは天道の言葉に、とてつもない力が存在していると、錯覚してしまった。
◆
余談だが、これはまるである出来事を再現しているかのようだった。
ここにいる天道総司も、ここにいるスバル・ナカジマも知らない事実。
それはとある時間の、とある世界の出来事。
来るべき全ての戦いを終えた天道は、異世界より突如現れたスバルと、出会いを果たしたことがある。
偶然の重なった、運命によって起こってしまった事。
本来ならば有り得ないはずだった、二人の邂逅。
奇しくも、その世界で起こった出会いと、とても酷似していた。
REVOLUTIONの名を持つ出会いと――
◆
-
「はやてちゃん……!」
「ごめんな、リイン。心配かけて」
祝福の風の名を持つユニゾンデバイス、リインフォースⅡは涙を流しながら、八神はやての胸に飛び込んでいた。
その様子を、烈火の剣精アギトは、呆れたような表情で眺めている。
「てめえな、こんな時に泣いてんじゃねえよ」
「な、泣いてなんていませんよっ!」
リインは否定するが、その瞳は未だに潤んでいた。
その様子を、泉こなたは笑みを浮かべながら眺めている。
C−9地点、スカリエッティのアジトの前では、四人の人間と二人のユニゾンデバイスが集まっていた。
一人は、厳密には人間ではないプラントの名称を持つ生命体。
そして、元々いた本来の世界で人間台風と呼ばれ、600億$$の懸賞金が付けられた男。
針鼠のように伸びた黒い頭髪、その中で僅かに混ざった金髪、長身を包む炎のように赤いロングコート、朱色のレンズが埋め込まれたサングラス。
百年以上の時を生きてきた優しい死神、ヴァッシュ・ザ・スタンピード。
彼の前に立つのは、ユーノ・スクライアだった。
「……そうなんですか、あなたがフェイトを」
「ごめん、本当にごめん……!」
ヴァッシュは、必死に頭を下げて謝罪している。
彼ははやてと共にこの場所に到着してから、全てをユーノに話した。
自分が、フェイト・T・ハラオウンを殺したことを。
目の前にいる青年からは、確かにユーノの面影が感じられた。
とても賢く、とても優しいあの少年の。
ユーノが立派に成長してくれた事が、ヴァッシュにはとても嬉しかった。
たとえそれが、平行世界の彼でも。
しかし、今のヴァッシュにはそれを喜ぶ事が出来ない。
何故なら、フェイトをこの手で殺してしまったのだから。
「ヴァッシュさん、あなたがフェイトを殺したのは事実かもしれません……」
ユーノは、寂しげな表情を浮かべながら口を開く。
初めは真実を知った時、ユーノの中でどす黒い物が吹き出ていた。
憎悪という名を持つ、負の感情。
しかし一緒にいたはやてが言うには、フェイトの命を奪った力はもう暴走しないらしい。
そして、今度からはみんなを守るために、その力を使うと。
長きに渡る付き合いである彼女が言うからには、ヴァッシュを信頼しても良いかもしれない。
それにこのような憎しみを抱いても、死んだフェイトは戻らないし、喜ばないはずだ。
「でも、はやてが言うように、その力はみんなの為に使ってください。フェイトも、それを望んでいるはずですから」
「わかったよ、ユーノ……」
ユーノの言葉を聞いて、ヴァッシュは顔を上げる。
先程はやてに言われたのと、同じような言葉だった。
それでも、自分の罪が許されるとは決して思っていない。
この世界では、もう一人のなのはやクロノ・ハラオウンも犠牲となった。
リンディさんや士朗さんや桃子さん、それに恭也や美由希は絶対に許しはしないだろう。
もっとも、こんな不甲斐ない自分など、恨まれて当然だ。
見知らぬ場所に流れ着いた、自分の面倒を見てくれたのにも関わらず、恩返しも出来ない。
もしも、みんなから罵倒されるような事になっても、当然だ。
例え殺されたって、文句は言えない。
-
(俺は……何をやってるんだろうな)
ヴァッシュの中で、自己嫌悪の感情が強くなっていく。
それは、ここに辿り着いた時に流れた放送を聞いたことも、原因の一つだった。
あそこで呼ばれた、相川始の名前。
これから一緒に戦えると思ったのに、それがもう出来ない。
やはり、スバルと一緒にあそこに残った方が良かっただろうか。
顔も知らない彼だったが、悪い奴ではなかったはず。
出来るなら、一緒にここから脱出して色んな事を話し合いたかった。
そしてお互いのことも、腹を割って語り合いたかった。
唯一安堵できたのは、スバルが生きていたこと。
今は、彼女を待つ事しかできない。
(それに、どうしよう。あの子にかがみの事を伝える訳には……)
不意にヴァッシュは、こなたの方に顔を向ける。
彼女はホテルで暴れていた少女、柊かがみの親友らしい。
ここに辿り着いてユーノ達と情報交換して、スバルからの伝言を伝えた。
その際に、向こうは既に首輪の解除を成功したと知る。
しかし、自分もはやても今のかがみの事だけは伝えていない。
でも、このまま黙ったままでは、いつ彼女がここに来るか分からない。
そうなっては、こなたは命の危機に晒される。
どちらの道を行っても、傷つくことになってしまう二択の問題。
選べと言われても、簡単に選べる物ではなかった。
「はやてちゃん!? ユーノ君!?」
ヴァッシュが悩んでいると、聞き覚えのある声がする。
刹那、その場にいた全員が背後に振り向いた。
そこに現れたのは、彼らがよく知る人物。
「なのはっ!?」
「なのはちゃんに……スバル!?」
高町なのはの顔を見て、ユーノとはやては同時に口を開いた。
その一方で、ヴァッシュとこなたは一緒にいたスバルの元に駆け寄る。
彼女の背中には、ヴィヴィオの姿があった。
「スバル、無事だったんだな!」
「心配かけてすみません、あたしはこの通り大丈夫です!」
スバルは、ヴァッシュに力強い笑みを浮かべる。
だがこなたの顔が、急に青ざめた。
その理由は、変わり果ててしまったヴィヴィオの姿を見たため。
「え……? ヴィヴィオ、どうかしたの!?」
「あ、ヴィヴィオなら大丈夫だよ! 今、治療してる最中だから」
「どういうこと?」
「えっと、それはね……」
困惑したこなたの疑問に、スバルは答えようとする。
しかしそれを口にすることは、出来なかった。
「何でや……何であんたがここにおるん!?」
突然、はやての怒号が響く。
それに反応して、三人の顔はそちらに向けられた。
すると、ヴァッシュとこなたの顔は驚愕で染まる。
その先には、探していた柊かがみがいたからだ。
-
「君は……!?」
「え、かがみん……!?」
「こなたっ…………!」
背中から降りたかがみは、浮かない表情で呟く。
その様子を横目で見てからなのはは、はやてに顔を向けた。
そして、事情を説明しようとする。
「はやてちゃん、聞いて。この子は――」
「そうか、なのはちゃんが助けたんか。その阿呆餓鬼を」
しかしなのはの言葉は、一瞬で遮られた。
彼女の前に立つはやての声と瞳は、恐ろしいほどの冷たさを放っている。
それを向けられたかがみは迫力に押されてしまい、思わず後退った。
「変やと思ったんや。何で、名前が呼ばれなかったのか」
「え、名前が呼ばれなかった……?」
はやての言葉を聞いて、ヴァッシュは怪訝な表情を浮かべる。
ここに着く前、彼女は「かがみが急に暴れ出して、逃げられた」と話したはずだ。
それなのに、何故。
ヴァッシュが疑問を抱く一方で、はやては自分のデイバッグに手を入れる。
その中から一丁の黒い拳銃、コルト・ガバメントを取り出して、銃口をかがみに向けた。
彼女の行動を見た瞬間、この場に集まった全員の目が見開かれる。
「は、はやてちゃん。何を――!?」
「なのはちゃん、そこ退いてくれへん? 私は今からその阿呆餓鬼を始末するから」
「えっ……!?」
なのはの事などお構いなしに、はやては引き金に指を絡ませた。
当然、それを見逃す者はいない。
天道は右腕を伸ばしてはやての行為を制止し、ヴァッシュはかがみの前に立った。
「おい、何を考えている!」
「はやて、ちょっと待った! ストップ! ストップ!」
「何ですか、二人とも? 邪魔をしないで下さい」
しかしはやては、あっさりと冷たく二人に言い放つ。
再び現れたかがみを見た瞬間、彼女の中で二つの感情が膨れ上がっていた。
憎しみと殺意。
放送でその名前が呼ばれなかったので、悪い予感はしていた。
そして、それは見事に的中。
はやてには、エリオとシグナムを殺した挙げ句、それを自己正当化しようとするかがみが許せなかった。
(のうのうと生き延びたはいいが、まさかなのはちゃんやスバルと一緒にいるとはな……)
お人好しな彼女たちが現れたのなら、助かっても当然かもしれない。
だが、自分はこれ以上かがみに情けをかけるつもりは無い。
泉こなたに真実を伝えなかっただけでも、有り難いと思うべきだ。
ユーノと一緒にいた彼女に何故伝えなかったのは、彼女自身わからない。
何の力も持たない一般人だからか。
それとも、かがみに対する最後のお情けだったのか。
-
(けど、もう関係あらへん……)
こうなった以上、やるべきことは一つ。
なのはやスバルがやらなかったのなら、自分がここで引導を渡すべきだ。
大方、二人に命乞いでもして、助けてもらったのだろう。
そして、ここにいる自分達を殺そうと企んでるに、違いない。
何にせよ、これ以上甘やかしては、どうなるかは火を見るよりも明らかだ。
恐らく、自分の行動も確実に知られているだろう。
「なのはちゃん、一ついいことを教えてやろうか? その阿呆餓鬼の事を」
銃を構えるはやては、かがみを冷たく睨み付けながら、言い放つ。
彼女の様子を見たヴァッシュは、ハッとしたような表情を浮かべた。
ここには、かがみの親友であるこなたがいる。
そして、はやてから放たれる冷たい雰囲気。
この二つの事柄から、天道とヴァッシュは危機感を感じた。
「待て!」
「待つんだ、はやて!」
「そいつはな、エリオとシグナムを殺したんや。その挙げ句に、殺人を正当化するような救いのない極悪人なんやっ!」
しかし、彼らの制止は届かない。
はやては声色に悪意を込めながら、言い放った。
彼女の怒号は、闇に包まれた森の中に響き渡る。
いや、わざとそうなるように力を込めたのだ。
その言葉は無論、かがみの耳に容赦なく入っていく。
それは、まるで鋭利な刃物のように、彼女の心を抉っていった。
「え、かがみん…………やっぱり、なの?」
続くように響いたのは、こなたの声。
反射的に、かがみはそちらに振り向いた。
そこにいるこなたの瞳は、信じていた者に裏切られたような、絶望が感じられる。
親友の視線に耐えることが出来ず、かがみは目をそらした。
その行為がはやての勘に障ったのか、顔がより一層歪んでいく。
かがみの表情を見て、なのははもう一度前を向いた。
「お願いだから聞いて、はやてちゃん。この子は、もう危ないことなんてしないよ!」
「なのはちゃん、私が何を言ったか聞いたんか? そいつはな――」
「知ってる! この子から全て聞いた! シグナムさんやエリオの事も!」
「なら、何でそいつを庇うんや!? そんな甘ったれた奴を生かしていたらな、なのはちゃんもすぐに殺される!」
「だからって、銃を向けるのはやめて!」
「何でそんな事言うんや!? 二人を殺しただけじゃない、なのはちゃんやスバルの善意を裏切った! それがわからんのか!?」
なのはとはやては、お互いに怒号を飛ばしあう。
危機を察したユーノは、二人の間に割って入った。
「落ち着いてよ、二人とも!」
双方の勢いが、一瞬だけ緩む。
しかしはやての目から感じられる憤怒は、未だに収まっていない。
普段の彼女からは想像できない様子に、ユーノは少しだけ戸惑う。
それでも二人を落ち着かせるために、口を開いた。
-
「なのはもはやても、そう熱くならないで。今は揉めてる場合じゃないでしょ」
「何や、ユーノ君もその極悪人を庇うつもりなんか」
「そういうことじゃないよ! 僕は詳しい事情は知らない、でもこんなことをしたって何にもならないって!」
「じゃあ、ここでみんな仲良くその阿呆餓鬼に殺されろって言うんか?」
「違うって! なのはも言ってたでしょ、その子はもう人殺しなんてしないって……」
「それはどうなんでしょうか」
ユーノは必死に説得をしていると、新たにリインの声が入る。
振り向くと、その瞳からは今にも涙が流れそうだった。
同時に、今のはやてとよく似た、黒い感情も感じられる。
「だって、その人はシグナムを殺したそうじゃないですか。そんな人を、許すなんて……」
「リインまで、やめてよ!」
その瞬間、ユーノは気づいた。
リインの小さな身体が、震えていることに。
彼女も、理屈では分かっている。
かがみという少女をいくら責めたところで、エリオやシグナムはもう帰ってこない。
そして憎しみを抱いても、エリオやシグナムは喜ばない。
だが、それ以前の問題だった。
なのはは「もう人は殺さない」と言っているが、関係ない。
二人を殺した張本人が、目の前にいる。
それだけでも、リインの中で憎しみを沸き上がらせるのに、充分だった。
先程ホテルから離れた時に固めた決意を、忘れさせてしまうほどに。
なのはには、リインの言い分も理解できた。
家族を殺されたのだから、憎しみを抱くのは当然。
しかしそれでも、分かって貰う必要がある。
「とにかくはやてちゃん、お願いだからこの子の話を聞いて」
「はっ、今更何を……」
「お願いっ!」
なのはは必死になって、詰め寄った。
はやてが警戒するのも無理はない。
でも、かがみは本当は優しい心を持っている。
現に自分のことを構わず、怪我をしたヴィヴィオを助けようとした。
それをわかって欲しい。
そんななのはの姿を見たかがみは、覚悟を決めた。
「え、ちょっと……!」
彼女はヴァッシュの後ろから、はやての前に出る。
その瞳を見て、殺されそうになった時のことを思い出した。
しかしそれでも、逃げてはいけない。
天道やヴァッシュ、なのはやスバルはこんな自分のことを庇ってくれた。
その好意に、答えなければならない。
「何や、腹を括ったんか? ええ度胸やな、ならお望み通りに……」
「ごめんなさいっ!」
はやてによる怨嗟の声は、途中で止まる。
かがみは頭を下げて、精一杯の謝罪を始めた。
-
「謝っても許して貰えないのは分かってる、私がみんなを裏切ったのは分かってる、何も知らないのにみんなを侮辱したのも分かってる……どれだけ酷いことをしたかも、分かってる!
