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リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル13
当スレッドは「魔法少女リリカルなのはクロスSSスレ」から派生したバトルロワイアル企画スレです。
注意点として、「登場人物は二次創作作品からの参戦する」という企画の性質上、原作とは異なった設定などが多々含まれています。
また、バトルロワイアルという性質上、登場人物が死亡・敗北する、または残酷な描写や表現を用いた要素が含まれています。
閲覧の際は、その点をご理解の上でよろしくお願いします。
企画の性質を鑑み、このスレは基本的にsage進行でよろしくお願いします。
参戦元のクロス作品に関する雑談などは「クロスSSスレ 避難所」でどうぞ。
この企画に関する雑談、運営・その他は「リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル専用したらば掲示板」でどうぞ。
・前スレ
したらば避難所スレ(実質:リリカルなのはクロス作品バトルロワイアルスレ12)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12701/1244815174/
・まとめサイト
リリカルなのはクロス作品バトルロワイアルまとめwiki
ttp://www5.atwiki.jp/nanoharow/
クロスSS倉庫
ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/
・避難所
リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル専用したらば掲示板(雑談・議論・予約等にどうぞ)
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/12701/
リリカルなのはクロスSSスレ 避難所(参戦元クロス作品に関する雑談にどうぞ)
ttp://jbbs.livedoor.jp/anime/6053/
・2chパロロワ事典@wiki
ttp://www11.atwiki.jp/row/
詳しいルールなどは>>2-5
「他の者は知り得ない情報を何故私が知っていると思う? 何故私に攻撃が通用しないと思う?」
あの携帯サイトを見れば全ての参加者の情報を得る事なんて容易い。
攻撃が通用しない……これに至っては、キングの元々の能力だ。
だけど、こうやって考えさせる事には確かな意味がある。
「単刀直入に言おう。私は主催側の手の者だ……故に、私を殺す事は不可能!」
「なん……だと……!?」
「そして、私と手を組むと言うのであれば、貴様の妹達を特別に生き返らせてやる事も出来るが」
「何……!? それは本当か……!?」
まだ疑ってはいるようだが、ここまで来れば成功したも同然だ。
あとはそれらしい理由を並べてこいつを自分の駒にすればいい。
カブトは自分達を潰し合わせる腹積もりだったのだろうが、そうは問屋が降ろさない。
カブトが考えた想像よりも、遥かに楽しい展開に持ち込んでやろう。
「未だに殺し合いに乗ろうとしない輩が多い事は想像に難くないだろう。
私はそう言った参加者達を扇動する為にプレシアによって遣わされた者」
「どうすれば、妹達を生き返らせてくれる……?」
「私はこれから市街地へ向かい、他の参加者達に追加条件でゲームを持ちかける。
君には逆らう者を黙らせる為の、私の兵隊になって貰いたく思うのだが」
「兵隊……だと?」
「ああ、勿論……私の申し出を聞かずに他の参加者を皆殺しにして、自力で妹達を生き返らせるのも結構。
ただし、たった一人で戦って皆殺しにするか、主催側の私と繋がりを持った上で他の参加者を皆殺しにするか……
妹達を生き返らせると言う一つの目的の上で行動するなら、どちらの方がより確率が高いかは考えるまでもなかろう」
「……俺、は……」
嗚呼もう完璧だ。ニヤけが止まらない。
このソルジャー、完全に自分の事を信じているらしい。
ゼロのマスクが無ければ、仮面の下で笑っていた事が一発でバレていただろう。
声だって多少笑いが込められて居ても、それはこの変声機のお陰で誤魔化せる。
逆に嘲笑とも取れるし、余裕を見せつける上ではかえってプラスかも知れない。
(さあ、どうするアンジール?)
従わないなら従わないで、ここで殺してしまえばいい。
この男程度のレベルならば、変身すれば問題無く倒せるだろう。
だけどそれでは面白くない。何よりもカブトの思い通りになるのが気に入らない。
キングはただ、全て自分の思い通りなのだと言う事を知らしめてやりたいのだ。
そしてもう一つ。高町なのはに渡した仮面ライダーデルタのベルトについてだ。
デルタギア、恐らく自分ならば問題無く使いこなせるだろう。だが、それではつまらない。
だから高町なのはに渡した。アレを使えば、如何になのはと言えど暴走は免れないだろうから。
別にゲームに乗ってくれなくたって構わないし、その時はその時でフリードを殺せばいい話だ。
そう……キングが何よりも楽しみにして居たのは、ゲームなどでは無い。
なのはにデルタを使わせる事自体が、キングの楽しみだったのだ。
――されど一つだけ、キングも気付いていない事がある。
それは、開け放たれたままのキングのデイバッグの中身についてだ。
カブトが離脱する瞬間、クロックアップ空間の中でキングとカブトは一度だけ接触した。
キングが知覚するよりも早く、ソリッドシールドが形成されるよりも早く。
そう。カブトは一瞬よりもさらに短い刹那の内に、キングのデイバッグに掴み掛った。
そして、無造作に掴んだデイバッグが二つ――ごっそりと、キングのデイバッグの中から消えていた。
しかし、キングがそれに気付くのは、まだもう少し先のお話なのであった。
【1日目 真夜中】
【現在地 D-2 スーパー前】
【キング@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康
【装備】ゼロの仮面@コードギアス 反目のスバル、ゼロの衣装(予備)@【ナイトメア・オブ・リリカル】白き魔女と黒き魔法と魔法少女たち、キングの携帯電話@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、おにぎり×10、ハンドグレネード×4@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具①】支給品一式、RPG-7+各種弾頭(照明弾2/スモーク弾2)@ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL、トランシーバー×2@オリジナル
【道具②】支給品一式、菓子セット@L change the world after story
【道具③】支給品一式、『SEAL―封印―』『CONTRACT―契約―』@仮面ライダーリリカル龍騎、爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具④】支給品一式、フリードリヒ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具⑤】支給品一式、いにしえの秘薬(空)@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER
【思考】
基本:この戦いを全て無茶苦茶にする。
1.まずはアンジールを駒にする。
2.他の参加者にもゲームを持ちかけてみる。
3.上手く行けば、他の参加者も同じように騙して手駒にするのもいいかも?
4.『魔人ゼロ』を演じてみる(飽きたらやめる)。
5.はやての挑戦に乗ってやる。
【備考】
※キングの携帯電話には『相川始がカリスに変身する瞬間の動画』『八神はやて(StS)がギルモンを刺殺する瞬間の画像』『高町なのはと天道総司の偽装死体の画像』『C.C.とシェルビー・M・ペンウッドが死ぬ瞬間の画像』が記録されています。
※全参加者の性格と大まかな戦闘スタイルを把握しています。特に天道総司を念入りに調べています。
※八神はやて(StS)はゲームの相手プレイヤーだと考えています。
※PT事件のあらましを知りました(フェイトの出自は伏せられたので知りません)。
※天道総司と高町なのはのデイバッグを奪いました。
【アンジール・ヒューレー@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】
【状態】疲労(大)、深い悲しみと罪悪感、脇腹・右腕・左腕に中程度の切り傷、全身に小程度の切り傷、願いを遂行せんとする強い使命感
【装備】リベリオン@Devil never Strikers、チンクの眼帯
【道具】無し
【思考】
基本:最後の一人になって亡き妹達の願い(妹達の復活)を叶える。
1.本当に妹達を生き返らせる事が出来るのか……?
2.参加者の殲滅。
【備考】
※ナンバーズが違う世界から来ているとは思っていません。もし態度に不審な点があればプレシアによる記憶操作だと思っています。
※『月村すずかの友人』のメールを確認しました。一応内容は読んだ程度です。
※オットーが放送を読み上げた事に付いてはひとまず保留。
※キングが対主催側の人間だと思っています。
――CLOCK OVER――
鳴り響いた電子音は、超加速の終了を告げる合図。
誰も居ない平野まで駆け抜けて、ライダーシステムが限界を感じた。
距離にすれば、1キロ走ったかどうか。普段の天道ならば、大した距離では無い。
されど、今は状況が特別だ。クロックアップの時間制限と、なのはという名の足かせ。
それらを抱えて走り抜けた天道には、既に戦える程の体力は残されて居ない。
立ち止まると同時に、天道の身体から赤の装甲と抱えていたなのはが離れた。
「あれ……ここは? 今さっきまでキングが……」
「クロックアップで離脱した。お前を守りながらあの二人と同時に戦うのは無理だ」
「離脱……? 天道さんが……?」
らしくない。普段の天道ならば、逃げたりはしない筈だ。
例え状況が不利であっても、カブトという力がある限り、天道は戦う。
そういう人間だと思っていただけに、意外な撤退には正直面食らった。
……否、先程の天道の動揺を考えれば、それも無理は無いのかもしれない。
本人は表には出していないつもりだろうが、アンジールが妹を殺されたと聞いた時――
天道は確かに動揺していた。カブトの仮面の下で、きっと想像も出来ない様な表情をしていた。
それが一体何故なのかなど、なのはには解る訳も無いのだが……。
「今のアンジールとキングは、まず間違いなく潰し合う。どちらが勝ったとしても、俺が倒せばいいだけの話だ」
「天道さん……」
強がってはいるが、やはりいつもの天道では無かった。
何と言うか、らしくない。どういう訳か、不自然さを抱かせる。
逃げるしか無かった自分が許せないから? 戦っても勝ち目が無かったと自分自身で気付いているから?
そういった罪悪感と、アンジールの一件。それらが、天道に確かな動揺を与えているようだった。
されど、二人に立ち止まって居る時間などは与えられなかった。
「――待て、何か聞こえるぞ!」
「え……あ、これは……泣き声……?」
言われてみれば、微かに聞こえる。
女の子が、すすり泣いているような声だ。
ここからそう遠くない。このままでは危険だ。
この場で泣き声を響かせると言うのは、自分の居場所を教えているようなもの。
最悪の事態になる前に駆け付けて、泣き声の主を保護しなければならない。
何故泣いているのか、話を聞くのは保護してからでも遅くは無い。
そして、そう考えているのは天道も同じらしい。
二人はすぐに、声の元へと駆け出した。
それから間もなく、二人は声の主を発見した。
一目見た時、あまりの惨たらしさに口を塞いでしまった。
紫の髪の少女が、全裸で四肢を縛り付けられていたのだ。
それも、四肢からは止めどなく血液が溢れ出して、腹部に至っては貫通されている。
相当なショックだったのだろう。失禁した形跡すら見られる。
最早少女は、なのは達が目の前に来ても何の反応も見せなかった。
ただただ、何事かを呟きながら涙を流し続けるだけ。
口に下着を詰め込まれて居るせいで、何を呟いているのかは解らなかったが……。
もうこの子は壊れている。身体だけでなく、心も。
なのはにそう思わせるには十分だった。
「この子……あの時の……」
この少女には、見覚えがある。
あの時――このデスゲームが始まってすぐに出会った少女だ。
自分があの時この子の話をきちんと聞いて居れば、きっとこの子はここまで追い込まれなかった。
この子がこうなってしまった原因の一つは自分でもある。出来る事なら、何とかして助けたい。
だけど……今自分に出来るのは、ケリュケイオンによるヒーリングだけだ。
あの時キングは、なのはのグローブ――ケリュケイオンを見落していた。
だから、このデバイスだけはキングに奪われずに済んだのだ。
口に詰め込まれた下着を引き抜いて、掌を腹部に翳す。
そうして初めて、少女の呟きが聞きとれるものとなった。
「エリオ……シグナム……私が……殺したから、殺される……家族、殺された、から……
私……悪かった、の……かな……もう、誰も居ない……一人ぼっち……わた、し……」
「一人ぼっちじゃない……私が居る! 貴女には私が、私達がついてるから……!」
この子が何らかの理由でエリオを殺してしまった事は、もう知っている。
その上でシグナムも殺してしまったのならば、それは確かに許されざる罪だ。
だけど、今ここで死んでいい命なんてある訳が無いし、これ以上誰にも死んで欲しくは無い。
この子は自分が犯した罪と向き合って、きちんと罪を償わなければならない。
だから、まだここで殺す訳には行かないのだ。
「なんで……どうして……こんな事に……もう、死ねば……いいのに、私なんて……」
「死ぬなんて言っちゃ駄目だよ! 私はまだ貴女の名前も聞いてない……ねぇ、名前は?
名前を教えて? 私の名前は高町なのは……誰も居ないなら、私が貴女の友達になるから……」
ようやく、少女がぴくりと反応した。
ぱちりと瞬きをして、一際大粒の涙がその瞳から零れ落ちた。
それからすぐに、少女が再び口を開いた。
「わたし……私は、柊……かがみ……お願い、なのは……私を、殺して……もう、嫌なの……」
「かがみ……かがみだね? 悪いけど、そのお願いは聞けないよ。嫌って言われても、私はかがみを助ける」
「エリオ……シグナム……それから、眼帯の女の子……私が、殺した……だから、私は……もう……」
「その話なら後で聞くから……だから、生きることを諦めないで。辛い事があったなら、一人で背負い込まないで……」
どんなにヒーリングを続けても、そんな物はその場凌ぎにしかならなかった。
腹部から、手足から、止めどなく溢れ続ける血液を止めるには、回復量が少なすぎる。
この少女、既に完全に諦めきっている。完全に絶望してしまっている。
だけど高町なのはという人間は、まだ諦めてはいない。
そんな時だった。
「そいつを助ける手段、無い訳じゃ無い」
背後から、天道が声を発した。
二つのデイバッグをその場に降ろし、その中から見なれない機械を取り出した。
どうやら腕に装着するディスクらしく、緑のカードが一枚セットされていた。
リリカル遊戯王GXの世界に登場する、デュエルディスクと呼ばれる機械だ。
片手に持った説明書を読みながら、天道が言葉を続ける。
「だが、そいつに使ってやる義理は無いな」
「そんな……!」
「そいつは三人も人を殺してる。そんな奴を仲間に入れてどうするんだ」
「それは……罪は償う事は出来ます……この子だって――」
「そいつには無理だ。生きる気が無い人間を助けた所で、また同じ事を繰り返すだけだからな」
確かに、天道の言う事は正しい。
死にたがっているかがみを無理に生き返らせても、逆に今度は世界を憎むかも知れない。
何故自分を殺してくれなかった。何故こんな辛い世界で、自分を生き長らえさせた、と。
事実、かがみはこれまでも周囲を呪い続けて、その結果として三人も殺してしまったのだろう。
そんな状態のかがみを助ける事は、確かに得策とは思えない。
だけど……
「それでも、私はこの子を助けたい……! 後の事は、私が責任を取るから――」
「お前では話にならん」
「な……天道さん!?」
なのはの言葉を遮って、天道が進み出た。
全裸のかがみの前に立って、真っ直ぐにその顔を見下ろす。
鋭い視線で射抜くように見据えて、言葉を続けた。
「おい、お前……“かがみ”とか言ったな。死ねば赦されるとでも思ってるのか?」
「死なないと……あの子、私……許さない……だって、私も……浅倉、許せないから……
つかさ……殺された、から……だから、シグ……ナム、殺した私……死なないと……」
「あの子ってまさか……はやてちゃ――」
「甘えるのもいい加減にしろ! お前がそいつに殺されたとして、お前が殺した三人はどうなる……!?
例えお前を殺しても、そいつはお前を絶対に赦さない。死んだ者は還って来ないんだ。心が晴れる訳が無い。
だが、そいつが仇を取る為にお前を殺せば、死んだ三人はどう思う!? 絶対に喜びはしない筈だ……!」
なのはの言葉を遮ったのは、怒号であった。
天道総司という人間が怒鳴る姿を、なのはは初めて見た。
いつだって冷静に的確な判断を下していた筈の天道だからこそ、怒鳴るなどとは思って居なかった。
そういったイメージも手伝って、天道の迫力に拍車が掛っているように見えた。
だけど、きっとそれは錯覚などでは無いのだろう。
「生きた、って……皆、私を裏切る……だって、皆……別の世界の……人、だから……なのはも……」
「私は裏切らない……! もう、かがみを離さないから……だから、私を信じて? お願い!」
「でも……万丈、目……だって……バクラだって、私……裏切られたから……」
「だからって何だ。そいつらが裏切ったからって、高町までお前を裏切ると誰が決めた?」
おかしいな、となのはは思う。
先程まではかがみを助けるつもりは無いなんて言っていたのに、今の天道の言葉はまるで真逆に聞こえる。
まるでかがみを改心させて、助けようとしているような。助ける為に、かがみに罪と向かい合わせる為に。
もしかすると、天道は最初からそうするつもりだったのではなかろうかとすら思ってしまう程であった。
「……と、言った所で生きる気力の無いお前には何を言っても無駄だな。お前がどうしても死にたいと言うなら、俺は止めはしない。
だが……お前がここで死んでしまえば、お前の言いたい事や、伝えたい事……誰にも何も、永遠に伝える事は出来なくなってしまう」
「伝えたい……こと……そんなの……もう、私には……」
「かがみ、良く考えて……? 友達の事、家族の事……元の世界で待ってる皆や、ここで戦ってるお友達の事……本当にそれでいいの?」
恐らく、先の放送で呼ばれた「柊つかさ」というのは、かがみの家族だろう。
それはかがみの言葉を聞いて居れば想像がつくし、だからこそここまで壊れてしまったのも納得が行く。
誰だって家族が死んでしまって、平然としていられる訳が無いのだ。
それもかがみの様に元が完全な一般人なら、尚の事。
だけど、それでも生き残った人の事……死んでしまった家族の想いを、考えて欲しい。
「伝え、たい事……ほん、とは……沢山ある……こなただって、生きてる……戦ってる、って……
でも……でも……人を、殺した……こんな、私が……今更……こなたと……出来る訳ない……出来る、訳……」
「かがみ……事情があったにしろ、人を殺した事は赦されないし……多分、私だって貴女を赦す事は出来ないと思う……
だけど、それでも……貴女を想ってくれるお友達の事や、死んでしまった大切な人の想い、忘れないで欲しいんだ。
私の友達だって、何度もいがみ合って、ぶつかり合って……それでも、罪を背負ってでも、最後は解りあえたから……」
フェイトの事。はやて達ヴォルケンリッターの事。
彼女らはかがみとは状況も、罪の重さも全く違う。それくらいはなのはにだって解る。
なのははきっと、エリオやシグナム、チンクを殺された事……きっとかがみを赦す事は出来ない。
だけど、それでもかがみにはその罪を背負って、前を向いて生きて欲しいと思う。
だからなのはは、こんなにもかがみを殺したくないと必死になれるのだ。
死んだ三人の想い、ここでかがみが死んで報われるものでもないのだから。
だけど、ヒーリングを続けているとは言え、かがみが現在進行形で衰弱しているのもまた事実。
このまま話が長引けば、本当に死んでしまうかもしれない。それだけは避けたいのだが……。
そう考え始めた矢先、天道も状況を察したのか、顔色を変えて話始めた。
「良く聞けかがみ。お前にまだ生きたいと願う意思があるなら……罪を償いたいと思う心があるなら……
例え他の誰が裏切ろうと、俺と高町なのはだけは絶対にお前を裏切らない。離れていても、俺達がずっとそばに居てやる」
「えっ……う、あ……あぁ……そんな、都合良い……話……今更……うぐ……う、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――」
とっくに崩壊していた涙腺から、濁流の様な涙が零れ落ちた。
まるで子供の様に、その口から呻き声を漏らして……泣き崩れた。
今までずっと辛い思いをしてきたかがみに、初めてかけられた優しい言葉。
本心から、救いたいと願ってくれる者の言葉。
だけど、後戻りは出来ないと言う事実……重圧。
それらがかがみに、最後の壁を作って抵抗させる。
今なら解る。かがみは、本当に死にたいなんて言っていた訳ではない。
本当はこの子だって、戻りたいのだ。昨日までの、平和だった頃の自分に。
友達たちと笑いあって居たであろう頃に――。
不意に、天道が右手の人差し指をそっと掲げた。
空を軽く見上げながら、言葉を続ける。
「おばあちゃんが言っていた。……嘆くなら抗え。悔やむなら進め。不幸だと嘆くだけなら誰でも出来る……ってな。
いいかかがみ。世界はお前の敵じゃない……困難は多いだろうが、お前にはその困難に立ち向かう義務がある。
そしてそれを背負って生きて行く限り、お前には何処の世界でだって生きて行く権利がある」
「う、ぁ……だって……私……わた、しぃ……三人も……ひっく……ぐすっ……」
「その三人の事を、絶対に忘れるな。そして、その三人の分まで生きて、戦い抜け。それがお前に出来る償いだ」
ただ生きて行くだけではない。
嘆くくらいなら、抗え。悔やむくらいなら、前に進め。
殺してしまった三人の呪縛に捉われてがんじがらめにされるのではなく。
未来を生きたいと願う希望の光と、背負った三人の命、罪という名の闇。
自分の中の光と闇と……その両方を背負って、走り続けなければならない。
それこそがこれからかがみがしなければならない、終わる事の無い戦い。
自分自身を見失わない様に、自分の心と戦い続けなければならないのだ。
――それきりかがみは喋らなくなった。
ただ聞こえるのは、声にならない嗚咽と、すすり泣く声だけだ。
一人で何を考えているのかは、なのは達の知る所では無い。
だけど、生きたいと願うのであれば……何事かを告げる筈。
逆に、自分達の説得でも駄目だったなら……かがみは何も言わないだろう。
果たして、その答えは――
◆
嗚呼、私にはまだ、こんなにも想ってくれる人間が居たんだ。
なのはには、あんな酷い事をしたのに……裏切られたと思って、裏切っていたのは私の方だったのに。
それでも目の前の二人は、自分を信じてくれると言っている。裏切らないと言ってくれている。
その言葉は、今でも完全に信じる事は出来ないし……心の何処かでは、未だに疑っている。
だけど同時に、信じたいと願う自分も居る。
(わたし……生きていても、いいのかな……ここに居ても、いいのかな)
もうバクラは居ない。
つかさだって居ないし、こなただってどうか解らない。
だけど、自分にも生きる事が赦されるなら……生きていたいと思う。
そして、ここで生きていていいのなら。ここに居てもいいのなら。
犯してしまった罪はきっと、永遠に消えないのだろうけど……それでも。
誰かと一緒に、誰かの為に、死んでしまった三人の分まで戦いたい。
自分自身と戦って、生き抜きたい……きっと皆、都合が良いって言うと思うけど……。
あの関西弁の少女に会うのも、殺してしまった人の関係者に会うのも、迷惑を掛けてしまった皆に会うのも、正直に言えば怖い。
また殺されるんじゃないだろうか。自分なんて信じて貰えないんじゃないだろうか。
きっとこれまで関わった皆から、都合が良いって罵られる筈だ。
正直言って怖い。怖くて怖くて、また心がどうにかなってしまいそうだ。
だけど、それでも逃げる訳には行かない。自分はそれに立ち向かわなくちゃならないから。
罪を背負うって言うのはきっと……そういう事でもあるのだと思うから。
だから、私は――。
「なの、は……ありが、とう……私、最後に……あんたに、会えて……良かった」
「かがみ……最後だなんて言わないで!? これからも、一緒に戦おう……一緒にゲームから脱出しよう!?」
「わか……るから……私、も……駄目、だって……だから、私の分、まで……なのは……生き、て……」
「かがみ……かがみ!? そんなの駄目だよ……かがみぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」
悲しいかな、手遅れだ。
もう何をしても、間に合わない。自分でも解る。
体中からこれだけ血液を流したのだから、当然だ。
生きる気力はあっても、考え方を変える事が出来ても、現実には敵わない。
だけど最後の最後で本当の自分を取り戻す事が出来た。
そして、最後になのはにお礼を言えただけで、もう満足した。
嗚呼、今の自分は、ちゃんと笑う事が出来てるだろうか。
最後くらいは、笑顔でいたいから……
だから――
「――ありがとう」
それだけ言って、かがみは意識を手放した。
と言うよりも、意識を保って居られなくなったのだ。
喋り続けた所為か、意識の混濁が余計に早まっているように思える。
だけど、意識が途切れる寸前に、男の声が聞こえた気がした。
「合格だ、かがみ」
何が合格なのか……今となっては何も解らない。
もう何も考える事など出来ないのだから……。
◆
柊かがみが意識を手放してから、既に数十分が経過していた。
天道総司も、高町なのはも、今はその場に腰掛けて、休憩をとって居た。
二人の表情に、先程までの緊迫感は無い。どちらも今はただ身体を休める事に集中しているようだった。
本来ならば、かがみの事でそう簡単には立ち直れないのだろうが……。
「天道さん、最初からかがみを助けるつもりだったんでしょう?」
「勘違いするな。俺は生きる意志を持つものしか助けるつもりは無い」
「でも、最初からかがみを見捨てようとはしなかった……
それは、かがみが本当は優しい子だって気付いてたからじゃないですか?」
なのはが問うが、天道はそれ以上何も答えなかった。
無駄話をしている暇があるなら、体力を回復させろ、と。まるでそう言っているようだった。
今の天道は、ただ目を瞑り腕を組んで、瞑想でもしているかのように俯いているのみ。
もしかしたら何事かを考えているのかも知れないが……それは天道にしか解らない。
二人が無言になれば、すやすやと聞こえてくるのは安らかな寝息。
紫髪の少女が身体になのはの上着の着物をかけられて、ぐっすりと眠っていた。
「デュエルディスク……カードさえあれば、何度でも使える支給品。正直、こんな便利な物があったなんて……」
「と言っても、かがみの場合はあと何度か使わないと完全には回復しないだろうがな」
「その……かがみの傷、やっぱりはやてちゃんがやったんでしょうか」
「それに関しては、起きてから直接かがみに話を聞くしかないな」
犯人はほぼはやてで間違い無いのだが……天道はそうだとは言わない。
それも当然だろう。天道だって、はやてがなのはの友達だと言う事は理解している。
絶対にはやてがやったのだと言う確信があるのなら話は別だが、そうでないなら想像だけで迂闊な事は言えない。
かがみが気を失う瞬間に、天道が咄嗟にデュエルディスクを装着させ、カードの効果を使ったから助かったものの……。
下手をすれば、そんな事をする機会すらないまま、一方的に殺されていた可能性だってあるのだ。
そんな事を、あの八神はやてがした。悪い冗談だと信じたい、と……そう思っているのは二人ともだ。
「何にせよ、今は考えても無駄だ。放送まであと僅かだ。それを聞いたら、俺はこのまま西へ向かう」
「西……? でも、地図を見る限りじゃ、ここより先は……」
「俺の予想が正しければ……エリアの端と端は繋がっているかも知れない」
「え……それはどうしてですか?」
「かがみを拘束するのに使われていた服、見たところホテルの従業員の制服だ。
なのは、お前が最初にかがみと出会った時、確か制服を着てたって言ってたよな?」
「つまり、かがみは一度ホテルに行ってから、この平野まで戻って来た……?」
「ああ。そしてここにかがみを襲った犯人は居ない。何も無い平野だ、この周囲に隠れている訳でもあるまい」
天道の言っているのはつまり、こういう事だ。
かがみはなのはと出会ってから、どういう訳か一度ホテルへ向かった。
そこでホテルの従業員の制服を手にし、それを着て移動を開始した。
だが、移動途中に何者かに襲撃され、この場に置き去りにされてしまった。
とするならば、その犯人は何処へ逃げた? この周囲に隠れる場所は無い。
かがみの傷を見たところ、恐らくやられたのはそんなに前という訳でもないだろう。
そう考えれば、考えられるのは、このエリアの向こう側はそのまま東側に繋がっているという可能性。
プレシアの事だ。エリアの外に出たからって首輪爆発なんてつまらない事はしないだろうし、十分にあり得る。
「それに、ゆりかごに向かうなら東側から行った方が圧倒的に近い」
「……それだけじゃない。もしも犯人がはやてちゃんなら、どうしてこんな酷い事をしたのか……
もしそこで出会えたら、きちんと本人から話を聞く事も出来るかもしれない」
これで話はまとまった。
まずは放送を聞き、それからかがみから事情を聞く。
そしてすぐに西へ向かい、エリアが繋がっているのかどうかを確認。
それからゆりかごへ向かい、ヴィヴィオを救出する。
これが当面の彼らの行動方針であった。
キングから奪い取ったデイバッグをその手に抱え、二人は星空を見上げていた。
各々の思考を巡らせながら、この無情なデスゲームに憤りを募らせる。
こんなゲームは絶対に終わらせなければならない。
その為にも、自分達は戦わなければならないのだ。
放送まであと僅かだ。それを聞いたら、すぐにでも動きださなければならない。
そして、そう考える高町なのはのデイバッグの中には――
彼女にとっての、最高の切り札が今も眠っているのであった。
【1日目 真夜中】
【現在地 D-1 平野】
【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康
【装備】とがめの着物@小話メドレー、すずかのヘアバンド@魔法少女リリカルなのは、ケリュケイオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、フリードリヒ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式×2、レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、グラーフアイゼン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、デルタギア一式・デルタギアケース@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【思考】
基本:誰も犠牲にせず極力多数の仲間と脱出する。絶対にヴィヴィオを救出する。
1.放送を聞いた後で、かがみから話を聞く。
2.西へ向かい、エリアの端と端が繋がっている事を確かめる。
3.天道と共にゆりかごに向かい、ヴィヴィオを探し出して救出する。
4.出来れば銀色の鬼(メビウス)と片翼の男(アンジール)と話をしたいが……。
5.極力全ての戦えない人を保護して仲間を集める。
6.フェイトちゃんもはやてちゃんも……本当にゲームに乗ったの?
