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辺獄バトル・ロワイヤル【第3節】

1 ◆2dNHP51a3Y:2021/06/25(金) 21:22:55 ID:riCoyL6w0
―――ソラを見よ、血染めの月が、世界を侵食(おか)す

614薄明のモノローグ ◆ZbV3TMNKJw:2022/06/24(金) 23:58:04 ID:WLkV25LM0


「......」
「ふぅ、ふぅ...」
「...おい、なんで着いてきやがる」

息を切らしながら追いかけてくる結衣をジロリと睨みつけるプロシュート。

「なんでって...兄貴を一人で放っておけるはずがないじゃないですかぁ」
「ドレミー、オメーは」
「行く当てもないですからね。それなら安定感のあるここにしようかと決めた次第ですよ」

返される言葉に、プロシュートはハァ、と深いため息を吐いた。

「『益子薫を助ける』っつー、オメーとの賭けの代償はもう払ったんだ。俺からすればオメーを護る義理なんざどこにもねえんだよ」
「でも、それでなくても兄貴はあたしを助けてくれたじゃないですか」
「...ソイツはただの気まぐれだ。もう事情は変わってんだ。戦えるドレミーはともかく、オメーはただの足手まといでしかねえんだよ」

ワザップジョルノから齎された情報により、プロシュートの行動方針も選択肢が増えた。
予定通りに抗って勝ち取るか―――優勝して、帰還し情報を持ち帰るか。
後者を選んだ場合、先ほどまで集っていた面子はもはや邪魔になっていた。

もとは敵対していたチームの一員っぽいナニか。
気まぐれが故にいつ裏切るかもわからない妖怪。
誰よりも強い力を持ちながら、感情でしか剣を振るえないマンモーニ。
馬鹿みたいなお人よしのガキ共とそれを賞賛し護ろうとする青臭い小僧。
よくわからない小娘。

抗ってゲームを破壊する方面で進めばそれなりには頼れるだろうが、優勝を狙う場合にはなんのメリットもありはしない。
だから、能力の関係上という体裁で一足先に抜けた。

紛い物の鬼は死に、童磨とエスデスという能力の効かない猛者さえ倒してしまえればプロシュートにも優勝の目は訪れるからだ。

だというのに、結衣とドレミーは着いてきた。
変わらぬ調子で、特に結衣は未だに兄貴だなんて呼んで。

「わかったら帰れ。あいつらならオメーの好きな不殺も賛成してくれるだろうよ」
「...それでも、あたしは兄貴がいいんです」

再三拒絶されようとも、結衣は諦めない。
真っすぐにプロシュートを見据え強く言い放つ。

「兄貴が一人になって、誰にも頼れなくなっちゃったら、そんなの寂しいじゃないですか...!」
「...本当にわからねえな、オメーの言ってることは...」

プロシュートは怪訝な顔を浮かべる。

気の迷いで一度助けた程度で、ここまで信頼どころか、こっちを気遣うようなことまで言い出して。
長年組んできたチームでもないのにどうしてそこまで構ってくるのか。
荻原結衣という人間のかたくなさが、本当にわからない。

ならばさっさと殺して支給品なり首輪なりを奪ってしまえばいいではないかとも思う。
プロらしく、必要であれば躊躇いなく殺せるだろう。
だが、鬱陶しさに折れて始末しました、なんて結末は彼女に負けた気分になってしまいそうだ。

そんな己の気持ちにすら振り回される暗殺のプロを見ながら、やはり彼らからはいい夢が見られそうだとドレミーはにたぁと特徴的な笑みを浮かべるのだった。

615薄明のモノローグ ◆ZbV3TMNKJw:2022/06/24(金) 23:58:45 ID:WLkV25LM0


堂島たちが戦った学校の保健室。
鹿目まどかはそこのベッドで眠らされていた。

「なかなか目を覚まさないな」
「ソウルジェムとやらは精神にも影響するんだろう?もしかしたら彼女もそのせいで過眠になっているのかもしれない」
「そうか...」

横になるまどかを心底心配そうに見つめる真島。
そんな彼の姿が気にかかり、堂島は問いかける。

「真島くん。きみはなぜそこまでして彼女を護ろうとするんだい?」

聞けば、真島はまどかとはこの殺し合いで出会ったばかりだという。
だというのに、真島は己の命すら投げ出さんほどの熱量でまどかを護ろうとしている。
普通の人間の身でありながら、彼女以上に前線に立とうとしているのだから、疑問を抱くのも当然だ。

「昔の俺だったら組もうとすら思わなかっただろうな。けれど、俺は荻原に救われたんだ。あいつが俺に初心を思い出させてくれたから、今の俺がここにいる」

真島は簡潔にだが語った。自分がここに連れてこられる前にも殺し合いを強要されていて、その中で荻原の優しさに触れ、かつての願いを取り戻したことを。

「俺や黒河の強さはただ人を傷つけるだけのものだった。けれど、荻原や鹿目の強さはソレとは違う。
こんな戦場に於いても人を思いやれる優しさこそが、誰かを救えるんだと...そんな強さを持った奴らを護りたいと、俺は思うんだ」
「...そうかい」

堂島は、真島へとやわらかい視線を向けつつ立ち上がる。

「真島くん。きみもあまり気を張らず休むといい。放送で佐神くんが呼ばれなかったことから、エスデスが興味本位で戻ってくる可能性は高いからね」
「...そうだな」

まどかの介抱を真島に任せ、堂島は部屋を後にする。

(本当の強さ、か)

真島の話を聞いて、堂島は思った。
理想的だ。
確かな優しさを持った人間が周囲を救い、人を変え、世の中を良くしていく。
まさに佐神善という少年を通して抱いていた理想の形がここにある。

(そうか、彼女は...似てるんだな、佐神くんに)

堂島はまどかについて知っていることはあまりない。
けれど、これまでの行動を振り返れば自ずと重なってしまう。
普段は弱気だけれど、優しさを芯にした強さはぶれず。
他者を護るために頑固なほどに無茶をして。
いざという時は己の手すら汚す覚悟を抱いている。

(死なせたくないな、彼女たちを)

『俺は殺したのにか』

616薄明のモノローグ ◆ZbV3TMNKJw:2022/06/24(金) 23:59:14 ID:WLkV25LM0
逃がさないと言わんばかりに、死者の声が肩に手を置かれる。

『あいつは許してどうして俺は殺したんだ』
「――――!」

声にならない悲鳴をあげて振り返る。
そこには、切断された己の生首を抱えて佇む益子薫の姿があった。

『そうやって貴方は選り好みするのねぇ』

また別の声が纏わりつく。
堂島が心臓を貫いて殺したミスティが、胸元から切断面を覗かせ大量の血を流し立っていた。

『人を助ける為に残って洗脳された薫ちゃんは貴方にとって悪党で、自分の意思で殺したあの子は悪党じゃない。
やってしまったことは同じなのに、貴方の好き嫌いで死ななきゃいけないなんて、なんて可哀想な薫ちゃん』
『それが貴方でしょう。感情任せにしか剣を振れない、ヒーロー気取りの殺人鬼。認めなさいな、貴方に誰かを救うことなんてできないと』

クスクスと嘲笑うミスティと霧島の声が、堂島の擦切った精神をさらに疲弊させていく。

(私に...どうしろと言うんだ...!)

『簡単なことよぉ』
『俺たちみたいにその剣で身体をぶったぎって』
『何も為さずにさっさと死ね。それが貴方が死者に報いる唯一の方法ですよ』

「...!」

虚空に向けて、幻影をかき消すように腕を振るう。

「死者は黙っていろ...私は救うんだ...そのためにヒーローに...!」

自分に言い聞かせるように呟く堂島。
そんな彼の背中は余りにも小さく、誰よりも頼りなかった。

617薄明のモノローグ ◆ZbV3TMNKJw:2022/06/24(金) 23:59:37 ID:WLkV25LM0


(ようやく吸収し終えたよ)

童磨はふぅ、と息を吐く。
噛みちぎられた下半身はある程度復活し、大雑把にではあるが元の身体もほとんど再構築されていた。

「いやあ驚いたなぁ。まさかあんなにも再生が遅くなるとは思わなかったし、もう少しズレて牙が頸に食い込んでたら死んでたかも」

童磨が一命を取りとめたのは幸運という他なかった。
堂島が蹴飛ばしたからこそ食われたのだが、その威力の調整がなく、首を噛みきられず上体だけ飲まれたからまだ生き延びており。
累の父が近づいてきてくれたから、彼を吸収することが出来て。
まさに薄氷を履むが如し。
どれか一つでもズレていれば、童磨はこの殺し合いから退場していただろう。

「ありがとう名前も知らぬきみよ。累くんが生き返っていたら、きみの雄姿はしっかりと伝えてあげるからね!」

吸収の際に手に入れた首輪に語り掛ける。

「さて、再生も無事に始まったことだし、終わったらまだまだ救ってやらないと」

童磨は呑気に両腕を伸ばしながら待つ。
哀れな参加者たちを救うために。勝ち残り、教祖と鬼としての役割を果たすために。

名もなき鬼は誰にも惜しまれることなく、そんな鬼の糧となった。
童磨が思い出さなければ、誰も彼を惜しむ者はいない。
それが、父という役目を果たせなかった紛い物の鬼の末路だった。

618薄明のモノローグ ◆ZbV3TMNKJw:2022/06/25(土) 00:01:51 ID:JIg/8b1Y0
【????@血と灰の女王 死亡】
【累の父@鬼滅の刃 童磨により吸収され死亡】




【C-4/一日目/朝】

【童磨@鬼滅の刃】
[状態]:疲労(大)、至る箇所の欠損(累の父の身体捕食により再生中)
[装備]:鉄扇×2(片方ほぼ融解)@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2 妖弦フェイルノート@Fate/Grand Order
[思考・状況]
基本方針:帰るために、力を取り戻すために人を喰らう。
0:ひとまず体力の回復を待ち、そこから堂島達を救いに向かうか準備を整えるかを考える。
1:次会った時こそ美鈴ちゃん達を喰べてあげる。
2:ナスタシアや桐生のような『かわいそう』な相手を『救う』
[備考]
※参戦時期は無限城編よりも前です。
※主催により上弦の弐としての力が抑えられています。少なくとも「結晶の御子」が使えません。
※無惨の呪いの有無については後続の書き手にお任せします。

【B-2/一日目/朝/学校】

【堂島正@血と灰の女王】
[状態]:精神的な疲労(絶大)、疲労(絶大)、身体にダメージ(中)、佐神善の死を受け入れる覚悟(?)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:生き残り正義のヒーローになる。
0:ひとまずまどかたちと行動する。
1:日ノ元士郎を討つ。そのあとは...?

[備考]
※参戦時期は101話より。

[備考]
※参戦時期はBルート死亡後より
※魔法少女やまどかについて大雑把に聞きました。

【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:出血(大、止血済み)、四肢に引きちぎられかけた青あざ、全身にダメージ(大)、疲労(絶大)、髪の半ばほどを消失、魔力消費(絶大)、気絶
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
基本方針:誰も死なせず殺し合いを止める。
0:...

[備考]
※参戦時期は3週目でマミを殺した後。




【真島彰則@リベリオンズ Secret Game 2nd stage】
[状態]:疲労(大)、鼻血(止血済み)
[装備]:Jのメリケンサック(両拳)@魁!男塾
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:正しき道を歩む。
0:堂島と共にまどかを助ける。
1:蒔岡彰に興味。やはり玲の弟のようだな
2:荻原なら変わらずやっていけるだろう。

619薄明のモノローグ ◆ZbV3TMNKJw:2022/06/25(土) 00:02:15 ID:JIg/8b1Y0
【B-2/一日目/朝/どこかの民家】

【古手梨花@ひぐらしのなく頃に 業】
[状態] 精神復調、後頭部にたんこぶ、精神的疲労(大)、疲労(大)、ボミオス状態、舌を改造
[装備] いつもの服、インパスの指輪@トルネコの大冒険3(英吾の支給品)
[道具] 基本支給品、不思議な杖三本セット(封印の杖[0]、ボミオスの杖[0]、ふきとばしの杖[0])@ドラゴンクエスト外伝 トルネコの大冒険 不思議のダンジョン
     ランダム支給品(0〜1)
[行動方針]
基本方針:繰り返しを脱する手がかりを掴む
0:生き残り惨劇の舞台を壊す。
1:沙都子...
2:頑張れるだけ、頑張る。
3:三島...ごめんなさい
4:あれは人工呼吸だからノーカン...ノーカンよ...

[備考]
※参戦時期は16話で沙都子に腹を割かれている最中(完治はしています)
※ワザップジョルノ、プロシュートを危険人物と認識しています
※ミスティの黒針の効果で興奮すると感度が増して体力と引き換えに他者の体力を回復させる唾液が分泌されるようになりました。



【ワザップジョルノ@ワザップ!】
[状態]:主催者への怒り(極大)、全身にダメージ(中〜大)、全身やけど、疲労(中〜大)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[行動方針]
基本方針:主催者を訴え、刑務所にぶち込む
0:梨花を護りつつ脱出への糸口をつかむ。

[備考]
※外見はジョルノ・ジョバァーナ@ジョジョの奇妙な冒険 です。記憶も五部完結まで保持しているようです。
※ゴールド・エクスペリエンスも使えますが、矢をスタンドに刺してもレクイエム化はしないと思われます。
※CVは想像にお任せします。
※古手梨花、北条鉄平、プロシュートを犯罪者と認定していますが、梨花に対してはかなり軟化していると思われます。
※犯罪者の認定は完全な主観です。罪が重いほど対象に対する怒りは大きくなります。
※犯罪者対応は拘束が目的ですが、対応時に手加減はあまりしないようです。
※ワザップ状態が完全に解けてもジョルノ・ジョバーナ@ジョジョの奇妙な冒険にはならないようです。
※梨花の唾液を注入されて体力と怪我が少し回復しました。
※陰茎が生えたことによりワザップ成分よりもジョルノ・ジョバーナ成分が強まり、暴走も比較的緩和されたようです。

620薄明のモノローグ ◆ZbV3TMNKJw:2022/06/25(土) 00:02:53 ID:JIg/8b1Y0
【C-3/一日目/朝】


【荻原結衣@リベリオンズ Secret Game 2nd stage】
[状態]:疲労(小)、後悔、プロシュートに黄金の希望を見出している、悲しみ、堂島への複雑な感情(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜2、氷
[思考・状況]
基本:益子さんのためにもまずは生き延びる(可能なら益子さんとお買い物をしたい)
0:兄貴を一人にしたくない。
1:益子さん...!
2:兄貴にドレミーさんと私……これが続いてほしいな
[備考]
※参戦時期はepisode Cから 小屋の地下で黒河と心が通じ合う前
※プロシュートが裏の世界の人間だと理解はしています。
※スタンドなどはまだきちんと理解できていません。(なんか、よくわからないけど凄い程度)
※ドレミーの世界(幻想郷)について簡単に知りました。
※この殺し合いが終わったら、益子薫と買い物をする約束をしています。
※支給品の一つ、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカを使い切りました。




【プロシュート@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:負傷(大)、疲労(大)、ところどころに凍傷と裂傷、腹部にダメージ(大)
[装備]:ニューナンブ@ひぐらしのなく頃に 業
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:『情報』を持ち帰りチームに栄光を齎す
0:生き残る。少なくとも童磨・エスデスのような自分の能力が効かない相手が消えるまではゲームに乗らない。
1:ユイ・オギハラ……兄貴……か
2:レオーネの知り合い(アカメ)を探す。あったら言伝を伝える。※C3の貸本屋のこと
3:オレは死んでるのか?それとも、まだ生きているのか?
4:あれがワザップジョルノか...
[備考]
※参戦時期はブチャラティVSペッシを見届けてる最中です。
※此処が死者、特にロクデナシの連中を集めたものだと思っていましたが、結衣の存在やドレミーとの情報交換から今は生者死者入り交えていると推測しています。
また、自分はまだ死んではいないのかとも思い始めています。
※ドレミーとの会話で幻想郷について簡単に知りました。
※ワザップジョルノが護衛チームのジョルノなのか結論を下せず、半信半疑中です。


【ドレミー・スイート@東方project 】
[状態]:疲労(中)全身にダメージ(絶大)
[装備]:夢日記@ 東方project
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品0〜5 氷
[思考・状況]
基本方針:この殺し合いと言う酔夢が導く結末を見届ける
1:とりあえず、プロシュートの後をついていく(襲い掛かってきた者には対処する)
2:参加者が寝たとき、夢の世界へ介入する
3:妖怪とは気まぐれな者ですよ
[備考]
※参戦時期は東方紺珠伝ED後
※メフィスとフェレスも管理者であると気付きました(何の管理者かは、まだつかめていません)
※リリア―ナの刻を止める能力を知りました。
※夢日記より、サーヴァント達や第一部での顛末、・鬼滅の刃の鬼の体の構造・リベリオンズの首輪の解除方法、ギース・ハワードを知りました。
※プロシュートとの情報交換でプロシュートの世界について簡単に知りました。(スタンドの存在など)
※プロシュートのグレイトフル・デッドの能力を理解しています。
※累の父から基本・ランダム支給品を奪いました。

621 ◆ZbV3TMNKJw:2022/06/25(土) 00:03:33 ID:JIg/8b1Y0
投下終了です

622 ◆s5tC4j7VZY:2022/07/13(水) 22:12:53 ID:7FAjw23w0
投下お疲れ様です!
また遅くなりましたが第一放送突破おめでとうございます。
客将も登場して今後の辺獄ロワますます目が離せなくなりました!
英雄の条件
ついに上弦の弐の実力本領発揮ですね!
まどか・ドレミー・真島・プロシュートの連携を血鬼術で次々と対処する姿はまさしく強者の風格が読んでいて感じられました。
しょぼんとハノ字に眉根を下げ、至極残念そうな表情を浮かべるも、すぐに屈託のない笑顔に戻る。
↑いやぁ……この文はもう童麿の姿が鮮明にイメージできました!
ヒーローを目指す堂島にとって胡散臭い宗教と同列されるのは確かに我慢がならないだろうなと思いました。
そして一瞬頭に過ったが、直ぐに失望する先生には本当にせつなさを感じました……
また登場人物たちとヒーローの関連性は巧みな表現で上手いなぁと敬服いたしました。
あと個人的なのですが、ボミオスの杖の効果による梨花の「どおおおおおおお」には吹いちゃいました。

決壊戦線シリーズ
ついに訪れたギースとロックの出会いと戦い。
名簿が発表されたときから、もうこれは実現させるしかないでしょと思っていたので、読む前からワクワクしておりました。
そして、読んでいる最中自分の過ぎさりし少年心が燃えました!
「ロック、なぜ勝てないか教えてやる。お前は餓えを知らない。
 餓えを知らぬ狼が餓えた狼と対等であるはずがない。それだけだ。」
「即死させては実感が薄いだろうからな。今は手だけで済ませてやろう。
 ロック。これが動機だ、それが執念だ、それこそが餓えだ……覚えておけ。」
↑ギースなりの息子へ教える父の姿が見えました。
「───多分なんだがな。
『どんな状況でも真っすぐ前を見ていること』が、餓えた狼だと俺は思う。」
↑それに対するロックの返事がまた痺れました!
吸血鬼態ギースとインクルシオロックの超常バトルにさらに燃えるだけでなく最後のギースとロックの写真はもうエモイの感情しか残りませんでした。
一方個人的にこの作品で一番、語りたいのは愛により一つの愛の形を知った相葉晄の最後です。
春花がいないからこその迎えた結末だと個人的に思うのとロワコンペにおける単独参戦の良さの極致ではないかと思います。
本当に大作お疲れ様でした。

623 ◆s5tC4j7VZY:2022/07/13(水) 22:13:07 ID:7FAjw23w0
「だからわたしは」 薄明のモノローグ
「えっ、またアレを...?」
「事態は一刻を争うんです!もし貴女がなにもせず傍観するなら罪状を読み上げさせてもらいます。いいですね!」
「〜〜〜ああもう、やるわよ、やればいいんでしょ!」
↑梨花とワザップジョルノのこのやり取りめっちゃイメージ出来るし好きです。
またジョルノではなく”ワザップジョルノ”だからこそのプロシュートへの情報提供はなるほど!と思わずうなりました。
まどかへの体力回復する梨花……萌えました。
ミスティの最高の置き土産ですね。
「ふぅ...ご馳走様でした」
↑ドレミーに漢が見えました!
ワザップを【新入り】と呼ぶのも実にらしいですね。
「プロシュート!ドレミー!僕に力を貸してください!全ては勝利という『栄光』を勝ち取るため!いいですねッ!」
「正直、ここまで付き合う義理はありませんが...まあ、あの紛い物の鬼を排除できるなら手を貸しましょう。旅は道連れ世は情けともいいますし。ね、兄貴さん?」
「念押しするまでもねえ。アイツの面はもう見飽きてんだ...暗殺者の面目が潰れるくらいになぁ!」
↑いいですね……実にいいです。
塁の父も正に参加者にとって鬼であり、物語に華を添えました。
それぞれ別れたチームの行く末が非常に今後も気になりました。

(Zルートでソフィアに返り討ちにされた)軍服の男、藤田修平で予約します。

624その男、軍服につき ◆s5tC4j7VZY:2022/07/17(日) 22:25:24 ID:gG0oySDg0
投下します。

625その男、軍服につき ◆s5tC4j7VZY:2022/07/17(日) 22:25:40 ID:gG0oySDg0
War does not determine who is right – only who is left.
Bertrand Russell

―――ザッ

「ここか……おい、大丈夫か」
「ああ……問題ない」

男たちが到着したのはF-4
そこは、ある悪のカリスマが新たな力を得た場所。
また、とある男子高校生曰く”鬼くびれ大羅漢爆誕の地”
勿論、男たちの目的は聖地への観光ではない。
”力”を得るためだ。
そして、軍服の大丈夫は相手を気遣っている意味ではない。
協定を継続できるかという意味だ。
なぜなら、2人の間に絆という繋がりは微塵も存在しないからだ。

「これが、アイツが言っていた……」

一握の砂ならぬ一握の灰。
それを修平は絶望に染まり切った瞳で握りしめる。
爪が手の皮膚に深く食い込み、血が一滴舞い落ちる。
まるで、涙のように。
枯れた涙の代わりに流れ滴る。

(……)
軍服は冷めた目で修平を見つめ、先の放送直後の出来事を想起していた……

☆彡 ☆彡 ☆彡

626その男、軍服につき ◆s5tC4j7VZY:2022/07/17(日) 22:26:14 ID:gG0oySDg0

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!」

声にならない慟哭。
身を裂くような絶叫。
放送がブラフだったら。
何度もそう願う。祈る。
だが、頭が理解している。
”琴美は死んだのだ”と。
また守れなかった。

―――ごめん……修ちゃんだけは、死なせたくなかったから
―――ごめんね……修ちゃん

最初はどうしようもなくウザかった。
しかし、いつしかそれが当たり前となり、必要だった。
その声は生きる力だった。

(琴美は俺にとって……ッ!)

この辺獄の名簿にその名が記されていると知ったとき、今度こそ守ると決意したはずだった。
その決意と裏腹に出会うことはなく、放送でその名を呼ばれるのを聴く羽目となった
一体、誰に!?どうやって!?
慟哭と共に湧き上がる疑問と怒り。
怒りの対象。
それは、琴美を死に追いやった相手に、この悪趣味な催しを開いた双子に協力者らしき道化師。
そして、再び琴美を守れなかった己。

「……羨ましいですね、泣ける貴方は。――私は泣くことが出来ないんです。とうに流す涙なんて枯れ果ててしまって」

この殺し合いが開始された直後に出会った女の言葉がふと想起される。
泣けるのが羨ましい?
どこかだ。もう、こんな感情は抱きたくない。
なのに、またこの感情は俺を覆い包む。
幾度も振り払っても纏わりつく。
俺の眼から涙が零れ落ちる。
紅涙を絞る。

そんな修平の魂の叫びを尻目に義手の手入れ並びに支給品の確認をしながら、軍服は思案する。

(……38人か。どうやら俺たち以外にも乗っている奴らは結構いるみたいだな)

119人による殺し合い。
この6時間で大体3割の参加者が死亡したということとなる。
このハイペースで進めば、タイムリミットまでの3日も持たずに優勝者が決まるだろう。

(やはり、乗っている奴らよりも多く物資の確保ができるかが俺の命運を左右するな)

軍服は冷静に状況を整理する。
まず、前提としてこのままでは優勝での生還は厳しいと見通しているからだ。
あの忌まわしいゲームで脱落した身だからこそ楽観視できない。
さらにやっかいなことに参加者には先ほどの鬼といった超常の力を有した者もいることがわかった。
ならばこそ優勝の鍵を握るのは、この見たこともない技術も混ざっている支給品だ。
この童守公園にて先の鬼を撃破した4人組。
あれは、個々の力もあるだろうが、支給品による力も大きかったはずだ。
何も持たざる人間である自分が生き残るためにはやはり支給品の数が必須。
戦場でもそれは証明している。
豊富な物資の継続的供給が戦線を維持して勝利へと導く。
決して”根性”や”友情”で勝利をもぎ取ることなどできはしない。
物資の差を補うために愛国心を胸にバンザイ突撃を繰り返した大日本帝国軍がアメリカに破れたのがいい例だろう。

(それにしても、主催側からこちらに接触してくるとはな……)

正直、目の前にのこのこと姿を現したガキに俺は安堵した。
こいつらは案外たいしたことはないと確信したからだ。
戦場において、大将が前線に出るのは愚の骨頂。3流もいいとこ。
ナポレオンや戦国などの時代なら軍を鼓舞するために前線へ出るのも理解できるが、現代戦において大将がやるべきことは、戦場全体を見通し戦線を維持することに専念すべきだ。
自らを囮とする作戦や奮闘している味方を鼓舞するわけでないならばやはりズカズカと前線に出るべきではない。そうした判断もできない。
そして危険を考えずに悠々と敵兵の前に姿を現すだけでなく他人に作業を任せるなんて、自らの能力不足並びに現場の人材不足を教えているものだ。

627その男、軍服につき ◆s5tC4j7VZY:2022/07/17(日) 22:26:33 ID:gG0oySDg0
(つまり、あのガキ共とピエロはサバゲでいうなら”フィールドスタッフ”というわけか)

サバイバルゲーム……略してサバゲでは、運営スタッフの事をフィールドスタッフと呼ぶ。フィールドスタッフの主な役割はゲーム運営を行い、審判員を務めること。
まさに先の鬼門封じがいい例だ。
しかし、これは殺し合いであって、サバゲではない。
たとえ、己の腕に自信があったとしても、ホイホイ参加者の前に姿を現す必要はない。
そうすると安易に参加者と接触する奴らは稚拙としか評価できない。
そんなに参加者と接したいのであれば、夢の国のキャストにでも就職すればいい。
ジャングルクルーズのスキッパー(船長)とかどうだ?

「まもなくジャングル体験の出発じゃが、おやおやおや……ゴリラが一匹行方不明のようじゃ。お隣を見て、バナナを食べている者はおらぬか確認せよ」

「あんなところに一人寂しくいる可哀想な左の像さんに挨拶しようねぇ〜〜。あはははっ」

色々な意味で人気が出るであることは間違いなしだろう。

(とすると、やはり奴らの他にも”いる”とみていいな)

軍服はこれらの根拠からメフィスとフェレスにディメーンの他に出向かず座している運営者がいると確信する。
ま、もっとも軍服にはどうでもいいことだ。
別に彼の最終目標はこの殺し合いの主催者たちへの打破ではないのだから。

「犬のように吠えて頑張ってるねー……わんわん。
 ソフィアちゃんに殺されたのがそんなにトラウマなのかな?」

(せいぜい、俺を侮れ。俺は俺の存在証明が勝利なのだからな)

見下すように鎮座する赤き月を睨む。
そう、自らの生還。
それこそが軍服の全て。

☆彡 ☆彡 ☆彡

628その男、軍服につき ◆s5tC4j7VZY:2022/07/17(日) 22:26:51 ID:gG0oySDg0

そして、冒頭に戻る。

(琴美……俺に力をッ!!!)

意を決し、頭に灰をかぶる。
人外になっても構わない。
そうでもしないと、人である自分が優勝することは難しい。
俺の未確認だった最後の支給品は、鏡。
はっきりいって外れだ。口内に残るビター味がさらに心を苦くする。
ならやはり縋るしかない。
優勝して琴美を蘇らせる力を得ることができるのであれば、吸血鬼にでもなってやる。

―――バッ

…………

しかし。
修平の身体に変化は何一つ起きなかった。
ただ、灰が虚しく頭上から零れ落ちる。
まるで役目を終えた桜の花びらのように。
シンデレラには、フェアリーゴッドマザーは現れた。
同じように修平にはフェレスが現れた。
だが、フェレスはFairyではない。辺獄を管理するDevil。
修平に舞踏会への参加を与えることはなかった。
灰かぶり男は呆然と立ち尽くす。

(やはりな……)

予想していた顛末。
確証が得られないものなどこんなものだ。
今頃、あのガキは”うふふ……修平ちゃん。愛しい琴美ちゃんのために必死になって……辛くて見てられないよぉ……あはははは!”と嗤っている所だろう。
おそらくこの光景のためにわざわざ提供したのだろう。
つくづく俗物なガキだと思わざるをえない。

(無様だな……)

惨めな青臭さ。
見ていられない。
ため息をつく。
やはり、ああいった感情は生き残るうえで不要だ。
必要なのは、豊富な戦闘経験に大局観や総合的判断力の有無。
愛する者を失い、力を得るなどフィクションに過ぎない。
また愛する者を守り、自分が死ぬなどもっての外。
俺は死なない。必ず生還する。
己に言い聞かせるためか。
口に出す。

「戦場に愛など必要ない。……人生にもな」

【E-4/1日目/朝】

629その男、軍服につき ◆s5tC4j7VZY:2022/07/17(日) 22:27:10 ID:gG0oySDg0

【(Zルートでソフィアに返り討ちにされた)軍服の男@リベリオンズ Secret Game 2nd stage】
[状態]:健康
[装備]:ガッツの義手(ボウガン、大砲付き)、クロスボウ@現実 関の短刀@忍者と極道 バクダン岩のカケラx5@ドラゴンクエスト8 
     US M84 スタングレネード@PSYCHO-PASSシリーズ
[道具]:基本支給品×3(フェザー・絶鬼)、神戸しおの靴下@ハッピーシュガーライフ パンツァシュレッケ@ドラゴンボール
[思考・状況]
基本方針:生き残る。
1:参加者を襲撃し装備を増やす。
2:修平と組んで不要な参加者を減らしていく。それと背中を撃たれないように警戒も怠らない
3:ムラクモと言う男が持つ刀(村雨)を手に入れる。
4:戦場に愛など必要ない……人生にもな
5:運営共は意外とたいしたことないかもしれんな
[備考]
※参戦時期は死亡後です。
※考察からフェレスとメフィスさらにディメーンの他に中心人物がいると睨んでいます。

【関の短刀@忍者と極道】
絶鬼の支給品。
破壊の八極道の一人である夢澤恒星が所持している短刀(ドス)
ただの短刀ではなく極道から誕プレされた国宝級の刀匠による別注品。
匠の技で作られた短刀は祭下陽日による超絶高温でも刀身は無事であるほど。
匠の技って偉大(パネ)ェな…!!!
「ありがてぇ…!!ありがてぇ…!!!極道さんありがてぇ…!!!
充分だ!!!オレにはこいつがあれば…充分だ!!!」by夢澤恒星

【パンツァシュレッケ@ドラゴンボール】
絶鬼の支給品。
世界最悪の軍隊レッドリボン軍の兵器
シルバー大佐が悟空の筋斗雲を撃ち落とす時に使ったロケット砲。 弾は5発分支給されている。
モデルはドイツ軍が使用した「パンツァシュレッケ」
「………こぞう…レッドリボンのシルバー大佐をなめるなよ…」byシルバー大佐

【US M84 スタングレネード@PSYCHO-PASSシリーズ】
絶鬼の支給品。
アメリカで使用されているフラッシュバンや閃光発音筒とも呼ばれるスタングレネード
爆発すると同時にすさまじい閃光と爆音を発し、3〜5秒間ほど周囲の人間の視覚と聴覚を奪う非致死性兵器。
作中ではパスファインダーが使用した。
5個セット

【ばくだん岩のカケラ@ドラゴンクエスト8】
軍服の男の支給品。
投げると、イオ系呪文が発動するばくだん岩のカケラ。
広範囲に爆発する威力を有する。5個セット
「……メガンテ」byばくだん岩

630その男、軍服につき ◆s5tC4j7VZY:2022/07/17(日) 22:28:42 ID:gG0oySDg0
【藤田修平@リベリオンズ Secret Game 2nd Stage】
[状態]:ダメージ(小)、怒り・絶望(大) 頭上に火山灰
[装備]:コルトM1911A1@サタノファニ、
[道具]:基本支給品一式、、ビター・チョコレート×3@クライスタ ラーの鏡@ドラゴンクエストシリーズ
[思考]
基本:どんな手を使ってでも優勝して琴美を蘇らせる。
0:優勝する。琴美を蘇らせる。ただそれだけ
1:軍服と組んで優勝への道筋をつける。最後は殺す
2:どうすれば灰が使えるんだッ……!!!
3:琴美……ッ!!!
4:あの女(零)は……いや、もう今となってはどうでもいい。
[備考]
※エピソードA、琴美死亡後からの参戦です。
※放送で琴美の死を知り、様々な感情が渦巻いています
※このままの状況では、灰が適合することはありません。
※ラーの鏡はただの鏡で外れ支給品と認識しています。

【ラーの鏡@ドラゴンクエストシリーズ】
藤田修平の支給品。
魔法の力で変身した・させられた者を元の姿に戻す働きをもつ。
また、別作品では魔王ムドーの魔術そのもを打ち破って防御するなど強力。
もしかしたら、主催陣の魔術関係をも……?
なお支給品の説明書には”ただの鏡”としか書かれていない。

631その男、軍服につき ◆s5tC4j7VZY:2022/07/17(日) 22:28:56 ID:gG0oySDg0
投下終了します。

632 ◆EPyDv9DKJs:2022/07/18(月) 07:42:01 ID:c6UY3M3w0
投下お疲れ様です
遅れながら感想になります

>英雄の条件
まさに群像劇
誰もが生きあがいてるという強さと、
誰もが同じ方向を見ているわけではない、
人間賛歌を強く感じさせられる話だと思います
しかしその物語の主軸にいるのは鬼とヴァンパイアとゴアと、
人間からかけ離れた側の存在が軸にいたようにも感じます
ある意味と言うべきか、やはりと言うべきかは分かりませんが、
彼を止めるのはやはりまどかなんだなって、何処か落ち着いた気分になりました
ジョルノや梨花がミスティによってなんか色々斜め上なことになったり、
様々な変化と言うのも、この話の軸にあったのではないかなと勝手に思ってたり
プロシュートと結衣の関係がやはりとても好きです。Cルートの黒河さんだこれ

>その男、軍服につき
軍服の解像度の高さに脱帽しますわ
(この男に解像度の高さと言う概念あるのかとかは言わないで)
煽り散らしてきた主催を下に見れる芯の強さは中々のものですね
>だが、フェレスはFairyではない。辺獄を管理するDevil。
>修平に舞踏会への参加を与えることはなかった。
ここのあたりの文章がとても煌びやかに感じて好きです
ビターチョコのように結果は甘くはなく、苦いだけのもの
一部主催は「君は人間のままでこそだよ」とか言いそうですね。勿論ゲス顔で

それはそれとしまして、
少し気になるところと大分気になるところの2点がありまして
拙作の『決壊戦線』においてはまあ大なり小なり戦闘はあって、
特にパンプキンの一撃も病院の破壊はそれなりに目立つものだと思います
(流石に完全者が彼方に吹っ飛ぶ姿を肉眼で見れるかは別なので除外)
なので病院での戦闘を二人が一切気付かず北上できるのは難しいと思います
修平達が気付いて「現状向かっても勝てるか怪しい」と言うことでスルーなら、
別に武装の都合スルーしても特段おかしいとも思いませんので問題はないので、
態々言うことでもないような気はしますが一応念の為