私がどうしようもない馬鹿ってことも、分かってる! 本当に、本当にごめんなさい!」
「かがみん……」
彼女の様子を見て、こなたの表情に希望が戻る。
はやてっていうあの人は、かがみが人を二人も殺したと言った。
それを聞いた時、ショックで倒れそうになった。
信じていた大切な友達が、殺人を犯したという事実。
そして、その殺された人達と親しいはやてとリインの憎悪。
(でも、かがみんは元に戻ってくれたんだ……!)
もうこれ以上、かがみが間違いを犯さない。
その事実が、こなたにとって何よりも嬉しかった。
なのはっていう人はよく知らないけど、ユーノの幼なじみでスバルの上司らしい。
それなら、信頼できる。
こなたは笑顔を浮かべていく一方、なのはははやてに声をかけた。
「はやてちゃんやリインの言いたいことも分かる。でも、かがみは本当は優しい子なの! その証拠に、今までの罪をちゃんと償おうとしてる!
だから、今からでもやり直せる! 死んだ人達の事を忘れずに、罪を背負って生きていく事だって出来るよ!」
奇しくも、その言葉は似ていた。
夢の中ではやてに責められていた際に、なのはがかがみを庇うときに言った言葉と。
初めは、二人は許さないかもしれない。
でも、時間をかけてゆっくりとかがみの事を分かってもらう。
自分も、そうやってはやて達と分かりあえたのだから。
その思いを、なのはは言葉に込める。
しかし、彼女の希望が叶うことはなかった。
「言いたいことはそれだけか」
「「え?」」
突然、はやての声が聞こえる。
それに反応して、かがみは顔を上げた。
その瞬間、コルト・ガバメントの銃口が、彼女の視界に飛び込んでくる。
「――ッ!」
反射的に天道は腕を伸ばし、銃身を掴んだ。
その瞬間、はやては銃のトリガーを引く。
そして、一発の乾いた銃声が、森の中で響いた。
-
◆
辺りに、火薬の匂いが漂う。
銃口からは、一筋の煙が吹き出した。
しかしそれらは、冷たい風がすぐに流していく。
何故、このような事が起こったか。
その答えは一つ。
「…………貴様、どういうつもりだ?」
沈黙は、天道によって破られた。
彼は、はやての握るコルト・ガバメントを左斜め上に向けている。
それによって、放たれた銃弾は誰にも当たる事はなかった。
横で立つ天道を、はやては睨みつける。
「それはこっちの台詞ですよ? 何で邪魔をするんですか」
そのまま彼女は腕を振り払った。
そして、はやては再びかがみに銃を向けようとする。
しかしそんな彼女の前に、なのはが立った。
「はやてちゃん…………どうして?」
「それはこっちが聞きたいわ」
疑問は、あっさりと返される。
はやての表情は、一向に変わらない。
いや、むしろ先程よりも険しさを増していた。
彼女の中で溢れる、怒りと憎しみの二つも。
結論からすると、かがみの謝罪は何の意味も成さない。
それどころか、負の感情をより一層増幅させる、スパイスとなってしまったのだ。
はやては、銃声によって地面にへたり込んでしまったかがみを睨みながら、口を開く。
「あんた、確かかがみと言ったな。一つ聞いてもええか?」
「え…………?」
声をかけられた事によって、少女の体がピクリと震えた。
それを見て、はやての苛立ちは更に強まる。
しかし、今は我慢だ。
この極悪人には、教えなければならないことがある。
拳銃を撃ちたい衝動を必死に堪えながら、彼女は言葉を続けた。
「今更謝られても『ハイそうですか。許してあげます』って、言ってもらえる思ってたんか? だとしたら、随分おめでたい頭をしとるんやな」
「ち、違う…………!」
「わざわざそんな三文芝居を見せつける為に、なのはちゃんに命を助けてもらうとはな…………」
言葉による暴力を、はやては止めない。
怯えるかがみの中で、先程の記憶がフラッシュバックしていく。
はやてから放たれる憎悪。
自分の犯した罪の重さ。
体中から流れていく血液。
時間と共に消える命。
そして、一人になった自分。
次々と記憶は蘇り、かがみは恐怖を覚える。
かつての自分自身と、はやてに対して。
-
「そんな猿でも出来るお芝居を考えるくらいなら、とっとと…………」
「はやてちゃんっ!」
かがみへの責めは、唐突に終わる。
乾いた音が響くのと同時に、はやての頬に衝撃が走った。
彼女の体は少しだけ、よろめいてしまう。
だが、すぐに体勢を立て直した。
「…………どういうつもりや、なのはちゃん」
八神はやては、冷たい怒りを燃やしながら呟く。
そして、振り向いた。
自分のことを引っ叩いた親友、高町なのはの方へと。
彼女もまた、怒りを燃やしている。
涙を、その瞳から流しながら。
「…………それはこっちの台詞だよ、はやてちゃん」
二人は、互いに睨みあう。
互いに同じ夢を持った、親友同士が。
互いに色々な事を語り合った、親友同士が。
互いに遊んだ、親友同士が。
互いに涙を流した、親友同士が。
互いに何度も助け合った、親友同士が。
互いに笑い合った、親友同士が。
先に口を開いたのは、はやてからの方だった。
「何でわからないんや、なのはちゃん。放っといたら……!」
「はやてちゃんこそ、何で分からないのっ!」
彼女達は、一歩たりとも譲らない。
今の二人が持つ感情は、とても違うようでとても似ていた。
何も知らないのに、かがみを侮辱したことに怒るなのは。
何も知らないのに、なのはを侮辱したことに怒るはやて。
別の世界からやって来た彼女達だが、胸の中に持つ思いは似ていた。
それが皮肉にも、対立の原因を作ってしまっている。
「二人とも、待ってくれよ!」
「お前達、いい加減にしろ!」
ヴァッシュと天道は、二人を止めようとした。
このまま揉め続けては、取り返しの付かないことになる。
それは誰の目から見ても、明らかだった。
なのはとはやては、一瞬だけ止まる。
その隙を付いて、ヴァッシュと天道は説得を続けた。
「なのはもはやても落ち着いてくれ! さっきユーノが言ってたみたいに、今は揉めてる場合じゃないでしょ!」
「その通りだ。この戦いに乗った奴はまだ残っている……こんな時に、そいつらが来れば一巻の終わりだ。状況を考えろ!」
彼らは言うが、なのはとはやての間では剣呑な雰囲気が漂い続ける。
そんな中、天道とヴァッシュに続くように、ユーノも二人の間へ出てきた。
「なのは、はやて。君たちの言い分は分かる。でも、今は……!」
「そんな風に言って、そいつの罪を有耶無耶にするんか?」
しかし、彼の言葉ははやてによって遮られる。
無論、ユーノにそのような意図は全くない。
これ以上、長年付き合ってきた二人が言い争うのが、耐えられなかったのだ。
こんな事を続けていては、きっとフェイトは悲しむ。
なのはとはやての目線は未だに交錯する中、ユーノはそう思った。
-
◆
(まずいな……このままでは、崩れ落ちるのも時間の問題だ)
二人が睨み合う中、天道は考える。
そう簡単に解決するとは思っていなかったが、まさかこんな事になるとは。
あの八神はやてという女性は、自分の知る八神はやての面影を確かに持っている。
しかし、あの時の少女からは想像できないような憎悪が、感じられた。
だがそんな事は関係ない。
今、この会場にはキングとアンジールという、殺し合いに乗った二人が残っている。
そして、金居という謎の人物。
奴らがここに現れる可能性も充分にある。
このまま二人の口論が続き、襲撃など受けてしまっては、ひとたまりもない。
こんな状態では、まともに脱出することも出来ない。
まずは、二人を落ち着かせて、それから全員を纏めなければならないだろう。
(とにかく今は、口論を止めることが先決か)
天道は結論を付けた。
◆
(どうする……どうする……どうする!? 考えろ、考えるんだ! ヴァッシュ・ザ・スタンピード!)
二人が睨むあう中、ヴァッシュは考える。
何故、はやてはかがみをあそこまで責めるのか。
何故、スバルがかがみと一緒にいるのか。
何故、はやては「名前が呼ばれなかったのか」とかがみを見たときに言ったのか。
わからないことだらけだ。
そしてスバルと一緒に現れた、なのはと呼ばれた女性。
恐らく、はやての言っていた自分とは別の世界から来た、もう一人の高町なのはだろう。
その顔と声は、あの優しい少女を思い出させる物だ。
生きていたことは、非常に嬉しい。
それと同時に、罪悪感も沸き上がった。
でも、感慨に浸ることは出来ない。
なのはの親友であるフェイトは、自分が殺したのだから。
彼女が現れてから、それを伝えようと思っていた。
しかし、今はそんな空気ではない。
ヴァッシュは、不意にかがみの方へ振り向いた。
(もう、こんな戦いには乗らないんだな……良かった)
彼女からは、ホテルで出会ったときのような敵意は感じられない。
ということは、なのはが言ったことは真実だ。
彼は荒廃した世界で、数え切れないほどの世界を切り抜けてきた男。
敵意を持つ者と持たない者を見分けるのは、造作もなかった。
だがそれよりも、友達同士の二人をこれ以上争わせてはいけない。
(とにかく今は、二人を落ち着かせないと)
ヴァッシュは結論を付けた。
◆
(なのは……はやて……)
二人が睨み合う中、ユーノは考える。
先程から何度説得しても、一向に収まる気配がない。
むしろ、時間と共に酷さを増していた。
バインド魔法を使って、強制的に止める方法もある。
だが、力ずくで説得したところで、届くわけがない。
それどころか、逆効果になる。やるにしても、これは最終手段にしなければならない。
はやてはあのかがみという少女が、シグナムを殺したと言っていた。
それを許すことが出来ないのは、当然だろう。
現に自分も、その事実を聞いたとき、ヴァッシュの時のような憎しみを感じた。
でも、なのははこれ以上人を殺さないとも言っていた。
どちらの言い分も理解できるが、どちらかに肩入れするわけにもいかない。
そんな事をしては、余計に険悪な空気になる。
(とにかく今は、なのはとはやてを止めないと)
ユーノは結論を付けた。
◆
-
「なのはさん、八神部隊長……」
なのはとはやてが言い争っている光景を、スバルは不安な表情で見つめている。
普段の二人からは、まるで想像する事が出来ない状況だ。
はやての意見は理解することが出来る。
かがみは自分やヴァッシュや始に危害を加え、こなたすらも殺そうとした。
だが、それは以前の話。
今のかがみは、自分の罪をしっかりと受け止めて、これからを生きると決めた。
だから、死なせたくはない。
「……スバル、貴方は本当にその人を信じてるんですか?」
「え?」
リインの声が聞こえ、スバルは振り向いた。
八神家の一員である祝福の風は、未だに憎悪の視線をかがみに突き刺している。
その隣で漂うアギトも、同じように警戒しているような表情を浮かべていた。
「その人は、スバル達を裏切ったそうじゃないですか……それに、シグナムやエリオも……」
「リイン曹長っ!」
冷たい言葉を、スバルは遮る。
その瞬間、リインはハッとしたような表情を浮かべた。
彼女は憎しみのあまりに、忘れてしまっている。
ここには、かがみの親友であるこなたがいることを。
はやての手によってかがみが射殺されそうになったとき、彼女は一瞬だけ思ってしまった。
当然の報いだ、と。
スバルやこなたがいるにも関わらずして。
そう気付いた瞬間、リインは自己嫌悪に襲われた。
今のかがみは、只の一般人。
もっとも、そのような考えに至っても当たり前かもしれない。
加えて、彼女は次々と家族を失ったことで、精神が疲弊していた。
いくら多くの戦場を潜り抜けたと言って、仕方のないこと。
「こ、こなた……わ、私はそんなつもりで……!」
「おいっ!」
リインの声が震えた途端、アギトはそれを一喝する。
しかし、それは届かない。
一方のこなたは、未だに震えたままのかがみを、悲しい目で見つめていた。
出来ることならかがみのことを、守ってあげたい。
でも、今の状況で出てきたところで、何かができるとも思えない。
けれど放っておいたら、取り返しのつかないことになる。
(どうしたら、どうしたらいいの…………? かがみん…………)
出来ることなら、かがみの為に何かをしたい。
だが、どうすればいいのかこなたには分からなかった。
答えは、未だに出てこない。
◆
-
(ほう? 何か随分面白そうなことになってるじゃねえか)
盗賊王、バクラは笑みを浮かべていた。
このアジト前で起こった、騒動を見たことによって。
一時はどうなるかと思っていたが、まだチャンスはある。
騒ぎに乗ずれば、何かが出来るかもしれない。
前の宿主であるかがみがいるが、もはやどうでもいい。
今は、チャンスを待つのみ。
(さて、精々頑張ってくれよ……正義の味方さん達よ!)
