したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

エロトラップダンジョンロワ part2

1 ◆2FVYsixnq6:2021/11/28(日) 19:27:00 ID:0ulD5EUI0
世間の人は虎を、性欲の虎を放し飼いにして、どうかすると、その背に乗って逃亡の谷に落ちる。
――森鴎外

156風を受けてはただ進む ◆QUsdteUiKY:2021/12/27(月) 16:45:42 ID:KI9fKqjE0
 雄二とチノは突如としてモニターに映る二人の主催者による放送を見ていた。
 本来ならばチノのような少女にこんなものを聞かせるべきではないだろうが……状況が状況だ。たとえそれがどれほど重い現実だとしても、受け止めなければならない。

 きっと麻子でもこの放送を聞かせる。現実逃避など許さない。
 彼女はそうやってガキを一人前の男に育て上げたのだから。

 二人のシュールな見た目に惑わされることなく、雄二は冷静に彼らを観察する。
 ちなみにチノは意味不明な二人の格好に困惑していた。
 まあギャグ漫画から出てきたような珍妙な姿の男を見たらこうなるのは無理もない。

『今で殺し合いの参加者全員が確定したから、参加者名簿を見て確認してね?』
『あとこれはサービス、確定前に死んじゃった参加者、紹介しとくわぁ』

(確定前に死亡した参加者、か。まるでこの放送が始まるまでロクに参加者も決めずに集めたような言い方だな……)

 参加者の確定という単語に雄二は違和感を覚える。
 そういえばチノと出会う前……殺し合いが始まったばかりの時に名簿を軽く確認したが、何故かそこには何も書いていなかった。

 もしかしたらあの段階では正式な参加者すら決定していないのかもしれない。
 大量の人間を雑多に放り込み、更にそこから主催者が選定した者のみを参加者として指名した……そんな可能性すらもこのイカれた主催者達なら有り得る。
 ならば選ばれなかった者はどうなるのか。参加者として確定すらしなかった者はどうなるのか?

「こんなものを開催する時点で当然だが、趣味の悪い奴らだな」

 もしも雄二の考察が当たっているなら、この主催者はとんでもないゲス野郎だ。
 だがまあ別に彼らが特別だとは思わない。こういう輩はこれまで何度も見てきた。

 そもそも父親からして屑だし、過去に自分を拾ったことのあるオスロも大概だ。なんならオスロがこの殺し合いの主催者として協力している可能性も考えている。

(そういえばオスロは女装した俺を可愛がっていた時期もあったな……)

 殺しの才能を見抜き、育成するまでオスロは雄二を愛玩動物のように可愛がっていた。

(あの珍妙な格好はオスロの趣味なのかもしれない。……いや流石にそれはないか)

 ウィッグを被れば少女のようだった幼少期の雄二と違い、あのキチガイ達はどう見ても女装が似合っていない。
 いくらオスロがそういう趣味の持ち主でも相手くらい選ぶだろう、多分。
 ド直球に言うとモニターに映されたあの二人組は雄二が不快だと思う程度には気持ち悪い。

『音速の鬼』

 最初からいきなり意味不明な名前をぶち込まれた。
 音速の鬼なんて名前の人物、日本中を探してもきっと存在しないだろう。

 普通の一般人ならここで困惑するものだが、裏社会に通ずる雄二は違う。

(ふむ。本名以外の名前で参加している者もいるということか)

 雄二自体がI-9029という名で恐れられているからこそ、そんな結論に至る。
 音速の鬼も人間としての名前があっただろうから間違いではないのかもしれないが……。

『ティッピー』
『サザンカ』
『プロデューサー』
『桐間紗路』

「え……?」

 次々と呼ばれる死者の名にチノが呆気に取られた。

157風を受けてはただ進む ◆QUsdteUiKY:2021/12/27(月) 16:46:29 ID:KI9fKqjE0
 雄二としてはプロデューサーという謎の名前が引っ掛かるが、それ以上に重要なことがあることも理解している。

 ティッピーとシャロ。彼らはチノの口からペットと友人としてその名を聞いていた。
 つまりチノはこの短時間で二人も大切な者を失ったということになる。
 幸い雄二の知り合いは誰一人として死亡していないが、いきなりチノの大切な者が二人も殺られたのはスタートとして最悪だ。

 しかもチノの友人を守るといった矢先にこれだ。
 誰か犠牲者が出るということは予想していたが、まさかこの短時間で二人も死ぬというのは雄二としても想定外。だがこの現実に向き合う他、道はない。

「大丈夫か?チノ」
「大丈夫です。まだティッピーとシャロさんが本当に死んだと決まったわけじゃありませんから……」

 日常を謳歌していた少女は現実逃避を始めていた。
 普通の学園で普通の生活を送ろうとした元軍人の特殊工作員は、哀れな少女を見つめる。

 知り合いの死に向き合うがどれほど辛いことか……雄二には痛いほど理解出来る。

 少年時代。父親から解放されてようやく手に入れた普通の生活は一年ほどで終わり、母親を失った。
 姉を失った経験もある。結果的に彼女は生きていたのだが、ずっと死んだと思っていた。
 オスロが設立した施設で自分に優しくしてくれた少女を失った。

 家族として面倒を見ていた犬――ジョンを目の前で熊に殺された。
 自分の子に食わせるためにジョンを殺したその熊を雄二は殺す事が出来なかった。
 大切な者を守れなかった。

 ――そして育ての親も同然と言える師匠を……麻子まで失った。

 だから雄二はチノの苦しみがわからないわけじゃない。
 必死に現実逃避する姿を哀れむことはあれど、批判する気はない。
 時間をかけてゆっくり現実と向き合えばいい。何も急いで現実を直視する必要はない。

 ――――そう言ってやりたい気持ちは山々だが、今は状況が状況だ。
 こうしている間にも死者は増え続けているかもしれないし、否が応でも現実と向き合う必要がある。

 チノの現実逃避に合わせることは簡単だろう。
 主催者二人組の言っていることに証拠はなく、雄二が「たしかにあいつらの言っていることは嘘の可能性もあるな」とでも言えばチノは安心して現実逃避を続けられる。

 だがそんなことはただの一時しのぎにしかならない。
 これから先、ティッピーやシャロの亡骸を目撃する可能性もあるのだ。
 それを見ても現実逃避するほど壊れてしまう可能性もあるが――風見雄二は香風智乃を守ると決めている。だから彼女を壊させやしない。

「心して聞いてくれ、チノ。――ティッピーとシャロはほぼ間違いなく命を落とした」
「でも……証拠がないです……」

 彼らが死んだ証拠。
 そんなものはたしかに持っていないし、示されてもいない。
 だがチノは別に証拠を求めているわけでもない。むしろ証拠なんてない方が良いだろう。
 何故なら証拠として死体が見つかってしまえば、現実逃避が難しくなるのだから。

「たしかに証拠はない。だが根拠はある。
 こんなにもバレやすい嘘をついても主催者としての威厳を失うだけで、殺し合いを円滑に進められなくなる可能性が出てくる。
 あいつらとしてはそんな展開を望んでいないだろう」
「…………」

 雄二の言葉にチノの表情が少し暗くなる。
 彼の言っていることは正しい。主催者が簡単にバレるような嘘をつかないなんて、チノにだってわかる。
 現実逃避をしているような口振りなのに、壊れ切れていないから理解出来る。
 だからといって納得は出来ない。ティッピーとシャロが死亡したと認めたら、大切な日常が完全に壊されてしまうから……。

「……それでも証拠がなければティッピーとシャロさんが殺されたとは限りません」
「その通りだ。だから『ほぼ間違いなく』という言葉を使った」

 ほぼ間違いなくという言葉には、ティッピーとシャロが生き残っている可能性も存在する。
 だからチノとしては二人が生きていることを信じたいが――

「……だが生きている可能性は限りなく低いだろうな。
 チノ。テュポーンに襲われたお前なら、この殺し合いの過酷さを理解しているはずだ」

 風見雄二は香風智乃に現実を突き付ける。
 それはチノのためであり、散っていったシャロとティッピーのためでもある。

「そんなこと……」

 チノが絞り出すように声を出した。
 それを言ったら大切な日常が壊れてしまうのに――とめどなく溢れ出す感情を少女は抑えきれない。

「そんなこと、わかってます……!」

 チノにとって大切な日常は唐突に終わりを迎えた。
 もうシャロやティッピーと会うことは二度と出来ない。
 そんなことはわかっている。テュポーンという常軌を逸した存在に襲われたチノが理解出来ないはずもない。

 アレは自分達とは明らかに異質の生命体だ。実際チノも雄二が助けに来なければかなり危うかっただろう。

158風を受けてはただ進む ◆QUsdteUiKY:2021/12/27(月) 16:47:29 ID:KI9fKqjE0
 リゼならなんとかなる――そんな幻想も夢見れない程にあの鬼は凄まじかった。

 そしてあの怪物があっさり引き下がるほど風見雄二という青年もまた、常軌を逸している。

 殺し合いが開始して早々に遭遇したのがそんな二人ということもあり、チノはこの殺し合いが超人ばかり集められたものだと思っている。
 どうして自分やシャロやティッピーが巻き込まれたのかまでは不明だが、自分達が狩られる側ということはテュポーンに叩き込まれた。

 チノは運良く雄二に助けられた。
 だがシャロやティッピーは運悪く、誰にも助けられなかった。

 現実はあまりにも厳しくて、理解出来てもそれに向き合うことは難しい。
 悲しみという感情が心を覆い尽くして、なかなか前を向いて歩けない。
 だからなにがなんだかわからなくなって――無力な少女は超人に八つ当たりするかのように、声を荒げてしまった。
 咄嗟にチノは「すいません……」と謝罪するが、雄二は「気にするな」と返す。

「大切なものを奪われて感情を荒らげるのは悪いことじゃない。
 俺にだってそういう経験がある。だからお前の気持ちもわからんでもない」

 そうだ。
 チノの感情は何も間違っていない。
 むしろ知り合いを殺されても平気な顔をするような少女なら、その方が色々と心配になる。

 だから雄二はチノを責めることなく、彼女が落ち着くのを待つ。
 香風智乃は逃げ出さない。もしもこの場から逃げ出したらすぐに追い掛けてとっちめるだけだ。
 風見雄二は香風智乃を守ると言った。その言葉に偽りはない。

「お前は何も謝る必要ない。その涙はそれだけシャロやティッピーのことが大切だったという証拠だ」

 雄二に言われてようやくチノは自分が泣いていることに気付いた。
 そしてチノは暫く涙を流し続けていた。雄二は彼女が泣き止むまで傍らで見守る。

 ○

 それから暫くしてチノは雄二に問い掛けた。

「……雄二さんは、何を失ったことがあるんですか?」
「色々だな。具体的には俺に優しくしてくれた少女、飼い犬、友人、師匠……」
「それくらいで大丈夫です……。変なことを聞いてしまってすいません。」

 予想以上に多くのものを失っていた雄二の言葉をチノが遮った。
 なんだか悪いことを聞いたと思ったようで、申し訳なさそうにしている。

「師匠は死にかけの俺に『生きろ』と言った。
 アレはただの幻かもしれないが……それでも俺はその言葉を信じている」

 オスロを殺害して全てが終わった時、雄二にはもう余力がほとんど残されていなかった。
 それでも麻子から『生きろ』と背中を押されたことで奇跡的に生還を果たしたのだ。

「そしてシャロやティッピーが本当にチノのことを大切に思っているなら、彼女達もお前に同じことを言うはずだ」

 傷心中のチノの心に雄二の言葉がスっと入ってきた。

159風を受けてはただ進む ◆QUsdteUiKY:2021/12/27(月) 16:48:02 ID:KI9fKqjE0
 シャロやティッピーを信じているからこそ、二人が自分に『生きてほしい』と思っていると考えることが出来る。
 特にティッピーはチノの祖父だ。孫の生存を願わないはずがない。

「そう、ですね……」

 だからチノは前を向かなければならない。
 ティッピーやシャロの死を認めた上で、それでも生きなければならない。

「チノが泣いている間に名簿を確認したが、ココアとリゼが巻き込まれているらしい。
 俺の知り合いの名前も記されていた」

 ココアやリゼとまたラビットハウスで働くために。
 もうシャロやティッピーは帰ってこないけれど……それでもまだ取り残された友人達はいる。

「ココアさんとリゼさんが……!」

 ココアとリゼの二人まで失いたくない。
 これ以上なにも失いたくない。
 そのために否が応でも現実を見なければならない。

「二人が危害を加えられる前に探し出す。それでいいか、チノ」
「はい。特にココアさんは一人でも大丈夫か不安です」

 チノの調子が少しづつ、戻っていく。
 ひとまずチノが落ち着き、現実と向き合ったようで雄二も安心した。
 シャロやティッピーも大切な存在だとは思うが、きっとココアが何よりも大事なのだろう。
 情報交換や自己紹介した時もそうだが、何かとココアの名前を出すところからそんな気がする。

