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令和ジャンプキャラ・バトルロワイアル

683理解から最も遠い感情 ◆7XQw1Mr6P.:2023/06/26(月) 00:27:16 ID:d/QzkOOg0

 ナプタークが思いを馳せるのは、ほんの数分前の記憶。
 ただしそれは、先ほど目の当たりにしたトガヒミコによる凶行ではなく。
 その直後に聞こえてきた第一回放送について。
 より正確に言えば、放送内容においてナプタークの関心を引いたのはたった一つ。
 宿敵の死。それのみだった。

「―――……『破滅』のマグ=メヌエクが、死んだ」

 この短い時間に何度も何度もつぶやいてみた言葉を、また口に出してみる。
 まったくもって、塵芥ほどの現実味も無い。

 ナプタークは、あれを「死なないモノ」だと思っていた。

 マグ=メヌエク。
 邪神の第一柱。
 破壊の権化。
 傲岸なる暴君。
 殺しても死なないような、ふてぶてしき不遜の者。
 それがましてや。

「人の手によって、滅ぼされた」

 主催の男の言葉を信じるなら。
 放送の内容を信じるなら。
 そういうことになる。

 その現実を受け止めたナプタークの心は、酷く凪いでいた。
 波風一つ立たない水面のように動きも起伏も微弱で、しかしそれは心の平穏を意味するものでは無い。
 さざなみの一つ、あぶくの一つも起こらないのは、水が濁り切っていているからだ。
 粘っこい感情が満たされた心の器は、外部から刺激を受けたとて目に見える反応を示さない。

 心の器に満ちる、粘性の強い感情の正体。
 それは死者への悼みや、惜しみ、ましてや悲しみなどではなく。
 邪神の胸中、気落ちの原因はその生涯で一度も味わったことの無い感情。


 その感情の名は、失望。
 『狂乱』のナプタークは、『破滅』のマグ=メヌエクに失望を抱いていた。


 その源泉は諦念、諦観からのもの。
 己が執着の落ち着ける場所として、最も心の冷たい領域。
 あるいは決して手放すまいと誓った執念を手放す、かつての自分との矛盾の許容。

 宿敵の打倒の機会を永遠に失ったことを悟ったことで。
 己が存在を相手より上位に持ちあげる行為を"勝利"とするならば、『狂乱』は『破滅』を上回ることが出来ないのだと、受け止めてしまったことで。

 ここに格付けが為された。
 『狂乱』のナプタークは、『破滅』のマグ=メヌエクに勝てない存在なのであると。


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