いやまあそれは二の次でして、実際の気になるところは修平の行動でして
拙作における『dread answerまで後僅か』における描写で、
修平は『放送で琴美が死亡してた場合確実に軍服を殺しにかかる』ことを示唆しています
優勝の為には参加者の排除で現状同じ情報を持ち、かつ殺しやすい軍服とも書いてます
(絶鬼を見た都合、ただの人でしかない軍服を戦力とみなせるか最早怪しいでしょうから)
彼がヴァンパイアになったら(フェレスが言うぐらいなら便利な可能性はある)優勝の妨げになる、
という考えには十分行きつくはずですが、そこら辺何もなくて思わず驚いてしまったり

>なんてことはない行為だが、彼等にとっては此処が重要な瞬間でもあった

とも書いていたので戦うとか説得とか何もないまま、
そのまま北上して灰の場所到達とはいかないものになっています
今回もリレーしてくださった上に、前回は特に長々と細々と指摘したのもあって、
少々気が引けてしまうのですが……あ、勿論私が読み取れてないだけならそれに越したことはないです

633 ◆s5tC4j7VZY:2022/07/18(月) 08:59:54 ID:ebabcfo60
感想ありがとうございます。
また、気になる点にお答えします。
お気になさらず。私の不備ですので。

①『決壊戦線』の余波について
正直に申し上げますと、決壊戦線の周囲への影響については頭から抜けておりました。
申し訳ございません。
 辺獄の空に一筋の光が駆け抜けた───
↑軍服がそれを見て、E-4灰、それとムラクモと言う男が持つ刀(村雨)を手に入れる。決意を固める文を追加します。

②『放送で琴美が死亡してた場合確実に軍服を殺しにかかる』示唆について
まず、意図を汲み取れなかったこと申し訳ございません。
私としては→なんてことはない行為だが、彼等にとっては此処が重要な瞬間でもあったの後に書かれていた↓
今が一番簡単に殺せる瞬間でもあると言うことだが、
 もし、支給品で返り討ちに出来るものがあれば別だ。
 修平が今から確認する最後の支給品にも可能性はあるが。
から、軍服と修平の支給品次第ではそこで殺り合わない展開にもいけるかなと読み取りました。
私としては今のままでは琴美を蘇らせられる可能性が低いこと+軍服を殺す行動もとれなかった修平の苦さも込めて↓
俺の未確認だった最後の支給品は、鏡。
はっきりいって外れだ。口内に残るビター味がさらに心を苦くする。
ならやはり縋るしかない。
優勝して琴美を蘇らせる力を得ることができるのであれば、吸血鬼にでもなってやる。
と書きました。

長々と書いてしまいましたが、結論として軍服を殺す行動を思いとどまる文を追加いたします。

634 ◆s5tC4j7VZY:2022/07/18(月) 09:01:45 ID:ebabcfo60
修正案
①『決壊戦線』の余波について

ならばこそ優勝の鍵を握るのは、この見たこともない技術も混ざっている支給品だ。
この童守公園にて先の鬼を撃破した4人組。
あれは、個々の力もあるだろうが、支給品による力も大きかったはずだ。
何も持たざる人間である自分が生き残るためにはやはり支給品の数が必須。
戦場でもそれは証明している。
先ほど一筋の光が駆け抜けた。おそらくあれも支給品の力だろう。
やはり、当初の予定通りヴァンパイアになれるという灰と一撃で屠れるという刀は入手すべきだな。
……まぁ、もっともヴァンパイアになれるというのは胡散臭いが。
ともかく、豊富な物資の継続的供給が戦線を維持して勝利へと導く。

②『放送で琴美が死亡してた場合確実に軍服を殺しにかかる』示唆について

怒りの対象。
それは、琴美を死に追いやった相手に、この悪趣味な催しを開いた双子に協力者らしき道化師。
そして、再び琴美を守れなかった己。
放送で琴美の名が告げられた瞬間、ヤツを殺そうと考えていた。
だが、行動に移せなかった。
軍服の入手した鬼の支給品は当たりだった。
片や、俺の最後の支給品は……
芳醇な武器の数と俺の支給品を天秤にかけた結果、ここで行動に移しても即返り討ちに合うことは必然だ。
今、ここで死ぬわけにはいかない。
力……俺に必要なのは力。

「……羨ましいですね、泣ける貴方は。――私は泣くことが出来ないんです。とうに流す涙なんて枯れ果ててしまって」

以上です。

635 ◆EPyDv9DKJs:2022/07/18(月) 12:25:28 ID:c6UY3M3w0
それらの内容であれば、個人的には特に問題はないかなと思います、
迅速な対応ありがとうございました

636 ◆s5tC4j7VZY:2022/07/18(月) 20:29:00 ID:ebabcfo60
確認ありがとうございます。
また、気持ちよく読ませることができず申し訳ありません。
今後もどうぞよろしくお願いします。

637 ◆EPyDv9DKJs:2022/08/07(日) 19:23:57 ID:lXLW4h9Q0
投下します

638運命のリベリオンズメモリ ◆EPyDv9DKJs:2022/08/07(日) 19:25:53 ID:lXLW4h9Q0
 誰もが命懸けの戦いに身を投じてきた。
 故に、誰もが覚悟していることではある。
 追悼の為の名ではなく、ただ誰かを扇動する為の戯言。
 受け取らないという選択肢もあれど、彼女らにはできない相談だ。
 各々にとって関わりのある人物から、此処で浅からぬ絆を結んだ仲間がいる。
 ただの戯言などと一蹴できる程、彼ら彼女らはドライな性格ではない。

(結構多いな……広さ的に乗った奴が十人程度では足りないよね。)

 とは言え、だ。レオーネは例外になるだろうか。
 殺し屋と言うこの中で一番人の死と隣り合わせに生きてきた身だ。
 だから今更動じることはない。もし動じるとするならば親友一人だけであり、
 そのアカメも健在ではあるし、厄介であるドS将軍もまだ生存している。
 加えて侑、エレンと出会った参加者はとりあえず無事なのもあることだ。
 なので余り感傷には浸らない。なお二人については名前が出てないため、
 合流を急ぐものでもないと判断して放送から得られる情報の方を一先ず優先としていた。

(ま、期待はしてなかったが。)

 はるな、夕月の名には反応するが、
 それ以上の表面上に見えるものはなかった。
 征史郎にとってこれは予想されていたことだ。
 寧ろ、あれで生きていると思える奴は絶対にいない。
 あの文字通りの悪夢のような惨劇は紛れもない現実で起きた。
 不謹慎な言い方に聞こえるかもしれないが、あんな形で人の臓物を生で見るとは思わなかった。
 更にあの鬼くびれ大羅漢(ギースとは名乗っていた)が未だ生きているのは由々しき事態だ。
 三対一、しかもその内二人は明確な異能を以ってしても完全な優位に立つのに難儀した。
 今の戦力では手に負えないし、殺戮を捨ておくしかないというのは歯痒くもある。
 救いがあるならば、アルーシェがまだ存命であるということから移動先は別ルートの様子。
 此方に来ておらず東にも行ってないことから、西か南辺りにでも向かったとみていい。
 アルーシェと合流できればあの怪物や、怪物に比肩する連中相手にも戦えるだろう。
 そう判断してはいるものの、晴れた空でふざけ合ってみたかった仲間はもういない。

(よりにもよって、って感じね……)

 悠奈も精神的には強い人物。
 なので今更喚くことはしないものの、捨て置けない死者もいる。
 英吾や大祐と言った見知った名前もあるが、一番放送を聞いて危惧したのは修平だ。
 琴美はただ一人引き留められる唯一の存在であったものの、またしても命を落とした。
 こうなったら彼は最早止まらない。全員死ぬか、自分が死ぬまで戦い続けるのだろう。
 最初でさえ止められなかったのに、二度も死なせてしまった彼をどうやったら止められるのか。
 想い人である彰が呼ばれてない現状、自分は二度も死なせてしまった立場ではないのだから。
 何を言ったところで生きている側の物言いでしかなくなってしまう。



 各々が様々な考えを巡らせる中、考えることすらできない人物だっている。

「嘘、だろ……?」

 一人膝をついているミスターLがそれだ。
 同志であるドドンタス以上に、主君たるノワール伯爵が逝った。
 あり得ない。寧ろあってたまるかとでも言わんばかりの現実。
 あの伯爵が死ぬことはおろか、たった六時間でなんてことあるわけがないと。
 しかし征史郎の言った仲間の死が正確だ。ディメーンが煽り目的の虚言、
 などと一蹴できるわけがなかった。

(さて……)

 三人の死角にて、ただ一人拳を作っておくレオーネ。
 大事な人が死んで暴走する輩はいくらだっている。知り合いにも暴走しかけた奴はいた。
 同行してると言っても彼と、彼の言う伯爵たちが何をしていたかについては詳しくは知らない。
 ただ悠奈と一緒と言うだけの情報しか得られておらず、彼個人についてはまだ聞いていなかった。
 悠奈の方は先のギースとの戦いで答えを出しているので、信用を置いている方ではあるが。
 もっとも、伯爵の目的が世界を滅ぼすことなので、素性など聞こうものなら瓦解待ったなしである。
 そう、地味にこれは綱渡りでもあった。伯爵を敬愛している人物。
 運よくそれだけの情報しかないからこそ関係を築けてる綱渡りだ。
 脱出の目的も全員で脱出した後ディメーン諸共世界を滅ぼすことになる、
 彼の認識は薄くとも、もし成し遂げられるならば彼の行動はそういった話になるのだから。

「大丈夫?」

 今にも崩れ落ちそうな彼に悠奈が声をかける。
 出会ってからも伯爵の為に行動しようとしていた。
 自分で言う彰と同じか、それ以上に大事な存在なことは伺える。

639運命のリベリオンズメモリ ◆EPyDv9DKJs:2022/08/07(日) 19:27:23 ID:lXLW4h9Q0
「大丈夫、なわけがないだろう。
 我らが伯爵さまを、一体誰がやったって言うんだ。」

 震える声と共に地面に爪痕を残す。
 伯爵達を殺した輩は一体誰なのか。
 放送や支給品ではそれらを判断できる材料はなかった。
 何処の誰かは分からないが、絶対に許すことはできそうにない。

「分かってると思うけど、仇討ちもなしよ。」

 事実上仇でもある貴真であろうとも悠奈は殺すつもりはない。
 自分と行動を共にするということは、当然私怨も認めるつもりはなく。
 もし彼が踏み外すというのであれば、力ずくでも今の道に戻すつもりだ。
 大事な人を喪ったことで道を踏み外すなんて、二度と見たくないから。
 しかし、返された言葉は意外なものだ。

「俺は……伯爵ズの中でも新参者だ。
 だから伯爵様に対する理解はあのディメーンにさえ劣る。」

 ゆっくりと立ち上がり、言葉を紡ぐ。
 震える手からどれだけの憤りがあるかを物語る。

「けどわかる。伯爵様なら『残りの二人と脱出しろ』って命令するはずだ!
 よくは知らないが、ナスタシアやドドンタスは昔に伯爵様に助けられている。
 慈悲深いあのお方が、脱出を考えてない筈がない……なら、答えは一つだろう!!
 伯爵様の遺志を継ぐ! それがあのお方の部下である、俺のするべきことだとッ!!」

 もしナスタシアが聞けば『何を言っているんですか貴方は』とでも言わんばかりの返答だった。
 伯爵は部下に慕われてこそいるが彼女以外には伏せてる事実。自他含めて世界を抹消するつもりでいた。
 滅ぼした後に理想の世界を築くこともなければ、当然そこにはマネーラの言うイケメンパラダイスなんてのもない。
 伯爵自身さえも消滅するという算段であり、ドドンタスやマネーラだってこの事実を知らされていなかった。
 同様に彼もまた真意に気付くことはない。真意を知るものからすれば、愚者が如き滑稽な発言。
 ───しかし。その真意に気付かないがゆえに、いい意味で彼は道を踏み外していたのだ。
 ただ一人、四人の勇者が一人であった彼だけが残った伯爵ズで殺し合いを打破するべく行動している。
 洗脳は解けたわけではない。彼は未だにルイージではなく伯爵ズのミスターLとしての立場のままだ。
 赤は嫌いだし、勇者であるマリオ達一行がもしこの場にいたら、きっと今の状況でも敵対してただろう。
 彼がそのままの状態でありながらもマネーラのように踏み外すことがなかったのは、
 悠奈と言う、ヒーローのような人物に先に出会えていたからなのかもしれない。

「おー言うねー。タツミみたいだ。」

 見当外れもいい所の発言ではあるものの、
 素性を知っておこうかと考えていたレオーネも納得した。
 彼なりの意志が込められた発言に、今更素性など聞く必要もないと。
 一つ聞くだけで終わる可能性を孕んだ事態を、斜め上の形で回避する。

「だが! 殺した奴を数回は殴らせてもらうからな!
 殴るだけで気は晴れないのは分かってるが、そこだけは譲らないぞ!」

「……程々にね。」

 できればそれもなしの方向で行きたかったが、
 主君を殺されて憤らない家臣の方がおかしいと言うものだ。
 それに、同じく大切な人を喪った修平の件もあってか、
 何処か生返事のような風に返してしまう。

「まずは第一目標! 侑って奴との合流を───」

「待つのだ緑の奇行種。」

 走ろうとするミスターLをスカーフを掴んで引き留める。
 そんなことをすれば首が締まり悲鳴が上がるのは自明の理。

「殺す気か!?」

「すまん。咄嗟だったからつい。」

「と言うかいま奇行種と言ったな!
 俺は緑の貴公子だ! 間違えるんじゃあない!」

「詫びに食料であるトマトカレーをやろう。」

「露骨に赤を寄越すな赤を。なんだ征史郎。
 またなんとか条約とか素っ頓狂なことを言うなよ。」

「いやあれは僕の世界に存在する歴としたものだ。
 とりあえずそれは置いといて、放送で名前が呼ばれていないなら今は無事だ、
 向かう前にやっておきたいことがある。そして、それは大人数ではやれないことになる。」

 軽い前置きの後、征史郎が取り出すのは大祐の首輪だ。
 放送前に軽い情報交換はしており、それが彼の物であることは知っている。

640運命のリベリオンズメモリ ◆EPyDv9DKJs:2022/08/07(日) 19:29:34 ID:lXLW4h9Q0
「これをやるのは主催から隠し通すのは不可能だし、
 同時に死ぬ可能性も高い。嫌なら今すぐ見ざる聞かざる言わざる逃げざるだ。」

「一つ多くないか? と言うか逃げてないじゃん。」

「四ざるの時代だってあってもよかろうて。五人目の入隊募集中だ。」

「それ、四ざるの時代ねえじゃねえか……」

「はいはい茶番しないの。
 聞くだけでも主催の考え次第で死ぬかもしれないってことね、何をするつもりなの?」

 此処の三人はその程度で退く気などない。
 と言うより一人の考察程度で死ぬなら、そもそも征史郎を参加などさせないだろう。
 よほどの理由があるなら別だが、彼の世界は悠奈と殆ど変わらぬ一般的な世界だ。
 ただ一つ、何者かの道楽で人の命を奪い合うゲームが存在していたぐらいでしかなく。

「まずこれが本当に爆発するかを確認したい。」

 人を殺すにしては余りにも軽いそれ。
 人の命を握るにしては安さすら感じるシンプルなデザイン。
 これが主催が持つ生殺与奪の権と考えると、余りにも安っぽいものだ。
 だから征史郎は少し思っている。『これで本当に人が殺せるのか』と。
 爆発しないのであれば此処の当事者は全員秘密を知った以上消されるだろう。
 死ぬ可能性が高いというのは、つまりそう言うことだ。
 直ぐに合流しなかったのも余計な被害を出したくないから。
 もし事実を知った奴が抹消されれば、一気に最低でも六人死ぬことになる。
 殺し合いを打破するには余りにも大きく無駄でしかない損失だ。

 首輪の回収の際は盗聴の警戒をしていたが、
 爆破をやる以上絶対に相手に聞かれてしまう。
 いっそ誤認されることでの爆破がないように、あえて正直に行く。
 ついでにこれは不謹慎な話だが、死者が異様に多いというのもある。
 首輪の調達は(残ってるかは別として)さほど拘らなくてもよかった。
 スタンドのお陰で首輪の回収手段もあまり考えなくてすむのも強みだ。

「さて、忙しいのかこの程度は些事なのか。
 向こうが首輪を爆破すると言った気配はなさそうだ。」

 やってもいいんだな、ふりじゃないぞ。
 なんてふざけたことを抜かしながら三人には十メートル程離れ、
 征史郎は爆風を逃れられるように近くの塀にジッパーをつけて穴を開け、
 そこからスタンドで射程を伸ばした拳で地面に置いた首輪を殴ることで実験を行う。
 物質であるならば、首輪がドーナツのように簡単に切り分けられるのだが、

『ンンンンンン! おやめなされ。異能の干渉をすることはおやめなされ!』

 四人揃って『はい?』となるような間抜けな電子音声が流れた。
 初めて聞く男性の声。双子でもなければ、当然ディメーンでもない。
 誰の声だあれは、なんて思いながらもしっかりと瞬時に爆発は行われる。
 爆発の威力は見た目よりも派手で目視は完全にはできなかったが、
 人なら首から上が消失するだろうことが察せられる威力ではあった。
 流石に異能の干渉が拳で殴るという都合、征史郎の手は爆発に巻き添えとなる。
 とは言えスピードAのスタンドは伊達じゃない。あの威力を前に軽傷で済ませた。
 離れていた四人は今一度合流し、適当な家屋の布を包帯代わりにして応急処置を行い、
 終えた後にレオーネが最初に言葉を紡ぐ。

「何だあれ。」

 ツッコミどころしかなかった。
 いやなんだあの音声は。と言うかあの音声誰だよ。
 と言うよりそもそも一応不正行為してる奴に音声流す警告をしてから爆破するな。
 いや、これについては不正をしてるという向こう側が感知するためとも考えられるが、
 あんなよくわからない奇抜な音声なんて、別にでなくてもいいだろうて。
 言いたいことが別方向に多い。こんなのに命握られているのかと思うと、
 四人揃ってげんなりとした表情にならざるを得なかった。
 これを作った奴は、別の意味で悪趣味な奴だ。

「あれ、スピーカーよね……しかも音質悪いし。」

 主催が気付いたから警告したのではなく、
 単に首輪に内蔵されている機能だとは察せられる。
 爆発してわずかに残った首輪の欠片にスピーカーのようなものがあった。
 それっぽいものであって、そのパーツから音が流れたとも限らないが。

「で、だ。とりあえず爆発するということは分かったとして。
 三人に聞こう。『今の爆発で死なない参加者に心当たりはあるか』と言うものだ。」

「私は当然なしよ。」

「伯爵様でも難しいな。」

641運命のリベリオンズメモリ ◆EPyDv9DKJs:2022/08/07(日) 19:30:32 ID:lXLW4h9Q0

 悠奈は当然として、ミスターLにも該当する人物はいなかった。
 例え肉体派のドドンタスでもあの爆発では耐え切れず死ぬだろうし、
 伯爵の力であっても、コントンのラブパワーの機能次第ではあるものの、あくまで可能性があるだけ。
 確実と呼べるものではないのと、そも主催にディメーンがいる。対策ぐらい織り込み済みのはずだ。
 真っ先に制限としてやられそうなので、やはり確実性に欠けるものになる。

「いるよ。あれで死なない奴。」

 ただ一人、レオーネを除いて。
 確かにあれは人一人容易に殺せる。
 ただし『爆発の範囲にいれば』の話だった。
 アカメでも回避が難しいかもしれない威力ではあるが、
 時を止める力を持つエスデスであれば射程外に容易に逃げられる。

「一日一回しか使えないらしいし、多分制限もされてないと思うんだよね。
 だからもしあの爆発を見たら、あのドS将軍は躊躇うことなく首輪を外すよ。」

「時間を止めるって、想像もつかないわね。」

「ストップウォッチってアイテムもあったから身近な方だな俺は。」

「時間停止物の九割はガセとは言うが本物はいるものだな。
 では結論だ。この首輪『物理的に殺すことを想定してない』ものだ。
 いや、想定はしているものの爆発で殺せない参加者がいるのは確実に存在する。
 と言うより、僕からすればあの鬼くびれ大羅漢だって爆破しても殺せる気がしないぞ。」

「悪い、あたしにはそれの違いが分からん。」

「ルールにも書いてある『紋章』とやらが機能していると言うことになる。
 物理的に殺せないのであれば精神や魂を殺す、ありていに言う呪術的な物だ。
 そう言ったものであれば、どれだけ参加者が強くとも魂さえ殺せれば簡単に終わる。」

 爆発は副次的な者であり、本命になるのは紋章による呪いと言った類での、所謂呪殺。
 スタンド、帝具、ピュアハート。数々の異能を知る今ならば誰もが信じられるものだ。
 悠奈は少々その辺と縁が薄いものの、理解できない程頭が固い人物でもない。

「呪いか……まさかね。」

「どうしたの?」

「呪いには結構縁があってさ。」

 帝具の技術が使われてるのではないか。なんてことをレオーネは少し思った。
 一斬必殺村雨。アカメが持つ帝具はかすり傷一つで呪毒が心臓へ到達して死ぬ。
 解毒手段は存在しないというところについては、まさに呪いだ。

「その村雨とやらの呪毒かどうかは限らんが、
 爆発は演出で、本質は呪術的な物にある可能性は高い。
 つまるところ、ミスターLだったか。ロボットを作る技術力や僕の工学知識、
 現状はそれらを総動員したところで物理的には解除できても紋章の解除はできない。要するに詰みである。」

 遠慮のない征史郎の物言いに三人は言葉に詰まる。
 首輪を何とかすれば殺し合いに乗らない参加者もいるだろうが、
 その首輪の解除手段は現状知る参加者の誰に当たっても不可能だ。
 異能に密接な参加者と関わっても現状打開策があるようには感じられない。
 よるのないくにを駆け抜けたエージェントであろうとも、
 人の壊れかけた心を取り戻すリフレクターであろうとも、
 国の為にその手を汚し続けてきた帝具使いであろうとも、
 攻略法が現時点においては全くの白紙である。

『希望があるとするならば双子の知り合いだ。
 もう既に殺されてる可能性もあるかもしれないが
 とりあえずそのあたりを重点的に解決しておきたい。』

「もっともこれは首輪だけになってからの結果だ。
 生きてる人間についてる状態だと、また話は変わるやもしれん。」

 表面的には一先ず詰んでいると認識させればいい。
 まだ希望はあるので重要なところだけは筆談にしておく。
 絶対にない見当はずれなことを口にして、一先ず適当に誤魔化す。
 人についてたら威力が変わるなんてもの、絶対にあるわけがないのだから。
 首から首輪が離れた瞬間、それはもう『人についていない首輪』と同義である。

「さて、それともう一つ。僕はここらでお暇させていただこう。」

「おーい、どこ行くんだー? そっちじゃないぞー。」

 征史郎は悠奈達が向かってた場所とは別方向へと歩き出す。
 レオーネが引き留めるが、先程までの征史郎とは少し違う真剣な顔つきだ。

「すまんが、見解の相違的に僕は同行はできない。」

642運命のリベリオンズメモリ ◆EPyDv9DKJs:2022/08/07(日) 19:31:41 ID:lXLW4h9Q0
 殺し合いは反対している点は同じではあるが、向こうは誰も殺さずと来ている。
 和馬も同じ考えをするかもしれないが、はっきりいってそれは望みが薄かった。
 単に彼が現実的に物事を見ていて、効率的に行動するからと言うだけではない。
 人間を超越した本物の怪物を前にしては、不殺を貫くなどできるわけがないからだ。
 と言うより、自分がやろうとする首輪で試したいことは非人道的な行為で死ぬ可能性が高い。
 見解の相違からくる軋轢。完全に効率特化で行くつもりはないが、自分にとって確認は必須だ。
 先の見当はずれと思う考えも、大祐には簡単に首輪を外すことができたことを考えると、
 『生きた参加者の首を一度外して生きたまま首輪を外せるのか』と言う実験の延長線上にある。
 不殺を貫く彼女の前では絶対に試すことが許されない行為だ。

「そういう意味もあり君達の行動方針については、
 期待を込めて今回は星四評価とさせていただこう。」

「何の評価だ?」

「さあ?」

「……」

 止めるための言葉が見つからない。
 レオーネの時のような説得は彼には通じない。
 レオーネは既に死んで殺し屋としての役割を終えた。
 だからその道を選べた。もし彼女が生きてた時期の参加であれば、
 暗殺者として考えを曲げるつもりはなかったことは想像できる。
 彼女は変わらずどぶさらいの為、悠奈とは相容れずに別れていたはずだ。

 でも征史郎の場合は違う。
 死んで成せたかどうかわからないことを今成そうとしている。
 であればレオーネのような『生まれ変わる』という言い方は的外れだ。
 加えて彼は少なくとも仲間であった夕月のお陰で生きる道を選んで、
 下手人も最早殺さなければどうやったって止まらない怪物と化した。
 足を撃つ? 腕の筋を切る? 下半身不随? 無駄だ。どれをやっても治るはず。
 殺し合いを終わらせるという夢を未だに見ていることについては悠奈とは同じだ。
 しかし、同時に彼は現実と言う悪夢(Nightmare)を見すぎてしまっている。
 あれが許されるなら、あれに匹敵かそれ以上の参加者だってどこにいるか分からない。
 なんならレオーネの言うエスデスとやらも割と平然と殴り合うことをしてきそうだ。
 だから、どうあっても彼女の不殺主義を理解はすれども共感はできなかった。

「こちらは効率的に考えて人を死なせずに殺し合いを終わらせる。
 そっちは誰一人として殺さないで殺し合いを終わらせる。
 これをすり合わせるのは不可能だということは君もわかるはずだ。」

 ついでに言えば力尽くで止めるのも不可能だ。
 スティッキィ・フィンガーズは地面の移動が可能で、
 機動力はこの四人の中で一番優れていることになる。
 なので逃げようと思えば簡単に逃げることが可能だ。
 ついでに拘束したところで簡単に脱出も容易になる。

「そういうわけだ。情報提供はこれで終わらせておく。
 この情報をどう活かすかは其方次第だ……おっと忘れてた。
 それともう一つ、放送に遮られて忘れていたことを言っておかんとな。」

「あ、そうだったわね。」

 実は放送前に話していた気掛かりなことがあったのだが
 途中で放送が始まってしまったので忘れかけていたことを思い出す。

「僕は今のところこの四人のように別の世界からの参加を想定していた。
 ただ、君とはるなの話については明らかに過ごしてきた内容が違いすぎている。
 死者の参戦から過去か未来の可能性はなきにしも非ずだが、内容が違うのはおかしい。」

 悠奈からすればはるなは全くと言っていい程面識がなかった。
 しかしはるなは面識があり、そもそもセカンドステージすら始まってない。
 これでは二人の辻褄を合わせることは、どうあってもあり得ないことだ。
 出せる答えは一つだけになる。十人以上参加してる叛逆の物語の人物で、
 誰も到達していなかった一つの事実。

「パラレルワールドの可能性も出た。情報の確認は身内でも怠らないでくれ。」

「ええ、分かったわ。」

 今回は征史郎のお陰でたまたま回避できたこと。
 二人、三人と情報の齟齬は余計な不和を招きかねない。
 気を付けておかなければ足元をすくわれかねない案件だ。
 このことに気付けただけでもこの会話の成果は大きいものになる。
 まあ、さすがに貴真が味方になる可能性と言ったものはゼロだと思われるが、
 下手な発言で不和が起きない可能性を潰せてるのは悪いことではない。

「では達者でな。捨て置けない案件があった場合は博物館に行くか書いておく。」

 話を済ませて、征史郎は三人と別れる。
 スタンドの拳を飛ばして、さながらワイヤーアクションのような移動を試してみながら。

643運命のリベリオンズメモリ ◆EPyDv9DKJs:2022/08/07(日) 19:32:31 ID:lXLW4h9Q0
【D-3とD-2の境界線/一日目/朝】

【城本征史郎@トガビトノセンリツ】
[状態]:精神疲労(小)、ダメージ(中)、頭に包帯が巻かれている、手にダメージ(処置済み)
[装備]:スティッキィ・フィンガーズのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2(夕月×0〜1確認済み、はるな×0〜1確認済み、武器になりうるものではない)、スフォリアテッレ(箱入り)@クライスタ
[思考・状況]
基本方針:殺し合いに反抗する。
1 :はるなの遺志を継ぐ。
2 :ジャマイカ一行(悠奈)とは敵対はしないが、方針的に共同は難しいな。
3 :はるな、夕月、アルーシェの知り合いを探す。
   特に城咲充優先かつ、前者二名の知り合いにも謝っておきたい。
   ただ平行世界の件もあるのでその辺気を付けないと痛い目を見そうだ。
4 :スタンドでできることを試そう。できて当然と言う認知が大事だ。
5 :ついでにスタンドを使える奴がいるか探す、或いは警戒をしておく。
6 :あっさりと終わったがこれでいい。語られなかった物語とは、そういうもので。
7 :生きたまま首輪が外せるかを乗った参加者で試す。できないとは思うが。
8 :首輪について調べておく。
9 :……ふむ、生きて帰れたら生物学でも齧ってみるとするか。
   あ、パンドラボックスの齧るとは別の意味だ。
10:オカルトか。このご時世で必要とはな。

[備考]
※参戦時期は死亡後です。
※リベリオンズ、ブルーリフレクション、よるのないくに2の情報を得ました。
 ただしリベリオンズはAとDルートの為しゅうへい、充、琴美以外の人物とは話が合いません。
※おおよそスタンドでできることを把握しています。
※マネーラ、ギャブロ、藤丸立香の情報を簡易的に得ました。
※キヨスから幡田零の情報を得ました。(外見と妹を探していることについてのみ)
※二日目の昼にE-3にあるかなでの森博物館に人が集まる情報を得ました。
※ロックの危険性について知りました。 ※爆発させる能力はスタンドによるものではないかと推測しています。





「……追っかけた方がいいかい?」

 彼を見送る悠奈の表情は、
 複雑なものであることは伺える。
 あれは生きてた頃の自分のようなものだとは感じており、
 説得は無理だよなぁと薄々は察してもいるが。

「今度ばかりは、私にはどう言えばいいか分からないわ。」

 仕方ないと言えば仕方ない。
 殺す覚悟で挑んだ相手に二人は死んでいる。
 殺さずの覚悟を受け入れるだけの余裕なんて、どこにもないのだと。
 征史郎も自分と同じで誰かの遺志を受け継いで決めたことで譲れない。
 それと、修平と同様にきっとその考えを曲げられない相手にかける言葉が、
 今の彼女には見つけられないというのもあっただろうか。

「今はできることを優先しましょう。
 無事と言っても、長い時間放っておくわけにはいかないでしょ。」

 悩みながらも前へと進もう。
 既に三十人以上もの死人が出ている。
 きっとこの中には自分以上の腕の立つ人物もいたはずだ。
 いくら生きてると言っても、長い時間二人にさせるわけにはいかない。

「あー、ちょいと待ってはくれねえか?」

 またしても向かうことを中断する声が一つ。
 近くの路地から顔を出す男には面識はない。
 一々情報交換する手間を想うと、征史郎がいたときに来てほしかったと思う。

「ああもう時間食いそうなことになったわ。
 ミスターL、悪いけど先に向かっててくれる?」

「了解だ!」

 さらに時間を食わせるわけにもいかない。
 一人だけ先行させておいて安否を確認をさせておく。
 持ち前の高いジャンプ力を使い、軽快に屋根の上をピョンピョンと飛んで行く。

【D-3とD-2の境界線/一日目/朝】

644運命のリベリオンズメモリ ◆EPyDv9DKJs:2022/08/07(日) 19:33:25 ID:lXLW4h9Q0
【ミスターL@スーパーペーパーマリオ】
[状態]:精神ダメージ(特大)
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状態]
基本:悠奈のバカバカしい生き方とやらで主催共を叩き潰す。
1:ユウナ・レオーネと行動を共にする。
2:伯爵さまを殺した奴は殺さないがとりあえずぶん殴る。
3:ヒーロー……か。
4:ユウナ!ジュネーヴ条約にジャマイカって何だ!?
5:伯爵さまの遺志を継いでマネーラ、ナスタシアと共に脱出する。
6:工学だけではだめって、どうすりゃいいんだこれ。
7:一足先に侑達の所へ行くぜ!
[備考]
※参戦時期は6-2、マリオたちに敗北した直後
※悠奈からリベリオンズの世界について簡単な知識を得ました。
※名簿から伯爵さまたちが参加していることを知りました。
※悠奈から”拳銃”の脅威を知りました。
※レオーネからアカメの世界について簡単な知識を得ました。
※征史郎経由でマネーラ、ギャブロ、藤丸立香、キヨス、零、アルーシェ、夕月、ロックと関連人物の情報を得ました。


「おーやるね-。」

 レオーネもライオネルありであればああいう芸当は可能だが、
 帝具なしに移動しているさまには額に手を当てながら感心する。

「こっちも忙しくて悪かったわね。それでアンタは……!?」

 出てきた相手の強面に驚くことはない。
 そも黒河や瞳みたいな危険人物と出会ってるのもあるのだから。
 問題は彼の後ろ。絶対に忘れてはならないあの男が。

「雰囲気が随分変わってるなぁ。俺を殺した後、二人で楽しんでたのかい?」



 ◆ ◆ ◆ 



(ま、そりゃ無事だよな。)

 不動明の強さかは身をもって知っている。
 放送を生き延びることなど何ら問題はない。
 英吾や善と言った出会った人物からの情報はあれど、
 さして現状では有益な情報を得られてもいなかった。
 殺し合いの打破は分からなくはないがやはり彼にとって不動明が最優先だ。

「で、そっちは残ってよかったのか?」

「相手はヴァンパイアだからね。
 追わないというより追えないだよ。」

 貴真は日ノ元明を追うことをしなかった。
 単純に言えば彼女がヴァンパイアで身体能力に大きな差があるからだ。
 チーターローションも制限があるので足並みを揃えるために使うのは勿体ない。
 向こうも急ぎだ。足並みをそろえてくれるとは思わなかったのもあるし、
 政がちゃんと自分の言葉を真に受けてくれているのかを確かめておきたいのもある。
 英吾は先にやられたようだが、どこで自分のことを吹き込んだか把握できてない。
 そういう意味でも彼と行動を共にするのが一番いいものになると思って動向を選んだ。
 して、その結果がこれである。

 何食わぬ顔でゲームに参加しておきながら、
 暗躍してゲームをセカンドステージに移行させ、
 英吾を殺し、多くの人を死へと送り込んだすべての元凶。
 彼の『理不尽』によって想い人を喪うことになった存在。
 悠奈にとって、自分が知る参加者で何よりも悪たる相手。

「気を付けた方がいいよ。彼女がさっきも言った藤堂悠奈だ。」

「おいおい、赤い髪じゃないか。どう見たって髪緑だぞ?」

「確かにね。僕が殺した後にイメチェンでもしたのかな?」

 彼の知る悠奈とは髪の色も髪型も服装も違う。
 お陰で悠奈と出会う際はある程度注意しておきたかったが、
 準備する間もなく出会うこととなってしまった。

「……藤田修平の名前に覚えはあるな?」

 木刀を向けながら政が尋ねる。
 吹き込まれて警戒しているようではあるが、
 まだ半信半疑の可能性が高いと言ったところだった。

「あるけど、まさか修平に会ったの!?」

「追加で聞くが、アイツはそいつの仲間か?」

「……仲間、でいいのかしら。」

645運命のリベリオンズメモリ ◆EPyDv9DKJs:2022/08/07(日) 19:34:54 ID:lXLW4h9Q0
 今となっては決裂してしまった間柄で、
 果たしてあれは仲間と呼ぶべきだろうか。
 征史郎の言及がなかった場合『止めるべき相手よ』とはっきり言えた。
 ただ此処に来ている修平が過去の可能性もある。なので彼が出会った修平は、
 まだ殺し合いに懐疑的であった可能性と言うのも捨てきれなくなっていた。
 それを聞いてしまったこともあって、少し曖昧な返答をしてしまう。