「ココアやリゼと一緒に生きて帰るぞ、チノ」

 自分達だけではなく、ココアやリゼと共に。
 そんな夢物語のようなことを雄二は恥ずかしげもなく、本気で達成しようとしている。
 だからチノにとって雄二の言葉は夢だと思えなくて。主催者に臆することもなくハッキリとした口調で語るこの人なら――――風見雄二ならば本当に自分やココアやリゼをこの殺し合いから救ってくれると信じられる。

「そうですね。それと雄二さんの知り合いの人も探しましょう」
「うむ。多少は気が晴れたようだな」

 チノの表情が先程よりも明るくなっている。自分の友人だけでなく、雄二の知り合いを探すということまで考えが行き届くようになったことは大きな進歩と言えるだろう。

 だがまだまだ問題は山積みだ。
 特に名簿に記載された香風智乃とチノ――この謎については早急に解明する必要があるだろう。
 まだ名簿に目を通していないチノは気付いていないようだが……そもそもこのチノは『香風智乃』か『チノ』どっちの名前で記載されているかも不明な状況だ。
 テュポーンのようにチノを模したクローンが存在する可能性もあると雄二は考えるが、それにしては何を目的として生み出されたのか見当もつかない。

 そしてヒース・オスロやテュポーンといった雄二が一度はこの手で殺害した者達の復活。死人が生き返るという状況は流石の雄二も初体験だ。
 死んだと思っていた姉が実は生きていたというパターンならあるが、オスロとテュポーンは雄二が直々に仕留めた。生きているはずがない存在だ。

 オスロとテュポーンがなんらかの手段で蘇生した――そんな現実では有り得ないような可能性が浮上してくる。
 普段なら思いも至らない可能性だが、この場では自分の知る現実を基準に物事を考えるだけ無駄だろう。

 とりあえず諸々の考察や首輪の解除のためにも姉の一姫と合流したい。こういうことは自分よりも姉の方が得意だと雄二は自覚している。

「姉か……」

 雄二には一姫という姉が居て、同行者のチノにはココアという姉のような存在がいる。

160風を受けてはただ進む ◆QUsdteUiKY:2021/12/27(月) 16:49:24 ID:KI9fKqjE0
 チノの話を聞く限り一姫のような性格ではないようだが、ブラコンとシスコンという意味では妙な類似点があるらしい。
 そんな姉に助けられたという意味では雄二とチノも共通していた。

 そしてこの場でも雄二は一姫の頭脳を求め、チノはココアを探す。
 妹と弟が自分達の姉の行方を探している――そんなふうに言い表せるような状況でもある。

「雄二さん……?」

 チノがこちらの顔色を伺うように覗き込んできたことに気付き、雄二は改めて気を引き締める。

「とりあえずこれからの方針を伝えようと思う。
 まずはチノの友人であるココアとリゼ。そして俺の知り合いの一姫と蒔菜を探す」
「一姫さんと蒔菜さんですね。わかりました」

「一姫は俺の姉で蒔菜は俺の娘のようなものだ」
「その年齢で子供ですか……!?」
「まあそうなるのが普通の反応か。
 ……要らん誤解を招かないように理由だけ説明しよう」

 そして雄二は蒔菜とこういう関係になった理由や経緯を説明する。
 血の繋がりこそ存在しないが雄二は蒔菜のパパで、ココアはチノの――――

「わかりました。そういう関係は私にも少し心当たりがあります」

 雄二はチノのその言葉を深くは詮索しない。
 何故ならそんなことをする必要もなくチノの語る『そういう関係』がなんなのか察せられたから。

「ふむ。ならばそれを崩さないためにも、ココアを探さなきゃな」

 香風智乃、入巣蒔菜、風見一姫、保登心愛、天々座理世……雄二がこの場で救わなければならない少女は5人も居る。
 そう、あの時と同じ5人だ――――

『一人十衛!
 貴様は国民10人の命を救うことと引き換えに、始めて死を許される。
 5人にまけてやる!国民5人を救うまで、野垂れ死にすることは許さん』

 5人という数に麻子の言葉が脳裏に蘇る。

(また5人か。因果なものだな……)

 そして『香風智乃』以外にも存在する『チノ』――――果たして彼女は何者なのか?

 色々と考えたいこともあるが……とりあえずチノにはかつて自分が教わったこの言葉も伝えておくべきだろう。

「いいか、チノ。ここは戦場だ。悩んだり考えたりして、行動を起こさない奴は死ぬ。
 だからこれから先、もしも自分達だけで対処出来ないような敵が現れたら一目散に逃げることにする」

「わかりました」

 チノとしても雄二の意見に反対する気はなく、あっさりと承諾する。
 そして彼らは自分達の大切な者を探すべく、進み始めた。

【B-7/1日目/深夜】
【風見雄二@グリザイアの果実シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:チノ達と共にバトルロワイアルからの脱出
1:チノとその友人達を守る
2:次こそはバカ弟(テュポーン)と決着をつける
3:入巣蒔菜、風見一姫、保登心愛、天々座理世を探す
4:首輪の解析は一姫に任せる
5:もしも自分達だけで対処出来ないような敵が現れたら一目散に逃げる
[備考]
アニメ版グリザイアの楽園終了後からの参戦。

【香風智乃@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:右頬や体に殴られた跡
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:雄二さんやみんなと一緒に生きて帰る
1:雄二さんを信じます
2:ココアさん、リゼさん……無事でいてください……
3:入巣蒔菜、風見一姫、保登心愛、天々座理世を探す
4:もしも自分達だけで対処出来ないような敵が現れたら一目散に逃げる
[備考]

161 ◆QUsdteUiKY:2021/12/27(月) 16:49:44 ID:KI9fKqjE0
投下終了です

162 ◆2zEnKfaCDc:2021/12/31(金) 23:56:03 ID:5xtaEcEA0
ゲリラ投下します。

163外の世界とはディスコミュニケーション ◆2zEnKfaCDc:2021/12/31(金) 23:57:05 ID:5xtaEcEA0
「こちらは『オンリーユーシアター』。貴方にとって特別な『誰か』とふたりっきりで『映画鑑賞』をできる場所でございますニャ。」

「な、なんですか……? この猫みたいな喋る動物は……。」

 放送を迎えて間もなくした頃だった。あてもなく歩いている私たちの前に見えたのは、どこか歪な奇妙な建物と、案内人のようにその前に立つ黒猫のような生き物。

「あなたも、何でそんなに冷静でいられるんですか。」

 辺獄で見る景色のような、浮世離れした光景に見覚えがある私でも少なからず困惑している。だというのに、隣を歩く少年、ラッセル・シーガーは全く動じていないように見える。

「だって……一応、知り合いだし。」

「知り合いって……この生き物と、ですか?」

「まあ……うん。ニャン族っていうよく分からない生き物だよ。」

 詳しく追求する気はないが、ラッセルも普通に生きてきた人とは違うのだろうか。死後の世界であると同時に人の精神を反映した世界でもある辺獄は、人の想像力が無限である以上、どんな形にも変容し得る。そんな何でもありな舞台が私たちの生きる世界には内包されているのだ。ラッセルが何を知っていようと、何ら不思議ではない。

「ところで……入らない?」

「えっ!?」

「オンリーユーシアター。変なとこだけど……たぶん気休めにはなる……と思う。」

「気休めって……ええ……?」

 ニャン族とやらは映画鑑賞、とか言っていたか。ラッセルはやけに乗り気だが、殺し合いを命じられたというのに、あまりにも悠長ではないだろうか。

 ……いや、おかしいのは私、なのだろうか。辺獄という世界をなまじ知っているばかりに、おそらくはラッセルや他の人たち以上に、この殺し合いを真剣に捉えているのだろう。アナムネシスによって初めて辺獄に引きずり込まれた時の私だって、わけもわからぬままに彷徨い続けるばかりだった。

164外の世界とはディスコミュニケーション ◆2zEnKfaCDc:2021/12/31(金) 23:58:19 ID:5xtaEcEA0
「……ちょっと待ってください。ふたりっきりで?」

「その通りですニャ。それ以上の人数は入れない仕組みになってるし、何かのフシギなパワーで外からの干渉も受け付けないオトク仕様ニャ。」

「つまり、外部からの攻撃からは安全ってことですか?」

「そうですニャ。何なら映画中におっぱじめても構わないニャよ。」

「えっ……! い、いえ。そういうのはしませんけど……。」

「……ま、いいニャ。どうせなら入っていくといいニャよ。」

「ええっと……。」

 この世界でも私の目標はひとつだ。みらいを取り戻すこと。メフィスとフェレスの二人と契約したあの時から、私の根幹は何も変わらない。

 ……だけど。辺獄の時はわけも分からぬままに行動し、それによってみらいとはぐれることになったのは紛れもない事実。今まで保留していたが、どこかで腰を据えて決めなくてはならないのだ。私はこの殺し合いの地で、どう動くべきであるのか。

「……分かりました。」

 フシギなパワーとやらがどこまで信ぴょう性のあるものであるかはともかく、それを決めるに当たって外から見つかりにくい場に身を置きたいのは間違いない。身の安全もままならない状態では考え事にふけるのは危険だ。それにラッセルも入りたがっていることだし、同行関係を築くのにもちょうど良い。

「行きましょうか。映画……でしたっけ?」

「ええ、今から始まるのは『テメェの名は』というロマンス映画ですニャ。」

「……まあ、何でもいいですけど。では、ラッセルさん。」

「うん……。」

 二人が入場の合意を取った瞬間に、オンリーユーシアターの重い扉が開かれる。
「さ、入るニャよ。」

 慣れた足取りでラッセルはつかつかと足を運ぶ。零もまたその後に続き、二人が入場したと同時にその扉は再び閉ざされた。

「……鍵がかかってるんでしょうか。」

 試しに戻ろうとしてみたが、扉が開く気配はない。今気が変わったとしても、大人しく映画を観るしか道は残されていないようだ。内部からの脱出のしにくさは外部からの侵入のしにくさでもあるという意味では、むしろ安心というべきか。

 部屋の広さは、二人用の部屋と言うのに相応しい程度の間取りだ。中にあるのは、前方に大きく主張するスクリーンと、それを眺めるための、横幅1メートル半程度の長椅子がひとつだけ。それを見たラッセルは「今日はニャン族はいないのか」みたいなことを呟いている。

165外の世界とはディスコミュニケーション ◆2zEnKfaCDc:2021/12/31(金) 23:58:50 ID:5xtaEcEA0
――パッ。

「ひゃっ!?」

 間もなくすると、照明が落ちて暗転する。放送後に配られた名簿に目を通していたため驚きの声を上げてしまったことに紅潮しながら、大人しく部屋の中央の長椅子についた。

 そしてスクリーンに映画が映し出され、上映が開始される。

「これってもしかして……」
「私たち……」
「「殺し合ってる〜!?」」

 殺し合っている男女が次第に恋に落ちていくアニメ映画のようだ。だけど、今考えるべきは映画のことではない。みらいを助けるために、この殺し合いに乗るべきか乗らないべきか、どうするのが正解なのか。

 放送を迎えたことによってあえて状況が変わったとするならば、ここに招かれたのが私だけではないということが判明したことだ。名簿には共に辺獄の代行者として戦ってきた幽鬼の777の名前と、かつて親友だった少女、水無乃有理の名前があった。

(分かりません……777はともかく、どうして有理が……?)

 幽鬼となった有理のことは、私が間違いなくこの手で殺した。あの感触と、涙に流しても消えてくれない激情が、今でもずっと私の中に残っている。魂を破壊したのだからヨミガエリすらもできるはずがなく、この場に呼ばれているのはおかしい。

 だとしたら、同姓同名でもない限りこの名簿がデタラメと考えるのが真っ当な筋だ。だがしかしそうなると、主催者はこのデタラメによって私の心を惑わすことができると大なり小なり認識している人物であるということになる。

「もしかして……アナムネシス?」

 小さく声を上げた私へのラッセルの視線を感じた。『幽鬼の姫』である彼女が起こしたバス事故によって死んだ有理。辺獄でも有理への干渉があったようで、アナムネシスと有理の間にも何かしらの繋がりがあるのは分かっている。

(それなら……小衣さんや千さんが連れてこられていないのも頷ける……。)

 アナムネシスは、何故か私に執着していた。みらいをヨミガエリさせたとしても、アナムネシスが辺獄に存在し、いつでも私たちを辺獄に引きずり込める以上は元の日常に帰ることはできない。だから、私の目標は厳密にはみらいを助けるのみでは足りず、アナムネシスの撃破も含まれている。小衣さんと利害が一致しているのもその点だ。

(もし、主催者側にアナムネシスがいたとしたら……)

 もしもの話でしかない。しかし、突如としてこの会場に送られていたそのやり口が、辺獄に引きずり込んだやり方と酷似しているのは確かだ。

 この想像が真実であった場合、仮に私が優勝したとしてみらいのヨミガエリという願いを彼女が素直に叶えるだろうか?

