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辺獄バトル・ロワイヤル【第3節】

1 ◆2dNHP51a3Y:2021/06/25(金) 21:22:55 ID:riCoyL6w0
―――ソラを見よ、血染めの月が、世界を侵食(おか)す

415 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/26(土) 12:45:31 ID:0jB1Jmic0
完成までもう少しだけ時間がかかるため
もう一週間延長をさせていただきます。
2回目の申請となること申し訳ございません。

416 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:01:24 ID:2SqFhHp20
遅くなりましたが、投下お疲れ様です!
dread answerまで後僅か
主催者にも臆せず、情報を要求する軍服は強者感が溢れていますね!
そして、タイトルが、まさに名を表すので、放送後の修平にドキドキします。
「遊びで洋服とか入れちゃったりしたし、
 中には人の服を奪うこわーい人もいるから……」
↑モッコスが充の服を奪った場面も観ていたと想像するとちょっとクスリとしちゃいました(笑)
また、タイトルを少し絡めさせていただきました!

投下いたします。

417辺獄平安公演 朝の部 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:02:39 ID:2SqFhHp20
私、自分の歌を聴いている人を幸せにしたいんですよ。世の中が音楽で穏やかになればいいなと思っているので。
小田さくら

序章 初ライブ〜延期〜

〜〜〜♪〜〜〜♪〜〜〜♪〜〜〜

都内のビルのとある一室。
曲に合わせて、キュッ!キュッ!と靴が床を擦る音が響く。
休みなく続く。
額から飛び散る汗。
それを腕で拭くことも今は敵わない。
なぜなら、両腕は振付で動かしているからだ。

はぁ……はぁ……はぁ……

「そこ!ワンテンポ遅れてるぞ」
「はい!」

コーチの激が飛ぶ中、レッスンは続けられる。
複雑なステップに体全身を動かす激しい振り付け。
ダンス経験者だとしてもつらいと感じるであろうレッスン。
何人かの表情も辛さを見せる。
そんな中、自身も辛いはずにも関わらず笑顔で踊る少女がいる。
年齢も背も低い少女は、レッスン場にいる誰よりも笑顔で真剣だった。

☆彡 ☆彡 ☆彡

「はい!一旦休憩をとります。各自、水分補給を怠らないように!」

ピッとボタンを押しただけで先ほどまでの様子が嘘のようにCDラジカセが沈黙する。
それと同時に休憩の合図。
それは、神の天啓。
ベテラントレーナーの言葉を耳にしたと同時にアイドルたちは素早くmyボトルに手を伸ばすと喉を潤す。

……ごくっ!ごくっっ!!ごくっっっ!!!ぷはぁぁぁ……

「は―――、生き返った〜〜〜」
「今日のレッスンは、いつにもましてへとへとになっちゃいますね〜。凛ちゃん」
「でも、あの子の頑張りをみてたら負けてられないわね」
「うんうん、しぶりんとしまむーの言う通り!私たちも気合入れていくよっ!」
「……うん。そうだね」
(あの子も私と同じ”出身”なんだよね……がんばろうね。でも笑顔とやる気は負けないつもりだよ!)

少女達はアイドルになった。
ある子はスカウトによって。
また、とある子はオーディションによって。
まぁ、女の子の胸に興味があるからアイドルになったというぶっとんだ子もいるが。
ともかく、理由は千差万別あれど、アイドルになったからには想いはただ一つ。
大勢のファンの前でキラキラと輝くステージ上で歌う。
だから、どんなにトレーナーたちのキツイレッスンを受けてもツライ表情は見せても”もうやりたくない”といった言葉は存在しない。
皆、真剣にアイドルをしているのだ。

☆彡 ☆彡 ☆彡

418辺獄平安公演 朝の部 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:03:23 ID:2SqFhHp20

「お疲れ様です」
「おや、プロデューサー殿。お疲れ様です」

レッスン場に顔を出したのは、アイドルを影で支える縁の下の力持ち。
プロデューサー。
ちなみに根も葉もない噂だが、時折顔面がPに見えるという目撃談がされる業界内で有名なプロデューサーだ。
ベテラントレーナーは顔を見せたプロデューサーに挨拶を返す。

「レッスン場に顔を出されるなんて、もしかして緊急の仕事でも入ったのかな?」
「いえ、”あの子”の様子が気になったもので」

プロデューサーはチラリと視線を向ける。
その視線の先をトレーナーも後を追う。
そこに映るは黄緑色のパーカーをトレーニングウェアとして身に纏う少女。
少女もつかの間の休憩を談笑して過ごしている。

「ああ……最近、”昇格”したあの子か」
「ええ。昇格できたとはいえ、まだまだアイドルとしては未知数。果たして本当に芸能界を渡り歩くことができるのかと」
「ふっ、あの子も幸せだな。天下の名プロデューサーにそこまで気にかけてもらえるなんてな」
「ちょっ!……私はどの子も気にかけていますよ」

少女は養成所の候補生だった。
アイドルになるべく日夜休まず歌とダンスのレッスンに励んでいた。
それこそ、通う学校の友達との時間をすり減らしてでも。
そして、その努力はついに実り、アイドルとしてプロダクションの施設へ顔を出せるようになったのだ。

「あ!プロデューサー!」

自分と同じジュニアアイドル達と軽い休憩していたが、自分の担当プロデューサーを発見したことが嬉しいのか走って駆け寄る。

「みりあ。レッスンの調子はどうだ?」
「うん。楽しいよ♪」
「本当か?辛いときは無理せず言っていいんだぞ」
「私、無理なんかしてないよ。だって、毎日が楽しくて楽しくてしかたがないんだもの!」

先ほどから話題となっていた赤木みりあはピョンと跳ねながら元気に答える。

「そうか。その調子が続くなら、来週の初ライブは大丈夫そうだな」
「え!?みりあ、アイドルとして歌えるの!?」
「ああ、みりあも昇格してから数か月がたったからそろそろ……な。
 ということで話が進んだんだ」
「へぇ!それはめでたいことじゃないか!」
「……といっても、近隣の商業施設でのミニステージだけど……って」

”初ライブ”ということが嬉しいのか、みりあは、レッスン場を走り回る。

「ふふ、カワイイ服を着て、カワイイ歌を歌って、カワイイダンスを踊って……
 やっぱり、これからも毎日楽しいことがいっぱいだね☆楽しみだなっ!」
みりあは今、この一瞬、一瞬を満喫している。

☆彡 ☆彡 ☆彡

「今日も、遅くなっちゃったなー」
レッスンの帰り道。
空を見上げるとそこは、星々が輝き照らす夜空。
ふと、手を上げ、星の一つを掴むかの如く握りしめる。

「おーねがい、シンデレラ〜 夢は夢でおーわれない」

口から紡がれるのは、事務所に所属するアイドルなら全員歌える歌。
プロデューサーやベテラントレーナーさんの手前、心配を感じていない風に装ったが、正直に言うと、ちょっぴり不安もある。

念願のアイドルへと昇格できたが、あくまでスタートラインに立っただけ。
この後の活躍は今後の自分の実力次第。

「動きはじめてーる 輝く日ーのためーにー」

”アイドルとしてカワイイものに囲まれてみんなと楽しくなりたい”