千年もの時を越えた王は、何を見るか。
【2日目 深夜】
【現在地 C-9 スカリエッティのアジト前】
【天道総司@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康
【装備】ライダーベルト(カブト)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、スティンガー×5@魔法少女リリカルなのはStrikerS、カブトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、デルタギア一式・デルタギアケース@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【思考】
基本:出来る限り全ての命を救い、帰還する。
1.まずはなのはとはやての口論を止め、それから体制を整える。
2.ここにいる全員を纏める。
3.キング及びアンジールは倒さなければならない敵。
【備考】
※首輪に名前が書かれていると知りました。
※天道自身は“集団の仲間になった”のではなく、“集団を自分の仲間にした”感覚です。
※PT事件とJS事件のあらましを知りました(フェイトの出自は伏せられたので知りません)。
※なのはとヴィヴィオの間の出来事をだいたい把握しました。
※放送の異変から主催側に何かが起こりプレシアが退場した可能性を考えています。
【ヴァッシュ・ザ・スタンピード@リリカルTRIGUNA's】
【状態】疲労(小)、なのはとユーノへの罪悪感、融合、黒髪化九割
【装備】ダンテの赤コート@魔法少女リリカルなのはStylish、アイボリー(5/10)@Devil never strikers
【道具】千年リング@キャロが千年リングを見つけたそうです
【思考】
基本:殺し合いを止める。誰も殺さないし殺させない。
1.まずはなのはとはやてを落ち着かせて、それからフェイトのことを話す
2.かがみを守る
3.アンジールと再び出会ったら……。
4.千年リングには警戒する。
5.アーカード、ティアナを警戒。
【備考】
※制限に気付いていません。
※なのは達が別世界から連れて来られている可能性を把握しました。
※ティアナの事を吸血鬼だと思っています。
※ナイブズの記憶を把握しました。またジュライの記憶も取り戻しました。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付いていません。
※暴走現象は止まりました。
※防衛尖翼を習得しました。
※千年リングを装備した事でバクラの人格が目覚めました。以下【バクラ@キャロが千年リングを見つけたそうです】の簡易状態表。
【思考】
基本:このデスゲームを思いっきり楽しんだ上で相棒の世界へ帰還する。
1.そろそろ宿主サマを変えたい、しかしヴァッシュは利用出来そうにない。
2.千年リングを処分されない方法を考え実行する。
3.キャロが自分の世界のキャロなのか確かめたい。
4.こなたに興味。
5.メビウス(ヒビノ・ミライ)は万丈目と同じくこのデスゲームにおいては邪魔な存在。
6.パラサイトマインドは使用できるのか? もしも出来るのならば……。
【備考】
※千年リングの制限について大まかに気付きましたが、再憑依に必要な正確な時間は分かっていません(少なくとも2時間以上必要である事は把握)。
※キャロが自分の知るキャロと別人である可能性に気が付きました。
※かがみのいる世界が参加者に関係するものが大量に存在する世界だと考えています。
※かがみの悪い事を全て周りのせいにする考え方を気に入っていません(別に訂正する気はないようです)。
※ヴァッシュを乗っ取る事はまず不可能だと考えています。
-
【ユーノ・スクライア@L change the world after story】
【状態】全身に擦り傷、腹に刺し傷(ほぼ完治)、決意
【装備】バルディッシュ・アサルト(待機状態/カートリッジ4/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式、ガオーブレス(ウィルナイフ無し)@フェレットゾンダー出現!、
双眼鏡@仮面ライダーリリカル龍騎、ブレンヒルトの絵@なのは×終わクロ、浴衣、セロハンテープ、分解済みの首輪(矢車)、首輪について考えた書類
【思考】
基本:なのはの支えになる。ジュエルシードを回収する。フィールドを覆う結界の破壊。プレシアを止める。
1.まずはなのはとはやてを止める。最終手段としては、バインドも使ってでも止める。
2.ヴィヴィオの保護。
3.ジュエルシード、夜天の書、レリックの探索。
4.首輪の解除は、状況が整うまで待つ。
5.ここから脱出したらブレンヒルトの手伝いをする。
【備考】
※バルディッシュからJS事件の概要及び関係者の事を聞き、それについておおむね把握しました。
※プレシアの存在に少し疑問を持っています。
※平行世界について知りました(ただしなのは×終わクロの世界の事はほとんど知りません)。
※会場のループについて知りました。
※E-7・駅の車庫前にあった立て札に書かれた内容を把握しました。
※明日香によって夜天の書が改変されている可能性に気付きました。但し、それによりデスゲームが瓦解する可能性は低いと考えています。
※このデスゲームに関し以下の仮説を立てました。
・この会場はプレシア(もしくは黒幕)の魔法によって構築され周囲は強い結界で覆われている。制限やループもこれによるもの。
・その魔法は大量のジュエルシードと夜天の書、もしくはそれに相当するロストロギアで維持されている。
・その為、ジュエルシード1,2個程度のエネルギーで結界を破る事は不可能。
・また、管理局がそれを察知する可能性はあるが、その場所に駆けつけるまで2,3日はかかる。
・それがこのデスゲームのタイムリミットで会場が維持される時間も約2日(48時間)、それを過ぎれば会場がどうなるかは不明、無事で済む保証は無い。
・今回失敗に終わっても、プレシア(もしくは黒幕)自身は同じ事を行うだろうが。準備等のリスクが高まる可能性が高い為、今回で成功させる可能性が非常に高い。
・同時に次行う際、対策はより強固になっている為、プレシア(もしくは黒幕)を止められるのは恐らく今回だけ。
・主催陣にはスカリエッティ達がいる。但し、参加者のクアットロ達とは別の平行世界の彼等である。
・プレシアが本物かどうかは不明、但し偽物だとしてもプレシアの存在を利用している事は確か。
・大抵の手段は対策済み。ジュエルシード、夜天の書、ゆりかご等には細工が施されそのままでは脱出には使えない。
※フェイトの死の真相を知りました。ヴァッシュを恨むつもりはありません。
【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、はやてへの強い怒り
【装備】とがめの着物(上着無し)@小話メドレー、すずかのヘアバンド@魔法少女リリカルなのは、ケリュケイオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式×2、グラーフアイゼン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ホテル従業員の制服
【思考】
基本:誰も犠牲にせず極力多数の仲間と脱出する。
1.はやてと話をして、かがみを守る。
2.全員と共にゆりかごに向かう。
3.はやてからかがみを守る。
4.出来れば片翼の男(アンジール)と話をしたいが……。
5.極力全ての戦えない人を保護して仲間を集める。
【備考】
※キングは最悪の相手だと判断しています。また金居に関しても危険人物である可能性を考えています。
※はやて(StS)に疑念を抱いています。きちんとお話して確認したいと考えています。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。
※放送の異変から主催側に何かが起こりプレシアが退場した可能性を考えています。
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【八神はやて(StS)@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS】
【状態】疲労(小)、魔力消費(大)、肋骨数本骨折、内臓にダメージ(小)、複雑な感情、スマートブレイン社への興味、胸に裂傷(浅め) 、かがみへの強い怒り
【装備】憑神刀(マハ)@.hack//Lightning、夜天の書@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
ジュエルシード@魔法少女リリカルなのは、ヘルメスドライブ(破損自己修復中で使用不可/核鉄状態)@なのは×錬金、
【道具】支給品一式×3、コルト・ガバメント(4/7)@魔法少女リリカルなのは 闇の王女、
トライアクセラー@仮面ライダークウガA’s 〜おかえり〜、S&W M500(5/5)@ゲッターロボ昴、
デジヴァイスic@デジモン・ザ・リリカルS&F、アギト@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
ゼストの槍@魔法少女リリカルなのはStrikerS、虚空ノ双牙@魔法少女リリカルなのはsts//音が聞こえる、
首輪(セフィロス)、ストラーダ(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、デイパック(ヴィータ、セフィロス)
【思考】
基本:プレシアの持っている技術を手に入れる。
1.なのはと話をして、かがみに引導を渡す。
2.バクラを警戒、ヴァッシュを乗っ取るか?
3.手に入れた駒は切り捨てるまでは二度と手放さない。
4.キングの危険性を伝え彼等を排除する。自分が再会したならば確実に殺す。
5.以上の道のりを邪魔する者は排除する。
6.メールの返信をそろそろ確かめたいが……
7.自分の世界のリインがいるなら彼女を探したい……が、正直この場にいない方が良い。
9.ヴィータの遺言に従い、ヴィヴィオを保護する?
10.金居及び始は警戒しておくものの、キング対策として利用したい。
【備考】
※プレシアの持つ技術が時間と平行世界に干渉できるものだと考えています。
※ヴィータ達守護騎士に心の底から優しくするのは自分の本当の家族に対する裏切りだと思っています。
※キングはプレシアから殺し合いを促進させる役割を与えられていると考えています(同時に携帯にも何かあると思っています)。
※自分の知り合いの殆どは違う世界から呼び出されていると考えています。
※放送でのアリサ復活は嘘だと判断しました(現状プレシアに蘇生させる力はないと考えています)。
※エネルは海楼石を恐れていると思っています。
※放送の御褒美に釣られて殺し合いに乗った参加者を説得するつもりは全くありません。
※この殺し合いにはタイムリミットが存在し恐らく48時間程度だと考えています(もっと短い可能性も考えている)。
※「皆の知る別の世界の八神はやてなら」を行動基準にするつもりです。
※夜天の書が改変されている可能性に気付きました。安全確認及び修復は専門の施設でなければ出来ないと考えています。
【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】バリアジャケット、魔力消費(中)、全身ダメージ中、左腕骨折(処置済み)、悲しみとそれ以上の決意
【装備】添え木に使えそうな棒(左腕に包帯で固定)、ジェットエッジ@魔法少女リリカルなのはStrikerS、レヴァンティン(カートリッジ0/3)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具①】支給品一式(一食分消費)、スバルの指環@コードギアス 反目のスバル、救急道具、炭化したチンクの左腕、ハイパーゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、チンクの名簿(内容はせめて哀しみとともに参照)、
クロスミラージュ(破損)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、黒のナイフ@LYLICAL THAN BLACK、ラウズカード(ジョーカー、ハートの2)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、首輪×2(ルルーシュ、シャーリー)
【道具②】支給品一式、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具③】支給品一式×2、パーフェクトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、録音機@なのは×終わクロ
-
【思考】
基本:殺し合いを止める。できる限り相手を殺さない。
1.こなたとかがみを守る(二人には絶対に戦闘をさせない)。
2.かがみと一緒に、罪を背負う。
3.状況次第だが、駅の車庫の中身の確保の事も考えておく。
4.もしも仲間が殺し合いに乗っていたとしたら……。
5.ヴァッシュの件については保留。あまり悪い人ではなさそうだが……?
【備考】
※仲間がご褒美に乗って殺し合いに乗るかもしれないと思っています。
※アーカード、金居(共に名前は知らない)を警戒しています。
※万丈目が殺し合いに乗っていると思っています。
※アンジールが味方かどうか判断しかねています。
※千年リングの中に、バクラの人格が存在している事に気付きました。また、かがみが殺し合いに乗ったのはバクラに唆されたためだと思っています。但し、殺し合いの過酷な環境及び並行世界の話も要因としてあると考えています。
※15人以下になれば開ける事の出来る駅の車庫の存在を把握しました。
※こなたの記憶が操作されている事を知りました。下手に思い出せばこなたの首輪が爆破される可能性があると考えています。
【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】気絶中、リンカーコア消失、疲労(極大、回復中)、肉体内部にダメージ(極大、回復中)、血塗れ
【装備】フェルの衣装、デュエルディスク@リリカル遊戯王GX、治療の神 ディアン・ケト(ディスクにセットした状態)@リリカル遊戯王GX
【道具】なし
【思考】
基本:?????
