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決闘バトルロイヤル part4

32地獄絵巻・序 ◆ytUSxp038U:2024/08/20(火) 21:47:33 ID:ewdI.nn60
やけに喉が渇く。
またしても厄介な者が顔を出し、本当なら悪態の一つでも言ってやるところ。
しかし口を開くのはおろか、呼吸一つするだけでも吐き気が込み上げ眩暈がする。
人の形を取った形容し難き怪物に、真嗣は冷や汗を抑えられない。

「申し訳ありませぬ。無粋と承知の上で顔を出させて頂きました。ですが此度の舞台は悪鬼羅刹も手を叩いて踊り狂う、神仏無き殺戮遊戯。
 故に多少の茶々入れはどうか広き心でお許し願いまする」

己が恐怖の対象に見られているとは理解の上で、気にもしていない素振りの一礼。
やけに様になった優雅な仕草でも、怖気の走る存在感は隠し切れなかった。

「死合い、蹂躙、乱痴気騒ぎ。大いに結構!しかし折角の宴には少々華が足りないご様子。故に、僭越ながら拙僧らが一つ場を盛り上げて差し上げようと思った次第。
 準備は宜しいですかな?良子殿」

長ったらしい言葉の終わりを待っていたのか、見上げる体躯の背後よりピョコリと顔を出す者が一人。
男の腰にも届かない小柄な少女であった。
四肢も胴も細く、ランドセルを背負う齢特有の肉付きの薄い体。
好奇心旺盛さを感じさせる、パッチリと開いた両の瞳。
故にこそ、右手に下げた抜き身の刀が異様さを放っている。

「いつでもいけるよ。っていうより、リンボさんの前振り長過ぎじゃない?」
「これは失敬、拙僧一度話すとどうにも止まらぬ性分ですので。…ンン、骸の操作も支障ないようで」
「とりあえず一人だけならそんなに難しくないかな。後は刀にもっと慣れて、お姉をしっかり守れるようにならなきゃね!」
「ええ、ええ!良子殿がそうおっしゃるなら、このリンボめも助力は惜しみませぬ」

異次元の光景が広がっている。
病に侵され死の淵を彷徨った時に迷い込む、荒唐無稽な悪夢の世界のよう。
美しくもおぞましき男と、可憐な少女が旧来の友のように会話を弾ませ微笑み合う。
何の冗談かと目を疑う談笑を傍らで見守るは、伽藍洞の瞳を浮かべた肉袋。
左胸部分を彩る赤はとうに渇き変色、失った手首より滴り落ちるモノは最早彼女の中に残っていない。


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