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Fate/clockwork atheism 針音仮想都市〈東京〉Part3
462
:
TOKYO 卍 REVENGERS――(開戦)
◆0pIloi6gg.
:2025/06/10(火) 22:53:04 ID:D5Ika2WY0
◇◇
風の音が微かに止んだ。
男たちはただ黙って、今の今まで弱音を吐いていたことを誤魔化すのも忘れ前に立つ異邦の騎士を見上げていた。
ゴドフロワ・ド・ブイヨン。歴史の彼方より召喚されし、聖地を制圧せんと剣を掲げた十字軍の先達。
その背筋は凛と伸び、金髪は月光を帯びるように輝いていた。
狩魔の付き人。デュラハン最強の暴力装置。物言いも振る舞いも気安いが、どこか得体の知れない迫力のある男。
彼はしばし、これから率いる兵士達の顔を見渡した。
怯え、緊張し、それでも歯を食いしばっている者。
叱責を恐れるように、弱々しく視線を泳がせている者。
撤退を進言したいが度胸はなく、口をまごまごさせている者。
ゴドフロワは、彼ら一人一人の瞳へ静かに視線を落とし、やがて穏やかな声で語り始めた。
「この戦いに、意味はあるのか――そう思っている者もいるでしょう。
暴力に暴力を重ねて、血で血を洗う果てに、残るのは自分達の死体かもしれない。
そんな戦いに命を懸けて何になる。今すぐにでも退き、すべて忘れて元の暮らしに戻るべきなのではないか……」
語調は柔らかかったが、その言葉はひとつひとつが石のように重く、故に鋭く聴衆の胸を打った。さながら咎を暴く聖者の説法のように。
ゴドフロワが更に一歩、皆の前に進み出る。
「実はね、私も最初は恐れたものです。
初めての出撃の前夜は震えが止まらなかった。食事はおろか、水さえ喉を通らず何度も吐き出しましたよ。
思わず私は己に問いました。剣を振るう意味を。なぜ戦わねばならぬのか。神は何を望まれているのか……」
彼の眼差しは遠い戦場を見ていた。
聖地への進軍。砂と血と祈りが混ざり合った、いつかの記憶。
しかしすぐに彼の視線は現在に戻り、鋭く兵たちを見据えた。
「答えはひとつではありません。何故なら正義とは多面である。
殉ずる教えの解釈にさえ人は割れるのですから、そこを確定させるなどできる筈もない。
でも唯一確かだったのは――何かを護り、勝利するためには、己自身が率先して立たねばならぬということ」
風が吹き抜ける中、ゴドフロワの声は力を帯び始める。
誰もが息を呑み、静かに耳を傾けた。
「ここに集ったあなた方は、ただの無頼者ではない。
弱き者を脅すだけの徒党ではない、少なくとも今は。
己の信じるもののために立ち上がる、素敵な資格を持つ者たちだ」
その言葉に、何人かの眼差しが揺れた。
「私がここに来たのは、力を貸すためではありません。導くためでもまたない。理由はひとつ、あなた方と共に戦うためだ」
彼は胸に手を当て、重々しく誓いを立てるように声を続ける。
「今宵私はこの剣を、あなた方の誇りのために振るいましょう。
臆することはない。私はこの身を以て、地獄の底に至るまであなた方の盾となろう」
その瞬間、空気が変わった。
たった一言で、たった一人で、ゴドフロワは此処に充満していた不安と恐怖を一蹴したのだ。
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