「その反応を見るに、浅からぬ関係みたいだな!」

 だがその曖昧に肯定したのはいけなかった。
 乗った修平が探す相手であり、貴真による嘘の情報。
 更に修平を仲間とした。敵と認識するのは別におかしい話ではなく瞬時に肉薄。
 仮にも無数の暴徒や悪魔が憑依した学生を相手できる政の動き。
 銃を持っていたとしても悠奈が反応するには距離も近くて僅かに間に合わない。
 レオーネが木刀を拳で受け止めてなければ、ただでは済まなかっただろう。

「何を勘違いしてるかしてないかは知らないけど、
 あたしの仲間に手を出すって、言うならちょいと痛い目見てもらうよ?」

「やるねぇ、姉ちゃん。」

 反動を利用して後退して近くの路地に身を隠す。
 相手は銃を持っている。下手に身体を晒すことは死を意味する。
 同じように貴真も近くに身を隠しながら様子を伺う。

「さあ、あの時のリベンジマッチをさせてもらうよ。」

 次はどんな理不尽を与えられるか。
 表情には出さないが楽しみで仕方がない。

「やっぱりそういう手を使うのね、アンタはッ!!」

 案の定と言うべきか、やはり不和を招くことを相手はしてきた。
 正直予想はしていたことだ。なんせ素性を知る三人全員敵と言うだろうから。
 特にステルスの能力が極めて高い彼だ。既に犠牲者もいることだって察せられる。
 殺すつもりはないとしても、やはりこいつは死んだところで変わらないのだろう。
 この男は性根から腐りきっている。

「レオーネ、木刀の人はともかく貴真の方は気を付けて!」

「了解!」



 軍服の男と修平、英吾と真島、彰と充。
 この舞台では一年前のゲーム参加者が、一年後の参加者と縁を結んだ。
 同じゲームを知るが故に何かしらの行動方針が合致した者達。

 しかし此処に相まみえるのはそういった関係ではない。
 Aを知りZを知る少女と、彼女のルーツとも呼ぶべき男の対決。
 叛逆の物語の始まりとなる存在が此処でぶつかり合う。

【D-3とD-2の境界線/一日目/朝】

【藤堂悠奈@リベリオンズ Secret game 2nd Stage】
[状態]:健康 緑髪、ちょっと複雑
[装備]:コルトパイソン@リベリオンズSecret game 2nd Stage
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜2 予備弾数多め
[思考・状態]
基本:なるべく多くの人を助け、殺し合いを止める
1 :ミスターLとレオーネと行動を共に侑って子のところへ向かう。
2 :私の周りに集まるのってもしかして変なのばかりなのかしら。
2 :彰……私は……
3 :殺し合いに乗っていない参加者達を一つにまとめる。乗った参加者は無力化して拘束する。
4 :もう少し、威力が低い銃もほしいわね……あと、逃走用の対策も練らないと……
5 :たとえ、どんな状況でも挫けず信念を貫く。
6 :征史郎はどうするべきだったのかしら……
7 :鬼くびれ大羅漢に時間停止ってもう別次元じゃない。
8 :修平を止めないといけない。
9 :パラレルワールド、ややこしくなりそう。
10:精神や魂に詳しい参加者っているのかしら。
11:貴真!!
[備考]
※参戦時期はAルート、セカンドステージ突入語で修平達と別れた後
※緑髪に染めました。
※運営が死者を蘇らせる力を持っていると推測しています。
※ミスターLからスパマリの世界について簡単な知識を得ました。
※レオーネからアカメの世界について簡単な知識を得ました。
※金髪の男は簀巻きにするとケツイしました。
※パラレルワールドの可能性を認知しました。
※征史郎経由でマネーラ、ギャブロ、藤丸立香、キヨス、零、アルーシェ、夕月、ロックと関連人物の情報を得ました。

646運命のリベリオンズメモリ ◆EPyDv9DKJs:2022/08/07(日) 19:37:39 ID:lXLW4h9Q0
【レオーネ@アカメが斬る!】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(小)
[装備]:ホープナックル@グランブルーファンタジー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2(確認済み、ライオネルなし)
[思考・状況]
基本方針:メフィス達、覚悟できてんだろね。
1:民の為にもう一度戦いますかね。正義のマッサージ師として。
2:アカメを探……さなくても大丈夫だよね。親友を信じろって。
3:帝具なしでエスデスとかは会いたくねーな! あっても会いたくねーな!
4:優勝するしかなくなったらどうしよ。いや、正義のヒーローが勝つって決まってる。
5:ねぇユウナ。ジュネーヴ条約にジャマイカって何?
6:あのドS将軍に首輪で自爆してくんねえかな。いや無理か引っかからんよな
7:呪術的なのあたし論外ー! あの錬金術師とかなら知ってそうだけど殺しちまったわ!
8:噂の大臣みたいなクソ野郎のお出ましか!
[備考]
※参戦時期は漫画版死亡後。
※悠奈からリベリオンズの世界について簡単な知識を得ました。
※ミスターLからスパマリの世界について簡単な知識を得ました。
※征史郎経由でマネーラ、ギャブロ、藤丸立香、キヨス、零、アルーシェ、夕月、ロックと関連人物の情報を得ました。
※二日目の昼にE-3にあるかなでの森博物館に人が集まる情報を得ました。

【木刀政@デビルマン(漫画版)】
[状態]:左腕に矢傷、疲労(小)
[装備]:妖刀『星砕き』@銀魂
[道具]:基本支給品、ドス六のドス@デビルマン(ドス六の支給品)、チェーン万次郎のチェーン@デビルマン(万次郎の支給品)、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:不動を止める。
0:不動に一発お見舞いして目を覚まさせる。
1:修平と見知らぬ襲撃者・藤堂悠奈・彰・来夢・佐藤マサオ・針目・アーナス・日ノ元士郎に警戒する。
2:とりあえず北に向かうか。
3:こいつが藤堂悠奈か!
[備考]
※参戦時期は死亡後。

【崎村貴真@リベリオンズ Secret Game 2nd Stage】
[状態]:健康
[装備]:チーターローション残り9/10@ドラえもん、コルトポケットもどき@クレヨンしんちゃん ブリブリ王国の秘宝、まほうの玉×9@ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2(優木せつ菜の分)
[思考・状況]
基本方針 : この殺し合いにおける『理不尽』を楽しむ
1:政ついていくことを選んだら、まさかもう出会うとはね!
2:参加者に『理不尽』を振り撒く。
3:来夢ちゃん・せつ菜ちゃんの関係者に出会ったら、
  この顛末を上手く利用して、『理不尽』を振りまく。
[備考]
※Zルート死亡後からの参戦となります。



城本征史郎の首輪についての考察
・誰でも殺せる割に軽く、首が動かせないと言った不便さは感じない程度の存在感
・異能の干渉は首輪本体のみで、首輪をつけた参加者自身に対する異能の干渉は行える
・スティッキィ・フィンガーズで首から上を切り離せたが、これは死者にのみできると推測
 生きてる参加者にできるかどうかは試さなければ現状ではこれについての調査は不可能
・威力は首を破壊はできるが化け物を殺すとなると正直無理がある
・物理的にではなく呪術のような精神や魂を殺すことが目的かもしれない
 どういった術を使っているかは現時点で不明。双子の知り合いなら知ってる可能性はある
・首輪にいのうでの干渉をした場合に音が出る。あの声誰ぞ

647運命のリベリオンズメモリ ◆EPyDv9DKJs:2022/08/07(日) 19:38:38 ID:lXLW4h9Q0
投下終了です

648 ◆EPyDv9DKJs:2022/09/08(木) 06:35:19 ID:rs8kmgYc0
投下します

649BRAVE PHOENIX ◆EPyDv9DKJs:2022/09/08(木) 06:36:41 ID:hjuuoJcM0
 この血染めの空の下には百十九人の贄と呼ばれし魂があり、
 誰もが願いや想いを抱いて足掻き、その足掻きは時に虚しく、理念となる。
 だけど、その中のいくつかはきっと未来へ繋がっていき、抗う力となっていく。
 これから始まるのは、そんな物語。

「ンンンンン、ンンソンン───」

 放送も間近に迫ってる最中、
 芦屋道満がモニタールームへと足を運ぶと共に声を上げる。
 平安京の景観には似合わぬ機械的な部屋には、和服の姿は中々に浮いた姿だ。

「おやマンボ君。『ソ』なんか混ぜてどうだんだい?」

「マンボではございませぬ。リンボでございますれば。」

 もっとも、それについては観測者の役割を担った道化も同じだが。
 決して長い付き合いではないが、短い付き合いで人となりはよくわかる。
 普段とは違った謎の奇声だと言うことには気づいており、其方を見やった。
 いつもと変わらず、不敵な笑みを浮かべた胡散臭さがとてもよく目立つ。
 一方で二メートルを超え、露出した部位から見せる陰陽師とは思えぬ筋肉。
 見るからに謎としか形容できないような不可思議な肉体は伯爵ともども、
 独特な肉体を持っている彼からしても異質とも言える姿だ。

「で、何かあったのかい?」

「いえいえ。貴殿にとっては所詮些末事。
 気に掛けるようなことではありませぬとも。」 

 多くの贄が理念となっていく。
 そのことに何ら問題はなかった。
 すでに六時間で三十を超える魂が終末を迎えている。
 正直予想を超えるペースだ。下手をすれば一日経たず、
 この儀式は容易く完遂してしまい事に及ぶことができるだろう。
 以前の予定にあった天覧聖杯戦争では絶対にありえない速度だ。

(しかし、少々物足りませぬな。)

 道満が一瞥するのは四人の参加者。
 佐藤マサオ、十条姫和、アーナス、そして不動明。
 即ち八将神の四人。佐藤マサオについては所詮おふざけだ。
 危険種の薬を盛り込んで一人も、と言うのは流石に予想はしなかったが、
 元々さして期待をしていなかったので別によいものの、他は別である。

 メフィスが担当する十条姫和はまだ暴れている方だろう。
 しかし相手が悪い。龍眼の演算では追いつくことができない、
 更にこの舞台に於いて八将神含めても最強格に座する日ノ元士郎相手では、
 敗北するのは致し方なし。写シでほぼ無傷でやり過ごせただけ賞賛に値する。

 フェレスが担当したアーナスから段々と雲行きが怪しくなる。
 集団を形成すると言う他にはない独自の立ち回りを行うも、
 結果そのせいで多大な時間の浪費。結局解散する羽目になり、
 その上漸く二度目の戦いに出てみれば結局殺せたのは無力な少女のみ。
 加えて、勝ち取ったというよりは相手が無防備だったからと言うだけ。
 強さに対して見合った結果をまるで出せてないと言う体たらくを晒している。
 彼女が不機嫌そうに、先程鬼門を閉じに向かったのは記憶に新しい。

 そして、彼が担当した不動明。
 日ノ元同様最強格とされるドミノ・サザーランドを前に、
 あれ程の暴れっぷりを見せてくれたことは大いに歓喜した。
 問題はその一戦で消耗しすぎてしまったことで活躍の機会は減り、
 更には人間に触れあったことで自分を殺すように要求してしまう程だ。
 アモンの方を八将神にしたスイッチ形式と言う方針を取ったものの、
 そのせいで八将神としての活躍すら危ぶまれてしまうのは少々問題である。

 そう、此処までの顛末を聞いて気付いただろう。
 八将神は彼等が用意したはずの存在でありながら、
 殺した人数については芳しくない状況が続いていた。
 名簿の配布後にこの四人による殺害人数は、なんと僅か二名。
 しかも赤城みりあについては戦ったとは方向性が大分違う物であり、
 純粋に戦って死亡した者がいるとするのであれば、恵羽千たった一人だけ。
 明と姫和はその前にも人数を稼いだが、相手の半数以上が有象無象レベルのもの。
 象が羽虫を踏みつぶす程度の光景を見て、さして愉しみなど見いだせるはずもなし。
 不動明に正気に戻るよう必死にしがみついた彼等については、多少悦楽を感じてたが。

650BRAVE PHOENIX ◆EPyDv9DKJs:2022/09/08(木) 06:38:27 ID:hjuuoJcM0
 とは言えこれはよろしくない。
 みさえは撃つ覚悟ができてないものの、
 来夢とフェイトは必要に迫られたら殺すつもりでいる。
 そして追加の問題として、不動明にはそこまで強い支給品がないのだ。
 マサオには……適当に見繕った武器は別として危険種の薬による強化、
 アーナスにはスーパー宝貝、姫和には自身の御刀とある程度狙った支給品を用意した。
 このように主催にとっての駒だけあって、多くの支給品については見繕ったものだ。
 しかし不動明の場合は他の三人と違って、道具を使う意義が薄いという問題が生じている。
 使うぐらいならばアモンになってその力を行使する方が、却って邪魔にならないから。
 故に支給品はさして強力なものはなく、強くもない猟銃が支給されたのもその名残だ。

(これは、気は進みませぬが有事に備えた『アレ』を使うしかありますまい。
 多少は咎められるとしても、他の八将神と違い九人の記録。多少は許されるでしょう。)

「では、拙僧は彼等のもてなしでもいたしますかな。」

 自分がいくつもの悪魔人間の世界を経て招いた客将もいることだ。
 軽くご機嫌でも確認しに行こう……と言うのは建前で、別の目的の為動くとする。

「放送の演説を楽しみにさせていただくとしましょう。」

「事務的な物だから、期待はしないほうが身のためだよ?」

 返事はなく、霧散するように道満の姿は消えていく。
 騒がしいだけあって、一人になると途端に静かに感じてしまう。

「ンッフッフ。皆して勝手に動くねぇ。まあ僕も勝手に動くんだけど。」

 メフィスとフェレスは今『佐神善のような何か』にご執心だ。
 リンボの視線の先は隠すつもりがないのかわざとなのかは不明だが、
 どう見ても不動明の映ていたところを見ていたのは明らかなことであり、
 ああは言っていたが大方何かしら行動を起こすのだろうことは察せられた。
 であれば今自分は誰にも見られてない。客将もさして自分の存在に興味なし。
 六時間を生き延びた完全者とも再会を今の内に考えておく必要がある。
 約定を果たす前に、主催としての仕事をこなすべく準備を進めた。





 三十八人。
 出会った人数が合計でも一割程度の四人の中で、
 二割以上と言う大人数が既にこの舞台から去っている。
 しかし感傷に浸る暇はない。此処が禁止エリアになったこともだし、
 それを知らせる警告も首輪から鳴り響いたが、何よりも問題なのは───

「アガ、グッウッアアアアア!!」

 不動明の様子が危険な状態だったから。
 彼だけは放送について途中までしか聞き取れてない。
 今は頭を押さえながら、地面をのたうち回っていた。
 危惧されていたことは現実だった。あれは幻ではない。
 あの地獄絵図の贄となったのはドス六達で、それを描いたのは自分自身。
 仲間だと、兄貴だと慕っていた彼らを塵殺したのは自分なのだと。

「明君! しっかりしなさい!」

 彼の肩を抑えながらみさえが声をかける。
 様々な事柄に立ち向かってきた野原一家でも、
 悪魔人間なんて存在の介護の方法など知る由もなし。
 人間と言う範疇に於いての手段でしか対応はできない。

「みさえさん、早く……このままだと……」

 今抑えられてもいつスイッチが入るか分からない。
 了の言ったように、こういうところを人間は恐れたのだろう。
 隣人がいつ人類を脅かすであろう怪物となり果てるのか。
 怪物になっても共存が望めるのかが曖昧で不安定だから。
 だから悪魔狩りと言う概念は善良な人間でも発生するのだと。
 皮肉も、今の自分がその体現者となってしまっているが。
 納得こそしないものの、理解は僅かながら感じられた。
 感じたところで人間の方がよほど悪魔だと思うことは変わらないが。

「だめよ! 『理性をなくしたら』が約束よ!
 だったら今のあなたはまだ人間だから撃たないわ!」

 散々世界を救う規模の戦いに挑んできた身だ。
 ちょっとやそっとの事で折れたりすることはない。
 焼き肉を食う為だけに世界を揺るがす戦いに挑む気概の彼女が、
 この程度で諦めるような心の弱い人間であるはずがなく。

 そんな彼女だからなのだろうか、
 まだ辛うじて彼は理性を保てている。
 これが母親の強さと言う物なのだろうか。
 ひょっとしたら、本当に理性が保ててしまうのではないかと。
 僅かながらとは言え、そんな希望を持ってしまうほどに。

651BRAVE PHOENIX ◆EPyDv9DKJs:2022/09/08(木) 06:40:10 ID:hjuuoJcM0
 愛に対する愛情を攻撃への感情へと変えたマサオ、
 人間を怨敵と言う虚構の記憶を植え付けられたアーナス、
 言葉こそ正常だが、肉体は完全にこちら側と化した姫和。
 いずれも本来の人格の面影はあれど、同時に宿業により破綻した存在。
 しかし道満とサタンの発想により意図的なスイッチ形式にされた明は、
 アモンが実質八将神。つまり人間である以上は一番安定した精神を持つことになる。
 ともすれば、最悪このまま安定した精神を保ったまま行動ができる可能性は高い。
 アモンにだけ干渉したことで、不動明の状態ではただの参加者とほぼ相違がない故に。
 不安定にさせない限りは安定してしまう、それが道満における一番の懸念点だった。

『なりませぬぞ不動殿。御身の大事なご友人、
 そして牧村美樹殿を殺めたのは誰でありましょう。
 そう、気の違えた悪魔の心を持った人間でありますれば!』

 だから、この男は動いた。
 神経を直接逆撫でするかのような、
 言葉だけでも胡散臭さのある言葉が明の方から響く。

「え?」

 一瞬戸惑った三人だが、
 フェイトが彼のデイバックからその音源を取り出す。
 参加者に誰しも支給されている名簿やメモ帳が内蔵されたタブレット。
 ここから、流れるはずのない誰かの息遣いや物音が微かに聞こえる。

「電、話?」

『左様にて。不動殿の支給品が一つで、
 『通話機能が用意されたたぶれっと』であります。
 主催、或いは別の参加者に連絡可能で今のようなことも可能で。」

 本来であれば術式を用いれば容易に、映像付きの会話が送れるものだ。
 ただ、メフィスが姫和に接触をしていたのはある意味不具合の修正に近く、
 ディメーンが小言やフェレスが情報を提供も、ある種の雑談程度のもの。
 いずれも余り咎めはされないが、流石に術を用いた干渉では見過ごされない。
 なので、手間こそ掛かるがお咎めがない方の支給品を経由する形を選んだ。
 と言うより、そう言われぬように意図的に不動明の支給品にしておいた。
 万が一の際に『起爆剤』を用意できるようにと。

『そしてお初にお目に……いえ、
 この状況に於いてはお耳になられますな!
 拙僧、今はキャスター・リンボと名乗りましょう!
 貴殿等にとっては主催の者が一人と言えば済むことでしょうな。』

「主催の……!?」

 四人に動揺が走る。
 此処で主催者が一体何の用なのか。
 と言うより、正直それどころではないと言うのが本音でもある。

「リンボだかマンボーだかしらないけど、いきなり出てきてアンタなんのつもりよ!」

 タブレットをフェイトから少々強引に取り上げ、
 面倒な相手に対応するように電話対応をするみさえ。
 此方は今高みの見物をしている相手をする暇などないのだから。
 彼女が電話の対応をしている間にフェイトと来夢が明の対応に当たる。

『いえいえ。この六時間の奮闘ぶりを拝見しまして、
 二人はリフレクターとしても、魔法少女としての力もなく。
 しかしその志は屈することなく、我等へと向けられる……ンンンンン!
 故にッ! 賛美しましょう! 野原一家はいずれも過酷な環境にいながら、
 中心人物となってご活躍。幾度と嵐を巻き起こした御家族だけあるようで。」

「そうやって私の注意を惹くって言うならお見通しよ。
 こっちはその手の勧誘を飽きるほど見てきて慣れてるから。」

 此処で家族のことを態々出すと言うことは、
 明らかに此方の注意を電話に逸らしたいのだろう。
 だがそうはいかない。電話で彼等しか知らない情報を、
 より多く得ながらこっちだけが得をするように会話を続ける。
 事実、地味にしんのすけもひろしもある程度無事な環境にいると分かった。
 このままさらに引き出してやろうと。ある意味、それが一番ダメな行動だった。
 この男がそんな生ぬるい奴ではないのだと。彼女が知る以上の混沌であり悪だと。

『ンンン、これは失敬。一介の主婦と侮ってはいけませぬな。
 ですが、この状況は拙僧にとって聊か物足りないものでございまして。
 故に───拙僧から不動殿にささやかな、お望みのものを与えましょう。』

 何処か不気味なものを一瞬みさえは感じた。
 電話越しで、顔も知らないが下卑た笑みを浮かべたような。
 そんな雰囲気すら感じながら次に届いた音声に身を凍らせる。

『ひひひ、魔女め!』

『息の根を止めてやるぞ!』

『ち、ちがう、ちがう……』

 それは聞くことが叶わなかった、
 否。それは聞くべきではなかった音声。
 気を違えた暴徒と、愛した少女の悲劇の一幕。
 不動明が彼女の親を救助するべく、躍起になった最中に訪れた惨劇。

652BRAVE PHOENIX ◆EPyDv9DKJs:2022/09/08(木) 06:41:17 ID:hjuuoJcM0
 それは聞くことが叶わなかった、
 否。それは聞くべきではなかった音声。
 気を違えた暴徒と、愛した少女の悲劇の一幕。
 不動明が彼女の親を救助するべく、躍起になった最中に訪れた惨劇。

 彼が聞き届けることのなかった声を。
 助けを求めた声を。知己を、家族の死に対し上げた悲鳴の声を。
 人間に対する憎悪が薄れた? ならば思い出させるのが道理である。
 彼には守るべき人間など既にいないのだと、徹底的に煽る為の起爆剤。
 こうなることを予想しておいて、あらかじめそれを録音しておいた。
 彼が元の世界で怒り狂った要因ではないものの、最後の後押しを決意したそれを。
 いくらまだ正常と言えども、不安定だったところにそんなものを聞けばどうなるか。
 辛うじて保っていた理性の糸は、プツリと切れて明は猛り出して二人を突き飛ばす。
 我に返ったみさえがタブレットの音量を縮めたところでもう手遅れだった。

 ドミノから受けたダメージのせいか、
 まだゆっくりとではあるが姿を変えていく。
 翼や触覚、異形たる怪物の───悪魔人間に。
 八将神の一人であり、勇者アモンとなるデビルマンに。

『ンンンンン、いいですねぇ!』

 アルターエゴの芦屋道満を一言で言い表すならば外道に尽きる。
 『人物の一側面を強くフォーカスする』ことがクラス『アルターエゴ』の特性。
 他者の苦痛や絶望を望み、それを悦楽とした典型的な悪の側面を強く持つ。
 しかし彼の狂喜乱舞の言葉よりも優先順位は明の方へと切り替わっていた。

「野原さん、ごめんなさい!」

 これ以上はみさえの考えではいけない。
 指輪もない、バルディッシュもない。この三人は、
 経験こそ豊富だが十全な力には程遠い存在になっている。
 幼さゆえに先ほどの音声に動揺が走ったフェイトは動けず、
 この状況で動けたのは、皮肉にも殺しの経験を得た来夢だけだ。
 先ほどは頷けられなかったが、自分や彼女の危機となると別である。
 みさえが持つ猟銃を強引に奪取し、躊躇することなく引き金を引く。
 火車切広光の威力は知ってるものの、詠唱を準備する暇などない。
 そういう理由もあって銃撃を優先したものの、今の彼はもう八将神のアモン。
 いかにデーモンに傷を与えられるとされるほどに改造された代物であっても、
 真祖とも渡り合える力を振るう相手では、怯みこそすれど脅威に足りえない。

「攻撃の風!!」

 バショー扇のダイヤルを目一杯回して、
 マイクに風の種類を覚えさせてからそれを振るうフェイト。
 攻撃だけあって斬撃に近しい攻撃は全開の状態ならまだしも、
 変身したばかりで動きが鈍いのか、うまくヒットさせることに成功した。
 明は大通りを弾丸のような勢いで三人から大きく離れていく。

「野原さん、これ以上は無理です!」

 人である限りは撃たない。みさえはそう言った。
 ならもう彼は人ではない。もう覚悟を決めるしかない。
 来夢も同じだ。確かに彼はアモンによって操作されている。
 ある意味では先ほどまで洗脳されていた自分と同じようなもの。
 だからなるべく譲渡したかったし、彼女の意見も尊重したかった。
 でもあれはもう無理だ。あれは、殺さないと此方が殺されてしまう。
 肌で感じ取れるだけの怪物のような存在……否、文字通りの怪物。

「待ってよフェイトちゃん! まだ可能性は……」

『ンンンンン! それはそれで愉快ですが、
 僅かな可能性に希望を乗せると言う展開は、
 既に二番煎じ。蹂躙と言うのも面白みに欠けてしまいます。
 此処は拙僧から、八将神についてご説明させていただきましょう。』

 本来ならば伏せる必要もあったことではあるが、
 そも姫和やアーナスによって割と多くの参加者に知れ渡った。
 最強格となる日ノ元士郎にも渡った以上、いずれ大体には伝わるだろう。
 何より道満からすればこの三人はどうあっても勝てるはずがないと言う、
 自身が担当した八将神に対する絶対の自信を持っているのもあってか、
 八将神と言う存在を簡潔に伝える。

『なお八将神とは言いますが、参加者には四人のみなので悪しからず。』

「アンタ……人の命をなんだと思ってるのよ!」

 地味に『参加者には四人』と、
 他には四人いることを示唆しているが、
 当然この状況だ。気に掛ける余裕などない。
 他者を弄ぶことを何とも思っていない所業は、
 当然三者からは理解を得られないようなものでしかないし、
 誰がその対象にされてるか分からない現状家族が被害に遭ってるかもしれない。
 これほどまでの外道な敵は、今までいないだろうと察せられるほどに。

『異なことを申されますねぇ。倫理や道徳を重んじているのであれば、
 そもこのような催しを考える思考など、持ち合わせているはずもなし!
 おっと、時期に戻ってきますぞ。ご準備されたほうがよろしいのではないかと。」

653BRAVE PHOENIX ◆EPyDv9DKJs:2022/09/08(木) 06:42:40 ID:hjuuoJcM0
 蛆が這うような不快感と言うべきか、
 ストレートに腹が立つ煽り方を返してくるが、実際にその通り。
 見ただけで死が迫ると感じるようなあの姿。常人はまず瞬殺だと。
 猟銃や如意棒だけでは、とても太刀打ちできるものではない。

「それでは皆々様、これより行われる八将神による塵殺。
 特等席にて、その顛末を悠々自適に眺めさせていただきましょう!
 ああ、それと。先程の首輪の警告ですが、あれは本物であります。
 初回故に時間はかかりますが、ニ十分もすれば爆発しますのでお気をつけて。」

 どうせ蹂躙される今となっては些末事。
 どうでもいいと言わんばかりに適当に言い捨てるが、
 余裕がないので誰もそのことに突っ込む気にはなれなかった。

「野原さん、離れて……ライムとフェイトが戦うから。」

 火車切広光を構える来夢。
 敵は彼もいるが、時間も迫っている。
 今なら逃げれば十分にエリア外に出れるはずだ。

(ユズ……)

 明のことを優先したとは言え、
 夕月も呼ばれたことは忘れていない。
 元よりお互いは一度死んだ命ではあったが、
 だからと言って悲しくないわけではない。
 みっともなく泣いていた可能性だってあるぐらいに。
 でもその余裕はない。自分の手で殺めてしまった明も同じだ。
 同じ立場である彼であり、同時に自分の手は既に汚れている。
 普段はリアリスト寄りな彼女がこうして他人の手を汚させることを忌避するのは、
 みさえの暖かさを知ったからかどうかは定かではない。

「子供たちだけに任せて置いていくなんて、それこそお断りよ!」

 子供たちに殺しなんて絶対にさせたくない。
 その覚悟を示すように如意棒を握り締めて構える。
 震えはある。今まで立ち向かった困難の中で何よりも命の危機を感じた。
 怖くないわけがない。人を殺すことになるかもしれない経験だっていやだ。
 だが、此処で逃げてしんのすけと再会した時、胸を張って会えるわけがないと。

「でも、このまま全員で戦っても……」

 認めたくはないし悔しいが、
 全員それぞれ経験の薄い武器だ。
 先程はたまたまうまく攻撃が決まったが、
 二度も三度もバショー扇を当てれる自信はない。
 どうすればいいのか。正直全く分からなかった。
 何もできないまま、このまま終わってしまうなんて嫌なのに。
 出来ることが何もないことに歯痒く思っていると、

「ハァ、ハァ……」

 予想してなかった、
 同じ禁止エリアに居合わせた一人の参加者の姿を捉える。
 不動明が飛んで行った大通りの脇道から、ひょっこりと。
 息も絶え絶えにしている参加者は───




















 阿刀田初音だった。
 三人に気付いてないまま、膝に手を当てながら息を切らす。

(早く、抜けないと……まずいのです。)

 彼女は放送で知った名前の人はいたが、さして何か変わるわけではなかった。
 ユカポンとそのファンである吸血鬼、そして充に殺させたはるなに琴美の二人。
 琴美の方はどうだったのだろう。自分の一撃がもしかしたら致命傷だったのか。
 分からないし知りたくもない。どの道、アカメには追われる立場なのだから。
 勘違いのまま逃げ続けてみれば、今度はいる場所を禁止エリアに指定される始末。
 何処までも運がない。一体初音が何をしたんだとディメーンを呪いたくなるほどに。
 一方で禁止エリアなら走り抜ければアカメからの追跡を逃れられる可能性は高い。
 逃げなければ余計な疑念を持たれずに済んだのだが、そんなことは知る由もなく。

654BRAVE PHOENIX ◆EPyDv9DKJs:2022/09/08(木) 06:44:56 ID:hjuuoJcM0
 彼女を知ってれば此処で関わるとしてなんになるのかと思うものだ。
 事実、道満もディメーンも『何だこいつか』程度の感想しか抱かない。
 基本的な身体能力はこの舞台でも下から数えた方が早いレベルのもの。
 彼女一人のできることも能力も、凡庸さを超えるものは非常に少ない。
 しかし。彼女の存在が、意外な方向へ転がることになるとは誰も予想しない。

 早くも明が戻ってくる。
 悪魔人間の力を以てすれば、
 この程度の距離など五十歩百歩に等しき短距離でしかなく。

「ッ、危ない───!」

 来夢だけが経験から彼女へと駆け寄るべく走り出す。
 フェイトはまだこの舞台にいるアリサのこともよく知らない頃の彼女だ。
 母の為の戦いはしても、人を守ると言う戦いに於いては経験がなかった。
 だから彼女に遅れる形で動くことになってしまう。
 まあ、何方であってもさして違いはないのかもしれない。
 初音との距離は五メートル以上、明はもう目の前だ。
 どうあっても間に合わない距離であるのだから。

「え───」

 初音がその存在に気付く。
 今までは吸血鬼の存在はあれど、
 人間と言う範疇の見た目からは出ていない。
 でもそこにあるのは正真正銘の怪物の、悪魔の姿。

 初音は常にあやふやな人間だ。
 故に。危機が迫れば躊躇せずに行動してしまう。
 ずっと握りしめていた霊撃札が発動させ、明が再び吹き飛ばされる。
 アカメから逃げてるのに、アカメがくれた支給品のお陰で一時的に凌いだ。
 衝撃波は後ろに続いて、後方にいた来夢も吹き飛ばされて転倒する。
 と言うより、使用の威力に驚いて初音自身まで思わず尻もちをついてしまう。
 その結果、彼女の手持ちの支給品があたりへと散らばっていく。

「───!」

 都合フェイトは一歩遅れた。
 しかし、そのおかげで彼女は怯まずそのまま行動に移せる。
 飛び出した中に、見過ごせないものがあってすぐに回収した。

「ごめんね、借りる!」

 素早く拾い上げたそれを持ったまま彼女は走り出す。
 持っていたバショー扇を、初音に渡すように投げ捨てる。
 彼女が向かう先は勿論、先程飛んでいった明の方にだ。
 正気じゃない。生身の人間が相手できるようなものではないと。
 でも違う。彼女は無力な一般人ではない。だって彼女は───















「バルディッシュ、セットアップ!!」

 魔法少女だから。
 そう、初音の支給品の中にまぎれていた三角形の宝石。
 リニスがフェイトの為に作った、インテリジェントデバイス。
 彼女の求めていたバルディッシュを手にできたから。
 走りながらフェイトの姿は子供としては大人びた黒い衣装から姿を変えていく。
 黒を基調としたレオタードにスカート加えた、ダンサーに近しい服装のバリアジャケット。
 裏地が赤い黒マントを靡かせて、いつもの魔法少女の姿へと変身する。
 でも、それだけではない。

「え?」

 バリアジャケットのデザインが僅かに違っていた。
 今までは手甲と言った防具を手足には付けなかったはず。
 更に、バルディッシュも何処か形状が違うようにも見える。

(バルディッシュだけど、何か違う!?)

 バルディッシュであってバルディッシュではない。
 敗北を喫した彼が、自分の意志で、自分の想いで新たな力を得た姿。
 一度破壊され、修復の際にベルカ式のカードリッジシステムを搭載されたもの。
 更なる先へと突き進んだ(アサルト)、未来のバルディッシュ。

『bardiche assault.』

 未来のとは察しは付かなかった。
 別世界と言う概念を良く知る彼女にとっては、
 そっちの可能性の方を考えてしまうから。
 母のプレシアはアリシアの為に狂気じみた行動に出ていた。
 バルディッシュのバックアップがあってもおかしくはないのだと。

「……そう、分かった。それが今の名前なんだね。」

655BRAVE PHOENIX ◆EPyDv9DKJs:2022/09/08(木) 06:46:39 ID:hjuuoJcM0
 でも分かった。たとえ自分の知らないバルディッシュでも、
 バルディッシュは自分を知っている。分かっているのだと。

「一緒に、戦ってくれる?」

『yes sir.』

 フェイトに忠実に、そして寡黙に答える。
 よくやった問答が短い時間の中で交わされた。
 ならばこれ以上の疑問は不要。いまするべきはただ一つ。
 生死を問わぬと言う点はあれど、勝って生き延びると。
 吹き飛ぶ明を追走するように飛行し接近する。

『cartridge Load Recommendation.』

「……バルディッシュ、カードリッジロード!」

 推奨された行為。意味がある行為だと理解し、
 フェイトの宣言と共にバルディッシュは少し形を変える。
 弾丸を装填するかのように弾倉が回転し、元の形へと戻る。
 今までのバルディッシュにはなかったカードリッジロード。
 カードリッジロードは、要するに圧縮した魔力を得るためのものだ。
 単純な魔力総量を上げることになり、普段以上に移動に魔力を回せる。
 猟銃の一撃にも劣らぬ動きは明の右ストレートを華麗に回避し、背後へ回り込む。
 元々フェイトは攻撃とスピード寄りの一撃離脱を得意とする戦術を持つ。
 だから慣れないスピードであっても、十全な立ち回りが可能となっていた。

『Haken Form.』

 フェイトにとってはサイズフォームだが、
 未来ではそう呼ばれるフォームへと形を変える。
 バルディッシュの先端に翼めいた光の刃が形を作り、
 光の鎌とでも呼ぶべき姿になってその背中に斬撃を加える。
 接近戦での攻撃としての強みのある攻撃はこの状況でも発揮され、
 明の人間からかけ離れた肌色の背へと、僅かながらではあるが紅い筋を刻む。
 文字通りかすり傷だが、かすり傷でもダメージを与えられることは分かった。
 それがわかれば、きっとこの戦いにも勝機があるかもしれないと。

(でも油断はしない!)

