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lily Crown Battle Royale

3 ◆9rj3OvFOmY:2023/06/26(月) 02:37:31 ID:lVM5Sm.M0


 報われた物語。
 報われぬ物語。
 この世には、ありとあらゆる《カケラ》が偏在している。

 例えばそれは、“魔と人の繋がり”であり。
 例えばそれは、“許されぬ愛”であり。
 例えばそれは、“世界の線を繰り返す鬩ぎ合い”であり。
 例えばそれは、“ただ枯れていくだけの百合の花”である。

 此処はあらゆるカケラの万華鏡。
 過去、未来、そのどちらとも異なりながら、そのどちらにも到る可能性を秘めた場所。
 本来ならば神、ないし魔女の域に達さなければ認識することすら不可能な空間。
 選ばれた少女が立っているのはひとえにそんな場所だった。

 その眼前に立つのは古の神。
 古き時代にこの星へと降り立ち、そして世界の裏側へ姿を隠した社の神。
 静謐と、それとはまったく相反する享楽の性を併せ持った神が嗤っている。
 その手はある者にとっては救いであり、またある者にとっては最悪の運命そのものだった。

「そう硬くならなくともよい、どうせ覚えてはいられぬ」

 女の手元に握られた一つのカケラ。
 そこに映し出されているのは、ある非凡な惨劇の始まりだ。
 鷹野三四。とある運命の牢獄にて看守を務めた女が神のような顔で指揮を執っている。


『《プログラム》』
『殺し合い』
『最後の一人』
『起爆式の首輪』
『禁止エリア』
『定時放送』


 自分が何故この催しを開き、何を目的に命を弄ぶのか。
 それすら理解していない、その矛盾にすら気付かず神の操り人形として踊り続ける哀れな女。
 されど腐っても彼女は今宵の巫女。神の触覚だ。
 殺し合い―――最後の二人の生き残りを選定するための《プログラム》。
 鉄の首輪を填められた数十人の女達は、陶酔したように演説する鷹野のことを各々様々な感情の載った顔で見つめていた。

「我は鑑賞に足る舞台を求めている。この遊戯盤もそのために用意した。
 異なる世界の枝葉を手繰り、カケラ紡ぎに明け暮れ……それなりに苦労したが、ニンゲンが想いのままに繰り広げる綾模様はなかなかどうして見応えのあるものだと学習する機会があってな。
 経験に学び、一つ骨を折ってみた」


『首輪の実演』
『死者』
『悲鳴』
『哄笑』
『暗転、身柄の会場への移送を開始』


 鷹野はあくまでも人形だ。
 しかしそんな彼女に踊らされる女達は、それ以下の駒だ。
 神に人の子の愉快さを教えたとある少女の魂を参考に選定した小さな小さなカケラ達。
「生き残れるのは二人。
 そう、二人だ。一人ではない。
 望むなら、愛する誰かと共に帰ることも可能というわけだ」
 殺さずして生き残ることは叶わない。
 少なくとも、神はそれを想定していない。
 だが、全てを殺さなくても帰ること自体は出来る。それは許されている。
 帰還することの許される命は二つ。
 ただし殺さなければならないのは“それ以外の”全ての命だ。
 
「何を望む、と問うか? であれば我は愚問と答えよう。
 ただ、生きよ。
 心のままに生きよ。
 欲望のままに生きよ。
 理に従い手を血に染める。
 神たる我に弓を引く。
 何を選ぼうが全てはそなたの自由よ。
 そなたはただ生きればよい。
 生きて、我の鑑賞に足るモノを見せ続けてくれればそれでよい。
 此処では……我の遊戯盤では全ての罪が赦される」

 神の名を欲しいままにする観測者。
 エウアの名の下に、全ての罪が許容される。
 真実も嘘も。
 天国も地獄も。
 善と悪すら此処にはないのかもしれない。
 
「生き抜いたとして、それで全てが手に入るわけでは確かになかろう。
 だがこれだけは断言しよう。
 死して得られるものはない。
 命なき者は、ただこの運命の行き止まりに崩れ落ちてゆくのみだ」
 あるのはただ一つ。
 生者とは勝者で、死者とは敗者だということ。
 逆に言えば此処にある法はそれだけ。
 自然界のように単純明快で嘘偽りのない、人が何よりも利己(エゴ)に染まれる環境が此処には揃っている。

「さて、今度は我が問いを投げよう。
 そなたは何を望み、何を選ぶ?
 その生き様で、我に示してみせよ―――人の子よ」
 神が問いかけた。
 “何を選ぶ?”と。
 その言葉に、玉座へと招かれた駒は少し迷い。
 そしてゆっくりと口を開く。
 告げた答えに、神は満足そうに口端を曲げた。


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