それは、幼きアイドルの純粋な願い。
しかし、その願いは聞き入れなかった。
そればかりか、逆に強要される。

「さぁ、楽しい楽しい殺し合い、みんなみんな殺し合う。あははははっ」
「では始めようかのう……天国でも地獄でもない場所での、生き残りを賭けたゲームを」

殺し合いを。
命を奪い、血で血を洗うおぞましき企画を。
こうして、みりあの初ライブは悪辣な陰陽師と双子の悪魔の手で握りつぶされた。

☆彡 ☆彡 ☆彡

419辺獄平安公演 朝の部 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:04:33 ID:2SqFhHp20
1章 嫁

ここは、とある世界。
その世界は、夜の君が降り注ぎ蒼き血により邪妖が跋扈する地上となっていた。
そして現在、かつての夜の君やアーナスに取って変わって魔を統べるは月の女王。
伝説の半妖と呼ばれしアーナスは現在、月の女王に捕らえられ、暴走状態にさせられ、さまよい続けている。

「……誰だ」

……ザッ

アーナスは気配を感じるとヨルドを構える。

「綺麗な朱と翠玉の眼……うん。うん。うん。
 やっぱり、ボクの八将神はアーナスちゃんで決まりだな〜」
「八将神?訳のわからないことを……。
 それより、貴様は邪妖だな?」

目の前に現れたゴシックドレスの少女。
しかし、アーナスは見逃さない。
少女が身に纏う力に。

「邪妖?ボクが……?うふ、うふふふふ。
 見当違いだよぉ、アーナスちゃん。
 ボクは君のP(プロデューサー)。
 フェレスPと呼んでもいいんだよ」

悪魔は嘲笑う。
その瞳は”き〜めた!”と悦んでいる。

「……意味がわからない。
 それにふざけたことを……。
 まぁいい、それより、貴様は私の名前を知っているのか?
 私は……自分がわからない……だから……貴様の血をよこせッ!!!」

いくつか聞きなれない単語を発する邪妖らしき魔の存在。
だが、どうやら自分の名前を知っていることからアーナスは吸血しようと試みる。
暴走状態とはいえ夜の君を倒したエージェントと辺獄の悪魔の片割れによる激突。
戦闘の経緯は、ここで語らなくても十分であろう。
八将神としてアーナスが参加者にいる。
これが、結果だ。
こうして、フェレスにより八将神として調整されたアーナスは人間だったころの記憶や半妖だったことの記憶はそのまま欠落したままの上で”大切なもの”を奪いとったものは、 「人間」であったと認識させられたとさ。

……まる。

☆彡 ☆彡 ☆彡

420辺獄平安公演 朝の部 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:05:21 ID:2SqFhHp20
二章 魔の時間

「人間は……殺す!」
アーナスは迷いなくヨルドでさとうを斬り捨てようと振り下ろす。

「アーナスさん!!!」

さとうを斬り裂く殺意の刃は寸前、アルーシェの持つ刀……扶桑刀で食い止められた。
扶桑刀……扶桑皇国の軍人が手に持つ魂の刀。
中でも、坂本美緒が魔力を込めて打った”烈風丸”はアーナスが所持する血剣ヨルドに引けを取らない。
刀と刀がぶつかり合い、火花散る。
交差する剣戟はやがて、刀と刀のつばぜり合いへとなった。

「アーナスさん!正気に戻ってください!」
「うる……さい!それより貴様のその血は私のものだ!!!返せ!!!」

アルーシェの言葉はアーナスには届かない。
むしろ逆にアルーシェの存在がアーナスの吸血衝動を増加させる。
グググッ……!と刀を押し返される。

「くっ……!」
(どうすれば……元に戻るんだ?)

アルーシェの脳裏に想起されるは、元の世界でのアーナスとの邂逅の出来事。
伝説の半妖と語られるアーナスとの初邂逅は今と同じように正気を失っていたため、戦闘となった状況だった。

……ううう……私は……誰だ……私は……

一進一退の攻防だったが途中、アーナスの自問自答が発生し、戦闘は中断となった。
その後、姿を現したアーナスの関係者であるクリストフォロスに暴走を止めてくれないかと頼まれた。
可能なら、ここ辺獄の殺し合いという特殊の状況だが、叶えてあげたい。
しかし現在、八将神として選ばれたアーナスは暴走状態となった時とほぼ同じだ。

(くっ……せめて、何か関係者の痕跡を示すものを発見できていたらなぁ)
クリストフォロス曰く、アーナスゆかりの物か何かを手に入れれば正気に戻ると言っていたが、探索する矢先にこの殺し合いに巻き込まれた。
アルーシェの額に汗が流れる。

「さっきから、血、血、血とうるさい」

……ブォッ

アルーシェとアーナスの会話に露ほども興味がないさとう。
さとうの言葉と同時にザ・ワールドがアーナスを襲う。
即座にアーナスはアルーシェを蹴り飛ばすと、ヨルドでザ・ワールドの攻撃を防ごうとする。

……が。

「……ガッアアア!?」

ドッゴオァ――――!!!

ザ・ワールドの逞しき黄金の腕が、アーナスの腹を貫いたのだ。
アーナスはたまらず、苦しみの声と血反吐を吐く。

「ひうっっ!?」
「……」
(あの時……僕も突然、さとうの守護霊の攻撃を受けた……その正体は一体?)
みりあは血の気が引いた顔で両手で顔を覆い、ベルトルトは無言でそれを見つめる。

そう、ザ・ワールドの能力”時間停止”
さとうにとってアルーシェもアーナスもモロクロにする無駄でしかない。
単純に、血を求めている危険そうかつ、明らかに異能の力を有しているであろうアーナスを生かすことはできないと即座に判断しただけだ。
さっさと勝負をつけようと、その能力で躊躇なくアーナスの身体をぶち抜いた。
八将神相手に時間をかけるのは得策ではない。
素早くトドメをさそうとしたさとうの判断は正しい。

「……」
(汚い……顔についちゃった……後で、洗い流さないと)
アーナスの吐いた血反吐が顔の頬にかかり、さとうは不快そうな表情を見せる。

血は嫌い。
染みついた壁をゴシゴシしても簡単にぬぐい取ることはできないし、苦いから。

421辺獄平安公演 朝の部 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:06:41 ID:2SqFhHp20
苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い
苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い
苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い
苦い苦い苦い苦い苦い苦い
苦い苦い苦い苦い苦い

……早く、苦みを取り払わないと。

鼻孔にツンとくる鉄の匂い。
甘いとは対極の味。
こんな姿ではしおちゃんに会えない。
ベルトルトにより付けられたスカートや制服の血も最悪だ。
本当……最悪。

……ああ
……しおちゃん……早く会いたい

さとうがアーナスにしたことは明確な”殺人行為”
しかし、さとうは気にもかけない。
全ては取り戻すため。
朝目覚めたら、すこやかに眠っているしおの寝顔を見るため。

―――いつも通りの朝を迎えるため

―――まってて、私のシュガーエンジェル

だが。


さとうもまた、甘すぎた。


「その力、時を操るのか」
「……ッ!?」
平然と喋りかけてくるアーナスに流石のさとうもぎょっ!と目を見張る。

―――ズルッ

自分から後ろに下がり、ザ・ワールドの腕から離れる。
普通なら、胴体を貫かれ平然とできる筈はない。
だが、何度も述べられているが、今のアーナスは”八将神”である。
疑似霊核として用意された心臓を破壊しない限り殺すことは不可能なのだ。