1.ママ……
【備考】
※浅倉威は矢車想(名前は知らない)から自分を守ったヒーローだと思っています。
※矢車とエネル(名前は知らない)を危険視しています。キングは天道総司を助ける善人だと考えています。
※ゼロはルルーシュではなく天道だと考えています。
※レークイヴェムゼンゼの効果について、最初からなのは達の魂が近くに居たのだと考えています。
※暴走の影響により、体内の全魔力がリンカーコアごと消失しました。自力のみで魔法を使うことは二度とできません。
※レリックの消滅に伴い、コンシデレーションコンソールの効果も消滅しました。
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【泉こなた@なの☆すた】
【状態】健康、悲しみ
【装備】涼宮ハル○の制服(カチューシャ+腕章付き)、リインフォースⅡ@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS
【道具】支給品一式、投げナイフ(9/10)@リリカル・パニック、バスターブレイダー@リリカル遊戯王GX、レッド・デーモンズ・ドラゴン@遊戯王5D's ―LYRICAL KING―、救急箱
【思考】
基本:かがみん達と『明日』を迎える為、自分の出来る事をする。
0.どうしよう…………?
1.スバルやリイン達の足を引っ張らない。
2.かがみんが心配、出来ることなら支えたい。
3.おばさん(プレシア)……アリシアちゃんを生き返らせたいんじゃなくてアリシアちゃんがいた頃に戻りたいんじゃないの?
【備考】
※参加者に関するこなたのオタク知識が消されています。ただし何らかのきっかけで思い出すかもしれません。
※いくつかオタク知識が消されているという事実に気が付きました。また、下手に思い出せば首輪を爆破される可能性があると考えています。
※かがみ達が自分を知らない可能性に気が付きましたが、彼女達も変わらない友達だと考える事にしました。
※ルルーシュの世界に関する情報を知りました。
※この場所には様々なアニメやマンガ等に出てくる様な世界の人物や物が集まっていると考えています。
※PT事件の概要をリインから聞きました。
※アーカードとエネル(共に名前は知らない)、キングを警戒しています。
※ヴィヴィオ及びクラールヴィントからヴィヴィオとの合流までの経緯を聞きました。矢車(名前は知らない)と天道についての評価は保留にしています。
※リインと話し合いこのデスゲームに関し以下の仮説を立てました。
・通常ではまずわからない程度に殺し合いに都合の良い思考や感情になりやすくする装置が仕掛けられている。
・フィールドは幾つかのロストロギアを使い人為的に作られたもの。
・ループ、制限、殺し合いに都合の良い思考や感情の誘導はフィールドに仕掛けられた装置によるもの。
・タイムリミットは約2日(48時間)、管理局の救出が間に合う可能性は非常に低い。
・主催側にスカリエッティ達がいる。但し、参加者のクアットロ達とは別世界の可能性が高い。仮にフィールドを突破してもその後は彼等との戦いが待っている。
・現状使える手段ではこのフィールドを瓦解する事はまず不可能。だが、本当に方法は無いのだろうか?
※ヴィヴィオにルーテシアのレリックが埋め込まれ洗脳状態に陥っている可能性に気付きました。また命の危険にも気付いています。
【柊かがみ@なの☆すた】
【状態】両手首の腱及び両アキレス腱切断(回復済み)、腹部に深い刺し傷(回復済み)、つかさの死への悲しみ、サイドポニー、はやて(StS)に対する恐怖、脱力感
【装備】とがめの着物(上着のみ)@小話メドレー
【道具】なし
【思考】
基本:出来るなら、生きて行きたい。
1.?????
2.こなたを守る。
【備考】
※一部の参加者やそれに関する知識が消されています(たびかさなる心身に対するショックで思い出す可能性があります)。
※デルタギアを装着した事により電気を放つ能力を得ました。
※変身時間の制限にある程度気付きました(1時間〜1時間30分程時間を空ける必要がある事まで把握)。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。
※第4回放送を聞き逃しました。その為、放送の異変に気付いていません。
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【リインフォースⅡ:思考】
基本:スバル達と協力し、この殺し合いから脱出する。
1.かがみを警戒する……?
2.周辺を警戒しいざとなったらすぐに対応する。
【備考】
※自分の力が制限されている事に気付きました。
※ヴィヴィオ及びクラールヴィントからヴィヴィオとの合流までの経緯を聞きました。
※ヴィヴィオにルーテシアのレリックが埋め込まれ洗脳状態に陥っている可能性に気付きました。また命の危険にも気付いています
※かがみに憎しみを抱いています。それによって、自己嫌悪も芽生えています。
【アギト@魔法少女リリカルなのはStrikerS】の簡易状態表。
【思考】
基本:ゼストに恥じない行動を取る
1.かがみを警戒する
2.はやて(StS)らと共に殺し合いを打開する
3.金居を警戒
【備考】
※参加者が異なる時間軸や世界から来ている事を把握しています。
※デイパックの中から観察していたのでヴィータと遭遇する前のセフィロスをある程度知っています。
-
これにて、投下終了です
タイトルの元ネタはトライガン・マキシマム一巻に収録された
6話のサブタイトルからです。
矛盾点、誤字・脱字などがありましたら、ご指摘をお願いします。
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投下乙です。
なのスバ合流、なのヴィヴィ親子再会、はやリイ合流、こなかが再会、やった対主催集結だ!!
……と上手く行けばよかった筈なのに、かがみを軸に思いっきり仲違いをする皆様。(いや、主にはやてとリインがかがみを殺そうとしているのを周りが止めているわけだが。)
つかはやて……言いたい事わかるがお前だってギルモン殺しているだろうに偉そうな事言うなや(他2名はマーダーなので除外)……
ていうか、近くに金居がいる状況であんまり仲違いすなー一撃入れられたら終わりやでー!!
……そういや、金居アジト近くで一体何やってるんだ??? 出待ち?
とりあえず一点気になったんですが、
『その事実が、こなたにとって何よりも嬉しかった。
なのはっていう人はよく知らないけど、ユーノの幼なじみでスバルの上司らしい。
それなら、信頼できる。』
こなた側から見てなのはは元の世界の知り合いなので、よく知らないという事は無いのでは? この辺は些細な内容なのでwiki収録時に修正すれば済む話ですが。
-
ご指摘ありがとうございます
勘違いをして、申し訳ありませんでした。
以後、このようなことがないように気を付けます
収録時に、修正いたします。
-
投下乙です
対主催集合でさあみんな一致団結して……と、簡単にはいかないよな
特にはやてとかがみはもうこれ修復不可能レベル
ここで上手くまとめないとドロドロの展開もあり得るか?
そういやはやては元世界でなのはとフェイトと口喧嘩したところから来たんだっけ
なんの因果なんかねえ
ちょっと気になった点
本文中見るとはやてはリインが自分の世界のリインだと分かっているようですが、状態表見ると違っているみたいですけど状態表の不備でいいんでしょうか
あと
>何も知らないのに、かがみを侮辱したことに怒るなのは。
>何も知らないのに、なのはを侮辱したことに怒るはやて。
前者は「はやてが」でしょうけど、後者は誰がになるのでしょうか
-
前者の状態表に関しては自分のミスです
以下のように、修正します
1.なのはと話をして、かがみに引導を渡す。
2.バクラを警戒、ヴァッシュを乗っ取るか?
3.手に入れた駒は切り捨てるまでは二度と手放さない。
4.キングの危険性を伝え彼等を排除する。自分が再会したならば確実に殺す。
5.以上の道のりを邪魔する者は排除する。
6.メールの返信をそろそろ確かめたいが……
7.ヴィータの遺言に従い、ヴィヴィオを保護する?
8.金居は警戒しておくものの、キング対策として利用したい。
後者の修正
何も知らないのに、はやてがかがみを侮辱したことに怒るなのは。
何も知らないのに、かがみがなのはを侮辱したことに怒るはやて。
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修正乙です
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もう本当に終盤なんだな
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あ、雑談スレに書き込むはずだったのに
まあいいか
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>>483
金居の性格上少し離れた場所で様子を窺っている可能性は大だな
それも今の予約次第か
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金居、キング、アンジール・ヒューレー分投下します。
-
――ふと空を見上げる。そこには変わらぬ満月が彼を照らしていた。
「嫌な月だ――」
金居はそう呟く。
昨日と同じ変わらぬ満月――自分達参加者以外には人も動物も虫もいない異常な空間――それはこの場所が作られた空間である事を意味している。
その場所に放り込まれて一方的に殺し合いをしろと言われて良い気などするわけがないだろう。
C-9、ジェイル・スカリエッティのアジトより北方数百メートルの位置に金居はいた。
放送前、プレシア・テスタロッサからの要請でアジトに集結するであろう対主催集団を崩壊させろと指示を受けていた筈の金居はアジトに向かう事無くその場所で待機していた。
プレシアの指示を無視? 確かに最終的に遵守するつもりはないが、現状で刃向かうメリットなど少ない。では何故か?
実際の所、アジト周辺に到着したのは放送開始前だった。上空から確認した所アジトには2人の参加者が既に到着していたのが見えた。
両名とも自身にとって未知の人物であった為、この2人と接触し攪乱もしくは殺害する事を考えてはいた。
だが、やはり上空から確認した所、ヴァッシュ・ザ・スタンピードと八神はやてがアジトに向かってくるのが見えていた。
そして、実際に地上に降りた後、アジトに近付こうとしたタイミングではやてとヴァッシュが到着。結果として接触のタイミングを逃してしまった。
その後、連中に気付かれない様にアジトから離れたという事だ。幸い再会での盛り上がり、及び放送が流れてきた事で周囲への警戒が多少緩んでいたため自分の存在には気付かれていないだろう。
そして、双方共に確認出来ない場所まで移動し周辺への警戒は怠らず待機していたという事だ。なお、只待っていても意味など無い為砂糖を舐めながらである。
何故、4人の集団に接触しなかったのか? それは金居自身にとって少々分の悪い賭けだったからだ。
金居、ヴァッシュ、はやては共に激闘が繰り広げられたホテルアグスタにいたがその場所から先に離脱したのはヴァッシュとはやてだ。金居はジョーカーこと相川始と戦う為その場に残った。
その後、金居と始は激闘を繰り広げたがそこにエネルとヴィヴィオという金居でも手を焼く強敵が乱入した事で金居は2人をジョーカー、そして始の戦いを見届けるため残ったはやての部下スバル・ナカジマに任せる形でホテルより離脱した。
金居が戦いに加わる前、始は既にスバル、ヴァッシュ、そして柊かがみと戦っていた。その決着については始が紫髪の少女を倒しヴァッシュとスバルを助ける形で終わった。そしてヴァッシュとスバルは始を仲間として迎えていた。
始の正体は最強最悪の存在ジョーカー、ギラファクワガタムシの祖であるギラファアンデッドである金居から見ても人類から見ても敵でしかない。だが、事情を知らないヴァッシュ達が理解出来なくても仕方のない話ではある。
つまり、もしこの場でのこのこ自分が現れた場合、始やスバルを置き去りにした事でヴァッシュやはやてから不要な疑いを掛けられる可能性が高い。少なくても始が封印された事は事実なのでどちらにしても警戒される可能性は高いだろう。
そもそもホテルを経ったタイミングが遅い筈なのに同じタイミングで現れるというのも違和感を覚えさせる要因だ。
幾らプレシアの要請とはいえ、金居にとっては不利な要因が大きい。戦いになったところで負けるつもりは無いが、後にキングとの戦いが控えている以上消耗は最小限に抑えたい。
故に現状は下手に介入せず近くで待機する事が最善と判断したのだ。時が経ち状況が変われば介入するタイミングも見えるだろう。
-
とはいえ、ただ無駄に待つ事をプレシアは望まないだろうし金居としてもそうするつもりはない。
故に金居は先を読み一手仕掛ける事にした。そう、金居の手元にあるガジェットドローン5機を利用するという事だ。
頭に命令を思い浮かべるだけで実行するそれは金居にとって強力な武器だ。金居は手元の5機にある命令を送り現在位置よりから北方向へ飛ばしたのだ。無論、アジトからは確認出来ないように。
その命令は『各種施設の探索及び破壊』、『施設に向かった参加者の殺害』である。
何故、ガジェットをアジトで繰り広げられるであろう戦闘で使わず遠くの施設に飛ばしたのか?