 いや、仮にアナムネシスでなかったとしても、だ。いつでも私や、そしておそらくはみらいをも、このような殺し合いの場に引きずり込める人物が現実としてこの世界に存在している事実に変わりはない。それならば、元の日常に帰るためにはアナムネシスを放置できないのと同様に、この主催者も放置しておくわけにはいかないのではないか?

166外の世界とはディスコミュニケーション ◆2zEnKfaCDc:2021/12/31(金) 23:59:31 ID:5xtaEcEA0
(やっぱり……現状を見るに殺し合いに乗るのは得策ではない気が……。)

 楽観的に見積って、どの参加者も自分と同じ程度の戦力であるとしよう。その上で、人数的に勝ち残れる確率は2%ほどしかない。

 それならば、ラッセルのように協力できる人と協力して主催者に反逆する、もしくはメフィスとフェレスといった他の誰かの助けを待つ方が、よほど生きて帰り、みらいのヨミガエリに着手できる確率は高いと思える。先ほど引っかかったエロトラップのような独力では脱出の難しいものを前にした時を考えても、誰か他の人物は隣にいてほしいという気持ちもある。

(決まり……ですね。)

 企画の動き方次第で転がる可能性もあるが、殺し合いには乗らない、という結論に終わった。

 スクリーンに目を移すとちょうど映画の方も終わっていたらしく、エンドロールが流れていた。

「どう? いい気晴らしにはなったでしょ?」

「は、はい……そう、思います……。」

 何も観ていなかったのを気まずそうに返す。場合によってはラッセルを殺すやもしれぬ算段を立てていたなど、結論がその逆であったとしても言いにくいものだ。

「……でも、そうですね。少し吹っ切れたと言いますか……。確かに、気晴らしにはなったんじゃないでしょうか。」
――パッ。

 スクリーンが切れ、照明が点く。明るくなってみれば思っていたよりも近くに、こちらを見つめるラッセルの顔があった。

「……っ!ㅤと、とにかく!ㅤ終わったのなら出ませんか!?」

 慌てて長椅子から飛び出して、早足でラッセルから離れていく。そして、出入口の扉に手をかけて――そして同時に気付く。

167外の世界とはディスコミュニケーション ◆2zEnKfaCDc:2021/12/31(金) 23:59:45 ID:5xtaEcEA0
「あれ? 開かない……。」

 映画が終わったら開くはずの扉が、開かないのだ。この施設を知っているはずのラッセルもその様子を不思議そうに見ている。この事態は想定外、ということだろうか。

「って……ちょっと……。」

 しかし私の視線は、ラッセルではなくその背後。いつの間にか新たな文字が映し出されているスクリーンに吸い込まれていた。

 認識が追いつかない。いや、書いてあることは単純明快であり十全に理解できる、のだが……。

『セックスしないと出られない部屋
〜 2時間以内に出ないと首輪がバクハツニャ 〜』

 脳がそれを理解したくないと、拒んでいるのだ。

「えぇ……?」

【B-3(オンリーユーシアター)/深夜/1日目】

【ラッセル・シーガー@END ROLL】
[状態]:健康
[装備]:ほんもののナイフ@UNDERTALE
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0〜2
[思考]
基本:殺し合いには乗らず、HAPPY DREAMを完遂する。
1:レイは一体、何者なんだろう。
[備考]
※罪悪値が20を超えて、6日目開始地点からの参戦です。
※殺し合いの世界を、HAPPY DREAMの世界だと勘違いしています。

【幡田零@CRYSTAR -クライスタ-】
[状態]:(身体は)健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0〜3(未確認)
[思考]
基本:生き残り、幡田みらいのヨミガエリを果たす
1:殺し合いに乗らず、主催者を倒す。
2:何にせよ、エロトラップとやらはもうこりごりです……。
[備考]
※第8章「失われた未来を手に」からの参戦です。
※貞操は無事です、今はまだ。

168 ◆2zEnKfaCDc:2022/01/01(土) 00:00:00 ID:c4DYk5tU0
投下完了しました。
来年もよろしくお願いします。

169 ◆mAd.sCEKiM:2022/01/02(日) 10:57:31 ID:IEy0bso20
あけましておめでとうございます。

予約分を投下します。
ただし、場面によってノリが180度違う関係上、前後編に分けています。

まずは前編を投下します。

170 ◆mAd.sCEKiM:2022/01/02(日) 10:57:31 ID:IEy0bso20
あけましておめでとうございます。

予約分を投下します。
ただし、場面によってノリが180度違う関係上、前後編に分けています。

まずは前編を投下します。

171大変態変、だゾ ◆mAd.sCEKiM:2022/01/02(日) 10:59:06 ID:IEy0bso20

「「はぁ〜い」」
「みんな楽しんでる?」

(え、えっ、何あれ……!?あんなところにお城あったの!?)

 リベッチオもまた、他の参加者と同じくモニターに映るオカマ魔女の放送を聞いていた。

(こんなことしてるの、あの細長いおじさんだけじゃないんだね――そんな、もう死んじゃった人がいるの……!?)

 直後に告げられたのは、死亡者の名前。8人もの命が、この短い時間でなくなってしまっていたのだ。
 リベッチオの見知った名前がなかったのはいいが、それでも呼ばれた者達にも親しい者がいたはずだ。なんだか、心がモヤモヤしてやるせなくなる。

(せめて……残っている人達と合流しなきゃ……!)

 気持ちを新たにして、リベッチオは走っている。
 まずは、自分と同じ境遇の人達と会わなければ。
 ただ、それと同じくらい気がかりなのはこのバトルロワイアルの参加者だ。先ほどの放送で呼ばれていないだけで、リベッチオの知る者も巻き込まれているかもしれない。
 ひとまず立ち止まり、リベッチオはデイバックから取り出した名簿を広げる――そうしたいところだった、が。

「ぶりぶり〜!ぶりぶり〜!ぶりぶり〜!ぶりぶり〜!んもおおおおおおっ!いつまでやる気なのぉっ!ぶりぶり〜!」

 リベッチオは未だに身体の制御権を奪われ、お尻を見せつけたままケツだけ星人を踊っていた。
 両手両足がすべてケツだけ星人を踊るために絶えず動いているため、一時停止どころか満足にデイバックを広げることすらできない。
 結局、リベッチオはまともに参加者の確認もできないまま、ケツだけ星人の気の赴くままに走り続けていた。

「ぶりぶり〜!うう……ぶりぶり〜!」

 ああ、ケツだけ星人リベッチオよ、お前はどこへ行く。


§

172大変態変、だゾ ◆mAd.sCEKiM:2022/01/02(日) 10:59:36 ID:IEy0bso20


「ケツだけ星人ぶりぶり〜!ぶりぶり〜!」
「……」
「ぶりぶり〜!ぶりぶり〜!」
「……」

 ふたば幼稚園の、ひまわり組の教室。
 ぺたんと座り休憩を取っているなのはの周囲を、しんのすけはケツだけ星人を披露しながら回っていた。
 その鮮やかなお尻の動きや幼稚園児とは思えぬ軽やかなステップには目を見張るものがある。

「しんちゃん……それ、何なの?」
「ケツだけ星人!オラの必殺技の一つ!なかなか鮮やかでしたでしょ〜」
「にゃはは……うん、いいんじゃないかな……」
「いや〜それほどでも〜」

 ドヤ顔で振り返ってくるしんのすけに、なのはは苦笑いしながら返す。

(まあ、しんちゃんもまだ幼稚園児だし、男の子ならこのくらいやんちゃなところもあるよね)

 出会ってから眩いほどの強さを見せてくれたが、それでもしんのすけは5歳であり幼稚園児なのだ。むしろこれくらいはしゃいでいる方が自然なのだ、となのはは思い直すことにした。
 ……けれども、親友を失った悲しみがまだ癒えない中、気持ちが救われたのも確かだった。
 元々平凡な小学生3年生の女の子だったなのはにケツだけ星人は少々面食らったが、先の見えないこの状況でもマイペースな明るさを見せてくれるしんのすけを見ていると、元気を分けてもらえた気がした。

「しんちゃん、もう寝るのはいいの?」
「オラはもう大丈夫〜。お昼寝して元気いっぱいだゾ!」
「昼じゃなくて深夜だよ!私が見張っておくから、もうちょっと寝てていいんだよ?」
「お構いなく〜。なのはちゃん一人で寂しそうだから、話し相手になってあげるゾ」
「ありがとう、しんちゃん」

 そうなのはが微笑みながら礼を言った時、彼女の脳裏にあることが浮かんできた。

「……あ――――っ!?」
「おっ!?どうしたのなのはちゃん!」

 手をぱちんと叩いて、重要なことを思い出したと言わんばかりに叫ぶなのは。
 しんのすけはすぐさま丸出しの尻をしまって、なのはに駆け寄る。

「しんちゃん、私達まだ名簿みてないよ!」
「おおっ、そうでしたな!すっかり忘れてたゾ!」

 フェイトの死を知ってしまったことで失念していたが、自分達はまだ確定したという殺し合いの参加者名簿を確認していないのだ。
 フェイト以外にもなのはに近しい者が巻き込まれていないとも限らないし、しんのすけにとって身近な者がこの会場にいることも十分あり得る。
 なのはとしんのすけは、大急ぎでデイバックから名簿を取り出し、広げた。


§

173大変態変、だゾ ◆mAd.sCEKiM:2022/01/02(日) 11:00:10 ID:IEy0bso20


「そっか……私以外に参加させられてたの、フェイトちゃんだけなんだ」

 なのはは名簿を見つめながら、そう呟いた。名簿を読む限り、なのはの知る名はフェイト以外にない。彼女の家族と友人、仲間達は無事。かといって、喜ぶことはできない。なのはの大切な親友は、もうこの世にいないのだから。
 問題はしんのすけの方だ。

「とーちゃん!」

 隣で声を上げるしんのすけに、なのははハッとして彼の指す名前を見る。

――『野原ひろし』。

 苗字としんのすけの呼び名からして、恐らくは。

「もしかして、しんちゃんのお父さん……?」

 なのはの問いかけに、しんのすけは神妙な面持ちでこくりと頷く。

「そんな……」

 事態は、思ったよりも深刻だった。しんのすけの父親までもが、この催しに呼ばれている。大切な人が死ぬかもしれないと思うと、しんのすけの動揺は察するに余りある。親友を喪い、父が事故に遭ったことのあるなのはは、自分としんのすけを重ね合わせずにはいられなかった。

「オラ、とーちゃんが心配だゾ……」
「しんちゃん……」

 しんのすけを案じるなのは。なのははどうにか励まそうと声をかけようとした、が。

「んも〜、とーちゃんってばすぐおねいさんにホイホイついていくから〜。知らない人についていっちゃいけないって言われてるのに、おねいさんに手を出してないかオラ心配だゾ〜」
「……そっちの心配なんだ」
「きっと今頃おねいさん見つけては鼻のしり伸ばしてるゾ」
「にゃはは……」

 この調子なら大丈夫そうかな、となのはは思った。
 なお、当のひろしはすごくきれいなおねいさん(しかもおムネがでかい)と絶賛行動中であることを、しんのすけはまだ知らない。

「お父さん以外にしんちゃんの知り合いはいるの?」
「この二人だゾ。リングおねいさんと、ハイグレ……――なんだっけ」
「――まおう、だね」

 漢字が読めず、口が止まったしんのすけに代わってなのはが読んであげる。
 しんのすけは、『リング・スノーストーム』と『ハイグレ魔王』の2つの名前を指さしていた。

「リングおねいさんは30世紀から来たタイムパトロールのおねいさんで、あのヒエールのおじさんと戦う時にお助けしてもらったゾ。さっきのおまたのおじさんの時が2回目だから……はじめて戦国時代にタイムスリップした時だゾ」
「え、しんちゃん2回も戦国時代に行ってるの!?」
「うん、1回目はタイムマシンだったけど、2回目は夢の中のお姫様のことを考えるといつの間にかオラだけ戦国時代にいたんだゾ。1回目の方もヒエールのおじさんだった雲黒斎のことで大変だったゾ」
「うんこ、くさい……」

 あまり言葉にしたくない名前だ。

174大変態変、だゾ ◆mAd.sCEKiM:2022/01/02(日) 11:00:54 ID:IEy0bso20

「それで戻ってきたらヒエールのおじさんが力士改変してたから、野原家とリングおねいさんで巨大ロボットになってやっつけたの」
「それを言うなら多分歴史改変だよね……?」
「そーともいう〜。リングおねいさん、すっごくきれいでしたな〜」

 にへらと笑いながらリングにまた会えることを喜ぶしんのすけ。
 なのはとしても非常に興味深い話だったが、今は情報交換が先ということでそれ以上踏み込まなかった。2度もタイムスリップした人間、遥か未来から時間遡行してきたタイムパトロールに、巨大ロボ。ある程度魔法を嗜んだなのはからしても滅茶苦茶すぎる。

「このハイグレ魔王って人は?『魔王』ってあるくらいだから危なそうだけど」
「ハイグレ魔王は悪いヤツだゾ!アクション仮面がいない間にみんなをハイグレ人間にしていったんだ!」
「ハイ……グレ人間?一体何をどうするんだろう……?」