 これで勝てれば、明はあそこまで悩むことはしない。
 フェイトはすぐに距離を取れば、明が振り向きながらの右腕を振るう。
 一撃離脱のスタイルを取っていたお陰で回避は無事に成功するが、
 当たってしまえば致命通り越して絶命の一撃だったことは想像に難くない。
 回避特化にしている都合彼女の防御魔法は必要最低限のレベルのものだ。
 あんなものを防げるだけの強度を期待する方が無理だろう。

 離れたフェイトに向けて触覚から電撃が放たれる。
 いや、厳密には超音波だがそうとしか見えないものだ。
 防御魔法は詠唱せずとも自動的に発動されるのと、
 物理的な破壊力を伴ってないお陰で防ぐことは容易だ。
 もっともあくまでそれについてはの話であって、
 それを中断して即座に迫っての物理攻撃は別になる。
 絶命とされる攻撃を受ける前に宙へと逃げるように舞う。
 続けて追走し、風を切る轟音と共に悪魔が襲い掛かる。

『Photon lancer multi shot.』

 迎撃の為、逃げながら周囲に発射体(フォトンスフィア)を生成。
 すぐさま槍のような魔力弾を何十発も雨の如く連射する。
 多少怯みこそしているものの、動きを止めるには至らない。
 迫るアッパーカットも逃げるように降下することで回避。

「あ、あれ何なのです!?」

 モッコスの戦いも殆ど見ていない彼女にとっては、
 ユカポンの支給品などで断片的でしかなかったものの、
 これが異能が跋扈する舞台だと言うことをまともに認識できる場面だ。
 戦場は空中だ。リフレクターに慣れない以上ジャンプも人並みでは、
 来夢でも参加は叶わず、ただ見届ける状態でしかできていない来夢に尋ねる。

「見ての通りよ……悪魔と融合した人間。
 私だってにわかには信じられなかったけど。
 それよりもあなた、指輪を支給品に貰ってない?」

 バルディッシュのように指輪がある可能性がある。
 もしかしたら自分の、リフレクターの指輪の可能性だってあるはずだ。
 流石に二人そろって変身アイテムを彼女が持ってると言う可能性は低いが、
 確認しないことには始まらないことだ。

「は、初音が持ってて残ってるのは───」





『Arc Saber.』

 空中では熾烈な戦いが続いている。
 距離を取ったフェイトがハーケンフォームの光の刃をブーメランのように飛ばす。
 三日月上の刃は高速回転しながら明へと迫るも、それを片腕で受け止めた。
 刃の都合突き刺さってはいるが、腕を絶つほどの一撃には余りにも浅い。

(駄目だ、強さについていけない!)

656BRAVE PHOENIX ◆EPyDv9DKJs:2022/09/08(木) 06:49:04 ID:hjuuoJcM0
 魔法少女になったところでどうにかなる問題ではなかった。
 確かにフェイトは優れた魔法少女だし、戦闘経験も豊富であるのは事実。
 でも足りない。時空管理局に就いていた未来のフェイトであればまだしも、
 闇の書の戦いすら経ていない彼女のパワーや魔法力では何もかも足りない。
 スピードに優れてると自負するフェイトを前にしても難なく追いつく速度。
 すんでのところで避けれてこそいるが、一度でも当たれば死を迎える。
 これを無限に繰り返しながら勝利できる程、メンタルは超人ではない。

「フェイト! こっちに引き付けて動きを止めることはできる?」

「ッ、はい!!」

 地上にいる来夢からの指示。
 何かしらの作戦があるのだと分かって地上へ降りる。
 すぐさま流星の如く迫る明を、振り向きながら空へ手を翳す。
 手足に光の輪が浮かび、相手の動きを鈍らせるはライトニングバインド。
 彼女が使っている高速魔法で動きを止めるには成功するが、

(バインドをかけてあれだけ動けるの!?)

 なのはの動きをほぼ止められたバインドの力も、
 悪魔人間を相手にしては完全な拘束はできなかった。
 まだ近づいてこないだけましだが、腕を振るわれては近づくことはできないし、
 集中力を途切れさせたらすぐにバインドは解除されそうなので攻撃できない。
 来夢の考えが上手くいけばいいことを願いながらバインドに集中し続ける。

「と、届いてるですか……?」

 初音が明へ懐中電灯のようものを向けて光を当てる。
 視線を逸らしたりしているので光を認識はされてるようだが、
 特別何か強い変化が起きてるようには見受けられないままだ。

「やっぱり、悪魔にそういう概念はないみたいね……ライムが行く。」

 来夢としてもこれについてはあまり期待はしていなかった。
 相手が相手だ。人間なら十分通じたであろうそれも役には立たない。
 相手が空中にいるので届くかは分からないとしても、火車切広光を使おうとするが、

「あの、それは?」

 一体その懐中電灯で何をしたのか気になってそれについて尋ねる。
 先ほど二人にした内容をそのまま初音が答えると、フェイトは思いつく。

「! それ、私にやってもらえますか!」

「え?」

 突然の提案に三人が戸惑う。
 これを使って弱体化を目論んだのだ。
 仲間に使う、などと言う発想などなかった。

「何を言ってるの!? 使ったら元に戻る手段がないのよ!?」

 これの使用についてみさえが猛反対する。
 一定時間とかではなく、一生そのままだ。
 二度と消費したものを取り戻すことはできない。
 子供の彼女に使うには酷な代物であることは確かだ。
 初音も来夢も、同じ立場でこれを自分に使って解決できるとしても躊躇う。
 少し誤れば、もっと悲惨なことになる可能性があるのだから。

「ですが、これしかないんです! 勝てる可能性があるなら、
 私の意志で信じた道を行きたい……だから、お願いします!」

 正直安直な思考ではあると思った。
 だが今の状況での打開策は見つからない。
 単純な思考でしかなくとも、できることを全部ぶつけたい。
 後戻りはできないとしても、行き先が例え暗闇の空でも信じて進むと決めたから。

 人とは多くの偶然がいくつも重なって生きている。
 その中から、自分の道を間違えわないように選んで行く。
 間違えずに過ごしていきたい。自分の意志で、自分の想いで。
 それはバルディッシュも同じだ。このまま終わるなんて絶対に嫌だ。

「もう、バインドも保てません……お願いします!」

「は、初音はどうすれば。」

「……やってあげて。勿論、やりすぎない程度に。」

 ナスタシアによって操られた来夢にとって、
 自分の意志でしっかりと歩まんとするフェイトは何処か眩く見える。
 彼女を否定したくなく、ライトが明ではなくフェイトへと当てられる。
 先ほどまでは何の効果も得られなかったそれは突如として効果を発揮した。
 突然フェイトの髪は伸び、幼い彼女の身体は十分すぎるスタイルに変貌していく。
 バリアジャケットがその姿のサイズに合わせて形を即座に変えていき、
 既存の恰好を今の体格に合わせたものになる。

 二十一世紀の秘密道具、成長そくしんライト。
 効果はもはや名前の通り。光を当てた相手を強制的に成長させるためのもの。
 単純な考えと言うのはこういうことだ。元々フェイトは戦いに身を投じた都合、
 精神的には十分出来上がっている。必要なものがあるとするなら肉体的な成長のみ。
 純粋に魔力の質、膂力、そう言ったものが少なくとも子供の時よりはずっと強いから。

「───ありがとうございます。これで、まだ戦えます!!」

657BRAVE PHOENIX ◆EPyDv9DKJs:2022/09/08(木) 06:50:12 ID:hjuuoJcM0
 故にフェイトは捨てた。
 なのはと過ごすであったろう幼き時間を全て投げ捨てて。
 彼女達を守るため、二十代にまでその肉体を強引に成長させた。
 全てが別々だ。プレシア事件を終えたばかりの幼いフェイトが、
 闇の書の戦いの経験をしているバルディッシュを手にして、
 時空管理局の職務に就く程の体格でいると言う全てがバラバラで。
 何処にも存在しないフェイト・テスタロッサが辺獄の舞台を駆ける。

「行くよ、バルディッシュ!」

『yes sir.』

 フェイトが再び上空へと舞う。
 拘束が解除され明がそのまま追跡。
 先程よりもはるかに速い速度で上昇するが、
 やはり悪魔人間である明相手では追いつかれる。
 斧のような形状であるデバイスフォームと似た形状の、
 今はアサルトフォームで追走してきた明へとその一撃叩き込む。
 重苦しい音が響き、防いだ拳から血が噴き出し、先程以上の効果はある。
 攻撃の反動で距離を取りながら、互いに向かい合う。

「明さん……私が、止めます。バルディッシュ、カートリッジロード!」

 再びカードリッジロードからの加速。
 アサルトフォームで脇腹を抉るように斬りつける。
 とは言え似たような攻撃を見た影響で容易に回避されてしまう。

「伸びなさい!」

 みさえの宣言と共に如意棒が空へと勢いよく伸びる。
 如意棒が蝙蝠のような翼へと被弾し、僅かにだがバランスを崩す。
 ダメージらしいダメージにならないが、これだけでも十分だ。
 注意が逸らしさえすれば、それで。

『Zamber form.』

(バルディッシュの新しいフォーム!)

 空へ掲げるようにバルディッシュを構えると、
 フェイトも知らない形へと形状を変えていき、
 身の丈を超えるかのような大剣へと形状を変え、そのままスイング。
 今までのフォームと違って剣についてはフェイトにとって初めてだ。
 だから上手く振るい損ねて、剣と言うよりは鈍器のような一撃。
 それでも注意がそれた明に直撃し、近くの家屋へと叩き込まれる。

「やった、決まったのです!」

 屋根を突っ切るだけの一撃。
 普通に重傷ものであり初音は喜ぶも、
 隣の来夢は眉間にしわを寄せたままだ。

「まだよ、何が起きるか───」

 建物が悲鳴を上げながら不動明が復帰する。
 ただの復帰ではな、その光景に一瞬思考停止しかけた。
 何故なrあ、突っ込んだ家屋の屋根を丸ごと持ち上げたいたのだ。
 とんでもない武器を前に、四人ともそのスケールに一瞬唖然としてしまう。
 端から瓦が次々と落ちていく中、横薙ぎに振るわれた屋根の一撃は先の意趣返しのようだ。
 高速で間合いから後退する形で回避し、飛来する残骸の一部も難なく避けていく。
 だが明の攻撃は続く。フェイトにではなく、残った三人の方にそのまま屋根を投げつける。

 何処かの良家の広い屋根だ。
 いかに広々とした道が舗装された平安京でも、
 余裕で道を、参加者ごと容易に圧殺するだけの範囲を持つ。

「させない!」

 即座に軌道上に移動し、そのままザンバーフォームで一刀両断。
 しかし残骸そのものは残ったままであって三者に襲い掛かる。
 確認をしたかったが、一刀の隙に一気に肉薄してきた相手に余裕はない。
 なんとか顔面を逸らすことでその拳を回避はできたが、頬を掠めた拳で刻まれた傷が、
 本当にぎりぎりであったことを教えてくれた。

『Haken form Haken saber.』

「分かった、お願い!」

 ハーケンフォームへ切り替えを推奨され、
 距離を取ると同時に即座に受け入れてフォームを切り替える。
 名前の語感から、恐らくアークセイバーの類なのだと信じてその要領で振るう。

「ハーケン、セイバー!!」

 ハーケンセイバーはアークセイバー同様の刃を飛ばす技。
 元より殺傷能力が高い代物ではあったが、今の姿ならば更に高い。
 ただ段違いだからと言って弾速は変わっているわけではなかった。
 アークセイバーと似たような攻撃では、容易にその一撃を回避されてしまう。

(外した、まずい!)

 盛大に隙を晒したことで、
 明にとって攻撃の最大のチャンスが訪れた。
 防御魔法を使っても死を予感させるその一撃。
 後はバリアで届かなかった一瞬の間との勝負だが、

658BRAVE PHOENIX ◆EPyDv9DKJs:2022/09/08(木) 06:50:58 ID:hjuuoJcM0
「え?」

 届かない。バリアにすら拳が届かない。
 何故なら、明の左腕が切断されて宙を舞うから。
 それは奇しくも、デビルマンが戦ったシレーヌの時と同じ展開だ。

 ハーケンセイバーはフェイトも理解していなかったが、
 アークセイバーの上位種として向上した部分に追尾性能がある。
 だから外したとしても攻撃はまだ続いていることを、今彼女は知った。
 アモンは暴力的に見えて戦闘中でも相手の動きを見てしっかりと対策をする。
 だが彼女自身が知らなかったので、意図しないものを推測することはできない。

「バルディッシュ、バインド!」

 片腕を失ってるからか肉体的に成長したからか、
 先ほどよりも深く集中せずとも拘束の余裕がある。
 今なら狙える大技を使うべく、地上へと降りた。
 空中でも問題ないが、三人の様子の確認したかったからでもあるが。

「皆! 無事───!?」

 三人とも大事には至ってないが、少なからず負傷を追っていた。
 初音は破片が当たったことで額から血を流していて、
 来夢は瓦が当たったことで腕に打撲を受けて腕を抑え、
 みさえに至っては残骸に足が挟まっていて動けなくなっている。

「ごめんなさい、私のせいで……」

「は、初音は大丈夫なのです。」

「気にしないで。幸い足は潰れてないから!」

「それよりも、やりたかったことに集中して。」

「……はい。」

 今は懺悔する時ではない。
 するべきことを間違えることなく、空を見上げる。

「バルディッシュ、サンダースマッシャーの上位は使える?」

 アークセイバーを超えるハーケンセイバーの存在があった。
 それを考えれば、恐らくバルディッシュなら上位の魔法を知ってる筈だと。

『Plasma smasher.』

「……分かった! 行くよ、バルディッシュ!!」

 サンダースマッシャーのやり方は分かっている。
 左手を空で拘束された明へと掲げ、魔法力を集中させていく。
 なのはのディバインバスターを上回る威力を誇ったサンダースマッシャー。
 更にその亜種となる、射程を犠牲に威力を強めた上位の攻撃を放つ。

「プラズマ───スマッシャー!!」

 バインドの拘束を強引に振りほどいて、
 明のも対抗するように右手から熱光線を放つ。
 辺獄の空を目指す雷光と、地上を目指す炎熱の一撃。
 片腕での攻撃ともあってフェイトが有利……かに思われたが。
 互いの攻撃は拮抗───否。フェイトの方が押されていた。

「ッ、クゥ……ッ!!」

 フェイトが大人になったことは全てがメリットではない。
 肉体的に成長したことで使える魔力の質や総量は増えただろうが、
 同時にそれは使いすぎたことを意味する。単純に消耗しすぎている。
 プラズマスマッシャーに使う魔力が、余り残されていないということだ。
 相手が相手だ。余力を残せる余裕があるとは言えなかったので仕方ないことではある。

「魔法力が……!!」

「フェイト、これ!」

 来夢が彼女の魔力不足に気付き、青い液体の入った瓶を取り出す。
 余裕がないので一切の説明の暇はなく、それを信じて差し出されたそれを飲みたいが、
 左手は今攻撃の真っただ中で、右手はバルディッシュを手にしている都合手に取れない。
 来夢に飲ませてもらう形になり、少し不格好な光景になるも飲み干せば、即座に魔力を取り戻す。
 普通の魔法使いが作ったポーションの効果は即席で魔力が必要な場面で絶大な効果を得る。
 魔力を取り戻したことで次第に押し始めたことで優勢に変わった。
 だと言うのに、フェイトの表情は曇ったままだ。

「後ちょっと、なのに……!」

659BRAVE PHOENIX ◆EPyDv9DKJs:2022/09/08(木) 06:52:01 ID:hjuuoJcM0
 次第に押し始めたのは事実だが、その速度はゆっくりとだ。
 なら何も問題ないのでは? と思われるが、刻一刻と禁止エリアのリミットが待つ。
 勝つまでが余りに長すぎる。みさえも動けない状態だから、すぐに勝たなければならない。
 だと言うのに突破できない。これが八将神の力だと言うのか。
 これ以上、フェイトにはできる手段を持ち合わせていなかった。




















 しかし忘れてはならない。

 なのはたちがプレシアの下へ乗り込んだ時もだ。
 一人で解決できる力を持った人物はいなかった。
 ユーノの拘束魔法も、なのはの攻撃魔法だけでも足りない。
 無論、広範囲の攻撃を有したフェイトだけでも。

「の、伸びやがれです───!!」

 そう。他の二人には別だった。
 いつの間にか初音が彼女から離れた位置から拾った如意棒を伸ばし、
 明の顔面、それも目潰しと非常に殺意に溢れた一撃。
 先ほど同様に怯ませる程度の一撃でしかなかったが、

「フェイト、今!」

 来夢も続いて猟銃を放ちながら促す。
 同じく目潰しを想定した一撃は僅かにダメージを与えた。
 今この一瞬に起きた僅かな怯みが、運命を分ける。

「───ハアアアアア!!」

 僅かに緩んだ瞬間、更に魔法力を叩き込む。 
 雷光が熱光線を両断し、光は突き進んでいく。
 空へと上る雷光の一撃はなのはの魔法と同じ、
 スターライトブレイカーに匹敵するかのようだ。

 雷光の中へと姿を消しながら、明は彼方へと飛んで行く。
 ダメージを受けながら再生すると言う八将神とデビルマンの力が、
 常人どころか優れた悪魔であっても致死量の一撃を耐え凌ぐだけの耐久を誇る。
 とは言え無傷とまでは行かない。全身は誰が見てもボロボロの姿のまま、何処かへと消えた。



【C-5 空/一日目/朝】



【不動明@デビルマン(漫画版)/歳殺神】
[状態]:勇者アモンの状態、ダメージ(大)、『人間』への憎悪(若干薄れている)、精神不安定、みさえに対して安らぎの心情
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(タブレットはなし)、ランダム支給品×1(強くない、或いは武器以外)
[思考・状況]
基本方針:全てを滅ぼす
(アモン)
1:敵を殺す

(不動明)
1:政達との合流。最悪、あいつらやみさえさん達の知り合いだけでも逃がしたい。
2:この記憶が本物であった以上、元に戻ったらその時は……
2:襲ってくる者がいたら容赦しない。
3:俺は……不動明なのか!? 悪魔族のアモンなのか!?
4:みさえさん……俺にはまだ守るべき人間が残っている。なら、俺は……悪魔人間だ!

[備考]
※参戦時期は牧村美樹死亡後。
※八将神としての人格はアモンと統合されています。
 その為、アモンとしての人格と不動明としての人格が不定期に出たり引っ込んだりします。
※ドス六たちを殺した記憶が朧気ながらフラッシュバックされています。
※ドミノとの戦いはほとんど覚えていません。
※来夢の事情を知りました。(せつ菜を殺めた顛末)
※来夢からブルリフの世界について簡単な知識を得ました。
※みさえからクレヨンしんちゃんの世界について簡単な知識を得ました。
※彼方へと吹き飛ばされました。どの方角へ飛んだかは後続の書き手にお任せします。





「や、やった、ですか……?」

660BRAVE PHOENIX ◆EPyDv9DKJs:2022/09/08(木) 06:53:04 ID:hjuuoJcM0
 光とともに消えて行った姿を見て、
 やっと自分が生き残ったことを実感できた。
 思わずその場でへたり込んでしまう。

「勝てた、けど。みんな、急いで……!!」

 地上へ落下に近しい形で降りるフェイトが促す。
 勝利の要因に浸る余裕はなかった。
 時間はリンボの言う通りならばもう残されてない。
 このまま脱出できなければ折角生き延びた意味がない。

「フェイト、初音、二人も手伝って!」

「は……はい!」

 来夢は猟銃を捨てて残骸をどけていくが、
 生身の人間では残骸をどかすのに一苦労する。
 フェイトもすぐに頷き、初音も流されるように行動するが、
 みさえが無言で支給品の中からカードを取り出し、それを掲げる。

「おや、切羽詰まってる状況だねぇ。時間はなさそうだし、
 こっちも今見所な場面だからこれを用意して退散とさせていただくよ。」

 掲げたことでディメーンが呼ばれたものの、
 小言を言う暇すら今は惜しいほど面白いことが起きてるのと、此処の四人も時間がない。
 お望み通りと言わんばかりに支給品を早急に出した後、即座に退散する。
 彼が去った先にあったのは使い古された原付で、店のアイコンと思しき文字が目立つ。

「今の声、放送の……」

「来夢ちゃん、フェイトちゃん、それと初音ちゃんだったよね……それで脱出して。」

 三人に動揺が走り、交流のあった二人は特に動揺する。
 不安に怯えていたフェイトを、人を殺した来夢を気遣った。
 そんな彼女を見捨てろと、死なせると言うことを勧めてると言うことだ。

「何、言ってるんですか! フェイト、まだポーションはあるから魔法で瓦礫を……」

 あれだけの魔力が使えるフェイトなら、
 この程度の瓦礫は問題ないだろうと。
 でも、それはできない。

「ゴメン、なさい……」

 バルディッシュを杖代わりにしつつ立つフェイト。
 マジックポーションは確かに瞬時に魔力を回復させる。
 しかし、体力を回復させるわけではないし、フェイトに回復魔法は不得手だ。
 動く分には問題ないレベルのものは出来ても、力技をするには向いていない。
 だから魔力を回復させたところで、疲労は変わらず存在したままだ。
 元々サンダースマッシャーでさえも一度使えばほぼ後がない程消耗する。
 更に上位の、今の彼女にとって初めて撃つ魔法。慣れない攻撃はより消耗していた。

「だったら初音、如意棒を縮めてから伸ばせば───」

「そ、それが……できないのです。」

 伸びるよう指示しても、縮むように指示してもサイズが変わらない。
 先ほど明の攻撃を妨害した一撃を叩き込んだということは、だ。
 プラズマスマッシャーに巻き添えになってなければありえない。
 それで削れてしまったのか定かではないが、ちゃんと機能しなくなっていた。
 頼りにしてた手段、両方が使い物にならないとわかると来夢の顔が青ざめる。

「まだ、時間なら……」

 来夢は言わなかったことをフェイトが口にした。
 今から瓦礫を撤去してみさえを救出して、スクーターに全員乗って脱出。
 そんなの、土台無理な話だと言うことを彼女は分かってしまっていた。
 だから言えなかった。事実上の死刑宣告だから。

「時間はギリギリで、事故や敵と出会う可能性だってあるのよ。
 第一、来夢ちゃんも腕を怪我して運転が安定してるか怪しいわ。
 余裕を持って出ないなさい。どのみちスクーターは多くても三人用、
 全員を連れて移動できる状態でもないから。」

 それをみさえに言われ、フェイトが膝をつく。
 ダイエットしておけばよかったわねと、
 こんな状況……否、こんな状況だからこそか、彼女はおどける。
 彼女達が、特にフェイトが後ろ髪を少しでも引かれないように。

「……分かり、ました。」

 最初に納得できたのは来夢だ。
 元より無理だと言うことを理解してしまい、
 フェイトは運転できる体力がないし、初音は体格的にできそうにない。
 だから一番マシな運転ができるのは彼女だけで、同時にリアリスト故に。
 だから原付を運転するべく、準備に取り掛かる。

(初音も、そんな風になれるですか……?)

 初音もそれに続いていく。
 彼女とは出会ったばかりだから二人程強く意識することはない。
 でも、自分よりも他人を尊重できるその姿。ユカポンや充、琴美と同じだ。
 誰も彼も、カルネアデスの板を譲り合っている。自分が沈むことを望もうとする。
 どうして、そんなに皆して強くいられるのか。羨ましく、疎ましく思えてならなかった。

「野原さん。ごめん、なさい……!」

661BRAVE PHOENIX ◆EPyDv9DKJs:2022/09/08(木) 06:54:30 ID:hjuuoJcM0
 フェイトだけはその場で崩れ、大粒の涙を流す。
 外見は大人でも、中身は小学生と変わらない精神年齢なことに変わりはない。
 自分がちゃんと対処できていれば、こんなことはならなかった。
 如意棒の機能しなかった原因も合わせてしまえば、
 彼女を死なせるのは、事実上自分であるのだと。

「何言ってるの。フェイトちゃんは明君に誰も殺させなかった。とても凄いことじゃない。」

「でも、野原さんが!」

「フェイトちゃんがいたから、全員潰されずに済んだ。
 それに明君の忠告を無視した結果、と思えば仕方ないもの。
 私のは事故みたいなものよ。だから気にしないで……って無理よね。
 じゃあ、夫に会ったら伝えて。『ヘソクリ、タンスの奥にあるから使うように』って。」

「……え?」

 実質それが辞世の句。
 聞き間違えたのかと二度見してしまう。
 それが最後のでいいのだろうかと。

「えっと、それだけでいいんですか……?」

「あ、やっぱりなし! 素直に『愛してる』にして!」

「は、はい……」

 気を遣わせたくないのだろう。
 これから死ぬという態度ではない。
 無理して此方を笑わせようとしている。

「……じゃあ追加。行って、そしてしっかり生きて。
 それと、もしもできるならで彼を元に戻してあげて。」

 もうどうにもならないとしても、
 明を何とか解放してあげてほしい。
 方向性は違うが敵組織に洗脳された経験もあることだ。
 自分を失った状態と言うことの恐ろしさは十分に理解できる。
 でもあれだけの強さだ。殺さないようにするのは難しいだろう。
 可能なら生きたままで、と言う程度に留めてもらうことにする。

「そんで、マンボだかタンボとか言うあいつを一発引っ叩いてちょうだい。」

「フェイト、初音。準備できたから急いで。」

 やはり彼女にはすぐに受け入れられないことだ。
 どうしても『たら、れば』を思えてならなかった。
 そんな余裕を持てる相手ではないことは分かっていても。

「───はい。わかり、ました……」

 納得はできなかったが、自分が生きないと明も、その言葉も伝えられない。
 それこそしてはいけないものだと受け入れて、素直にフェイトは原付へ向かう。
 来夢がハンドルを握り、フェイトが後ろに乗り、更にそのフェイトの膝に初音が乗る、
 かなり強引な三人乗りをした状態で、原付はゆっくりとだが走り出す。
 運動能力の低い初音や体力の底をついてるフェイトを抱えても、
 十分に禁止エリアからは抜け出せる程度には安定した速度で。

「……慰めにならないと思うけど、言うわね。」

 運転しながら、来夢は呟く。
 誰に対して言ってるかは分かっており、
 初音もフェイトも黙ってそのまま聞き続ける。

「この結果に思うところがない、と言えば嘘になるわ。
 出来れば、あの人を私だって助けたかった。
 でも、貴女は全力で戦って私達を守ってくれた。
 ライムができたことなんて、薬とこんなことぐらいだから。」

 来夢はフェイト以上に自分が不甲斐ないと思っていた。
 指輪がなければ、こんなにも自分は非力なのかと。
 自分を許してくれた相手にできることは何もないのだと。

「今回のは来夢も背負うから。貴女一人だけの責任にさせない。」

 ドライで現実的に物事を考える自分らしからぬ物言いだ。
 目的のために手段を選ばない。たとえそれが非難されるものでも。
 相手が年下だからか。それとも、彼女のエーテルの温かさを知ったからか。
 誰かを思いやるような言葉を口にしていた。

「……ありがとう、ございます。」

 原付の上で揺られながら、フェイトは思う。
 電話越しで、姿は分からなかったあの男。

(キャスター・リンボ……)

 この舞台の主催の一人であり、
 明を良いように操り、結果的にみさえの死の遠因となった相手。
 絶対に、倒さなければならない相手だと理解しながら辺獄の空を眺める。
 どこかでほくそ笑む、陰陽師を睨みつけるかのように。

662BRAVE PHOENIX ◆EPyDv9DKJs:2022/09/08(木) 06:55:09 ID:hjuuoJcM0
【C-5/一日目/朝】



【フェイト・テスタロッサ@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:疲労(大)、魔力消費(大)、罪悪感(大)、成人の姿、みさえに対して安らぎと悲しみの心情
[装備]:バルディッシュ・アサルト@魔法少女リリカルなのはA’s、バリアスーツ(ソニックフォーム)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜2
[思考・状況]
基本行動方針:みさえさんの家族、来夢さんと明さんの仲間を探す。
1:来夢さんとこの子(初音)と行動する。
2:家族って、良いものなんだね……
3:他の人達もそれぞれ別々の世界からつれてこられてるのかな...
4:明さんを止める。明さんが死ぬことになるとしても。
5:私の知らないバルディッシュ。でも、私を知ってるバルディッシュ。
6:キャスター・リンボ……あなたは絶対に倒す。
7:ひろしさんやしんのすけに会った時、謝る。

[備考]
※参戦時期は少なくとも第一期のプレシア事件の後です。
※来夢の事情を知りました。(せつ菜を殺めた顛末)
※来夢からブルリフの世界について簡単な知識を得ました。
※明からデビルマンの世界について簡単な知識を得ました。
 最愛の人である美樹を人間に殺されたことは察してます。
※成長そくしんライトによって原作におけるストライカーズの年齢まで成長してます。
 バリアジャケットはその場で変化させているため格好に問題はありませんが、
 このまま元の服装に戻れば元の服のサイズが合わない為、どうなるかはお察しです。
※バルディッシュの参戦時期はA’s最終話までなので、
 真・ソニックフォームなどそれ以降の時期のフォーム等にはなれません。
※主催にキャスター・リンボ(名前は知らないが芦屋道満)の存在を知りました。

【司城来夢@BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣】
[状態]:疲労(小)、負傷(小)、罪悪感(大)、服全身血まみれ、みさえに対して安らぎと悲しみの心情、腕に打撲
[装備]:火車切広光@11eyes -罪と罰と贖いの少女-、成長そくしんライト@ドラえもん、マジックポーション×3@東方project、銀時の原付@銀魂
[道具]:基本支給品一式、みさえのデイバック(基本支給品、ランダム支給品1)
[思考・状況]
基本行動方針:乗らない。そして、せつ菜さんやみさえさんの知り合いのを探して謝る。
1:リフレクターになる指輪を探したい。
2:せつ菜を殺した事実を受け止めて、関係する人達に謝罪する ※ヒナにも事実を隠さず伝える。
3:もし、明がアモンに人格を乗っ取られたら……ライムは―――
4:みさえさんのエーテル……とても温かかった。
5:ユズ……
6:ライムも、フェイトのそれを背負うわ。

[備考]
※参戦時期は11章、原種イェソド1戦目終了後から
※優木せつ菜を殺めたことで精神が不安定になっていましたが、
 みさえの愛情で頭痛は鳴りやみ、落ち着きました。
※みさえからクレヨンしんちゃんの世界について簡単な知識を得ました。
※明からデビルマンの世界について簡単な知識を得ました。
 牧村の件はなんとなく察せてます。
※主催にキャスター・リンボ(名前は知らないが芦屋道満)の存在を知りました。

【阿刀田初音@リベリオンズ Secret Game 2nd stage】
[状態]:精神的疲労(大)、疲労(大)、出血(中)、全身にダメージ、不安(大)、額から出血
[装備]:霊撃札×3@東方project、壊れた如意棒@ドラゴンボール、バショー扇@ドラえもん
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜1(アカメ、琴美が確認済み。ボウガンや危険物以外)
[思考・状況]
基本方針:初音にどうしろというのですか……
1:充を探す。アカメから逃げる。
2:修平、はるな、大祐、アカメには要警戒する。
3:琴美……ユカポン……
4:どうして、みんなそんな風にカルネアデスの板を譲れるのですか。

[備考]
※参戦時期はBルート、充の死亡直後より。
※自分が琴美を殺したと思ってます。
※如意棒は伸びなくなってます。
※バショー扇には攻撃の風と指定されてます。










(時間的に、逃げ切れるよね。)

663BRAVE PHOENIX ◆EPyDv9DKJs:2022/09/08(木) 06:56:02 ID:hjuuoJcM0
 姿が見えなくなっていく中、みさえは口元に手を当てる。
 何度も世界を救うような、壮絶な戦いに家族一同で巻き込まれている。
 でも彼女は二児の母親だ。断じて死を覚悟し続けてきた戦士ではない。
 口を開けば絶対に言ってしまう。『死にたくない』『連れて行って』と。
 言いたくて仕方ない。こんな形で死ななければならないなんて誰も思いたくない。
 しんのすけやひまわりの世話、今晩の献立だって用意しなくちゃいけないのに。
 家族とは再会することもなければ、誰に看取られるわけでもなく死ぬ。
 だから、生きたいと言うありふれた願いを涙を流す形で押し殺す。
 彼女達に少しでも後ろ髪を引くことはないように、大人として。

(お願い、しんのすけ、あなた……生き───)

 家族の安否を想いながら、彼女の首輪は爆発した。
 最後まで声を出すことないまま、ただ爆発音だけで。
 ある意味、不安にさせないと言う誰よりも強い意志を持ったまま。
 最後まで彼女は折れることなくこの殺し合いへと抗った。

【野原みさえ@クレヨンしんちゃん 死亡】




















『ンンンンン、これは予想外。』

 実は、電話はまだ繋がっていたりする。
 相手側は切る暇などなく、切らずに放置していた。
 歯車の塔から音声と共に見やれば思わぬ展開に驚かされる。
 こんな衝突事故みたいな連鎖で自分の担当が返り討ちに遭うとは。

 あれだけ焚きつけておいたのに、
 これまた一人も殺せないまま決着した。
 みさえの死は不動明による判定なのかも怪しい。
 最悪、最後に屋根に干渉した判定からフェイトかもしれない。
 今度こそ殺害人数十人を期待したのだが、このありようだ。

「さて、こうなってはあれですな。もう一方の相手にでも───」

 電話する相手がなくなった。
 どうせなので通話アプリで想定していた方にも電話を掛けようとする。
 だが、それを背後からヒョイと取り上げられてしまう。

「……何をしておるのじゃ。」

「これはこれはメフィス殿。佐神善はよろしいので?」

「質問に質問で返すから安倍晴明に勝てんのじゃろうな、お主は。」

 普段は人を小ばかにしたような態度でいたが、
 今の彼女は違う。目を細め、威圧的な眼差し。
 ニコニコとしている道満とは対照的である。
 だから遠慮なく道満が対抗心を燃やす晴明を引き合いに出す。

「ンンン。そこで晴明の名を出すとは、これは手厳しい。
 質問ですが、所詮これは支給品の範疇。咎めはされますまい?」

「『もう一方に繋ぐため』のであって、『主催と連絡ができる』など、
 わしらは想定しておらぬはずじゃぞ。勝手にアドレスを追加しよって。」

「よいではありませぬか。十条姫和の支給品を都合よく改造しておいて、
 拙僧にだけ支給品を改造をするななどと、それは道理が通りませぬなぁ?」

 袖で口元を隠しヨヨヨと泣きながら流し目を見せる道満。
 『気持ち悪いからやめろ』と言われ、直ぐにスンと落ち着く。
 急に落ち着くなと突っ込みたくもなるが、こいつも同族の類だ。
 人の反応を逐一楽しんでるのだろうと。

「そも、この通話も不動明の起爆剤目的じゃろう?
 他の参加者のアドレスまで把握して何をするつもりじゃ。」

「無論、煽り目的ですが?」

「お互い、趣味が最悪じゃな。」

 やれやれと溜息を吐く。
 この男は自己主張が激しい奴なのだろうなと察した。
 さらりとメールアドレスにも『DOMAN』と加えており、
 こいつ本当にキャスター・リンボで名前を通す気があるのかと疑いたくなる。

「ところで、今更ながら質問ですが。」

「なんじゃ。」

「何故、司城来夢には指輪がないので?」

664BRAVE PHOENIX ◆EPyDv9DKJs:2022/09/08(木) 06:57:08 ID:hjuuoJcM0
 妹の夕月にはリフレクターの指輪がデフォルトであった。
 リフレクターではなくなった日菜子には支給品であるのはわかる。
 一方で来夢と夕月の差について違いがあるところは気掛かりだ。

「八将神同様、差別化と言ったところかのう。
 ある場合とない場合の違いを楽しみにして見たが、
 よもや指輪がある方が先に果てたのじゃからわからんものよ。」

「さようで。では拙僧、今度こそ客将の様子でも伺いましょう。」

 タブレットを取り戻すのは困難であり、
 揉め事を追加でするのもほどほどにしようと、
 客将の方々へとその様子を伺いに向かう。

「……主催が参加者と通話できる、か。
 ま、面白みのある試みではあるかのう。」

 どういう使い道を見出したものか。
 僅かばかりの興味を持ちながら、メフィスはそれを持って何処かへと行く。
 これの繋がる先は、果たして誰だったかの確認するべく。

※参加者の誰かに通話アプリ@オリジナルが最低一人でも支給されてます
 支給品が消滅した沙都子、ドス六達の可能性もある為今も繋がるか不明です。

【バルディッシュ・アサルト@魔法少女リリカルなのはA’s】
阿刀田初音に支給。リニスが作ったインテリジェントデバイスで通称『閃光の戦斧』。
シグナムに破壊されたバルディッシュがベルカ式のカードリッジシステムを搭載されたもの。
レイジングハート同様意思がありフェイトに忠実で、本ロワでは誰にでも使用可能なデバイス。
ただ、魔法力の都合フェイトのように魔法力かそれに類する人物が使うのが望ましい。
基本は斧の形状ではあるものの鎌や槍等、様々な形状に変化させることができる。
あくまでフェイトの魔力資質によるものなので、他人が使う場合電気系統とは限らない。
参戦時期はA’s最終話までなので、真・ソニックフォームなどのフォームにはなれない。