【備考】
※金居とキングを警戒しています。キングは最悪の相手だと判断しています。
※はやて(StS)に疑念を抱いています。きちんとお話して確認したいと考えています。
【天道総司@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康、疲労(中)
【装備】ライダーベルト(カブト)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、スティンガー×5@魔法少女リリカルなのはStrikerS、カブトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【思考】
基本:出来る限り全ての命を救い、帰還する。
1.放送を聞いた後で、かがみから話を聞く。
2.西へ向かい、エリアの端と端が繋がっている事を確かめる。
3.なのはと共にゆりかごに向かい、ヴィヴィオを救出、何としても親子二人を再会させる。
4.一応あとで赤と銀の戦士(メビウス)の思惑を確かめる。
5.キング及びアンジールは倒さなければならない敵。
6.エネルを捜して、他の参加者に危害を加える前に止める。
【備考】
※首輪に名前が書かれていると知りました。
※天道自身は“集団の仲間になった”のではなく、“集団を自分の仲間にした”感覚です。
※PT事件とJS事件のあらましを知りました(フェイトの出自は伏せられたので知りません)。
※なのはとヴィヴィオの間の出来事をだいたい把握しました。
【柊かがみ@なの☆すた】
【状態】全裸、両手首の腱及び両アキレス腱切断(回復中)、腹部に深い刺し傷(回復中)、疲労(極大)、つかさの死への悲しみ、サイドポニー
【装備】デュエルディスク@リリカル遊戯王GX、治療の神 ディアン・ケト(ディスクにセットした状態)@リリカル遊戯王GX
【道具】ホテル従業員の制服
【思考】
基本:出来るなら、生きて行きたい。
0.ありがとう、なのは……。
1.……(気絶中)。
【備考】
※一部の参加者やそれに関する知識が消されています(たびかさなる心身に対するショックで思い出す可能性があります)。
※デルタギアを装着した事により電気を放つ能力を得ました。
※変身時間の制限にある程度気付きました(1時間〜1時間30分程時間を空ける必要がある事まで把握)。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。
【チーム:スターズチーム】
【共通思考】
基本:出来る限り全ての命を保護した上で、殺し合いから脱出する。
1.まずは現状確認。
2.協力して首輪を解除、脱出の手がかりを探す。
3.出来る限り戦えない全ての参加者を保護。
4.工場に向かい首輪を解析する。
【備考】
※それぞれが違う世界から呼ばれたという事に気付きました。
※チーム内で、ある程度の共通見解が生まれました。
友好的:なのは、(もう一人のなのは)、(フェイト)、(もう一人のフェイト)、(もう一人のはやて)、ユーノ、(クロノ)、(シグナム)、ヴィータ、(シャマル)、(ザフィーラ)、スバル、(ティアナ)、(エリオ)、(キャロ)、(ギンガ)、ヴィヴィオ、(ペンウッド)、天道、(弁慶)、(ゼスト)、(インテグラル)、(C.C.)、(ルルーシュ)、(カレン)、(シャーリー)
敵対的:アーカード、(アンデルセン)、(浅倉)、相川始、エネル、キング、アンジール
要注意:クアットロ、はやて、銀色の鬼?、金居、(矢車)
それ以外:(チンク)・(ディエチ)・(ルーテシア)、柊かがみ、(ギルモン・アグモン)
これで投下終了です。
最後のなのはの状態表のフリードはミスです。
wiki収録時に削除して修正しておこうと思います。
さて、今回のMは「Mirror(鏡)」の意。柊かがみの鏡。
また、かがみとはやて、天道とアンジール、それぞれ自分自身を映し出した鏡。
で、後半の「M」はマイナスのMの意味もあります。毎度ながらこじつけです。
他の書き手さんの作品も合わせて、ロワ完結までにAからZまで全部出せたらなぁとか思ってます。
ここからは「あとがき」と言う名の「言い訳」です。
エリオに次いで、多分最初にかがみが壊れてしまうきっかけを作った自分が言うのもなんですが、かがみは本当は優しい女の子だと思うんですよね。
色んな事があって、全部を周囲の所為にして、挙句やさぐれてしまったのは明らかにかがみの非だと思うけれど。
だけどはやてに殺されかけて、多分今までここの読者達がずっとかがみに言いたいと思ってた事をはやてが直接ぶつけてくれて、
自分はようやく、かがみにもバクラとかの割り込み無しに自分の行動を振り返り、考え直す時が来たんだ、と思いました。
実際、自分ははやてとのやりとりが無ければかがみでこんな話を書こうと思う事も無かったと思いますし……。
そんな訳で、“本当”のかがみらしく、弱くても変わろうとする姿、立ち向かおうとする姿を描写したつもりです。
またこんな都合の良い話を書きやがって、と思う方も大勢いるとは思いますが……。
長々と失礼しました。それでは、指摘などあればよろしくお願いします。
自分の作品の感想書かない時点でバレバレなのでトリ付きで失礼。
gF氏、投下乙です。
とりあえずかがみはようやく反省したか……手足の機能(腱を切られている)まで回復出来るかは微妙だからまさしくマイナスからのリスタートだが……まぁはやてとアギト以外は許すだろうけど……
それにしてもはやてにとっては涙目だなぁ、なのはと天道にまで自分の悪行知られるわけだし。
一方のキングは相変わらずやりたい放題、3人からフリードとか道具奪って(まぁ一部天道がGetしたけど)マスター気取りかよ。アンジールはもう……うん、道化やね。
ようやくなのはがレイハー奪還成功(無事使えるかどうかわからんけど)かやっと主役になれるか?……(なのはの状態表にキングに奪われた筈のフリードがあるけどこれは削除ミスだよな)
なんか前の話が8時過ぎぐらいだと思ったらもう放送直前か……天なのこの6時間アンジールとキングに翻弄されただけな気がする。
>ロワ完結までにAからZまで全部出せたらなぁとか
……今まで出てきたのがT、K、R、L、A、I、H、Y、Mの9つ……後17もあるのか……
拙作『A to J』は流石にノーカンだからなぁ……
ここから書き忘れた拙作の言い訳を、『A to J』はA〜KそしてJOKERを含めた全てのラウズカードという意味(Wのガイアメモリが剣のラウズカードになったと考えてもらえば)ですが。
当初は『Jの継承(仮)』で前後編でのプロットだったけど、短く纏めたかったというのも理由もあり、またラウズカード絡みの話は今回が最後になりそうでなおかつ劇場版のタイトルがしっくり来るという判断だったんですよね。
正直、他に『A to Z』使いたかった人には少し申し訳無かったと思いましたが(勿論自分は使っても構わない)。
……って、フリードのミスは既に氏自身語っていたか……
投下乙です
ヴィヴィオはヤバい。物凄くヤバいわ…
なのはらと合流できたら、スバルが上手く納得できたら或いは…
スバルは懸命に考察してるな。原作では単純みたいなイメージあったけどここのスバルは必死に答えを出そうとしてるな
このままこなたらと合流するとしてもはやてがなぁ
かがみん、正直に言うとこのロワで本性が出たって感じてたんだよな
前からかがみんの悪い部分が目に付いてたがこのロワではそれがよく出てたと感じてたよ
頑固で嫌いな物には容赦が無くて気が短いなぁとも思ってました。自分がツンデレが好きでないのもありますが
ただそれでも優しくていい子だと思うのは同意なんですよ。いい所もあるんですよw
なるほど。前作のはやての影響ですか。こういう展開もあるのかと感心
天道となのははとりあえず一息付けたか。支給品は奪われたがレイハが帰ってきたぞw
キングはもうね…やりたい放題し放題でロワ充してるなw ゼロの仮面も気にいってるみたいだしw
アンジールは…道化以外の何物でもないわ。可哀そうだが無残な最期しか思い浮かばん
さて、次ははやてが涙目になるのかそれとも…
投下乙です
あれほど悪行を重ねたかがみに救済か、虫唾が走るな(褒め言葉)
でもたまにはこういう救いもありか、読み終えてほっとした
そういや一気に時間進んだ気がしたけど、回復とか考えたらそんなもんか
ちょっと気になったところ
なのはやアンジールがここまでの流れから見て些か違和感を覚えます
アンジールは前回で覚悟完了しているにもかかわらず即行でフラフラしているし
なのはもいくら不意をつかれたからと言って「―――ひっ!?」とか悲鳴を上げるほどやわではないと思います
その辺り描写が不足しているのか意図的に情けなくしているのか
どうもキャラのブレがちょっと見過ごすには致命的な気がしました
二人とも投下乙です
>A to J/運命のラウズカード ◆7pf62HiyTE
ヴィヴィオ地味にヤバいな、もう見ていられない…
ほんの数時間前まではほとんど無力な子供だったのに…なんだこの急転直下振りは…
そしてスバルはみんなの想いを継いで頑張るとか諸に王道だな
>Mの姿/鏡 Mの姿/マイナスからのリスタート ◆gFOqjEuBs6
ただの一般人がいきなり殺し合いに巻き込まれたらそりゃあ最悪な手段に転ぶのは仕方ない
でもいざ自分がした事をまざまざと見せつけられて向き合えるのは大きな一歩だよな
それにしてもこのキング相変わらずノリノリである
>>366
アンジールに関してはそこまで懸念するほどではないかと
いきなり主催側?の人物が現れて妹を生き返らせてやろうと言われたら覚悟完了のアンジールでも揺らいでも不思議ではありません
それにはっきりと形として見えるのは状態表だけですから
(状態表は所詮付属的な位置だからある程度無視しても構わないでしょう)
でもなのはは少しエースオブエースとしては情けない気がしないでもない
Sts作中そうは見えなくてもある程度の修羅場は潜っているはずだから……違和感を覚えるという意見は否定できないかも
だけど今回のは書き手の匙加減の域を出ない気もしないではない
フォローなり加筆なりあった方が良い気がするけど、そこまで強くは言えないかな
なのはは確かに可愛すぎるな。「ひっ!?」をなんか別の台詞に変えるだけでも変わると思う。
アンジールに関しては俺もとくに違和感は感じないかな。元々振り回されてばかりの道化だったし。
キングを主催一派と勘違いして妹たち復活云々でブレるのは分るが、バスターソードの事やザックスの事を追及されただけで取り乱すってのはなんとなくポクない気が。
セフィロスから聞いたとか、元世界が同じでザックスから伝聞したたとか、一応理由は色々と考えられると思いますし。
まあこのへんは、矛盾というより作者の解釈の範疇だから、修正しなくても問題ないけど。
取り敢えずなのはについては修正に賛成。
一応なのはも、十年以上一線に立ち続けた歴戦の魔導師な訳だし、流石に違和感が強すぎかと。
セリフを変えるだけで充分だと思いますし。
今の話題とは別ですが気になった点
>>356 で天道がデュエルディスクの説明をする場面で説明書を読むシーンがありますが、件の説明書はないはずです
と言うのもそのデュエルディスクは106話「Road to Reunion」にてセフィロスが放置して143話「キングの狂宴/狙われた天道」にてキングが回収したものです
だから説明書はセフィロスが持ったままで回収されたのはディスクのみとなります
しかも天道となのははここまでDMの知識が皆無のままこの場面になるのでいきなり使い方が分かるのは無理があると思います
さらに今まで二人が遭遇したカード類は龍騎に代表されるようにカードを引き抜いて使用するものでした
だから自然な流れで行けばディスクからカードを引き抜いて使用するのが普通だと思われます
しかしそれではカードは1回しか使えずかがみが命を取り止めるには届かなくなってしまうと思います
だからこのままだと最悪かがみ死亡という展開になってしまう可能性が・・・
ご指摘ありがとうございます。
なのはに関しては今となっては自分でもなんでそんな事を言わせたのか……いや、自分が恥ずかしいです。
理由としては多分、自分の中でのなのはのイメージは9歳時代の方が圧倒的に強い(自分が書いてるクロス作品も全て子供時代)事、
それからもう一つは単純に指摘のあった部分をあまり考えずに流れで書いてしまったから、というものだと思います。
「今のアンジールに説得は無駄だ」という事を理解させる為の手段としてその描写を入れたんですが、
目的を優先し過ぎた所為で、手段がおざなりになってしまったというのは自分でも思います。
ですので、なのはの台詞に関してはwiki収録時に適当な台詞に変換しておこうと思います。
次にアンジールに関して。
これに関して、自分はアンジールの最終目的は「優勝」では無く、「妹たちの蘇生」であると判断しています。
前回優勝を目指す方向で覚悟完了したのも、そもそもは妹を蘇らせる為。
なので、最終目的である「妹」をネタに揺さぶりを掛けられれば、ブレても可笑しくないと思っています。
しかし、そうなると確かにザックスやバスターソード程度のネタでブレるのはどうかと思いました。
後日、その部分の描写を加筆修正した上で、修正スレの方に投下しようと思います。
また、アンジールの状態表にも意味の解らないミスを発見しましたので、それも合わせて修正しておきます。
最後になりますが、言い訳です。見苦しいので読まなくても大丈夫な話です。
今回の修正で、アンジールの扱いがああなったのは、自分の好きなキングを立たせる為だ……と思う方も居るかも知れません。
ですが、それは違います。正直言って自分はキングが嫌いです。度々描写する機会がありますが、その度に心底鬱陶しいと思っています。
その一方で、キングとは逆にアンジールというキャラクターは自分としてはFFの中でも割と好きな方だったりします。
では何故あんな風になったのかですが……キングに関して毎回気を配るのは、自分の中で考えられる最大限の鬱陶しさ。
自分が第三者なら、何が一番キングに腹立たしさを覚えるか、という所だったりします。
それを考えた上で書いた結果がアレです。我ながらキングマジうぜぇ、と思ってます。
ただ実際、そういう考え方の方がキングというキャラを書く上では逆に有利になると思うのです。
いや、何が言いたいかと言うと、自分は別に好きなキャラを贔屓したつもりで書いた訳ではない……という事なんですけど、
なんかもう完全に言い訳にしか聞こえないし他の方からしたら「だから何だ」って話だろうと思いますので、この辺にしておきます。
それでは、他に何か指摘などあればよろしくお願いします。
おっと……更新して無かった。
>>370 に関して、了解しました。
デュエルディスクの使用に関しても、納得出来る形に修正して投下しようと思います。
了解です、修正お待ちしています
これより、ユーノ・スクライアと泉こなたの分の本投下をします
辺りは闇に包まれ、真冬のように風が冷たくなっていた。
殺し合いという、異様な現実を象徴するかのように。
その中で、デイバッグを肩に掲げる一人の少年が、足を進めていた。
ランタンで闇を照らしながら、ユーノ・スクライアは地図を見ている。
「えっと、今はD−8……だね」
『それで合っていると思われます』
ユーノの呟きを、無機質な電子音声が返答する。
それは、今は亡きフェイト・T・ハラオウンの相棒と呼べるインテリジェントデバイス、バルディッシュ・アサルトの声だった。
彼らは今、D−8地点にいる。
何かが封印されていると思われる車庫の前で、今後の行動方針について考えた後に、移動を開始したのだ。
その目的地は、C−9地点に存在するスカリエッティのアジト。
理由は、自分達の命を握っている首輪を解析するため。
あれから考えた末に、まずはこの問題の解決に専念することにした。
首輪がある以上、参加者全員の行動が制限される。
特にあと数時間経つと、四回目の放送が行われる時間だ。
そうなっては、禁止エリアが増えて命の危険が増す。
それらの問題を解決するために、まずは首輪の解析を急がなければならないと、ユーノは判断した。
これから行く施設はバルディッシュが言うには、ミッドチルダを震撼させたJS事件の首謀者である科学者、ジェイル・スカリエッティの拠点らしい。
そのような場所ならば、首輪を解析するための設備も、ある程度は整っている可能性はある。
(でも、あまり楽観的には考えられないな……)
ユーノは、心の中で呟いた。
この施設が、完全な物とは考えられない。
地図には『スカリエッティのアジト』という名前が書かれていたが、実際の内部はどうなっているか。
元の世界に存在する設備が、全て揃っているのか。
いや、その可能性はあまり期待できない。
主催者であるプレシア・テスタロッサが、参加者に脱出のヒントを与えるような真似をするだろうか。
そうなると、施設の名前を借りただけの全くの別物、という可能性も充分にある。
外装だけを真似て、実際の建物に設置されていた設備は全く存在しない。
もし存在していたとしても、起動しない可能性だってある。
万が一、全ての施設が揃っていたとして、使用できたとしてもだ。
安心は全く出来ない。
(この施設の存在が、罠かもしれないし……)
理由は、工場やアジトと言った設備の整っている施設が、他の場所以上に厳重な監視が敷かれている可能性があるからだ。
これらの施設には、参加者には見つけることの出来ない大量の監視カメラが置かれていて、主催側に情報が送られる。
その結果、首輪を外した者はすぐさま命を奪われるに違いない。
そうでなければ、ゲームを続けることは不可能だ。
だからこそ、プレシアはアリサ・バニンクスを見せしめに殺したのだろう。
参加者に恐怖を植え付けるために。
それだけではない。最悪のケースとしては、殺し合いの続行が困難と判断した主催側が、会場を破棄することも考えられる。
無論参加者は、ゲームの証拠を残さないために、一人残らず皆殺しだ。
考案の結果、首輪の解除とゲームオーバーは、隣り合わせにある。
故に、これからスカリエッティのアジトへ向かい、首輪の解析をすることは、大きなリスクを伴う行為だ。
こちらが勝てる可能性が全く期待できない、危険極まりないギャンブル。
仮に解除に成功したとしても、制限から解放されるとはとは限らない。
それでも、長きに渡る友人である高町なのはや八神はやてを初めとした、殺し合いに巻き込まれた人間を救うために、やるべきだ。
この会場に連れてこられてから、逆転に繋がるような行動はほとんど行ってなかった。
これ以上、時間を無駄に消費するわけにはいかない。
それに、危険を犯す覚悟はとうに決めている。
自分を守るために死んだ、ブレンヒルト・シルトにもそう言ったのだから、今更引き下がるわけにはいかない。
ユーノは自分にそう言い聞かせて、ランタンで道を照らしながら漆黒の中を進む。
彼の周りを覆うそれは、この世の中に存在する物ではなく、まるで冥府の闇のようだった。
参加者を、死後の世界に引きずり込むような。
余談だが、彼の考案はとてもよく似ていた。
今はもうこの世にいない、戦闘機人No.4・クアットロの考えと。
これは、偶然に過ぎない。
それを彼が気付くことはないし、何より気付いたところでどうなるわけでもないだろう。
そんなユーノは、バルディッシュと共に先の見えない闇の中を進み続けた――
*
鬱蒼と生い茂った森林の中に、洞窟があった。
その中は、微かな明かりだけに照らされていて、薄暗い。
歩く者の気分を害するような環境だが、二人は周囲を警戒しながら歩いている。
視界の先がはっきりしない道の中を、泉こなたは進んでいた。
彼女の脇では、ユニゾンデバイスのリインフォースIIが宙を漂っている。
あれから、入り口の前で待っていても何も始まらないとこなたが提案して、リインは悩みながらもそれを受け入れた。
自分達を縛り付けている、首輪を解除するための手がかりを見つけるために。
このような施設ならば、そういった機材が存在する可能性がある。
今、別行動を取っているスバル・ナカジマの為に、それを見つける必要があった。
幸いにも、この施設には自分達以外の参加者や、罠のような物は見られない。
「う〜ん、ここにある部屋ってもうみんな調べたんだよね?」
「そうですよ、さっきの部屋で最後になりますね」
こなたの疑問に、リインは答えた。
突如、戦いの始まったホテルを離れてから、既に数時間が経つ。
スバルの足を引っ張らないように、目的地であるこのアジトに来た。
ここでは、自分の見たことが無い電子機器を見つける。
特撮作品に出てきそうな、実験用と思われる巨大なテーブル。
怪しげな黄色い液体が入った、巨大な試験管。
様々なデータが入っていると思われる、複数のパソコン。
どれも、怪しげな実験場という雰囲気を醸し出す物だった。
だが、それを見つけたところでこなたにはどうすることも出来ない。
多くのネットゲームをしてきたので、ここに置かれているパソコンの操作自体は可能だろう。
だからといって、それを使って複雑な機械の解析など、出来るはずがなかった。
ましてや、この首輪にはこなたの知らない、魔法という技術によって作られている可能性もある。
そうなっては、手の出しようがない。
やがて彼女は体を休めるために、備え付けられた椅子に目を向けた。
念のために、外から持ち出した木の棒でそれを突く。
何も起こらないことを知り、それが普通の椅子であると判断した。
「ちょっと、この辺で休もうか」
「そうですね」
溜息を吐きながら、こなたは呟く。
彼女は、休憩を取りたかった。
殺し合いと言う場において、泉こなたという存在は、何の力を持たない女子高生に過ぎない。
故に、そのような異常な場所にいては、精神が不安定となりつつある。
今は何も起こっていないが、油断は出来ない。
平穏な毎日を過ごしていたはずの彼女が、突然殺し合いの場に放り込まれた。
それから、様々な異常事態が起こり、何度も命の危機に脅かされる。
ついには、毎日を共に過ごしていた親友までもが、死んだと告げられた。
(つかさ……何で死んじゃったの……?)
三度目の放送でその名が呼ばれてしまった、柊つかさ。
柊かがみの妹であり、調理師を夢見ていた彼女。
本当なら、今日も彼女たちや高良みゆきと一緒に、何気ない毎日を過ごすはずだったのに。
それがどうして、こんなことになってしまったのか。
思い出されるのは、四人で過ごしていた毎日。
春、新しい気持ちを胸に、一つ上の学年に上がった。
夏、コミケや夏祭りと言ったイベントに心を躍らせながら、みんなで旅行にも行った。
秋、食欲が増す季節となって、おいしい物をたくさん食べた。
冬、一年の終わりと新年の始まりを感じて、みんなで初詣に行った。
どれも楽しかった思い出の日々。
そんな毎日が、これからもずっと続くと信じていたが、もう二度と戻ることはない。
だって、つかさはもういないのだから。
(つかさがいなくなったら、かがみんやみゆきさんが悲しむよ……? みさきちや峰岸さんだって、みんな悲しむよ……?)