勿論手元に密かに置いておく事で隙を作るメリットは確かにあった。しかし一方でガジェットを所持しておく事で不要な警戒を招く危険性もある。
故に全てのガジェットを手元から離す事でその疑いを避けるという手法も有効だという事だ。
幸いガジェットへの命令は頭で思い浮かべるだけで済む為、集団でいる所でガジェットに自分以外を襲う様にし向けても自分が命令元だと悟られる可能性はさほど高くはない。
さて、先の命令を送った理由だが、それは対主催集団の次の行動を読んでの事だ。
アジトに集った参加者は次はどうするのか? おおかた首輪解除に向けて工場等他の施設に向かうだろう。
また、アジトで戦闘が起こった場合も他の施設へ待避する事も想像に難くない。
つまり、先手を打つ事で連中の次の手を潰し仕留めるという事だ。対主催の妨害になっているのならば少なくてもプレシアから文句を言われる筋合いは無いだろう。
北を見ると火の手が上がっているのが見える。どうやら工場が炎上しているのだろう。ガジェット達はちゃんと仕事をしているという事だ。
「これで首輪解除の手段が1つ潰れたな」
-
その最中、金居は今後の事を考える。放送からある程度時間が経過した。このタイミングならば連中の前に姿を現しても疑われる可能性は大分低くなる。
とはいえ絶対とは言い難い、残り人数は自身を含め12人。彼等の情報を今一度纏め直したい所だ。
まず元々の敵とも言うべきコーカサスビートルアンデッドキング、厳密に言えばここで決着を着ける必然性も無いが奴の性格上自身の目的の障害になる可能性が高い故、戦いは避けられない。
そもそも最後の1人になるまで戦う事を偽装するならばキングとも戦うという事は当然の理だろうし金居もキングと戦う事については異存はない。
幸いこの場では時間停止が行えない事は確認済みなので戦いになっても自身が圧倒的に不利という事はないだろう。とはいえ自身と同じカテゴリーKである以上その実力は互角、どういう状況になるにせよ極力自分優位に持っていきたい所だ。
次に仮面ライダーカブトこと天道総司、ライダーに変身出来ないならば戦力的に問題は無いが変身出来るならば厄介な相手だ。
また変身出来ない状況でもその能力は侮りがたい。味方だと入り込んだ所で自身の目的を看破される可能性が高いだろう。
続いてはやて、高町なのは、スバル、ユーノ・スクライア、管理局の4人だ。ユーノに関しては未知の人物だがはやてとなのは辺りに対してはある程度信頼を得てはいるが完全とは言い難い。
いや、以前仕掛けたカードデッキの仕掛を看破されたならばなのはからも警戒されている可能性も高い。どちらにせよ以前のように味方として接する事が出来るとは言い難いだろう。
またスバルに対しても彼女が始を信頼していた事などを踏まえ自分を敵と認識している可能性が高いだろう。ジョーカーが危険な存在であってもその脅威を知らない以上それも仕方がない。
続いてなのはの娘であるヴィヴィオ、ホテルでの戦いでは殺戮マシーン状態だったが、今現在は元の無力な幼女に戻った事を確認済み。故に現状警戒する必要はない。
次にヴァッシュだ。先の戦いを見た所その実力は確か。同時に人格面でも殺し合いを良しとしない事は明白。自分の事をどう思っているかは不明瞭だが警戒しておくにこした事はない。
先のホテルで始達が交戦したかがみに対しては特別脅威ではないだろう。ライダーに変身するベルトは既にスバルが取り上げている。ベルトがなければ只の少女、大きな障害にはなり得ない。
もっともライダーに変身したところで始の変身したカリスに敗れている以上その実力は始以下、どちらにしろ問題はない。
泉こなた、アンジール・ヒューレーに関しては詳細不明、もしかしたらアジトで待っていた人物かもしれないがそうでない可能性もあるため言及は避けよう。
勿論、金居自身アンデッドや仮面ライダーはともかく人間程度に負けるとは思ってはいない。
しかし前にギンガ・ナカジマ及び始と戦った時、武蔵坊弁慶が盾にならなければ自分が敗れていた状況であった事を踏まえるならば人間を侮りすぎる事は愚行と言える。
そもそもエネルやアーカード、先のヴィヴィオと言った自身の戦闘能力を凌駕する連中が数多くいる事は認めたくはないが事実だ。どの相手に対しても油断せずにゆくべきだろう。
とはいえどんな強敵であっても倒す事が可能なのはこれまでの戦いが証明している。故にそれについては絶望していない。だが、それはこちらも同じ事、いかにアンデッドといえども倒される可能性を決して忘れてはならない。
-
一方で金居自身ある事が引っかかっていた。それは先の放送が定時より10分遅れだった事だ。金居にとってこれは重要な事である。
金居視点から見た場合、10分遅れた理由は放送前に自身との接触があり、自身が無事にプレシアの言葉に従い倉庫の中身を確保しアジトに向かうかどうかを確かめていたからと説明する事は可能だ。
しかし、今回に限っては説明出来てしまっては正直まずい。要するに10分遅れてしまったら、暗に何かあったのではと思案される危険がある。
つまり、遅れたのは『何か仕掛をしていた=金居と接触していた』と悟られる可能性があるという事だ。
わかりきった事だが金居としてはこれは非常に困る話だ。散々人に参加者殺せと言っておきながらその足を引っ張るのは如何なものか。
別にサポートしてくれとは言わないがせめて足を引っ張らないで欲しいと思う。
勿論、これ自体がプレシアが参加者を攪乱させる為だけという話も無いではないが、警戒される以上自分としては良い迷惑である。真意が何であれ自分に不利益な解釈をされかねない事は避けてもらいたかった。
「定時に出来ないのなら前の放送の様に誰かに変わってもらえば良かっただろうが……」
そう毒突く金居であったが、実際3回目の放送の様にオットーにやらせれば何の問題もない話なのは確か。自分との接触で遅れたのならば正直笑えない話である。
だが、プレシアもそこまで愚者だとは思えない。もしかすると自身との接触の段階では問題は無かったがその直後に何かあったという可能性は否定出来ない。
いや、それならそれでひとまずオットー辺りに定時に行わせプレシア自身は事態の鎮圧に向かえば良い。それでもどうにもならなければ10分遅れた事について簡単で良いからフォローを入れればある程度違和感は拭える筈だ。
それをせずに単純に10分遅れただけで何の変哲も無い放送をしたとなると、漠然と放送を聞くだけの何も考えない参加者はともかく知略に秀でた者達は容易にその異常さに気付くだろう。
考えられる事としてはオットーに放送を任せられない事態が発生したという可能性。つまり、主催側の内乱である。
だが、こういう解釈が出来るとなるとその内乱でプレシア自身にも何かが起こり――最悪退場した可能性もある。
そしてプレシアがいかにも健在であるかの様に見せる為、放送はプレシアに扮した者が行うという話だ。金居自身の世界に人間に擬態するワームの存在がある以上そういう可能性があっても不思議ではないだろう。
だが――
「――何にしても現状すべき事に変わりはない」
結局の所、主催側で何かが起こったとしてもそれは想像の域を出ない。確定的な証拠が出ない以上断定は避けるべきだ。
それに仮に何かが起こっていたとしても自分優位な状況を作り出すため今後も当面は参加者同士を潰し合わせる方針に変わりはない。
そもそも主催側の事情がどうあれキングは何れ倒す敵である事に変わりはないし、参加者の中には障害となるものもいる。故に、
「あんたの望む通りに戦ってやる。もっとも俺なりのやり方ではあるがな――」
プレシアに聞こえる様にそう呟いた――
-
そんな中、1体のガジェットが金居の所に戻ってきた。前述の金居の指示に従うならば戻ってくる理由は――
「……ほう」
ガジェットが持ってきたのは3つの道具だ。一見すると全て無用の長物に見える。しかし金居の目を惹くものがそこには確かにあった。
「まさかクラブのKが手に入るとはな」
その内の1つがアンデッドが封印されているラウズカード、それも金居やキング同様カテゴリーKのカードだ。
もっとも、金居が手に入れた所で別段使えるものではない。しかし自身の世界のものである以上捨て置く理由はない。故に金居はそれをデイパックに仕舞う。
「後の2つは……よくわからんな」
残りは宝石の様な球体と何かの首飾りだった。
使い道がわからない為、今の金居にとって有用な道具ではないが他の者にとってはそうとは言えない。
故に下手に利用されるのを避けるため自分の手元に置いておく分には問題はないだろう。そうかさばるものではないというのも理由にある。
そして用事を済ませたガジェットは再び金居の指示に従い北へ向かった。
「しかし、一体何処で手に入れたんだ? まぁどうでもいい話だがな」
金居自身知る由は無いが3つの道具はある場所から回収されたものだ。
それらは聖王のゆりかご玉座の間にあった。ガジェット達は北上しループを越えてゆりかごに辿り着いた。そしてその玉座の間にあった道具の中で使えると判断したものを回収したのだ。
これまでの話を読んだ方の中には玉座の間には他にも道具があったのではと疑問に思う者も数多いだろう。しかし結論を言えば他に使える道具を見つける事は出来なかった。
何故か? そもそも玉座の間には3人の参加者ルーテシア・アルピーノ、キャロ・ル・ルシエ、フェイト・T・ハラオウンが所持していた道具があった。
だが、その後ヴィヴィオがキャロの遺体を完膚無きまでに破壊した際に力任せに攻撃を繰り返した。エネルにも匹敵する力を無尽蔵に加えればどうなるだろうか?
その結末など考えるまでもない。その周囲にも破壊が及ぶのは当然の理。結論を言えば、そこに置かれていた道具の殆どは完膚無きまでに破壊された。
破壊を免れたのは惨劇の場から離れていた首飾り型のスバルのデバイスマッハキャリバー、破壊される事の無いラウズカード、本当に幸運にも被害を避ける事の出来た球体かいふくのマテリアぐらいだった。
余談だがフェイトの道具に関してはフェイトが事切れる前フェイトの手から離れていた。そのためフェイトの遺体自体は攻撃から免れたが道具に関しては破壊に巻き込まれている。なお、フェイトの遺体はその後ヴィヴィオによって何処かへ移送されている。
なお、マテリアにしてもマッハキャリバーにしても金居にとって未知のものである以上使用は不可能。当然だがマテリアの説明書きは攻撃に巻き込まれ消失している。
マッハキャリバーについてはマッハキャリバー自身がガジェット及び金居を敵と判断したため一切の応答を断っていた。
ルーテシアに利用されて持ち主のスバルを危険に巻き込んでしまった事もあり、もう二度と敵に利用されるつもりはなかった。利用されるぐらいならば壊された方がずっとマシだと考えている。
幸い金居は自身を知らない為、現状は何の変哲もない首飾りと思われている。それで十分だとマッハキャリバーは思考していた。
-
「さて、そろそろ動こうか――」
腹ごしらえも済みアジトへ向けて歩を進めようとした矢先、一発の銃声が響いた。無論方向はアジト方面である。
「どうやら俺が手を下すまでもなく争ってくれているようだな」
このタイミングならば内部に入り込み集団を瓦解させる事も襲撃して一網打尽する事も可能ではある。
しかし油断してはいけない、内部分裂の状況だからこそ襲撃を警戒する者もいるだろう。
「どうしたものか――選択肢は数多い――いや、俺が選ぶ道は1つか――」
【2日目 深夜】
【現在地 C-7密林】
【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】健康、ゼロ(キング)への警戒
【装備】バベルのハンマー@仮面ライダークウガA’s 〜おかえり〜
【道具】支給品一式、トランプ@なの魂、砂糖1kg×5、イカリクラッシャー@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、首輪(アグモン、アーカード)、正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、デザートイーグル(4/7)@オリジナル、L、ザフィーラ、エネルのデイパック(道具①・②・③)
【道具①】支給品一式、首輪探知機(電源が切れたため使用不能)@オリジナル、ガムテープ@オリジナル、ラウズカード(ハートのJ、Q、K、クラブのK)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、レリック(刻印ナンバーⅥ、幻術魔法で花に偽装中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(シグナム)、首輪の考察に関するメモ
【道具②】支給品一式、ランダム支給品(ザフィーラ:1〜3)、マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS、かいふくのマテリア@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【道具③】支給品一式、顔写真一覧表@オリジナル、ジェネシスの剣@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、クレイモア地雷×3@リリカル・パニック
【思考】
基本:プレシアの殺害。
1.プレシアの要件通りスカリエッティのアジトに向かい、そこに集まった参加者を排除するor仲違いさせる(無理はしない方向で)。
2.基本的に集団内に潜んで参加者を利用or攪乱する。強力な参加者には集団をぶつけて消耗を図る(状況次第では自らも戦う)。
3.利用できるものは利用して、邪魔者は排除する。
【備考】
※この戦いにおいてアンデットの死亡=封印だと考えています。
※殺し合いが難航すればプレシアの介入があり、また首輪が解除できてもその後にプレシアとの戦いがあると考えています。
※参加者が異なる世界・時間から来ている可能性に気付いています。
※変身から最低50分は再変身できない程度に把握しています。
※プレシアが思考を制限する能力を持っているかもしれないと考えています。
※放送の遅れから主催側で内乱、最悪プレシアが退場した可能性を考えています。
【全体の備考】
※ガジェットドローンⅣ型×5@魔法少女リリカルなのはStrikerSがアジトより北にある各種施設に向かいました。以下の命令を受けています。
・各種施設の探索及び破壊、確保した道具は金居の所へ持ち帰る。
・施設に向かった参加者の殺害。
※工場がガジェットにより破壊されています。
※ゆりかご玉座の間に残っていた道具の殆どが使用不能になるまで破壊されています。もしかしたら何か使える物が残っているかもしれません。
-
――ふと空を見上げる。そこには変わらぬ満月が彼等を照らしていた。
「ふっ、良い月だ」
キングはそう呟く。
「何か言ったか?」
「いや、別に」
アンジール・ヒューレーの問いかけをそう返したキングの心中は高揚していた。
月光はゲームの支配者である自分だけを照らしている。一方的に放り込まれ殺し合えと言われた時は良い気はしなかったが実際はどうだろうか?