 これについても聞いたことのない単語だ。とにかくなのははハイグレ魔王には要注意だと認識し、しんのすけから詳しく教えてもらうことにした。
 しんのすけが言うには――話からなのはが理解できた範疇ではあるが――ハイグレ魔王は正義のヒーロー・アクション仮面の留守中にハイグレ星人を率いて地球を侵略しに来ていたらしい。その過程でハイグレ銃によって、人々を股間部を強調したハイレグ水着の姿に変えて洗脳して行ったが、最終的にはアクション仮面としんのすけによって打ち倒されたとのことだ。ちなみに、しんのすけは『おねいさんかと思ったらオカマだった』ことに何よりも憤っているようだった。

「パンストを被った人の持ってる銃の光線に撃たれたら、みんなハイグレ水着にされてハイグレ♡ハイグレ♡と叫ぶようになっちゃうんだゾ!」
「えっ、えぇ……!?」

 しんのすけはかつてハイグレにされた人達の踊りを真似て、「ハイグレ」の部分をやたらセクシーに発音してなのはの前で実演してみせる。

「本当にそんなことさせられるの……!?」
「うん、しかも身も心もハイグレ魔王の物になっちゃって、スパイ活動までこなしちゃうんだゾ!もしなのはちゃんが住んでるとこに侵略してきたら……!」
「やめてー!変なこと考えさせないでー!」
「当たったら終わりだからなのはちゃんも気を付けて!」
「う、うん!気を付けるね!」

 なのはは思わずハイグレ水着にされてハイグレハイグレと言う自分や知人の姿を思い浮かべてしまい、赤面しながらもしんのすけに強く肯定する。
 正直なところ、そんなふざけたことをする輩がいるとは思いたくなかったが、やはり疑う気にはなれなかった。聞いただけでもしんのすけは相当な修羅場を潜り抜けているようで、畏怖の感情さえ抱いた。
 また、考えてみれば確かに恐ろしい。聞くところによれば、1発でも被弾すれば洗脳されてしまうらしい。それまで背負っていた想いも何もかも忘れ、恥ずかしい水着を着たままハイグレ魔王に忠誠を誓わされるなど、断じて受け入れられない。

175大変態変、だゾ ◆mAd.sCEKiM:2022/01/02(日) 11:01:54 ID:IEy0bso20

――ひとまず、なのはとしんのすけは殺し合いに巻き込まれた互いの知人について情報を共有した……しんのすけからの情報は密度がすごかったが。次は、これからどうするかだ。

「私はしばらく休んだ後に幼稚園を出ようと思うけど、しんちゃんはどう思う?」
「そうですな、リングおねいさんととーちゃんを探さないといけないし」

 安全地帯であるふたば幼稚園に留まっているのも悪くないが、自分達の身の安全だけを確保しても状況は悪くなるばかりだ。
 まずは、しんのすけの父親である野原ひろしに、ヒエールと因縁のあるリング・スノーストームとの合流だろう。

「うん、まずはその二人に会わないとね。リングさんなら何か知ってるかもしれないし、しんちゃんのお父さんも――『まだ間に合う』から」
「そうだゾ!とーちゃんのくっさ〜い足のニオイが誰かに盗まれる前に見つけ出さないと!」
「そ、そういう意味で言ったわけじゃ――」

 マイペースを貫くしんのすけに思わず突っ込みそうになるが、なのはは出かかった言葉を呑み込む。
 そう、『間に合わなかった』なのはとは違って、しんのすけの父はまだ生きているのだ。

(頑張らなきゃ……これ以上、同じ悲しみを生み出さないために……!)

 なのはは、心の中でそう固く誓うのであった。




――ぶ……ぶ……。




「っ!?」

 すると、突如としてなのはの耳にどこからともなく微かな声が届いた。

「しんちゃん、何か言った?」
「……お?オラ何も言ってないゾ……」
「……」

 この声はしんのすけではない――となると、なのはでもしんのすけでもない誰かということになる。

――け……り……。

 耳を澄ませば、この声は幼稚園の外からしていた。
 一転して、なのはの表情に緊張が走る。
 外は未だ深夜の暗闇が支配しており、そんな中で響く正体不明の声は不気味と言う他ない。

「……私がちょっと見てくるからしんちゃんはここにいてね」
「わ、わかったゾ……」

 しんのすけを教室に留め、なのははデイバックを手に忍び足で幼稚園のグラウンドに出る。ここに来るということは他の参加者か、あるいはNPCか。

(話の通じる人だといいんだけれど……)

 年相応に怯える心を奮い立たせながら、なのははいつでも魔法が使える準備をしておく。と言っても、レイジングハート無しでは大した魔法は使えないが。
 音源は幼稚園を出てすぐにあるようだ。なのはは門の影に身を潜めて声の主を確認する。

「……!?!?!?!?!?」

176大変態変、だゾ ◆mAd.sCEKiM:2022/01/02(日) 11:02:24 ID:IEy0bso20

 その姿を見たなのはは絶句して固まった。なぜなら――。

「ぶりぶり〜!ぶりぶり〜!ケツだけ星人ぶりぶり〜!」

 なのはの視線の先で、尻が踊っていたのだから。
 否、尻ではない。ツインテールの髪をした小麦色の肌の女の子が、お尻を露出しながら既視感のあるステップを踏んでなのはに尻を見せつけていた。

「ぶりぶり〜ぶりぶり〜ぶりぶり〜」
「…………」

 顔を真っ赤にしつつしばらく見つめていたが、まるでこちらを挑発しているかのように、小麦肌の女の子は延々と穢れのない艶やかなお尻を上下させている。
 女の子がなのはに気付いているか気付いていないかもわからない。なのははふたば幼稚園の門から女の子がしている痴態ともいえる汚れ芸を覗き見ながら、思考をぐるぐると駆け巡らせる。

「…………」
(こ、これってもしかしてしんちゃんがやってたケツだけ星人だよね多分絶対そうというかあの子って女の子だし多分私と同じくらいなんだけどケツだけ星人ってしんちゃんみたいな小さい男の子だけじゃなくて女の子も踊るものなの私が知らないだけで意外とメジャーだったりするのかないや私は外でそんな踊りしたくないし仮にやってるところ見られたら恥ずかしくてもう人前に出られな――)

「ぶりぶり〜ぶりぶり〜ぶりぶり〜」

 しんのすけが発していたケツだけ星人の掛け声を、女の子らしい高い声がノリよく発音する。

「……」
(いや、これどうしたらいいの……!?)

 なのは自身、こういったふざけた方面に特化した相手に対処した経験はなく、ケツだけ星人を踊る女の子にどう声をかけたらいいか分からない。そして、こういう時に限ってレイジングハートがいない。
 あまりに突飛した光景に思考が追い付かず、なのはの瞳には渦巻きが回り始める。

(そ、そうだ!しんちゃんなら……!)

 先ほど自分にケツだけ星人を披露してくれたしんのすけならば、何かわかるかもしれないと思い、なのはは縋るようにひまわり組の教室を見た――が、そこにしんのすけの姿はなく、もぬけの殻だった。

177大変態変、だゾ ◆mAd.sCEKiM:2022/01/02(日) 11:03:01 ID:IEy0bso20

「ぶりぶり〜ぶりぶり〜!いやあお嬢さん、なかなかのステップですな〜」
「ぶりぶり〜!ぶりぶり〜!やだああっ、見ないでええっ!ぶりぶり〜!見てないでこれ止めてぇ!!」
(しんちゃん―――ッ!?)

 しんのすけはなのはが考えている間に教室を抜け出し、女の子と一緒にケツだけ星人に興じていた。
 幼稚園の外で踊るケツだけ星人が2体に増え、女の子としんのすけは2人で輪を描くように動き回る。
 女の子――ケツだけ星人をさせられたままふたば幼稚園まで来たリベッチオの身体は、仲間を見つけたことを喜ぶかのようにその動きを激しくする。

「でもまだまだのりしろがありますな〜。こうして右と左のおケツを交代して上げ下げするともっとケツだけ星人らしくなるゾ」
「ぶりぶり〜!それを言うなら伸びしろ……って何!?言うこと聞かなくていいからぶりぶり〜!」

 すると、しんのすけのアドバイスを受けてか、リベッチオは左右の尻たぶを上下させて踊るようになり、ケツだけ星人のキレがさらに増した。

「それでこうしておケツを触れ合わせるのがケツだけ星人流の仲直りだゾ!これでオラ達おシリ合いですな〜」
「ひ〜ん……どこでそんなの学んだのぶりぶり〜!」

 しんのすけのお尻と、セーラー服のスカートと紅白の縞パンツから露出したリベッチオの色違いのお尻が、ぶにゅ、ぶにゅ、と何度も触れ合う。

「宇宙から来たケツだけ星人の皆と仲直りしたとき〜。思えばあの時もシロのおケツに爆弾ついちゃって大変でしたな〜」
「ぶりぶり〜ちょっとまってケツだけ星人って実在するのケツだけ星人ぶりぶり〜!」

 ケツだけ星人をするリベッチオの身体は、何故か考案者のしんのすけには従順で、かつ動きをシンクロさせてブレのないケツだけ星人のデュエットを完成させていた。

「…………はっ」

 変態の精神的結界ともいえる光景の前にポカンと口を開けたまま固まっていたなのはだったが、正気を取り戻す。

(あの子の口ぶりからしてきっと無理やりやらされているんだ……なら、止めてあげてお話を聞かないと!)

 本心を言えばケツだけ星人をするしんのすけとリベッチオの間に入るのは若干躊躇われたが、勇気を出してなのはは飛び出した。

「――えーいっ!!」
「ぶりぶり〜……あっ!?」
「おお?」

 なのははリベッチオの背後からその身体をガシッと掴み、その動きを無理やりにでも止めようとする。

「止まってー!」
「わーっ!なのはちゃんが抱きついたー!恋人どーしだ!」
「「違うから!!断じて!!」」

 しんのすけの言葉を猛烈に否定するなのはとリベッチオ。
 余談だが、背後からリベッチオを掴むなのはの姿勢は傍から見れば交尾姿勢のようになっていたことを付け加えておく。


§

178大変態変、だゾ ◆mAd.sCEKiM:2022/01/02(日) 11:03:51 ID:IEy0bso20


 幸いなことに、なのはがリベッチオを止めに入ってからすぐにリベッチオのケツだけ星人は収まった。
 なのはとしんのすけにとってはようやく出会えることのできた他の参加者である。
 できれば話し合って協力を取り付けたいところであったが、そう簡単にはいかなかった。

「うえ〜〜〜〜〜〜ん!!あの踊り見られちゃったよぉ……もう人前に出れないよぉ……」

 リベッチオはふたば幼稚園の中に場を移すこともなく、その場にへたり込んで泣き喚いていた。
 なのはも気持ちはすごくよくわかる。幼稚園児のしんのすけならばともかく、下品な踊りをさせられているのを見ず知らずの他人に見られるなど恥ずかしいどころではない。

「だ、大丈夫だよ!私、ここで見たこと誰にも言わないから……ね、しんちゃん!」
「やれやれ……これだから子どもは困りますなあ」
「キミも子どもだし一緒に踊ってたよね!?」
「ま、まあまあ……」

 しんのすけに怒るリベッチオを、なのははどうにか宥める。

「その……話せればでいいから一つだけ聞いていいかな?どうしてアレを踊ってたのかなーって……しんちゃんとは知り合いじゃないよね?」
「うん、その子とははじめて会ったよ。なんでアレをやってたかっていうとね――」

 そうして、リベッチオは時限バカ弾の罠によって自分がバカな真似をさせられていたことを、言葉を詰まらせながら語った。

「うぅ〜……自分で言うのも恥ずかしいよぉ〜」
「あ、ありがとう……。それにしても、バカなことをさせられる爆弾……か。それって――」
「……エロトラップってやつだと思う」

 悪趣味にも程がある。
 なのはも同じ目に遭っていたかもしれないと思うと、とても他人事とは思えない。

「でも、なんでその子もアレができたんだろ」
「オラ、野原しんのすけだゾ!ピッチピチの幼稚園児なの♡しんちゃんって呼ぶといいゾ!」
「……しんちゃん」
「それに、アレじゃなくて『ケツだけ星人』だゾ。オラが考えた必殺技〜」
「必殺……技……?」
「しんちゃんは、あのヒエールやマカオとジョマって人を倒したことがあるみたいなの。もしかしたらその影響かも……」
「おおっ、オラの必殺技コピーされた!?」

 謎は絶えないし、騒がしく衝撃的すぎるファーストコンタクトだった。だが、これまでのやり取りで分かったことがある。

「えっと……殺し合いには乗ってない、よね」
「うん。すごく恥ずかしい思いはしたけど……しんちゃんもちょっとヘンだけど仲良くしたいと思ってくれてるみたいだし」
「お互い、警戒する必要なくなっちゃったね」
「おシリ合いになりましたからな〜」

 なのは、リベッチオ、そしてしんのすけは笑い合う。
 リベッチオはすっかり落ち着きを取り戻したようで、立ち上がり改めてなのはに向き合った。

「とにかく、さっきは止めてくれてありがとう。グラッチェ!」
「オラはオラは〜!?オラ達もうおシリ合いなのに〜」
「あはは……そうね。もう知り合いだもんね!ありがとう、しんちゃん」

 改めて、リベッチオはなのはとしんのすけに微笑みながら礼を言った。

179大変態変、だゾ ◆mAd.sCEKiM:2022/01/02(日) 11:05:14 ID:IEy0bso20

「そういえば色々とありすぎて、まだあなたの名前聞いてなかったね。聞かせてくれる?」
「あ、そうだったね!名前はリベ――」

 そう、リベッチオが自己紹介しようとした時だった。


――ドスン!!