こなたは、再びその目から涙を流しそうになる。
もしも、ここで全てを忘れることが出来るのならどれだけ楽になれるか。
アニメや漫画や特撮の登場人物のように、記憶喪失になれたら。
だが、弱音を吐くようなことはしない。
もしもここで逃げ出したりしたら、自分のために頑張ってるスバルやリインの足を引っ張ることになる。
ここで悲しみに溺れることは、二人に対する侮辱に他ならない。
そう思い、こなたは今の現実に耐えた。
少なくともスバルやリインには、今の気持ちを知られてはならない。
だからこそ、このアジトに向かう途中に森を歩いていたとき、わざとふざけた言動をして悲しみを紛らわせたのだ。
死人が出ているのに、このような行為をするのは不謹慎と分かっている。
「ス、スクライア司書長!?」
悲しみに耽っていたこなたの耳に、リインの声が響いた。
その瞬間、意識が覚醒する。
そのまま彼女は、驚いたような表情を浮かべながら振り向いた。
その先には、見知らぬ一人の青年が立っている。
「君はもしかして……リイン!?」
*
ユーノ・スクライアがこの施設に現れてから、一同はある一室に集まっていた。
そこは複数の電子機器が起動している影響か、外に比べて室温が高く感じる。
三人は、互いに情報を交換した。
その際に、ユーノは提案する。
この話し合いの内容が、プレシアに聞かれないように文章で対話をするのが望ましいと。
(そういや、ルルーシュの時にもこういうのあったな……)
突如、ルルーシュ・ランペルージとシャーリー・フェネットの姿が、こなたの脳裏に蘇る。
亡くなった二人のことを思い出し、胸の奥から悲しみが沸き上がりそうになるが、それを堪えた。
今やるべき事は、別にある。
そして、白紙の紙とペンを三人は手に取った。
この会場に連れてこられたから起こった、様々な出来事。
この殺し合いの参加者は、それぞれ別々の世界から連れてこられた可能性。
リインのいた、ゴジラという怪物が暴れている世界。
ユーノのいた、管理外世界よりLという名の名探偵が現れた世界。
別行動を取っている、首輪を所持しているスバル・ナカジマについて。
脱出の手がかりとなる可能性のある機械、ハイパーゼクター。
残り人数が一五人を切ったとき、開くとされる謎の車庫。
首輪だけでなく、この会場には結界が張られていて、それも制限となっている説。
殺し合いの促進のため、参加者の感情に異常を与える装置。
そして、ユーノとリインがデスゲームに関して立てた仮説。
奇しくも、互いの考案には酷似する内容が多数あった。
情報交換を終えた彼らは、黒いテーブルの上に置かれている銀色の輪っかと睨めっこをしている。
それは殺し合いを強制させる道具とも言える、首輪。
隕石によって、海が枯れ果ててしまった地球に存在する組織に所属する男、矢車想に巻かれていた首輪。
これの解析を今から進めようとしている。
無論、ユーノはそれによって生じる危険性を二人に説明した。
解除した瞬間が、自分達の最後になるかもしれないことを。
その事実を聞かされたこなたとリインは、ほんの一瞬だけ戸惑った。
ようやく生まれてきた希望が、死という最悪の絶望と繋がっている可能性を知って。
それでも、先を進むために二人は提案を受け入れた。
*
時計の針は、ただ進み続けている。
ユーノとリインは、この施設で見つけたドライバーなどの工具を持ち、首輪の解析を進めていた。
だが、その場にこなたはいない。
解除の途中で、首輪が爆発する可能性も充分にある。
それに巻き込まれないため、彼女は部屋の前で待っていることになった。
何か異常事態が起こったら、大声で叫ぶという条件を持って。
(かがみんやスバル……大丈夫かな)
薄暗い廊下の中で、こなたは溜息を吐く。
二人は無事なのだろうか。
未だに名前を呼ばれていないとはいえ、特にかがみの方が心配だった。
しっかり者の彼女とはいえ、妹を失ってはどうなるか分からない。
ただ、出来ることならプレシア・テスタロッサの言うまま、これ以上殺し合いに乗って欲しくなかった。
こんな綺麗事が言える立場ではないのは分かっている。
自分はかがみと違い、スバルやリインやユーノに頼ってばかりだ。
しかも、何も出来ない。
スバルは自分のために、戦っている。
リインやユーノは、首輪の解析を頑張っている。
なのに、自分は何だ。
何の力も持たない、ただの人間。
分かっている。
でも、それは何もしていない事への免罪符にならない。
(何やってんだろ……あたし)
部屋の中にいる二人に聞こえないように、溜息を吐いた。
それと同時に、部屋の扉が音を立てて開く。
中からは、ユーノとリインの二人が姿を現した。
ユーノは無言で、手招きをしている。
その導きのまま、こなたは再び部屋に入った。
*
三人のいる薄暗い部屋は、未だに沈黙が広がっている。
彼らが集まっているテーブルの上には、複雑な金属回路や部品がいくつも散らばっていた。
それを見て、二人は首輪の解析に成功したとこなたは察する。
しかし、彼女の表情は晴れていない。
その手には、一枚の書類が握られている。
そこには、ユーノとリインの物と思われる綺麗な文字が書かれていた。
この首輪のことで分かったことがいくつかある。
まず一つ目、この首輪の構成はいくつかの部品で構成されている。
参加者を殺害するための起爆装置
参加者の情報を伝えるための盗聴装置
この二つの動力源と思われる装置
それらを守る枠の部分
外装自体は、工具さえ使えば表面だけは外せる。
でも、その下には金属回路が張り巡らされていて、その先には動力源と見られる装置があった。
この部分は、魔力を流し込めば無効化することだけは出来る。
そこから、パズルを分解するような要領で、慎重に魔力を流し込めば、解除することだけは可能。
ただし、これは対象が『既に死んだ参加者の首輪』だから、成立する可能性がある。
説明したように、首輪の解除とゲームオーバーは隣り合わせの危険性が高い。
ここにいる自分達が殺されない理由は、まだ『生きている参加者の首輪』に手を付けていないから。
故に、首輪の構図と解除の方法を知っただけでは、まだ主催者に殺させるわけではない。
その段階に入る基準は、恐らく『生きている参加者の首輪』を解除したとき。
だから、自分達の首輪は現段階では解除するべきではない。
脱出の手段、仲間達全員の首輪を解除できる状況になったとき、メンバーの集合。
この三つの条件が整うまでは、これ以上動くことは出来ない。
そして、ここに書かれた内容は信頼できる人物以外には、決して見せてはいけない。
「うん、だいたい分かったよ……ユーノ君」
それら全てを読み終えたこなたは、二人の方に顔を向けた。
黙然とした部屋にようやく声が響くと、ユーノもまた口を開く。
「とにかく、今は一旦外に出てスバルを待つしかないよ。それから、情報をまた集めて……まとめ直す。まずはそこからだよ」
その提案に、二人は頷いた。
今はまだ、行動に移すときではない。
信頼する仲間を待ち、そこからプランを立てる。
こなたは書類を返した。
それを受け取ったユーノは、解体の終えた首輪と書類をデイバッグに入れる。
自分達の役割を察した三人は、部屋から出て行った。
【1日目 真夜中】
【現在地 C-9 スカリエッティのアジト前】
【共通認識】
※アジトの内部は、全て捜索しました。
※三人の間で情報交換(自分達のいた世界、仲間達、これまで起こった出来事、このデスゲームに関する仮説、車庫の存在)をしました
※首輪の内部構造、及び解除方法を把握しました
※それに関して、二つの仮説を立てています
※首輪の解除自体は魔法を用いれば、解除は可能
※ただし、これは死んだ参加者の首輪だから成立することで、生きている参加者の首輪を解除するとゲームオーバーの危険が高い
※現状では、スバルと合流してから再び行動しようと考えています。
【ユーノ・スクライア@L change the world after story】
【状態】全身に擦り傷、腹に刺し傷(ほぼ完治)、決意
【装備】バルディッシュ・アサルト(待機状態/カートリッジ4/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式、ガオーブレス(ウィルナイフ無し)@フェレットゾンダー出現!、
双眼鏡@仮面ライダーリリカル龍騎、ブレンヒルトの絵@なのは×終わクロ、浴衣、セロハンテープ、分解済みの首輪(矢車)、首輪について考えた書類
【思考】
基本:なのはの支えになる。ジュエルシードを回収する。フィールドを覆う結界の破壊。プレシアを止める。
1.こなたやリインと共に、スバルを待つ。
2.なのは、はやて、ヴィータ、スバル、クアットロ等、共に戦う仲間を集める。
3.ヴィヴィオの保護
4.ジュエルシード、夜天の書、レリックの探索。
5.首輪の解除は、状況が整うまで待つ
6.ここから脱出したらブレンヒルトの手伝いをする。
【備考】
※バルディッシュからJS事件の概要及び関係者の事を聞き、それについておおむね把握しました。
※プレシアの存在に少し疑問を持っています。
※平行世界について知りました(ただしなのは×終わクロの世界の事はほとんど知りません)。
※会場のループについて知りました。
※E-7・駅の車庫前にあった立て札に書かれた内容を把握しました。
※明日香によって夜天の書が改変されている可能性に気付きました。但し、それによりデスゲームが瓦解する可能性は低いと考えています。
※このデスゲームに関し以下の仮説を立てました。
・この会場はプレシア(もしくは黒幕)の魔法によって構築され周囲は強い結界で覆われている。制限やループもこれによるもの。
・その魔法は大量のジュエルシードと夜天の書、もしくはそれに相当するロストロギアで維持されている。
・その為、ジュエルシード1,2個程度のエネルギーで結界を破る事は不可能。
・また、管理局がそれを察知する可能性はあるが、その場所に駆けつけるまで2,3日はかかる。
・それがこのデスゲームのタイムリミットで会場が維持される時間も約2日(48時間)、それを過ぎれば会場がどうなるかは不明、無事で済む保証は無い。
・今回失敗に終わっても、プレシア(もしくは黒幕)自身は同じ事を行うだろうが。準備等のリスクが高まる可能性が高い為、今回で成功させる可能性が非常に高い。
・同時に次行う際、対策はより強固になっている為、プレシア(もしくは黒幕)を止められるのは恐らく今回だけ。
・主催陣にはスカリエッティ達がいる。但し、参加者のクアットロ達とは別の平行世界の彼等である。
・プレシアが本物かどうかは不明、但し偽物だとしてもプレシアの存在を利用している事は確か。
・大抵の手段は対策済み。ジュエルシード、夜天の書、ゆりかご等には細工が施されそのままでは脱出には使えない。
【泉こなた@なの☆すた】
【状態】健康、悲しみ
【装備】涼宮ハル○の制服(カチューシャ+腕章付き)、リインフォースⅡ@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS
【道具】支給品一式、投げナイフ(9/10)@リリカル・パニック、バスターブレイダー@リリカル遊戯王GX、レッド・デーモンズ・ドラゴン@遊戯王5D's ―LYRICAL KING―、救急箱
【思考】
基本:かがみん達と『明日』を迎える為、自分の出来る事をする。
0.ユーノと共に、スバルの到着を待つ。
1.スバルやリイン達の足を引っ張らない。
2.かがみんが心配、これ以上間違いを起こさないで欲しい。
3.おばさん(プレシア)……アリシアちゃんを生き返らせたいんじゃなくてアリシアちゃんがいた頃に戻りたいんじゃないの?
【備考】
※参加者に関するこなたのオタク知識が消されています。ただし何らかのきっかけで思い出すかもしれません。
※いくつかオタク知識が消されているという事実に気が付きました。また、下手に思い出せば首輪を爆破される可能性があると考えています。
※かがみ達が自分を知らない可能性に気が付きましたが、彼女達も変わらない友達だと考える事にしました。
※ルルーシュの世界に関する情報を知りました。
※この場所には様々なアニメやマンガ等に出てくる様な世界の人物や物が集まっていると考えています。
※PT事件の概要をリインから聞きました。
※アーカードとエネル(共に名前は知らない)、キングを警戒しています。
※ヴィヴィオ及びクラールヴィントからヴィヴィオとの合流までの経緯を聞きました。矢車(名前は知らない)と天道についての評価は保留にしています。
※リインと話し合いこのデスゲームに関し以下の仮説を立てました。
・通常ではまずわからない程度に殺し合いに都合の良い思考や感情になりやすくする装置が仕掛けられている。
・フィールドは幾つかのロストロギアを使い人為的に作られたもの。
・ループ、制限、殺し合いに都合の良い思考や感情の誘導はフィールドに仕掛けられた装置によるもの。
・タイムリミットは約2日(48時間)、管理局の救出が間に合う可能性は非常に低い。
・主催側にスカリエッティ達がいる。但し、参加者のクアットロ達とは別世界の可能性が高い。仮にフィールドを突破してもその後は彼等との戦いが待っている。
・現状使える手段ではこのフィールドを瓦解する事はまず不可能。だが、本当に方法は無いのだろうか?
※ヴィヴィオにルーテシアのレリックが埋め込まれ洗脳状態に陥っている可能性に気付きました。また命の危険にも気付いています。
【リインフォースⅡ:思考】
基本:スバル達と協力し、この殺し合いから脱出する。
1.ユーノやこなたと共に、スバルの到着を待つ
2.周辺を警戒しいざとなったらすぐに対応する。
3.はやて(StS)やアギト、他の世界の守護騎士達と合流したい。殺し合いに乗っているならそれを止める。
【備考】
※自分の力が制限されている事に気付きました。
※ヴィヴィオ及びクラールヴィントからヴィヴィオとの合流までの経緯を聞きました。
※ヴィヴィオにルーテシアのレリックが埋め込まれ洗脳状態に陥っている可能性に気付きました。また命の危険にも気付いています
空調の整っていたアジトの外から出た三人は、冷たい空気を浴びていた。
不意に、こなたの中で疑問が生まれる。
「ねえ、そういえばユーノ君。聞きたいことがあるんだけど」
「ん? どうしたの、こなた」
「ユーノ君って、本当に男の子だよね」
あまりにも突拍子もない発言に、ユーノとリインは怪訝な表情を浮かべた。
「……こなた、あなたは一体何を言ってるんですか」
「え? だってそうじゃん」
そこから数秒の間が空いた後、こなたは口を開く。
「こんな可愛い顔をした人が、男の子のはずないじゃん。やっぱり、ユーノ君って男の娘?」
ユーノとリインは盛大にすっ転んだ。
これにて、本投下終了です
タイトルの元ネタは、本日より放送が始まった
仮面ライダーオーズ第一話の「メダルとパンツと謎の腕」です。
自分の実力では、どこまで行けるか分かりませんが
今後とも、よろしくお願いします
投下乙です。
ようやく首輪関連の話が進んだか。
こなたもユーノと合流出来て、一先ずは安心?
はやて組と合流するかスバルと合流するか……今後の展開が気になるなぁ。
そしてこなた……ついに本人に言ってしまったかw
今まで誰も直接本人に男の娘とまでは言わなかったのにw
投下乙です。 初投下お疲れ様でした。今後とも宜しくお願いします。
真面目な話、こなたかユーノのどっちか退場するのではと思ったが別にそんな事は無かったぜ。
ともかくようやく本当にようやく首輪解除の糸口が見えたか……つか、解除そのものは思ったよりも簡単な感じか……まぁ、今更複雑すぎたら本当に手の打ちようないしなぁ。
とりあえず幾つか不安要素が無いではないけど何とかなり……きっと後々『そう思っていた時期がおれにもありました』と言うんだろうなぁ。
……そしてこなたよ……誰もが考えたとはいえユーノ君に男の娘発言をマジでするとは……
というかここの書き手は皆してユーノ君をネタキャラにし過ぎな気がするんだが……
ルーテシアの全裸鑑賞、チンクの下半身鑑賞、ブレンとアーッ、サービスシーン、そして男の娘……何処へ行くんだこのフェレットは……
そういえば冷静に考えると参加者の大半がアジトに向かいそうな感じなんだよなぁ。
こなた&ユーノ……アジトで待機
はやて&ヴァッシュ……こなたを襲おうとするかがみを止める為(はやての大嘘)アジトへ急行
スバル&ヴィヴィオ……アジトへ急行
なのは&天道&かがみ……放送後ループ越え、位置関係から考えアジトへ向かう可能性高し。
はやて組とスバル組、どちらが先にこなたと合流出来るだろうか……まぁその直後に悲劇という可能性もあるけどね。
実に12人中9人……つか対主催側全員がアジト行く可能性高い。
もっともかがみの扱いの問題(はやては殺すつもりでそれに伴う対立)、やヴィヴィオの問題(精神肉体共にボロボロ、またはやてが見捨てた的な事も問題)、はやての問題(前述の理由から絶対対立する)と不安要素しかねぇ。
しかもこれだけ戦力集まっても残りのマーダーに一掃される予感しかしねぇのも……どないせいっちゅうねん。
書き忘れ
そういや早速オーズタイトルが来たか……どうやら『○○○と○○○と○○○』というタイトルパターンになりそうだからな……今後オーズ風タイトルが大量に出現するんだろうか? それともW風タイトルが今後も席巻するか?
投下乙です
死者のものとはいええらくあっさり首輪バラせたな
でもあっさりすぎるから逆に後が怖いガクガクブルブル
道中のおとぼけはやっぱりわざとか、いつもみたいでいつもと違う心境なんだな
そして終始シリアスだったのに最後の1レスwwwww
金居、プレシア・テスタロッサで投下します
このデスゲームの会場にはいくつもの建造物があるが、中には奇妙なものもある。
E-7北西部にある駅もその一つ。
普通なら移動に便利だからと考えて人が集まりそうなものだが、あいにく駅から走る線路の行き着く先は会場外。
当然ながらこれでは集客など覚束ない。
そんな奇妙な駅の近くには奇妙な建造物に相応しく、中身が不明の曰くありげの車庫があった。
そして車庫の唯一の扉の前には、今では破壊されてしまったが、ある立札が掲げられていた。
そこには次のような警告が記されていた。
『残り15人になるまでこの扉は決して開かない。もし無理に開けようとすればそれ相応の罰を与えようではないか』
そのためここへ立ち寄った者は皆こぞって車庫の中身を気にしつつも無理に開けなかった。
早く中身を手に入れたいが、さすがにリスクを冒してまで手に入れようとは思わなかったからだ。
それに時期が来れば自然と扉を開く事ができるのだ。
ここへ来た者は皆同じような結論に至って、そして去って行った。
しかし現在開かずの車庫の中には照明が灯っていて、中に収められている物の前には誰かがいた。
「へー、なるほどね」
それがデスゲーム開始してから初めて車庫に中に入った参加者――ギラファアンデッド、金居の第一声だった。
◆
時間を遡ること1時間前。
金居はエネル殺害後、USBメモリの中身を確認するべく市街地に向かっていた。
途中で離脱したので戦闘の疲労もそれほどではなく、何の問題もなくガソリンスタンドを横目にF-8まで足を進めていた。
そんな時だった。
このデスゲームを開いた張本人、プレシア・テスタロッサからコンタクトがあったのは。
――ここまでの活躍見ていたわ。ところで行ってほしい場所があるの。
突然首輪から発せられたプレシアの要件は次のようなものだった。
現在生き残っている参加者の大半が北東C-9にあるスカリエッティのアジトを目指している。
しかもほぼ全員がデスゲームを打ち砕こうとする者ばかり。
だからそこへ行ってどんな方法でもいいから大集団ができないようにしろという事だった。
無論集まった参加者を殺害してくれる方がデスゲーム的には歓迎すると。
これを聞かされた時、最初金居はプレシアの要件を聞き入れる事を渋った。
いくらカテゴリーキングの金居と言えども、何の用意もなくノコノコとそんな場所に飛び込んでいけば返り討ちに遭う可能性が高い。
無力な一般人なら何人集まろうが金居の敵ではないが、アジトにいるのはここまで生き残ってきた参加者だ。
そんな簡単に殺されてくれるほど柔な連中とは思えなかった。
この制限下ではまだ3人までならなんとかなるが、それ以上になるとさすがに成功は覚束ない。
だが建前上プレシアに協力したいと申し出ている以上ここは素直に受け入れた方が得策。
直接的でなくて間接的であれば、例えばある程度時間をかけて不和の種を仕込んで瓦解させる方向なら不可能ではないはず。
それに使いどころが難しいが、いざとなれば先程手に入れた支給品を使えばある程度の結果は残せるだろう。
結局金居は若干渋りつつもプレシアの提案を受け入れたのだった。
すると金居の逡巡を知ってか知らずか、最後にプレシアは意味ありげな言葉を残していった。
――そうだわ、大変そうだから耳寄りな『情報』教えてあげる。荷物調べてみなさい、何か役に立つ『情報』あるかもしれないわよ。
プレシアが何を言いたかったのか、それはすぐに分かった。
敢えて荷物を調べるように促して、しかも『情報』という言葉を強調していった。
現在金居の所持品はかなりの量であったが、この状況でそれに該当するようなものは一つ――これから調べようと思っていたUSBメモリに他ならない。
幸いにも目と鼻の先にあったガソリンスタンドには作業用のパソコンが事務室にあった。
さっそく件のUSBメモリを指し込んでデータを読み込み始めたが、ここで予想外の事態が起きた。
突然金居を中心に転移魔法陣が発動したのだ。
そして金居は何が起こったのか理解する間もなく車庫の中へと強制的に転移させられて――今に至る。
「へー、なるほどね」
最初こそ突然の事態に困惑していた金居だが、目の前に広がる光景を見てある程度理解は出来た。
生物と機械の中間のような独特なメタリックなフォルム。
青と銀を基調とした多脚式ボディーとV字型の金色のモノアイ。
その手足には鋭い鎌が備えられており、しかも完全ステルス機能まで搭載している。
それら寸分違わず同一な5体の兵器が新たな主を待っていた。
それが金居の目の前で機動を待つ機械兵器――ガジェットドローンIV型だった。
車庫内側に備え付けられたパソコンに記されたスペックを見る限り、これらはかなり使えそうだった。
全部で5体と向こうと比べて頭数は足りないが、完全ステルス機能を有効に使えばその差を埋める事は可能だ。
しかも素のスペックも中々侮りがたいものであり、その点も十分満足できるものだった。
「これは報酬の前払いみたいなものか? それならそれに見合った働きはしないといけないな」
若干オーバーにプレシアへの感謝を示しつつ、金居は起動の準備に取りかかった。
もちろん実際にそこまで思っている訳ではない。
一応建前上何か行動する気でいるが、あまり無理をするつもりはない。
一歩間違えればその場の全員と戦うはめになる可能性もあるため、ここは出来るだけ機を窺いたいところだった。
「しかし操作が割と単純で助かった。俺はキングほど詳しくないからな」
確かにこのガジェットの操作方法は然程コンピュータに詳しくない金居でも理解できるものになっていた。
自身の嵌めている首輪を認証させて、それによってガジェットはその者を所有者として認識する。
ちなみに命令は頭で思い浮かべるだけで実行してくれるらしい。
ただしあまり複雑なものは実行できないようなので、その点は気をつけないといけない。
「さて、行くか」
それほど時間をかけずに無事にガジェットを機動させた金居は4体のガジェットをデイバックに収納していた。
そして残った1体のガジェットを飛行形態にさせると、低空飛行でスカリエッティのアジトを目指して移動を開始した。
金居が手の内を見せるかのようにガジェットを移動に使用したのには理由があった。
まずは体力の温存。
出発前に砂糖と拾ったデイパックの中にあった食糧を拝借して体力はほぼ回復したが、温存できるならそれに越した事はない。
ちなみにそのデイパックは荷物を少し整理した際に要らないと判断して、車庫の中に置いてきた。
そして何よりこうする事で相手に油断が生まれると踏んだからだ。
まさかあちらも同じ機体があと4機もあるとは思わないはず。
そういった先入観は隙を作りだし、後々仕事がやりやすくなる。
(さて、去り際に仕掛けた爆弾に引っ掛かるのは誰になるかな)
実は金居は車庫から出る際に扉の内側にエネルの支給品であったクレイモア地雷を2個仕掛けてきたのだ。
どちらも扉が開くと爆発するようにワイヤーを調節しておいた。
別に深い意味はない。
ただ使い道が限られて無用の長物化しそうだった支給品で誰か引っ掛かれば儲けものというぐらいの理由だった。
金居が去って再び人気が無くなると、車庫はまるで何事もなかったかのように見える。
だが実際はその内で哀れな獲物を喰い殺そうと牙が研がれているとは誰が予想出来ようか。
奇妙な駅の曰くありげの車庫はこうして再び不気味な沈黙を守るのだった。
【1日目 真夜中】
【現在地 D-7平野部】
【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】健康、ゼロ(キング)への警戒、ガジェトドローンⅣ型に搭乗中
【装備】ガジェトドローンⅣ型@魔法少女リリカルなのはStrikerS、バベルのハンマー@仮面ライダークウガA’s 〜おかえり〜