「だが、その仕掛けが分かれば、脅威はないに等しい」
言葉と同時に孔が開いた腹がみるみるうちに塞がれる。
八将神+アーナスの魔力による驚異的な回復力。
さらにアーナスは行動を開始する。

「ムーンラビット!」
言葉と同時にアーナスの身体に光の粒子が身に纏う。

「いっくぞー!」
禍々しい声から、一転可愛らしい声に声変わり。
しかし、変わったのは声質だけではない。
姿もだ。

アーナスの白銀の髪はザ・ワールドに負けないぐらい光り輝かく黄金に。
そして、青紫の獣の耳がピョコンと生えた。

422辺獄平安公演 朝の部 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:07:24 ID:2SqFhHp20
「……」
(あの変態形態……僕たちとは違う力か……)
どこまでも冷静に観察をするベルトルト。
アーナスのフォームチェンジに目を細める。

(そして、さとうの守護霊の力……やはり危険だ)
アーナスが口にした時間停止。
ベルトルトは確かにその言葉を聞き逃さなかった。
無意識にさとうにより砕かれた右鎖骨を触る。
突如、骨が折れ吹き飛ばされた秘密は明かされた。

(後は、どうやってさとうを葬るか……だな)
ベルトルトが見据えている局面の先は、この戦いの向こう。
虚無に見える漆黒の瞳はさとうとアーナスを見つめ続ける。

「あのお姉さん……ウサギさんになっちゃった!」

一方、みりあの呟き。
そう、その姿はウサギに見えなくもない。
その正体は、アーナスの切り札。
いくつかある中の”変身形態”の一種。

―――ラビットフォーム

「えい♪」

―――ゴッ!!!

「〜〜〜〜〜〜っ!」
言葉と同時にさとうの身体が吹っ飛び、地面を転がる。

さとうの眼前に一瞬に移動すると、目にもとまらぬ速さで脳天目がめてソバットを繰り出したのだ。
幸いにも、”そばに立つ者”ザ・ワールドが身を挺したため、さとうの頭からピンク色の脳をまき散らすことだけは防ぐことができた。
スタンドが支給されていなければ、さとうの命はそこで無残に散らしていたであろう。
しかし、鋭さと重さが加わったソバットは完璧に抑え込むことはできず、押し切られた結果、吹き飛ばされた。

膝や掌を擦り、さらに苦味が重なる。
不運が重なるときは重なる。

……ベリ―――ウィン

さとうの脳天から脳みそではなく、支給品のDISCが飛び出てしまった。
その瞬間、ザ・ザールドは姿を消す。
体内にDISCを挿入することでスタンドを扱えるお手軽さ。
しかし、反面、ある程度の攻撃が加えられると勝手に出てしまうのだ。

―――はぁ……はぁ……はぁ……

―――死ぬの?

キラキラポロポロ……ビンから零れ落ちる。

―――ダメ

―――それは私の愛の粒

さとうはうずくまり、両腕で身体をギュッと握りしめる。
身体から愛が逃げないように。

「みりあ……君は早くこの場を離れた方がいい」
「……え?」
戦士の勘だろうか。
この場はただではすまないと肌で感じた。
さとうが事実上脱落したのを横目に痛みに耐えつつ、ブレードを構えるベルトルト。

「くっ……」
(やはり、やるしかないのかッ!?)
烈風丸を構え直すアルーシェ。

「どうした?いっておくけど、これで終わらないぞ。だって……血を返してもらわなくちゃいけないんだからな!!!」

まだ夜が明ける時間ではない。

☆彡 ☆彡 ☆彡

423辺獄平安公演 朝の部 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:07:59 ID:2SqFhHp20
3章 八将神プロデュース

歯車の塔。
平安京の遥か上空に聳え立つそれは、神へと成らんとする一人の陰陽師が鎮座する宴の首座。
辺獄の悪魔が管理する辺獄のそれは、現在バトルロワイアルの管理場となっている。

「うふ。うふふ……いいよ〜。やっぱりアーナスちゃんは素敵だな〜」
愉悦愉悦と浸るのは、辺獄の管理者にして悪魔の片割れフェレス。

「何やら楽しそうに眺めておるな」

愉悦に浸るフェレスの傍に姿を現すのは悪魔の片割れメフィス。

「だって、僕のアーナスちゃん。とっても愉快に”私の血を返せー”って意気込んでるんだもの……あはははっ」
「アーナス……ああ、元神の慰み者の半妖か。たしか、お主の担当じゃったな」
「うん。そうだよ〜……アーナスちゃんは、僕の担当アイドル。
 ずばずばずばーーって斬って、殴って、参加者の理念を集めるのがお仕事」

八将神―――陰陽道における方位を司る神。
黄幡神、大将軍、太陰神は此度の饗宴の主催者である芦屋道満と悪魔達がその位を担当しているが、残りの豹尾神、歳殺神、歳刑神、歳破神、太歳神は違う。
質のいい理念を生み出し、回収するために人為的に用意された駒。
そして、各将神は担当者によるプロデュースが行われている。

豹尾神『十条姫和』はメフィス。
歳殺神『デビルマン/不動明』は芦屋道満
歳刑神『アーナス』はフェレス
といった担当の割り振りが。
ちなみに歳破神『佐藤マサオ』は異例の芦屋道満、フェレス、メフィスの3人共同。
元が唯の幼稚園児ということとお遊びからそうなった。
片や最後の太歳神『高町なのは』は佐藤マサオとは逆に本気でプロデュースした結果、強大すぎて参加者として投入は見送られた。
その代わり、万が一の備えとしてディメーンに管理を任せている。

「ま、今のウサギちゃんのアーナスちゃんも素敵だけどねぇ」
ラビットフォームへと変化したアーナスを愛おしそうに見つめる。
自分の選別が間違ってなかったことに口元が緩む。

「メフィスちゃんは、抜け駆けして姫和ちゃんに追加レッスンを行ったけど、僕はスケジュール通りに行うよ」
「なんじゃ、そのことをまだ気にしておるのか?
 だから、反省して以後気をつけるといったであろう」

フェレスがいう抜け駆けとはメフィスが姫和に行ったスペクトラムファインダー講習について。
メフィスはしかたがないなぁといった風に肩をすくめる。
すると……

「ふぅ……とうとうボクが駆り出されてきたよ」
やれやれといった様子で双子の前に現れるのは道化師。
ディメーン。
どうやら、支給品を渡しに出向いたようだ。

「ところで、質問を一つしてもいいかい?
 どうして支給品に”シャンバラ”を選んだんだい?
 一歩間違えれば、この殺し合いを破綻してもおかしくないと思うけど」
(おかげで、ボクの負担は倍増だよ)