 突然、轟音と共に地面が揺れ、3人の身体が地面から跳ねた。

「ッ!?」
「おおっ!?」

 辺りの空気が一変する。
 反射的に、リベッチオとなのははしんのすけを庇うように前に出て、警戒態勢に入る。

「今の地響き……なんだろう」
「分からない……もしものことがあるから、2人とも下がってて。リベは艦娘だから、いざとなったら――」
「かんづめ?」
「艦娘!」

 即座にしんのすけの言い間違いをリベッチオが訂正する。
 なのはもリベッチオも、もっと互いのことを知りたかったのだが今は自己紹介をしているような状況ではない。

「おおっ……2人とも見て!」

 すると、しんのすけは宵闇の中から何か見つけたのか、目を輝かせる。

「でっかいロボットがいるゾ!」
「「えっ」」

 素っ頓狂な声を上げながらしんのすけと同じ方向を見ると――本当にいたのだ。
 夜空に紛れてそびえたつ黒い影から浮き上がる、なのは、しんのすけ、リベッチオとは比べ物にならない巨体が。そこから微かに光るメタリックなボディ。扇状の盾を身体に貼り付けたかのような外見が目立つ。

「ほ……本当にロボット……」
「……すごいことに巻き込まれちゃったんだね、リベ達……」

 なのはもリベッチオも、漫画とかアニメのようなフィクションでしか見たことのない、男の子が憧れるような、巨大な人型の機械が、自分たちを見下ろしている。あまりにも現実離れした光景に呆然としていた。

「おおーっ!オラにも乗せてー!」
「……はっ!しんちゃん、ダメっ!」

 リベッチオは無邪気にロボットの方へと向かおうとするしんのすけの身体を、咄嗟に抱きかかえて止める。

「えー!なんでー!?」
「あのロボット……なんだか、うまく説明できないけどすごくヤな感じがするの」

 嫌な汗を掻きながら、リベッチオが言う。
 このロボットを見ていると、理由もない恐怖感に晒されるのだ。それは理屈で片づけられるものでもなく、もっと本能的なものだった。

180大変態変、だゾ ◆mAd.sCEKiM:2022/01/02(日) 11:06:19 ID:IEy0bso20

「私もそう思う。あれ……多分だけど、NPCだから」

 リベッチオはハッとしてなのはの方を見る。
 確かに、リベッチオからしても巨大ロボットは『強すぎる』。そんな強すぎるモノを支給してゲームを破壊されるような真似を主催がするとは思えない。あのロボット(を操縦している誰か)はNPCと見て間違いないだろう。
 NPCはヒエール曰く「そいつらは率先して君たち参加者を性的な意味で襲いかかるように細工している」存在。少なくとも、参加者の味方ではない。
 やがて、大勢の足音がロボットのいる方面から聞こえてくる。

「あの人達……銃を持ってる」

 リベッチオが声を震わせながら言葉を絞り出す。
 足音のする方面を目を凝らしてよく見ると、フルフェイスのメットと暗い色の戦闘服に身を包んだ兵が、こちらに向かっていた。

「……どうしよう?リベ達のデイバックをひっくり返してる暇なんてないし……まともな武器もないし……」
「……逃げよう。あのロボットや武装した兵相手に私達が敵いそうもないよ!」

 そう言って、なのはとリベッチオはそれぞれしんのすけと手を繋いで、ロボットのいる場所とは反対方向に駆け出そうとする。
 武器と言えばしんのすけのSPタイムスーツと金属バットがあるにはあるが、流石に巨大ロボットと武装兵を相手にしんのすけを宛がう気にはなれない。

「えー!やだやだっ!オラあのロボットとお近づきになりたいゾ!」
「しんちゃん今は我慢して!」
「リベだってまだ名簿すら見てないんだから!」

 なのはとリベッチオは駄々をこねるしんのすけを宥めながら、走る。

「やれやれ……最近の子どもは落ち着きがありませんなあ〜」
「「それはしんちゃんでしょ!」」

 年上の少女2人に手を引っ張られながら、しんのすけも渋々走り出した。

――しかしその瞬間、巨大ロボットの一部分が発光したかと思うと、なのは、しんのすけ、リベッチオのすぐ後ろで爆発の如き衝撃が起こり、3人とも吹き飛ばされたのだ。

 直撃は免れたが、全員が地面に倒れ伏す。

「う……一体何が……」

 なのははすぐに顔を上げ、しんのすけとリベッチオの無事を確認する。後方では、地面が大きく穿たれていた。

「大丈夫!?えっと……ナノハだよね?」
「うん、それで合ってるよ!私は大丈夫!」

 リベッチオは既に立ち上がっており、目立った傷もない。ひとまず、なのははリベッチオの呼びかけに首を縦に振る。

「しんちゃん!大丈夫……しんちゃん!?」
「う〜ん……」

 だが、しんのすけのでこには流血はしていないものの傷があり、軽い脳震盪を起こしているようだった。

「……頭を強く打っただけだから、大丈夫だと思う」
「よかった……」

181大変態変、だゾ ◆mAd.sCEKiM:2022/01/02(日) 11:07:41 ID:IEy0bso20

 リベッチオの言葉になのはは安堵する。しかし、まだ緊張を解くには早い。
 なのは、リベッチオはしんのすけの前に出て、険しい表情で巨大ロボットの方を見る。ロボットにはその巨体に見合うサイズの銃が握られており、3人は恐らくあれで攻撃されたのだろう。

「あのロボット……多分リベ達から敢えて狙いを外したんだと思う」
「え……それって……」
「リベ達を殺すんじゃなくて足止めしてる。きっと、捕まえるつもり」

 リベッチオは一応、艦娘としての実戦経験もあるからか、なんとなく分かる。
 あのロボットと兵の正体が何かは分からないが、自分達に近づいてくる兵が銃撃してこないあたり殺すつもりがないのは確かだ。

「……」
「……」

 顔を見合わせるなのはとリベッチオ。
 兵の軍勢は急速に距離を詰めてきており、あのロボットも地面を揺らしながらこちらに向けて歩を進めてきている。
 足止めを食らったためか、このまま走って逃げることは不可能だろう。こうなっては、残された手段は一つ。

――誰かが囮になるしかない。

「ナノハ、しんちゃんをリベのデイバックに入れて、このまま逃げて。リベの姉妹に、マエストラーレ、グレカーレ、シロッコって言う子がいるんだけど、もしも巻き込まれていたらその子達を頼って!」

 早口で挙げられたその名前を聞いて、なのはは息を呑む。なのはは知っていた。リベッチオの姉妹、マエストラーレ、グレカーレ、シロッコという名が名簿にあったことを。

「そんなことできないよ!私が残るからあなたがしんちゃんと逃げて!えっと、リベ……」
「リベッチオ。リベでいいよ。もう時間がないから!早く!」
「駄目だよ!リベちゃんだって家族がいるのに……」

 どちらかがここに残って敵を引き付けなければいけないこと、そしてこのままではしんのすけを含む全員が助からないことは分かっていた。
 だが、なのはとリベッチオは平行線を辿る。片や同じ悲しみを繰り返さない、片や守りたいという強い想いが邪魔をして、互いに譲らない――否、譲れなかった。

――ドスン!!

 その時、なのはとリベッチオの譲り合いに喝を入れるかのように強い地響きが辺りを襲う。

「「ッ!!」」

 なのはとリベッチオが気づいたときには、あの巨大ロボットと武装した兵がすぐ近くに迫っていた。それは、タイムリミットが来たということでもあった。

「リベちゃん、せめてしんちゃんだけでも!」
「うん!」

 咄嗟に、リベッチオは未だに意識が朦朧としているしんのすけの身体を無理やり自分のデイバックの中に詰め込み、なのはとしんのすけのデイバック共々、明後日の方向に放り投げた。空を舞ったデイバックの塊は彼方へと飛んでいき、宵闇の中へと消えていった。
 せめて、しんのすけには無事でいてほしい――この想いは、なのはもリベッチオも同じだった。

「……結局、2人とも残っちゃったね」
「しんちゃん、大丈夫かな」
「……大丈夫だよ。しんちゃんはああ見えてすっごく強い子だから」
「……ゴメンね、付き合わせちゃって。リベ、艦娘としてしんちゃんやナノハみたいな小さい子だけは守らないとって思ってたのに」
「リベちゃんが気を遣わなくっていいよ。私……これでも魔法使いだから」
「えっ、ナノハって魔法使いなの!?」

 リベッチオは驚いてなのはを見るが、それ以上の話はできなさそうだった。
 丸腰のなのはとリベッチオを、兵達は取り囲み、銃を向ける。
 不幸中の幸いか、敵はデイバックの中に入ったしんのすけに興味はないらしく、リベッチオの投擲したものを探しに行く兵はいなかった。

「……お話は後になりそうだね」
「っ……」

 なのはとリベッチオは背中合わせになり両手を上げた。


§

182大変態変、だゾ ◆mAd.sCEKiM:2022/01/02(日) 11:09:03 ID:IEy0bso20


――それから、さらに数十分の時が経った。

「なのはちゃーん!リベちゃーん!」

 ふたば幼稚園のある区画で、しんのすけが3つのデイバックを担ぎながら、殺し合いの会場で出会った2人の少女――なのはリベッチオを捜索していた。……ちなみに、リベッチオについては直接名乗られていないが、自分をリベと呼んでいたのでしんのすけも「リベちゃん」と呼んでいる。
 ふたば幼稚園の他にも民家が点在しているが、人の気配は全くと言っていいほどない。

「んも〜、2人とも方向音痴なんだから〜」

 しんのすけはボヤいているが、なのはとリベッチオが心配なのは本当だ。目覚めてから死に物狂いでデイバックから這い出たと思ったら、あの巨大ロボットは勿論のこと、自分達を追っていた兵隊さんも、なのはとリベッチオもみんな姿を消していた。

――なのはちゃん……オラが起きてからも辛そうなカオを時々見せてたゾ。フェイトちゃんが死んじゃって一人ぼっちだから、オラがいてあげないと……。
――リベちゃん。せっかくおシリ合いになったのに、まだリベちゃんのことなんにも知らないゾ……リベちゃんの言ってた『かんづめ』って何なのか、オラ知りたいゾ……。

「――そんなだとキレイなおねいさんになれないゾ!ずっと子どものままだゾ!」

 わざと周囲に聞こえるように大きな声を上げてみる。しかし、返答はない。もしかしたら2人とも怒って出てきてくれるかも、という淡い期待を込めたのだが、空回りに終わった。

「もー!どこにいるの!オラをこんな袋に詰め込んでおいてゴメンの一言もないなんてチョコビ分けてあげないゾ!」

 そう言って、しんのすけは駆け回りながら更に念入りに探してみる。目につく民家の中はもちろん、その軒下も探したし、ふたば幼稚園に戻ってひまわり組以外のの教室も探した。女子トイレは流石に中を覗くだけに留めたが、男子トイレには入ってついでに大きい方の用を足しておいた。

「うーむ、困りましたな〜」

 しんのすけはひまわり組の教室に戻り、考え込む。とにかく探すだけ探して、見つかったものと言えば、何かが爆ぜた跡のようなクレーターと――。

「これ、なのはちゃんとリベちゃんが着てた服に似てるような……?」

――その付近にあった服の残骸とも言える布の切れ端の山だった。かなり乱雑に破かれたようで、もはや服の原型を留めていない。しんのすけの言う通り、色合いや布の質感がなのはの私服やリベッチオのセーラー服に似ていた。

183大変態変、だゾ ◆mAd.sCEKiM:2022/01/02(日) 11:10:08 ID:IEy0bso20

「おおっ?……おパンツは無事、と」

 しかし、その布の残骸の中でも下着だけは無事に残っていた。しんのすけの発掘した下着は、2つ。そのうち1つは、赤と白の横縞模様のパンツだった。

「……どっちもみさえのスケスケ下着よりかは健康的ですな〜」

 しんのすけは、極めて正直な感想を言った。
 そして気付く。しんのすけの持つ縞パンツは、リベッチオと『おシリ合い』になった時に垣間見えていたパンツと同じであることに。