【道具】支給品一式、トランプ@なの魂、砂糖1kg×6、イカリクラッシャー@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、首輪(アグモン、アーカード)、正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、デザートイーグル(4/7)@オリジナル、L、ザフィーラ、エネルのデイパック(道具①・②・③)
【道具①】支給品一式、首輪探知機(電源が切れたため使用不能)@オリジナル、ガムテープ@オリジナル、ラウズカード(ハートのJ、Q、K)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、レリック(刻印ナンバーⅥ、幻術魔法で花に偽装中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(シグナム)、首輪の考察に関するメモ
【道具②】支給品一式、ランダム支給品(ザフィーラ:1〜3)
【道具③】支給品一式、顔写真一覧表@オリジナル、ジェネシスの剣@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、クレイモア地雷×3@リリカル・パニック、ガジェットドローンⅣ型×4@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
基本:プレシアの殺害。
1.プレシアの要件通りスカリエッティのアジトに向かい、そこに集まった参加者を排除するor仲違いさせる(無理はしない方向で)。
2.基本的に集団内に潜んで参加者を利用or攪乱する。強力な参加者には集団をぶつけて消耗を図る(状況次第では自らも戦う)。
3.利用できるものは利用して、邪魔者は排除する。
【備考】
※この戦いにおいてアンデットの死亡=封印だと考えています。
※殺し合いが難航すればプレシアの介入があり、また首輪が解除できてもその後にプレシアとの戦いがあると考えています。
※参加者が異なる世界・時間から来ている可能性に気付いています。
※変身から最低50分は再変身できない程度に把握しています。
※プレシアが思考を制限する能力を持っているかもしれないと考えています。
◆
「どうやら今のところは私に従うみたいね」
アジトに向かって移動を開始した金居をモニター越しに見ながらプレシアは笑みを浮かべていた。
確かに車庫に入る事ができるのは生存者が15人以下になってからだが、実は別の方法でも入る方法はあった。
それが今回金居の使用したUSBメモリを利用する方法だ。
元々あのメモリは情報端末に接続させると『第3回放送後に3人以上の参加者を殺している者はこのメモリを接続すれば力を手に入れる事ができるだろう』というメッセージが表示されるようになっていた。
もちろんそのメッセージは真実であり、その条件を満たせば一度だけ対象者を車庫へ転移させて、そこで車庫の中身を手に入れられる仕組みになっていた。
ちなみに一度発動すればメモリは某スパイ組織のように自動的に消滅されるようにしてある。
実のところプレシアとしてはそのメッセージをきっかけに殺し合いが促進してくれる事を期待していた。
しかし意外な事に今回金居が使用するまで誰もUSBメモリを活用しなかったので、結局プレシアの意図は外れる結果となった。
一方でその車庫の中身であるガジェトドローンⅣ型にもいくつか仕掛けが施されている。
まず元々ゆりかごの防衛機能の一つであるというプログラムを改竄して、最初の所有者の命令を聞くようにセットし直した。
そうしなければ万が一聖王であるヴィヴィオと出会った時、不都合が生じかねなかったからだ。
一応所有者の死後は流用されないように所有者が死亡した場合は機能停止するようにしてある。
それから使い勝手がいいように思念通話を応用して命令手段に組み込ませた。
これは本来魔力を持たない者がデバイスを起動させたりできるようにした仕組みを応用させた。
これ以外にもいくつか改造点はあるが、なのはとヴィータを襲撃した性能は折り紙付きだ。
これらは全てここまでの戦いで力を失ってもまださらに殺し合いに参加できるようにという思惑での改造だった。
(でも最後の一言ですぐに理解するなんて、さすがね)
そう思いつつもプレシアは金居なら十中八九こちらの意図を汲んでくれると確信していた。
それはミラーワールドでの巧妙なやり取りでも薄々実感していた。
だからと言って金居を全面的に信頼するつもりはないのだが。
(さてデスゲームもそろそろ終わりが近づいて来たようね……今回こそは成功させてみるわ……。そのためにも――)
【全体備考】
※F-8のガソリンスタンドが火事になりました(火元は事務室のパソコン)。
※車庫の扉を開くとクレイモア地雷が爆発するようにセットされています。
※車庫内にアレックスのデイパック(支給品一式※食料なし)が放置されています。
【ガジェトドローンⅣ型@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
全5体。多脚生物のような動きを見せるガジェットドローン。
光学迷彩に近いステルス機能と騎士服を易々と貫く攻撃力を有しており、主に奇襲などを得意としている。
ガジェットドローンと呼称されているが、実際はゆりかご内部に備えられた装備であり、スカリエッティの作品ではない。
元々はゆりかごの防衛機構の一つとして装備されているものである。
今回は作中でも触れているようにプレシアによって所有者に従うようにプログラミングされている。
投下終了です
タイトルは「Ooze Garden(軟泥の庭)」でお願いします
投下乙です
とうとう車庫の中身が判明したか、今の参加者にステルスは怖いな
これで金居もアジト行きで役者が揃ってきたな
もういっそのことキング・アンジールもアジトへ向かって全員集合でw
投下乙です。
車庫とUSBの中身が遂に判明し金居もアジトへ向かうか。
参加者の大半がアジト方向に向かいそうだからいよいよ最終決戦の雰囲気が……
で、車庫には罠が……誰か引っかかりそうな勢いだなぁ。
投下乙です
とうとう車庫とUSBの中身が遂に判明したか
確かに今の参加者にステルスは怖い。終盤近くまでステルスが生き残るのは珍しいかも
さて、アジトで何が起こるか…
それでは、自分の放送案が通りましたので、こちらに本投下をさせていただきます
――おはよう、みんな。0時の放送の時間よ。
仮眠も取ったことだし、ここからは今まで通り、私が放送を行うわ。
まぁもっとも、この放送もあと何度続くことになるか、分かったものじゃないのだけど……
……フフ、ではまず、禁止エリアを発表させてもらうわね。
メモの準備はいい? こんなところまで来ておいて、自滅なんてされたら困ってしまうわ。
……では、読み上げるわよ。
1時よりH−2
3時よりG−8
5時よりB−7
以上の3か所よ。
では続いて、これまでの死者を発表するわ。
アーカード
相川始
アレックス
ヴィータ
エネル
クアットロ
ヒビノ・ミライ
以上、7名。
この24時間を生き抜いたのは、合計12名よ。
……まぁ、きっかり10名にならなかったのは、キリの悪い数字だと思ったけれど。
ペースとしては上々。さすがに1日で終わるなんてことはなかったようだけど、
これなら順調に終わってくれるかしら? 貴方達には、本当に感心させられるわね。
……今回はここまででいいわ。
私が用意してあげたご褒美も、十分機能しているようだし。
じゃあ、せいぜい最後まで頑張ってちょうだいね。
貴方達の願い、そして私の目指すもの……どちらも成就するまであと一歩。
フフ……期待させてもらうわよ。
◆
かくして4度目の放送は流れた。
最悪の1日は終わりを告げ、最悪の2日目が始まった。
24時間目の時報を耳にしたのは、合計12人の生存者。
僅か24時間のうちに、60人の参加者達は、実にその8割を喪っていた。
誰もが耳を傾ける。
誰もが放送を耳にする。
安堵、悲嘆、希望、絶望。
それぞれの思惑を胸に宿し、それぞれの感想を胸に抱く。
しかし此度の放送は、それまでに繰り返されたものとは、ある1点において違っていた。
ある者は全く気付かなかった。
ある者は気付いていたのかもしれない。
この放送に隠されたものに。
この放送が意味するものに。
そこに時計を持つ者がいて、その者が時計を見ていたのなら、容易に気付くことができたであろう。
現在時刻、0:10。
今回の放送は、これまでの放送とは異なり、予定より10分遅れて流れていた。
――――――異変は、この時既に始まっていた。
◆
「もう間もなく放送の時間か……」
ぽつり、と呟いた女の声が、狭い一室に木霊する。
巨大なモニターとコンソールを前に、1人座っていた者は、プレシア・テスタロッサの使い魔・リニス。
青く澄んだ猫の瞳は、しかし今この瞬間は、失意の陰りに満ちていた。
第3回目の放送から、色々と試してみたものの、その結果は芳しくない。
彼女の有する権限の大多数は、主君によって凍結されていた。
部屋から出て問い詰めに向かおうにも、ドアにまでロックがかけられている。
とどのつまりは、完全なる手詰まり。
何もできず、どこへも行けず。
籠の中のカナリアのごとく。
プレシアの下した制裁は、リニスからこの殺し合いに介入する、あらゆる術を奪っていた。
(何が希望だ)
歯を軋ませる。
苦虫を噛み潰したような表情で、己自身を嘲笑う。
所詮自分の力などこんなものか。
こんなにもあっさりと、何もできなくなってしまうものなのか。
その程度の力しかない私に、一体どんな希望が与えられるものか。
何もできない。
何も変えられない。
こんな矮小な私などには、殺し合いを止めることも、参加者を救うこともできはしない。
広がりゆくのは心の暗黒。
自分の弱さと情けなさが、自身の心を苛んでいく。
罪を償うこともできないという事実が、自らの罪を思い起こさせ、良心の重荷を思い出させる。
何ができる。
何をすればいい。
私にできることがあるなら、今すぐにでも示してほしい。
籠の中のカナリアごときに、何かが変えられるというのなら――
――がこん。
その、時だ。
「……?」
リニスの座るすぐ背後で、何かの音が鳴った気がしたのは。
聞き間違いでなかったとするなら、金具が落ちたような音だったはずだ。
否、自分に限って聞き違いはあるまい。猫の聴力は人間よりも高い。
ほとんど確信を持ちながら、ゆっくりとその身を振り返らせる。
分かっているのに振り返ったのは、音の主を知らないから。
音の質こそ分かっていたものの、その音が何によって奏でられたのかを知らなかったから。
故にそれを確かめるために、視線を音の方へと向け、
「よう」
その女と、対峙した。
そこに立っていた者は、燃えるようなオレンジの女。
橙色の長髪をたなびかせ、青い瞳を光らせる者。
そのコスチュームの露出度は高く、すらりと伸びた四肢の皮下には、くっきりと筋肉が浮かび上がる。
顔に浮かべるは不敵な笑み。左手に持つのは通気孔の金網。
そしてその頭には――リニスと同じ、獣の耳が生えていた。
「貴方は……アルフ!?」
は、としたような顔になり。
ほとんど反射的に椅子を蹴る。
額にじわりと冷や汗を浮かべ、後ずさるようにして立ち上がる。
どういうことだ。何故アルフがここにいるのだ。
フェイト・テスタロッサ諸共、自分達が殺してしまったはずの犬の使い魔が、何故こんなところに現れるのだ。
「何故貴方が――」
そこまで言いかけた瞬間。
「……っ!?」
身に感じたのは、物理的衝撃。
ぐわん、と視界が落下する。
膝が強制的に曲げられ、身体が勢いよく倒れる。
強引に押さえつけられた五体が、床に叩きつけられる硬質な感触。
巻き添えを食らった足元の椅子が、空中に放り出されたのを見た。
がたん、と椅子が落ちるのと同時に。
己の視界に差す影を認知し。
己を押さえこんだ者の正体を、目にした。
それはかの使い魔ではない。そこに眩しいオレンジ色はない。
そこに現れた者は――漆黒。
全身を黒ずくめの騎士甲冑で固めた女が、リニスの身体に馬乗りになって、首筋と右肩を押さえていた。
背中に生えていたものは、烏を彷彿とさせる艶やかな羽。
色素の抜け落ちたかのような銀髪と、血濡れのごとき深紅の瞳。
「リイン……フォース……!?」
やはり自らの手で殺したはずの、夜天の魔導書の管制プログラムが、目の前に姿を現していた。
◆
時は数分前にさかのぼる。
その時彼女らはその場所にいた。
リインフォースとアルフの2名は、相変わらず四つん這いの態勢で、時の庭園の屋根裏を移動していた。
《ホント、地図でも手に入ればよかったんだけどねぇ……》
溜息混じりに、アルフが念話でぼやく。
先ほどリインフォースがハッキングを行った時に閲覧できたデータは、爆発物の制御装置と謎の名簿。
地図などの有用なものが得られなかったばかりか、得たものも得たもので意味不明の代物。
そしてそのまま再び降りることもできず、こうしてただひたすらに、薄暗い屋根裏を徘徊している。
《もう一度降りられるといいのだが、これでは無理だな》
《そもそも2回目は向こうも警戒を強めてるだろうし……やっぱり別の方法を探るしかなさそうだね》
金網から眼下を覗くリインフォースに、アルフが言う。
彼女らがハッキングを途中で切り上げたのは、今まさに廊下を巡回しているものが原因だ。
元いた世界の海鳴市を滅ぼした、プレシアの軍勢に加わっていた卵型の機動兵器――ガジェットドローン。
あれさえいなければ下に降りることも可能なのだが、
いなくなるどころか、どうにも先ほどから少し数が増えたようにも見える。
とてもじゃないが、監視の目を盗んで端末にアクセスを……などと言っていられる状況ではなかった。
《一度どこかの部屋に入ってみるか? 何か使えるものがあるかもしれん》
そう提案したのはリインフォースだ。
《あー、それもいいかもね。そこならあの機械もいないかもしれないし》
言いながら、アルフの視界が眼下を探る。
近くに確認できる廊下の扉は、隣り合うようにして配置された2つ。
ひとまずは近い方の金網を目指すことにして、両者は移動を再開した。
そして数歩のうちに目的地へとたどり着き、2人のうちアルフが様子を窺う。
仮に中にガジェットや人がいた場合、降りた途端に見つかって、増援を呼ばれてしまう可能性があるからだ。
実際、そこには人が1人いたのだが、
《っ!? そんな……あれは、リニス……!?》
それがいるはずのない知り合いであったということは、さすがに予想だにしていなかった。
《知った顔か?》
《フェイトを教育してた、プレシアの使い魔だよ。でも何でだ? リニスは死んだはずじゃ……》
忘れがちだが、本来ならばリニスは故人である。
彼女はプレシアとの短い契約期間を満了し、元の屍へと戻ったはずなのだ。
にもかかわらず、彼女はここにいた。
生前と一切変わらぬ姿で、時の庭園の中に存在していた。
これは大いなる矛盾だ。まさかリーゼ姉妹のように、双子がいたというわけではあるまい。
《……リインフォース。情報を手に入れる方法が、もう1つあるよ》
《何だ?》
故にアルフはこう提案した。
《尋問》
リニスと向き合い、問い詰めることを。
彼女の生存とプレシアの意図、どちらも纏めて聞き出さねばならない、と。
◆
かくして時間は現在へと戻る。
「久しぶりだね、リニス。こんな形で再会することになるとは思わなかったけど」
床に仰向けに押さえつけられた猫の使い魔へと、犬の使い魔が切り出した。
本当に、こんなはずではなかったことばかりだ。
死んだとばかり思っていたリニスと、こうして再会することになったことも。
その美しくも優しい教育係と、敵として対峙しなければならなくなったことも。
「あんた、何で生きてるんだ? 契約を完了した使い魔は、そのまま死ぬ宿命だったはずだ」
「私はリニス本人ではありません。
プロジェクトFの技術を応用して作られた、同じ容姿と記憶を持ったクローンに過ぎません」
「……そうかい」
寂しげに目を伏せ、それだけを呟く。
もしかしたら、とは思っていたが、どうやらそうも都合のいい話は存在しないらしい。
プロジェクトF――フェイトが生まれるきっかけともなった、記憶転写クローン技術。
その末に生まれたのがこのリニスだというのならば、
オリジナルのリニスは、やはりこの世にはいないということになる。
「いくつか聞かせてもらいたいことがある」
複雑な心境にあるであろう、アルフへの配慮だったのだろうか。
ちら、とアルフに目配せした後、リインフォースが問いかける。
そこからの尋問の主導権は、リインフォースが引き継ぐこととなった。
「まずは貴方の主人――プレシアについてのことだ。彼女はここで何かを行っているようだが……一体何を企んでいる?」
第一に確認すべきは、そこだ。
アルハザードへの到達を目的としていたプレシア・テスタロッサは、恐らくその悲願を達成した。
だとしたら、己の都合以外に一切の執着を持たないはずの彼女が、今更海鳴に攻撃を仕掛けるはずもない。
しかし現実として海鳴は滅び、高町なのはとのその関係者は、今ここにいる2名を除いて全滅した。
ならば、まだ何かある。
プレシアが何かしらの目的を持って、未だに暗躍していることになる。
最初に問いただすべきは、それであった。
「………」
返ってきたのは、沈黙。
微かな逡巡を湛えた表情と共に訪れる、静寂。
数瞬の間、その状態が続き、
《……私に話を合わせてください。この部屋もプレシアに監視されているでしょうから》
返ってきたのは、言葉ではなく念話だった。
《話を合わせる、ってのは、どういうことだい?》
不可解な言い回しに、アルフが問いかける。
監視されている可能性がある、という言葉には、さほど驚きは感じなかった。
ここが敵の本拠地であるのなら、ある程度は仕方がないと割り切れるからだ。
故にそれ以上に不可解なのは、リニスの持ちかけてきた提案。
話を合わせろということは、演技をしろということだ。
プレシアに従う身であるはずの彼女が、何故そのプレシアに本音を隠そうとするのか。
《私にはこれ以上、この件に干渉することはできません……ですから、貴方達に託そうと思います》
答えが返ってくるまでには、さほど時間はかからなかった。
《お願いです――彼女を、プレシアを止めてください》
◆
そして真実は語られた。
伏せられていた情報の全ては、今ここに白日のもとに晒された。
プレシアがたどり着いたこの場所は、間違いなくアルハザードであったということ。
そこにたどり着いたにもかかわらず、未だアリシアは蘇っていないということ。
そのアリシアの復活のために、プレシアが今動いているということ。
そしてその手段として夜天の書を奪い、そのためにあの海鳴市を滅ぼしたということ。
「そんな……」
そして。
「アリシアを復活させるために、大勢の人間が殺し合わされているだって……!?」
それらの犠牲を払った末に、今まさに実行されていることさえも。
「何でだよ……どういうことなんだよ! そんな残酷なことが、死んだ人間の復活に繋がるのかよ!?」
しばし呆然としていたアルフが、一転し、激昂の様相を見せた。
今にも掴みかからんばかりの勢いで、リニスに向かって問いかける。
敵を尋問しているように見せるための演技――ではない。この怒りは彼女の真意だ。
まっとうな蘇生実験のために、フェイト達が犠牲になったというのなら、この際まだマシな方と言っていい。
だがその犠牲が、そんな無駄な殺し合いのために払われたというのなら話は別だ。
何故だ。
何故そんなことのために、フェイト達が殺されなければならなかった。
そんな無軌道な殺戮のために、何故愛しい主と仲間達の命が――
「それが、繋がるんです。彼女が行っているのは、そういう儀式ですから」
「儀式?」
リニスの返事に反応を返したのは、やはりアルフではなくリインフォースだった。
基本的に、この場で一番平静を保っているように見えるのは常に彼女だ。
もっともその彼女自身もまた、プレシアの暴挙を許したわけではないのだが。
「今あの結界の中で行われている殺し合いこそが、アルハザードで確立されていた、死者を復活させるための儀式なのです。
60人の人間を戦わせ、敗れた59人分の生命エネルギーを利用することで……勝ち残った1人の肉体に魂を降ろす。
同時に肉体が生前のそれへと再構成されることで、完全なる死者蘇生は実現される」
「蟲毒だな、まるで」
古代中国の呪術の名を例に挙げ、言った。
もっともそちらの方は、虫や小動物を食い合わせて怨念を集め、猛毒を持った生物兵器を生み出すための呪法なのだが。
「そんなむちゃくちゃな……ここは仮にも、魔法の聖地なんて言われた場所なんだろう!?」
それでもなお納得できないといった様子で、アルフが反論する。
否、その感情の様相は、先ほどとはまた異なるものとなっていた。
プレシアの暴挙に対して抱いたものが怒りなら、今この瞬間抱くものは困惑の二文字。
優れた魔法技術を有したアルハザードの様式にしては、その方法はあまりにも野蛮で、あまりにも前時代的だ。
魔法のまの字すら見えないこの儀式が、アルハザードの正統な技術であるなどと、一体誰が信じられるものか。
「だからこそ、なのです。
リインフォース……蟲毒などという術を知っているのならば、地球に存在する生け贄の儀式のことも、聞いたことがあるのでしょう?」
「ああ。アステカ、インカ、中国……日本でも行われていた時期があったようだな」
「地球の場合、多くは神への貢物として行われていたようですが……
あの世界を含む、リンカーコアを制御する術を持たない世界のうちのいくつかでは、超常の力を発揮するために、
生け贄という形で肉体を損壊することで、強引に生命エネルギーを流出させる手段を取っていたのです」
「成る程……言わばあれらの風習もまた、超原始的な魔法だったということか」
アステカの生け贄が、神を動かす力となったように。
蟲毒の生き残りが、怨念を猛毒へと昇華させたように。
「にしたって60人って数は……あまりにも、多すぎる」
「完全な死者蘇生のためには、それほどの途方もない力が必要だったということか」
そもそも死者を復活させるということは、あの世から死者の魂を連れ戻すということだ。
そしていかに科学や魔術が発展した世界であっても、少なくともアルフ達管理世界の住民が知る限りでは、
現世から冥界へと至る術を発見した世界は、未だない。
彼岸と此岸の境界とは、それほどに強固なものなのだ。
途方もないほどに強固な壁を越えるには、途方もないほどの代償を払わければならないということだ。
《……事情は分かったよ。理解したくないけど、理解しなけりゃいけないってことが分かった》
眉間に皺を寄せながら、毛髪の奥の頭皮を掻く。
不機嫌そうな表情のまま、アルフがリニスへと念話を送る。
《では……》
《もちろん、最初からそのつもりさ。プレシアはあたし達が止めてくる》
全て納得したと言えば、嘘になるだろう。
正直な話、未だに唐突感はぬぐい去れない。あまりにも荒唐無稽すぎる話には、未だ理解が追いつかない。
それでも、自分達はここに理解をしに来たのではないのだ。
自分達がここに来たのは、プレシアの真意を問いただし、ろくでもないことを企んでいるのなら、それを止めるためなのだ。
そして今まさに行われていたことが、そのろくでもないことであることは理解できる。
ならば、この際細かいことはどうだっていい。
今すぐプレシアの所へ殴り込み、このふざけた儀式とやらを止めるしかない。
既に何人もの人間が犠牲になっているというのなら、なおさらのことだ。
《使い魔リニス。この施設の見取り図があったら、見せていただけないだろうか》
「この施設の見取り図がほしい。今すぐそのモニターに映せ」
念話による本音では、穏便に。
肉声による演技では、威圧的に。
2つの言語を同時に駆使して、リインフォースが要求した。
「分かりました」
その両方に、いっぺんに応じる。
銀髪の融合騎の要求に、山猫の使い魔が応答を返す。
《窮屈だろうが、我慢してくれ》
念話で前置きをしながら、リインフォースがリニスを強引に立たせる。
首元に添えた手はそのままだ。建前上は脅迫している身なのだから、拘束を解くわけにはいかない。
かくして彼女らはモニターへと向かう。
倒れた椅子はそのままに、立った状態でコンソールを叩いた。
かちかち、とキーボードを弾く音が響いた後、モニターに映し出されたのは時の庭園の見取り図。
リインフォース達にとっては、実に6時間もの長きに渡って待ち望んだ代物だ。
「確認した」
言うと同時に、リインフォースの手が伸びる。
細く滑らかな指先が、コンソールの端子へと触れる。
一瞬、ぴか、とその肌が光った。
魔力光が瞬くと同時に、モニターに新たなウィンドウが開く。
コピー完了――魔法術式タイプのコンピューターの特性を利用し、自らの内にデータを取り込んだ結果だった。
もちろん、それだけではアルフが地図を使えない。
故に適当な棚から、リニスに携帯端末を取り出させデータを出力し、それをアルフに投げて渡す。
「あとは……そうだな。参加者を拘束している首輪の制御装置はどこにある?」
残された問題は、例の爆発物管理プログラムの正体――参加者に架せられた爆弾首輪だ。
先ほどのハッキングではプログラムの存在こそ確認できたものの、それをどうこうすることは不可能だった。
そしてあれをどうにかしない限りは、参加者をフィールドから逃がすことなど、不可能と言っていい。
地図にそれらしきもののある部屋の名前が確認できなかった以上、その所在を問いただす必要があった。
「首輪はプレシア自身が管理しています。制御システムも、彼女の部屋に――」
――その、刹那。
.
