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【第1回放送〜】平成漫画バトル・ロワイヤル【part.2】
725
:
『大東京ビンボー生活マニュアル ぬーぼ』
◆UC8j8TfjHw
:2025/06/11(水) 00:20:18 ID:rmwPsVaY0
「よし、行くか」
ぶろろろろ…
「……」
渋谷の街をオレは走る。
正確には、オレの意志で動くよーになったこの白い車が、眠りこけた街の中を静かに滑っていた。
信号が何やらチカチカしていたが、特に気に留める必要はないだろう。
交通法には生憎疎いオレであるが、世の中『気にしたら負け』という事柄もあるのだ。
ぶろろろろ………
「速いなぁ」
…速いと言ってみたものだが、スピードは出していない。いや出せなかった。
なにしろこの車の操作はまだ未知の祭事であり、アクセルの踏み具合ひとつにも慎重を要する。
ただ、この前へと進む感覚はたしかにオレを別の世界に運んでいた気がした。
「……………面白いなぁ!」
流れる景色が非常に美しい。
コンビニの看板は、まだ光だけを放って誰のためとも知れぬ営業を続けている。
時折、路肩に並ぶ自転車が、オレの通過に合わせて小さく揺れる。その様子は、まるで「よぉ」と声をかけてくる旧友のよーにも感じた。
横断歩道のゼブラ柄も、誰にも踏まれずに整然とそこにあり、それを見たとき、オレはふと、アフリカのサバンナを駆けるライオンの姿が思い浮かんだ。
誰に咎められることもなく、ただひたすらに風を切って走る──オレはいま、まさに自由を堪能しているのだ。
風景は灰色と白と、ほんのり色づく朝焼けで彩られていて、それがまるで、時代をすべて洗い流した後の世界のよーにも見える。
いったいこの車がどこへ向かっているのか、オレにも正直よくわからない。
だが、目に映るものすべてが清々しく、また少しだけ物悲しく、そして懐かしかった。
その風情を前にしたら、道先を気にすることなどきっと野暮に等しい物だ。
それに、ここは大東京であり、同時に誰の大東京でもない。
ならばオレはこの広大な一人舞台を、風のごとく走りきるまでだ。
ぶろろろろ………
「……」
「……。──」
なんとなくハンドルを切ってみると、車体が大きく右へ曲がる。
「──おっ」
その角を抜けた先に、ちいさな牛丼屋がぽつんと佇んでいた。
「吉」の字が、白い照明にぼんやり浮かび、店内からは蛍光灯の光と、温かい湯気が漏れる。そんな牛丼屋だった。
…ごくりっ。
──もはや、生唾の時点で旨い。
裸の大将といえばオニギリとゆーように、牛丼が何よりも好物なオレである。
一杯三百五十円で腹いっぱい満たせるソイツは、ビンボー人であるオレには少々手の届かない存在なのだが、
それでも食欲には勝てずついつい店に寄ってしまうここ最近だ。
アツアツの牛肉に、じゅわっ…と湯気を発するご飯…。
最初は出されたままの味を堪能し、クライマックスに差し掛かった時には生卵をかけガツガツ飲み込む……。
数十秒後の未来にて、牛丼をハフハフ頬張っている自分を想像すると、もう運転なんて集中できそうにもない。
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