【通話アプリ@オリジナル】
不動明に支給。厳密には名簿に使われるタブレットに内蔵されている。
同じアプリが内蔵された参加者、道満の細工により主催と連絡が可能。
禁止エリアのC-5で、みさえの爆発に巻き込まれたので多分繋がらない。
一度使うと二時間は使用不能。主催のメールアドレスは「DOMAN]が混ざっている。

【成長そくしんライト@ドラえもん】
司城来夢に支給。文字通り成長が促進されるドラえもんの秘密道具。
懐中電灯のような道具で、この光を生物に当てると生物を早く育てることができる。

【マジックポーション@東方project】
司城来夢に支給。東方非想天則におけるシステムカードの一枚で
魔法の森のキノコから抽出した魔力回復剤で瞬間的に魔力を回復させる。二本入り。

【銀時の原付@銀魂】
野原みさえ支給。坂田銀時が愛用する原付で車種はべスパ。
円の中に銀の文字が記されたマークが特徴的なぐらいで、基本スクーターそのまま。
どこぞの荒野の世界では加速装置により140キロはでたらしいが、
50cc以下なので速度はそんなに出ない。ヘルメットは一つだけある。

665BRAVE PHOENIX ◆EPyDv9DKJs:2022/09/08(木) 06:57:36 ID:hjuuoJcM0
以上で投下終了です

666BRAVE PHOENIX ◆EPyDv9DKJs:2022/09/08(木) 07:27:17 ID:hjuuoJcM0
マジックポーションですが説明では2本でしたが、
本来は4本(状態表の3本が正しい)です。失礼しました

667 ◆EPyDv9DKJs:2022/09/08(木) 07:39:19 ID:hjuuoJcM0
重ねて報告忘れです
飛鳥了の猟銃ですが、来夢の支給品として所持してます
表記が抜けてたみたいです。失礼しました

668 ◆EPyDv9DKJs:2022/11/06(日) 10:00:29 ID:SuRhmxUM0
投下します

669藤丸立香は多分分かっている ◆EPyDv9DKJs:2022/11/06(日) 10:01:31 ID:SuRhmxUM0
 ギャブロは一人頭を抱えていた。
 緑郎を追って来てみれば別の参加者との邂逅。
 立香から飛び出た支給品による謎の存在となるアンナ。
 ギャブロの存在は勿論、命を宿したロボットと相対したこともあるので、
 不思議な生き物に対しての理解は強く、他の三人のうち二人も身近な間柄だ。
 話を伺おうと思ったもののディメーン放送が始まったことで中断されたのだが、
 その結果が通夜みたいな空気へと追い込まれていたがゆえに頭を抱えていた。

「せつ菜ちゃん……」

「薫にマイマイまで……」

 スクールアイドル同好会の始まりとも言える中川菜々の死。
 友人の舞衣に、長い付き合いである相棒の薫までもが犠牲者となった。
 家族かどうかは定かではないが、ソニアを喪った時と似た気持ちなのだろう。
 気持ちの整理を何もしないままに動いたらろくなことにならないと言うのは、
 ドーンに唆されて彼女を裏切り者と思い込んだ彼だからこそ落ち着くのを待つ。
 もっとも、

「そんな……それにあの声……」

 残りの人物までもが影を落とすとは思っていなかったが。
 彼女はアンナ───またの名をエマ。ある男性に恋い焦がれた結果、
 その果てに今の姿を得た一人の女性。彼女はその記憶を取り戻している。
 取り戻してるがゆえに、ノワール伯爵が呼ばれたことに驚きが隠せないでいた。
 世界を滅ぼさんとするマリオ達最大の敵であり、話さなければならなかった相手。
 だと言うのに今やそれは能わず、しかもあの声は間違いなくディメーンのもの。
 状況の理解が追いついてない彼女は、あんないフェアリンでも解析の処理が遅れる。

「マシュ〜〜〜……」

 そしてこの男もだった。
 マシュは生きているので問題はない。
 一方で、この空気に耐えかねた立香はマシュの名を呼びながら泣いている。

「いやお前まで泣くのか!?」

「だってマシュが無事で喜びたいけど、
 皆が無事じゃないのに喜びそうになったって思うと……」

「いや確かにボクもそれは分からないわけじゃないけど。」

 さっきまでの人理修復が嘘ではない歴戦のマスターの風格は何処へ行ったのか。
 よくわからない人柄をしてるが、感受性豊かで悪い奴ではないんだろうなと言うのだけはわかる。
 彼を見ていると、嘗て捕まえていた子供たちと似たような精神に感じてならない。

「Sorry……貧血になったのもあって、弱気になっていたみたいです。」

 貧血どころか腕一本なくなったのだが、
 余り重くならないようにマイルドな表現で話すエレン。
 普段のあえてやってる片言な喋りをする余裕は少し減っていた。
 舞衣もだが、やはり一番堪えたのは長年の付き合いからくる薫だ。
 嘗ての戦いでも二対一の状況で勝つことができなかったり、戦績は良くない。
 彼女は経験してないがタギツヒメとの戦いでも迅移の段階についていけるものではなく、
 刀使の実力としてみると、最高峰クラスの可奈美や姫和たちととはどうしても劣る。
 その上御刀が自分にないのであれば、彼女だって祢々切丸がない可能性は高かった。
 別に楽観視はしていなかったにせよ、多すぎる死者のことも考えると、
 余り感傷に浸っていては自分や侑の仲間にも危険が迫ることもある。
 だから気持ちを切り替えて滞っていた情報交換を優先とした。

「ことがことでしたのでまだお互い余り話せてませんでしたね。
 此処で一先ず我々の状況を整理しましょう。ゆんゆん、大丈夫ですか?」

 ロックに対する怒りは戦いに身を投じていた都合よくわかる。
 特に、戦いとは無縁の彼女が放つ殺気など隠せるはずもなく。
 加えて心労も多い状況だ。無理をしてない方がおかしいと言うもの。

「歩夢や愛さん、璃奈ちゃん……それにエレンさんの友達も探さないとだよね。」

 自分が足を引っ張ってると言うのは重々承知していることだ。
 ギースに禄朗と、立て続けに足を引っ張る存在だと否応なく理解させられる。
 だから、せめてこういう時ぐらいはなんとか堪えて話を進めることを決意する。
 堪えきれず涙を流れてはいるものの、彼女の意を汲み取りそのまま話を続けた。

「知り合いが多いのは、災難だな……」

 合わせて十名を超える参加者。
 喪うことは悲しいことを知るギャブロも、二人の心情をある程度察する。
 とはいえこれらの情報はさして参加者四人の状況を進展させることはない。
 全員知り合いに出会えていないのだから足取りがつかめない以上当然でもある。
 ただ一つ『参加者以外』であれば話は別ではあった。

670藤丸立香は多分分かっている ◆EPyDv9DKJs:2022/11/06(日) 10:02:57 ID:SuRhmxUM0
 あんないフェアリン、アンナ。
 この場で主催を知っている唯一の存在。
 彼女の存在が彼らに新たな進展を齎してくれた。

「でもルミエールが、まさか……」

 折角記憶を取り戻しながらそれぞれの仲間に幹部の相手を任せ、
 残されたマリオとフェアリン達と共に、本拠地で相対したと言うのに。
 和解は無理でもせめて彼と会って話はしたかったが、その直前から記憶がない。
 否、なくなってると言うよりはその時点で此処に招かれたと言うべきだろうか。

「にしてもディメーンって奴、何者なんだ?」

 マネーラからも一応人物像は聞いてはいたが、
 アンナの得ている知識から得たものも相まってより謎が深まる。
 ノワール伯爵を裏切って主催の一人となった謎の存在。
 そもそも伯爵に仕える理由もいまいちよく分からないので、
 ギャブロからするとドーンのような野心を持った以外の理由がない。
 それだけ主催にいることが彼にとってのメリットなのだろうが、
 どこかつかみどころのない人物ではその考えも余り進められない。

(マネーラ大丈夫かなぁ。)

 伯爵の話を聞いて立香だけがマネーラの事を優先して考えた。
 寝てた自分を態々助けてくれたので世話焼きな人(?)とは分かる。
 しかし伯爵が死んだ今、彼女の状態がどうなってるか分からない。
 最悪のことは想定する。数々の特異点や異聞帯を歩んできた彼にとって、
 間違っていたとしても当人はその踏み外した道を歩み続けると言うのは、
 極寒のロシアで敵対することになったアタランテ・オルタがそれだ。

「と言うか主催がやりたいことが何なんだろうな。」

「殺し合う必要がある点で、考えるしかありませんネ。」

 『殺し』が必要ではなく『殺し合ってもらう』ことに意味がある。
 でなければ伯爵を裏切るだけならば見せしめに殺すでも容易なはずだ。
 参加者にしてる以上は何時でも殺せるチャンスとは存在してたはずだから。

「心当たりならあるよ?」

「えっ。」

 のほほんとアンナをずっと眺めながら、
 何を考えてるか分からなかった立香が体育座りのまま手を挙げる。
 ずっと黙ってただけあってエレン達からも意外そうな顔をされた。

 参加者のマシュとは別の世界から招かれた藤丸立香はかなりの天然だ。
 サーヴァントの真名を忘れる、危機的状況でしょうもないことを聞く等、
 下手をすれば『お前は小学生か』と言うツッコミが成立してしまう程の天然な子だ。
 その天然は本来真面目なマシュにまで伝播してるのか、ノリはコメディ通り越してギャグだ。
 ……なのだが、この男の恐ろしい所はこのありようで数々の異聞帯を攻略していることでもある。
 極寒のロシア、神代の北欧、統一された中国、唯一神のインド、神々が栄えたオリュンポス。
 そして今やモース、妖精騎士、ケルヌンノス、災厄、モルガンなどが存在していた妖精國も、
 この小学生みたいなノリで、しかも純朴な精神をなおも保ったままで到達しているという実績。
 何をどうすればそうなるのかは不明だが、なんだかんだカルデアのマスターの実力は有している。
 当然この平安京にも覚えがあり、赤黒い空で平安京など最早一つしかない。

「芦屋道満って言う……えーっと、
 アル……アル……アルコールのサーヴァントでキャスター・マンボを名乗ってた!」

「少なくともその呼び方がどっちも間違ってることだけは私にもわかりマスね。」

 多少(多少か?)間違ってはいたものの、
 マンドリカルドの名前を忘れる記憶力の彼にとって、
 名前だけでも覚えていられるのは多少の成長は伺えるだろう。
 ついでに言えばクラスを伝えたところで話に支障はないので、
 クラスはアルコールであだ名もマンボのまま修正されることなく話は進んでいく。

「芦屋道満って大昔の陰陽師? だったよね。」

「はい。平安京にも深く縁のある方デス。
 しかし英霊とは、カナミンが聞いたらきっと喜びそうですね。」

 幕末の新選組、平行世界の剣豪、燕を斬る剣豪が如き農民。
 剣の達人がこれでもかといたら可奈美は戦いたいのは容易に想像つく。
 特に新陰流の開祖でさえそこにいるのなら目を輝かせて当然だ。
 残念ながら彼女の御刀に関わる家康たちはいないらしいが、
 また日本のサーヴァントが増えたとか増えてないとか。

「じゃあお前の知り合いの芦屋道満が犯人なのか?」

「うーん、どうなんだろう。悪さはするけど……」

671藤丸立香は多分分かっている ◆EPyDv9DKJs:2022/11/06(日) 10:03:47 ID:SuRhmxUM0
 下総や平安京では凄いこと(彼の語彙力がないのでこれ)をやってのけた際は、
 確かに悪党らしくもあって仲間になって間もない頃は彼自身も訝ることろはあった。
 だがそれはキャスター・リンボでの話。カルデアでの道満と言えば記憶に新しいのが。

『マスター? 根を詰めすぎてはなりませぬぞ。
 事務仕事なぞ拙僧にお任せなされ。ささ! ささ!』

 疲れ気味の彼を労ったりタイピングを披露したり。
 呪符を忍ばせようとしたことはあれどもそこまで悪さはしておらず、

「この間レポートの清書を手伝ってくれてそれで所長に褒められた。」

「悪い、全く意味が分からん。」

 過程をすっ飛ばしてカルデアの話をされれば、
 普通に誰だってわかるわけがなかった。

「でもあんまり悪さしなくなったよ?
 夏は水着ではっちゃけてたからお仕置き受けてたけど。」

「ストップストップ! 多分これ永遠に脱線しちゃう!
 私達が聞いてるのはその平安京で何をしてたか、だよね!」

 何処へ向かってるのかが分からず、
 侑が待ったをかけることで話を戻す。
 改めて、キャスター・リンボ(マンボ)時代における、
 平安京でしていたことをつまびらかに語っていく。

「神になるため……陰陽師から神って飛躍してない?」

「でも合点がいきマスね。天覧聖杯戦争、
 サーヴァントの……霊基? を集めることで、
 最終的に目論見を達成させようと考えていたんですね。
 となればしたいことは天覧聖杯戦争の大規模バージョン、
 と考える方が自然かもしれまセンね。」

 どちらも自分の手を下すことはせず、高みの見物から自分の利益を得る。
 なんとも悪党のテンプレートのようなそれらしい考え方をしているものだ。

「うーん、うちの道満だったら僕のせいになるから違ってほしいな。」

 サーヴァントと言うのは召喚されればマスターに従うものだ。
 ジャンヌ、クー・フー・リン、哪吒……仲間であったこともあれば、
 敵として立ちはだかったサーヴァントと言うのは数知れず存在する。
 もしかしたら此処の道満は双子に召喚されたことでその道を選んだ、
 と言うことだと思いたいと立香は思わずにはいられなかった。
 いや、夏は二年連続黒幕側にいたので『ん?』ともなってはいたが。

(一番こいつの精神性が凄いかもしれない。)

 善悪の超越。歴史に名を遺した英雄は数多に存在するが、
 悪逆の限りを尽くした所謂反英雄から神霊までもがいる。
 それらと分け隔てなく接することができると言うのは、
 先ほどギャブロが感じた立香の雰囲気もそこからくるものなのだろう。

「ところでアンナさんは首輪の解析ってできる?」

「できると思うけど推奨しないわ。ルールに異能で干渉しても爆発、
 と言うのがあるなら私の解析も異能になるかもしれないもの。」

「だよねー。」

 そんな簡単に話が済むわけがない。
 努力の積み重ねがスクールアイドルでもあるので、
 普段と変わらないと言えば変わらないのだが。

「確認はしておきたくないか?」

「でも確認すると言うことは、そういうことですよね。」

 確認=首輪を手にする。
 必然的にすることは一つだけだ。

「言いたくはないですが、回収できる相手が何人もいるのが皮肉デスね……」

 想像よりもはるかに死者が多すぎる。
 言い方は悪いが、首輪が普通に回収も可能だろうと。
 死体を損壊させるのは少々気が引けることでもあるが、

「私も、覚悟決めた方がいいですね。」

 エレンは気が引けていたものの、侑が後押しをした。
 いつまでも守られるだけでやりたくないことを押し付ける、
 そんな考えではだめだ。スクールアイドル同好会は皆と一緒に歩む。
 自分だけが後ろでいるなんて自分じゃないと。事の意味は理解しているが、
 だからこそエレン達の負担にならないよう、自分ができることをしたいと思う。

「ゆんゆん……」

『もう一つ貴様の欠点を教えてやろう。
 人殺しを躊躇するヤツに勝ちなどない。それだけだ!』

672藤丸立香は多分分かっている ◆EPyDv9DKJs:2022/11/06(日) 10:05:11 ID:SuRhmxUM0
 ギースからも言われた言葉が脳裏をよぎるエレン。
 守ると言うのは、守るだけに足りうる実力があるときだけにできるものだ。
 手加減どころか、もはや片腕では満足に戦えないのでは、躊躇は身を滅ぼす。
 このままの考えではいられないのはエレンもまた同じだ。

「とは言え、先に知人との合流が先デス。」

 まずは刀使、同好会、マシュ。
 決して少なくない人数ゆえに喪った数も多いが、
 まだ生きている人達がいる。せめて彼等との合流、
 それが先決であることは変わらないしエレンの状態から、
 戦力足りうる人物を集めていくのは大事なことだ。

「でも困ったな。人数は四人、二手に別れたいがエレンの状態がきついよな。」

「リッツーのお陰で回復はしましたが、
 腕がないとバランスが取れなくて大変デスね。」

 都合よくレオーネが来て、一緒に行動したいと思いつつも、
 未だに戻ってこれないということは、別件で忙しいのだろう。
 いつまでも待つというのはできないので、書置きだけでもしておこうと侑が行動をし始めると。

「お、レオーネが言ってた奴だな!」

 窓ガラスが割れていたので、
 てっきりここだと思って二階の窓から平然と乗り込んできた男、
 ミスターLの登場で中断をせざるを得ない。

「あなた、ミスターL!?」

 アンナは蝶のままであるので、
 必然的に名簿を見ることはできなかった。
 なので口伝であるマネーラと伯爵以外は把握しておらず、
 しかも本拠地でも出会わなくなったミスターLとの邂逅は想定しておらず、
 普段クールなアンナとしては珍しい反応を返される。

「む!? 赤い髭と一緒にいた奴じゃあないか。
 悪いが今は一時休戦だ。レオーネの言ってたユウはあんただな!」

 マリオと敵対関係ではあるので当然アンナも敵だが、
 今はそれ以上に優先順位として、悠奈と協力してこの殺し合いを止める。
 勇者一行との揉め事については後回しだ。

「今、レオーネさんって!」

「待って。貴方、今どういう目的で動いてるの?」

 唯一知り合いであるアンナにとって、
 一応敵の陣営である彼のスタンスの確認は大事だ。
 四人は初対面でそういった事情を知らない可能性もある。

「レオーネと悠奈、それと征史郎って奴と協力体制だ。
 此処には四人の勇者はいない。だったらオレのすることは一つ。
 伯爵様の遺志を継いで、マネーラやナスタシアとこの戦いを止めてやるだけだ!」

(何か勘違いしてる気がするのだけど……)

 ミスターLの言う伯爵の遺志を継ぐ、
 という内容は正直的を外れている気がしてならない。
 世界を滅ぼすことが本来遺志を継ぐではないのだろうか。

「伯爵は……?」

「あの方なら、きっと部下を大事にするさ。
 ナスタシアとマネーラが道を踏み外していたなら、オレが止めてやる!」

 何度か回転をした後、腕を天へと突き上げながらポーズを決める。
 勢いに気圧されてる四人を余所に、アンナは一人(一羽?)思案していく。

(何かずれてる気がするけど、明確に示すよりもそのまま乗った方がいいわね。)

 ノワール伯爵は世界を滅ぼそうとしていて、
 ミスターLはその部下、そういえば話は済む。
 ただ、此処で糾弾して得られるメリット以上のものがある。
 ミスターLはメカに長けており、その技術は恐らく捨て置けない。
 加えて戦闘能力も高く、此処で敵にするよりも味方の方が都合がいい。

「……今だけは貴方に協力させてもらうわ。」

 結果、特に揉めることもなくそれを選ぶ。
 此処には彼の様子からマリオもピーチもクッパもルイージもいない。
 だったら彼がいきなり約束を反故にするようなこともしない可能性は十分にある。
 勇者一行のパートナーと伯爵ズによる共同戦線が、此処に成立する。

「えっと、敵対関係?」

「ちょっと元の世界でいざこざがあっただけ。
 此処でもその関係を持ち込んだりはしないわ。
 後これは言わないことね。余計な混乱を招くだけだから。」

 流石に今から完全に誤魔化すのは不可能。
 敵対関係であることは否定はしないものの、
 あまり深く言及はしないでおくことにする。

 新たな参加者のエントリーにより、
 再び情報交換をしあう五人と一羽のフェアリン。
 とは言え此方もまた知り合いらしい情報はなく、
 あるとするならばギースの移動ルートの推測ぐらいだ。

673藤丸立香は多分分かっている ◆EPyDv9DKJs:2022/11/06(日) 10:05:38 ID:SuRhmxUM0
「まさか荒魂みたいな怪物とは、驚きでしたネ。」

 あの人間の姿は偽物だったのか、
 或いはそう言った支給品があるのか。
 どちらにせよ厄介であることには変わらない。
 人間よりもさらに化物じみた強さ。最早今の自分では勝つことは不可能。
 南に可奈美たちがいないことを願いつつ、話は一先ず終わりを迎える。

「それでどうする? ボク達はこうも人数が多いなら、
 手分けして人を探す方がいいとは思うが……ミスターL、一緒にいてやれるか?」

 エレンは片腕、侑は戦える身ではない。
 流石に彼女達を置いての移動は好ましくないことで、
 ギャブロがミスターLに護衛を頼む。

「ま、こんな状態じゃ仕方ないよな。まずは悠奈と合流だ。」

「アンナさんはどうするデスか?」

「私は立香と一緒にいるわ。」

 敵との交戦でのデータを取れるアンナにとっては、
 戦いを有利に運べるようにギャブロ達についていく方がいい。
 加えてミスターLがメモで教えてくれた首輪の仕様について、
 首輪を優先的に集める二人についていくことで話を進められるはずだ。

 話は終わり、軽い食事をとってから行動を開始する。
 ギャブロと立香とアンナはロックの捜索をしつつ変わらず周囲の探索。
 エレンと侑とミスターLは、一先ず悠奈との合流を目指すことに。

「じゃ、何かあったら博物館をよろしくな!」

 アンナを頭に乗せながら、立香とギャブロは先に屋敷を出ていく。
 早くロックの凶行を止めながら、多くの仲間を探すべく。


【D-2 境界線にある屋敷/一日目/朝】

【ギャブロ@大貝獣物語2】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(中)、MP消費(小)、左腕噛みつき跡
[装備]:メタルナックル@FINALFANTASY Ⅶ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:殺し合いには乗らない。
1:ロックを探す(他の参加者にはロックの危険性を伝える) 北側ABCDを中心に。
2:藤丸のおもりをしつつアンナとも行動。でも案外頼れるなこれ。
3:伯爵さまに出会ったら、E-3のかなでの森博物館で合流することを伝える。
4:二日目の昼にはE-3のかなでの森博物館へ戻り、キヨス達と合流して手にした情報を交換する。
5:子供見たいと思ったら真面目になったりふしぎな奴だな立香。
6:ミスターL、悪い奴らしいけど……それ言うとボクも似たようなものだしな。
[備考]
※参戦時期は暴走するダークを命と引き換えに止めた直後
※ロックの爆発する能力は完全には把握できておりません
 侑から事情を聴き、少し把握が進みました。
※回復魔法で回復するのに時間がいつもよりもかかることを把握しました。
※キヨス、マネーラ、藤丸、エレン、侑の世界について簡単に知りました。
※自分の世界の建物もあるのでは推測しています。
※侑・エレンの世界について簡単に知りました。
※立香から芦屋道満が関わってる可能性を示唆されてます。

674藤丸立香は多分分かっている ◆EPyDv9DKJs:2022/11/06(日) 10:06:14 ID:SuRhmxUM0
【藤丸立香@藤丸立香はわからない】
[状態]:疲労(中)、おめめスッキリ、ウキウキるんるん、ちょうちょが喋って嬉しい
[装備]:極地用カルデア制服@Fate/GrandOrder
[道具]:基本支給品、黒獣脂(まだまだあるよ)@Fate/GrandOrder、アンナ@スーパーペーパーマリオ
[思考・状況]
基本方針:殺し合いの打破。特異点とかなら修正する。
1:とりあえずギャブロ君、アンナちゃんと行動を共にする。(特異点か調査)
2:マシュ〜〜〜どこ〜〜〜?
3:カルデアと通信できる方法が他にないか探す
4:アンナちゃん凄い! ホームズみたい!
5:二日目の昼にはE3のかなでの森博物館へ戻り、キヨス達と合流して手にした情報を交換する
6:腕の接合ができなくてゴメンねエレンちゃん。そして、ロック君―――メラメラ。
7:道満が犯人だろうけど、(カルデアのあの道満だと)犯人っぽくないような。
8:9:ミスターLは悪い人? カルデアではよくあるから。
[備考]
※少なくともツングースカクリア以降(46話の聖杯酒造)です。
※ロックの危険性について知りました。
※キヨス、マネーラ、ギャブロ、侑、エレン、アンナの世界について簡単に知りました。
※寝ている間に誰か(ドレミー)と出会ったような記憶があります。
※スキルに制限がかけられていることを知りました。
 回復は6時間に1回、かつ切断などの欠損には非対応。
 他のスキルのCTや効果は後続の書き手にお任せします。
※芦屋道満が関わってる可能性を考えてます。
 ただしカルデアに召喚されてない道満の方です。
※アンナの制限は以下の通り(他は後続にお任せします)
 ・立香、またはアンナ自身が認識できない範囲に移動不可
  ただし所持者が死亡した場合などにおいては移動可能
 ・一部解析(八将神の弱点など)の制限(大抵可能)
 またアンナの参戦時期は8-3〜8-4、ノワール伯爵戦前です。






「あ、そういえばエレン……だったよな。
 お前刀を使うみたいだが、これっているか?」

 ミスターLの戦術はメカと生身での戦いだ。
 刀を持っていたところで使い道はないしエレンも木刀。
 飛び道具は出せるとしても心許ない装備にはなるだろう。
 そう思っていたのが出されたものに思わず声を上げる。

「Oh! 越前康継ではありませんか!」

 まさかこんなところで自分の御刀にでアウトは思いもよらず歓喜する。
 片腕ではあるものの、少なくとも写シなど様々な能力が使えるはずだ。

「Thanks! 此方も何かお礼をしないといけませんネ!」

「まあ一先ず悠奈と合流してからだな。
 会話して大分時間費やしちまったわけだが、
 ちょっと悠奈遅いな……何かあったかもだし行くか。」

 念のためすれ違いにならないよう、
 書置きを残した後三人も屋敷から出ていく。
 今、彼女達が戦いの真っただ中であることを知る由もなく。

【古波蔵エレン@刀使ノ巫女】
[状態]:貧血、左腕欠損
[装備]:越前康継@刀使ノ巫女
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本:殺し合いに乗るつもりはありまセーン。
1:片腕でも私のやることはかわりまセン。
2:薫や可奈美達が心配デスが、特に不安なのは姫和デスね。
3:ゆんゆん……あのとき身に纏っていた雰囲気は一体?……ちょっと心配デスね
4:二日目の昼にはE-3のかなでの森博物館へ行き、キヨスと呼ばれる人たちと情報交換
5:Oh! 越前康継! Thanks!
[備考]
※参戦時期はアニメ版21話、可奈美が融合した十条姫和との戦闘開始直後です
※ギャブロ・立香の世界について簡単に知りました
※ロックの危険性について知りました。
※立香から芦屋道満が関わってる可能性を示唆されてます。
※御刀を得たため刀使の能力を行使できます。

675藤丸立香は多分分かっている ◆EPyDv9DKJs:2022/11/06(日) 10:06:30 ID:SuRhmxUM0
【高咲侑@ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会】
[状態]:疲労(大)、腰打撲、右肩脱臼、ロックに対する怒り、エレンに対する自責の念(大)
[装備]:五視万能スペクテッド@アカメが斬る!、神木・黒那岐丸@Re:CREATORS
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本方針:みんなの事が心配。
1:みんな無事かな……レオーネさんも。
2:ごめんなさい、エレンさん……私のせいだ……
3:レオーネさんもエレンさんも、愛さんみたいな……
4:帝具……オーバーテクノロジーすぎない?
5:ロック(禄朗)さん……私は貴方を許せない。
6:ミスターLさんとエレンさんと行動する。
[備考]
※参戦時期は少なくともアニメ版五話以降ですが、
 具体的なのは後続の書き手にお任せします。
→参戦時期は11話〜12話の間
※デイバックや基本支給品、ランダム支給品(×0〜2)は、
 侑が待機してる屋敷の中に放り出されてる状態です。
※ギャブロ・立香・アンナの世界について簡単に知りました
※ロックから零の妹について知りました。
※立香から芦屋道満が関わってる可能性を示唆されてます。

【ミスターL@スーパーペーパーマリオ】
[状態]:精神ダメージ(特大)
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜2
[思考・状態]
基本方針:悠奈のバカバカしい生き方とやらで主催共を叩き潰す。
1:ユウナ・レオーネと行動を共にする。
2:伯爵さまを殺した奴は殺さないがとりあえずぶん殴る。
3:ヒーロー……か。
4:ユウナ! ジュネーヴ条約にジャマイカって何だ!?
5:伯爵さまの遺志を継いでマネーラ、ナスタシアと共に脱出する。
6:工学だけではだめって、どうすりゃいいんだこれ。
7:一足先に侑達の所へついたがまさかアンナがいるとはな!
8:二日目の昼にはE-3のかなでの森博物館へ行き、キヨスと呼ばれる人たちと情報交換。
[備考]
※参戦時期は6-2、マリオたちに敗北した直後
※悠奈からリベリオンズの世界について簡単な知識を得ました。
※名簿から伯爵さまたちが参加していることを知りました。
※悠奈から”拳銃”の脅威を知りました。
※レオーネからアカメの世界について簡単な知識を得ました。
※征史郎経由でマネーラ、ギャブロ、藤丸立香、キヨス、零、アルーシェ、夕月、ロックと関連人物の情報を得ました。
※ギャブロ、立香、侑、エレンと情報交換しました。
※立香から芦屋道満が関わってる可能性を示唆されてます。

【越前康継@刀使ノ巫女】
ミスターLに支給。古波蔵エレンの御刀。
基本的な説明は千鳥、小烏丸参照。
長さは70センチほどの打刀に相当。

676藤丸立香は多分分かっている ◆EPyDv9DKJs:2022/11/06(日) 10:06:53 ID:SuRhmxUM0
投下終了です

677桐生伝 アシッド・レイジ・ロアー ◆EPyDv9DKJs:2022/11/13(日) 21:53:58 ID:JN3ce.6k0
投下します

678桐生伝 アシッド・レイジ・ロアー ◆EPyDv9DKJs:2022/11/13(日) 21:55:25 ID:JN3ce.6k0
 一人の少年による嵐は過ぎ去った。
 次なる戦いは嵐を超えた『災厄』の戦い。
 真祖や悪魔人間(デビルマン)とでは少しばかり見劣りはしよう。
 しかしこの場───否、この舞台でも指折りの怪物であることに違いはない。
 此処に立つは真央と共に戦い抜いた異形の幹部が一人なのだから。

 集団へ突貫するように突っ込む桐生。
 転生の劣化、対等の存在がないことにより酒に溺れながらも、
 常人ならばまともな対応をする前にその顔面が潰される動き。
 酸性雨を使えば容易に近づくこと能わぬ難攻不落の存在となりうるが、
 まずはその手を使うに足るだけの反応がどれだけできるかにある。

 ほぼ全員が散り散りになる形で回避に専念する。
 気絶したしんのすけとアリサを守るべくマシュと、
 服部と違い飛行能力がないが宮藤とアニはほぼ動かず、
 迫る彼の拳を盾で防ぐ。

(重い!)

 怪力スキルを保持した英霊とまではいかずとも、
 卓越された義手の一撃は盾越しでも充分に威力を物語る。
 直撃だけはまず避けられないと示すばかりに地面を軽く削り後退させられる。

「アンタ! こいつらの回収を手伝え!」

「はい!」

 他の大体は人間離れした身体能力を有してるが、
 アニは巨人になれなければできることは少ない。
 なので此処は最初にするべきは気絶した三人の避難。
 マサオとしんのすけを抱えるが、まだアリサがいる。
 治癒魔法が戻ったものの、ストライカーユニットがない現状宮藤は戦力外。
 何より怪我人には自分の魔法が役に立つのもあり、アニと子供たちと共に戦線を離脱。
 何かあった時戦線復帰できるように数件程度離れた家屋まで移動してる間も攻防は続く。
 盾をかいくぐった貫手を後ろへ下がりながらダメージを免れる、

(ッ、この攻撃方法は!)

 ことはできなかった。
 軽微とは言え左腕が理由もなく軽く爛れたことで。
 メルトリリスや酒呑童子の宝具に類するものだと察した。
 対象を溶かす形で攻撃を成立させる硫酸や毒のような代物。
 いくらマシュ自身が毒に耐性があると言えども、
 これを無力化はすることは決してできない。

「敵の攻撃方法は硫酸のような溶解のようです!
 ですが目視、嗅覚共に確認できません。気を付けてください!!」

 今にも攻め入ろうとした何人かがマシュの言葉で躊躇してしまう。
 無臭で目視不可と言う、宝具であれば高ランクは間違いない攻撃だ。
 そも、彼と戦った藤原美奈都が飛び道具もなしに彼と交戦できたのは、
 それらを直感で避けていたという他者が真似するのは早々にできない。
 此処にいるのは彼女ほどの直感を持ち合わせてるとは言えない人物のみ。

「だったら私が!」

 ただし、彼女にもできなかったことができる人はいるものだ。
 此処で攻撃に転じたたのは日菜子、ムラクモ、カインの三名。
 近づくことができなければ『近づかずにできる攻撃』で狙うと言う単純な手段。
 カインが屋根の上から放つ紫の炎のシュワルツパンツァー、
 同じく反対側の家屋の屋根に避難したムラクモも電撃の球体となる電攻弾、
 マシュの右側サイドからエネルギー弾のような攻撃、電撃のパッセを放つ。
 飛来してきた炎を義手の右腕で弾き飛ばし、残りの攻撃を後退により回避。

「はいはーい僕の出番だねー!」

 後退した瞬間片太刀バサミによる針目縫の斬撃。
 避ける、防ぐを無駄なく対応されて蹴り上げが顎を襲うも、
 まるで紙を蹴るかのようにペラペラときりもみ回転で高く舞う。
 無論当たっていない。しかしわざとらしく吹っ飛んでいく。

 吹っ飛んだ隙にマシュの前へと降りたムラクモがダカダカと音を立てながら迫る。
 瞬時に対応しようとするも、突然彼の姿が四人に分かれ三人が蹴りと共に肉薄。
 電光機関による残像により空中、正面、足元いずれかを狙った攪乱攻撃ではあるが、

「容易に分かるぞ人間(クソムシ)め!!」

 攻撃を一瞬躊躇した人物の中にこの男はいた。
 ではなぜそんな危険を冒してまで近づいてくるのか。
 否、これは近づいてない。三つの攻撃全てがブラフであると。
 なのでそのまま左手を翳しながらの肉薄にムラクモも距離を取る。
 顔の皮膚が少し溶けるが大事には至らない。

「援護します!」

 震電で制空権を得ている服部が銃撃で接近を阻止。
 すぐさまバクステで下がりながら接近していた針目とカインへと回し蹴りの迎撃。
 どちらもすぐに回避に専念しダメージの軽減を優先。

(いいぞ。ならば手を抜くのは無作法と言うもの!!)