「ッ!?」
世界の様相は一変した。
視界は赤一色に満たされ、静寂は爆音に塗り潰された。
ちかちかと点滅する非常灯。
けたたましく鳴り響くサイレンの音。
話声以外の音もなかった一室が、一瞬にして音と光の嵐へとぶち込まれた。
「これは……!?」
誰が口にしたのかも分からぬ、戸惑いの声が上がるのも束の間。
「!」
ぷしゅっ、と短く鳴る音と共に、部屋の自動ドアが開く。
中から開いたのではない。扉はプレシアによってロックされている。
であれば、答えは簡単だ。
外から強制的に開けさせられたのだ。
「こいつら……!」
扉の向こうに並ぶのは、見渡すばかりの鉄、鉄、鉄。
卵を彷彿とさせる楕円形に、触手のごとく伸びた赤いケーブル。中央に光る黄金の瞳は、瞬きするかのように明滅する。
ガジェットドローンの大軍だ。
巡回を行っていた機動兵器達が、一斉にこの部屋へと押しかけてきたのだ。
「――バルディッシュ!」
刹那、咆哮。
凛とした雄叫びが上がると共に、黄金の光が赤を切り裂く。
稲妻を宿した魔力光が、一瞬非常ライトを上から塗り潰した。
声の主――使い魔リニスの手に握られていたのは、漆黒の煌めきを放つ長柄の斧。
アルフの主人が生前用いていたものと、寸分違わぬ姿を持った、閃光の戦斧・バルディッシュ。
「はぁっ!」
声を上げている暇などなかった。
姿を知覚した瞬間には、既に動作に移っていた。
跳躍。疾駆。接近。斬撃。
カモシカのごとく両足をしならせ、敵に飛びかかりデバイスを振るう。
「リニス!?」
アルフが声を上げた時には、既に1機のガジェットが破壊されていた。
返す刃で次なる標的を切り裂き、改めてバルディッシュを構え直す。
黒光りする切っ先越しに、山猫の双眸が機械兵を睨む。
「ここは私が引き受けます! 貴方達は隣の部屋に!」
「えっ……!?」
「この兵器達の放つフィールドには、魔力結合を阻害する効力があります。
遠距離攻撃は不利です。隣の武器庫から、リインフォースの武器を調達して行ってください!」
もはや演技をしている余裕はなかった。
否、リニスの安否を無視して兵力を送った以上、大方プレシアにはばれていたのだろう。
取り繕っていた体裁をかなぐり捨て、リニスがリインフォースらに向かって叫ぶ。
そしてその言葉を聞いて、彼女らは一瞬忘れかけていた、敵の特性をようやく思い出した。
あの金眼の兵器には、魔法を無力化させる能力が備わっていた。
どういうからくりなのかが今までずっと気がかりだったが、なるほどそういうことだったのか。
「でも、1人で大丈夫なのかい? バルディッシュが近接戦タイプだからって……」
「見くびらないでくださいよ。これでも、フェイトの先生だったんですから」
不安げなアルフを笑い飛ばすように。
無粋なことを、と言いたげに、リニスが強気な笑みを浮かべる。
それでも、未だ不安は消えない。
いくら敵がガジェットだけでなかったからとはいえ、そのフェイトの敗北を目の当たりにしたからには、安心できるはずもない。
確かにこのロボットそのものの耐久力はそう高くない。自分で殴り壊したからこそ分かることだ。
だがそれでも、いくら何でもこれほどの数を前に、1人で戦えるものなのだろうか。
「やむを得ないか……ここは頼む。行くぞ、アルフ」
「……ああ」
それでも、今は行くしかない。
でなければせっかく足止めを買って出てくれた、リニスの意志が無駄になる。
ここでまごついているうちにも、更なる犠牲者が出てしまうかもしれないのだ。
無理やりに自分を納得させ、アルフはリインフォースの後に続いた。
部屋を出て、すぐ隣にあったドアを開く。
先ほどちらと見た地図によれば、この部屋は殺し合いを行う際に必要となる、支給品とやらの転送室らしい。
転送する武器の選別は、現在はランダムかつオートとなっているらしく、人の影は見当たらない。
障害がないことを幸いとし、室内に並べられた武器を物色。
「……これがよさそうだな」
そう言ってリインフォースが手にしたのは、一振りの日本刀だった。
剣を選んだのは、ヴォルケンリッターの烈火の将・シグナムが剣の使い手だったからだ。
彼女の魔法・紫電一閃は、純粋魔力ではなく、魔力変換によって生じた火力を纏うものである。
魔力結合を阻害するガジェット相手には、ただの斬撃よりも有効と言えるだろう。
故にシグナムの技を再現すべく、数ある武器の中からそれを選んだというわけだ。
ただの刀が紫電一閃の火力に耐えられるのか、とも思ったが、どうやらこの刀、見た目以上に頑丈らしい。
元々の持主たる異界の戦国武将・片倉小十郎が、この刀に雷を纏わせて戦っていたのだから、当然と言えば当然なのだが。
「よし、行くぞ」
「分かってる。……リニス! あたしらが戻るまで持ちこたえてくれよ!」
部屋を出たアルフが最初に口にしたのは、ガジェットの大軍と戦うリニスへの呼びかけだった。
そしてそれに対して返されたのは、彼女の無言の頷きだった。
今はそれで納得するしかない。
リインフォースらは彼女に背を向けると、すぐさま戦線を離脱する。
硬質な廊下の床を蹴り、傍らの見取り図を見やりながら、時の庭園内部を走っていく。
目標は2つ。
今回の事件の首謀者であり、首輪の制御装置を保有しているプレシアの部屋。
奪われた夜天の書が利用されているという、殺し合いのフィールドを生成する動力室。
それぞれ最上階と最下層――PT事件を体験したアルフにとっては、一種懐かしささえ思わせる状況だった。
「リインフォース。ここは二手に分かれよう」
そしてそのアルフが切り出したのは、またしても当時を想起させる提案だった。
「二手に……?」
「今は一分一秒が惜しい。あんたが地下の動力室を目指して、あたしがプレシアの部屋に向かうってのでどうだ」
「正気か? プレシア・テスタロッサの実力は、あの機械の比ではないのだろう……?」
不可解な進言に、リインフォースが眉をひそめる。
本業は科学者であるとはいえ、プレシアはSランクの魔力を有した大魔導師だ。
まさかガジェット同様のフィールドを張るなんてことはないだろうが、それ以上に地力の差が桁違いである。
事実として、アルフは以前プレシアに反旗を翻した際に、完膚なきまでに叩きのめされていた。
理論上はその方が手っ取り早いとはいえ、どう考えても自殺行為としか思えない判断だ。
「夜天の書を取り返すことができれば、あんたもいくらか本調子を取り戻せるんだろ?
心配なら、早く夜天の書を取り戻してきて、あたしを助けに来ておくれよ」
返ってきたのは、不敵な笑み。
にっと笑った表情は、先ほどのリニスのそれとも似通っていた。
なるほど確かに、言われてみれば、リインフォースは夜天の書を奪われたことで、未だ本力を発揮できずにいる。
その調子で2人がかり挑んだとしても、確実に勝利できるとは言い難いだろう。
とはいえ2人で夜天の書の奪還に向かえば、その隙に参加者達を殺されてしまう。
ならばここはアルフが注意を引きつけることで、本命のリインフォースに繋ぐのが最も確実だ。
「分かった……お前も、それまで死なないでいてくれよ」
「おうともさ」
それが最後のやりとりとなった。
階段にさしかかったところで、両者はそれぞれの道へと別れる。
犬の使い魔は上を目指し。
銀の融合騎は下を目指す。
互いの目的を達成し、再び共に戦うために。
あの忌まわしき魔女を打倒し、最期の悲願を果たすために。
◆
身体強化術式を行使。
速度強化と、腕力強化を最優先。
AMFによる強化阻害の影響は、無視できるほど小さくはない。
普段より数段重く遅い身体を、それでも懸命に力を込め、振るう。
『Scythe Form.』
排気音と機械音を伴い、デバイスを近接攻撃形態へと移行。
どうせ魔力弾は通用しないのだ。ならばこそ、接近戦に特化したフォームを選択するのは必然。
振るう。振るう。薙ぎ払う。
斬る。斬る。斬り刻む。
迫る攻撃は全てかわした。
普段より労力がかかる分、防御のタイミングはよりシビアだ。なればバリアになど頼っていられない。
360度全方位に視線を配り、一心不乱に立ちまわる。
「はああぁぁっ!」
柄にもなく気合の叫びを上げながら、リニスはひたすらに戦斧を振るった。
我ながら大した出来だ――自らの手に握りしめた得物に、そんな感想を抱き、笑みを浮かべる。
このバルディッシュは完璧だ。
攻撃力も、魔力効率も、演算速度も申し分ない。さすがにフェイトのために、大枚をはたいて作っただけはある。
フェイトはこの力作を気に行ってくれただろうか。
オリジナルの私が最期に残したものを、喜んでくれていたのだろうか。それだけが気がかりだった。
(今の私にはこうすることしかできない……でも、彼女達にはできることがある)
今のリニスを突き動かすのは、その一心だ。
自分には何もできなかった。
面と向かって立ち向かうこともできず、陰でこそこそと動くことしかできず、
結局できたことといえば、参加者への可能性の丸投げだけだ。
やがてプレシアに手足をもがれ、それすらも不可能となっていた。
そして訪れた結末は、侵入者ごと抹殺対象となるという有り様。
まったくもって不甲斐ない。大魔導師の使い魔とまで言われておきながら、情けないことこの上なかった。
「たぁっ!」
しかし、彼女達は違う。
彼女達はあの戦いを生き延びた。
自分達を追うことに命を懸け、遂にはこのアルハザードにまでたどり着いた。
何かを変えられるのは自分ではない――あの娘達だ。彼女達にこそ、希望があるのだ。
ならば自分は捨て石ともなろう。
こうして囮役を引き受けることで、希望を繋ぐことができるなら、喜んでここに屍をさらそう。
犯してしまった罪を償う術が、こうする他にないのなら――
『――まったく、困った使い魔ね』
その、瞬間。
ぶんっ、と空気を揺らす音。
不意に目の前に表れたのは、通信端末の空間モニター。
画面越しに語りかけるのは、ウェーブのかかった黒髪と、冷たく射抜くような紫の視線。
『見え見えなのよ、あんな臭い芝居は。命を惜しむような柄でもないでしょう、貴方は』
「プレシア……」
プレシア・テスタロッサ。
全ての元凶たる大魔導師にして、山猫の使い魔リニスの主君。
実子アリシアを蘇らせるために、大勢の命を犠牲にし、フェイトさえも手にかけた魔女。
これまで沈黙を続けていた彼女が、遂にこうして回線を開き、再び姿を現していた。
そしてそれに呼応するようにして、これまで戦っていたガジェット達もまた、一斉にその動作を止めた。
『本当に困った使い魔だわ……お仕置きされて反省するどころか、敵と結託するだなんて』
ふぅ、とため息をつきながら、呆れた様子でプレシアが言う。
自らが犯した大罪も、目の前で起きている反乱すらも、まるでに歯牙にもかけぬように。
「……私は間違っていました……
貴方を止めたいというのなら、こそこそ隠れるのではなく、こうして戦うべきだった」
何が悪かったというのなら、最初から何もかもが悪かった。
本当に主の暴挙を制するのなら。
本当に己が罪を償いたいのなら。
黙ってその命に従って、この手を汚すべきではなかった。
可能性だけを参加者に与え、解決を委ねるべきではなかった。
たとえ相手が主君であろうと、あの2人の娘達のように、真っ向から立ち向かうべきだった。
自分はそれに気付くのが、途方もないほどに遅すぎたのだ。
『どっちにしても間違いよ』
ぎろり、と。
刹那、冷たく輝く紫の双眸。
纏う気配は絶対零度。肌を切り裂き臓腑を射抜き、血肉を凍てつかせる氷雪の殺意。
気だるげな様相が一転し、威圧的な形相へと姿を変える。
やはり、そうか。
プレシアは己の意に背く者は、誰であっても許しはしない。
利用価値のない者ならばなおさらだ。間違いなく自分はここで殺されるだろう。
『馬鹿げたことをしてくれたわね……それとも何? まだフェイトを切り捨てたことを根に持っているの?』
ぴくん、と。
帽子の下の耳が、一瞬揺れた。
『貴方があの子をどう思おうと、あんなのは所詮アリシアの出来そこないなのよ。私にとっては――』
ああ、そうか。
やはり、そうなのか。
どれほどの経験を重ねても、結局貴方はそうなのか。
あの子にどれだけ尽くされようとも、貴方にはまるで届かないのか。
あの子をどれだけ傷つけようとも、貴方にはまるで響かないのか。
貴方にとってのあの子とは、そんなものでしかないのか――!
「――黙れ」
自分でも驚くほどに、冷たく低い声音だった。
これほどに冷酷な声が出せるのかと、一瞬自分で自分が信じられなかった。
画面の奥のプレシアも、さすがにこれには驚いたらしい。
氷の刃のごとき視線が、一瞬丸くなったのがその証拠だ。
「私は貴方達家族のことは、ほとんど何も覚えていない……
貴方とアリシアがどんな親子だったのかは、私には知る由もない……それでも、これだけははっきりと言える……!」
肩がわなわなと震える。
バルディッシュがかたかたと鳴く。
使い魔となる前の記憶は、ほとんど頭の中に残されていない。
自分がアリシアに懐いていたことも、アリシアが自分を拾ってくれたことも、主体として実感することはできない。
故に、プレシアとアリシアの関係について、とやかく言うつもりはない。
それでも。
だとしても。
「私にとってのフェイトは本物だ!
紛い物でも出来そこないでもない……あの子を否定することは、私が許さないっ!!」
遂に私は絶叫した。
己の胸にこみ上げる怒りを、ありのままにぶちまけた。
プレシアのアリシアへの愛が、本物だというのなら。
私のフェイトへの愛もまた、本物であるのは間違いないのだ。
彼女と出会って、魔法を教えて、笑い合う日々を幸せだと思った。
彼女がいかなる生まれの人間だったかなど、自分には何の関係もなかった。
フェイトと積み重ねた想い出も。
フェイトからもらった信頼も。
フェイトへと向ける愛情も。
それら全てが本物だから。紛い物でもなんでもない、確かなものであると言い切れるから。
だからこそ、私はプレシアを許さない。
誰かの勝手な悲しみに、誰かを巻き込んでいい権利は、どこの誰にもありはしない。
自分のエゴで作ったフェイトを、自分のエゴで殺す愚を、私は決して許さない。
『……もういいわ。お前はもう死になさい』
一拍の間を置いて、一言。
それを最後通告として、プレシアの顔は目の前から消えた。
通信の終了と同時に、静まり返っていたガジェット達が、再び駆動音の唸りを上げる。
これが終わりの始まりなのだろう。
ここからが、本当の最期の戦いなのだろう。
随分と魔力を無駄遣いしてしまった。まだまだ半分くらいは残っているが、それではこの数相手には心もとない。
それでも、自分は決して絶望しない。最後の最後まで抗うことをやめない。
囮としての戦いは終わった。十分に時間は稼げたはずだ。
だからこれから始めるのは、自分の個人的な戦い。
プレシアに叩きつけたこの想いを、最期の瞬間まで示し続けるためだけの、自分勝手なプライドを懸けた戦いだ。
「バルディッシュ」
右手のデバイスへと語りかける。
「こんな身勝手に付き合わせてごめんなさい」
結局は自分も、プレシアと何ら変わらないのかもしれない。
自分で複製したこのバルディッシュを、本来担うべきだった目的すら果たさせずに、
自分の勝手なエゴに巻き込んで、ここで果てさせてしまおうとしている。
己の欲望の果てにフェイトを死なせた彼女と、変わらないことをしようとしているのかもしれない。
「それでも……貴方が私を、まだマスターだと認めてくれるなら……最後の力を、貸してください」
祈りのような言葉だった。
それがリニスの口にした、最後の言葉と呼べる言葉だった。
両の手で長柄を強く握る。
サイズフォームの光刃を輝かせ、眼前のターゲットを見据える。
意識は怖ろしいほどにクリアーだ。
もう何も怖くはない。死でさえも自分を怖れさせはしない。
ただ、刃を振るうのみ。
最期に事切れる瞬間まで、前に進み続けるのみだ。
「……うおおおおぉぉぉぉぉーっ!!」
咆哮と共に、山猫は駆ける。
黄金と漆黒のデスサイズを携え、大魔導師の使い魔は疾駆する。
間合いを取ると共に、切り裂き。
間合いを詰めると共に、薙ぎ払った。
AMFの壁に阻まれようとも、ひたすらに刃を叩き込んだ。
全身をレーザーに焼き焦がされ、五体を触手に貫かれようとも、一心不乱に斧を振るった。
《アルフ》
心残りがないと言えば、嘘になる。
しかしそれらを叶える機会は、当に自身の手で投げ捨ててしまった。
それでも、最後の1つだけは、どうにか叶えることができた。
故に最後の力を振り絞り、猫の使い魔は言葉を紡ぐ。
声ではなく思念通話を通して、願いの先へと想いを伝える。
《大きく……なりましたね》
フェイトと共に面倒を見てきた、小さな狼の娘・アルフ。
フェイトに会うことはできなくとも。
フェイトの成長した姿は見れなくとも。
その愛らしい使い魔は、大きく勇敢に育ってくれた。
その姿を見られただけでも、彼女は十分に幸せだった。
記憶を引き継いだクローンとして、蘇った意味はあったのだと。
最期の瞬間に、そう実感することができた。
◆
上へ、ただに上へ。
延々と続く階段を、上り続ける女がいる。
漆黒のマントとオレンジの髪を、走る勢いにたなびかせ、ひたすらに駆け抜ける者がいる。
ひく、と獣の耳が揺れた。
ぴく、とマントの肩が揺れた。
「……ばかやろうっ……」
瞳を光らせる獣の女が、震えた声で呟いていた。
【リニス@魔法少女リリカルなのは 死亡確認】
◆
「まったく……使い魔風情が偉そうなことを」
はぁ、とため息をつきながら。
リニスの死亡を確認した主君――大魔導師プレシア・テスタロッサは、うんざりとした様子でそう呟いた。
腰掛ける椅子に右肘をつき、己の頬を手のひらに預ける。
これで彼女は独りきりだ。
たった1人の協力者を、自らの手で切り捨てたプレシアは、本当に独りになってしまった。
もはや周りにいる者は、得体の知れないあの男から借りてきた、いかがわしい機械人形達だけしかいない。
それでもプレシアは、それで別に構わないとさえ思っていた。
どうせもうすぐ片はつく。あとたった11人の人間が死ぬだけだ。
そうなれば儀式は完遂し、冥府の扉を開くための59人の生け贄が揃う。
最後の1人の身体に魂が宿り、アリシア・テスタロッサの完全な復活は完了される。
自分には、ただアリシアさえいればいい。
そしてその時は、もう目前にまで迫ってきている。
「ミズ・プレシア。動力炉への兵員の配備、完了しました」
その時。
かつ、かつ、かつ、と靴音を立て。
機械人形のうちの1人――ボーイッシュなナンバーⅧ・オットーが姿を現した。
「ああ、そう」
まったくもって面白味のない奴だ。
せっかくいい気分に浸っていたのに、余計な水を差すなんて。
無粋な来訪者の報告に、興味なさげな発音で返す。
裏切り者のリニスを排除した今、残された問題はあと2つ。
夜天の融合騎・リインフォースと、犬の使い魔・アルフの2名である。
そのうちアルフに対しては、ほとんど無視に近い対応を取っている。
どの道あの使い魔程度の実力では、この部屋に入ることなど不可能だと分かりきっているからだ。
となると、残る問題はリインフォース。
こちらへまっすぐ向かってくるならまだしも、夜天の魔導書を狙われるのはまずい。
さすがにこちらは無視できないということで、オットーに兵力の派遣を指示しておいたのだ。
ナンバーⅦ・セッテと、ナンバーⅩⅡ・ディード――最後発組2名が相手とあれば、
欠陥を抱えた融合騎など、ひとたまりもなく消し飛ぶだろう。
そうなれば、全てはチェックメイト。
このプレシア・テスタロッサを邪魔できる者は、広大な次元世界の海に、誰1人として存在しなくなる。
今度こそ誰にも邪魔されることなく、アリシアと再会することができるのだ。
込み上げる笑いをこらえきれず、我知らぬままに口元がにやけた。
「……あら?」
そして、その時。
ふと、ほんの僅かな違和感を覚えた。
「貴方、さっきまで羽織っていたジャケットはどこにやったの?」
それはオットーの身なりへの違和感。
中性的な容姿をした彼女は、その胸元を隠すように、グレーの上着を羽織っていた。
しかし今、彼女の身体にそれは確認できない。
ナンバーズスーツの上には長ズボンだけ。慎ましやかな胸の隆起が、スーツ越しに見受けられるようになっている。
「それはですね……」
そして。
プレシアがその返答を聞くよりも早く。
――ぐさり。
「ッ……!?」
腹部へと激痛が襲いかかった。
焼けつくような痛覚が、腹と脳髄を苛み焦がす。
久しく味わうことのなかった鉄の味が、口の中へと満たされていく。
アルハザードの叡智を用い、己が病を克服して以来、久方ぶりに感じる吐血の感触。
「あ……ァあ……」
喉から漏れる声は、言葉にならず。
震える両手は、傷口へと届かず。
「――こういうことなんですよ」
それらが意味をなすよりも早く、何者かの声が耳朶を打った。
聞き覚えのない女の声。
嘲笑うような不愉快な声。
のろまと言っても差し支えない動作で、声の方へと首を向ける。
「オットーの上着は、正式名称をステルスジャケットと言いまして……
その名の通り、あらゆるセンサーの索敵から、身を隠すことができるんです」
そこに立っていた者は、プレシアの知らない女の姿。
全身をフィットスーツで覆った容姿は、オットーら戦闘機人と共通したもの。
しっとりと光るブロンドを、腰まで伸ばした妖艶な女性。
そしてその胸元には――ナンバーⅡの刻印が施されていた。
「ばか、な……まるで……気配、が……」
「あらあら、こちらは隠密が仕事なんですよ? 科学者ごときに、私を気配を捉えられるはずがないじゃないですか」
にぃ、と笑う女の顔。
同時に腹を襲ったのは、ずぷ、という音を伴う更なる苦痛。
「ぅううッ……!」
目の前が一気に真っ赤に染まった。
何かしらの得物でせき止められていたらしい血液が、一挙に傷口から噴き出した。
ぶしゅう、と響く音と共に、勢いよく噴き出される紅色の噴水。
患部から吐き出される赤色は、プレシアの身体の体力さえも、根こそぎ流し出していく。
「申し遅れました。私は戦闘機人のナンバーⅡ・ドゥーエでございます。以後、お見知りおきを……」
意味深な響きと共に放たれた言葉を、どこまで明瞭に聞けたのかは分からない。
もはや椅子に座ることすらも、プレシアには不可能な動作であった。
ごろごろ、と豪快な音が上がる。
深紅に染まった黒のドレスが、椅子から転げ落ちて床へと横たわる。
「そん……な……」
何だこれは。
何だというのだ、この有り様は。
信じられないといった形相で、うつ伏せのプレシアが声を漏らした。
一体何が起こっている。
どうしてこんなことが起きている。
あと一歩のところまで来たのに。
アルハザードへと到達し、その上悲願達成の目前までたどり着いたのに。
何故だ。何故こうも上手くいかない。
何故誰もかれもが立ちはだかる。何故こうも誰もが邪魔をする。
私の行いがそんなに悪いのか。
幸せを求めるのがそんなに間違っているのか。
私は。
私は、ただ。
「ア、リ……シア……――」
ただ――――――娘の笑顔が見たかっただけなのに。
◆
ぱっ、と右手を軽く振る。
ピアッシングネイルにこびりついた血糊を、床に目掛けて振り払う。
ふぅ、と軽く息をついて、戦闘機人の次女・ドゥーエは、左手で金の長髪を梳いた。
「これにてお仕事完了、と……悪いわね、貴方の服を汚しちゃって」
「いえ。お疲れ様でした、ドゥーエ姉様」
微かに返り血の付着したジャケットを脱ぎ、それをオットーへと投げて渡す。
右手を束縛する得物をも外すと、両手を頭の上で組み、んっと背伸びする姿勢を取る。
「っ、とぉ……やれやれ、本当にお疲れだったわ」
まったく、創造主も無茶を言ってくれる。内心でそう毒づいた。
これまでにも様々な潜入任務を行ってきたが、丸々1週間何もしないで待ち続けたのは初めてのことだ。
他のナンバーズ達と共に時の庭園に入り、しかし自身はプレシア達と接触せず、誰にも存在を気取られず施設内に潜伏。
そして指示が下ると同時に、デバイスの探知を免れられるオットーと共にプレシアに接触、これを殺害する。
これこそが、彼女の受け持った任務の全容である。
侵入者に付け入られ、たった1人の仲間であるリニスが排除された時点で、プレシアは用済みとなったのだ。
『――やぁ、ドゥーエ。どうやら滞りなく終わったようだね』
そして、その時。
室内のモニターに浮かんだのは、通信機能のカメラ映像。
スクリーンに大映しになったのは、1人の男の顔だった。
「これはドクター。お達しの通り、つつがなくお仕事を終わらせましたわ」
そう。
この男こそ。
ドゥーエがかしずくこの男こそが、彼女達を束ねる創造主。
紫色の長髪と、爬虫類のような黄金の瞳に、白衣がトレードマークの男。
無限の欲望とあだ名される、広域次元犯罪者。
Dr.ジェイル・スカリエッティ。
プレシア・テスタロッサの協力者にして、今まさに彼女を裏切った、最悪のマッド・サイエンティストである。
『実に結構。……ウーノ、いるかい?』
『はい、ドクター。ここに』
同時に2つ目のウィンドウが開き、ウーノの顔が映し出される。
彼女は今、別の仕事を行うために、次元航行船用のドックで作業をしているはずだ。
『プレシアの研究成果の全てを持ち出すまでに、あとどれくらいの時間がかかる?』
『今から約6時間ほどかかります』
『では、脱出艇の調整にあとどれくらいの時間がかかる?』
『そちらも6時間ほどかかります』
『結構』
にぃ、とスカリエッティが笑った。
それこそがウーノの請け負った仕事であり、同時にこの稀代の科学者が、プレシアに接近した最大の理由である。
アルハザードに存在する、優れた文明の遺産の強奪――それが彼らの目的だ。
誰よりも旺盛な知識欲を持ち、貪欲なまでに未知を求めるスカリエッティにとって、
その故郷とでも言うべきアルハザードは、何物にも勝る宝の山に他ならなかった。
『ではウーノ。参加者達に架せられた首輪の爆破装置を、誰にも気づかれないようにオフにしてくれたまえ』
『爆破装置をオフに、ですか?』
『時間制限という新たな制約がついたんだ。それ以上に制約を設けるのは、アンフェアというものだろう?』
『……ドクター、貴方また遊ばれるおつもりですね?』
はぁ、とウーノが呆れたように溜息をついた。
『せっかくプレシアが始めたゲームだ。まだ終わっていないのだし、我々も乗らせてもらおうじゃないか』
モニターの向こうのスカリエッティは、くつくつと愉快そうに笑っている。
それに呼応するようにして、ドゥーエもまた苦笑した。
目的はこれで十中八九果たされたも同然だが、どうやら創造主の退屈は、未だ満たされてはいないらしい。
『……ではドゥーエ、君はプレシアの代役を。0時10分頃を目途に、彼女に代って放送を行ってくれたまえ』
「分かりました」
『オットーはディード達と合流し、夜天の融合騎の迎撃を』
「了解です」
頷くと同時に、オットーは部屋を去っていった。
ディードやセッテもそうだが、クアットロが教育したという最後発組は、どうにも感情表現が希薄だ。
戦闘においてはそれでも構わないが、日常生活を送るにはどうにも面白味が薄い。
これが終わってラボへと帰ったら、その辺りをクアットロにツッコんでおかねば。
そんなことを思いながら、遠ざかる短髪の背中を見送った。
『クク……さぁ、それではゲームを再開しよう。
彼らが勝てば全て終わり。負ければアルハザードからの脱出手段を我々に奪われ、二度とここから帰れなくなる。
タイムリミットは次の放送を迎えるまでだ。そしてそれを過ぎた時点で――』
かくして新たな幕は開いた。
当事者達の知らぬ裏側で、異変は着々と侵攻していた。
魔女は塔から引きずり降ろされ、第一楽章は終了する。
新たなゲームマスターは、不敵に笑う金眼の道化師(クラウン)。
ここに戦争の時代は終わり、世界の終わりが始まった。
最悪の24時間が終了し、最悪の6時間が始まった。
第二楽章はここから始まる。
語り部が力尽き倒れてもなお、狂気の綴る悪夢の詩は、未だ終わることはない。
『――バトルロワイアルは、中止だ』
【プレシア・テスタロッサ@魔法少女リリカルなのは 死亡確認】
【参加者勝利条件変更:ナンバーズ一派の、時の庭園からの脱出阻止】
※参加者の首輪の爆破装置が、全てオフになりました。
※リインフォースに強奪されたため、
黒龍@魔法少女リリカルBASARAStS 〜その地に降り立つは戦国の鉄の城〜が支給不可能となりました。
※セッテ、オットー、ディードの3名が、時の庭園最深部の動力炉に配置されました。
【バトルロワイアル終了まで――――――05:50:00】
以上です。何か所か誤字等がありましたので、一部修正させていただきました。
禁止エリアに関しては、アイデアが浮かばなかったので、ひとまず◆Lu氏の案からアイデアをお借りしました。
放送投下乙でした。
リニスとプレシア退場か……プレシアの最大の失敗はリニスを斬り捨てた事か……まー散々人を見下した愚者にとっては相応しい結末だろう。
そして前面に出てきたのがスカ軍団。首輪爆破オフしてくれるなんてお気遣い……ってちょっと待て、あと6時間で脱出って地味に難易度上がってねぇか?