ディメーンの疑問は至極同然。
”次元方陣シャンバラ”
マーキングした場所への瞬間移動を可能とする帝具。
一手違えれば、こちら側の詰みに繋がりかねない道具の一つ。

(それに、”空白の才”も……破たんしかねない道具だ。
 殺しを強要する主催側が、進んでそれらを多く支給するなんて……
 余裕なのか、浅はかなのか……)

双子の悪魔と陰陽師の思考に首を傾げざるをえないといった風だ。
殺し合いをさせるなら、別になくてもいい道具。
わざわざ、危険を冒す必要なんてないのだ。

「ん?ああ、別に構わぬよ。
 多少の希望は与えておかないと上質な理念を集めることが出来ないからな」
「そうそう……僕たちに反抗できる〜と喜んでから、やっぱり無理でした〜と
 理解したワンちゃんたちのわんわんわんと鳴く絶望からの理念は想像するだけで最高だ 
 よ〜」

双子の悪魔にとって、この殺し合いは余興でしかない。
如何に上質な理念が集められるかが重要なのだ。

「そういうことじゃ。それと、あの神の慰み者のくせに一人面白い理念がおっての。
 たしか……”蛙のツラ”じゃったかな。あれを参考にさせてもらった」
双子の悪魔はクスクスと嗤う。

「ふ〜ん……ま!ならボクはもういうことはないね。次の出向へといくとするよ」
ディメーンは踵を返すと、再び辺獄の平安京へ出向く。
支給品を配達するために。

「……」
(随分と彼らを見下ろしているけど、いとも簡単に鬼門を作られたんだ。
 この会場は完璧な牢獄ではない証拠。足元を掬われないことを祈るよ)

――― ま!そのときは、ボクがサイコーのショーを開演させてもらうよ

道化師は二ィッと不敵な笑みを浮かべる……
その脳裏に浮かぶのは、自らの野望を叶えるステージか……

☆彡 ☆彡 ☆彡

424辺獄平安公演 休憩 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:08:43 ID:2SqFhHp20
4章 カメムシ

「さてと……そろそろ行くとするか」

ほんの少しの休憩と死者への黙祷を終え、僕は立ち上がる。

正直に言おう。
―――ボロカスな目に会って、僕は今、相当頭に来てる。

短い時間とはいえ、はるな・夕月の二人とは楽しめた間柄だった。
だが、その時間は一瞬にして失われた。
和装の金髪外人によって。
まぁ、今は人を止めて本当に鬼くびれ大羅漢となり果てたが。
というか、夕月のリフレクターと言う名の魔法少女の光弾を拳で打ち払った時点で、奴は本当に人間かどうか疑わしかったが。
それにしても、おそらく支給品だろうが、チートを躊躇なく使うのは流石USA!USA!といった国民性か。
だがここで、いじける訳にはいかない。
あのチーター大羅漢から生き残ってしまった。

そして、あの双子。
何より自分達は絶対安全という高みで見物している醜悪な顔。
プリズナーゲームの監獄長と同じ下種さ。

ああいう、偉そうに踏ん反り返っている連中には腹が立つ。

「ひと泡吹かせないとだな……和馬」

生き残った者として、この辺獄における僕の最低の勝利条件は”意地汚く生きる”
それを達成するために僕は……アルーシェが向かった方向とは逆に歩いている。

薄情だって責めるか?
仕方がないだろ。
今の戦力じゃあ、反抗しようにも直ぐにミンチにされて殺されるのが、オチだ。
なら、少しでも別の方向に向かって、別の参加者と接触する方が合理的だ。
……まぁ、自分が空気を読んでいない自覚はある。
誰でもいいから骨折るくらいの気で殴ってもらえれば気持ちの釣り合いが取れるのだが。

☆彡 ☆彡 ☆彡

425辺獄平安公演 休憩 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:09:07 ID:2SqFhHp20
やがて、奇妙な箱を引き連れた女性を見かけた。
僕はとりあえず、身を隠したが、どうやら箱は参加者のようだ。
そして箱……おそらくパンドラボックスは犬並みの嗅覚を有してるのか、気配を察知され、女性に知らせる動作を行った。
というか、本当にパンドラボックスは箱だったのか……ジャギが肉食恐竜という線もあながち間違っていないかもしれないな。

「誰か、そこにいるの?大丈夫、私とエルピスは殺し合いに乗っていないよ」

エルピスという名の箱に教えられた女性は物陰に隠れている僕に話しかけてきた。

―――やれやれ、こう見えて気配を隠すのは上手な方だと思っていたが

あのプリズナーゲームに参加させられることとなった合宿初日。
和馬のやつが”あー、だりぃ”とか言いつつ、もったいつけて髪をかき上げる動作を眺めることもできた実績を持っている。
まぁ、ボヤいても仕方がない。
女性と箱が宣言通りに殺しに乗っていないことを祈るとするか。
僕は、女性と箱の前にでると―――

「どうも、吾輩はブサイク大統領である」

”……もしかしてその名前、気にいったの?”
”せー君。大人の女性相手でもその調子なんだね”

ふと、天から2人のあきれた声が聞こえてきた。
何、いつも通り。
それが管弦部の狂言回しの僕だ。

☆彡 ☆彡 ☆彡

426辺獄平安公演 休憩 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:09:36 ID:2SqFhHp20
5章 わかるわ

「そう……災難だったわね。ブサイク大統領君」
「……すまない。実は吾輩はブサイク大統領ではないんだ」
「そうなの?」
「ああ。本名はユカポンファンの吸血鬼……って、
 そこの箱は何をしようとしているんだ?」
「エルピスがこの男、ふざけているから齧るって」
「おいやめろ」
「エルピス。やめてあげて」
「……」

キヨスに制止され、エルピスは征史郎を齧るのを止める。
シュンとする姿はキヨス曰く可愛いでしょ?と話しかけるが、征史郎は”いや、まったく”と返した。

「危うく”おお勇者よ死んでしまうとは情けない”となるところだった」
「面白い子だね。城本征史郎君って」
「む、どうして僕の名を。……もしかして、支給品か?」
「うん。このポケモン図鑑でね」

征史郎はキヨスが自分の名前を知っていることに一瞬、眉を顰めるが、直ぐに支給品か何かの能力だと察した。
そして、案の定キヨスはそういうと、ポケモン図鑑を征史郎に見せる。

「プライバシー権侵害上等とはなかなかマッドな博士だな。製作者のオーキド博士とやら」
そういうと、征史郎は肩をすくめながらため息をつく。

☆彡 ☆彡 ☆彡

427辺獄平安公演 休憩 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:10:00 ID:2SqFhHp20

それから、キヨスと征史郎は情報交換を済ませた。
また、征史郎の頭の出血はキヨスが、かなでの森博物館から持ってきたフィールドワーク用の救急セットの包帯で処置された。

「それで、あの方角にはチーター……鬼くびれ大羅漢がいるかもしれないのね」
「ああ。未格闘経験者を容赦なく狩るチーターだ。
 ……ところでどうして、自分から危険な場所へ進むんだ?自殺志願者には見えないが」

キヨスとパンドラの箱(というか理解できているのか?)には、多少の誇張表現こそあれど、先の顛末については話したつもりだ。
なのに、死にたがりの和馬ならともかく、そっちへ進もうとするキヨスに征史郎は理解できない。