679桐生伝 アシッド・レイジ・ロアー ◆EPyDv9DKJs:2022/11/13(日) 21:57:12 ID:JN3ce.6k0
 最早力量を図るのは十分な時間を過ごした。
 これだけの人数で即席の連携を良くこなしている。
 五千人に一人程度の人間とは比べるまでもない相手だ。
 左腕を掲げれば空が暗雲立ち込め赤黒い空を覆い、酸性雨が桐生を中心に広がっていく。
 地面の溶け具合から皆何かを察し、距離を取らざるを得ない。
 平安京故に建物は豊富だがどんな建造物であろうと変わらない。
 地面をぐずぐずと溶かしていく姿は建物だろうと防ぎきれるはずがないのだ。
 酸性雨の展開が通常の雨雲とは別で緩やかであるため、
 全員が逃げと言う選択肢を取ることができるのが救いか。
 しかし逃げる以外の選択肢を許すことはないその攻撃。
 この場の誰もが酸性雨を無視して攻撃などできなかったが、

「全員マシュの下へ集え!!」

 ムラクモからの号令は逃げに徹する全員へ告げる。
 何かしらの対策があると見込んで距離を取るのに徹した二人と三人を除いて集まっていく。
 酸性雨が到達するまでの時間は一分もな。桐生の接近を含めれば更に短くなるだろう。

「ムラクモさん、私の宝具では……!」

 いまは脆き夢想の城(モールド・キャメロット)は、
 いまは遙か理想の城(ロード・キャメロット)をマシュのみで再現する宝具。
 城壁で正面の攻撃は防げるが、上空からの攻撃に対しては余り有効打に足りえない。
 防ぐ宝具だが、受け止めるのであって無敵になれるわけでもなく、そもマシュはこの恩恵が薄い。
 宝具で守ろうにもマシュだけは死ぬ。そんな意味合いかと思われていたがそれは別であり、

「盾を扱うのであれば使いこなせるはずだ。渡した意味もわかるはずだ。」

「!」

 銀色の大き目の盾を取り出し、それを投げ渡す。
 出てきた盾の性能を確認し、即座にそれを受け取り空へと翳す。
 恐らくできるはずだ。この盾は他者に貸し与えられても発揮するのだから───

「蒼天囲みし小世界(アキレウス・コスモス)!!」

 彼が投げ渡したのは蒼天囲みし小世界。
 余りにも有名なギリシャの英霊、アキレウスが所持していた宝具だ。
 アトランティスで見たことがあるので、それが何かは理解できた。
 アキレウスが生きた世界の全てを表した大盾にして神造兵装が一つは、
 真名解放をすれば盾に刻まれた極小の一つの世界が展開、世界一つで防ぐ結界宝具。
 この盾に挑むということは、それは即ち世界を相手に攻撃していることにもなる。

 いくらこの殺し合いに出された宝具と言っても神造兵装。
 使用者を選ぶものだと判断した彼はシールダーとなるマシュへと託した。
 もっとも、これだけのものを使って疲労なしは流石にあり得ないとも判断したので、
 マシュに『使わせた』と言うべきなのかもしれないが。
 なお実際は十二時間に一回と言う極めて少ない回数制限だけになる。

 酸性雨を中心に緑の光が辺獄の空が輝く。
 広がる暗雲を全てのみ込むかのように世界が展開される。
 神すら滅ぼす赤のランサーの槍を防いだ経験があるのだから、
 町一つを壊滅する程度の酸性雨ではこの結界を突破することは不可能だ。

「あれ程の広範囲、長時間は使えないはずなので今がチャンスです!」

「足元には気を付けないとジュワッと溶けちゃうねー!」

 針目、ムラクモ、日菜子と得物が剣の参加者が先へ走り込む。
 もっとも、一番早いのは───

(もう来たか!)

 迅移による移動で加速してきた沙耶香だ。
 肉薄してきた相手の目の前に現れた妙法村正の一撃を義手で防ぐ。
 酸性雨は一度展開すれば多少のインターバルを要するし効果時間も短い。
 下手をすれば平安京丸ごと攻撃範囲にしかねない力であれども此処では弱まっている。
 回数制限や大きな疲労がない彼にとって、首輪で科せられた数少ない持続と射程の制限。
 なのでもう一度展開するには時間がかかる。その展開までに勝負を付けると言うのが、
 桐生を相手に犠牲なくして勝てるかどうかの条件でもあった。

(腕は最初の奴ほどではないがいいぞ……これだ。これこそが俺の本懐だ!)

 続けてくる高速の斬撃を義手で丁寧に払いのけながら桐生は高揚する。
 他者にとっては地獄、自身にとっては楽園にも等しい心行くまで戦える存在達。
 憎悪し続けた人間ではあるが、このように戦えることについては嬉しくも思う。
 首輪で制限されようとも、彼にとって少しでも互角に戦える相手はそれだけで及第点だ。

(この人、強い!)

 二段階迅移の速度は高速道路を走る自動車に匹敵する。
 正面、背後に回れども義手一本で剣戟を受け流していく。

「ッ!」

 視界がぐにゃりと歪みかけた。
 左手から出される酸の力は写シで無力化できるが、
 自分の身体が溶ける感覚は思わず距離を取らざるを得ない。

680桐生伝 アシッド・レイジ・ロアー ◆EPyDv9DKJs:2022/11/13(日) 21:58:18 ID:JN3ce.6k0
「突撃します!」

 沙耶香が下がった後立て続けに来るのはマシュと針目の二名。
 ブーストさせた回転による遠心力を以って振るわれる盾の横薙ぎを軽いジャンプで回避。
 盾の上に乗った後即座に距離を取るようにバックステップし、
 迫る無数の片太刀バサミの突きを悉く回避していく。

「ヒムリッシュ・アーテム!」

 空中にいるところを姫和の時にも使った気を隕石の如く落とすカインの大技、
 回避は不可能と判断した桐生は右手で防いで、そのまま受け流すことでほぼ損耗なし。
 更に続けて立体起動装置で迫る植木がスナップブレードによる斬撃も義手で防がれる。
 しかもそんな硬いものを攻撃するものではない為、あっさりと刃が折れてしまう。
 だがそれぐらいのことは想定済みであり、

「だったらこれだ!」

「ゴッ───!」

 折れた刃は使い物にならない、即ち『ゴミ』だ。
 飛んで行こうとした刃を掴み巨木が桐生を吹き飛ばす。

「こうでなくてはな!!」

 巨木を喰らいながらも桐生は受け身を取って着地し、
 そのまま巨木を足に植木の方へと迫る。

「あぶねっ!」

 袖が皮膚に張り付く不快感を感じつつ、
 即座にガス噴射でその場から離れて難を逃れる。
 花鳥風月(セイクー)で空中移動になれたお陰か、
 ろくに才のない植木でもなんとか使いこなせている
 逃げられた後即座に別のターゲット───ムラクモへと変更。

(今が好機か。)

 斬れば死亡確定の村雨。
 かすり傷さえ当てれば勝ちの勝負だが、
 卓越された拳の乱打と義手で的確に防御され、かすり傷一つ狙えない。

「何かは知らんが、露骨に攻撃の隙を狙いすぎだ。」

(強すぎるのも問題か。)

 視線がやたら村雨の方へと寄ってしまい、
 意図せず防御するべき攻撃だと気付かれてしまった。
 強い武器を持てばいい、と言うものではないなと軽く示威する。

「此処は一度退こう。」

 電光機関の光学迷彩で姿を消す。
 消えると同時に即座に距離を取られて隙は突けず、
 後退したところをカインの蹴り上げに炎を纏わせたシュワルツランツェを狙うも、
 先に左足を左手で掴まれそうになり咄嗟に引っ込める。

(先の酸性雨と言い、奴の左手から発せられるのか。
 不用意な接近はやはりするべきではないな……徒手空拳も洗練されている。)

 即座に方針変更し距離を取りつつ炎を放つ。
 回避と同時に左手を後方へと伸ばすと、

「あっぶなーい☆」

 背後から針目が迫っているのは見えていたので酸を狙うも、
 軟体動物かと疑うレベルのよけ方で針目が酸をギリギリ回避。
 そのまま振り下ろすも白刃取りの要領で止められる。

「あー! 僕のハサミー!」

 掴まれた部分が一気に錆びついてしまう。
 しかも先端部分は圧し折られて見栄えの悪い姿に変えられる。
 隙を埋めるようにシールドバッシュするマシュを両腕で受け止めて防ぐ。
 彼女の背後から右サイドへ回り込みながら植木がさびたハサミの刃を拾い上げ、
 サスマタのような木へと変化させてそのまま勢いよく伸ばす。

「無駄だ。」

 左手で受け止め、同時に近づいた傍から腐敗していく。
 植木も最初から予想はしていたがこの男との相性が絶望的に悪い。
 カインのような炎、日菜子やムラクモのような雷撃と言った、
 酸の能力を無視できる攻撃方法ではない木の攻撃では厳しいと言わざるを得ない。

(流石に数が多いな……少しばかり使わせてもらうか。)

681桐生伝 アシッド・レイジ・ロアー ◆EPyDv9DKJs:2022/11/13(日) 21:59:08 ID:JN3ce.6k0
 基本桐生は徒手空拳と酸性雨ありきなので、
 ずっと放置していて使うことのなかった支給品を取り出す。
 出てきたのはフェイトが所持するバショー扇に似たヤツデの形をした団扇。
 半天狗の一体、可楽の団扇だ。上弦の鬼が用いる道具は並の威力に非ず。
 周囲へと巻き起こした風が周囲の参加者を風圧と共に吹き飛ばす。
 唯一防げたのは盾を持っていたマシュと空中にいた服部のみ。
 他の六名はもろに風を受けてしまい距離も取らされて反撃は不可能。
 当然残された二人が攻撃を仕掛けるもそれより桐生は早く動く。
 地面に風を飛ばして跳躍と同時に服部による制空権を超え、踵落とし。
 素早く対応する桐生に使い慣れてない特殊棍棒では追いつかない。
 落としたところを酸で溶かしにかかろうとするも再び盾の薙ぎ払い。
 義手で防ぐことでダメージを最小限にしながら、即座に受け身を取りながら着地
 着地の勢いそのままにマシュへ肉薄し、ストレートなミドルキックで盾を蹴り飛ばし、
 その隙をついて下から振り上げるように団扇を振り上げ、マシュを上へと飛ばす。
 これで服部を除いた全員が桐生から離れることとなり、今度こそ服部へ狙って左手を翳す。
 空から叩き落された服部はまだ起き上がれる状態ではなく、回避することは不可能。

「数の暴力はあるだろうが存外楽しめたぞ人間。」

 敗因があるとするならば連携の問題だ。
 人数だけで言えば理不尽とも呼べる戦力だろうが、
 多ければ多い程に連携と言うのは取りにくくなる。
 先のマサオのような巨大であれば巻き添えにすることはない攻撃できるものの、
 今度のは体躯と能力、更に日菜子や沙耶香はまだしも他が成り行きで出会ったばかり。
 能力のろくすっぽも理解できてない人物たちの能力との連携をどうとれと言うのか。

 今から起き上がっても顔面の酸化は免れない。
 誰もがそう思ったその時。

 誰が予想する。
 この状況下で彼女を守ったのは。

「オラオラどけどけぇー!!」

 ───まさかの。
 まさかの佐藤マサオである。



 ◆ ◆ ◆



「衛兵の真似ごとをやるとはね……」

 戦いの音がそう遠くない場所から耳へ届く中、
 近くの建物の中でアリサに包帯を巻きつつ軽くごちるアニ。
 散々殺し殺されの間柄ではあったので今更だが、
 まさか自分がこういうことをするとは思わなかった。
 調査兵団の時に最低限は覚えてはいるが使う機会など基本ない。
 巨人にやられれば大体死ぬし、現にアニはそれをやっている。

(子供のくせに、とんでもない啖呵の切り方だったな。)

 ムラクモの合理的な考えを黙らせる清々しい綺麗ごと。
 殺し合いに恥も何もない。合理的に行けばよってたかってなど関係のないことだ。
 でも、その綺麗ごとを貫いたまま少なくとも今は全員生存と言う偉業を成し遂げた。
 あの状況ならアニでも彼を殺す方が妥当だと判断できるので相当なことになる。
 殺すか殺されるかばかりをやってたこっちの世界の連中のことを考えると、
 こっちは狭い世界と言うところがありながらも、よくやったと思いたいところだ。

 その傍で宮藤は懸命に魔力で治癒していく。
 ダメージはマサオも無視できないが、物理的にみるとアリサの方が深刻だ。

「ダメ、魔力の消費が……」

 元々回復系の行為は概ね制限されている。
 ヴァンパイアと言った肉体の治癒ですら低下気味だ。
 宮藤の得意とする治癒魔法もその煽りを受けている。

「あんたのそれ、魔力使うのならこれ食うか?」

「え、いいんですか?」

「私の力に魔力はいらないから外れだっただけだ。」

 アニから渡された多量の実を貰い、
 それを食べながら治癒魔法を続けていく。
 回復量は微々たるものだが、塵も積もれば山となる。

「とりあえずこれで大丈夫かな。」

 半分以上食べることにはなったが
 一通り終わり額の汗をかきながら宮藤は胸をなでおろす。
 傷は塞がった。苦しそうな表情も今は眠ってるだけのように安らかだ。
 幼い少女らしい可愛い寝顔は此処が殺し合いの舞台でなければどれだけ良かったか。
 ウィッチとしてより彼女達を守る、もといお助けしなくてはと思えてくる。

「次はこの子だけど……」

682桐生伝 アシッド・レイジ・ロアー ◆EPyDv9DKJs:2022/11/13(日) 22:00:30 ID:JN3ce.6k0
「治しすぎて手が付けられなくなるから程々にしておきな。」

 辛辣ではあるがもっともな意見だ。
 彼は善人なのかもしれないが突然豹変した。
 自分自身も理解してない可能性だって十分にある。
 と、合理的に考えればそうだが相手は子供。

「治します。」

「本当に程々にしておくことだね。」

 立場がどうあれ関係なく手を差し伸べる。
 余り縁はなかったがこういう善性の塊は以前訓練兵に見かけた記憶がある。
 他の二人の様子を見ながら、宮藤はマサオにも治癒魔法を行使していく。

「あれ……」

(もう目が覚めたのか? いや、
 巨人化に類する力があるならありえない話ではないか……)

 ものの数分。あれ程の力を使ったのだから暫くは目覚めない。
 そう想定していたが、思ってた以上に回復が二人より早かった。
 八将神とか名乗っていたので、多分それらの類だとは察することはできる。

「ヒィ〜〜〜〜!」

 マサオが二人を見ると軽く悲鳴を上げる。
 アニは基本的に仏頂面だ。加えて父が死んだと(思ってる)時期でもある。
 だから影を落として不機嫌そうな表情で、その上巨人になれた元敵だ。
 睨むような視線になったところでなんらおかしいものではなかった。

「落ち着け。別に殴るとかそういうつもりはない。」

 平手を上げながら落ち着くよう促すアニ。
 その後宮藤の説得も相まって一旦落ち着くことになる。
 『もう少し面を気にするべきか?』と近くの鏡で軽く自分の顔を眺めていた。

「って顔はどうでもいいんだ。
 それで、さっき言ってた八将神って何か分かるか?」

「えっと……」

 言って大丈夫かと一瞬思ったが、
 だったら既に軽く八将神の名を口にした。
 多分言っても大丈夫……なんて五歳児が判断するわけもなし。
 迷惑をかけた人たちと言う観点もあるので、正直に答える。

「なるほど。向こうの連中の切り札か。」

 メフィスとフェレス、それと芦屋道満と呼ばれる新たな人物。
 ディメーンを含めて表立った主催は四人で構成されていることが分かる。
 それらを束ねてる奴とか部下とか、いるかもしれないので断定はできないが。

「あの、おかしくありませんか?
 普通こういうのって戦力になる人にするのでは。」

 されたくはないがウィッチである宮藤や服部、
 今外で戦っている誰かでもよかったと思えてならない。

「気まぐれでしょ。現にしんのすけだっけか、こいつ。
 こいつとぶつけて遊びたかった……ってだけでも説明はつく。」

 そうでもなければ五歳児を尖兵にするとも思えない。
 ひねくれた性格をしている連中ならばやりかねないと。

(マシュが疑似霊核とか言っていたが、主催にサーヴァントって奴がいたりするのか?)

 マシュとは情報交換していたので、なんとなくだが理解できる。
 少なくとも通常の情報交換では得られそうにない代物だ。
 改めてマシュに確認を取っておきたいところになるか。

「アニさん。私は向こうに戻りますから三人を見ていてください。」

「……あのさ。あんたが行って戦況、どうにかなるのかい?」

 多少は戦闘の経験はしているようだが、
 あれと戦うには巨人になれない自分では厳しいものがある。
 彼女が言ってどうこうできるとかの問題ではないだろう。
 特に八対一で戦いながら未だ戦闘は終わっていない。
 それだけの相手に彼女を前線に出すのは愚行だ。

「ですが、私の魔法なら!」

「戦闘中の回復を何度も続ければアンタが斃れたら、
 此処にいる三人が何かあった時私一人で対処は難しいから言って……ん?」

「アニさん?」

「おい。あの……マサオって奴どこ行った。」

「え!?」

 振り向けばマサオの姿がなくなっている。
 周囲を見渡したら彼の後ろ姿が少しだけ見えたが既に外へと出ていくところで、

「私が追いますから、アニさんは二人を!」

「え、あ、おい!」

 アニの静止の言葉も聞かず宮藤は緑の外套を羽織りながら追いかける。

683桐生伝 アシッド・レイジ・ロアー ◆EPyDv9DKJs:2022/11/13(日) 22:01:50 ID:JN3ce.6k0
 追おうにも二人が寝ていることもあって、ため息をつきながら待つことを選んだ。



 ◇ ◇ ◇



 佐藤マサオの八将神としては不動明に類似したスイッチ形式だ。
 あちらであれば勇者アモンに宿業を埋め込んだ結果人間の状態ではさほど恩恵はない。
 一方彼の場合は些細なことで元に戻るが、同時にあっさりとスイッチが入ってしまう。
 先の大合戦とも言うべき戦いにおいてはしんのすけに対する憧憬、或いは嫉妬。
 そういった類による感情でもスイッチが入っては攻撃を仕掛けると言う、
 手抜きに見えるが八将神が持つ気配遮断のスキルを存分に活かしたヒット&アウェイ。
 これを成立させてるのは、一番おふざけでありながらもマサオが一番使いこなしていた。

 ただ、一度理性を取り戻した彼にこのスイッチ形式は曖昧なものとなる。
 記憶の改竄されたアーナスでも、別の存在により特殊な立場となった姫和でも明とも違う。
 ただの一般人の小僧でしかない彼が八将神の衝動に耐えきれるものではなかった。
 それでもなお逃げると言う形を選べたのは、しんのすけとのやり取りが理由になる。
 間違った道を進んだから、今度は間違えたくない。そういったありふれた理由によって、
 マサオはその場から逃げる形で四人に迷惑をかけないように走り出した。

 そして出会ったのは明らかに怪物と言うべき姿の桐生。
 普段のマサオだったら泣きわめいて逃げ出すのが普通だ。
 でも、桐生と戦っている数多くの大人達の戦いを見てマサオも思う。
 自分だってお助けしなくちゃと。お助けの内容が『参加者を殺す』という点はあれども、
 今までの暴走とは違った形での暴走を起こしていた。

 大分忘れられてることではあるが、
 別に八将神は殺し合いを加速させる要因だろうと戦いを仕掛ける。
 アーナスだってあの場が解決しなければ戦っていたのだから。
 ずっと逃げの手段となる気配遮断を、初めて逃げではなく攻撃へ転じた。
 接近されるまで気付かなかったことと、距離が近すぎたこともあって、
 先程咄嗟に持ってしまった馬手差しの一撃を咄嗟に左腕で掴んで止めに入る。

「チィッ!」

 義手でガードするのは間に合わないが、
 刃が骨にぶつかったことでそれ以上の攻撃にはならない。
 バックアップがあれども所詮は五歳児。真剣でもこの程度が限界だろう。
 桐生にとっても決して小さいとは言い切れないダメージではあるものの、
 そのまま高速で反撃し、マサオの頭部を義手がめり込みむようにそのまま地面へ叩き潰す。
 偶然にも、それはマシュが言っていた疑似霊核のある場所と一致している。
 彼が知る由もないことだが、マサオの急所を的確に貫いていた。

「!!」

 動けなかった多くの人が反応する。
 しんのすけとアリサが救おうと必死に戦った少年。
 彼の顛末がこのような形になるとは誰も思わなかった。
 八将神の単なる宿業と言えば、その程度の話ではある。
 だが、八将神になりながらも彼は形は歪んでると言えども、
 しんのすけのように誰かをお助けしたかったのは間違いなかった。
 特に、目の前でそれを目撃することとなった服部には特にダメージが大きい。

「下の下以下、か───」

 新人類よりもはるかに弱い弱小な存在。
 これに手傷を負わせられたのは癪に障るがすでに倒した。
 形は少し違えどもまずは一人。そのまま今度こそ服部を狙う。
 だが、彼ら以上に先に間合いへと詰めていた人が一人だけいた。
 植木、沙耶香、日菜子、マシュ、カイン、ムラクモ、針目、いずれでもない。
 寧ろそれらであれば、桐生を前に誰だって視界に入っている。接近に気付くはずだ。
 でもいた。彼の拳の間合いに、宮藤芳香が。

(この人間、いつの間に接近を!?)

 歴戦の猛者である桐生ならば、
 十分に気配や足音から察することができたはず。
 ではなぜ、目の前にコートを羽織った宮藤芳佳がそこにいるのか。
 二人連続でそのステルス性に気付かなかったことに驚かざるを得ない。
 勿論宮藤にはステルスのような魔法が使えるわけではない。
 彼女が羽織っている緑のコート、顔のない王(ノーフェイス・メイキング)の効果だ。
 消音、気配遮断、透明になると極めて高いステルス性能を誇るロビンフッドの宝具。
 消耗は大きいが、不意打ちをするには余りに便利な代物。

(───助けられなかった。)

 しんのすけと変わらない年頃の子供を。大事な友達を。
 互いが互いをお助けするという関係を築いておきながら、
 守ることができなかった自分の無力さに涙がこぼれる。
 あの傷では即死だ。最早治癒魔法をする可能性すら不可能だ。
 だから、せめてできることは。

「───ッ!!」

 声にならない叫び声と共に動く。

684桐生伝 アシッド・レイジ・ロアー ◆EPyDv9DKJs:2022/11/13(日) 22:02:57 ID:JN3ce.6k0
 目の前の相手を無力化するしかない。
 皆殺しを宣言した、この異形の存在を。
 叫びながら宮藤は手に握ったギャレンラウザーを放つ。
 桐生は強い。それはあの人数で負傷をほぼしてないことから明白。
 だからゼロ距離ならば外すことはないと判断してその引き金を引く。
 ゼロ距離ならば上級のギラファアンデッドすら屠るその一撃。
 その威力は当然凄まじいものだ。

「グッ、ヌウウウウウウウウウウッ!?」

 爆発のような威力で互いが吹き飛ばされる。
 宮藤は酸が染み込んだ大地を軽く転がり、
 全身が爛れた痛みを感じるがまだ軽傷な部類だ。
 一方桐生はと言うと、脇腹が大きく抉られた状態で転がる。
 いくら化物じみた彼と言えども、これは決して軽傷ではない。
 本来だったら急所を狙うものだが、宮藤は誰かを殺すつもりはない。
 彼女の加減のお陰で一命をとりとめたが、人間の考えを汲み取る気はない。
 早急に勝負を付けなければならなかったのだが、その時不思議なことが起こった。
 少なくとも、参加者にとっては何一つ知らされてないがゆえにそう表現するしかない。










 本当の災厄は此処からだ。
 佐藤マサオ死んだ、と言うことは───
 『八将神』が死亡したと言うこと。










 あり得ざる音を戦場の全員は耳にした。
 あり得ざるものを戦場の全員は目にした。
 全参加者共通の、最終的に参加者を縛る枷。
 その枷が、何の脈絡もなく桐生の首元から離れたのだから。

 八将神討伐報酬。
 四人の誰か一人でも殺せばその褒賞にあやかれる。
 誰よりも早くに、その枷からこの男は解放された。
 誰も理解できない。その状況に。桐生自身でさえも。
 一つ言えるのは首輪が外れた。誰よりも早く、この男が。

「ウオオオオオオオオオ!!!」

 制限がなくなった。確信したことで桐生は理由に左手を空へと掲げる。
 アキレウスの宝具は既に効果切れだが、同時に酸性雨の効果時間も切れていた。
 だがもう彼には首輪がない。酸性雨の時間制限? 酸性雨の射程距離?
 最早そんなものは一切の関係がない。限界まで引き出すことが可能だ。
 例え脇腹を抉られていようともその程度で倒れるつもりはない。
 相手が米軍ならこんなレベルでは勝てない。この程度で倒れるものか。
 人も物も全てを溶かしつくす。人間が乗り越えるべき最後の壁だと言わんばかりに。
 災厄は放たれた。十一対一ではない。残りの参加者全員VS桐生と言うレベルのもの。
 このままいけば西の山々はともかく、平安京全土を大地以外の全てを溶かしつくす。
 これを回避できるだけの平安京から離れている人物は、存在しない。
 一番近くにいた宮藤は服部に回収されて逃走する形で難を逃れる。

「ムラクモさん! どうすれば……」

 最初の時と殆どが同じだ。
 全員が雨から逃げるように家屋へ逃げるか、
 雨から逃れるように全力疾走でその場から離れるだけ。
 左腕の傷のせいか多少進みは遅いが、やがて街を全てのみ込む酸性雨となるだろう。
 全員散り散りになっており日菜子とムラクモの二人、沙耶香と針目の二人、
 服部と宮藤とカインの三人、マシュと植木の二人と皆散り散りになっていく。

「こればかりは逃げ以外の手段が今の手持ちでは思いつかん!」

 余りに投げやりな答えだが、仕方ないというものだ。
 酸性雨が迫りながらも全力疾走で逃げる以外の選択肢がない。
 あの雨の中、酸がたっぷりの大地を奔れる人間などいるものか。
 入った瞬間死ぬ。つまりその命令は『特攻して死ね』と同義になる。
 エレクトロゾルダートのような捨て駒がいれば別かもしれないが、
 率先して捨て駒になれる人物などこの状況に於いて誰一人いない。
 他の参加者の支給品があればそれにより何とかなったのだろうがないものねだり。
 ムラクモからしても、この状況は完全な詰み(チェックメイト)だった。
 逃げ以外の選択肢がなく、こればかりは死に物狂いで足を使って逃げている。

『ボンジュール!』

685桐生伝 アシッド・レイジ・ロアー ◆EPyDv9DKJs:2022/11/13(日) 22:03:41 ID:JN3ce.6k0
 最早、放送を聞いている暇など逃げに徹する大半は聞く暇もなかった。
 雨音の激しさも相まって、聞く余裕があるのは家屋に逃げ込んだ人達ぐらいだろう。










(やはり、いないのだな。)

 逃げるしか選べなかった人間達の背に、此処まで堪能したが少し落胆してしまった。
 あの中世レベルまで落ちぶれた街を、滅ぼしたときとさして変わらない蹂躙。
 自分の本来の力を前にしては誰も近づかない。近づくことすら叶わない。
 酸性雨の中行動できた人間は、制限下とは言え彼にとってたった一人だけ。
 藤原美奈都と言う名も知らぬ一人しか彼を満足足りうる人間は他にいなかった。
 一人だけでも出会えただけ良しとしよう。元より米軍レベルを期待するのが間違いだ。
 真央とて一筋縄でいかない相手だ。彼らの強さは憎悪と同時に敬意すら感じるほどに。

 自分で生み出した雨に打たれる。
 何とも虚しいものだ。周りには誰も残らない。
 生物も、建物も、草木も、何もかもが死に果てる。
 変わらない。あの時と何も変わることはなかった。
 騒がしいのは聞く意味など殆ど薄い道化師の煩わしい放送だけ。
 孤独のまま、転生する気すらなくした彼は一人───

「!?」

 否、いた。
 弾丸の如き突進で桐生の胸を貫く───糸見沙耶香の刃が。

(なんだ、この速さは……!? 飛(フェイ)のワープとは違う!)

 早すぎて受け止めることができなかった。
 いや、早すぎると言うわけではない。最悪反応はできたはずだ。
 慢心と言うよりは落胆だから油断はない。来る人物がいれば対応はできる。
 だができなかった。この酸性雨をものともしない。一度も見せなかった、
 可奈美たちに次ぐ第三段階迅移を用いた沙耶香による超高速の一突き。
 負担が大きいため使うタイミングを考えてたが故に初見の攻撃で成立した。
 もし。彼らが二度戦うのであれば、これは二度と通用することのない一回だけの手段。
 もし。桐生が戦った藤原美奈都が御刀を握っていたなら、桐生も予見していたかもしれない。
 もし。宮藤の攻撃によって披露していなかったなら対応は間に合ってたかもしれない。
 これは、そんな細い細い可能性の糸を手繰り寄せた結果が今の光景だ。

 無論酸性雨は降り注でいる。沙耶香も無事では済まない。
 写シはこの無制限と化した雨を駆け抜けた時点で消滅した。
 いくら速度を上げる迅移でも当たるのを回避できるものではない。
 既に全身がグズグズと化しており、御刀は錆びずとも柄は別だ。
 銀のような綺麗な髪の色も、酸性雨で殆どが緑に変色した状態で溶けていく。
 御刀も後一度か二度振るえば、刀身だけ残して使い物にならなくなるだろう。

「アアアアアアアアアッ!!」

 痛みによる絶叫か、自分を鼓舞するための掛け声か。
 声を荒げないことが多い沙耶香が叫びながら刀を振り上げる。
 相手は荒魂に類するわけではないが人ではない可能性は高い。
 心臓を一突きだけで殺せるとは思ってないが故の念を入れた攻撃。
 妙法村正はその一撃を成し遂げると同時に、刀身だけを残し砕け散る。

(負け、たのか……)

 抉れた肩を抑えながら、自分の命が終わりを告げようとしてることは察した。
 桐生は異形で強くとも、真祖や生命繊維のような耐久力があるわけではない。
 だが人間に負けた割に不快感はさほどない。寧ろ清々しさすら感じられる。
 転生と冬眠を四百数十年にも及ぶ蛇足でしかなかった、満たされなかった人生。
 最早乾ききった灰色のような世界を生きる以上の己を実感することができた。
 たった六時間であの蛇足と吐き捨てた人生以上の経験をすることができたのだから。
 後腐れがあるとするなら、黙ってボスの下から消えて帰れなくなったことぐらいか。
 現実を見たのもあるが、少々辛辣な当たり方をしてしまったと思っている。

「人間(にんげん)……名前は何という。」

 初めてクソムシとは呼ばなかった。
 憎悪はひとまず置いて、敬意を持つ相手ゆえに。

「糸見、沙耶香……」

 溶けかけの状態でか細い声で言葉を紡ぐ。
 確かに写シはあっという間にはがれたものの、
 ダメージを軽減してくれたという事実は変わらない。
 お陰で会話をするだけの余裕は残されていた。

「サヤカ、か……」

 クーラブたちのように共に死を受け入れたわけでも、
 日村のようにどうにもならず殺すことになったわけでもなく。
 人間に敗北して負けた幹部と言うある意味の最悪の汚点ではある。
 基本は憎悪だ。彼にとって目の前で輪切りにされた右腕は今も忘れない。
 忘れぬからこそ転生機で治せる右腕を治さずにいたのも因縁の象徴ゆえに。
 だがある種の人間に畏敬の念があった桐生故に、その名を忘れぬように刻む。

「もしもの話だが。次があれば勝たせてもらう。」

686桐生伝 アシッド・レイジ・ロアー ◆EPyDv9DKJs:2022/11/13(日) 22:04:49 ID:JN3ce.6k0
 その一言を最後に、ドロドロの大地へと伏せる。
 魔王軍幹部桐生───辺獄の大地にてその命を燃やし尽くした。
 蛇足だった四百数十年を上回る、ほんの六時間の充足感を胸に抱きながら。



 歩いても大丈夫な程度に酸性雨が乾いた後、
 日菜子、服部、宮藤、植木、カインが最初に駆け付ける。
 服部とカインは飛行能力を有しているので地面を気にせず、
 宮藤は服部に抱えられる形でこの場へと駆け付けていた。
 雨の中聞こえた悲鳴が沙耶香だったのでいてもたってもいられず、
 カインに運んでもらう形で辿り着いた。
 カインの炎で周囲を強引に乾燥させて、
 足の踏み場を用意してもらう。


「私は散り散りになった人を探す。後は好きにするといい。」

「あの、ありがとうございます。えっと……」

「カイン・R・ハインラインだ。」

 名前だけ名乗るとその場から離れる。
 離れると同時に、今後の身の振り方を考えておく。

(しかし困ったな。)

 八将神に続き桐生と言う八将神でもないのにあの強さ。
 この舞台は明らかに格上が多すぎる。自慢の暗黒真空拳は、
 どれだけよく見積もっても中の中辺りが関の山だろうか。

(優勝したいができそうにもない、か……さて、どうしたものか。)

 幸いなことにまだ一人も殺していない。
 あの少女(可奈美)がいる以上悪評は避けられないが、
 今から生存を優先と言う安牌な道をまだ選ぶことは可能だ。
 セカンドサウスの夢は諦めざるを得なくなってしまうものの、
 優勝が困難な現時点でヘイトを稼ぐと後で痛い目を見そうでもある。
 土壇場で裏切れるだけの用意をしてから行動を決めるべきだと。
 一先ず年配であるムラクモとの接触を図りたかった。

【カイン・R・ハインライン@餓狼MARK OF THE WOLVES】
[状態]:打撲のダメージ(軽微)、ダメージ(小)、疲労(大)、少し酸化
[装備]:万里飛翔『マスティマ』@アカメが斬る!、バーリやー@スーパーペーパーマリオ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜1(確認済み)
[思考・状況]
基本方針:優勝しセカンドサウスの夢を叶える。自由は自分の手で勝ち取るべきものだ。
0:一度優勝を考えるのは待つべきだ。頃合いを見計らわなければ。
1:彼女(姫和)の対策の考案と関係者の捜索。トジのことを知ってる参加者がいればいいが。
2:二人(フェザーと可奈美)を倒し損ねたのは大きな損失かもしれない。
4:雷に引き寄せられてるが、気のせいか?
5:暇があれば帝具をもう少し試す。
6:君の目に宿るおたすけ、観させてもらったよ。しんのすけ君。
7:ムラクモと出会ってから今後の実のふりを考えなければならない。
[備考]
※参戦時期は少なくとも敗北前です
※マスティマとの相性は高いです。
※八将神の存在を知りました。
※第一放送は聞いてます。

「沙耶香!」

 桐生と共に倒れる沙耶香へと駆けよる日菜子。
 一応駆けつけたはいいものの、正直これは無理だ。
 いくら治癒魔法がある宮藤でもこれは重傷とかではない。
 寧ろまだ生きていられることの方が奇跡に等しいことだ。
 酸に塗れた彼女は、最早抱きかかえることすら困難となっている。
 それでもなお宮藤は延命のため治癒魔法を続けていく。

「日菜子さんでしたか。何か治せる支給品は!?」

 最早縋るのであればそれしかない。
 既に二人とも支給品の中身は判明している。
 頼れるのはこの場に残っている日菜子だけだ。

「私のモノメイトじゃ流石に……」

「日菜、子。」

 手を伸ばしなながら沙耶香は言葉を紡ぐ。
 思わず掴みそうになる日菜子だが沙耶香が手を引っ込める。

「どうしたの!?」

 か細い声で紡がれた言葉は、










「逃げ、て。」

「え───」

687桐生伝 アシッド・レイジ・ロアー ◆EPyDv9DKJs:2022/11/13(日) 22:05:24 ID:JN3ce.6k0
「え───」

 そもそもからして疑問だと思っていた。
 常時攻撃を受けてる状態となる酸性雨の中、
 写シだけでどうにかなると沙耶香が判断するだろうか? と。
 電光弾と言った攻撃手段を持つ人からの長距離攻撃を見た手前、
 強力な飛び道具を有してる人ができるかどうか確認してから突貫するべきだ。
 自分しか勝てないと言った、頼れる人物がいなかったと断じるほど彼女は他の参加者を知らない。
 ではなぜ彼女が自ら犠牲に突貫したのか。それは彼女が刀使だからとかではない。
 そこに、彼女の意志など最初からなかった───

「そこの人! 止まってくださ───ッ!!」

 治癒魔法に専念していた宮藤は気づかず、
 先に服部がその存在に気付き、特殊棍棒を構えた。
 しかし構えると同時に、相手の術中へと陥ってしまう。
 否。寧ろ気付いたからこそと言うべきだろうか。

「予定では貴方ではなかったと言うのに。」

 ナスタシアだ。
 服部に気付かれたことで、
 即座に彼女へとチョーサイミンジュツを行った。
 可能ならば来夢と同じ学生服である日菜子を狙ったのだが、
 相手が遠距離武器を持っていたのもあって仕方ないと割り切る。