ゲームは幾つかの不測の事態があったものの概ね自分の思う通りに進んでいる。天も地も、そして全ての者達が自分の玩具であった。
月明かりは自分を祝福してくれると思えば良い気もするだろう。
E-9にある森林に2人はいた。D-2のスーパー跡地にいたはずの2人が何故ここにいるのか? そこで、少し時間を遡りつつ振り返っていこう。
そもそも2人はあの後逃走した天道となのはの追跡をしていた。逃走した方向に関しては戦闘時の立ち位置等からある程度予測出来た。その方向は西方向、故に2人はまず西へと向かった。
市街地の闇に消えた可能性も無いではなかったが敢えてその裏をかき、逆方向の平野へ向かった説もあるとキングは判断していた。
アンジールはそうではないが、キングにとってはここで2人を見失っても別段問題はない。只の戯れの1つ程度にしか思っていなかった。
結論から言えば2人を見つける事は出来なかったがその代わりにD-1に血痕をそれも比較的新しいものを見つけた。
「ふむ……」
「そんなものどうでも良いだろう、何もないなら市街地に戻るぞ」
「いや、そうでもないさ。何故こんな所に血痕が出来る?」
「ここで戦いが起こったからだろう?」
「アンジール、君はわざわざフィールドの端で戦ったりするか?」
「……そういう事か」
普通に考え参加者は人のいる市街地へ向かい当然戦いもそこで起こる。殺すにしろ組むにしろ参加者の足取りは端から中央、もしくは施設に向くのは当然の事だ。
だが、D-1はエリアの端にあり同時に周囲に施設はない。好き好んでここで戦いを起こす理由は皆無だ。しかもこの場所はD-1においても西側、ますますこの場所で戦う必然性に欠けるだろう。
「……試してみるか」
キングは更に西方向に足を進める。アンジールは何を考えているんだと思いつつ着いていくが――突然キングの姿が消えた。
「何?」
アンジールは慌てて追いかけた。そして気が付いたら景色が森に変わっていた。
「なるほど。プレシアの奴も面白い仕掛しやがって」
と、ゼロを演じる事も忘れ素の姿をキングはさらけ出していた。
「どういうことだ?」
「何、大したことじゃない。フィールドの端と端は繋がっているというだけの話だ」
一連の事から端と端は繋がっていてループするという事実に気が付いた。先の血痕の主もループしD-9へとワープしたのだろう。と、
「キング……お前主催者側の人間だったな、知らなかったのか?」
「私とてプレシアから全てを聞かされているわけじゃないさ。逃がさない仕掛をしているとは聞いていたがまさかループとは予想外だったという事さ」
「それでこれからどうする? 俺にとってはループなどどうでも良いんだが……」
「そうだな……状況から考えて2人もループを使って逃げた可能性が高い……」
キングは地図を見ながら
「よし、ホテルへ向かおうか。恐らくそこで参加者を集めているのだろう」
と、南方向へと足を進めていく。アンジールも後方のアジトを気に掛けながらもキングの後を着いていった。
「ところで――先程君は私をキングと呼んでいたが、私は君に名乗っていたかね?」
「……さっきの戦いで天道達がお前をそう呼んでいただろう。それを聞いただけだ」
「そういえばそうだったな。正直この姿の時はゼロとでも呼んで欲しいが……まぁいい」
-
その後、2人はF-9に辿り着いたがそこは崩壊したホテルと1人の半裸の男の死体しか残っていなかった。真面目な話半裸の男の死体など2人にとっては意味は無く、得る物も無い為早々にこの場から離れようとしたが、
「……あれは?」
キングは地面に何かを見つけその場所に向かった。そして
「これジョーカーのカードじゃん、何でこんな所に?」
とまたしてもゼロを演じるのを忘れカードを拾い上げる。それはハートのAのラウズカードだ。
「キン……ゼロ、そのカードがどうかしたのか?」
「いや、別に君に関係の無い事だ」
「それと同じようなカードなら向こうにもあるぞ」
と、少し離れた場所にも別のラウズカードが落ちているのが見える。
それらの位置から考え起こった事はある程度推測出来た。ホテルでジョーカーこと始は戦い激闘の末に封印された。その後、カードだけが風などで飛ばされて散っていったという事だ。
「アンジール、他にもカードが落ちているだろう。捜すぞ」
「ちょっと待て、こんなカードなどどうでも良いだろうが。何故……」
「おや、君は私に逆らえる立場だったかな? まぁ君が捜したくないというのなら別段構わ……」
「くっ……わかったそのカードを捜せば良いんだな?」
キングにとってラウズカードはある種最高の玩具、故にキングはそれを集めようとしていた。アンジールは渋々それに付き合いカード探索をした。
そして、キングの手元にはハートのA、3〜10、9枚のラウズカードが集った。
「ふむ、ジョーカーとハートの2が無いのは些か妙だな……先に拾われたか?」
こうしてカード探しをしている内にE-9まで戻ったという事だ。どうやら風が北方向に吹いていたためカードも北方向に散らばりそれらを拾っていく内に北へ進んだという事だ。
「ゼロ、そういえばさっきからバックの中で何かが騒いでいるが何かあったのか?」
「ん? ああ、こいつか。只の人質だよ、連中を従わせる為のね」
なのはから奪ったフリードリヒはキングを警戒、いやむしろ嫌悪していた。キングのした事を踏まえるならばそれも当然の事である。
故に度々フリードは暴れだそうとしていたがデイパックに押し込まれていたが故に何も出来なかったのだ。
「人質程度で連中がお前に従うとは思えないが?」
「だが少なくとも私に刃向かう事は無いだろう」
「不意を突かれ奪還されるかも知れないだろうがな」
そう口にするアンジールの言葉を聞いてキングも少し考える。
確かに先の戦闘でカブトは自分から2つのデイパックを奪取している。2度も同じ事をされるとは思わないが警戒しておいて損はない。
「そうだな……ならコレは君が持っていたまえ」
と、フリードの入ったデイパックをアンジールに渡した。
「良いのか?」
「構わないさ、他にこれといった物は何もない」
「俺がコイツを殺すとは考えないのか?」
「ソレは参加者じゃない。殺した所で君にメリットは皆無だ。それに私の意に背いて殺したり逃がしたりなど君に出来るのか?」
「……もっともだな」
「もし私に何かがあればその時は……」
キングが追いつめられた時、アンジールがフリードに刃を突き付け連中を抑制しろ……その指示をアンジールは無言で頷いた。
連中もフリードをアンジールに渡しているとは思うまい。優位に立ったと思った所で絶望させる……そう考えキングは仮面の下で笑みを浮かべていた。
真面目な話、渡した理由の中にはデイパックの中で騒ぐフリードが正直疎ましく感じていたからというのもあった。
その最中、キングは地図を確認し次の目的地をスカリエッティのアジトに定めていた。恐らくホテルでの戦いを終えた者達はそこに向かっていると判断した。
「喜べアンジール、ようやく君の望む通り戦えるだろう」
強敵とも言うべきジョーカーもエネルももう退場済み、仮面ライダーであろうとも自分を倒す事は不可能。いざとなればフリードを人質にすればよい。
放送が10分遅れた事もキングにとってはどうでも良い話、主催側で何が起こっていようが自分はやりたい様にやるだけだ。
このゲームの支配者はプレシアではなく自分――そう考えキングは足を進めていた。
-
「(――全く、何をやっているんだろうな俺は……なぁセフィロス……)」
キングの後方でアンジールは空を見上げていた。
妹達を守る為に戦い続けたが結局何も守れず、生き返らせる為に戦おうとしても結局は主催関係者と語るゼロの手駒と化す状況、
「(これでは道化人形としか言いようがないな……)」
これまでずっと守る為に走り続けたアンジールにとってキングの指示に只従うという状況は結果として落ち着いて考える時間を与えてくれた。
結論から言えばアンジール自身、キングの言葉については疑心を抱いている。そう、キングがプレシアの手先であるという部分について嘘の可能性を疑っているという事だ。
前述の通りキングの名前を知っていた事に関しては斬りかかる直前天道及びなのはの口からキングの名前が出てきた事が耳に入ったからだ。それに対してキングが何と応えていたかまでは聞き取れてはいなかったが。
勿論、それだけでゼロがキングという名前だと判断出来るとは言い難い。しかし、少し時間が経過し考えている内にある事を思い出したのだ。
それはデパートのパソコンに残っていたメールのログ。そこにはキングに警戒しろという情報があった。その時点では特に気にしていなかったがそれを思い出した事を切欠にキングの存在とゼロを結びつける事が出来たのだ。
勿論、これだけならばキングが警戒すべき存在でしかない。だが、どうにもキングの言動を見る限り本当に主催者側の人間として働いている様な感じがしない。
突然口調が変わった事と言い、追跡すると言っておきながらカード集めに走った事といい、どうにも納得がいかない。悪く言えば遊んでいるとしか思えないという事だ。
しまいには主催側の人間といっておきながらループの事を知らなかったのも気になる。
そう、主催者側の人間という話自体が自分との戦いを避け同時に手駒にする為の口からでまかせという可能性に気付いたのだ。主催者側の人間でないならば従う通りは全く無い。
自分について妙に詳しかったのは別のカラクリがあったとすれば説明が付く。
それこそ当初考えた様にセフィロス辺りが自分の情報を売ったという説もあるし、自分がメールで情報を得たのと同様に何処かの施設で情報を得たという説もある。確かメールには施設を調べろという事も書かれていた筈なので情報を得られる可能性はある。
-
勿論、本当に主催者側の可能性もあるが仮にそうだとしても許せる存在ではない。
そもそもの話、クアットロを殺したのはキングではないのか? 仮に主催者側の人間であったとしても直接の下手人を許せる道理はない。
また、根本的な部分で引っかかる事がある。オットーが放送を行った件についてだ。勿論、これ自体はオットー達も主催者側にいるという事で説明が出来るだろう。
だが、一方でクアットロ達が参加者側にいる事が気になる。オットー達がいるならクアットロ達も主催者側の人間でなければおかしいだろう。
ではクアットロ達も主催者側の人間で参加者を攪乱するために送り込まれていたのか? いや、一度クアットロと接触した限りクアットロは自分を覚えていなかったしそういう役割を与えられていたという素振りも見せなかった。
勿論、記憶を操作した上でそういう役割を与えたという説もあるだろう。だが仮にそうだとするならばなおの事キングを許す事は出来ない。
キングは参加者の情報を与えられている一方、クアットロ達は記憶封鎖されている。何故こうも扱いに差があるのだ? キングや主催側に怒りを覚えずにはいられない。
そして最終的にはクアットロ達を斬り捨てた――オットー達もきっと主催者側に命を握られているのだろう。決して主催者達を許す事は出来ない。
だが現状では主催者の望み通り彼等に従い優勝を目指し妹達を助けるしか選択肢はない。それが真実という保証も無いが嘘だという確証も無い。故に今は従うしかないのだ。
同時にキングに対しても現状は従うしかない。キングに疑心があるとはいえこれまた確たる証拠が無い。もし本当に主催者側の人物だったら彼の機嫌を損ねれば最悪優勝しても願いは叶わない。
自分が状況に流されるだけの道化人形だという事は理解している。それでも願い事を叶えたいという想いだけは誰にも否定させやしない。
「(笑えよ――セフィロス――)」
友が今の自分を見てどう思っているかはわからない。妹達を守るために奴の大切な者――八神はやてを殺しておきながら結局何も守れなかった。
今の自分の姿はさぞかし滑稽に映っているだろう。
自虐はそこで終える。何にせよ目的地はある意味本拠地とも言うべきスカリエッティのアジト。全ての決着を着けるという意味ではある意味相応しい場所だ。
「(キング、今はお前に従ってやる。だが、クアットロを殺したお前を許すつもりはない――何れ落とし前だけは着けさせてもらう――
プレシア達もだ――妹達をこの殺し合いに巻き込んで只で済むと思うな――)」
敵意だけは決して消すことなく、道化へと堕ちてもなお兄としての僅かなプライドを残して戦士は行く――
-
「そうだ――俺が選ぶ選択肢は――1つだ――」
「何か言ったか?」
「いや、別に」
【2日目 深夜】
【現在地 E-9】
【キング@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康
【装備】ゼロの仮面@コードギアス 反目のスバル、ゼロの衣装(予備)@【ナイトメア・オブ・リリカル】白き魔女と黒き魔法と魔法少女たち、キングの携帯電話@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、おにぎり×10、ハンドグレネード×4@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ラウズカード(ハートの1、3〜10)、ボーナス支給品(未確認)
【道具①】支給品一式、RPG-7+各種弾頭(照明弾2/スモーク弾2)@ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL、トランシーバー×2@オリジナル
【道具②】支給品一式、菓子セット@L change the world after story
【道具③】支給品一式、『SEAL―封印―』『CONTRACT―契約―』@仮面ライダーリリカル龍騎、爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具④】支給品一式、いにしえの秘薬(空)@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER
【思考】
基本:この戦いを全て無茶苦茶にする。
1.アジトに向かう。
2.他の参加者にもゲームを持ちかけてみる。
3.上手く行けば、他の参加者も同じように騙して手駒にするのもいいかも?