しかもよくよく考えてみりゃ、放送10分遅れ程度の情報であんな事態察せるわけねぇって。地味に詰んだ?
……そういやプレシア直前話で金居に指示出してノリノリだった矢先での退場だったなぁ……まぁよくある話か(ねぇよ)
……しかし優勝者がアリシアになるか……これ真面目な話優勝者にとっては最悪な話だなぁ、実質優勝しても願いは叶えられず自身も消滅だからなぁ。
しかし場合によってはアーカードやナイブズやセフィロスやエネルがアリシアになっていたのか……(いやSSよく読めば、肉体もアリシアに再構成されるってあるけどね)
禁止エリア案は船着き場、映画館、温泉か……確かにこれが最後の放送ならば差し障りはないが……どうしようか?
(まぁ爆破装置がオフになっているから意味はないかも知れないけど、参加者は知らない話だからなぁ)
とはいえ違う場所でもwiki収録時に直せば済む話ですよね(極端に変な場所じゃない限り大きな影響は無いだろうし)
投下乙です
リニスとプレシアの方が退場か
もしかしたら、とも思ったが……主催の座から転げ落ちたか
そしてスカ博士キター やっぱりお前もいたのかw
更に首輪爆破オフとかきつい事しやがったぞ
さて、これが最後の放送になるかどうか…
キング、アンジール・ヒューレーを投下します
アルハザードを舞台としたバトルロワイヤルという名目の、殺し合い。
プレシア・テスタロッサの手によって始められてから、既に二四時間が経過していた。
辺りは闇に包まれ、風が冷え切っている。
星々は輝いているが、それを見上げる者は誰一人としていない。
そんな空の下で、一つの建物がメラメラと音を鳴らしながら、燃え上がっていた。
静寂を破る火炎は闇を照らし、二つの人影を映し出す。
一人は、黒いマスクで顔を覆い、同じ色のスーツとマントに身を包む男、キング。
またの名を、魔王ゼロ。
本来は、世界を変えようと決意した少年、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの仮初の姿。
しかし今は、己の快楽の為に戦うカテゴリーキングの位が与えられたアンデットが、ゼロの名を名乗っていた。
その仮面を被るキングの前に立つのは、アンジール・ヒューレー。
本来は、遥か彼方の宇宙より地球に飛来した生命体、ジェノバの細胞を人間に埋め込む計画、ジェノバ・プロジェクトによって生まれた男。
しかし厳密には、ミッドチルダに流れたライフストリームと呼ばれるエネルギーから、ジェイル・スカリエッティが生み出したコピー。
アンジールは、ゼロと名乗る仮面を被った男の言葉に、困惑を感じていた。
この人物は、自分のことを『プレシア・テスタロッサ』が送り込んだ者と言った。
そして、手を組むのなら死んだ妹たちを生き返らせてみせるとも。
だが、そんなことは自分を騙す為の戯言で、本当は隙を突いて殺そうと企んでいるかもしれない。
しかし、ゼロは愛弟子であるザックス・フェアの名前や、既に折れたバスターソードの事を知っていた。
もしかしたら、この男と組めばクアットロ、チンク、ディエチの三人を、本当に生き返らせることが出来る――?
(いや、ここには奴もいた。もしこいつが奴と出会ったとすれば……!)
思い出されるのは、既に名前が呼ばれたかつての親友、セフィロス。
可能性は低いが、あの男がゼロに情報を売った可能性もある。
だが、今はそんなことはどうでもいい。
この男をどうするか。
もしも、自分を殺そうと企むのなら、答えは一つのみ。
連戦によって体に疲労を感じるが、死力を尽くせばあの奇妙な盾も砕けるはず。
自分の世界では、バリアやマバリアといった魔法も存在する。
攻撃を防いだ防壁も、それと同じ種類か。
「何を迷っている? アンジール」
アンジールが思考を巡らせていると、仮面の奥から低い声が響く。
それは鼓膜を刺激し、彼の意識を発生源に向けた。
地獄の業火を思わせるような炎を背に立つゼロの様子は、まさに「魔王」と呼ぶに相応しい。
テロリストの仮面を被るキングは、アンジールの様子を尻目に言葉を続けた。
「先程の放送を聞いただろう? 貴様の愛する妹たちはもう誰もいない。皆、殺されたんだよ」
「――黙れッ!」
「だから決めろと言っている! 貴様は何の為に戦うか! 貴様が求める物は何か! そして、貴様は何を決意した!?」
激高は、呆気なくかき消される。
闇の中で響くゼロの言葉によって、アンジールの勢いは止まった。
表情から怒りが消えていき、再び元に戻る。
その様子を、マスクの下から眺めるキングは、笑みを浮かべていた。
しかしそれを声には出さない。
変声機があるから誤魔化せるかもしれないが、面倒は御免だ。
最も、そうなった場合はアンジールを始末すればいいだけのこと。
だがそれでは仮面ライダーカブト、天道総司の思い通りになる。
奴の狙いに嵌るのは、気に食わない。
今やるべきことは、餌をぶら下げる事。
「君が抱くクアットロへの思いはその程度か!? 君とチンクの絆はこの位で揺らぐ程度か!? 君がディエチに感じている愛情はこの程度か!?」
キングは、放送で呼ばれたナンバーズの名前を次々に言った。
そして、警戒心を解かせる為に「君」を使う。
一人一人告げる度に、アンジールの表情が崩れていった。
何ていう愚かなことか。
調べてみると、この三人はサイボーグらしい。
ならば、鉄屑で出来たガラクタの人形ということだ。
そうなると目の前にいるアンジールとは、人形にしか愛情を向けられない、愚かな男ということになるだろう。
このような奴の弟子になったザックスという人物は、哀れかもしれない。
出来ることなら、今のアンジールの顔をカメラに収めておきたいが、それは我慢だ。
もしも、タイトルを付けるのなら『ガラクタの人形を姉妹と呼ぶ、愚かで哀れな男』だろう。
仮面の下で笑みを作るキングは、愚かで哀れなアンジールを揺さぶるために言葉を続けた。
「そしてこの事実をオットーは知っている! 彼女もまた、姉妹の死に心を痛めているはずだ!」
「ッ……!?」
「君がやらずして、誰が妹を生き返らせるのだ!? 思い出せ。君にとって、妹とは何だ!」
――アンジール様が生き返らせてくれる。私は、そう信じています――
ゼロの怒号を聞いた途端、アンジールの脳裏に一つの光景が浮かび上がる。
ようやく再会できた、クアットロの姿。
そして、彼女が言った最後の言葉。
――私だけじゃありません。きっとディエチちゃんも、チンクちゃんも、そう信じているはずです――
――だからお別れは少しの間だけです。私達のためにも、アンジール様は……このデスゲームで最期の一人になってください……――
アンジールの中で駆け巡るのは、クアットロの声。
傷だらけの体にも関わらず、彼女は残る力を振り絞って、自分に託した。
クアットロと、チンクと、ディエチと、また一緒に暮らせるという願いを。
――……またお会いできる時を楽しみにしています――
彼女はこの言葉を残して、逝ってしまった。
全ては、自分の力が足りなかったせいで起こってしまった、忌々しい数時間前の出来事。
そしてプレシアの元にいるオットーも、この事を知っているはず。
彼女はきっと、いや絶対に不甲斐ない自分に失望し、憎んでいるに違いない。
だが、どんな罵りだろうと甘んじて受けるつもりだ。
二人は黙り込み、炎が燃える音だけが響く。
そんなアンジールの様子が気に食わないキングは、次のアクションを起こした。
「…………所詮、君はその程度の男か」
「何……?」
「今の君を見たら、妹たちはどう思うだろうねぇ……?」
三回目の放送で名前が呼ばれた、キャロ・ル・ルシエの時のように、誘惑する。
今のアンジールなど、手に落ちるまでそれほど時間は要らない。
キングは確信を持ちながら、目の前の男を揺さぶり続ける。
「最も、君が一人で戦い続けるというのなら、私は別に……」
「待てッ!」
濁ったような声を、アンジールはかき消した。
仮面の下で、キングが笑みを浮かべていることを気付かずに。
「いいだろう……お前と手を組んでやる」
「良い返事が聞けて嬉しいよ、交渉成立だな」
「だが、分かっているだろうな……」
「心配は要らない。約束は必ず守る。でなければ、こんな話は持ち出さない」
アンジールは微かな可能性に賭けて、この男の提案を受け入れた。
キングが自称する魔王の名が、ゼロの名が、プレシアの配下であることが。
そして、妹達を生き返らせるという褒美が、全て嘘であることを知らずに。
屈強な兵士が、ただの人形と成り果てた事実に、キングは歓喜を覚える。
しかしそれを表に出すことは、しなかった。
「ではまずは、逃げ出したあの二人を追おう。市街地に向かうのはその後だ」
キングは提案を出すと、歩を進める。
その後ろを、アンジールは歩いた。
(ハハハハハハッ! 残念だったね、カブト。 君の狙いは外れたよ!)
心の中で大笑いしながら、キングは天道に対して侮蔑の感情を抱く。
あの男にバッグを少しだけ奪われたのは残念だが、これで御相子だ。
それ以上に、高町なのはには仮面ライダーデルタに変身するという、楽しみも待っている。
正義の味方を気取っている女が、あれを使って暴走するようなことになればどうなるか。
どうせベルトの毒が生み出す快楽に溺れ、狂った挙句に人を殺すに違いない。
ならば、その様子を携帯のカメラに残してやろう。
(そして、ウルトラマンメビウス……死んじゃったんだね、君。弱いくせに王様に刃向かったから、罰が当たったんだな!)
先程の放送で呼ばれた、ヒビノ・ミライの名前。
恐らく、自分が遊んだ際にアンジールに殺されたんだろう。
諦めないなどと戯言を言っておきながら、この結果だ。
所詮、中途半端な力しか持たない弱者だったということ。
ウルトラマンであろうと仮面ライダーであろうと、自分に抗うなど無理だということだ。
(そういや、放送の時間が十分だけ遅れてたな……)
キングは充足感を覚えている一方で、疑問を感じている。
放送の時間が、少しだけ遅れていたのだ。
これまでは、一秒のズレもなくプレシアは情報を伝えている。
それが今回に限って、何故遅れていたのか。
(どうなってるんだ?)
一方で、アンジールもまた考えている。
先程の放送では、七人の名が呼ばれた。
クアットロの名前以外は、呼ばれても関係ない。
自分のやるべき事はただ一つ。
愛する妹達の命を、取り戻すこと。
だが、アンジールにとって気がかりなことが一つだけあった。
それは、呼ばれなかった名前が存在すること。
(あの男……生きていたのか)
三度に渡って戦いを繰り広げた、あの男が生きていたこと。
自分と同じように、望まぬ運命によって望まぬ力を得てしまった、あの男が生きていたこと。
自分の境遇と重なって見えた、あの男が生きていたこと。
そして、自分の手で望まぬ運命を断ち切った、あの男が生きていたこと。
妹達を守る盾の役割を託した、あの男が生きていたこと。
(いや、もう関係ない……俺は悪魔になると決めた。ならば、あの男も例外ではない)
アンジールは心の中で呟くが、あの男の顔が頭の中で思い浮かんでしまう。
振り払おうとするが、消えることはない。
続くように、あの男の声が聞こえた。
――そんな方法で家族を守ったとして……その人達が喜ぶのか!?――
――やっぱ……馬鹿みてぇか、俺?――
――……もう無理なんだ……意志だけじゃあ抑えきれない……もう言うことを聞かない……今すぐにでも離れてくれないと……僕は、君を、殺してしまう……――
それらは、アンジールの中で次々と蘇っていく。
覚悟はとっくに決めたはずなのに、何故こんな声が聞こえるのか。
今の自分にとっては、雑音に等しい。
消えろ。消えてしまえ。
――だって君も見逃してくれたじゃん――
――ついさっきビルに叩き付けられた時のことだよ。……確実にトドメを刺せる状況だったのに君は攻撃しなかった。その借りを返しただけさ――
アンジールは念じるが、消えることはない。
それどころか、声はより一層増えていく。
そして、苦笑を浮かべるあの男の顔も。
声に比例するかのように、疑問も徐々に増えていく。
だが、今はそれに気を取られている場合ではないはずだ。
やるべき事は、妹達の蘇生。
アンジールの頭の中で浮かぶ男の顔。
もしも、もっと早く出会えてたら手を組めたかもしれない男。
戦場にも関わらずして、自分を助けようとした男。
そして、今もどこかにいるはずの男。
――ヴァッシュ・ザ・スタンピードの顔と声が、アンジールの中で浮かび上がっていた。
【2日目 深夜】
【現在地 D-2】
【キング@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康
【装備】ゼロの仮面@コードギアス 反目のスバル、ゼロの衣装(予備)@【ナイトメア・オブ・リリカル】白き魔女と黒き魔法と魔法少女たち、キングの携帯電話@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、おにぎり×10、ハンドグレネード×4@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ボーナス支給品(未確認)
【道具①】支給品一式、RPG-7+各種弾頭(照明弾2/スモーク弾2)@ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL、トランシーバー×2@オリジナル
【道具②】支給品一式、菓子セット@L change the world after story
【道具③】支給品一式、『SEAL―封印―』『CONTRACT―契約―』@仮面ライダーリリカル龍騎、爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具④】支給品一式、フリードリヒ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具⑤】支給品一式、いにしえの秘薬(空)@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER
【思考】
基本:この戦いを全て無茶苦茶にする。
1.まずはアンジールと共に天道総司を追跡する。
2.他の参加者にもゲームを持ちかけてみる。
3.上手く行けば、他の参加者も同じように騙して手駒にするのもいいかも?
4.『魔人ゼロ』を演じてみる(飽きたらやめる)。
5.はやての挑戦に乗ってやる。
【備考】
※キングの携帯電話には『相川始がカリスに変身する瞬間の動画』『八神はやて(StS)がギルモンを刺殺する瞬間の画像』『高町なのはと天道総司の偽装死体の画像』『C.C.とシェルビー・M・ペンウッドが死ぬ瞬間の画像』が記録されています。
※全参加者の性格と大まかな戦闘スタイルを把握しています。特に天道総司を念入りに調べています。
※八神はやて(StS)はゲームの相手プレイヤーだと考えています。
※PT事件のあらましを知りました(フェイトの出自は伏せられたので知りません)。
※天道総司と高町なのはのデイバッグを奪いました。
※デイバッグを奪われたことに、気付きました。
※十分だけ放送の時間が遅れたことに気付き、疑問を抱いています。
【アンジール・ヒューレー@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】
【状態】疲労(中)、深い悲しみと罪悪感、脇腹・右腕・左腕に中程度の切り傷、全身に小程度の切り傷、願いを遂行せんとする強い使命感
【装備】リベリオン@Devil never Strikers、チンクの眼帯
【道具】無し
【思考】
基本:最後の一人になって亡き妹達の願い(妹達の復活)を叶える。
1.ゼロ(キング)と共に、参加者を殺す。
2.参加者の殲滅。
3.ヴァッシュのことが、微かに気がかり。(殺すことには、変わりない)
【備考】
※ナンバーズが違う世界から来ているとは思っていません。もし態度に不審な点があればプレシアによる記憶操作だと思っています。
※『月村すずかの友人』のメールを確認しました。一応内容は読んだ程度です。
※オットーが放送を読み上げた事に付いてはひとまず保留。
※キングが主催側の人間だと思っています。
これにて、投下終了です。
誤字・脱字・矛盾点がありましたら、ご指摘をお願いします。
今回のサブタイトルの元ネタは「伝説のオウガバトル」の隠れマップ
アンタンジルで使われたサブタイトルからです。
そして、このロワの皆様へ。
自分はこのロワで作品を参加させていないにも関わらず
死者スレにて、自作品「地獄の四兄弟」からネタを使って頂いて
誠にありがとうございました。
心より、お礼を申し上げます。
そして差し支えなければ、これからもよろしくお願いします。
投下乙です。あーやっぱりあんじーるはきんぐにだまくらかされたかー。
一応、キングは放送の遅れが気にしていたが……まさか主催陣で騒動が起こっている事なんて夢にも思わないだろうなぁ。
しかし天道達を追跡するのは良いが……どっちに向かうんだ?
投下乙です
まぁやっぱりそうなるよなぁ…アンジールは完全に人形に成り果てたか
キングも放送遅れに気付いたけど…まだヒントが足りないか
で、キング…クロックアップで逃げたカブトをどっちに向かって追跡するんだろう?
あと支給品奪われた事にはもう気付いてるのか?
投下乙です
アンジールはこの段階だとこの判断は正解だと思うな
今の状態で戦ったらアンジールの勝ち目薄だし、なにより生き残ることは大切だよ
>>430
気づいているよ
投下乙です
まぁ、この段階でキングに喧嘩売ってもな…
アンジールが対主催になる道はあったんだがクア姉さんが断った時点で…
優勝狙いならこの判断は…でも1対1でキングに勝てるのか?
キングは放送の遅れには気が付いたが…
高町なのは(StS)、柊かがみ、天道総司分投下します。
Chapter.01 EGO〜eyes glazing over
「あれ……ここは……?」
気が付けば柊かがみは暗闇の中にいた。
「確かホテルで……」
冷静に意識を失う前の事を思い出そうとする。だが、何故かこれまでにあった事を思い出す事が出来ない。
「ダメ、思い出せない……」
かがみは周囲を見回した。暗がりだったが為に良くは分からなかったが、周囲には何人かの人間が倒れていた。かがみはその中の赤い髪の少年に触れるが、
「し、死んでいる……!?」
躰は冷たく、生気を感じる事は出来なかった。
「じゃ、じゃあ……もしかしてこの人達はみんな……」
倒れている者達は全て死体だった。
「なんなのよ一体……一体誰がこんな事を……?」
そう口にはするものの、それ以上考えようとはしなかった。それはまるで、脳内で警告を発していたかの様に――
それ以上思い出してはいけないと――
それでも何もしないわけにはいかない。かがみは慎重に周りを探り――それを見つけた。
「つかさ……」
そこにはかがみの双子の妹である柊つかさの死体があった。そしてすぐ傍には、
「浅倉……!」
頭部こそ失っていたがかがみにはそれが何かすぐに理解した。つかさを惨殺した浅倉威の死体であることを――そう、かがみは自分の眼前でつかさが浅倉に殺された時の事を思い出したのだ。
「な……何勝手に死んでいるのよ!! つかさを殺しておいて勝手に死んでんじゃないわよ!!」
胸に湧き上がるのは憎悪と憤怒、その感情が赴くままにかがみは物言わぬ骸を足蹴にする。
何度も何度も、何度も何度も、骨が折れる音がしようとも、内臓や筋肉が潰れる音がしようとも止まる事はない。
頭の中から『もうやめるんだ!』という声が響いても、
脳裏に蛇の甲冑を身に着けた者が桃色の髪の女性と栗色の髪の少女を襲うヴィジョンがよぎっても決して止まらなかった。
「はぁ……はぁ……」
そうして思う存分亡骸に暴行を加えたもののかがみの心は決して晴れなかった。むしろ逆に背筋に強烈な寒気が襲って来たのだ。
「なんなのよ……一体……私が一体何をしたっていうの……? 悪い夢なら覚めてよ……」
そんな時、脳裏に1人の少女の姿が浮かんだ。
「こなた……何処にいるの……?」
かがみはいるかどうかもわからない友人である泉こなたの姿を探した。
『カノジョニアッテドウスル? メントムカッテカオヲアワセルコトガデキルノカ?』
頭の中から声が響いてくる。
「うっさい……」
『オモイダセ、オマエハイママデナニヲシテキタノカヲ?』
「うっさい!」
『オマエハモハヤカノジョノ『トモダチ』デハナイ……タダノ『■■■■■』ダ!』
「黙れー!!」
頭から響く声を叫ぶ事で強引にかき消した。
「私は悪くなんかない……私が悪いわけじゃ……」
息切れしながらも周囲を見回す。そして、
「こなた……」
青い髪の少女――こなたの後ろ姿を見つけたのだ。かがみはすぐさまこなたの所へ向かう。
「こなた……良かった、無事だったのね……」
その声に反応したのか、こなたはゆっくりとかがみの方を向き――
――次の瞬間、その首が落下した。
「え?」
かがみは何が起こったのか理解が出来なかった。そして――
「ああ……あぁーーーーーーー!!」
慟哭が暗闇に響き渡った――
「本当に五月蠅い餓鬼やな……」
と、立ちつくしたままのこなたの首無し死体の後ろから血に濡れた小刀を構えた関西弁の女性が現れた。
「あああああ……あんたがこなたを!」
かがみは目の前でこなたを斬首した女性を睨み付けるが、
「いや、本当はアンタの妹の方が良かったんやけどそうそう都合良い話にはならんからな……で、都合良くアンタの友達がいたっちゅうわけや」
その女性は全く悪びれる事無く言い放った。しかもその口ぶりでは本当ならばつかさを殺すつもりだったというではないか。
「何を言っているのよアンタ! こんな事しておいて只で済むと思って……」
「その言葉そっくりそのまま返すで」
かがみの怒号を女性は平然と返す。
「は? 何を言っているの?」
「質問を質問で返す様やけど……アンタ、さっき浅倉を何で足蹴にしたん?」
「何でって浅倉がつかさを殺したからよ! 本当だったら私が殺す筈だったのに……」
「つまり、家族や友人が殺されたからというわけやな。だったら私が何故こないな事したかわかるよなぁ?」
「え……?」
「アンタ……私の目の前で何をしたのか忘れたのか?」
「何の事よ……?」
かがみはその女性が何を言っているのかを未だに理解出来ないでいた。
「アンタの足下よう見てみ」
「足下……?」
と、足下に桃色の髪の女性の死体があった。
「これは……」
その死体を見て、かがみはこれまでに起こった事、そして『その瞬間』を思い出す。
「そうや……アンタが私の大事な大事な家族……シグナムを殺したんや! よりにもよって私の目の前でな」
『あー、あいつ、本当にイライラするわね』
そう言ってかがみは幸せそうにしている少女に対し攻撃を仕掛けた――その結果、彼女を庇う様に桃髪の女性シグナムがその攻撃を受けた。そしてその少女が彼女の名を叫ぶもののかがみは幾度と無く攻撃を続けた。
無論、シグナム自身深手を負いながらも応戦を続けた。しかし結果は惨敗、
『やった!! 勝った!! 殺した!!
あはははははははは!!! これで静かになったーーー!!!