「静夏ちゃん!?」

 沙耶香が突撃したのは自分の意志ではなかったということだ。
 避難した家屋に居合わせたアナスタシアによって洗脳され、命令されたから。
 元々が従順な子で、舞衣がいなければノロを受け入れていた子だ。
 そのせいかもしれないが、チョーサイミンジュツも効果が早かった。
 桐生をあのまま放置すれば、此方も死を感じた結果、
 沙耶香に突撃をさせたわけだ。

「代替えの戦力は確保した以上此処で退きましょう。」

 退かなければ数の差が激しい状況だ。
 無理に戦うよりも逃げを選んだ方がいい。

「待ちなさい!」

 逃がす気など毛頭ない。
 すぐに立ち上がり変身し、剣を構える。

「言っておきますが立場は私が上です。仲間内で殺し合いたいとでも?」

 チラつかせるように立ちはだかる服部。
 表情から自我はまだ残っているようだが、
 身体の動きはナスタシアを庇うように構えている。
 二対一。ナスタシアの実力を知らない日菜子にとって、
 此処で宮藤を庇いながら戦うのは困難を極める。

「だからと言って、見捨てられない!」

 従うことなどできない。
 人を助け続けてきたリフレクターが、
 人を助けないでどうするのか。

「そうですか。では───逃げましょう。」

 即座に逃げを選んだ。
 思わず追走しかけた瞬間。

「え───」

 肉を裂くような音に足を止める。
 日菜子に痛みはない。音の位置から背後。
 そう───

「日ノ、元、さん……!?」

「宮藤さんッ!!!」

 宮藤にも理解できなかった。
 投げ飛ばされたはずの彼女が戻ってきたのに、
 針目が持ってたのとは別の、赤い片太刀バサミで裂かれていたから。

 わけがわからなかった。
 先ほどまで話していた間柄で、
 バルクホルンのような真面目な人と言う認識だ。
 会話した時間は短いものの敵となる人物ではない。
 ではなぜ今斬られたのか。致命傷を負った傷では思考がまとまらない。

「悪いが事情が変わった。私はこいつらに手を貸す。」

「どう、して……!?」

「作戦通りですね、助かりました。早めに引き上げましょう。」

 日菜子を仕留めておきたくもあるが、
 長居すると全員戻ってしまう可能性がある。
 そうなれば戦力外の自分を除いても二人では厳しい。
 でも今ならば日菜子だけが追撃しにくるとしても一人だけだ。
 風火輪とストライカーユニットで素早くその場から離脱。
 それを追従するように明もそのまま離れていく。

 三対一。数の不利は承知の上だ。
 苦虫を嚙み潰したような顔で向かおうとするが、

688桐生伝 アシッド・レイジ・ロアー ◆EPyDv9DKJs:2022/11/13(日) 22:07:31 ID:JN3ce.6k0
「だめ、ひな、こ。」

「でも!」

 今にも消えそうな声で、沙耶香が止める。
 他に今から救援を求められない。遠くにいないであろうアニでは追いつけない。
 一人で不利なのは分かってる。しかしのさばらせる方がよっぽどできないことだ。

「時間、ない……」

「え?」










 北上した三人は追ってこないことが分かると速度を緩めた。
 服部は自我は残っているものの殆ど抵抗はできない状態だ。

「礼を言いましょう。」

 戦闘が始まった直後、アナスタシアは近くの民家に隠れた。
 無論居座っていれば酸性雨でどうなるか分かったものではなかったのだが、
 下手に動いて目撃されるよりはまだましな判断とも言えるだろう。
 放送を聞いて伯爵の事で打ちひしがれていたところを、沙耶香『達』と遭遇してしまった。
 ただ沙耶香は勘違いした。大事な人を亡くして気落ちしている自分と同じ人なのだと。
 そう勘違いして不用意に近づいたところを、チョーサイミンジュツをかけて今へ至る。
 参加者の同士討ちからさらに新たな戦力確保することはできたのが不幸中の幸いか。

「ですが、協力していただけたのは幸いです。」

「うんうん。途中までの相乗りとしては僕もいいかなーって!」

 彼女らしからぬ喋りから一変。
 白が目立つ明のヴァンパイア態の姿から、
 ピンクのロリータな服装───針目縫の姿へと変わっていく。

「針目、さん!?」

 針目は我ながら完璧なタイミングだと思えた。
 明の姿で誰かを攻撃して、それを目撃させる。
 しかも集団もバラバラ。再度集合をバックレたとしても、
 酸の染みた大地を歩けないと言う真っ当な理由で誤魔化せる。
 心置きなく参加者を減らす方へと舵を切ることができると言うものだ。
 ついでに使ったハサミも流子の方の赤いやつなので疑われにくい。
 更に殺し合いに乗っているナスタシアまでいるのだからいいことづくめ。
 と言うより、桐生との戦いで自前のは錆びかけて使い物にならなくなってたので、
 どの道余ってたもう一本を使わざるを得なかったと言えばどうなのだが。

「針目さん、何故……!?」

 確かに少し無神経なところはあるし、
 植木との空気のぎこちなさを気にしはしていたが、
 先の戦いといいマサオの時といい手伝ってくれた間柄。
 余り疑念らしい疑念は服部にはさほどなかった。
 真面目が過ぎる故に人を疑わない彼女の性格が仇となる。

「あれあれー? 洗脳の度合い弱いんじゃない?」

 風火輪で高速移動していたのと、
 咄嗟にやるべきでありさらに対象は日菜子のつもりだった。
 そのせいかは分からないが洗脳の度合いはかなり弱いものだ。
 従うことはできるものの意志自体はまだ残っているらしい。

「後で重ねておきましょう。貴女はどうしますか?」

「んー、もうF-6はドロドロだから、
 戻らなくても疑われないし好きに移動しよっかなぁ?」

 まだ視認できるF-6の家屋を見やれば死の大地と言うべきだろうか。
 家屋は丘のように緩やかな坂を築き、趣ある庭から緑は消滅し、
 池も最早生物がすめる状態ではなくなっていた。
 此処を歩きたいかと言われたら多くは首を横に振るだろう。

「そうですか。」

「じゃ、僕は適当にやるからよろしくねー!」

 学校での挨拶を終えた学友のような、
 晴れ晴れとした笑顔と共にステップで消えていく。
 ナスタシアからすればああいう手合いは苦手な部類だ。
 ああいう飄々と、何を考えてるか読めない人物……ディメーンと大差ない。
 だが馬鹿と鋏は使いようとは、彼女の持つハサミ通りと言うべきだろうか。
 マネーラのような変身能力、先の戦線に参加していたなら実力もある。
 伯爵亡き今、戦力となりうる人材を確保するのは特に重要だ。
 自分が優勝するビジョンはまず浮かばない。かなり運が絡む。
 なので残る伯爵ズの、三人のうち一人でも生きることを想定とする。
 洗脳が解けてないであろうミスターLを当てにしすぎると痛い目を見る。
 此処はマネーラを想定した立ち回りをしておくべきだろうか。

689桐生伝 アシッド・レイジ・ロアー ◆EPyDv9DKJs:2022/11/13(日) 22:09:29 ID:JN3ce.6k0
「さて……洗脳の度合いが甘いようなので、念を入れておくとしましょう。」

 彼女の眼鏡が怪しく輝く。
 思考が染められる。大事な仲間の顔が思い出せない。
 年の近しい少女ではなく、顔も名前も知らぬものへと挿げ替えられる。

(宮藤さん、植木さん……!!)

 二人の無事を願いながら、
 服部の意識はそこで途切れた。

【ナスタシア@スーパーペーパーマリオ】
[状態]:顔にかすり傷 焦り 疲労(小)
[装備]:首輪探知機@オリジナル、ビブルカード×2(針目縫、ムラクモ)@ONEPEACE、風火輪@封神演義
[道具]:基本支給品一式
[思考・状況]
基本:伯爵様の為に参加者を減らしていく。
1:彼女(服部)を利用して伯爵様を復活させる。
2:直接戦闘は必要な敵以外は避ける。
3:童磨はまた会ったら殺す。
4:ディメーンは裏切り者として生かしておけない。
5:完全者は信用はしてないが、戦力であることには変わらない。
6:他の部下も一応探しておく。特にミスターLは本物? 洗脳の状態も確認が必須。
7:桐生め……勝手な真似をして……!!
8:私の”チョーサイミンジュツ”の性能が落ちている……!?
9:針目とは一先ず休戦。
[備考]
※参戦時期は最低でもステージ7以降。
※チョーサイミンジュツに制限が課せられています
※チョーサイミンジュツに制限が課せられいることに気づきました。
 『以下チョーサイミンジュツの制約についての説明』
 ・洗脳可能な上限は一人まで
 ・絶対に洗脳できるわけではなく、相手の意志力自体では洗脳を解除されるか不完全な洗脳になる
 ・何か道具や技があれば、跳ね返すことが出来る

【服部静夏@ストライクウィッチーズシリーズ】
[状態]:決意、負傷(中)、疲労(小)、洗脳
[装備]:特殊棍棒(エクスカリバー)@ドキュンサーガ 
[道具]:基本支給品、ストライカーユニット震電@ストライクウィッチーズシリーズ じわじわキノコカン×4@スーパーペーパーマリオ
[思考・状況]
基本方針:ビバ! 伯爵!
1:宮藤さんのように、伯爵様のために戦います!
2:宮藤さん……色々と聞きたいことがありますが、今は目の前を対処します!
3:植木さんは…何というか…不思議な人、という感じがします。
4:縫さん……!?
5:植木さんや縫さんといい、これは”パンツ”とやらではありません!
[備考]
※参戦時期は三期の最終話「それでも私は守りたい」にて、宮藤芳佳にユニットを届けた後意識を失った直後からです。
※作中にて舞台になっている年代が1945年な為、それ以降に出来た物についての知識は原則ありません。
※植木・針目の世界観を簡単に把握してます。
※互いが別々の世界もしくは別々の時代から会場に呼ばれたと推測から確信になりました。
※自分が死亡後参戦だと勘違いしています。
※縫から日ノ元明は危険人物だと伝えられています。
 但し、縫の変身を見てるので懐疑的です。
※チョーサイミンジュツにより洗脳されてます。
 度合いは重ね掛けされてるため些細なことでは解除はできません

【針目縫@キルラキル】
[状態]:負傷(中)、疲労(中)
[装備]:片太刀バサミ(赤)@キルラキル
[道具]:基本支給品一色、不明支給品×0〜1
[状態・思考]
基本方針:優勝して元の世界に帰還する
1:とりあえず静夏ちゃん。そして耕介ちゃんと行動を共にする。
2:利用できそうな参加者は利用する。そうでない参加者については明の姿で殺していく。
3:アーナスちゃんに関しては要注意だね☆
4:ナスタシアちゃんもがんばってねー。バイバーイ
※参戦時期は少なくとも鬼龍院皐月と敵対した後からとなります。
※名簿に関係者がいないことを把握しました。
※静夏・植木の世界について簡単に知りました。
※日ノ元明、植木、服部、ナスタシアに擬態可能です。
 他の人物も可能ですが性格や声を再現はできません。















 ただ、針目にも誤算はあった。

「時間、ない……ハサミの子……日ノ元って人、同じ人。」

 逃げるよう促したのが最後の言葉だと思ってたが違う。
 沙耶香がまだ生きているということに気付かず放置した結果、
 自分の存在が擬態能力含めてばらされてしまったのだから。
 確認する余裕がなかったと言えばそうではあるものの、
 怠った結果彼女の作戦は何ら意味のないものと化した。

「変身する能力を持っているの!?」

690桐生伝 アシッド・レイジ・ロアー ◆EPyDv9DKJs:2022/11/13(日) 22:10:02 ID:JN3ce.6k0
 ぎこちない動きで、ゆっくりと頷く沙耶香。
 自分ができることはもう、伝えることだけだ。
 舞衣と薫が死んだ。刀使である以上死ぬこともある。
 でも、こんな形で迎えることになるとは思わなかった。
 その状態でナスタシアに声をかけてしまったのが全ての運の尽きと言える。

(ゴメン……皆……)

 救いがあるとするなら、
 彼女は知らず知らずのうちに大半の参加者を救ったことになる。
 病院、学校、火災現場。全てを覆えると言ってもいい災厄を、
 彼女は一人で防ぐことができた。少なくとも今は大半の参加者が救われたことになる。
 死の雨の中でもまともに活動できる者など、指で数える程度なのだから。

「沙耶香……」

 伸ばした手が地に落ちる。
 ドロドロの腕は落ちた瞬間潰れたトマトのようにべちゃりと潰れた。
 宮藤と沙耶香と桐生、そしてマサオだった死体を前に日菜子は動けない。
 原種のようなとんでもない奴だった。勝つには犠牲なしでは得られないと。

「あの二人……!!」

 殺意はないが、純然たる怒りがこみあげてくる。
 洗脳に不意打ちとこれでもかと悪事を短時間でやり遂げた。
 確かに麻央みたいな決して善とは言い切れないような人は身近にいたこともある。
 ただあれも彼女の歪んだと言えど正義感からくるものではあったので、今回のとは違う。
 身勝手な理由で超えてはならない一線を越えた二人を、一発ぶん殴ってやりたい。
 しかも成りすましているというのだから余計に腹が立つ。
 リフレクターは誓う。あの二人を絶対にとっちめてやると。


 嵐の次に起きた災厄の戦い。
 犠牲者は規模からすれば些細だろうが、
 あの十五人の大半がそのエリアから散り散りになっていた。

【宮藤芳佳@ストライクウィッチーズ 死亡】
【糸見沙耶香@刀使ノ巫女 死亡】
【桐生@ドキュンサーガ 死亡】
【佐藤マサオ(歳破神)@クレヨンしんちゃん 討伐】

【白井日菜子@BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣】
[状態]:負傷(中)、疲労(小)、怒り、精神疲労(大)
[装備]:リフレクターの指輪@BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣
[道具]:基本支給品一式、モノメイト(3/5)@ファンタシースターオンライン2、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:殺し合いになんて乗らない。こんなふざけた事は止めてみせる。
1:ユズ、ライム……
2:衛藤さんの捜索。そこから十条さんを止める。
3:それとあの人(アナムネシス)は止めないと。
4:此処はコモン? もしかして原種がいる? 後者はいやかな……
5:まずは目の前の相手との対峙を乗り切る。
6:ナスタシアとハサミの子(針目)は一発殴ってやりたい
[備考]
※参戦時期は第12章「最後の一歩 the First Step」で、
 ユズとライムとの最後の別れをしてリフレクター絡みの記憶を全て忘れた後から。
※忘れていた記憶は思い出しました。
※帝具や刀使、進撃の巨人について知識を得ました(ただし帝具は浅く、村雨の性能も知りません)
※第一放送を聞き逃しました。

【マシュ・キリエライト@Fate/Grand Order】
[状態]:喪失感(大)、深い悲しみ、混乱 負傷(中)、疲労(小)、溶解(軽微)
[装備]:オルテナウス、オルテナウス盾部分
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜2
[思考・状況]
基本方針:生き延びて、先輩と再び逢う。
1:参加者と接触し、先輩の目撃情報を調べる。
2:先輩が見つかるまで、アニさんと行動する。
3:桐生との戦闘が終わり次第、マサオから事情聴取する
4:疑似霊核……カルデア? それとも……サーヴァント?
5:皆さん、無事でしょうか。
※参戦時期は少なくとも第二部第二章以降
※マサオの疑似霊核から、この殺し合いにカルデアの関係者かサーヴァントが関わっているのではないかと考えています。
※第一放送を聞き逃したかは後続の書き手にお任せします。

691桐生伝 アシッド・レイジ・ロアー ◆EPyDv9DKJs:2022/11/13(日) 22:10:34 ID:JN3ce.6k0
【植木耕助@うえきの法則】
[状態]:負傷(中)、疲労(小)、溶解(軽微)
[装備]:立体起動装置@進撃の巨人(ガス満タン)
[道具]:基本支給品、アクション仮面人形@クレヨンしんちゃん 優木せつ菜のカレー@ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会
[思考・状況]
基本方針:自分の正義を貫く
1:森達のところに戻りたい…とは思うけど、殺し合いには乗らねぇ。
2:服部、糸目と行動を共にする。
3:空白の才が支給されていたらヤバイな……。
4:針目の奴……目の奥が笑ってねぇ
5:ムラクモって男……針目に似たような雰囲気がするな。
5:まずは、桐生との戦闘に集中する
[備考]
※参戦時期は16巻の第153話「最終決戦!!」にて、アノン相手に最後の魔王を撃った直後からです。
※「ワールドウィッチーズ」世界についてある程度の知識を得ました。
※互いが別々の世界もしくは別々の時代から会場に呼ばれたと推測から確信になりました。
※自分が死亡後参戦だと勘違いしています。
※神器やゴミを木に変える能力のレベル2にはある程度制限がかけられていますが、どれぐらいの制限がかかっているかは後続にお任せします。
※神器は自分の世界の神様を決める戦いに参戦している人間”以外の人間には使用しないと決めています
※「キルラキル」世界についてある程度の知識を得ました。
※糸目縫を少しだけ警戒しています。(確たる証拠がないため、静夏には伝えていません)
※縫から日ノ元明は危険人物だと伝えられています。(半信半疑)
※ムラクモを少しだけ警戒しています。(あくまで自分の勘)
※第一放送を聞き逃したかは後続の書き手にお任せします。

【ムラクモ@アカツキ電光戦記】
[状態]:負傷(中)、疲労(小)、溶解(軽微)
[装備]:ブラッディピアース@グランブルーファンタジー、一斬必殺村雨@アカメが斬る! 六〇式電光被服+六〇式電光機関@アカツキ電光戦記、
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜1(確認済み) 家紋タクシー@ニンジャスレイヤー
[思考・状況]
基本方針:メフィス達を始末して願いの力を手にし、悪用を避ける。すべては人類救済の為だ。
1 :北上しつつ衛藤可奈美の捜索。そこから十条姫和の制圧、或いは討伐。
3 :司城夕月、司城来夢、益子薫、古波蔵エレン、柳瀬舞衣、安桜美炎の捜索。
4 :電光機関の無駄遣いは避けなければならない。
5 :紋章を知る、或いは他の世界の住人を探して首輪解除の手段を模索。
6 :完全者は此処で確実に始末したいが、徹底するのは控える。
7 :紫の女(アナムネシス)に要警戒。
8 :高津と言う女については多少は懸念しておくか。
9 :シャンバラ、探してみる価値はあるか?
10 :落ち着いたら集まった参加者達で情報交換を行う。(特にマサオには事情聴取を行う)
[備考]
※参戦時期は不明。(少なくとも完全者を一度殺害後でエヌアイン完全世界ED前)
※六〇式電光機関をそのままの代わりに支給品の枠を使ってます。
※村雨がアニメ版か漫画版かは後続の書き手にお任せします。
 (どちらか次第で奥の手の内容が変わります)
※刀使、リフレクター、エルディア人、の知識を得ました。
※第一放送を聞き逃したかは後続の書き手にお任せします。

【アニ・レオンハート@進撃の巨人】
[状態]:マシュに対して不安、眼に巨人化の痕 ムラクモに対して警戒 負傷(中) 疲労(小)
[装備]:地禮@PROJECT X ZONE2 BRAVE NEW WORLD
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜1(武器類はもうない)
[思考・状況]
基本行動方針:マシュ・キリエライトと共に行動する。
1:参加者と接触し、ベルトルトと立体機動装置を探す。
2:巨人化能力が再び戻るまでは、マシュと行動する。場合によっては再び対峙するかもしれない。
3:植木という少年からなんとか立体起動装置を譲ってもらいたい
4:桐生との戦闘が終わり次第、マサオから事情聴取する
5:ムラクモ……警戒を怠れないな

[備考]
※参戦時期は第132話、ヒィズルの船に乗った直後からの参戦です
※この殺し合いの主催者にエレン・イェーガー、もしくは『始祖の巨人』を所有したエルディア人がいるのではと考えています。
※ムラクモと情報交換をしました。※3者の考察
※F-7に女型の巨人の残骸(数十分で蒸発する)が残されています。
※女型の巨人には制限が掛けられています、制限は以下の通りです
 身長は10m級に調整されている
一度巨人化すると一定時間経過しないと再び発動できない

692桐生伝 アシッド・レイジ・ロアー ◆EPyDv9DKJs:2022/11/13(日) 22:11:05 ID:JN3ce.6k0
【アニ・レオンハート@進撃の巨人】
[状態]:マシュに対して不安、眼に巨人化の痕 ムラクモに対して警戒 負傷(中) 疲労(小)
[装備]:地禮@PROJECT X ZONE2 BRAVE NEW WORLD
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜1(武器類はもうない)
[思考・状況]
基本行動方針:マシュ・キリエライトと共に行動する。
1:参加者と接触し、ベルトルトと立体機動装置を探す。
2:巨人化能力が再び戻るまでは、マシュと行動する。場合によっては再び対峙するかもしれない。
3:植木という少年からなんとか立体起動装置を譲ってもらいたい
4:桐生との戦闘が終わり次第、マサオから事情聴取する
5:ムラクモ……警戒を怠れないな

[備考]
※参戦時期は第132話、ヒィズルの船に乗った直後からの参戦です
※この殺し合いの主催者にエレン・イェーガー、もしくは『始祖の巨人』を所有したエルディア人がいるのではと考えています。
※ムラクモと情報交換をしました。※3者の考察
※F-7に女型の巨人の残骸(数十分で蒸発する)が残されています。
※女型の巨人には制限が掛けられています、制限は以下の通りです
 身長は10m級に調整されている
一度巨人化すると一定時間経過しないと再び発動できない

【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:疲労(大)。気絶
[装備]:
[道具]:基本支給品、シリマルダシ(ミライマン)※残り4回@クレヨンしんちゃん、又兵衛の馬手差し@クレヨンしんちゃん、まどわし草×3草@トルネコの大冒険3
[思考・状況]基本行動方針:困ってる人をおたすけする
1:アリサちゃん、芳佳ちゃん、マサオ君と一緒に行動する
2:芳佳ちゃんのお友達(服部静夏)を探す
3:マサオくんをこんなにした”ンンンおじさん”にカンチョーする

[備考]
※殺し合いについて理解しました。
※ぷにぷに拳を使用することができます。(作中習得した九まで)

【アリサ・バニングス@魔法少女リリカルなのはA’s】
[状態]:ダメージ(極大)※治療中、疲労(大)、気絶
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いは絶対しない
1:しんのすけ、芳佳さんと行動する。
2:しんのすけ……後は頼んだわよ……
3:目が覚めたらマサオに謝る
4:ネガティブな考えは捨てなくちゃね!
[備考]
※参戦時期は11話、なのは達が魔法少女だと知った後です

≪四者の考察≫(ムラクモ、アニ、マシュ、日菜子)
・リフレクターの変身について
①コモンの可能性:フラグメントも魔物もいない為低い。
②原種が存在する:現状ではなんとも。移動ついででいるかどうかを調べてみる。

・刀使の多さについて
①刀使の力をメフィス達か関係者が必要としている。
②タギツヒメを倒せる刀使が必要だったから(タギツヒメの力を手に入れる為)。
③高津雪那が運営関係者で、タギツヒメの障害となる刀使を参加者にした。
 (折神紫はいないが、私怨を晴らす為か?)

・見せしめに藤丸立香を選んだ理由
①藤丸立香に関係している人物が主催に関わっている。
②選ばれたのは旅を続けられると、主催にとって不味い事態があるもしくは起こる。
③名簿に記載されている同姓同名の藤丸立香については、ひとまずは保留。

・他
①首輪が科学と魔術ではなく魔術のみの可能性。
 念には念を入れて紋章を知る参加者を探しておく。
②シャンバラと呼ばれるものが使えるかもしれないが、現状はついで。
③主催側には、いくつかの世界の関係者たちが連合を組んでいる可能性がある。


※F-6の状況は以下の通り
 ・F-6の広範囲に酸性雨(ドキュンサーガ9話④の町の惨状少し近しい)
 ・溶けた、溶けかけの支給品は以下の通り
 ・①又兵衛の馬手差し
  ②可楽の団扇@鬼滅の刃
  ③糸見沙耶香の死体(デイバックは酸性雨で溶解したため消滅してます。)
  ④佐藤マサオの死体
 ・残ってるものは以下の通り
 ・宮藤芳佳、及び桐生の死体、
  ギャレンラウザー@仮面ライダー剣
  顔のない王@Fate/Grand Order
  宮藤のデイパックの内容は基本支給品のみ(包帯は使い切った。)
  桐生のデイバックは耐酸性のため溶けていません(内容は基本支給品のみ)
  桐生の首輪(八将神討伐の報酬)
 ・同じエリアの死体になるユカポン、ユカポンのファンの吸血鬼の遺体とデイバックは、
  後続の書き手にお任せします

693桐生伝 アシッド・レイジ・ロアー ◆EPyDv9DKJs:2022/11/13(日) 22:11:27 ID:JN3ce.6k0
【蒼天囲みし小世界(アキレウス・コスモス)@Fate/Grand Order】
ムラクモに支給。大量に存在するアキレウスの宝具の一つの盾。
母テティスが鍛冶神ヘパイストスに懇願して作らせた世界そのものを盾とするもの。
他者に宝具を貸し与えた逸話から他人に譲渡しても真名解放ができるという特殊なもの。
カルナの宝具すら抑え込めるだけの範囲と効果を持ち、本ロワでは12時間に一回使用できる、
対界宝具を除いてほぼ全ての攻撃を短時間の間無効にできる

【まりょくのみ@大貝獣物語2】
アニに支給。文字通りの魔力の実
小量のMP回復。一度の回復量は微々たるがその分数が多い。

【可楽の団扇@鬼滅の刃】
桐生に支給。半天狗の可楽が使う団扇。
強い風を起こす。本ロワでは誰でも扱える。

【顔のない王(ノーフェイス・メイキング)@Fate/Grand Order】
宮藤に支給。アーチャーのロビンフッドの羽織るマントの宝具。
消音、気配遮断、透明化と高いステルス性能を誇るが長時間の運用は大きく消耗する。
魔力保持者などであれば多少時間は伸びる。

【片太刀バサミ(赤)@キルラキル】
針目に支給。纏流子の持っている方のハサミ。

694桐生伝 アシッド・レイジ・ロアー ◆EPyDv9DKJs:2022/11/13(日) 22:11:45 ID:JN3ce.6k0
以上で投下終了です
・桐生の服と義手について
 原作では半裸(恐らく全裸)かつ義手もないことから、
 桐生が装備してる服や義手自体には酸性雨の耐性はないと思われるのですが、
 本ロワではまだ溶けてなかったことから耐酸と言う扱いとさせていただいてます
桐生の制限はなんとか考え抜いた末のものなので、
これら以外にも問題がありましたら指摘をお願いします
修正は、殆ど難しいので最悪破棄でお願いします

695桐生伝 アシッド・レイジ・ロアー ◆EPyDv9DKJs:2022/11/13(日) 22:13:21 ID:JN3ce.6k0
場所は変わってないですが全員F-6 朝です
表記忘れすみませんでした

696 ◆EPyDv9DKJs:2022/12/09(金) 19:36:45 ID:P1lIBxAE0
投下します

697彼等を導くみらい回路 ◆EPyDv9DKJs:2022/12/09(金) 19:37:58 ID:P1lIBxAE0
 放送を聞きながら、ドミノはヴァンパイアの力を軽く試す。
 エテルナにはホテルらしからぬ施設が少し見受けられたが、
 半妖にしか使い道のない施設ともあってほぼ徒労に終わっている。
 結果数時間は無理に動かず、休息の方へと時間を費やしていた。
 一応は真祖だ。常人よりもずっと再生力はあるため万全からは程遠いが、
 少なくともそんじょそこらの連中を相手にして後れを取ることはないだろう。
 とは言え、回復が望める支給品はなかったため、先の怪物や日ノ元は勿論のこと、
 今の状態では堂島相手にもかなりの苦戦を強いられるほどの状態だ。
 無理はできないのでこのまま何事もない方が……とは少し思ってしまうが、
 日ノ元が先に動いて大幅なアドバンテージを取っているのは事実。
 これ以上先を越されると後に響く。放送も終わったことだし、
 立ち止まるよりも二人を連れて動くべきだと判断する。

 先の放送についてはドミノ自身としては余り思うところはない。
 敵となる貴真の存命、結局謎のまま退場した伯爵なる人物等色々あるが、
 善も明も無事であり、堂島と日ノ元も落ちるとは思ってないので当然の帰結。
 気掛かりがあるとするのならば、知人がいる充の方だろうか。

「ドミちゃん。ドンくんが呼ばれたのはなんで?」

 しおは殺し合いの意味を理解できているわけではないとしても、
 知り合った人物の名前が出てきたことで不安な表情をしている。
 殺し合いの意味を短時間で理解させるのは簡単なことではない。

「そうね……大事なものを持っていかれたってことよ。」

「しおにとってのさとちゃん?」

「近いかも。悪い奴らがさとちゃんを連れ去ったみたいな風にね。」

「じゃあ、取り返さないと!」

 さとうと離れ離れになる怖さはもう経験した。
 悪い人達がそれをするなら止めないといけない。
 ドドンタスだって短い時間の中で助けてくれたのだから、
 彼の大事な物は彼に返すべきだと思っていた。

(しおはいいけど、あっちはどうやら。)

 一方充はと言うと。
 逆に人の死を理解しているため、
 その恰好とは裏腹に影を落としている。
 琴美とはるな。修平含めて黒河達程話した間柄ではなかったが、
 どちらも修平にとっては大事な存在であることは伺えた。
 初音が無事だとしても素直に喜ぶことはできないし、
 他にも彰から聞き及んだ人物の生死も悪い方へ向かっている。

(でも一番は彼女なんだろうな。)

 それでも自分以上に傷ついてるのは、何方にも知り合いがいる悠奈だと思った。
 此処でも救えず落としていくと言うのは、二度も参加して理不尽に抗う。
 それを嘲笑うかのように現実は三度目を与えて屍を積み上げていく。
 しかも十四人の時と違い、彼女一人ではどうあっても手が届かないこの大人数。
 とんだ嫌がらせだと思う。人生で三度も殺し合いに参加させられる一般人、
 恐らくこの舞台でも他にいないだろうことも。

 でも、それでも彼女は向き合うのだと言う確信もある。
 彼女は折れない。自分が初音を守りたいのと同じことだ。
 どんなことがあろうとも変わらない。気弱だと自覚ある彼自身がそれなら、
 より強い芯を持った悠奈なら、今も尚この戦いに抗い続けているのだろう。
 本来ならば自身も今すぐ動きたいものの、日ノ元の言葉が重くのしかかる。

『投げ出せば君の言う阿刀田君も悲しむのだから、大事にしておくんだ!』

 自分が現時点では最重要で、今後を左右する可能性のある人物。
 他に機械に精通した人物が不明の中、首輪を何とかできる可能性があるのは貴重。
 そんな大役を背負わされてるが故に以前みたいに初音の為であれば、
 命を投げ出すぐらいの覚悟で行動していては本当に死にかねない。
 前回と違って首輪がまだ何とかなってない今、一人で動き出すようなことはしなかった。

「ドミノさん!」

 いつの間にか下僕にはされたりはしているが、
 同じくこの殺し合いを打破せんと志す真祖へと声をかける。
 女装はともかくとして、オフィエルから渡された武器を持った姿は、
 さながら覚悟を決めている戦士のような風格を醸し出している。
 最初に出会った時とは大分顔つきが変わったものだとドミノも感じる。

「いてもたってもいられないって感じね。
 いいわよ。躓いた感じだけど私達も……っと、来客か。」

 出撃の発破でもかけようかと思った瞬間、
 耳が動き回り他の参加者の存在を感知する。
 足を止められたと思うべきか、さっそくと言うべきか。
 人数から共闘、或いは共謀の関係ではあることは伺える。
 少し待てばホテルにその相手が扉を開く。

「あら、先客がいたみたいね。」

698彼等を導くみらい回路 ◆EPyDv9DKJs:2022/12/09(金) 19:38:36 ID:P1lIBxAE0
 みらい達三人はアナムネシスとは反対方向へと進んだ。
 アナムネシスが来た方角に零がいるとは思えないのもあり、
 北上しつつ東へと歩を進んだことで此処へとたどり着いた。
 みらいにとっては放送の内容に興味はない。
 邪魔な千がいなくなった、そんな程度であり、
 歩を進めるペースが遅くなることはなかった。

「アンタたちはどっち? 見たところ一緒のようだけど。」

「あん。少なくとも、こっちは今のところは乗ってないから安心してね。」

 三人の前へ紗夜が率先して話を進める。
 正直な物言いをする彼女に少しばかりドミノも面食らう。
 乗ってないと言えば話が済むところをあえて乗るかもしれないと言ってのける。
 二人もその物言いに驚いてないことから、本当にそのつもりではあるらしい。
 とは言えドミノとしては構わない。状況もあるが日ノ元を許容できている。
 癖のある人物が出たところで、無駄に敵対しないのであれば何ら問題ない。

「ま、正直なのはいいことね。変に隠し立てするより信用できる。」

「お姉さん、話が早くて助かるね。」

 手を軽く合わせて無邪気な少女のように喜ぶみらい。
 殺し合いの最中とは思えぬような雰囲気ではあるが、
 同時に強い殺気のようなものを感じたのも同時に彼女だ。
 話し合いで済む相手であるなら穏便に済ませるべきでもあり、
 特に何があるわけでもなく、日ノ元同様に席へ着いて情報を交換していく。
 同好会と辺獄関係者で、いよいよ三割強にまで生存者の情報が集まった状況。
 この情報量だけで言えば、既にこの舞台の中でも最上位に当たるだろう。
 身動きが取れずに動けなかった分としてはそれなりのおつりになる。
 人数だけで言えば日ノ元も負けず劣らずではあるが、
 ドミノの方においては一つだけ決定的な違いがある。

「メフィスとフェレスを知ってるって言うのはありがたいわ。」

 主催に対する情報だけは一歩先を行く。
 今すぐ役に立つとは限らないとしても、
 人となりを知ることは今後に繋げやすい。
 まあ、想像通りの連中だったとも言えるが。

(でも堂島と同レベルに取り扱い注意ってところかしら?)