「これ……ホントになのはちゃんとリベちゃんの服……!?」

 それを悟ったしんのすけは、いつでも2人に服を返せるようにと、服の残骸とパンツをまとめて、自分のデイバックに突っ込んだ。
 しかし、まだ疑問が残る。なぜあそこになのはとリベッチオの服が捨てられていたか、だ。

「うーむ……あれがなのはちゃんとリベちゃんの服だったとして、どうしてこんなビリビリに破かれてるんだ……お風呂に入りたくってついビリビリに破いちゃったとか……?でも近くにお風呂なんてないし……ケツだけ星人やぞうさんをするにしてもすっぽんぽんにならなくていいゾ……」

 しんのすけなりに推理してみるも、答えは見えてこない。なぜなのはとリベッチオがロボットごと姿を消したのか、しんのすけには理解できないままだった。

「……考えてるとお腹空いて来たゾ」

 しんのすけは考えることをやめ、ひとまず食事にありつくために適当なデイバックに手を突っ込んで、手当たり次第に抜き取る。
 しかし、出てきたのは参加者名簿と基本ルールをまとめた紙に、媚薬。苛つきながらも、しんのすけはめげずにデイバックから手についた物を取り出した。

「おお?」

 しんのすけの手が握っていたのは、透き通るような赤い玉だった。

「おおー……」

 しんのすけは赤い玉をじっと見つめる。

『失礼、マスターの居場所をご存知ですか?』
「お、おねいさん!?どこどこ?」

 突然、教室内に大人の女性の声が響く。しんのすけは興奮して教室中を見回すも、しんのすけ以外に誰もいない。

「何だったんだろ……?まいいや」

 気のせいだと思い、しんのすけは再び赤い玉を輝いた瞳で見つめる。
 そして――赤い玉を口に運ぼうとした。


§

184大変態変、だゾ ◆mAd.sCEKiM:2022/01/02(日) 11:14:11 ID:IEy0bso20


 しんのすけの取り出した赤い宝玉――リベッチオのデイバックに支給されていたレイジングハートがしんのすけにまず聞いたのは、主である高町なのはの居場所だった。

「何だったんだろ……?まいいや」

 しかし、声の主が赤い宝玉だとは露も思われていないようだったため、再びレイジングハートはしんのすけに声をかけようとする。
 が、その瞬間にレイジングハートはしんのすけから自身に向けられている視線に気づいてしまう。
 輝く瞳に微かな腹の音。「どんな味がするんだろう」とでも言いたげな、未知のお菓子に対する期待の眼差し。
 徐々に、レイジングハートを握る手と目の前の少年の口の距離が狭まってくる。

――まさか。

『……私はキャンディではありません』

 少しずつ、少しずつしんのすけの口が近づいてきて、しんのすけが大口を開ける。

『……私はキャンディではありません!』

 必死にレイジングハートが呼びかけるも、しんのすけには届かない。

『私はキャンディではありません!!!』
「んん!?」

 すると、レイジングハートの叫びにしんのすけは驚いて。

――ごくん。

 哀れ、レイジングハートはしんのすけに呑み込まれてしまったのだった。

185大変態変、だゾ ◆mAd.sCEKiM:2022/01/02(日) 11:15:11 ID:IEy0bso20


「呑んじゃった……イチゴ味のアメかと思ったら味しなかったゾ……」
『……仮のマスター』
「あ、おねいさんの声!誰もおねいさんをキャンディだなんて思ってないからオラの前に出てきてほしいゾ!」

 よりにもよって、高町なのはの相棒とも言えるレイジングハートを呑み込んでしまったとは思わず、レイジングハートの音声にデレデレしながら返答するしんのすけ。
 一応、声自体は聞こえていたが、呑み込むその時まで赤い玉が声を発しているとは気づかなかったようだ。

『私はここです。あなたの胃の中です。あなたが呑み込んだ赤い宝石です』
「おおっ!?おねいさんあのタマタマだったの!?」

 ようやく気付くしんのすけだったが、こうなっては何もかも遅かった。

『仮のマスター、一言だけ言わせてください』
「仮のマスターじゃないゾ。オラ、野原しんのすけ5さい!しんちゃん、って呼んで」
『……では、しんちゃん』
「ほーい」
『――何ということをしてくれたのでしょう』
「いや〜それほどでも〜」
『褒めてません』

186 ◆mAd.sCEKiM:2022/01/02(日) 11:17:40 ID:IEy0bso20
以上で前編を投下終了します。

次から後編を投下します。
過激な性描写が含まれるほか、実際に性行為が行われている描写も挟まりますので、閲覧される際はご注意ください。

187『ドミネイター』 ◆mAd.sCEKiM:2022/01/02(日) 11:19:55 ID:IEy0bso20
 しんのすけとなのはがしばらく留まっていたふたば幼稚園は施設ではあるが、その中にはエロトラップは設置されていない。
 しかし、そこからすぐ北東に位置する、浮遊大陸の最東端。マップにおいてD-8に存在するそこには、全参加者の脅威となるNPCが巣食う場所があった。

 その名も、『ドミネイターの前線基地』。

 ドミネイターとは、「人機」という巨大なロボットを人々が駆る世界で、極端な男尊女卑社会を築いていた勢力の名。女を性の捌け口としか見ていない、性に飢えた獣の如き下劣な者達の総称。
 『ドミネイターの前線基地』はその名の通り、此度の殺し合いでNPCとして配置されたドミネイター達が拠点とする施設だった。

 『巨大ロボットに人間が勝てるわけないだろ!』と諸氏はお思いだろうが、その通りである。その通りだが、主催の「エロトラップ回りは完全にクライアントの性癖に全任してる」というのは伊達ではなく、あるクライアントが「この世界のドミネイターとかいう奴らいい仕事してくれそうだから配置しておこう」というノリでドミネイターは配置されてしまったのである。
 ちなみに、なのは達を襲った人機の機体名は、「エルゴ」。体長18.25mの、ドミネイターの量産機である。
 そして、そんなドミネイターに、なのはとリベッチオは囚われてしまったのだ。


§

188『ドミネイター』 ◆mAd.sCEKiM:2022/01/02(日) 11:21:01 ID:IEy0bso20


「っ……!」
「うう……」

 ひた、ひた、と裸足で地面を踏む音だけが響く。
 なのはとリベッチオは、ドミネイターの前線基地にて連行されていた。

「……」
「……」

 互いに涙の跡が残る顔を見合わせた後、その視線の少し下に移す。そこには、自分と同じくらいの少女の未成熟な裸体が目に入った。
 服は全て奪われ、下着も、靴下すらも身に着けることを許されず、膨らみのない胸も、未だ性徴の気配が見えない股間もすべてを晒していた。未だ幼い少女2人にとって、この仕打ちはあまりにも酷すぎる。
 たとえ隠そうとしても、両手はガチャリという金属音と共に背中に組んだまま動いてくれない。両手首には金属製の枷が装着され、乙女の恥部を隠すこともできない。
 首輪にリードを取り付られて引っ張られながら、肌色と小麦色の色違いの小さな裸体が横一列に並んで歩かされている。その周囲には裸の少女2人の2倍があろうかという身長のドミネイター兵が四方を囲んでおり、視覚的にも立場の差が明確に表れていた。

(……リベちゃん、大丈夫?)
(……ナノハも、平気?)
(……正直に言うと、大丈夫じゃない……)
(……リベも。すっごく恥ずかしいし、怖い……)

 なのはとリベッチオは、周囲に聞こえないように小声で話しながら歩く。
 なのはは未だ9歳、リベッチオも外見はそう変わらない上に本来は年相応な精神をしているからか、本心を言えばすぐにでも泣き叫びたいほどに追い詰められていた。
 それでも崩壊しないのは、傍に同じ境遇の人がいるからだろう。皮肉にも、なのはとリベッチオは一緒に捕まったことで互いの精神を保つことができていた。

(――この人達、何も考えてないのかな?まったく話さないね……)
(どうやったのかは分からないけど、多分主催の人達に操られてるんだと思う。ヒエールが細工してるって言ってたし……)
(ナノハの知ってる魔法にそういうのあるの?……人を操る感じの)
(私がまだ知らないだけかもしれないけど……そういう魔法は聞いたことがないかな。もしかしたら幻術にそういうのがあるのかも……)

 ……本来であれば、このような小声であろうとドミネイターに筒抜けであっただろうが、NPCとなり主催の操り人形と化している今、それを咎められることはなくなっていた。
 身に余る恐怖と羞恥を紛らわすように、なのはとリベッチオは無意識に肌を寄せ合いながら話し合う。

 ドミネイターに捕まってから、なのはとリベッチオは互いの世界について隙を見て情報を交換していた。魔法のこと、艦娘のこと、そして互いが会場に転送されてから何をしていたかに加え、名簿にリベッチオの姉妹の名があったこと。

(でも……本当にリベだけじゃなくって、第十駆逐隊のみんなも殺し合いに……?)
(……うん、間違いないよ。リベちゃんから教えられた名前、ちゃんと名簿で見たから……)
(……そっか。リベみたいなことになっていないといいなあ……)
(リベちゃん……)

 姉妹を案じ、リベッチオは思いを馳せる。

(あ――ゴメンね!ナノハも、友達で悲しい思いをしてるのに……)
(ううん、いいんだよ。……それに、しんちゃんが教えてくれたんだ。『死んじゃった人の分も頑張って生きよう』って)
(……しんちゃんって、本当に強いのね……。ちょっとヘンな子かと思ってたけど)
(うん、私もとても悲しかったけど……しんちゃんの言葉で救われたよ。だから私、こんな格好にされても諦めてないから)

 そう言って、なのはは少し早歩きしてリベッチオの前に出て、拘束された後ろ手を開き、手の平に握っていたものをこっそり見せる。

「っ……!?」

 思わず、リベッチオは身体を硬直させる。
 それは、あの時限バカ弾だった。リベッチオにとってはトラウマがあるからか、触るのも億劫になってしまうものだ。
 その反応を確認したなのはは、振り返って微笑んでみせる。

189『ドミネイター』 ◆mAd.sCEKiM:2022/01/02(日) 11:22:05 ID:IEy0bso20

(ナノハ、どうやってそれを……?)
(これね、あいつらに服を破られた時、リベちゃんについてたのを取っておいたの。大丈夫、まだ起爆まで時間はあるよ)

 あの時か……とリベッチオは合点が行く。まだ未起動の時限バカ弾があの時点で張り付いていたとは。
 ドミネイターに囲まれ、その場で服を破り捨てられ、下着も脱がされて誰にも見せたことのない箇所を晒された時。
 武装した敵の前で素っ裸を晒して腕まで拘束され、平らな胸も、桜色の頂も、股間の一本筋までもを視姦された時の屈辱は忘れられない。リベッチオだけでなく、なのはも涙を浮かべていた。そんな状況でも時限バカ弾を隠し持つ余裕があったというのか。

(ナノハも、強いんだね……)
(最後まで頑張るって、フェイトちゃんに誓ったからね。それに、しんちゃんをひとりぼっちにもできないし……。私達のリードを持っている人に隙を見てこれを付けるから、起爆した瞬間に逃げよう!)
(うん……!)

 微かな希望が見えたことで明るくなるリベッチオだった――が、ふと、連行されているなのは越しに見慣れない光景が目に入ってきた。

「な、ナノハ……あれ……」
「へ……――っ!!」

 やがて、それが如何に異常かを認識した瞬間、顔色を変える。
 なのはも促されるままに同じものを見て、心の臓が飛び出そうになる。
 なのはとリベッチオはあまりの衝撃に凍りつき、全裸で拘束されたまま連行されていることも忘れて立ち止まってしまう。

「――」
「――」

 それは性に疎い2人にとって、刺激の強すぎる光景だった。
 二人の視線の先には服を着たドミネイターの男と――一糸纏わぬ姿でリード付きの首輪を付けられた豊満な裸体を晒した女が――建造物の陰でまぐわっていたのだから。
 男が腰を突き上げると同時に女からは汗と共に悲鳴が上がり、ずちゅ、ずちゅという生々しい音がなのはとリベッチオの耳にも届く。
 2人にとって何よりも衝撃的だったのは、男の股間に生えた巨大な棒が、女の股間に埋もれてその中へと挿入されていたことである。
 挿入されている部分が、自分達の股間にある一本筋を割って入った先であることはなんとなくわかった。

「……」
「……」

 先ほどまで話していたことも忘れ、ただ茫然とその光景を見守る。
 なのはもリベッチオも、まだ性の知識については乏しく、エロトラップについても裸にされるだとか恥ずかしいことをさせられるくらいの認識しかしていなかった。
 だが目の前で行われているのは本物の性行為だ。だがそれは、成熟した男と女が行う性の交渉ではなく、男が一方的に女を肉壺として扱き使う、搾取。
 目を見開いて、その光景をじっと見ていたなのはとリベッチオにとって、搾取されている女が他人だとは思えなかった。なぜなら、彼女と違う部分といえば性徴の有無と、首輪の形状と、両手の拘束の有無しかなかったのだから。

「あうっ……」
「痛っ……」

 長く立ち止まっていたせいか、2人は首輪のリードをドミネイターに引っ張られ、2人してたたらを踏みながら慌てて追い縋る。

「……」
「……」

 それ以降、なのはとリベッチオはしばらくの間、俯いたまま口を交わすことはなかった。

(私達も……)
(リベ達も……)
((あんなことされるの……?))