あははははははははははははははははは!!!!!!!!!!』
その場にはもう1人銀髪の男性もいた為、かがみは戦いを続けていた。その一方、
『シグナムーーーーーーー!!!』
少女が悲壮な叫び声を響かせていた。しかしそれはかがみにとって達成感と充実感、言うなれば悦びを与えていた。そして笑いながら少女と銀髪の男性を仕留めるため動こうとしたが、
『妖艶なる紅旋風』
少女による魔法の言葉により世界は真っ赤に染まった――
「あああああ……まさか……」
「どうした? 思い出せたか? そうや、アンタが私の大事な家族を奪ったんや」
「え……でもちょっと待って……」
だが、冷静に考えると何かがおかしい。
確かに目の前の女性はあの時少女が持っていた小刀を持っていた気がするし、目の前の女性の声が少女のものと同じなのも別段問題はない。
しかし、あの時の少女はどう見ても自分よりもずっと子供、見た目だけで言えばこなたと大差無いはずだ。しかし目の前の女性は自分より若干年上だ。
「アンタが何を考えているかは知らんし興味はない。重要なのはアンタがシグナムやエリオ達を殺したという事実や」
「う……」
かがみはふと後ろを振り返る。幾つかの死体の中に最初に見た赤髪の少年ことエリオ・モンディアル、眼帯の少女チンクの死体があるのが見える。どちらもかがみの手によって死を迎えた死体だ。
「ち……違う……アレは……」
「それだけやない。そこにある死体は全部アンタが殺した奴等や」
「え……?」
そう、かがみの周囲にはかがみ自身名前を知らない者もいるが他にもシェルビー・M・ペンウッド、金居、セフィロス、アレックス、L、万丈目準、ヒビノ・ミライ、チンク、スバル・ナカジマ、相川始、ヴァッシュ・ザ・スタンピードの死体があった。
「ちょ……ちょっと待って……百歩譲ってエリオやシグナム……それからそこの女の子までは私が殺したとしても……他は違うわよ……」
と、黒い服の少年こと万丈目の死体を指し、
「コイツなんか私にカードデッキを押しつけて殺そうとしたのよ、なんで私が殺したって事になるのよ?」
「アンタは押しつけられる前どうするつもりやった? 2人で協力してデッキのモンスターをどうにかしようと考えたんか? 違うやろ?」
「それは……」
「アンタはモンスターの餌にするつもりやったやろ? もし、アンタと万丈目の立場が逆でアンタが狙いに気付いたらどうするつもりやった?」
「デッキを押しつけて……逃げ……」
「せやな、普通はそうする」
「論点ずれてない? それでどうして私が殺したと……?」
「普通の性格やったら、人を殺したらショックを受ける……それに万丈目の奴他に使える武器何も無かったんやろ? そんな状態で凶悪な人間に遭遇したらどうなる?」
人殺しの経験がない人間が人を殺した場合、精神に大きな傷を受ける。当然後々の行動に影響を与えるのは言うまでもない。
また、万丈目はデッキ以外に使える武器を所持していなかった。装備と精神状態が悪化している状態では生き残れる道理は全く無い。
「だ、だからってそれは私のせいじゃ……」
「違うな、間違っているで。あの時点ではまだ猶予時間はそれなりに残っていた筈や。それまでにモンスターを倒せば2人とも生き残れた。アンタ自身が生き残れた事がその証拠や」
事実、デッキを押しつけられたものの餌にされる前に銀色の巨人メビウスがモンスターを倒したためかがみは生き残れた。
「つまり、アンタが餌にしようとせんかったら2人とも生き残れたという事や、アンタが万丈目を殺したというのはそういう事や」
「そ、そんなの屁理屈よ! 実際そんな都合良い話なんて無いでしょ」
「ああ、そうや。これは一番極端なパターン、実際にそうかなんて私も知らん。万丈目が本当に悪人やったのかも知れんからな」
「そうよ! 万丈目は悪人よ! だから悪くなんか……」
「けどそれはアンタが決める事やない。確実なのは万丈目が危険なカードデッキをアンタに押しつけたという事実だけや、万丈目の人格や真意は万丈目以外にわかるわけがない」
彼女の指摘はかがみが今までに感じた万丈目への憎悪の正当性を完全に否定するものだった。かがみ自身認めたくは無かったが返す言葉が見つけられない。
「他の連中も大体同じや、アンタが襲った事が後々になって影響を及ぼした可能性は否定出来ないな」
「それは……」
かがみは金居、ペンウッドの死体を見る。あの時の事を冷静に思い出す限り、一歩間違えれば2人を殺していた可能性は多分にあるし、もしかしたらあの直後に死んでいた可能性はある。
勿論殺したという感触はなかったがそれはあくまでもかがみの主観、見えていない所で何が起こったかなどかがみにわかるわけもない。
セフィロスとアレックスにしても同じ事だ。目の前の女性の攻撃に巻き込まれて死んだ場合下手人は彼女という事になるがその切欠を作ったのは他でもないかがみだ。
また、Lに奪われたデッキを後々回収出来た事実から考え、L自身カードデッキのモンスターに襲われ負傷しその傷が元で数時間後に死亡したという可能性があるだろう。
元々かがみがデッキを持っていたという事実からこれもかがみの行動が影響したと言えなくもない。
ミライについてもある程度ダメージを与えた以上、後々の影響は否定出来ない。
スバル、ヴァッシュ、始に関しては彼女自身戦いをし向けていた為言うまでもない。
以上の事から少々乱暴な理論ではあるが彼等が死亡したのはがみの行動による可能性があると言えるのだ。
「うう……」
「それにな、まさかこれだけやと思っているんか?」
「え?」
「当たり前やけどあんたが殺した奴等にも友達や家族、もしかしたら恋人がいたかもしれん。その死を知って殺し合いに乗った可能性だってある……」
エリオ達の死を知り悲しみ嘆き怒り、それが元で修羅の道へ落ちた者が出てくる。そしてその者達は多くの参加者を殺していくだろう。
では、その元凶は何処にあるのだろうか? 修羅の道へ落ちる切欠を作ったかがみでは無いだろうか?
「そ……そんなのその人が勝手にやっていることでしょ! そこまで私に言われたって……」
「ほーこの期に及んでまだ自分を正当化するか、まぁアンタの言う通りこれは半分は言いがかりに近いと思う。せやけど、自分の行動は何がなんでも正当化するのに、相手の行動は正当化させへんってちょっと我が儘が過ぎると思わへんか?
大体、アンタがエリオやシグナム達を殺した以上、それが切欠でアンタを殺そうと考える事は流石に否定したらあかんやろ?
アンタがつかさを殺されて浅倉に憎しみやら殺意やらを抱いているわけやしな」
「だって……」
「それにな……そのつかさが死んだのだってアンタのせいかも知れないんやで」
「は?」
つかさが死んだ原因は自分? 何を言っているのだろうか? つかさは浅倉によって一方的に惨殺された筈だ、何処に自分の責任があるというのだ?
「そもそもの話、浅倉があんたを恨んであんたを苦しめる為にやった可能性だってあるやろ、あんたが私の目の前でシグナムを殺した様にな」
「ちょ……何を言っているのよ……浅倉が何で私を苦しめ……」
「確かその前にレストランで戦ったやろ、最初に仕掛けたのは誰や?」
「それは……」
レストランでの戦いを思い出して欲しい。確かに浅倉は戦闘目的でレストランを燃やし参加者を呼び寄せ、それに惹かれ始とかがみがやって来た。
しかし、あの戦いで最初に仕掛けたのは始でも浅倉でもなくかがみだ。始にはモンスターを、浅倉には機関銃による銃撃を仕掛けた。
戦いの切欠など問題ではない、浅倉が最初に奇襲を仕掛けたかがみを強く意識したという可能性は多分にあるだろう。
そして、つかさとかがみは双子であるが故非常に似ている。浅倉がかがみを意識しつかさに手を掛けたという説は大いにあり得る事だ。
「そんな……まさか……そんな事って……」
「曖昧な言い方はもう止めようか……ハッキリと言ってやる――
――アンタが自分の妹である柊つかさを殺した――」
「あああぁ……浅倉じゃなく……私が……つかさを……そんなことって……」
今までのかがみであれば感情的でも何でも否定しただろう。しかし、ここまでの話や自身の行動を振り返れば振り返る程、それらが今の結果を引き起こした可能性を強めてしまう。
故に最早かがみに女性の言葉を否定する事は出来ない。
「さてと……」
「……いっそ殺してよ……その刀でひと思いに……」
「何で私があんたの言葉に従わなあかん? そうやなぁ……あんた元の世界に家族や友達がいたよなぁ」
「!?」
その言葉から彼女が何を考えているのか想像がついた。
「ままままままままさか……父さんや母さん達、それにみゆき達をををを……」
「アンタの目の前で1人1人……」
「そ、そんなどうし……いや……そんな事して許されると思っているの……? そんなの私と同じ只の『人殺し』じゃない!!」
「違うな、アンタはその罪から目を背け続けていたやろ。けど私は違う、私は自分の……いや家族の罪まで全部含めて背負う覚悟がある!」
確かあの三文芝居を聞いた限り人殺しの罪を犯したシグナムを少女が受け入れていた様な会話だった。
それから考えても目の前の彼女が家族の罪まで背負う覚悟を持っており、同時に自身もまた家族の為に罪を犯す覚悟が出来ている事は理解出来た。
「そ……そんな……」
「安らかな死など与えへん……私やシグナム達が受けた苦しみ、存分に受けてもらう……恨むのやったら自分の愚かな行動を恨むんやな……まずは下手に抵抗されへんようその両手両足を斬り落とそうか……
まぁ、もしかしたらそれでショック死するかもしれへんけど……その時は私の読みが甘かったというだけの話や」
そうして、女性は小刀を構えゆっくりとかがみに近付いていき、遂にその小刀を振り下ろした――
どうしてこんな事になったのだろうか――
そんな事は考えるまでもない、因果応報にして自業自得でしかない――
だからこそ彼女の行いに関しては仕方の無い事かもしれない――
それでも幾ら自分もやった事とは言え、自分の行動と関係の無い家族や友人達が殺されて良いわけがない――
いや、それを望む事すらも今更自分勝手な理屈なのだろう――
悪い夢ならば覚めて欲しい――
だが――
この夢はまだ終わらない――
Chapter.02 Heavenly Stars
「やっと……会えたね……」
『はい、マスター』
高町なのははインテリジェントデバイスにして自身の相棒レイジングハートを手に感慨深い表情を浮かべていた。
放送が終わり、かがみから事情を聞いた後すぐに動き出さなければならない。故に、放送前に改めて自身の手持ち道具を確かめていたのだ。
ちなみにデイパックの中にあった仮面ライダーへの変身ツールであるデルタギアに関してはその手の道具に関しての知識が一番深い天道総司に渡しておいた。
その最中デイパックを探って見つけたのが前述のレイジングハートである。デイパックの奥の奥に埋もれていたが為発見が遅れていたのだ。
そしてデイパックの中にはヴィータのデバイスであるグラーフアイゼンも見つかった。
一方、天道のデイパックの中にチンクが使う武器であるスティンガーを確認した。現状の手持ち道具はこれで以上である。
今現在天道は見たところ放送を待ちながら身体を休めている模様。とはいえ、彼の表情を見る限り全く油断は見られない。不測の事態が起これば何時でも動けるだろう。
そしてなのはの傍らではかがみが眠っている。なのはの治療魔法やデュエルモンスターズの魔法カードのお陰で死に至るダメージ自体は回復出来た。
とはいえ未だ全快には至らず、仮に傷が治った所で腱を切断された手足の機能が回復するかどうかは不明瞭だ。
その一方、なのはは手元にあるデバイス3機からこれまでの情報を整理する事にした。レイジングハートと話している内にデバイス達が何か記録しているのではと考えたのだ。
思えばこの6時間は殆どアンジール・ヒューレーやキングに振り回され殆ど何も出来なかった。他所でも殺し合いが繰り広げられている事を踏まえればどんな小さな情報でも欲しい所だ。
まず、ケリュケイオンから得られた情報だ。とはいえケリュケイオンは比較的早い段階でなのはと再会している関係もあり得られた情報は他2機より少ない。
とはいえ、全くというわけではない。ケリュケイオンの支給先はどうやらキャロ・ル・ルシエの知り合いという事がわかった。その後、ある人物がその参加者『喋るトカゲ』を喰うために襲撃したらしい。
しかし、その際に別の参加者が『喋るトカゲ』を助けたため事なきを得た。その後両名が自己紹介した事でアグモンとヒビノ・ミライという名前が判明した。
ここまでの話からなのはは前述の人物が誰なのかを推察する事が出来た。
武蔵坊弁慶は黄色の恐竜を喰おうと仕掛けた際に銀色の鬼によって妨害されたと語っていた。
つまり、ケリュケイオンの支給先は『喋るトカゲ』ことアグモン、アグモンを襲った人物が弁慶、それを助けたのが銀色の鬼ことヒビノ・ミライという事だ。
その後、アグモン達はキャロに似た声に惹かれ学校へ向かいクロノ・ハラオウンそしてヴィータと遭遇したらしい。しかしその時、凶悪な参加者が現れ戦闘になりその際にアグモンが殺害された事までは確認出来た。但し、残る参加者の生死は不明。
そしてその学校になのは達が辿り着き以後はペンウッドの手を経由してなのはの手に渡ったという事だ。
ちなみにケリュケイオンの記録にて殺害者が『インテグラルにくれてやれば、まあ、喜ぶか』と口にしていた事からその人物はアーカードだという事が推測出来た。
そしてなのは達が既に得ていた情報から判断してアーカードによってクロノとアグモンが殺され、ヴィータとミライは離脱。アーカードは何故かクロノの遺体を持ってそのまま移動したという事が推測出来た。
続いてグラーフアイゼンからの情報だ。グラーフアイゼンの支給先は危険人物である神父アレクサンド・アンデルセンだ。
アンデルセンは最初クアットロを襲撃したがその時にアンジールによって阻止されたという話だった。
但し、アンデルセン本人は完全な殺人鬼ではなくプレシア打倒を考えていたらしい。それ故にその後に出会ったヴァッシュと共闘する事にした模様。なお、このヴァッシュという人物は誰も死なせまいと行動をしていたらしい。
ところがそこに再びアンジールと遭遇、殺し合いに乗ったアンジール、そのアンジール達を殺そうとするアンデルセンだったがヴァッシュのお陰で何とか誰も死なす事無くアンジールを無力化した。
が、そこにアーカードの放送が鳴り響き、アンデルセンは2人を置いてその場所へ移動しアーカードとの激闘を繰り広げたものの巨大な光によって戦いは中断された。
その後、アンデルセンはチンクを襲撃したがそこにまたしてもアンジールが助けに入り両名は激闘を繰り広げた。だが、そこに炎の巨人の劫火に灼かれアンデルセンは死亡、その後はアンジールに回収された。
それ以降に関してはレイジングハートと重複するため、ここで話を区切りレイジングハートからの情報に移す。
レイジングハートの支給先はクアットロ。当然危険人物だと分かり切っていた為全く反応はしなかった。
前述の通りクアットロはアンデルセンの襲撃に遭いアンジールに救助されたがその際にレイジングハートはアンジールに渡された。そしてクアットロと共謀しシャマルを騙した後、アンジールは単独行動を取りアンデルセン及びヴァッシュと遭遇。
その為、アーカードの放送までの行動については前述の通り。その後、ヴァッシュもその場を離れたらしくアンジールは1人置き去りにされた。
そして放送でディエチの死を知ったアンジールは知り合いらしいセフィロスと八神はやてと遭遇。アンジールははやてを殺害したがその時にセフィロスが豹変したらしい。もっともセフィロスはこの場ではアンジールを殺そうとはしなかった模様。
その後、チンクを助けるためにアンデルセンと交戦したが炎の巨人の劫火によりチンクとも離れ離れになったらしい。
それから数時間彷徨い続け再びヴァッシュと再会。しかしその時のヴァッシュの様子は違っていて自身の強大な力を制御出来ず暴走状態になっていたらしい。
だが、なんとかヴァッシュの腕を切り落とす事でそれを止めた。但し、放送で呼ばれていなかった事から生存している模様。
そしてスーパーでなのは達と遭遇し、自身とグラーフアイゼンの入ったデイパックがようやくなのはの手に戻ったという事だ。
3つのデバイスから得られた情報は相当なもの。しかし、その中身を吟味する事である程度見えてくる事がある。
その中で現状一番重要なのがアンジールの情報だ。アンジールはクアットロ、チンク、ディエチの兄としてジェイル・スカリエッティの所にいたらしく、妹達を守る為に殺し合いに乗っていたとの事だ。
しかし、その3人の妹は既に死亡済み。それによりアンジールは修羅の道に落ちたらしい。
都合良くキングとアンジールが戦ってくれれば良いが過度な期待は出来ない。恐らく天道もその可能性は考えているだろう。両名が共闘する事になれば厄介なのは確実だ。
そのアンジールと関わった人物で今現在も生存しており重要な人物がヴァッシュだ。彼の性格は善良らしいが暴走する危険な力を有しておりそれにより誰か殺害したらしい。今現在も生存しているものの正直読み切れない所だ。
そんな中――
「あの銀色の鬼……ううん、ヒビノ・ミライ君だったかな……」
『彼がどうかしましたか?』
「アンジールを追った筈だったのに戻ってこなかった……」
この時点ではまだ放送が流れていない為断定は出来ない。しかし、状況から考えてアンジールによって惨殺された可能性が高い。
「もしもあの時、ちゃんと彼と話を出来ていたら……」
『仕方ありませんよ、緊迫していた状況でしたから』
「違うの、もっと早くケリュケイオンから話を聞いていたら……」
そもそもの話、なのはが銀色の鬼ことミライを警戒していたのは金居と弁慶から危険性を指摘されていたからだ。勿論それ自体は別段問題ではない。
が、ケリュケイオンからの情報を統合すればそれが間違いなのはほぼ明白だ。それを把握していたならば遭遇時に別の対応が出来た可能性はある。
つまり、ミライを死なせずに済んだ可能性もあったという事だ。
緊迫していた状況だから仕方がない? 確かにそういう見方はある。だが今回に関しては果たしてそうだろうか?
思い出して欲しい、ケリュケイオンがなのはの手に渡ったのは10数時間も前、ケリュケイオンから話を聞く機会は幾らでもあった筈だ。
何も得られないと思った? それこそ馬鹿げている。学校での惨劇の場に居合わせた以上、それに関する情報を得られた可能性は高い。
では何故それをしなかったのか?
1つ目として前述の通りケリュケイオンは一度ペンウッドの手に渡ってからなのはに渡された。つまり数時間のタイムラグがあったが為に学校での惨劇の事が頭から抜け落ちたのだ。
2つ目としてケリュケイオンを手にしてからはスペック確認を優先した為、それにより話を聞く事を怠ってしまったという事だ。それ以降は様々な事が起こり優先すべき事項が数々と出てきたために忘却の彼方に置かれてしまったということだ。
脳裏に去来するのはジュエルシード集めをしていた時、ジュエルシードの暴走によって海鳴市に巨大な大樹が現れた時の事だ。
実はなのははあの時、1人の少年がジュエルシードを持っていた事をある程度察知していた。にもかかわらずその時に特に言及しなかったが為に暴走を止められず大惨事を引き起こす結果を引き起こした。
勿論、あの当時はまだ魔法と出会って間もなかったし、それに加え連日のジュエルシード回収で疲労していた事もあった為ある程度は仕方が無かったと言える。
それでもその一件が自分なりの精一杯ではなく本当の全力でジュエルシード集めをする決意を固めさせた。無論、同じ事を引き起こさないためである。
だが、果たして今それが出来ているだろうか? 本当の全力ではなく自分なりの精一杯レベルでは無かったのだろうか? 現状を見る限りあの時と比べて進歩したとは言い難い。
『仕方が無い』の言葉で片付けて良いのは本当に全力を出した時だけだ。しかし、今回は違う。打てる手が十分にあった以上それを打たなかったのは怠慢以外の何物でもない。
少々乱暴な言い方ではあるがミライを殺したのはなのは、そういう解釈だって出来るという事だ。
そんな中、傍らで眠っているかがみを見る。かがみに関わる問題にしてもなのはが全く無関係というわけではない。
エリオを殺した事で動揺しているかがみへの対応を誤ってしまい、自身に支給されていたデルタギアを奪われる結果を引き起こしている。
状況から考えてシグナムを殺した事に関してはデルタギアの暴走によるものと考えて良い。
それ以降に関しては現段階では情報不足だが2人殺したともなれば精神に負う傷は相当なものなのは確実だ。
勿論、これらの事に関しても客観的に言えば『仕方がない』で片付ける事も出来る。 だが果たして本当にそうだろうか?
もし、かがみへの対応を誤らなければ? もしデルタギアを奪われなければ? 恐らくシグナムがかがみによって殺される事は無かっただろうしその後もチンクを殺す事は無かっただろう。
いや、それ以前に最初の銃声が聞こえる前に行動を始めていればエリオを死なせる結果すらも避ける事が出来た可能性もあっただろう。
そう、かがみをここまで追いつめてしまい多くの参加者を死なせてしまった要因の1つはなのはの行動によるものだという事だ。
なのはの脳裏にティアナ・ランスターとの模擬戦での一件が思い返される。
それはなのはの教導を無視して危険な行動を取ったティアナを一撃で仕留めた後、無抵抗状態になった彼女にもう一撃加えた時の一件だ。
この時のなのはの行動には明確な理由があったわけだがそれに関してはこの場では一切考慮しない。
そもそも、ティアナがそこまでの行動に至った動機を考えてみて欲しい。ティアナは兄の無念を晴らそうと強くなろうとしていた。
しかし周囲には才能に溢れた者が多すぎた。それ故にティアナは焦りホテル・アグスタでは誤射するという事態を起こしたのだ。
その失敗を取り返すために無茶な特訓を続け模擬戦での暴走に至ったというわけだ。
おわかりだろうか? なのは自身がもっと早くティアナの暴走を諫めきちんとした対話を行っていれば模擬戦での暴走は起こらなかっただろう。
更に言えばその後の対応に関しても正しい対応が出来ていたとは正直言いがたい。結果だけを見れば場は収まったわけだがそれはシャリオ・フィニーノ達が上手く立ち回ってくれたからに過ぎない。
しかし考えてもみて欲しい、それは本来ならばなのは自身が行わなければならなかったのではないか?
更に言えば、今回の対応が本当に最善だったのか? もう少し上手いやり方があったのではないだろうか?
あの時はガジェットの反応があったからそれを優先しなければならなかったのでは? 確かにそういう見方は出来る。
だが実際はそうではない。なのはは頭を冷やす必要性があると対話を翌日にしようとしていた。つまり、対話する気ならばもっと早く出来たという事だ。
それ以前に最終的に事が綺麗に纏まったのはある意味では幸運だったからでは無いだろうか? 場合によっては上手くいかず拗れた可能性だってあっただろう。
つまり――この一件が取り返しのつかない結果を引き起こしていた可能性だってあるという事だ。それこそ生死に関わりかねない程の――
そして、それと似た事をかがみを通じて繰り返してしまったという事だ。
エリオを殺した事でどれだけ精神的な負担がかかったのだろうかをちゃんと考えただろうか?
いや、結論から言えば考えていなかったと言わざるを得ない。あの場に遺体が無かった事からなのはは最初かがみがエリオを殺した事を信じなかった。故にそれは無いと頭から決めつけてしまったのだ。
そして放送でエリオが死亡した事が伝えられてもかがみが殺したという事に関しては深く考えていなかっただろう。その事を理解出来たのはモンスターとの大軍との戦闘を経た2度目の放送後の情報交換時だ。
結局の所、なのははかがみをデルタギアで暴走した不幸な少女としか見ていなかったという事だ。こんな甘い見通しで正しい対話など出来るわけがないだろう。
勿論、どういう風に対応すれば良かったかは今となっては誰にもわからない。しかし、その対応の甘さはまさしくティアナの一件と重なると言える。
しかもあの時とは違い今度はかがみを暴走させ何人もの死者を出してしまい取り返しの付かない事態を引き起こしてしまった。
勿論、暴走し何人も殺したかがみに責任があるのは言うまでもない。しかし何度も書く様に対応を誤ったなのは自身にも責任はあるだろう。
どちらにしても、かがみが目を覚ましたら今度こそちゃんと彼女と向き合わなければならないだろう。自分なりの精一杯ではなく、本当の全力で――
そんな中、天道の方に視線を向ける。自分とデバイスの情報交換の方は聞こえていたと思うが特に何か言うわけでもなく沈黙を保っている。一体彼は何を考えているだろうか?