 ドミノに対して沙夜は自分達の方針も明かしている。
 最初のやり取りから清廉潔白な人間ではないことは分かった。
 自分達のやり方にそれほど異を唱える相手でないのであれば、
 下手に隠さずとも自分達の目的や方針を話す方がいいと判断した。

「ところであの子、本当に大丈夫?」

「侑ちゃん、侑ちゃん……」

 それはそれとして。
 隅の方の席で想い人の名前を呟き続ける歩夢の姿。
 しおが近くで頭を撫でたりしてるが、特に変化はなく。
 菜々が死んだことについては、今の歩夢にとってさほど悲しくはなかった。
 彼女からすればあの夜、侑が遠くへ行ってしまうかもしれない要因を作った人物。
 元を正せば、スクールアイドル同好会へ入ったのもまた彼女がきっかけでもある。
 なので彼女が死んだことは寧ろ侑と一緒になれる第一歩とも感じていた。
 一方で『一般人の彼女が死ぬならこの先侑が無事と言う保証もない』ことだ。
 一般人だからと温情などない。ただ蹂躙されて死ぬことなんてざらであると。
 最悪殺すことを考えているものの、他人に譲りたくもないと言う歪んだ愛情。
 だからと言って御刀があろうとも自分一人では戦える相手に限度がある。
 みらいや沙夜の協力なくしては出会うこともままならないだろうことは察していた。
 ある意味では充と同じ。一人で動くわけにはいかないと言う理知的な考えだ。

「あれはただの愛だから。」

「なんと随分重い愛だこと。」

 愛って素晴らしいよね、
 とでも言わんばかりの笑顔で返す。
 そんな彼女に引きつり気味の表情で返すドミノ。
 自分の行動にブレーキを掛けないヴァンパイアに近しい存在。
 姉が死んだなら、一切の躊躇もなく彼女は他者を殺せるだろう。
 姉の零までもこんな状態だったらと思うと先が思いやられる。
 話を聞く限り妹の為ならなんでもする姉で、なんだか嫌な予感はしている。

(でも使えるって言うのがね。)

 そういう奴は往々にして行動力はある方だ。
 聞けば彼女も相応に戦闘能力は有している。
 戦力としては申し分ないし性格上の問題なんて、
 ドミノの仲間だって狩野と比べれば大抵の奴はましに見えてくる。
 一個人に対する執着は、何方かと言えば明に近しいものを感じた。
 ついでに言えばしおと同じで身内のことは当人らでしっかり決めてもらう。
 そこに必要以上の介入をするつもりはないので考えを改めさせるつもりもなく。
 突っかかることはせず、そのまま話を進めていく。

699彼等を導くみらい回路 ◆EPyDv9DKJs:2022/12/09(金) 19:39:14 ID:P1lIBxAE0
「主催が私の推測含めると四人だけど、もう一人いるとは思うのよね。」

「? どうして?」

「恐らく単純な話、平安京を舞台にする理由付けが少ないところかしら?」

「あ、そっか。」

 沙夜がドミノと同じ答えを出す。
 メフィスとフェレスは名前からして特別日本に執着があるとも思えず、
 ディメーンも伯爵に仕えてたことを考えると東洋に明るいとも感じにくい。
 ドミノが一応考える主催、ユーベンも平安京に思い入れがあるとは思えなかった。
 必然的にこの赤黒い平安京に対して、何か理由や思い入れなくしては選ばないだろう。
 もう一人ぐらい主催の関係者に日本に明るい人が出てくるはずだ。

「平安京と言えば紫式部とか、安倍晴明とか色々あるけど、
 別世界とかが普通にあるんじゃもう誰に絞ることもできそうにないね。
 たとえばレーザーを放つ源氏物語があった世界とかあっておかしくないし。」

 どんなぶっ飛んだ解釈したらそうなるのか、
 とは突っ込みたいものの充の言葉にないとも言い切れない。
 他者からすれば富士山の噴火があったドミノの世界だって異質だ。
 様々な世界を渡っている沙夜なら尚の事。

「平安京に心当たりある奴は?」

「義経が見知った間柄だけど、こういうのとは無縁と思うわ。」

 随分前の話ではあるが、零児の仲間にもいた記憶がある。
 とは言えあちら側にいて主催をするにはさすがにないので、
 無関係であるとは思うが。

「まだ情報不足か……心当たりがあるやつがいればいいんだけども。」

「これ以上いると思うの?」

「いるでしょ。こんだけ知り合い入れてんだから。」

 ドドンタス、みらい、零、アナムネシス、もしかしたらで伯爵。
 明らかに確定してるだけでも自分達の知り合いだろうと遠慮なく参加させている。
 知られてもさして問題ないなら、今更平安京関係者がいないと言う可能性も低いだろう。

「でもそれじゃ集める意味ない気がするんだけど。」

「ないよりはあるほうがいいでしょ。
 あいつらが好みそうなやり口とか、性格の悪さからくる嫌がらせとか。」

「確かに、お姉ちゃんと私を同士討ちさせて遊んできそう。」

 双子の性格の悪さは折り紙付きだ。
 少し考えただけでイメージできてしまう。
 特に幽鬼であることは姉には隠しているわけだし、
 それが露呈した場合何が起きるかは想像できない。
 下手をしたら零と殺し合う可能性だってあるのだから。

(そうなったら殺しちゃう、ってのは短絡的かな。)

 自分を愛さない姉ならいっそ殺して、
 いらない記憶を全て消す形でヨミガエリさせるのも一つの手段、
 なんて考えたが、此処で殺した零がヨミガエリできるか分からない。
 あくまでそれは最終手段。殺すことはできるだけ避けておきたい。

「あ、そうだ。お姉さんこの辺で死体見なかった?」

「? 一応見たけど、何かに使うの?」

「ちょっと確認しておきたいかなって。」

 魂の回収。できるならば今のうちにしておきたかった。
 既に死んでいる相手であるのならば、余り反感も買わないはず。
 そう思ってドミノ達と共に胴着の男、カンフーマンの所へ向かうが、

(魂がない?)

 胴着の男の魂が何処にもなかった。
 回収されなければ魂は残っているはずだし、
 魂と思しきものも誰も見てないと言う。
 魂がないということは、誰かが回収していることになる。
 しかし、辺獄関係者以外が魂を回収できるのかは疑問だし、
 できるなら回収できるようにしている意図も謎になるのでその線もなく。
 千も零も目的の為と言えど幽者でもない人の魂を回収する性格とは違うし、
 千はともかくとして零の場合、優勝するかさせて妹の生存を図るはず。
 だから魂を最初から集めるメリットはこの場において存在しない。
 かといってアナムネシスでないことも、情報の共有から知っている。
 (情報の共有と言うよりは、沙夜が聞いたのを盗み聞きしただけだが。)
 魂を自分やアナムネシスに回収されると不都合はさしてないはずだ。
 あくまでヨミガエリに必要な魂を集めるだけであって、
 殺し合いを破綻させるだけの力や何かが起きるわけでもなし。

700彼等を導くみらい回路 ◆EPyDv9DKJs:2022/12/09(金) 19:40:38 ID:P1lIBxAE0
(となると、アイツら魂を集めることが目的になってる?)

 それ以外考えられないものの、少し気掛かりだ。
 ただの魂を集めるだけならば最初から殺せばいい。
 特に零や千は向こうにとって勝手のいいペットのはず。
 此処で無意味に失わせるほどのメリットがあると言うこと。

(でも最初から自分の手で殺せば……ああ、理念ね。)

 ただ殺すして集める魂だけでは効率が悪い。
 殺す相手に感情を乗せることで理念を生み出す。
 此処に歩夢のような本来なら殺し合いに乗らないような、
 基本的な道徳や倫理を持った人物がいるのもこれなら納得できる。
 彼女は泣きながら侑を殺す。そういう時ほど上質な理念になるはず。
 双子が望んでいるのはそういう殺し合い。更なる裏はありそうではあるが。

「何かあった?」

「何もなかったのがあったよ。」

 みらいはひとまず情報を共有しておく。
 筆談などをするべきかとも思ったものの、
 双子はそもそも元の世界でも理念を集めていた。
 明かして何か起きるとも思えないので筆談の経由はしない。

(分かったところでどうにかなる問題でもないわね、これ。)

 感情を乗せて殺すな、なんて一朝一夕で身につくわけがないし、
 それならそもそも殺すところを止める方が早いのが現状ではある。
 魂すら集めているのだからそっちの方が明らかに阻止に繋がるはずだ。
 ただこの人数でこの速度。いかにドミノでも手を伸ばすには困難を極める。

「ところでアンタたち。アーナスよりこっちに鞍替えする気はない?」

 戦力として申し分なし、充と言う首輪の解除に繋がる可能性の人物の存在。
 参入するだけで大きなメリットに繋がるのは間違いないのと、
 元々アーナスとの協定もその場しのぎの口約束みたいなものだ。
 紗夜も最初から殺し合いに対して積極的に乗るつもりはなかったし、
 みらいも魂を集められない現状この舞台での目的は零のみ。
 歩夢だけが少し不安点はあるが基本的には乗り気ではない。
 総じてアーナスの目的に賛同する理由は全員存在しないはずだ。

「でもいいのかしら? 私はあなたの世界にも関わる敵かもしれないけど?」

「それを今持ち込むべきじゃないってのは、お互い様でしょ。」

「よくわかってるじゃない。坊やと同じで理解があって助かるわ。」

 やはり正直に話して正解だった人物だ。
 デミトリ達ダークストーカーにも負けず劣らずのヴァンパイア。
 多少の警戒と引き換えに安全な勝ち馬に乗れるのは大きい。
 勝ち馬の傘下にいれば零児からも警戒心は薄れるだろう。
 もっとも、共闘したことはあるから警戒しすぎとも思うが。

「私もいいけど、お姉ちゃんの件は大丈夫?」

「情報提供してくれたわけだし、少しぐらいは仲裁するけどそこまであてにしないことね。」

「話が早くて助かるよ、お姉さん。」

 姉とは複雑な事情が絡んでいる様子。
 しおと同じように事態の解決は当人らになるべくさせたいが、
 展開次第で衝突が起きると言うのであれば多少は仲を取り持っておきたい。
 この殺し合いにおける現時点で唯一の代行者。先に傘下に引き込みたいところだ。

「歩夢ちゃんは……まあ、聞けそうにないか。」

 そろそろ放っておくと爆発しそうだからと、歩夢の方へと向かう。

「それで、六人で行動は流石に効率悪いんじゃないかしら?」

「勿論そのつもりだし、あの二人は目的があるからそのままの方がいいわ。
 となると……沙夜、しおと充をアンタに一旦預けたいんだけど任せられる?
 より安全なのが見つかったら、そっちに預けても構わないから。」

 三人の中だと一番理性的であり、
 何かあった時の対応もできる方だ。
 戦力は未知数だが日ノ元よりはましだろう。
 紗夜も信用を得ておきたいので引き受けておく。

「別にいいけど、貴女はどうするの?」

「私は南へ行くわ。天候が変わっていたのも気になるし、」

 移動中に見えた南方での悪天候。
 辺獄は天候も気温もさして何もなかったことから、
 誰かの能力によるものであることは予想がついている。
 天候の操作などビギナーヴァンパイアではできないことだ。
 紗夜たちに向かわせるわけにはいかないので自分一人で向かう。

「んー、そうなると私達は西に向かうのがいいわね。」

701彼等を導くみらい回路 ◆EPyDv9DKJs:2022/12/09(金) 19:41:45 ID:P1lIBxAE0
 ドミノが北から南下してる以上収穫は得られそうにない。
 東に零も侑もいなさそうなので、みらい達も西へと向かうことになる。
 アナムネシスや吹き飛ばした怪物(不動明)を考えると、
 少し不安もあるが南も大概であることには変わらない。
 紗夜が二人に説明している間に、ドミノは空を飛んで移動していく。

(南にどれだけ生き残りがいるか、敵がいるか。)

 どっちであっても構わない。
 敵なら潰し仲間になれるなら傘下にすればいい。
 もう一人の真祖も攻勢に回り始める。

【E-7/一日目/朝】

【ドミノ・サザーランド@血と灰の女王】
[状態]:全身にダメージ(大)、疲労(大)、身体を再生中、主催に対する強い怒り
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2、応急手当セット@現実
[思考・状況]
基本方針:メフィスとフェレスとかいうクソ野郎二人は必ず叩き潰す
1 :攻勢にでるわよ。南に行って様子を確認する。
2 :下僕たち(佐神善、日ノ元明)に充や彰の知り合いを探す。
3 :首輪及び紋章を何とかするために、主催を知ってそうな参加者を探す。
4 :あの悪魔(不動明)がまた挑んでくるようなら迎え撃つ。
5 :日ノ元士郎はここで斃しておきたいけど今は待つ。堂島は信用しない。
6 :しおが『下僕』になるかは彼女次第。
7 :日ノ元とは何とか協定を結べたけど、下僕たちはどうするのやら。
8 :強姦魔(モッコス)とヘルメット(ジャギ)は出会ったら潰す。
9 :蒔岡彰、先に出会ってたら下僕だったんだけどねぇ……
10:伯爵の関係者も漁ってみる。
11:ユーベン……まさか?
12:零にあったら、まあ軽く仲裁はしておく。

[備考]
※参戦時期は88話から。
※真祖の能力に制限が課せられています
※主催者の関係者にユーベンが関係してる可能性を考えてます。
※ドミノ、しお、日ノ元、彰、オフィエル、みらい、沙夜と情報交換をしました。
 充はDルートなのではるなと彼女から話を聞いた人物、
 途中までならCルートと同一なので途中までは結衣と話が嚙み合います。










(首輪の紋章、言っておくべきだったかな。)

 紗夜たちと別れてからあることを思うみらい。
 一つだけ言わなかったこと、首輪の紋章だ。
 ドミノや歩夢は白い紋章、自分や充は赤い紋章が首輪に刻まれている。
 自分が赤い以上赤は死者か幽鬼であることを考えると、生きた人間は白なのだろうか。
 何かの手掛かりになるとも思うが、判断がつかないのもあって保留とした。
 ついでに、それが本当なら首輪を見ただけで零に幽鬼だとバレてしまう。
 だから言わないでおく。ドミノも言いふらすつもりがないので安全だ。

(お姉ちゃんどこにいるかなぁ。)

 隣で精神が不安定になった歩夢を連れてみらいは辺獄の地を歩く。
 彼女によって導かれた未来の道筋は既に暗雲立ち込めるものとは知らずに。



【幡田みらい@CRYSTAR -クライスタ-】
[状態]:健康
[装備]:万物両断エクスタス@アカメが斬る!
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0〜1
[思考・状況]
基本方針:管理人の思うようにはなるつもりはない、
1:お姉ちゃん、待っててね♪
2:殺されなくて良かったね! 歩夢ちゃん♪
3:ゴミ(千)消えたんだ。別にどうでもいいけど。
4:あのおばさん(沙夜)何がしたいんだろ。まあ邪魔をするつもりはなさそうだけど。
5:アーナスにつくよりお姉さん(ドミノ)につく方がましだね。
6:最悪お姉ちゃんと殺し合いだけど、殺すのはこの状況だと避けたいかな。
[備考]
※参戦時期は六章(二週目)深間ノ街 萌芽から
※名簿を確認して姉の零、並びに千がいることを知りました。
※この殺し合いが魂と理念を集めが基本の軸となってないかと考えてます。
 また、紋章が白いのは生者ではないかと推測しています。

【上原歩夢@ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会】
[状態]:健康(ノロ)、意識混濁、身体能力向上、精神不安定
[装備]:加州清光@刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0〜2
[思考・状況]
基本:自分の想いを果たす
1:私だけの侑ちゃんとする。たとえ■してでも
2:みらいちゃんと一緒に行動する。今は西へ向かう。
3:ありがとう……みらいちゃん。貴方のお陰で、私は自分の本当の想いに気づけた。
4:同好会の皆に出会ったら……ううん。私は侑ちゃんを選んだ。だから■す
5:沙夜さんは何を考えてるんだろう。
[備考]
※参戦時期は11話〜12話の間。
※ノロのアンプルを注入されたため、ノロが体内に入り意識が混濁しています。
※名簿を確認して、侑並びにスクールアイドルの仲間たちがいることを知りました。

702彼等を導くみらい回路 ◆EPyDv9DKJs:2022/12/09(金) 19:42:08 ID:P1lIBxAE0


【神戸しお@ハッピーシュガーライフ】
[状態]:疲労(中) 服に湿気(小、時期に乾く)、不安(大)、男性に恐怖心(大)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本方針:とりあえず、さとちゃんと会う。
1:おばちゃん(沙夜)に着いていく。
2:ドンくんのだいじなもの、とりかえしてドンくんにかえす。
3:さとちゃんともじゃもじゃおじさん、どっちがしろくてどっちがくろいかをちゃんと考える。
4:もじゃもじゃ―――男の人―――怖い!怖い!!怖い!!!
5:さとちゃんさとちゃんさとちゃん
6:あきちゃん、おねーちゃんじゃなかった。
7:すごくむずかしいお話してた。

[備考]
※参戦時期は1巻でさとうを探して外へ出る前です。
※モッコスの社会勉強で性について知りました。(手○キ、〇ェラは技法マスター。S○Xはやり方のみ)
※モッコスから教えられた事柄への関心が薄れました。

【城咲充@リベリオンズ Secret Game 2nd stage】
[状態]:顔面腫れ、貧血(傷は止血済み)
[装備]:アークス研修生女制服 影@ファンタシースターオンライン2、柊樹@PROJECT X ZONE2 BRAVE NEW WORLD
[道具]:カンフーマンの首輪、カンフーマンのデイバック
[行動方針]
基本方針:初音ちゃんとしおを殺し合いから脱出させる。
1 :沙夜さんと同行。
2 :しおを女の子を安全な場所へ連れていく。
3 :男物の服はないのか?
4 :初音ちゃんを探し、護る。無論、他の仲間たち(悠奈、修平、琴美、結衣、真島、はるな、大祐)も。
5 :脱出の協力者を探す。
6 :日ノ元さんとドミノさんの関係、余り聞けてないけど黒河君と真島君みたいなものなのかな。
7 :ドミノさんに初音ちゃんを護ってもらう。
8 :初音ちゃん、強姦魔(モッコス)とかヘルメットの人(ジャギ)に襲われないといいなぁ‥…
9 :蒔岡君に出会えたのはちょっと嬉しいかも。
10:奴隷の次は下僕って何!?
11:工具あれば首輪を弄れるかも。

[備考]
※参戦時期はDルート死亡後。
※メガンテのうでわの説明書を読みました。
※ドミノ、しお、日ノ元、彰、オフィエル、沙夜、みらいと情報交換をしました。

【沙夜@PROJECT X ZONE2 BRAVE NEW WORLD】
[状態]:健康
[装備]:炎燐@PROJECT X ZONE2 BRAVE NEW WORLD、死者行軍『八房』@アカメが斬る!、ジャギのショットガン@北斗の拳
[道具]:基本支給品一式×2(自分、沼の鬼)、ランダム支給品×0〜3(自分×0〜1、沼の鬼の鬼×0〜2)
[思考・状況]
基本方針:情報収集。脱出が不可能となったら優勝狙い。
1:二人を安全と言える人に保護してもらう。坊やでも見つけて渡そうかしら?
2:本調子を出すには、あと刀一振りね……
3:坊やと出会ったら……共闘がいいかしら?
[備考]
※参戦時期は後続にお任せします。
※アーナス、アナムネシス、幡田みらいが双子と関わりがあると睨んでいます。
※名簿を確認して有栖零児がいるのを知りました。
※骸人形と化した沼の鬼達は沼に潜みながら、
 沙夜の後をついていき命令があるまで黙って待機しています。
※みらい、アナムネシス、歩夢、ドミノ、しお、充と情報交換しました。

703彼等を導くみらい回路 ◆EPyDv9DKJs:2022/12/09(金) 19:42:30 ID:P1lIBxAE0
以上で投下終了です

704 ◆vV5.jnbCYw:2023/07/06(木) 18:41:28 ID:4AHK6DVY0
投下します。

705ギアチェンジ ◆vV5.jnbCYw:2023/07/06(木) 18:41:58 ID:4AHK6DVY0
何が原因で苛々するのか分からなくて苛々する。
放送が終わった後、ロックに抱いた感情はそれだった。


たった6時間で40人近くの参加者が死に、極めて順調に数は減っている。
自分が進んで手を下さず、どこかに隠れていても、このまま殺し合いは進んでいくだろう。
加えて自分は無傷とはいかずとも、五体満足にこの地を闊歩している。
気に喰わない奴は先ほどのように爆発に巻き込んでやればいい。


だというのに、この気持ちは何だろうか。
自分の素性を知っているトッペイやギャブロが生きていることだろうか。
殺し損ねた連中が、自分を追いかけようとしていることに対する懸念か。
はたまた、先程親友の幻に驚かされたことへの屈辱か。
どれとも原因が断定できない苛立ちが纏わりついて来た。


(ん?誰か来るな……。)


前を見れば、誰かが学校から歩いて来ていた。
上手い事利用できる相手かどうか、今の内から思考を巡らせ始める。
そしてすぐに、利用できそうにない相手だと気付いた。


首より上は、青髪の女性。冷たい印象を受けるが、それだけならまだ話し合える可能性がある。
問題はそれより下。
豊満な胸がはだけたハイグレ一枚で、しかも股間にあたる部分がもっこりしている。
そんなあられもない格好をしている理由は不明だが、非常識な格好で渡り歩いている時点で、まともな話を出来そうな相手でもない。


「私の名はエスデス。そう品定めしている暇があるのなら、私と戦え。」


その言葉を聞いて、すぐにロックは逃げ出した。
勿論、ポケットに仕込んでおいた小石を投げてから。
明らかに面倒な相手だと思っていたが、こいつは面倒を越えている。
さっさとこの場から逃げ出し、自分を追って来る奴等にでもぶつければいい。


相手にせず、さっさと逃げると判断したロックの動きは早かった。
勿論、人間の域を越えてはいないが、その判断力は目を見張るものがあった。
だが、その足はすぐに止まることになる。


何しろ、ロックの行き先に、氷の壁が生えてきたからだ。
危うくぶつかりそうになるが、慌ててその足を止める。


「キラークイーン!!叩き壊せ!!」


スタンドのラッシュで、氷の壁を砕こうとする。
ロックが現在手にしたスタンドは、人間を凌駕した腕力を持っている。
いくら厚かろうと、氷の壁ぐらい壊せぬ道理はない。
だが、次々に新たな氷が出てくる。壊しても壊しても、行き先が見えてこない。

706ギアチェンジ ◆vV5.jnbCYw:2023/07/06(木) 18:42:15 ID:4AHK6DVY0

「逃げることは許さん。私と戦ってこの身体にお前の力を刻み込むか、戦うのを諦めて嬲り尽くされて死ぬか選べ。」


ロックには知らぬことだが、今のエスデスは被虐願望と嗜虐願望、2つの欲望を兼ね揃えている。
戦い抜いてその身に攻撃をありったけ受けてから、殺すのも良し。
それが出来ぬというのなら、かつてのように肉体も精神も蹂躙した上で殺せば良し。


「ちっ!そんなに戦いたいなら、相手にしてやるよ!!」


砕いた氷を一欠けら掴んで、エスデス目掛けて投擲した。
そんなものではエスデスを満足させることは出来ない。
投げた氷が、ただの氷ならばの話だが。


「そこで点火だ!!」


ロックの背後にいたキラークイーンが、親指を曲げる。
その瞬間、ボタンの作動音と共に、投げた氷が爆発した。
爆風や、飛び散る透明の刃がエスデスを襲う。


「やれば出来るじゃないか。もっと来い。私を蹂躙し、犯し、絶頂させて見せろ。」


ロックの攻撃は効いていない訳ではない。爆風は彼女を焼き、刃は顔を傷付けた。
だが、苦しんでいる様子は見えず、あろうことか恍惚の表情を浮かべていた。
顔の筋肉の大部分を上に寄せ、頬を紅潮させ、まさに痛みを良しとするマゾヒスト。


「キチガイ女め、そんなに欲しいならいくらでもくれてやるよ!!」


ロックは舌打ちし、地面に落ちてある石を拾って投げつける。
勿論、それを爆弾にしておくことは忘れない。


だがそれは、地面からせり上がって来た氷の壁に阻まれる。
勿論、爆風もエスデスに届かない。


「同じことが通じると思ったか?そんなものでは私を絶頂に追い込むことは出来んぞ?」


ふいにロックの右肩を、何かが掠めた。
嫌な予感を覚えたロックは、空を見上げる。
赤い空をバックに浮かんでいたのは、大量の氷塊。
普段ならばあり得ないような光景。だがエスデスという女将軍は、そのような光景をも作りだしてしまう。


(以前より調子がいい。あの小娘の力の賜物か?)


エスデスの予想通り、彼女はミスティから挿入された魔力を、自分のものに還元していた。
自分を操るための魔力も、食らってしまえば立派な栄養分だ。

707ギアチェンジ ◆vV5.jnbCYw:2023/07/06(木) 18:42:37 ID:4AHK6DVY0

天から、雨のように氷柱が降り注ぐ。
雨後の筍、もとい吹雪の後の氷柱と言った所か。



(こいつ……バンパイヤの一種か?)


ロックは一瞬だが、何かにつけて不可解な彼女をバンパイヤと考えた。
ルリ子の話から、彼らはキツネつきやイヌつき、ヘビ女だと異常な者と例えられてきたことを知っている。
女性のような風貌でありながら、股間に膨らみがあるのも、それと関係しているのではないかとも推測した。
だが、今の攻撃で彼女はバンパイヤとは全く違うものだとみなした。彼らは変身こそできるが、エスデスのような超越的な力は持ち合わせていないからだ。


(邪魔するな!!)


キラークイーンの両の拳で、氷柱を1つずつ砕いて行く。
壊しきれなかったものは移動することで、その被害から免れる。


「血に染まった空は見ていて悪くはないのは分かる。だが、私のことを忘れているのではないか?」


氷の迷路を逃げ惑う中、気づけばすぐ近くにエスデスの刃が迫っていた。
彼女はただ無造作に氷の雨を降らせていたのではない。
より近くで戦えるように、ロックをはかぶさの剣のリーチ内に移動させていたのだ。


慌ててスタンドの攻撃を上から前へ。
キラークイーンの右腕で、はかぶさの剣を止める。
勿論ダメージのフィードバックが無いわけではない。ロックの右腕に、長さ5センチほどの裂傷が走る。
だが、ここでロックが撃った手は、逃げではなく攻め。

フィールドを完全に支配されている以上、守りに徹しても敗れるのは目に見えている。
元々ロックは身代金を奪う際にも、下田警部を殺す際にも、まずはステージ作りから実行するタイプだ。
逆にステージの主導権を握られてしまうなら、のんびり戦うことは出来ない。


スタンドの拳が、エスデスの腹に刺さる。
元の持ち主がある少年に使った時のように、そのまま背中まで貫くことは出来なかった。
だがそれでも、ロックの左手に伝わった心地いい感触と、大きく後方に飛んで行く女将軍は、ダメージを与えた証左になっていた。


「ああ……いい。素晴らしい。もっとくれないか……。」


口から血を垂らしながらも、恋する乙女のように頬を紅潮させ、目をトロンとさせている。
痛みよりも、快感が勝った。


(……気持ち悪いにもほどがある奴だな……。)


確かに攻撃は効いたはずだ。
だが相手は苦しむどころか、興奮している。
それがはったりや、ちんけな小芝居というわけではないことはロックにも伝わった。
なぜなら、ハイグレに包まれたそれが、立派に勃起しているからだ。

708ギアチェンジ ◆vV5.jnbCYw:2023/07/06(木) 18:43:06 ID:4AHK6DVY0

「それと自分の身体は気を遣わなくていいのか?」
「?」


嫌な予感がしたと思った瞬間だった。左の脇腹から右の胸にかけて、鮮血が迸った。
エスデスが振るうはかぶさの剣は、一振りで二度破壊の風を起こす。


「ぐああああああ!!!」


血を失ったことによる虚脱感がロックを襲い、千鳥足になる。
ロック自身はバンパイヤでもなければ、悪魔でもない。
ただ残忍な心の持ち主というだけで、身体はそれなりの強度しかない。


「安心しろ。あえて傷を浅くしておいた。まだまだ楽しみたいからな。」
(この一人サドマゾ女が……)


ロックは憎まれ口をたたく余裕さえなかった。
ただ、これ以上出血が多くなることを恐れ、拾った氷を腹に当てた。


「私よりも、腹の傷の方が大事か?悲しいな。」


すぐにエスデスはロックに迫り、すらりと伸びた足で蹴飛ばした。
彼女でさえもキラークイーンの殴打を腹に受け、肋骨を何本か持っていかれたはずなのに、どうという様子を見せない。
デモンズエキスやはかぶさの剣が無くても、帝国直属の悪名高き将軍だ。
それ以前には自分より巨大な生物を狩ることで生きていた。


「ハァーッ……ハァーッ……!こんな……はずじゃ……!!」


立ち上がろうとするが、足がもつれて立てなかった。
さらにそこに、氷が彼の革靴を閉じ込め、追い打ちをかける。
戦うことも逃げることも出来ない。
かつてとある世界の悪魔は、恐竜と共に氷に閉ざされて死んだ。
ロックという悪魔も、エスデスという女が放つ氷によって最期を迎えようとしていた。


「どうしてくれるんだ。これを見ろ。折角楽しめると期待していたのに、不甲斐ないから萎えてしまったぞ。」


エスデスは冷たい目で、ロックを見下ろしていた。
彼女はロックの能力は気に入ったが、ロック自身はもうどうでもよかった。


「これ以上お前が私を楽しませる気が無いというのなら、私がお前で楽しむだけだ。
手足を捥ぎ取り、目玉をくり抜き……そうだ、ナニも引き裂いておかねばな。」


ロックはエスデスに言葉を返さない。
ただ、ギリギリギリと歯ぎしりの音だけが彼の口元にあった。

709ギアチェンジ ◆vV5.jnbCYw:2023/07/06(木) 18:43:28 ID:4AHK6DVY0
(じょうだんじゃない…ぼくは楽しむ側の人間だ……!!)


ロックは頭を回転させ、状況を打開しようとする。
まだ頭脳だけは自由だ。
それさえも動かなくなる前に、どうにか切り抜けようとする。


不意に、ある言葉が脳裏に浮かんだ。


――今夜出会う一番気に入らない人間を仲間におし。そうすればあんたは大成功するよ……


かつて3人の占いの老婆に言われた言葉。
ロックはその通りにして、ルリ子らバンパイヤと手を組み、彼女らを自分の屋敷に招き入れた。
その屋敷を拠点に、バンパイヤ革命を進めていった。
だが、それは結局破綻した。占いの老婆に抗議しようにも、彼女らはバンパイヤにかみ殺されていた。


今になって、なぜその言葉が頭に浮かんだのかは、ロックにも分からない。
だが、目の前に転がり込んできた札だ。次の出番が回って来るかも不確かな状況の中、切らない手はない。


「なあ、おれの負けだよ。だが、次は違うかもな……。」
「次だと?お前に次があるとでも思っているのか?」
「あるさ……望めばな。あんたは色々と壊したいんだろ?戦いたいんだろ?おれと手を組めば、望みが叶うぜ?」


ロックは不敵な笑みを浮かべながら、話をつづけた。
彼はエスデスと会ってから、1時間も経っていない。
だが、彼女が何を望むのか、何を悦としているのかはよく分かった。


「……一応聞いてやろう。もし私が手を貸すと言ったならば、お前は何を見せる。」


エスデスと言えど、話を聞く余裕ぐらいはある。
豚の寝言と相違ないものなら、豚のように殺せばいいだけだ。


「(ノって来た……!!)……だが、ちょっとぼくはダメみたいだ……血が多すぎて、目がかすんできたよ。」

ロックの言葉は、半分演技、半分真実。
だがその押さえた傷口は、氷で固まっていた。

710ギアチェンジ ◆vV5.jnbCYw:2023/07/06(木) 18:43:46 ID:4AHK6DVY0

「安易に殺すと思ったか?続けろ。」

「ぼくはね。元の世界で社会を転覆させたのさ。きそくや道徳、しきたりなんかが全部壊れた世界を実現させたんだよ。バンパイヤというけだものに化ける人と組んでね。」
「…つまらなくはない話だ。だがそれは、私一人でも可能なんじゃないのか?」


エスデスの言葉にまたしても苛立つロック。
彼女の言っていることがはったりだから腹が立つのではない。彼女の強さと自信からして、実践できてしまいそうな事実がこの上なく腹立たしいのだ。


「ぼくが殺しやすい場所を、戦いやすい場所作ってやるんだ。芸術家だって漫画家だって、将軍様だってパトロンは必要だぜ?
気に食わなければぼくをいつだって殺せばいい。もっとも楽しめるチャンスは幾つか減るだろうがね。」

「私を謀るつもりか。」

「分かっているなら殺せばいいと言っただろ。いや、あんたが手を下すまでもない。キラークイーンで僕自身を爆弾にするかもね。
なぐさみものにされるだけの人生なんて、ぼくはごめんだ。」


エスデスの剣を握る手が震えた。
目の前の相手を殺すことは簡単だ。
だがそれは、看守がおらず、紙で出来た格子の牢獄から脱獄するようなもの。
スリルも楽しみもあったものじゃない。


「それにぼくを殺さずにいたら、きみにもっと快感を与えるかもしれない。その腹の傷以上のね。」
「もっと楽しみを渡してやるから今は殺すな。そう言いたいのだろう?悪くない。」
「話が早くて助かるさ。」


エスデスはニヤリと笑った。
明らかに苦し紛れの嘘だということは分かっていた。
拷問した相手が、解放して欲しさに嘘の証拠を告げるようなものだ。
だが、その話を、乗ってみようと考えた。一度は将軍の座から降ろされ、蹂躙された身。
だからこそ、新しいことをしてみる価値がある。


「ただし……」


エスデスの笑みがさらに邪悪になった瞬間だった。
その顔はすぐに見えなくなり、代わりにエスデスの黒手袋に包まれた手が視界を覆う。


ぶちり。




不意にロックの視界が、赤に染まったと思ったら、一瞬で半分になった。


「―――――ッッッ!!」
「前金として、コイツは貰っておこう。」


ロックに映る世界が半分になり、残りも幾分か赤で染まったその後。
間の抜けたようなタイミングで、不快感と激痛が襲って来た。
エスデスが右手で掴んだのは、ロックの左の目玉だった。
何が起こったのか気づいたロックは、慌てて左目があった部分を抑える。

711ギアチェンジ ◆vV5.jnbCYw:2023/07/06(木) 18:44:02 ID:4AHK6DVY0

「問題ない。冷気で出血は抑えた。それで死ぬことはないはずだ。」


そう言う問題じゃない、などと言う気力は失せていた。
目の前にいるのは、身も心もバンパイヤ以上の怪物なのだと、はっきりと分かった。
瞬く間に、彼が親から貰った財産の1つが、氷の箱に入れられる。


「満足すれば返してやるさ。それともここで死ぬことを選ぶか?」
「だ……誰がそんなことをするか!!」
「そうか。ならば私と共に来い。」


エスデスは背を向け、別の場所へと歩いていく。
ロックもまた、彼女の後を追う。片目を奪われたことが原因か、その足取りはふらついていた。


(いい気になっているのも今の内だ……目玉を奪っていい気になっているようだが、ぼくは君の臓物を奪ってやるさ。)


心さえも折られそうになるが、必死で言い返す。
まだ死ぬわけにはいかない。必ず生還してみせる。


(ぼくの心臓を取らなかったことを、後悔させてやるさ。)


片目を奪われてなお、ロックは再び邪悪な笑みを浮かべた。



【B-3/一日目/朝】



【エスデス@アカメが斬る!】
[状態]:ハイグレ人間  負傷(大) 疲労(大) 内臓損傷(治療済) 乳首母乳化 アナル拡張済み ふたなり化 処女喪失
[装備]:はかぶさのけん@ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島  中長ナス@現実
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1 ロックの目玉(冷凍保存済み)
[思考・状況]:ドSもドMも愉しみ尽くす
0:殺し合いという名のSMプレイを愉しみ尽くす。
1:ロックと言うペットを使ってみる。使えないようなら嬲って殺す
2:堂島とは再戦したい。が、仮に再戦できなくてもその虚しさを堪能できればそれはそれで...
3:優勝出来たら善かミスティでも蘇らせるとしよう。
4:北条沙都子と北条鉄平は別にどうでもいいが見つけたら狩る。
5:せっかくふたなりになったことだし帰ったらタツミに使ってみるか。

[備考]
※参戦時期は漫画版死亡後より。
※ナスで処女喪失しました。
※ハイグレ光線銃によりハイグレ人間となりました。
※摩訶鉢特摩は使用したため、2日目以降でないと使用できません。
※戦闘は支障なく行えます。
※デモンズエキス本来の効果によりハイグレ光線の洗脳効果を食らいつくしました。





【間久部緑郎/ロック@バンパイヤ】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(大)、腹に裂傷(治療済み)・左目喪失 汚れ、零に対して少しだけ同情 侑に対してイラつき(大)
[装備]:キラークイーンのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本方針:秩序なきこの場を楽しむ
1:エスデスをどうにかして利用する。
2:トッペイと出会ったときはどうしたものか。
3:アナムネシスとみらいに警戒。ただみらいは利用できるかも。
4:零、千は利用できるか?
5:……西郷……
6:アイツ(ギャブロ)がうっとおしいな。
7:目玉を失ったって、生き延びて見せる
[備考]
※参戦時期はバンパイア革命に失敗し、西郷を殺害した後。
※クライスタの世界を(零視点から)大まかに把握しています。
※侑とエレンの世界を(侑の知識)大まかに把握しています。
※侑の額の支給品(エクステッド)の効果は洞視だけでなく幻視も使えるのだと思っています。

712ギアチェンジ ◆vV5.jnbCYw:2023/07/06(木) 18:44:14 ID:4AHK6DVY0
投下終了です。

713 ◆EPyDv9DKJs:2023/07/29(土) 18:16:07 ID:KIFQ.e860
投下します


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