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オリロワZ part3

328Z ―望み願い祈る― ◆H3bky6/SCY:2024/08/04(日) 12:11:57 ID:CAQRuEHA0
茶子は言っていた。
発信機の信号を追っている途中で女王と遭遇したと。
それが指し示す意味はひとつ。
茶子と女王を結ぶ直線上にハヤブサⅢの発信機を持つ人間、つまりはハヤブサⅢを殺した特殊部隊がいるという事だ。

女王を守護する光の巨人の存在は特殊部隊としても無視できないはずだ。
創は光点から狙撃可能な位置まで相手を誘導するとともに、マグライトによって観測手の役割を果たしていた。
伝えていたのは周囲の風向きと強さ、そしてその巨大さ故に遠近感が薄れてしまう巨人との正確な距離感である。

「くっ…………!?」

だが、大きな想定外が一つ。
その爆風は、巨人に挑んでいた少年にも容赦なく襲いかかった。
特殊部隊なら狙撃銃くらいの装備はあるだろうという想定の行動だったが、これは余りにも威力が高すぎる。
明らかに国際人道法に違反した破壊力である。

爆風と熱波に巻き込まれるだけで命を落としかねない。
創は匍匐体勢で目と口を守りながらなんとか爆風に堪えようとするが、あえなく小さな少年の体は吹き飛ばされ空中に舞い上がった。
暴力的な爆風に少年の身体は無力に翻弄され、地面に激しく叩きつけられた。

「っ……………ハッ………ッ!!」

もみくちゃにされながらもギリギリで受け身は取ったが、それでも衝撃で息が詰まり全身が痛みに包まれた。
熱風で全身の皮膚が火傷でもしたように赤くなり、喉の奥も僅かに焼けてしまったのか呼吸をするだけで小さく痛みが走る。
だが、それでも創は生きている。

爆風の影響が収まったのを確認して、痛みを堪えながら四つん這いの体勢で創は顔を上げた。
見上げた先、そこに在ったのは、上半身が弾け飛ぶように消滅したダイダラボッチの姿だった。

腰から下だけになった巨人は、炎煙を上げながらそのまま崩れ落ちるように倒れた。
大きな地鳴りと共に倒れた下半身が結合を失った光の粒子となって砕け散る。
そして、爆発によって天に打ち上げられた魂の破片が、無数の輝く粒子となって祝福の雨のように草原に降り注いだ。
白熱する光の残骸の一つ一つが星屑のように煌めきながら、降り注いだ大地の上で儚く光を放っていた。

その光の粒は焼き払われた草原の代わりに大地を覆い尽くし、幻想の世界を創り出した。
砕けた人間の魂で作られた星の草原。
それは、この世のものとは思えない、息を呑むほど美しい彼岸の景色だった。

「くっ………………ふぅ」

死後のような世界で眠ってしまいたい気もするが、全身が悲鳴を上がる体に鞭打ち、創は立ち上がる。
何故なら、まだ最後の戦いが待っている。

守護騎士は打倒した。
ならば、彼女はきっとここにやって来る。

待ち合わせでもするように、この美しく輝く草原でクラスメイトの少女を待った。




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