「……私は、この殺し合いに集められた人達の生きた証……標本の保存をしたいの。
 それが、私がここでやりたいこと」

「そうか」

キヨスのやりたいことを聴いたが、征史郎はただ一言いうだけだった。

「征史郎君は私の目的に特に何も言わないんだ?」

既に一度、自分のやるべきことは零ちゃんに”エゴ”だと切り捨てられた。
確かに頼まれてもないのに死者の生きた証を集めるなんて、見方を変えればハイエナだと糾弾されてもおかしくはない。
たとえ、されなくてもいい顔をされることは少ないだろう。
零ちゃんの反応が一つの答えだ。
しかし、キヨスは既に大人だ。
そうした意見があることを理解しているうえで決めた。
だが、零ちゃんと近い年齢の子がそれに何の反応をも示さないことにちょっと、気になった。

「ああ、この殺し合い。僕らの……参加者一人ひとりの勝敗は違う」
(だから、僕は止めない。他人の意思と決意に水を差すようなマネはしない)

そう、だからこそ小学生の命を奪う行為を止めなかった。
たとえ、好きな女がその行為に苦しみ手を汚すことになるとわかっても。
自分だけは”肯定する”という身勝手な擁護を心の中で誓った。

「だから、僕がどうこういうつもりは毛頭ない」

「……うん。そっか。……そうだね」

☆彡 ☆彡 ☆彡

428辺獄平安公演 休憩 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:10:33 ID:2SqFhHp20

「それじゃあ、私とエルピスは鬼くびれ大羅漢の方角へ向かうとするね」
キヨスの勝利条件は生きて帰り、この殺し合いをなかったことにさせないこと。
故に参加者の生きた証を集めなければならない。
近くにいるかもしれない鬼くびれ大羅漢が超危険人物だと分かっていても避ける選択肢はない。

「仲間の遺体がある場から逃げた僕が言える立場ではないことは自覚している。
 だが、あえて言わせてくれ。
 二人の生きた証……必ず回収してくれると嬉しい」
征史郎はキヨスに頭を下げる。

「うん!まかせて、無かったことになんかさせない」
キヨスは胸の手をドンと叩いて答えた。

「それと、私のことはキヨスって呼んでもいーよ?同じ巻き込まれた参加者同士だし」
「いや、大人相手にそこまで失礼な態度は持ち合わせてないので、遠慮しよう。
 あかりさんで」
「むう……そう」
零に引き続き、断られたことにちょっぴりだけ残念がる。

「……!」
「ん?どうした?箱にも生理現象はあるのか。
 しかし、残念だがトイレはこの近くにはないぞ」

征史郎はガサゴソと動くエルピスに怪訝な表情を見せる。

「エルピスが征史郎君との別れが寂しいから舐めさせてって」
「おいやめろ」
「エルピスやめてあげて」
「……」

キヨスの静止にエルピスはシュンとして止める。

「このやり取り、先ほどもなかったか?」
征史郎は、そう言いつつも口元が緩んでいることに気づかない。

「あはは、そうだね。
 ……でも、君も年相応な少年でホッとしたかな」
「え?」
キヨスの言葉に征史郎はピクリと身体を動かす。

「友達や親しい人の死に腹を立てることができるのは、人間の原始的な感情の一つだよ。たとえ、素直に出せなくてもね」
「……」

どうやら、この人には見抜かれているようだ。

「それじゃあ。お互い名前が呼ばれないように生きようか。
 一応、2日目の昼にかなでの森博物館にいる予定だから、よかったら寄ってね」

ニッと笑うと、キヨスはエルピスと共に歩む。
己の決意を突き進むために。
征史郎はその背中を黙って見送る……

☆彡 ☆彡 ☆彡

429辺獄平安公演 休憩 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:10:56 ID:2SqFhHp20

「あれが、尊敬できる大人というのだろうか」
我らが管弦部の千尋先生とはまた違った感性を持った女性。
少なくとも、彼女が学校の先生だったらさらに楽しい学校生活を送れそうだ。
まぁ、本人の希望通りにキヨスさんと呼んでもよかったのだが、ここは、断った方が面白そうだからそうした。

「生きて帰れたら、生物学に触れてみるとするか」
僕はいわゆるマニアだ。
アカリさんとエルピスとの時間は僕の尽きることない興味の琴線に触れた。
鳥類研究者という職業は、実に楽しそうだと実感した。
マニアの血が疼いた。

「さて……それじゃあ、次に出会うのは鬼か蛇か」

僕は再び移動を開始する。
勿論、勝利するために。
意地汚く生きるはあくまで”最低条件”
じゃあ、最高はだって?
決まってるじゃないか。

あの双子に”どうも、クソゲーを遊ばせてくれてありがとう”と鼻で笑ってカンチョ―することだ。

だろ?和馬。

☆彡 ☆彡 ☆彡

430辺獄平安公演 休憩 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:11:36 ID:2SqFhHp20

6章 鎮魂の自引き

―――ザッ

「ここが、征史郎君が言っていた鬼くびれ大羅漢生誕の地ね……」
征史郎と別れたキヨスとエルピスはE-4にたどり着いた。

「……ッ!」
キヨスは探し求めていた人物を見付けると駆けよる。
エルピスもガッシャンガッシャン音を立てながら後を追う。

「……」
たどり着くと、キヨスは手を合わせて黙とうする。
はるなの遺体に。
腹部に大きな風穴を開けられている遺体は、年頃の少女が迎えていい死に方ではない。

「私はね、この殺し合い、誰も死なずに終わるとは思わない。仮に、協力して殺し合いを脱出できるとしてもね。」

零ちゃんに言った自分の言葉通りだ。
征史郎君から話を聞いてはいたが、やはり死者が出た。
その事実はキヨスの両肩に大きくのしかかる。
だけど、ここで自分の勝利条件を変えることはない。
改めて、自分は大人なんだと再認識してしまう。

「……ごめんね」
キヨスは謝罪の言葉を口に出すと、はるなの白いリボンと薄紫のリボンタイを手に取る。

次にはるなと同じく事切れた夕月を発見すると、同じように黙とうする。
黙とう後、夕月のリフレクターのリボンと破れきれた衣服の一部を手に取る。

「エルピスおねがい」
キヨスの言葉にエルピスは応じる。
壊砲ティシアの威力なら、地面に穴を開けることは造作ない。
人を埋めるには十分な深さの穴が開けられた。

「……」
はるなと夕月を丁重にその穴に入れ簡易的ながら墓標を作った。

「必ず、貴方達2人をいなかったことにはさせないから……」
こうして、キヨスはポケモン図鑑で登録すると、細谷はるなと司城夕月の生きていた証を回収した。

☆彡 ☆彡 ☆彡

431辺獄平安公演 休憩 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:11:58 ID:2SqFhHp20

「……!!!」
「これは……」
エルピスがキヨスに何か見つけたのを報告すると、そこには、火山灰が積もっていた。

「火山灰……」
(う〜ん。こういうのは、専門外だけど、おそらく、征史郎君がいった金髪外人の 
 支給品の一つのはず。
 使い道は分からないけど、とりあえず、回収しておこうかな)