 そんな疑念を払拭できないまま、こぶりな2つの色違いのお尻をふりふりと揺らしながら、連行されていった。

――ここは、ドミネイター前線基地。女を犯すNPCもいれば、会場を飛び回って参加者を捕獲するNPCもいる。それと同時に、ここに来た女に自分の役割を分からせるために、ただ犯されるためだけに配置された哀れな女性NPCもまた、配置されているのだ。首輪の形状が違うのも、参加者と区別するためだ。

 時は午前2時。黎明を迎えていた。

190『ドミネイター』 ◆mAd.sCEKiM:2022/01/02(日) 11:23:30 ID:IEy0bso20


【1日目/黎明/E-7/ふたば幼稚園】
【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:でこに小さな傷、レイジングハートを誤飲
[装備]:SPタイムスーツ@クレヨンしんちゃん、レイジングハート・エクセリオン(誤飲中)@魔法少女リリカルなのはA's
[道具]:基本支給品、金属バット@現実、ランダム支給品1、なのはのデイバック(基本支給品+ランダム支給品1〜3)、リベッチオのデイバック(基本支給品+ランダム支給品1〜2)、なのはの服の残骸、なのはのパンツ、リベッチオの服の残骸、リベッチオのパンツ
[思考・状況]
基本行動方針:ヒエールのおじさんとマカオとジョマをやっつける
1:なのはちゃんとリベちゃんを探す
2:赤いタマタマの声(レイジングハート)とお話する
3:とーちゃんとリングおねいさんを探す
4:なのはちゃんが辛くなった時は支える
5:オラもフェイトちゃんの分まで頑張るゾ!!
[備考]
※映画の出来事を体験してます
※殺し合いの意味はまだ理解できてませんが、死人が出てしまう程の非常事態が起きているということは理解しました
※レイジングハートを誤飲する直前に、ふたば幼稚園にて用を足しました(大)。時間経過による次の排便は約1日後です。


【1日目/黎明/D-8/ドミネイターの前線基地】
【高町なのは@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:悲しみ(中)、全裸、後ろ手拘束状態、首輪にリード付き、羞恥(大)、屈辱(大)、恐怖(大)、陵辱を見たことによる衝撃
[装備]:時限バカ弾@ドラえもん
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:主催を倒し、みんなで脱出する
1:……。
2:私達、どうなっちゃうの……?
3:しんちゃんのお父さん(野原ひろし)とリングさん(リング・スノーストーム)を探す
4:私が感じたような悲しみはもう繰り返したくない
5:フェイトちゃん…私、頑張るよ…!!
6:しんちゃん、無事だといいけど…
[備考]
※参戦時期は少なくとも闇の書事件以降です

【リベッチオ@艦隊これくしょん】
[状態]:全裸、後ろ手拘束状態、首輪にリード付き、羞恥(大)、屈辱(大)、恐怖(大)、陵辱を見たことによる衝撃
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本方針:殺し合いから帰還する
1:……。
2:リベ達、どうなっちゃうの……?
3:とりあえず同じ方針の参加者を探して、協力する
4: 姉妹(マエストラーレ、グレカーレ、シロッコ)を捜索する
5: 特に力を持たない一般人がいれば守ってあげたい
[備考]




『支給品紹介』
【レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのはA's】
リベッチオに支給。
高町なのはの愛用するインテリジェントデバイス。なのはの世界における魔法の杖。
人工知能を有しているため会話・質疑応答をこなせる他、使用者に合わせて自らを微調整できる。

『エロトラップ紹介』
【ドミネイターの前線基地@人狼機ウィンヴルガ】
NPCとしてのドミネイターの拠点。
ドミネイターに捕獲された参加者はここに連れて来られ、この殺し合いを観戦する〈客人〉の意向により多様な責め苦に晒されることになる。
娼館、公開陵辱場、研究施設、独房など、原作で登場した場所は一通り存在する。
ドミネイター以外に、ドミネイターの性奴隷のような犯されるためだけのNPCが存在する。

『NPC紹介』
【ドミネイター@人狼機ウィンヴルガ】
出典作品の世界で猛威を奮う、女をモノとしか思っていない輩の総称。および彼らが形成している社会。
基本的な思考こそ見境なく参加者を性的に襲う一般的なNPCのそれだが、
「人機を駆る」、「捕獲した参加者をD-8の前線基地に持ち帰る」、「殺し合いを観戦する〈客人〉の意向の影響を受けやすい」という特徴がある。

【ドミネイターの性奴隷@人狼機ウィンヴルガ】
哀れドミネイターに囚われ、性欲の捌け口として使われる女達。
本人達は何の害も持たず、此度の殺し合いではただ「犯される」ためだけの存在。
しかし、その有り様は前線基地に連れて来られた参加者に自分の立場を分からせるという役割がある。

191 ◆mAd.sCEKiM:2022/01/02(日) 11:27:37 ID:IEy0bso20
以上で投下を終了します。

指摘の他、所謂巨大ロボットの登場する「人狼機ウィンヴルガ」出典NPCの可否、および「犯されるためだけのNPC」の可否についても、お手数ですがご判断お願いします。

192 ◆QUsdteUiKY:2022/01/02(日) 16:27:18 ID:snoJfo7E0
ゲリラ投下します

193感じないけど、感じるもの ◆QUsdteUiKY:2022/01/02(日) 16:28:04 ID:snoJfo7E0
「うるさいですね……」

異様な姿をした主催者二人の死者発表を聞き、チノの頭と胸がズキリと痛む。
心は痛まない。鬼となったばかりの彼女にそんな理性はないはずだし、今の彼女に『心が痛む』という感情なんてないはずだから。

それでも胸が痛くなる。
チノはどうして自分がそうなっているのかわからぬまま、忌々しげに頭を抑える。

今のチノは鬼だ。
状況が理解出来ているわけじゃない。理性的とは言えないし、むしろ本能のままに動いてると言っても良いだろう。

もっとも普段も憂さ晴らしに大手のコーヒー店ばかり爆破してきたり、今回も目的のためにいきなり他人を殺そうとした彼女は、ある意味では元から本能的に行動していたと言えるが――それでも鬼になるまではココアを殺そうとした事なんてこれまで一度もなかった。

そんなチノにとって放送の意味など理解出来ない。
シャロやティッピーという名前だって明確に思い出せるわけじゃない。どこかで聞き覚えがある程度には引っ掛かるが、鮮明には思い出せない。
それでも何故か胸が痛い。心なんて今は持ち合わせていないはずなのに――ズキリと痛む。

だから彼女が口にするいつもの言葉も、少し忌々しげで。
いつもよりも重く、そしてまるで主催者に対して嫌悪感や怒りでもあるかのようだった。

「うるさい、ですね……」

うるさい。
彼らの声はあまりにも不快だ。
理由はわからないけれども、今すぐ爆破してやりたくなる。
相手は大手コーヒー店の回し者でもないし、願いを叶える権利や賞金までぶら下げているはずなのに――何故だか今は異様に彼らが憎い。忌々しい。気持ち悪くて不快だ。

その嫌悪感はコメダやスターバックスに匹敵する。
それほどまでにムカつくし、今すぐにでも爆破してやりたくなる対象だ。
最初はFXで失った金を取り返せる、大手コーヒー店を滅ぼせると息巻いてたチノだが、この瞬間ばかりは本当に主催者の声が忌々しかった。

あと当然だが姿形も生理的な嫌悪感を覚える。
きっと普段のチノでも「いやもうほんと死んでください……」とドン引きしながら言っていただろう。ティッピーも「恥を知れ恥を」とチノに同調していたはずだ。

しかし今のチノにはティッピーが居ない。
ずっと傍にいた存在の喪失は大きく、なんだか頭の上が寂しいようにも感じる。
今まで幾度となく人気コーヒー店を爆破してきたり、子宮を摘出されたり、FXで借金を作ったり――常軌を逸した経験ばかりしてきたチノだが身内を失ったことはなかった。

そもそも人気コーヒー店を爆破したことはあれど直接的に人を殺害したこともなく、堂々と犯罪していながらも人の死を見たことはない。
まあもしかしたら人気コーヒー店を爆破したことによってその店舗のオーナーや店員が路頭に迷っているかもしれないが、チノにとって彼らなんてゴキブリのように不快な存在なので殺人には値しない。

194感じないけど、感じるもの ◆QUsdteUiKY:2022/01/02(日) 16:28:39 ID:snoJfo7E0

そんな倫理観の持ち主だから優勝のために謎の女を襲撃することに一切の躊躇をしなかったわけだが、ああ見えて人間を殺意全開で襲ったのは本当に初めてである。まあ相手は鬼なのでそれに気付いたら「鬼に人権なんてないです」と普段のチノでも頭を吹っ飛ばしていた可能性は多大にあるのだが……。

少なくとも無惨のやたらと高圧的な態度がチノの癇に障ることはほぼ間違いないだろう。まあ今回は態度とか関係なしに無差別殺人的に襲ったわけだが、状況が状況だから仕方ない。
人気コーヒー店の破壊者になれるならば彼女は喜んでどうでも良い羽虫共を襲うし、ラビットハウスを建て直すための賞金まで得られるのだから襲わない理由がない。

それでもココアやリゼが参加していることに気付けていれば無差別殺人はやめて主催者や危険人物やコーヒーショップのみを破壊対象に選んだ可能性もあるが――鬼となってしまったことでその可能性もほぼ潰えた。
しかしかつての友人、そして家族の死にチノは胸を痛め、主催者に対して忌々しいとすら思い始めている。
ココアやリゼの行動次第では禰豆子のようになれる可能性を秘めているといっても過言ではないだろう。……まあそれでもココアやリゼ以外にとって危険極まりない人物であることには変わらないだろうが。

存在を汚染されたチノは幾つもの可能性を秘めている。

果たしてチノは己が野望を思い出し、ラビットハウス以外の喫茶店の殲滅や賞金を手に入れることが出来るのだろうか?
はたまたココアやリゼによって危険対主催になるだろうか?
それともこのまま鬼として無差別殺人を繰り返すのだろうか――?

『みんな〜! 聞こえてる〜!』
『オレさ〜! このショッピングモールで化け物に囚われてる女の子を見つけちゃったんだ〜!』
『だけどオレだけの力じゃどうにもならなくてさ〜、誰でも良いから助けるのに手伝って欲しいんだ〜!』

拡声器から聞こえてきた声に導かれるようにチノはショッピングモールへ向かって歩き始める。
かつて自分と同じくラビットハウスで働いていた友人――リゼがいる場所へと

【F-3/1日目/深夜】
【チノ@ごちうさ二次創作】
[状態]:負傷、右腕欠損、再生中、主催に対する怒り
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:うるさいですね……
1:血がほしい
2:気持ち悪い主催者二人の声が特にうるさいですね……
3:ショッピングモールへ向かう
[備考]
無惨から強力な鬼にされました
血鬼術で銃火器を精製出来ます。制限などは後続の書き手にお任せします
鬼になった際、支給品のバズーカは失ってしまいました。血鬼術で作れるかもしれません

195 ◆QUsdteUiKY:2022/01/02(日) 16:28:59 ID:snoJfo7E0
投下終了します

196 ◆L9WpoKNfy2:2022/01/11(火) 00:15:38 ID:Y7gKaevk0
以前、諸事情により予約を破棄したものについて、ゲリラ投下いたします。

197Like? Like♥ ◆L9WpoKNfy2:2022/01/11(火) 00:16:39 ID:Y7gKaevk0
『洗脳されてしまったシロッコを救う』……そう誓い、戦う決意を固めたマエストラーレ。

「ええっと、これは……で、これは…っと……」

そんな彼女は今、その目的を果たすために何ができるのか、自分に支給されたものは何なのかを調べていた。

しかし彼女のその行動はいったん中断されることとなってしまった。

なんと彼女のいる建物の天井が壊れ、そこから奇妙な物体が降ってきたのだ。

「きゃぁーっ、一体何なの!?」

その怪物はまるで、イソギンチャクから触手を取り除いたような姿をしていた。

「ええぇっ、何なのこの怪物はっ!」

そしてマエストラーレがその異常な姿に硬直しているとその怪物は頭頂部の口を彼女のほうに伸ばしていった。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

それを見て彼女はすぐに自分に支給された武器を手に取って応戦しようとしたが、間に合わずそのまま下半身から丸のみにされてしまった。

「ぁっ…ぁっ…ぁぁぁっ……むぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!」
「いやぁーっ!お尻っ!?お尻ぃっ、気持ち悪いっ!気持ち悪いのに、キモチイイよぉっ!いやぁぁっ!! 」