4.『魔人ゼロ』を演じてみる(飽きたらやめる)。
5.はやての挑戦に乗ってやる。
【備考】
※キングの携帯電話には『相川始がカリスに変身する瞬間の動画』『八神はやて(StS)がギルモンを刺殺する瞬間の画像』『高町なのはと天道総司の偽装死体の画像』『C.C.とシェルビー・M・ペンウッドが死ぬ瞬間の画像』が記録されています。
※全参加者の性格と大まかな戦闘スタイルを把握しています。特に天道総司を念入りに調べています。
※八神はやて(StS)はゲームの相手プレイヤーだと考えています。
※PT事件のあらましを知りました(フェイトの出自は伏せられたので知りません)。
※天道総司と高町なのはのデイバッグを奪いました。
※十分だけ放送の時間が遅れたことに気付き、疑問を抱いています。
【アンジール・ヒューレー@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】
【状態】疲労(小)、深い悲しみと罪悪感、脇腹・右腕・左腕に中程度の切り傷、全身に小程度の切り傷、願いを遂行せんとする強い使命感、キングと主催陣に対する怒り
【装備】リベリオン@Devil never Strikers、チンクの眼帯
【道具】支給品一式、フリードリヒ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
基本:最後の一人になって亡き妹達の願い(妹達の復活)を叶える。
1.キングと共に、参加者を殺す。
2.参加者の殲滅。
3.ヴァッシュのことが、微かに気がかり。(殺すことには、変わりない)
4.キングが主催者側の人間で無かった事が断定出来た場合、キングを殺す。
5.主催者達を許すつもりはない。
【備考】
※ナンバーズが違う世界から来ているとは思っていません。もし態度に不審な点があればプレシアによる記憶操作だと思っています。
※『月村すずかの友人』のメールを確認しました。一応内容は読んだ程度です。
※オットーが放送を読み上げた事から主催者側にナンバーズの命が握られている可能性を考えています。
※キングが主催側の人間という事について疑いを持っています。
月明かりに照らされながら終末の光へと誘われるかの様に虫の王達は一点へと集う――
それは偶然か? それとも必然か?
何れにせよ運命の決着は近い――
決めてとなる切札は王の手にあるのか――
あるいは――
-
投下完了しました。何か問題点や疑問点等があれば指摘の方お願いします。 容量としては29KBなので分割無しで収録可能だと思います。
今回のサブタイトルの元ネタは過去何度も使われているのでご承知の事と思いますが『仮面ライダー剣』OP『Round ZERO 〜 BLADE BRAVE』です。
ちなみに後半部分の『MOONLIT BEATLES』については一応『GALAXY ANGEL Moonlit Lovers』(ギャラクシーエンジェルのゲーム第2作)から取りました。
決して、伝説のバンド名から取ったわけではありません、結果的にそうなっただけです。(意味合いとしては『月光に照らされた甲虫達(カブトムシやクワガタムシ等)』)
ぶっちゃけ金居サイドは別段今回の話必要無いと思うけど、アジトパートで色々やっている間棒立ちというのもおかしいのでワンクッション入れさせてもらいました。
キングサイドは……真面目な話、こうでもしなきゃ他の参加者と絡む可能性低いと思った。
さぁ、アンデッド無双が始まるか?
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投下乙です
続々とアジトに集結する参加者たち
もう何があってもおかしくないなw
そして着々とアンジールに離反フラグが…でもクアットロの遺言あるからどうなんだろう…
できればこのまま最後の一人を目指してほしいな
-
投下乙です
アジトでの最終戦へと着々と進んで行ってるな
4つのカテゴリーキングとジョーカーも集まってるし、14フラグも?
さあ、一体どんな乱闘が起こるのか…
-
投下乙です
金居にキング、アンジールも着実にアジトへ向かうか
キングはボロが出かけてるが、これは何気にアンジールの離反フラグ?
そういえばこのロワって未だに金居とキングの邂逅は無かったんだな……
そろそろ二人のカテゴリーキングが出会ってしまうが、やっぱり戦闘になるかな?
てかキングは全て破滅させるのが行動理念の筈がいつの間にかちゃっかり殺し合いにのっちゃってる気が……w
-
天道、ヴァッシュ、ユーノ、なのは、はやて、スバル、ヴィヴィオ、こなた、かがみ、金居、キング、アンジール・ヒューレー
で投下します
-
「はやてちゃん……」
「なんで分かってくれへんのや……」
「なのはもはやても落ち着いてくれ!」
「お前たち、今の状況を考えろ!」
「二人とも冷静になって!」
「私は……」
「なのはさん……八神部隊長……」
「…………ぅ…………ぅ」
「かがみん……」
「あ、そ、そんなつもりじゃ……」
「おい、お前も落ち着け!」
風変わりな青系統の着物を身にまとった魔導師が説得を試み――。
茶色の陸士制服の胸元を真っ赤な血で染めた魔導師が主張して――。
深緑のスーツを着こなす司書長が場を静めようとして――。
ジャケットとジーンズという格好の天の道を往き総てを司る男が咎め――。
真紅のコートに身を包んだガンマンが仲裁を図ろうとして――。
薄汚れた下着の上に着物の上着という露わな姿を晒す女子高生は怯え――。
白きバリアジャケットを展開する魔導師は苦悶して――。
薄紫の大きな帽子と橙色の大きなリボンで着飾った幼き子は未だ眠り続け――。
水色と白のセーラー服とスカートを着用した女子高生は悩み――。
烈火と蒼天の二人の融合騎は急転する状況に混乱を隠せず。
(おいおい、なんだこれは……)
今の状況を一言で表すなら『混沌』、そんな言葉が相応しいとバクラは一人で思いを巡らせていた。
デスゲームの会場の北東部、鬱蒼と木々が茂った森の中に隠れるように建設されたスカリエッティのアジト。
その入り口付近に集った参加者は延べ9名+精霊みたいなやつ2名+バクラ。
総勢60人もいたデスゲームの参加者も24時間の間に全体の8割にも及ぶ48人が脱落して、残りは僅かに12人。
つまり実に生き残った参加者の4分の3がアジト前に集結している事になる。
しかも9名とも一応全員今のところは積極的に殺し合いをして優勝を目指すつもりではないらしい。
だが優勝するつもりがないからと言って、皆で一致団結してプレシアを打倒しようという流れにならないのは、悲しいかな人の性か。
人が集まれば集まるほど力は結束して強まる場合もあるが、その反面僅かな諍いからせっかく結集した力が崩壊する場合もある。
それが集団というものの宿命であり、どうやら今は後者の場合になりかけているらしい。
最大の焦点はバクラの元宿主でもある柊かがみへの処分についてだ。
だが実のところ大半の参加者はそれぞれ程度の差はあれど改心したかがみを信じて許す方向に傾いている。
それに対してはやてだけが強硬に禍根を断つべき、つまりここで始末するべきだと主張していた。
一応リインフォースⅡもはやての意見に同調する様子を見せているが、それでも一見すると大勢は明らかに思える。
しかしはやての主張にも納得できる部分があるために、誰もがはやての意見を頭から抑える事が出来ないでいた。
さらに危険人物のキングやアンジール、不審な行動が目に付く金居といった参加者が今もどこかで暗躍しているのかもしれない。
このままでは早々に事態の解決を図らないと最悪全滅の可能性も出てくる。
一方ではやてはここでかがみを始末しないと後々必ずや災いとなると確信しているので、何がなんでもかがみを殺そうと必死だった。
それゆえに誰も彼もが不安と焦りを知らず知らずのうちに胸の内に抱えていた。
だがそれこそバクラの望むところだ。
(ヒャハハハハハァ、元宿主様は良い仕事してくれるねぇ。なるほど、この状況なら……)
ヴァッシュの首にかけられた千年リングの中で盗賊王の魂は盗賊らしく盗みの準備に取り掛かろうとしていた。
-
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(どちらも強情だな。しかしここで上手く収まったところで前途多難だな)
天道はこの状況が収集した後に待ち受ける事態に危惧を抱いていた。
未だにこの会場を闊歩している危険人物キングとアンジール、そして裏で何を考えているか分からない金居。
そのうちアンジールはまだ説得の余地がありそうだが、ここで大きな問題がある。
アンジールがいた世界ではナンバーズはアンジールにとって妹のような存在であったらしい。
そのナンバーズ達が殺された事でアンジールが修羅に落ちた事は容易に想像がつく。
だがよりにもよってかがみはそのナンバーズの一人であるチンクを殺している。
もしアンジールに仲間になるよう説得するとなると、この事実を隠し通すか打ち明けるか悩みどころだ。
(だが、まずはこの二人をどうにかする方が先決か)
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(やっぱり、あの時はやてはかがみに……)
二人の間に割って入りつつヴァッシュは少し前の出来事を思い出していた。
それははやてがかがみと二人っきりで話したいと言って森の中に入っていった時。
今までの話からするとはやてがかがみを殺そうとしているのは疑う余地もない。
おそらくあの時も自分が見ていないところではやてはかがみを殺そうとして逃げられたのだろう。
つまり本当ならかがみはあの時はやてに殺されていたかもしれないのだ。
(俺は何をやっていたんだ……フェイトの時も、新庄君の時も、何度同じ過ちを繰り返すんだ……)
それは悔恨。
自分の知らないところで起きた凶行、だがもしかしたら止められたかもしれない惨劇。
それは確実にヴァッシュを苛む小さな要因になっていた。
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(はのはとはやてのこんな光景を見るなんて……くそっ、デスゲームめ……)
ユーノもまたなのはとはやてを仲裁しようとしている一人だった。
実はその気になれば天道やヴァッシュと違ってユーノは得意のバインドを使って二人の動きを封じる事もできた。
だがユーノはある理由からその手段の行使を躊躇っていた。
その理由は数時間前に同じような場面でバインド使って失敗したからだ。
相手は元一般人で白夜天の主として覚醒した天上院明日香。
ユーノは明日香をいきなりバインドで捕獲してしまったせいで明日香を修羅に落とした経緯があった。
もちろんバインドを使ったのは止むを得ない事情があったからだが、明日香にその意図は伝わらないまま別れてしまった。
そしてユーノの知らないところで明日香は死んでいった。
だから同じような過ちを繰り返さないためにも強硬手段に打って出るのは極力避けたかった。
だがユーノは知らなかった。
その明日香を殺した張本人が目の前にいるはやてである事に。
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(なんでこんな事に……)
スバルは今の状況を見ているしかできなかった。
初めて見る隊長同士が本気でいがみ合う場面に気圧されたのかもしれない。
だが理由はそれだけではない。
なのはとはやての諍いの他にも、背中で回復中のヴィヴィオ、かがみを責めるような発言をしたリイン。
複数の問題が同時に発生してスバルは正直軽くパニックだった。
本来なら頼りになるはずの上官であるリインは自分で自分の身体を強く抱きしめてガクガク震えている。
先程のかがみへの非難に対して激しく自己嫌悪に陥っているのは目に見えて明らかだ。
(それにこなたも……)
ふと横目で見たこなたの表情は相変わらず暗いままだった。
それも当然だ。
待ちに待った親友との再会がこのような形になったのだ。
その心中に渦巻く感情の複雑さは容易には計り知れない。
(ルルーシュ、あたしどうしたらいいんだろう)
なんとなく先程デイパックから出して左手の薬指に嵌めたお守り代わりのエメラルドの指輪に視線を向けてみた。
そうする事で少し不安が和らぐような気がしたから。
スバルの切なる願いに答えたのか一瞬指輪が光ったように見えた。
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(そ、そんな、そんなつもりじゃなかったのに……)
祝福の風を運ぶはずの融合騎リインフォースⅡは先程の自らの発言に激しく後悔していた。
いくらシグナムやエリオを殺した張本人だからとはいえ、かがみを悪しざまに非難するような言葉を言うなんて最低だ。
しかもこなたやスバルの目の前で何の配慮もなしに吐露するなど、普段のリインからは想像しがたい行動だった。
だが殺し合いという環境は本来無邪気であったリインの精神を蝕むのに十分すぎるものだった。
次々と死んでいく仲間、何もできない自分の無力さ、そして突然対面した仲間殺しの犯人。
まだ幼いリインが冷静に対処するには酷な状況というものだ。
だがリインとて管理局に身を投じる一員だ。
自らの発言をなかった事にするなど出来ない事ぐらい分かっている。
だからこそ自らの非を認めて、その上で相手に誠意を込めて謝る事を優先しなければいけない。
そのはずなのだが。
(でも、本当にかがみは許してもいいんでしょうか?)