キヨスは周囲の状況から火山灰が人工ではなく、支給品だと判断する。
思案すると、エルピスに回収するよう命じた。
エルピスは長い舌で火山灰を摘まむと、かなでの博物館から持ってきた空の瓶へ入れる。

「うん。それじゃあ、引き続き、鬼くびれ大羅漢を探すとしようか」
死者を弔い、キヨスとエルピスは、ほんの少し残った火山灰のEー4を後にした。

※E-4には一人分の火山灰が残っています。

☆彡 ☆彡 ☆彡

432辺獄平安公演 休憩 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:12:38 ID:2SqFhHp20

7章 夜泣きSR

「アルーシェさん、大丈夫かな?」
ぼくは一人、身体を休めながら、心配する。

「それにしても……いてて……このままじゃ、もたないかもしれないな……」
碌な治療ができていない状況。
全身激痛の痛みは自分の命の蝋燭を徐々に……確実に溶かしている感覚が消えない。

「千さんの意思をここで潰えるわけにはいかないのに……っ!」

本来ならあの戦いで自分は死んでいた。
だけど、ぼくは生き延びた。
千さんが譲ってくれた支給品の効果で。
千さんに借りたかりをぼくは返さなきゃいけない。
だから、ぼくがすべきことは一つのはずだ。
千さんの意思を潰えることを防ぐこと……ッ!!!

「……とと。いけない。あんまり強く怒り過ぎたらまずい」
そう、トッペイの体質は月を見ることだけではない。
強い憎悪の感情でも変身してしまう。
帽子を深く被っている意味がなくなるとトッペイは反省する。

―――ギィィィ……

家屋の扉が開いた。
ぼくは来訪者を視てギョッ!?とした。

「え!?」
なぜなら人かと思ったらなんと、箱が中に入ってきたんだから。

「ここに誰かいるの?」
言葉と同時に箱の後方から今度は大人の女性がひょこっ!と顔を覗かしてきた。

「あの……もしかしてアルーシェさんの仲間ですか?」
「う〜ん。まだアルーシェさんとは顔を合わせないけど、似たような者かな。
 ……ところでどうして君、帽子をそんなに深く被っているの?」
どうやら、女性はアルーシェさんとは面識がないようだ。
だけど、敵ではない様子にほっとする。

「それは……あ!?」
女性の疑問に答えようとしたら……

「……!」
エルピスと呼ばれる箱が舌を伸ばすと、ぼくが被っていた帽子を取り上げてしまった。

――――しまった!

箱の予想外の行動にぼくは狼狽した。
そして、恐れていたことが起きる。
月がぼくの瞳に映る。
すると、みるみるとぼくの身体に獣の毛が生えてきて顔も変化する。

「君……」

―――あ、もしかして……ぼくの姿に恐怖を?

目の前の女性はぼくの姿に驚いたような表情を見せたから、怖がらせちゃったと思った。
だけど、ぼくの予想は大きく外れることとなる。

「君!動いちゃダメ」
(手持ちの包帯だけでは布が足りない……そうだっ!)
なんと、女性はドレスを脱ぐと、下に来ていたパーカーを脱いだのだ

433辺獄平安公演 休憩 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:13:05 ID:2SqFhHp20
「!?」
ぼくは、女性の行動の理由が分からないのに加え、下……こほん。とにかく、見ないように背を向けようとした瞬間。

「エルピス」
「……!!!」

通じ合っているのか、名前を呼んだだけなのに、エルピスと言われている箱は厳つい大型剣を取り出す。
そして、女性のパーカーを何枚かに下した。
女性はパーカーを惜しげもなく、包帯の補充として代替するつもりだ。

「え!?ええ!?」
(わっ!?わわっ!?)
軟膏らしきのをぼくの肌に塗ると、素早くパーカーだった生地をトッペイの負傷した皮膚に包帯と共に使用した。

☆彡 ☆彡 ☆彡

「よし!……これで峠は越せるはずよ」

女性はふーっ!と腕で額の汗を拭う。

どうやら、女性はボクを助けるために服を脱いだようだ……
そ、それにしても大胆な女性だな……

ぼくの脳にしっかりと記憶されたのは、目の前の女性の若干幼そうな面影が残ってはいるが、いつも何かを探しているようなキラキラとした目にその……パーカーを脱いだ上半身……

ポ―――ッ

☆彡 ☆彡 ☆彡

434辺獄平安公演 休憩 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:13:51 ID:2SqFhHp20
8章 博物館人と夜泣き一族の少年による相互招待

あれから、落ち着いたトッペイは狼の姿から元の人間の姿に戻ることができた。
そして、とりあえず互いの自己紹介を済ませた。

「あ、あの……ありがとうございます。」
「気にしなくていーよ。それにトッペイ君が負った傷はまだ全然癒えてないから無理は禁
 物だよ」
キヨスによる治療は瀕死の境を巡っていたトッペイの命をなんとか繋いだ。
しかし、トッペイが負った重症は軽くはない。
バアルによる災害といっても過言ではない落雷の威力は絶大の証拠だ。

「……!!」
「ん。ありがとエルピス」
キヨスはエルピスが手渡した脱いだひかりのドレスを再び身に着けた。
なお、着替え中トッペイは見ないよう、顔を赤らめながらも後ろを向いていた。

☆彡 ☆彡 ☆彡

「それで……トッペイ君の体質……」
「はい。バンパイヤと呼ばれる人間はそれぞれ条件は違うんだけど、変身することができ 
 るんです……ちなみにぼくは月を見たり、強い怒りや恐怖と言った憎悪の感情が高まっ 
 たりするとオオカミに変身するんです」

「そうなの……」
(もしかして征史郎君が言ってた鬼くびれ大羅漢となった金髪の外人は、バンパイヤの一人なのかもしれない…)

キヨスはトッペイの話から、鬼くびれ大羅漢と称された金髪外人はバンパイヤではないかと正体を考える。

「……」
(考えている顔も……はっ!いけない、いけない、まず伝えないといけないことが……!)
キヨスの顔を見つめていたトッペイだが、まず伝えなきゃならないことを思い出す。

「あ、あかりさん!」
「ん?何?」
トッペイに声をかけられたキヨスは顔を向ける。

「あ、あの!ぼくたち夜泣き一族は、人から受けた借りは必ず返さなきゃならないんです。
 ぼくはあかりさんに死にかけた命を助けてもらいました。
 だから一族の掟に従って、借りを返します」
悪魔の申し子であるロックでも、借りた恩は返さなくてはならない。
したくもない人さらいをも断ることはできなかったほどだ。
トッペイはキヨスに向かって深々と頭を下げた。

「……」
トッペイの申し出にキヨスは目を瞑り黙る。
やがて、目を開くと口を開き……

435辺獄平安公演 休憩 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:14:19 ID:2SqFhHp20
「トッペイ君。アメリカにあるスミソニアン博物館って知ってる?」
「え?し、知りません……」
夜泣き谷にひっそりと暮らしていた夜泣き一族の一人。
東京でさえ満足に把握していないのに遠い海の向こうの国の博物館を知るはずもない。