彼女はその勢いのまま首まで丸のみにされてしまい、ぐにゅぐにゅと動く身体に気持ち悪さと同時に気持ちよさ、特にお尻のあたりにそれを感じて悶え始めてしまった。

そうしてしばらく怪物が快楽や気持ち悪さに悶え続ける彼女の身体を咀嚼し続けていると、いきなり彼女を勢いよく吐き出した。

(うぅ……助かったの……?ってなぜか身体が変な感じするぅ……)

それを受けて彼女は何とか助かったと感じたが、それとともに自分の身体に何かしらの異変を感じ始めた。

そしてその原因はすぐに判明した。それは……

198Like? Like♥ ◆L9WpoKNfy2:2022/01/11(火) 00:18:14 ID:Y7gKaevk0
「きゃぁぁっ!なんでっ!なんで私、ハダカになっているのぉっ!!!」

自分の衣服が脱がされており、下着姿になっていることだった。

それとともに彼女は、先ほどの怪物が自分の衣服をはぎ取ったことに気が付いた。

「……よくも女の子を辱めてくれましたねぇっ!」

彼女はそう言うと、さきほど自身のデイバッグから取り出したマシンガンを使って、自分を丸のみにした怪物に無数の風穴を開けた。

そうすると怪物は全身をゲル状に溶かしながらこと切れ、それとともに先ほどマエストラーレからはぎ取った衣服を吐き出したのだ。

「よかった〜、なんとか服は無事だったみたい……ってやっぱり、こうなってますよねぇ……」

彼女は怪物が自分の衣服を吐き出してくれたことに安堵したが、彼女が懸念していた通りのことが起きてしまっていた。

「うぅ……ヌルヌルするぅぅ……、気持ち悪いよぉ……!」

それは、怪物の体液によって服がヌルヌルになっていることだった。

そして彼女はそのヌルヌルになった自分の衣服を拾い上げ、涙目になりながらつぶやくのだった……。

----------------
それからしばらくして……

(ちょっとどころじゃなくかなり恥ずかしいけど…あんな状態の衣服を着るわけにはいかないもの…しょうがないよね……?)

彼女は下着姿のまま、片手にサブマシンガンを持った状態で移動を始めていた。

あのままあそこの建物に留まっていればまたあのような目に合って、今度は下着まではぎ取られてしまう可能性を考えての行動だった。

それならほかの衣服を探したうえで建物を出るべきではないかという意見もあるかもしれないが、それ以外にも彼女がすぐに出ることを決めた理由があった。

―― 『みんな、楽しんでる?』

それはまだ建物の中にいるとき流れてきた放送と、放送とともに確認した名簿の内容にあった。

確認した名簿の中にはシロッコだけではなくリベッチオやグレカーレといった、彼女の妹たちの名前が書かれていたからだった。

(シロッコだけじゃなくて、リベッチオやグレカーレのことも探さないと……!みんな、必ず助けるから……!)

それらを受けて彼女は一刻も早く妹たちと合流しなければならないと考え、他の衣服を探す時間も惜しいといった様子で建物を出ていったのだ。

そんな、痴女と言われても仕方ないような姿をした状態の彼女の今後は、一体どうなるのだろうか……?

199Like? Like♥ ◆L9WpoKNfy2:2022/01/11(火) 00:19:17 ID:Y7gKaevk0
『C-3/深夜/1日目』
【マエストラーレ@艦隊これくしょん】
[状態]:シロッコを救えなかった後悔、下着姿
[装備]:トミーガン@現実
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2(確認済)、マエストラーレ級姉妹の制服(体液などでヌルヌル)
[思考・状況]
基本方針:殺し合いから帰還する
1:シロッコをハイグレ人間から取り戻す
2:リベッチオ、グレカーレなど他の妹たちも探す
3:協力できそうな人がいれば協力する
4:ヌルヌルになった服を、どこかで洗いたい。
[備考]
ライクライクに呑み込まれたことで衣服を脱がされました。
またライクライクが吐き出した衣服をデイバッグにしまっています。


『支給品紹介』
【トミーガン@現実】
 禁酒法時代のアメリカ合衆国内において、警察とギャングの双方に用いられたことで有名になったサブマシンガンで、
 正式名称は『トンプソン・サブマシンガン』。
 また『トミーガン』という愛称のほかにもその銃声をタイプライターの打鍵音にたとえて『シカゴタイプライター』とも呼ばれている。
 頑丈な構造を持ち、耐久性と信頼性に優れ、5kg近い重量のおかげでフルオート射撃を制御しやすいとされる。


『NPC紹介』
【ライクライク@ゼルダの伝説シリーズ】
 イソギンチャクから触手を取り除いたような、独特な形状をしたモンスター。
 ゆっくりと振動するような動きで移動するなど動きは素早くないが、
 人間が近づくと頭頂部の口を近づけて丸のみにし、グッチュグッチュと卑猥な動きと共に咀嚼してくる上に、
 吐き出す際に装備品や衣服を奪ってしまうなど結構いやらしいことをしてくる。

 なお吐き出された後にこのモンスターを倒せば衣服などは戻ってくるが、
 あまり時間がたってしまうと消化される可能性があるので早めに倒すのが吉。

 完全に余談だがその独特な形状を『チクワ』や『〇ナホ』に例えられたりもしている。

200 ◆L9WpoKNfy2:2022/01/11(火) 00:20:04 ID:Y7gKaevk0
投下終了です

以上、ありがとうございました。

201 ◆mAd.sCEKiM:2022/01/31(月) 22:13:26 ID:Wz1rXkJw0
先日投下しました拙作「大変態変、だゾ」および「『ドミネイター』」についてですが、
ほんの少しですが一部抜けてた部分があったのと、
エロパート(『ドミネイター』の方)の部分に少し描写と会話加筆してwikiに収録しました。
展開には全く影響ありません。
遅れての連絡となってしまい申し訳ございません。

202 ◆QUsdteUiKY:2022/03/17(木) 16:10:00 ID:254x66bw0
ゲリラ投下します

203 ◆QUsdteUiKY:2022/03/17(木) 16:12:12 ID:254x66bw0
「あ、ありのまま今起こったことを話すのよ?私が変態野郎に鉛玉をぶち込もうと決意してたら、それを上回るくらいキモくてイカれたド腐れ変態カマホモ野郎が現れたのよさ。な、なにを言ってるのかわからねーと思うけど、私も何を見せられたのかわからねー!

 キモすぎて頭がどうにかなりそうなのさ。ちるちるのお漏らしだとか、通販で何でも買えるぼっちだとかそんなチャチなものじゃ断じてねー!もっと恐ろしい変態クソカマホモ野郎を見てしまったのよさ!!」

「きゃうん?」

 なにやら一人で大袈裟に力説している蒔菜にマロンは首を傾げる。
 ひとしきり言い終えた蒔菜は一息つき、ツッコミを続ける。

「そもそもプロデューサーとか音速の鬼って名前からして扱いがもうマロン以下なのよさ。アレか?プロデューサーって実は光宙(ピカチュウ)みたいにめちゃくちゃ変な漢字のDQNネームなのか?」

 プロデューサーと音速の鬼という死者の中でも特に浮いてる二人の名前に突っかかる。
 今時、光宙(ピカチュウ)のように変な名前を付けられる人も存在するが、それにしても意味不明な名前だ。意味不明だが光宙(ピカチュウ)のおかげでそういう名前の人がいるということも理解は出来る。

「とりあえずプロデューサーがそういうイカれた名前ってのはわかったのよさ。サンキューな、ピカチュウ!」

 入巣蒔菜は相変わらずのノリで子気味よく話す。
 殺し合いという行為自体に慣れているわけじゃないが、場数は普通の人間よりは踏んでいる。それに彼女には戦う術もあるので、それほど動じない。

「問題は音速の鬼なのよさ。音速の鬼って……もはや名前でもなんでもなくね?って感じなんだけど、マロンはどう思う?」
「わん!」
「ふむふむ。やっぱりマロンも音速の鬼がへんなやつって思うのね。マロン……おまえ、ちゃんとした名前をつけられて良かったな!
 音速の鬼なんて意味不明な名前付けられたら、人生やってらんないのよさ」

 ちなみにプロデューサーも音速の鬼もただの役職名のようなものなのだが、蒔菜はそんなことに気付いていない。
 光宙(ピカチュウ)なんて意味不明な名前を知っているからこそ、何故かプロデューサーや音速の鬼も実名だと思ってしまった。キラキラネームの弊害である。

「あと優勝してもあのキモカマホモのキスなんて私はいらないのよ?マロンはいる?」
「がう!がう!」
「やっぱりキモすぎてマロンにも無理って感じ?まあマロンもああいう変態には気を付けるのよ?」

 そんなやり取りをしながら、蒔菜は参加者名簿を眺める。

「峰・理子・リュパン4世って、こいつもパチモン臭がすごいのよさ……。マロンもパチモンには気を付けるのよ?」

 ただでさえ長くて目立つ上、リュパンというどこかで聞いたことがあるような理子の名前に必然的に目がいく。
 ちなみに彼女はパチモンなんかではなく、実の本人の子孫であるが蒔菜はそんなこと知らない。
 他にもシャーロック・ホームズなど見覚えがある名前に目がいくが、いちいちつっこんだらキリがないので無視した。

「ハイグレ魔王とか、コックカワサキとか謎の連中がいるのにマグロマンが居ない……。これはつまり主催の変態共がマグロマンに恐れを為してるということなのよさ!!」
「わん???」

 蒔菜特有の謎会話にマロンすらも困惑気味である。

「とりあえずパパとタナトスさんくらいしか知り合いは居なさそうだけど……ヒースってホモが復活してるのは厄介なのよさ」

 ヒースオスロ。
 雄二と非常に強い因縁を持つ男であり、蒔菜も多少は知っている。

「主催もカマホモだし、このバトロワはホモばっかなのか?マロンもケツの穴には注意するのよ?」
「わん!」

 蒔菜の言葉にマロンは力強く返事をする。
 犬のマロンでもマカオとジョマがそういう人間だということはなんとなく理解出来ているらしい。

204 ◆QUsdteUiKY:2022/03/17(木) 16:13:07 ID:254x66bw0

「マロン。今からマロンの飼い犬を探すのよさ。知ってる名前があったら教えるのよ?」

 それから暫く蒔菜はひたすら名簿に記された参加者を読み上げた――が、マロンは何も反応しない。どうやら彼の飼い主はこの場に呼ばれていないようだ。

「まあ、飼い犬が呼び出されたからといって飼い主まで巻き込まれるとは限らないか。私と仲良いさっちんが居ないのがある意味その証拠なのよさ」
「わん……!」

 マロンの自分の飼い主が巻き込まれていないことを喜ぶかのように鳴いた。
 しかし同時にそれはまだ暫く飼い主の元へ戻れない――もしかしたら一生戻れない可能性だってあるということになる。

「マロンのことは私が守ってあげるから、強く生きるのよ?」
「わん!」

 それでもマロンは諦めず、元気よく鳴いた。
 蒔菜は自分に支給された武器が雄二を取り戻した際に使った「オモチャ」であることに因果を感じながらも、マロンの頭を撫でる。

「……よし。じゃあ、カマホモ狩りを始めるのよさ!」

 それから蒔菜とマロンが暫く歩くと、そこには喫茶店のような建物があった。
 殺し合いの場には相応しくなく、エロトラップも何らない普通の喫茶店。
 そして特定の参加者にとって日常の象徴ともいえる場所――ラビットハウスが。

「ここが気になるの?」

 マロンが扉の前に立ち、尻尾をフリフリと振る。
 蒔菜は特にそれを拒む理由もないので警戒しながらも、ゆっくりと扉を開けた

【1日目/深夜/F-6/ラビットハウス】
【入巣蒔菜@グリザイアの果実シリーズ】
[状態]:健康
[装備]: 入巣蒔菜のバレットM82@グリザイアの楽園
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2、迷犬マロンの貼り紙@遊戯王OCG
[思考・状況]基本方針:さっさと変態野郎をぶっ倒してパパやみんなの元に帰るのよさ!
1:マロンのお世話は私に任せるのよさ!
2:パパ(風見雄二)やタナトスさん(風見一姫)と合流したいのよ?
3:マロンと一緒にこの建物を軽く見て回るのよさ
[備考]
アニメ版グリザイアの楽園終了後からの参戦。

【迷犬マロン@遊戯王OCG】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:飼い主の元へ帰る
1:蒔菜について歩く
2:蒔菜の温もりが好き
3:自分と同じネームプレートの狂犬のNPCはいったい……?
4:ラビットハウスに興味
[備考]
遊戯王カードについての知識はありません

【入巣蒔菜のバレットM82@グリザイアの果実シリーズ】
風見雄二を奪還する際に入巣蒔菜が使っていた狙撃銃。ピンク色

205 ◆QUsdteUiKY:2022/03/17(木) 16:13:52 ID:254x66bw0
投下終了です
タイトルはやっぱりホモばっかのエロトラップダンジョンはまちがってるのよ?です


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板