まだ幼いリインにとって理性よりも感情が行動に与える影響は大きい。
だからこそ思い悩むのだ。
本当にかがみは許されるべき存在なのか。
確かにはやてや守護騎士のみんなは闇の書事件の罪を償った。
だがあの時は守護騎士たちが誰も殺す気はなかった事もあって、誰一人として死者は出なかった。
しかし今回は明確な殺意を持って殺人を繰り返した上での改心だ。
果たしてそのような人物でも罪を償えるものなのか。
まだ人生経験の浅いリインには俄かには判断が付かない難問だった。
(はやてちゃん……はやてちゃん……! リインは、リインはどうしたいいんですか……!)
ふと項垂れていた頭を上げて激しく主張を繰り返す主の方に顔を向けた。
何か少しでも不安を取り除きたかったから。
そして光が見えた。
その光は次の瞬間にはリインの目の前まで迫っていて――。
(え、なん、で……す…………か――)
――気付いた時にはもうリインの胴体は光に喰われていた。
何も分からなかった。
何も理解できなかった。
そしてリインは驚愕と苦悶に満ちた表情と共に消えていった。
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それはあまりに唐突な出来事だった。
それは誰も気づかないうちに終わっていた。
それは静かに一瞬で奪っていった。
それは光、誰にも阻まれる事なく全てを持っていく光。
その光が皆の前から奪っていったもの――それは幼き祝福の風、リインフォースⅡの命だった。
蒼天の融合騎は最期まで自身の身に降りかかった悲劇を理解できないまま死んでいった。
そしてこの場に残された者達も皆一様に突然の凶事に理解が追い付いていなかった。
驚愕と苦悶に満ちたリインの生首が地面に落下して光の粒子となって消えた時と同時に、皆ようやく何が起こったのか理解できた。
「い、いやああああああああああ!!!!!!!!!!」
最初に反応したのはリインのマイスターであるはやてだった。
もちろん慟哭という形で。
数秒前まで言い争っていたなのはも、あれほど殺そうと躍起になっていたかがみも放り出して、リインが消えたであろう場所にしゃがみ込んで泣き叫ぶ姿はさっきまでの姿とは打って変わって痛々しかった。
そのあまりに鬼気迫る様子にリインの傍にいたスバルやこなたは自然とその場から離れていた。
そして、残りの全員も事態を把握すると当然の疑問が湧き上がった――つまり誰がリインを殺したのか。
しかしこれはすぐに分かった。
なぜなら下手人は右手の凶器を構えたまま棒立ちになっていたからだ。
真紅のコートに身を包んだヴァッシュ・ザ・スタンピードは右腕を水平に構えたまま呆然とした表情を浮かべていた。
だがすぐに我に帰ると、すぐさまはやての元に駆け寄ろうとした。
「はやて――」
そこで皆の耳に静かにある単語が飛び込んできた。
「……憑神刀(マハ)」
その単語の意味を悟った時には、もうすでに真紅の旋風が迫っていた。
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“憑神刀(マハ)”。
異世界よりも持ち込まれた巫器(アバター)はこれまでも幾度となく参加者に大いなる被害をもたらしてきた。
その性質上その時の所有者の心の喪失に対する強靭な意志を糧に。
一度目はシグナムを失ったはやて(小)によって。
二度目ははやて(小)を失ったセフィロスによって。
三度目は家族を失ったはやて(大)によって。
だがこの3人の中ではやて(大)だけは少々事情が違った。
それは他の二人とは違って失ったものが戻ってくる可能性がある点だ。
一度目と二度目の場合、シグナムははやて(小)の目の前で、はやて(小)はセフィロスの目の前で死んでいった。
それに対して三度目の場合、はやて(大)の家族は元の世界で存命中だ。
ただしゴジラを封印するために再会が限りなく困難という意味で失った事に変わりはない。
だからはやては当初からこの会場にいる家族は全て偽者であると断じて、時として非情な対応もしてきた。
だがリインフォースⅡだけは別だ。
リインだけは唯一はやての下に残された家族であり、リインだけがこの会場内で正真正銘の家族であった。
その家族が殺された。
これは憑神刀(マハ)を手にした時の喪失を遥かに上回るものだった。
さらに人が身体を保護するために無意識にかけているリミッターを半ば外してまで魔力を注ぎ込んだ一撃だ。
それゆえにはやての今回の『妖艶なる紅旋風』の威力は半端なものではなかった。
案の定周囲にいた参加者は全員方々に吹き飛ばされてしまった。
まずなのは・ユーノ・スバルといった魔導師達はさすがと言うべきか反射的に防御魔法を展開できていた。
だがその直前ヴァッシュの凶行に気を取られていた3人の対応には一瞬の遅れが生じざるをえなかった。
しかも背後にいたこなた達のような力のない参加者を守ろうと効果範囲を広げた事で逆に耐久力が落ちた事も一因だった。
それゆえに不十分な状態で展開されたなのは達3人のプロテクションは直撃こそ防いだが、威力を完全に相殺する事は出来なかった。
はやてなら自分の身を優先してこなた達を切り捨てる選択をしたが、なのは達がその選択肢を取るはずがなかった。
次にこなたとかがみは後ろの方にいたおかげでなのは達の思惑通りプロテクションの効果範囲に入っていた。
スバルに背負われていたヴィヴィオは言わずもがなだ。
しかもここでこなたは密かにバスターブレイダーを召喚していた。
だが単純な強さならもう一枚のカード、レッド・デーモンズ・ドラゴンの方を選ぶべきだ。
なぜわざわざ弱い方のカードを選んだのか。
それはレッド・デーモンズ・ドラゴンの召喚に必要なチューナーをどうすればいいか分からなかったからだ。
しかも今回は攻撃ではなく防御なので守備力2000のレッド・デーモンズ・ドラゴンよりも守備力2300のバスターブレイダーの方が適していると判断した。
だが天道は効果範囲から少し外れたために防ぎきれず、ヴァッシュに至ってははやてに近づいていたがために直撃を食らっていた。
そしてが『妖艶なる紅旋風』が収まると、その被害の様子が月光の下に晒されていた。
あれほど鬱蒼としていた森の木々は大部分が根こそぎ倒されて、アジト前の一帯は完全に荒れ地と化していた。
しかもあちこちに多種多様な道具やその残骸が散らばっている。
ここまでの激戦で痛んでいたデイパックのいくつかが限界に達して、とうとう破れて中身が散乱しているのだ。
もちろん元が大量生産品の基本支給品一式を皮切りに、耐久力が低い道具はことごとく破損しているようだ。
しかもアジトの入り口への被害は岩盤の崩落という甚大なもので、ほぼ出入りは不可能な状態となっていた。
そして『妖艶なる紅旋風』を発動させた張本人であるはやてはしばらく蹲ったままだった。
だがその胸にはかつてないほどの激情が渦巻いていた。
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『ヒャハハハハハァ! 計 画 通 り !』
一連の惨劇の発端を作ったバクラは現状に大いに満足していた。
先程バクラがした事は簡単に言うと“乗っ取り”だ。
万丈目やかがみにしたようにヴァッシュの身体を一時的に乗っ取ったのだ。
だが今回は今までとは違った。
まず乗っ取った時間は僅かに数秒が限界で、しかも完全に身体を乗っ取る事は不可能だった。
それはひとえにヴァッシュの強固な精神の賜物。
最初の見立て通り今のバクラではヴァッシュの身体を乗っ取って自由に行動する事は不可能であった。
だが完全ではなくとも、片手を上げさせて、その精神をコンマ数秒ほど揺るがす事は可能だ。
例えるなら今のヴァッシュは水が入った器。
バクラの狙いはその器を少しでも傾けて中の水を外に零す事。
つまり精神の安定を崩してエンジェルアームを暴発させる事こそバクラの狙いだった。
だがそのような僅かな時間で暴発させたところで出来る事は限られている。
それにヴァッシュが身体の自由を奪い返したら、有無を言わさずリングが破壊されるのは必然。
でもバクラにとってはその一瞬だけで十分だった。
八神はやての家族であるリインフォースⅡを殺すのにはそれで十分だった。
そもそもこのまま現状維持だとバクラは遠からず破壊される事は目に見えていた。
今までの所業から見て参加者がバクラを生かしておく理由は皆無。
まさにかがみ以上に百害あって一利なしの存在。
特にスバルとヴァッシュは実際にバクラが唆したかがみと戦っているだけあって、その事実を痛感しているはずだ。
先程は相次ぐ戦闘で後回しにされたが、いつ千年リングの破壊を進言するか時間の問題だった。
それはバクラ自身が一番分かっていた。
だから早急に何か手を打たないとみすみす滅びの時を待つだけ。
そこで降って湧いたかのように勃発したのがかがみの処遇を巡る騒動。
これによって強硬に意見を主張するはやては若干孤立気味になっていて大分気が立っていた。
そこでヴァッシュが事故とはいえ大切な家族であるリインを殺せばどうなるか。
今以上の大混乱が起きるのは火を見るより明らか。
あとはその混乱に乗じてリングが別の人に拾われるのを待つだけ。
正直これはかなり危険な賭けだった。
だがこのまま何もしないでいるのは座して死を待つだけ。
それならば最期まで足掻いて活路を見出すしかない。
『さて、ここまでは順調だ。だが問題は誰が俺様を拾うかだ』
死んだリインを除いてあの場にいたのはアギトも含めて10人。
そのうちバクラの危険性を知っていて且つ即座に破壊しそうな奴以外ならこの混乱に乗じて上手く誘導すれば――。
「IS起動……」
だが最後の最後で天は盗賊王に微笑まなかった。
一番重要なところで引いてはいけないジョーカーを引いてしまったようだ。
『はぁ、また俺様の負けか』
「……振動破砕!!」
こうして千年リングに宿った盗賊王バクラの魂による最後の盗みは一応成功に終わった。
自らの存在という大きすぎる代償を払った上で。
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「鋼の軛」
その言葉と共に一つの魔法が発動した。
守護騎士が一人“蒼き狼”の二つ名を持つ盾の守護獣ザフィーラが得意とした拘束魔法。
本来なら対象を突き刺して動きを止める・室内の通路を塞ぐという形で使われる捕獲系の魔法だ。
だが今回は違った。
明確な殺意を以て地面より伸びた1本の条は地面に横たわる青年の首と胴体を容赦なく切り離していた。
もうそこにあるのはヴァッシュ・ザ・スタンピードという参加者のなれの果てだ。
「…………ッ、仇は取らせてもらったで」
物言わぬ骸に向けて八神はやては冷たい目線を浴びせていた。
今のはやてにとってヴァッシュはもう協力者でも何でもなかった。
「仮に100歩譲ってあの阿保餓鬼のシグナム殺しを許したとしても、あんたが仕出かしたリイン殺しは天地が引っくり返っても許されへん!
あの子はなあ、シグナム達みたいな偽者やのうて本物の家族や、私のとってはたった一人残された家族や!!
だから、それを奪ったあんたは、あの阿保餓鬼以上に許されへん!!!」
たった一人残された家族であるリインフォースⅡを殺した極悪人。
どんな事情にせよエンジェルアームを暴発させてしまった危険人物。
この時点ではやてにとってヴァッシュはかがみ以上に生かしておくべきでない人物になったのだ。
だからこそ先程のように邪魔が入る前に禍根を断った。
幸いにもヴァッシュは近くで気絶した状態で転がっているところをすぐに発見できた。
先程無理して『妖艶なる紅旋風』を放った反動で身体を動かすのも辛い状況だったので、その場から動かずに始末できたのは助かった。
だが逆に『妖艶なる紅旋風』の影響で周囲には土煙が舞い上がっているのは好都合だった。
そのおかげで月光だけが頼りの闇夜との相乗効果で視界の確保は困難だ。
つまり誰が何をしようと他の人に気付かれる可能性が大幅に低くなっている。
「で、これがボーナスか。ちっ、リボルバーナックルとか重たくて使えないちゅうねん」
ヴァッシュ殺害に際して送られてきたボーナス支給品は右手用のリボルバーナックル。
だが近接戦闘を得手としないはやてにとってそれは外れの部類だった。
初期支給品の組み合わせといい今回のボーナスといい、どうも運に恵まれていない感がある。
しかも『妖艶なる紅旋風』でデイパックがどこかへ飛んでいってしまったせいで、せっかく手に入れたボーナス支給品も容易に持ち運びできない。
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