「あのね、そのスミソニアン博物館のエントランスにある一文が記されてるの」

―――NO SPECIES CAN LIVE ON ITS OWN

「意味は、種はそれのみで生きることはできない」
「……種はそれのみで生きることはできない」
キヨスの翻訳を同じように呟くトッペイ。

「私やトッペイ君の世界である地球には、約175万種の生物が既知されているの。
 勿論、未知の生物を含めるとさらにいるわ。
 そして、マネーラやエルピスにギャブロ君。私達とは違う世界には当然、もっと知らな
 い生物が生きている。
 そして、トッペイ君も生きている。
 一族の掟だからとか、千さんの意思を継ぐのも悪い事じゃないけど……」
少し間を置くと、トッペイの瞳をまっすぐに見据える。

「トッペイ君。君はどうしたいの?もう、自分で決める時間だよ」

「ぼくは……」
トッペイの脳裏に浮かぶ。
あの光景が。
マンガ映画が好きで手塚先生に会いたくて山を下りたときのことを。
かあちゃんに自分の夢を語ったときのことを。

「あかりさん……ぼく、実はマンガ映画が好きなんです。だから……絶対に生きて帰って
 マンガ映画を僕の手で作る!それが僕の勝利です!!」

トッペイもキヨスの瞳をしっかりと見つめて力強く答える。
トッペイは決意した。
勿論、千の意思を継いで、殺し合いを止めることは変わらない。
しかし、”その先”のビジョンをちゃんと定めたのだ。

「うん!お互い、勝つために頑張ろうね!」
キヨスとトッペイは互いに握手した。

「ところで、私の事はキヨスって呼んでもいーよ?」
「え!?あ、あの……キ……できたら、名前で呼びたいのであかりさんでお願いします」
「む……」

今回も断られたキヨスであった。

☆彡 ☆彡 ☆彡

436辺獄平安公演 休憩 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:14:51 ID:2SqFhHp20
あれからキヨスとトッペイは互いに情報交換をすました。

「なるほどね……アルーシェさんは……」
「はい。合流場所から離れすぎているから、戻ると言っていました」
地図を見ながら、トッペイの言葉に視線を向ける。

「……うん。征史郎君のことも伝えないといけないから、アルーシェさんの方へ向かおう
 か」
(それに……2人のこともきちんと伝えないと)

正直、鬼くびれ大羅漢をそのままにはできないと感じている。
少女であるはるなと夕月を躊躇なく命を奪ったことから、自明の理だ。
しかし、トッペイをこのまま置いておくわけにも行かないことと、話の内容からアルーシェという女性はこの殺し合いを打破するのに戦力として心強い。
自分の目的を達成させたいという大人としての打算(勿論、心配という本心もある)もあり、先にアルーシェを探索することを決めた。

「でも……僕は、まだ満足に身体を動かすことは難しいです。どうすれば……」
「う〜ん、そうねぇ……」
気力と決意は満タンだが、やはり八将神である姫和との戦闘でおった傷は根深い。
自力で歩くには、まだ時間がかかりそうだ。
キヨスは、何か良い案がないか思案する。
やがて、名案が浮かんだのか、手をポンと置く。

「エルピス、少し耳を貸して」
「……」
キヨスの手招きにエルピスは耳を貸すように口を大きく開ける。

かくかくしかじか。

「……!」
「え?……わ!?」

キヨスの案を聞くや否や、なんとエルピスは長い舌でトッペイを巻き付けて持ちあげたのだ。

「……うん。これならトッペイ君の負担は軽くなるし移動することもできる。どう?」
「あ、はい。確かに」
(う〜ん……ちょっとバッチイけど、しょうがないかぁ)
エルピスのちょっぴり、ひんやりとした舌触りと唾液には辟易しそうになるが、我慢する。

「それじゃあ、鬼くびれ大羅漢捜索は一時中断して、アルーシェさんを追うよ!」
「はい!よろしくお願いします!あかりさんにエルピス!」
「……!!!」

キヨスにエルピスそして、エルピスに掴まれたトッペイはアルーシェが向かったであろう先へ移動を開始した。

―――ところで、鬼くびれ大羅漢ってどういう生物なんだろう?

☆彡 ☆彡 ☆彡

437辺獄平安公演 昼の部 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:15:31 ID:2SqFhHp20
9章 みうさぎピョーンピョン

―――ゴッ!

―――ゴッ!!

―――ゴッ!!!

「早い!」
(これが、話に聞いたことがあるアーナスさんのフォームチェンジ……ッ!!厄介だ……)

「重いな……ッ!」
(だけど、受け止められないほどではない)

俊足の乱打がアルーシェとベルベルトを襲う。
それぞれ得物で拳を防ぐが、刀身越しの振動から油断ならないと戦慄する。

ラビットフォームの特性を生かすためか、アーナスは火災現場でありながらも熱気をものともせず、俊敏に右往左往に動きながら、攻撃を加えてくる。

「……」
(近づいてきた瞬間に吹き飛ばすか?)
ベルトルトの脳裏に一瞬、浮かんだのは、自身が超大型巨人になり、このエリアを爆破して一掃すること。
しかし、その案は直ぐに消す。

(いや、今、超大型巨人になるのは下策だ)
ベルトルトは巨人の力を使う選択を選ばなかった。

ベルトルトが宿すその力の有効手段は”対主催”を一網打尽にする。
ここで、使用する旨みは少ない。

―――僕のこの選択……間違ってないよなライナー

アニと出会ったらどうするか、まだ答えを出していない。
だが、この選択は間違っていないと確信している。
脳裏に想起されるは同郷の仲間か。
正体を明かす前の頃の自分だったらそうは思わなかっただろう。
正直、かつての自分は普段、主体性がなく、他人の判断に身を任せてしまう傾向が強かった。

だが、今は違う。
ちゃんと殺すと決意した。

「そこの君!名前は!?」
「私は、アルーシェだ。そっちは!?」
「ベルトルト・フーバーだ。協力を申し込む」

ベルトルトはアルーシェと共闘を持ちかけた。
右腕の骨折を処置したとはいえ、右鎖骨が砕けている今、巨人化を除けば自分の戦闘力では、目の前の女を殺すことは厳しい。
さとうは、蹲ったまま動かないため、期待できそうもない状況
故にベルトルトはアルーシェに持ちかけた。

「わかった!よろしく頼む!」
(この人……身に纏う雰囲気は少し違和感があるけど、今は言ってられる状況じゃない)
片や、アルーシェも自分一人では、アーナスへの対処が難しいと判断。
ベルトルトの身に纏うものに少し、違和感を感じているが共闘を迎え入れた。

☆彡 ☆彡 ☆彡

438辺獄平安公演 昼の部 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:16:01 ID:2SqFhHp20

「それじゃあ、少しの間、攻撃を引き受けてくれ!」
ベルトルトはアーナスへの対処を任せると、瓦礫の間や周辺を駆けだした。

「……わかった!まかせろ」
ベルトルトに案があるようだと直感で感じたため、アルーシェはアーナスの攻撃相手を引き受けた。

「遅い、遅い!」
「……くっ!?」
(この速さをなんとかしないと……っ!)
アーナスの俊足にアルーシェは対応するが、反撃のタイミングが取れない。
片やベルトルトは一心不乱に駆けている。

「鬼ごっこ?いっておくけど、直ぐに追いつけるから」
アーナスは、ベルトルトの行動に興味が湧き、アルーシェからベルトルトに向かって走り出した。
すると―――

ブシュゥゥゥゥ……!!
アーナスの全身から血潮が噴出した。

「え!?」
まさかの事態にアーナスも戸惑う。

ギチギチギチとアーナスの全身に糸が纏まりついていた。
その正体は刃鋼線。
目に見えぬほど細いが、切れ味抜群の鋼線。
ベルトルトは、ただ逃げ惑っていたわけではない。
刃鋼線を張り巡らせていたのだ。

「その速さが徒となったみたいだね」
動きを封じればこちらのもの。
ベルトルトはブレードをしっかりと握りしめて、駆ける。

(腹に穴を開けられてもあの回復力……あそこらへんを狙うか!)
先のさとうの守護霊の腹をぶち抜く攻撃をものともしなかったことから、ベルトルトは攻撃個所を思案する。

戦え!!