思えば何度と無く彼には助けられ続けた。商店街での乱戦や先のアンジール戦、そしてかがみの治療、何れも彼の存在無くしては最悪な事態を迎えていただろう。
更に言えばヴィヴィオの話を聞いて此方の心中を察しヴィヴィオ救出を優先してくれてもいる。
その一方で自分は何をしていたのだろうか? 乱戦時にはフリードリヒを暴走させ、戦いは殆ど天道任せ、更に言えばフリードをキングに奪われ人質にされてしまう体たらく。せいぜい治療やサポートしか出来ていなかっただろう。
管理局のエース・オブ・エースと呼ばれておきながらあまりにもお粗末と言わざるを得ない。所詮はまだ19歳の小娘でしかなかったという事だ。
レイジングハートが無かったから本来の力が出せなかった? そんなのは言い訳にもならない。天道はカブトのベルトが無くても十分に戦っていたし、かがみを助けた時に関してはカブトの有無は関係ない。
断言しても良い。天道は自分達よりもずっとずっと強いと――彼の行動はそれを体現している。
だが何時までも彼に頼り続けてはいけない。そもそもこの殺し合いの参加者は自分達の関係者が中心だ。
主催者が自分達と関係の深いプレシア・テスタロッサである事を踏まえてもこの件は自分達の手で片を着けなければならないだろう。
正直な所、自分の無力さに心が折れないと言えば嘘になる。想いや願いとは裏腹に殺戮が繰り返される現実に目を背けたくなる。
しかし自分が膝を付くわけにはいかない。今もスバルやユーノ・スクライア達は現実に負けることなく戦っているだろうし、ヴィヴィオもきっと助けを求めている筈なのだ。
そんな状況で自分が諦めてどうするというのだ? 信頼出来る仲間もいる、相棒もこの手に戻ってきた。自分達の本当の全力を出し切れば乗り越えられない困難などこの世の何処にもないだろう。
ふと空を見上げれば綺麗な星々が輝いている。同じ星空の下でスバルやユーノ達も戦っている事だろう。そう考えれば自分はまだ戦える。
決して折れる事の無い、不屈の心を持って――
「高町」
そんな中、今まで沈黙を保っていた天道が声を掛けてきた。彼が次に口にした言葉は――
「状況が変わった、俺は今から西へ向かう」
Chapter.04 Destiny's Play
「……別の人に変身する魔法はありますし、スカリエッティの戦闘機人の中にも変身能力を持っていた人がいました」
「……わかった」
かがみが意識を取り戻した時、真っ先に聞こえてきたのはそんな会話だった。
「あ……あれ……私……? それにここは……?」
周囲を見回すとそこは森の中。
「あ、気が付いた? 天道さん、かがみが目を覚ましました」
と、なのはと天道は足を止めた。今現在かがみはなのはの背に背負われている状態だ。
「……あれ……それじゃあさっきまでのは……?」
状況を把握し切れていないかがみを余所になのはは彼女を降ろす。一方で天道は周囲の警戒を行っている。
「う……痛……」
と、地面に降ろされたものの両手足に激痛が奔り上手く立つことが出来ず腰を下ろした。
「大丈夫? このカードを使えば……」
と、なのははかがみにデュエルディスクの使い方を説明し、かがみは手際よくセットされているカードを発動した。それにより大分痛みが和らいだ。もっとも手足の違和感まではまだ完全には治らないが。
「あの……なのは……」
「ねぇ、今までに何が起こったか覚えている?」
「うん……あの関西弁のあの子に斬られた後……なのは達が……そうだ、こなた達は!?」
「大丈夫、今さっき放送があったけどこなたの名前は呼ばれなかったよ」
「お願い急いで! 早くしないとこなたがあの子に……!」
かがみの言い分では急がないとはやてにこなたが殺されるらしい。それが確かならば急がなければならないが、
「落ち着いて、今までに何があったのかもう一度話してくれる? 私と別れた後、一体何があったのかを……」
「それは……」
「あの時も言ったけど、辛い事は今度こそ私が受け止めるから……」
それはこの場で最初に出会った時と同じ真剣な眼差しだった。
「うん……あの後……」
そしてかがみはあの後に起こった事について語り始めた。ベルトの力に呑まれ暴走しなのは達と別れた後、銀髪の男性とシグナム、他1人の男性が戦っている現場に出くわし彼等に戦いを仕掛けた。
その後、かがみ自身はあっさり倒されたものの気が付くと銀髪男性、シグナム、そして関西弁の少女が和解する会話が聞こえた。どうやらシグナムと関西弁の少女は家族だったらしい。
「はやてちゃんだ……」
「でもそれを私は……」
が、それに苛ついたかがみは攻撃を仕掛けシグナムを惨殺、そしてはやてが手にした小刀の力によりかがみは再び倒されたのだ。
意識を取り戻した時にようやくベルトの力が切れ正気に戻っていたもののその時Lに拘束されており、ベルトもデッキもLに奪われていた。その後Lの所から何とか逃げ出したもののモンスターに追いかけ回されたことを語った。
そして何とか万丈目と遭遇したが彼の持っていた千年リングに宿るバクラによると彼は眼帯の少女を襲った危険人物と語っていた為、彼の持っていたデッキのモンスターの餌にしようかと目論んだが逆にデッキを押しつけられ逃げられた。
これまでに多くの人々に痛い目に遭わされ決定的な裏切りを受けた事で皆殺しにする事を決めたと語った。
その後、参加者の1人に襲いかかったがそこでタイムリミットを迎え餌にされそうになったものの銀色の巨人メビウスによってモンスターが倒された事で何とか助かったのだ。
メビウスから逃げ出した後、Lに奪われていたデイパックを運良く回収出来デッキもかがみの手に戻った。かがみは生き残るため参加者を皆殺しにしようとバクラの助言に従いつつエリアの端を超えてホテルに向かった。
その後ホテルからデュエルアカデミアに向かいスバル達と遭遇・襲撃しその際に眼帯の少女をモンスターに喰わせ殺した。
スバルに逃げられた後、煙の立ち上ったレストランに向かいそこで漆黒の鎧姿と緑の怪物の2つの変身体を持つ男性と浅倉と戦ったものの惨敗し浅倉にデッキを奪われた。
なんとかあの場で別の変身ベルトを手に入れ助かったが、ホテルに戻った後いきなり奇妙な場所に引き込まれた。
「かがみもあそこに……」
そこで浅倉によってつかさを目の前で惨殺されかがいは自暴自棄になり戦った。その後気が付いたら再びホテルに戻りヴァッシュと遭遇。
かがみはヴァッシュを利用しようと思い、後からやって来たスバルと戦わせた。そして自分と緑の怪物に変身する男の計4人を交えての乱戦になり敗れ、
「気が付いたら目の前にあの時の女の子がいた……それで……刀を突き付けられて……」
洗いざらい喋らされ、お前がシグナム達をを殺したんだと両手足を斬られ更に腹を刺されたと語った。
ちなみに今回なのはに語った内容はかがみの主観によるものではあるが、かがみ自身による一方的な決めつけによる要素は少なくなっており、自分から襲った部分に関しても概ね事実を述べている。
「そこに私達が現れたと……」
正直な所、同じ24時間でここまで悲惨な経験をしているとは予想外だった。遠くから周囲の警戒をしながらかがみの話を聞いていた天道の表情も真剣そのものだ。
一方のなのはもかがみの話には色々と思う事はある。
正直な所謝罪されても許されない部分は多分にある。幾ら状況がそうさせたといっても不可抗力と言って良いのはメビウスを襲った所までだ。
それ以降――チンクを殺しスバル達を襲った辺りからはそういった言い訳は通用しない。バクラの存在があったとしても最終的に行動を起こしたのはかがみである以上、当然彼女にも責任はある。
「……幾つか確認して良いかな? スバルはかがみをどうしようとしていた? スバルは一方的にかがみを襲ったの?」
「それは……」
かがみはスバルの言葉を思い出す。
『こなたは言ってました……貴方は怒りっぽいけど、根は優しい人だって……だから……』
『……こなただって、諦めずに戦ってるんだよ……それなのに』
『それでも、こなたがかがみさんの友達だって事に変わりはないでしょう!?
自分の世界の、自分の知る相手でなくとも、変わらず接してくれた人を、私は知ってる!』
何度と無く殺そうとした自分に対しずっと説得を続けて来た。あの時は口喧しい言葉だと思っていたが彼女はずっと自分とこなたを再会させようとしていたのは理解出来る。それを自分は……
「違う……スバルはずっと私を説得してこなたと私を再会させようとしてくれた……」
「そっか……」
実の所、なのはははやてやフェイトが危険人物になっているという話を聞いて不安な気持ちで一杯だった。
普通は有り得ないと斬って捨てる事だがこの状況どうなっているかは未知数、更に言えばはやてががかみを拷問する事実が余計に不安にさせた。
もしかしたらスバルやユーノも危険人物になっているのではないかと……本人が聞いたら怒りそうな事を内心で考えたのだ。
だが、かがみの言葉が確かならばスバルはずっと諦めずに戦い続けていたという事になる。ならば彼女の憧れの対象である自分もそれに応えなければならないだろう。
「もう一つ聞かせて……かがみははやてちゃん……その関西弁の女の子に何か言わなかった?」
はやてがかがみを拷問した事は恐らく紛れもない事実だろう。シグナムの家族でなおかつ関西弁を話し自分の事を『なのはちゃん』と呼ぶ者など彼女しかいない。
しかし、幾らシグナムを殺したとはいえヴィータならばともかくあのはやてが復讐のために一方的に拷問するとは思えなかった。
勿論これは自分の色眼鏡も多分にあるのは承知している。それでもここまでの凶行に至ったのは他に決め手がある様に思えた。
「……そういえば自分の行動を悪いと思っているのか聞いてきたけど……でも私は……自分は悪くなくてスバル達が悪いって……」
そう答えるまでは本心はどうあれ脅し程度にしか小刀を使わなかったが、以降は憎悪を隠すことなく怒りをぶつけてきた。
「はやてちゃん……」
はやての行動はやり過ぎ、それは変わらないもののそういう受け答えをされれば彼女が怒るのもある意味仕方がない。何しろ、自分自身そうやって返されて憤りを感じないわけがないのだ。
しかし、やはり友人だからこそはやての行動には何処か腑に落ちない点がある。
本当に復讐ならばいっそひと思いに殺せば良いのに何故死にかけの状態で放置したのだろうか? それ以前に復讐が目的だったのだろうか?
だが、かがみからの証言ではこれ以上はわからない。こればかりははやて側の言い分も聞かなければわからないだろう。
「最後にもう1つだけ質問させて……はやてちゃんに聞かれた質問、あの時はそう答えたんだろうけど……今ではどう思っているの?」
「……」
暫しの沈黙……かがみの脳裏にはこれまでの出来事が浮かび上がる。流石に浅倉や万丈目の事等に関しては素直に認められないものの、シグナム達3人を殺した事やスバル達に仕掛けた事に関してはそうではない。
「私が……悪かった……と思う」
「じゃあ、かがみはこれからどうしたい?」
「……あの子……はやてって人や、エリオ達の友達、それにスバル達に謝りたい……今更許して貰えるなんて思えないけど……それから、こなたにも……」
その言葉通り、再び出会った所で復讐されるだけかもしれない。それでもそれがかがみの心からの答えだ。それを聞いたなのはは、
「わかった。大丈夫だよ、例えはやてちゃんがかがみを殺そうとしても私はかがみの味方、絶対に守ってみせるから」
笑顔でそう答えた。はやての真意が何であったとしても、かがみがシグナム達を殺すという許されざる罪を犯したとしても、その為に彼女が殺されるなんて誰が何と言おうとも、それが当事者のはやてであっても認めることは出来ない。
勿論、なのは自身かがみの罪を許す事は出来ない。それでもかがみがその罪と向き合い生きていこうとするならばそれを支えていきたいと思う。
――それが彼女をここまで追いつめる切欠を作ってしまった自分に出来る事なのだから。
どれぐらい時間が経過しただろうか? まだ放送から20分も経過していないぐらいだろう。かがみの証言等から考えてはやて達の集合場所は恐らくスカリエッティのアジトと言った所だ。
早急にそこに向かいはやて達と合流しその後ヴィヴィオを助ける為にゆりかごへ向かわなければならない。
しかし状況は芳しくない。生き残っている参加者は残り12人。なのは、天道、かがみを除けば残り9人、
この場においても無力な参加者を守りこの殺し合いを打破するために戦っているスバル、
なのは自身が魔法と出会う切欠を与えたユーノ、
聖王となって暴れてはいるが何とかして助け出したいヴィヴィオ、
友人ではあるがかがみに対する凶行の真意が気になるはやて
善良な性格らしいが暴走する力が気に掛かるヴァッシュ、
かがみの友人でスバルがずっと保護していたらしいこなた、
別れた後の動向がずっと不明瞭で信用しがたい金居、
自分達を掻き回し殺し合わせ様とするキング、
妹達を殺され修羅の道に落ちたアンジール、
それ以外の者は皆死亡した。それについて思う所はあるが今はそれについて想いを馳せる余裕はない。
9人の内味方及び保護すべき対象と言えるのはスバル、ユーノ、こなたの3人、
危険人物ではあるが何とか助け出したいのがヴィヴィオ、
一応味方といえるが完全に信用出来ないのがはやて、ヴァッシュ、金居の3人、
出来うる事ならば説得したいが厳しいと思われるアンジール、
そして最悪の敵とも言うべきキング。
この中で現状明確な危険人物はヴィヴィオ、アンジール、キングの3人。なのはとしては当然ヴィヴィオは助けるつもりであったし前述の通りアンジールも出来れば説得したい。
しかしキングだけは確実に打倒しなければならない存在と言えるだろう。殺さなければならない相手と言って良い。
殺しをする事に抵抗が無いといえば嘘になるしそれが受け入れがたい事に変わりはない。それでもキングの為に何人もの参加者が死に更に殺し合いを煽ろうとしている以上殺すという選択もやむを得ないだろう。
一方で金居に関しても気になる所がある。金居の言動を思い返した所、銀色の鬼やペンウッドを疑ってかかっていた。
憤りは感じるもののそう思う事自体は問題ではない。しかし情報を纏めた所銀色の鬼ことミライやペンウッドが悪人という事はなかった。
勿論、金居が知り得ない事であり警戒心が強かったからと片付けられないこともない。しかしどうにも学校でのやりとりは完全に金居が主導権を握っていた事から踏まえても何かが引っかかるのだ。
そう、まるで金居が自分達の間に不和を起こして分裂させる事を狙うかの様に……勿論これだけならば趣味の悪い妄想だろう。
だが、ある一件が気になるのだ。かがみから聞いた所デッキには説明書が付属していたらしい。しかしなのは達もデッキを手にしてはいたが説明書は存在しなかった。
C.C.が持っていたデッキの説明書はフリードリヒによって使用不能になったとして、自分達が学校で手に入れたデッキの説明書は何処に行ったのだろうか?
デイパックはそのまま残っていたから中に残っているのが自然だ。だとすれば――誰かがなんらかの理由で処分したという可能性がある。
状況から考えて学校でデッキを使っていた人物はクロノと考えて良い。しかしあのクロノが説明書を処分するとは思えない。では処分した人物は誰なのか?
説明書を処分しなければどうなるのであろうか? 説明書にはモンスターに生きた参加者を喰わせなければ所有者が喰われるとあったらしい。それがあったからこそ万丈目はかがみにデッキを押しつけたのだろう。
それを知らずに平然と持っていれば持ち主がモンスターに喰われるだけという事だ。
なのはとペンウッドはそれを知らずにデッキを持っていた。放置すれば自分達が餌になるのは言うまでもない。つまり、説明書を処分した人物は2人を死なせる事を狙っていたという事だ。
そしてその容疑者はあの場で別行動をした弁慶と金居のどちらかに絞られ、言動などから考慮して金居がそれを行った可能性が高い。
金居は表向き自分達に協力してくれていた。しかし、味方の中に入り込んで内部から潰すという手法は存在する。
金居は本当は優勝を狙っていたのではなかろうか? いや、出会った当初はともかく放送を聞いたことで優勝狙いに切り替えた可能性もあるだろう。こちらが動揺している間に色々仕掛けていたということだ。
以上の事は推測レベルの話、確たる証拠があるわけではない。勿論、出来うる事ならば信じたい所だ。しかし思考停止し無条件に信用して取り返しの付かない事になるのだけは避けなければならない。
何にせよ、金居をこのまま味方として信用する事は避けるべきだ。もしかしたらアンジール、はやて、ヴァッシュ以上に危険な存在かも知れない。
「天道さん……」
移動を再開するため近くで周囲を警戒していた天道に声を掛け、
「話は聞いていた。それより、動けるのか?」
「私なら大丈夫だから……お願い、こなたを……」
かがみ自身生きていたいと思っても今更許されるとは考えていない。再びはやてと再会した所で殺されても文句は言えないだろう。
だが、自分の行動が原因でこなたが殺される事は望まない。せめてこなただけは助けて欲しい、それがかがみの本心である。
なのははそんなかがみの言葉を聞いてかがみ自身本当は優しい子だと感じだ。だからこそこなたは勿論のことかがみも助けようと思う。例えはやてと対立する事になってもそこを譲るつもりはない。
「わかったよ……でも、こなたはかがみが死ぬことを望んだりしないよね? だから……」
「うん……私も諦めない……」
とはいえまだ完全回復には至っておらず、それ故なのはに背負われている状態だ。それでも、彼女の言葉からは確かなる意志が現れていた。
そしてここ暫くの間殆ど沈黙を保っていた天道も只沈黙をしていたわけではない。
そもそも当初の予定では放送を聞いた後、かがみの意識が戻り彼女から事情を聞いてから移動を始めるつもりだった。しかし実際はかがみ覚醒時にはすでに移動途中だった。
天道が移動を前倒しした切欠は漠然としていれば見落としかねないある事が起こったから。それは0時丁度になっても放送が始まらなかった事だ。
天道自身最初の放送は聞き逃していたが2度目と3度目の放送は共に12時、18時丁度に行われた。にも関わらず今回は0時丁度から2、3分過ぎても放送が始まらなかった。
何故これまでは定時に行われた放送が今回に限って行われなかったのか? 定時に放送を行えない事情があったのではないのか? つまり、主催側でこのデスゲームに関わる重要な事が起こった可能性だ。
となればこのまま只時間を潰すのは得策ではない。状況が大きく動いたのならば急がなければならない。最悪殺し合いをやっている事態では無くなっている可能性もあるのだから。
故に移動を前倒しする旨を話しなのはもそれに賛同し移動を始めたのだ。動くとなればその足は速く早々に西端を越えて仮説通り東端の森に到達した。
そのタイミング、定時より10分遅れて4度目の放送が流れた。放送自体はプレシアが行っておりその内容に特別な情報は何も無かった。
いや、『特別な情報は何も無かった』事こそが異常であった。
定時より10分遅れての放送にも拘わらず仮眠を取ったから自分が行うという話だけで遅れについては何も言及していない。これまで厳密に行ってきた割にあまりにずさんではなかろうか? 遅れるにしても一言程度でも言及する方が自然だ。
そもそも本人が定時に行えない事情があるならば前回の放送同様、オットー辺りに放送を任せれば済む話だ。本人が出て直接何かしたわけではないのだからそれで十分事足りる。
では、なぜ10分遅れてでもプレシア自身で放送を行わなければならなかったのか? 少なくても前述の通りプレシアが行う必然性はない。
が、ここで見方を変えてみよう。放送を行う人物は『プレシアでなければならなかった』と考えればどうだろうか?
主催がプレシアである以上、プレシア以外が行ってもプレシアは健在だとだれもが考える。しかし、今回に限ってはプレシアの存在を無理にアピールしているかの様に思える。
そう、まるで『放送を行っているのはプレシアです。何も問題はありません』と無理に見せているかの様な――それが意味することは1つ、『放送を行ったのはプレシアの姿を借りた誰か』という事だ。
つまり、何者かがプレシアの姿を借りて放送を行ったという事だ。そうまでしてプレシアが健在であるかの様に見せるという事は――
主催側で何かが起こり、プレシアが主催の座から転落した――
天道がその仮説に至れたのは彼の世界にいるワームの存在があったからだ。ワームは人間に擬態する能力を持っておりその際に記憶や人格をも引き継ぐ――そう、肉親が実はワームだったという話もあり得るという事だ。
つまり、放送を行った者はプレシアに擬態したワームという可能性もあるという事だ。
もっとも、天道の世界の常識だけで物事を計ってはならない。天道はなのはに全くの別人に偽装する能力や魔法が存在するかどうかの確認を行った。
なのは自身も放送の異常は感じており、天道の問いかけで彼女も同様の仮説に至る事が出来、天道に変身魔法の存在及び、スカリエッティの戦闘機人の中に変身能力を持つドゥーエがいる事を話した。
これにより、主催側の異変・プレシアの転落の可能性が非情に強まった事になる。となると、最早このデスゲームは瓦解寸前、脱出のため行動を急がなければならないだろう。
勿論、これらの事は完全に断定出来たわけではない。単純にプレシアが此方を攪乱するために10分遅らせただけという事もあり得る為、罠の可能性も考慮に入れなければならない。
しかし、どちらにしても早々に動かなければならないだろう。放送の真相が何であれ、参加者の中にはこの異常に気付き行動を起こす者が出てくるからだ。
天道は多くを語らない。それ故に放送やかがみの証言等から何を考え最終的にどうするつもりかまではなのは達の視点からはわからない。
だが、その瞳にはこのデスゲームを打倒し参加者達を救うという強い意志が宿っている――
残り人数は12人、10分もの謎の放送遅れ、それらから鑑みてこのデスゲームは終盤に入ったと考えて良いだろう。
終焉を告げる歌は静かに奏でられ始めた――
そして、異なる運命を持った役者達はある一点へと集おうとしていた――
運命が繋がる――
【2日目 深夜】
【現在地 D-9 森林】
【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康
【装備】とがめの着物(上着無し)@小話メドレー、すずかのヘアバンド@魔法少女リリカルなのは、ケリュケイオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式×2、グラーフアイゼン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ホテル従業員の制服
【思考】
基本:誰も犠牲にせず極力多数の仲間と脱出する。絶対にヴィヴィオを救出する。
1.アジトに向かい仲間達と合流する。
2.天道と共にゆりかごに向かい、ヴィヴィオを探し出して救出する。
3.はやてからかがみを守る。
4.出来れば片翼の男(アンジール)と話をしたいが……。
5.極力全ての戦えない人を保護して仲間を集める。
【備考】
※キングは最悪の相手だと判断しています。また金居に関しても危険人物である可能性を考えています。
※はやて(StS)に疑念を抱いています。きちんとお話して確認したいと考えています。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。
※放送の異変から主催側に何かが起こりプレシアが退場した可能性を考えています。
【柊かがみ@なの☆すた】
【状態】両手首の腱及び両アキレス腱切断(回復中)、腹部に深い刺し傷(回復中)、つかさの死への悲しみ、サイドポニー、はやて(StS)に対する恐怖、なのは(StS)に背負われている
【装備】とがめの着物(上着のみ)@小話メドレー、デュエルディスク@リリカル遊戯王GX、治療の神 ディアン・ケト(ディスクにセットした状態)@リリカル遊戯王GX
【道具】なし
【思考】
基本:出来るなら、生きて行きたい。
1.アジトに向かい、はやてやスバル達に謝りたい。
2.こなたを守る。
【備考】
※一部の参加者やそれに関する知識が消されています(たびかさなる心身に対するショックで思い出す可能性があります)。
※デルタギアを装着した事により電気を放つ能力を得ました。
※変身時間の制限にある程度気付きました(1時間〜1時間30分程時間を空ける必要がある事まで把握)。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。
※第4回放送を聞き逃しました。その為、放送の異変に気付いていません。
【天道総司@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康
【装備】ライダーベルト(カブト)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、スティンガー×5@魔法少女リリカルなのはStrikerS、カブトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、デルタギア一式・デルタギアケース@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【思考】
基本:出来る限り全ての命を救い、帰還する。
1.アジトに向かう。
2.なのはと共にゆりかごに向かい、ヴィヴィオを救出、何としても親子二人を再会させる。
3.キング及びアンジールは倒さなければならない敵。
【備考】
※首輪に名前が書かれていると知りました。
※天道自身は“集団の仲間になった”のではなく、“集団を自分の仲間にした”感覚です。
※PT事件とJS事件のあらましを知りました(フェイトの出自は伏せられたので知りません)。
※なのはとヴィヴィオの間の出来事をだいたい把握しました。
※放送の異変から主催側に何かが起こりプレシアが退場した可能性を考えています。
Chapter.03 REBIRTH 〜女神転生〜
何時まで経っても腕にも足にも激痛は奔らない。手足の感覚までおかしくなったのだろうか? それとも……
「何のつもりや?」
振り下ろされた筈の小刀はある者の右手の指だけで止められていてそこからは僅かに血も流れている。
「おかしいなぁ……はやてちゃんどうしちゃったのかな……」
その凶刃を止めたのはなのはだ。
「え……なのは……?」
「はっ、何もおかしな事なんてあらへん。私は目の前でシグナム達を殺した阿呆餓鬼に同じ事をしているだけや」
「少し頭冷やして……そんな事、シグナムやエリオが望んでいると思う? 誰も望まないよ」
「望むか望まないかは問題やない。コイツは私ら家族の絆を踏みにじり沢山の人を殺しておきながら自分は悪くない悪いのは私らって言い切ったんや。そんな奴を許せる道理なんかあるかい」
「それは……」
「そもそも、コイツは妹が殺された復讐を正当化しているんや。私がやろうとしていることも正当化されて然るべきやと思わへん?」
かがみがつかさを殺した浅倉を許せず殺そうと考えた以上、はやてがシグナムを殺したかがみを許せず復讐しようとする事を一方的に否定される道理はない。
「なのはちゃんにしてもエリオ達を殺されているわけやろ。まさかとは思うけど、エリオ達は死んで良くてそれを殺したかがみは死んじゃダメなんてアホな事言うつもりやないよな?」
「エリオ達が死んで良いなんて誰も思わないよ。でも今も生きているかがみを死なせてもダメだよ」
「寝言は寝て言えや。コイツが今まで何をしてきたか理解して言っているんか? コイツは自分の悪行を正当化し悪いことは全部他人のせいにして、スバル達を騙し殺し合わせたんや。
シグナム達が死んでいるのにコイツが生きているのは理不尽にも程があると思わへんか?」
「私だって許せるわけないよ! だけど……死んだ方が良いなんて事も絶対にない!」
「そうは言うがなのはちゃん、あんたも助けようとしたけど裏切られたんやろ? スバルやエリオも助けようとして裏切られた……コイツはそんななのはちゃん達の善意をまた裏切るで」
そう……なのはに裏切られたと言っても冷静に考えてみればそれは誤解によるものに過ぎない。エリオとスバルはそもそも助けようとしていて裏切ってなどいない。
他の人に関しても裏切られていたと思っているのは自分だけで、本当は助けようとしていたのかも知れない。にもかかわらず自分はそれを歪曲して受け取りその想いを裏切り踏みにじってきたのだ……
バクラに誘導された? いや、そんな言い訳は通用しない。確かにそうし向けていた所はあったのかも知れないが最終的にその選択をしたのは自分だ。そう、悪いのは自分なのだ。
「言っておくが、コイツは自分の都合の良い風にしか物事を考えへん。今ここでなのはちゃんが助けようとしても、裏切るって思って信じたりなんかせん。そんな奴をこのまま生かしておいても良いと言うんか?」
そう、なのはが自分を助けようとしていても心の底から信じる事は出来ないでいる。
「それでも私は裏切らないよ! それにかがみにだって元の世界に友達や家族だっている。その人達はかがみの事を信じて待っているんだよ!
それにかがみは本当は優しい子だよ! 家族や友達が死んで怒れるって事がその証拠じゃない!
だから今からでもやり直せる、今からでも死んだ人達の事を忘れずに殺した罪を背負って生きていく事だって出来るよ! はやてちゃん達だってそうだったんだから……」
こんな自分を信じてくれる……まだやり直せると言ってくれる……なのはは本当に私を助けたいと思ってくれていた……
なのはだって本当はエリオ達を殺された事は許せない筈なのに……それでも私を助けたいと……
正直な所、あまりに虫の良い話だと思うし今更皆に会わせる顔なんて無いと思う。
それでも、やり直せるならばやり直したい。今度こそきちんと罪と向き合って――
だって、こんなにも自分を信じて助けようとしている人がいるんだから――
長い夢が終わる――
彼女が目覚めた後どのような選択を取るのか――
その選択の末にどのような結末を迎えるのか――
それは今はわからない――
それでも――
呪われた運命を変える力は誰もが持っている――
今からでも生まれ変わる事は可能――
そう信じている――
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