戦え!!

「人類の戦いを!!想いしれッッ!!」

一閃。
巨人の硬い肉を切るために、しなるようになっているブレード。
ラビットフォームの肌を斬れぬはずはない。
両肩を横一文字に斬り裂いた。

「あっぐぅぅぅぅぅぅ!!??」
アーナスの絶叫。
それは、ザ・ワールドにより貫かれた腹の痛みとは正反対。

(やはりっ!!僕たち巨人の力と同様に、急所さえ責めることができれば勝機は見える!)
アーナスの尋常じゃない苦しみにベルトルトは己の予想の的中に安堵する。
そう、八将神の疑似霊核に触れたのだ。
流石に心臓の核近辺を傷つけられたらたまったもんじゃないらしい。、

ラビットフォームが解除された。

いける。
ベルトルトとアルーシェはそう確信した。
しかし……次の一言で盤面をひっくり返される。

―――ギロ

アーナスは睨みつけると。
一段さらに低く呟く。

「アーマーフォーム」

☆彡 ☆彡 ☆彡

439辺獄平安公演 昼の部 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:17:07 ID:2SqFhHp20

10章 ラビット!アーマー!アーナス!

「あ……ああ……」
余りの出来事にみりあは息を呑むような表情をすることしかできない。

「……ぐっ!?がぁ……!!」
「あ……う゛っ!?」

地に伏しているのはベルトルトとアーナス。

そう、ラビットフォームを破ったまでは良かったが、アーナスのフォームチェンジは一つだけではない。

アーマーフォーム。
並大抵の攻撃をものともしない装甲に巨大な腕が特徴のフォーム。
ラビットフォームとは正反対で移動速度も遅く、攻撃も一撃は重いが大振り。
故に戦局によっては時間切れを誘うことも可能だ。
ただし、今のアーナスは八将神。
支給品がある。

盤古旛。

スーパー宝貝の一つであるそれは”重力”を扱うことができる。
重力操作により、二人の行動を不能とした後、ゆっくりと殴りつけた。
さらにアーマーフォームの攻撃にはスタン効果が発生することがあり、それにより2人を袋だたきに持ち込めたのだ。

「ま、まだ……まだぁああああ!!!!!」
身体の節々が悲鳴を上げている中、烈風丸を杖代わりに立ち上がるアルーシェ。

「僕は……故郷に帰る……絶対にだ……」
(やっぱり、爆風を起こすべきだったか……ッ!?)
ベルトルトもよろけながらも立ち上がる。

「まだ立ち上がるか。だが、無駄な事には変わりない」
アーナスは冷たい瞳でアルーシェとベルトルトを見つめる。

「いい加減、貴様の血をもらうとするか」

再び盤古旛を発動させる。
吸血から逃がさないためだ。

「ぐぅああああ!!!!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

―――ザッ!ザッ!ザッ!

「では、いただくぞ……む!?」
アーナスはアルーシェの腕についているのに気づく
「何だ……それは」

そう、アルーシェもまた支給品を装備していた。

「吸血するために貴方が近づいてくるのを待っていたんだ!」
アルーシェの叫びと共に支給品の一見鉄の棒が射出される。

―――バシュ

「ふん。このアーマーをそんな鉄の棒で砕けると―――ッ!?」

ドス

「なっ―――!?」
固い装甲に突き刺さるのは鉄の棒ではなく槍。

ヒュッ―――ピンッ

素早く、ロープを引き、起動させる。

―――カ

ドドォ!!!!!!

「うぐぁあああああ!!!!!?????」

雷が落ちたかのような轟音。

440辺獄平安公演 昼の部 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:18:07 ID:2SqFhHp20
左腕の巨腕にヒビが入った。
正体は”雷槍”
調査兵団の第4分隊隊長のハンジ・ゾエの要望を技術班が叶えた新兵器。
その威力は鎧の巨人の装甲を破壊する程。
アーナスのアーマーフォルムの装甲をも破壊せしめたのだ。

流石の威力にアーナスも堪えたのか再び、フォームチェンジが解除される。
そこをアルーシェは畳みかける。

「いい加減……思い出してください!!貴方は教皇庁の聖騎士(エージェント)で、聖女リュリ―ティスを救い、夜の君を倒した……アーナスだ!!!!!」

―――ドゴッォォォォ!!!!!

渾身の右ストレートがアーナスの顔面を殴る!!!

「はぁ……はぁ……はぁ……私は……怖い。
 貴方と殺し合うと自分が邪妖になるんじゃないかと思うから……」

今の一撃に精魂尽きたのか、アルーシェは倒れこむ。

(リリア……ルーエ。私の選択は正しかったかな……)

アルーシェは自身の行動を自問する。
今、アーナスの首を斬ろうとすれば斬れた。
トッペイから聴かされた八将神の情報。
八将神は確実に主催陣が用意した何かであることは間違いない。
おそらく、斃せば何かしら盤面が動くだろうと
しかし、アルーシェはその選択を選べなかった。
更けない朝を防いだ伝説の半妖だからとか、ここでアーナスを殺めたら、自分は妖魔になって後戻りできないのではないかと恐怖心といった理由からだ。

そして、アルーシェのこの行動の答えはこれからすぐに分かることとなった。

☆彡 ☆彡 ☆彡

441辺獄平安公演 昼の部 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:18:47 ID:2SqFhHp20
11章 LIVEへの鍵

「教皇庁……エージェント……リュリ―ティス……分からない……」
起き上がると同時にアーナスはブツブツと口に出す。
大事な記憶……だが、直ぐに掠れてぼやけて消えてしまう。

「あの人……苦しんでいるんだ」
苦しんでいるとなんとなくだが、察したみりあ。

「さとうさんも……ベルトルトさんも……アーナスさんも」

始めはさとうの行動にベルトルトの瞳に恐怖し、困惑した。
しかし、今なら分かる。

奪われた愛を取り戻そうと苦しんでいるさとう。
故郷に戻ろうと苦しんでいるベルトルト。
自我を失いみんなを傷つけてしまうのではないかと苦しんでいるアルーシェ。

「…じゃあ、その時まで……みりあもなにか、できることをしないと」

みりあの脳内に想起されるはベルトルトとの出会い。

「みりあにできること……」

幼きアイドルは必死に頭を働かせる。
考えろ。自分ができることを。
考えろ。アイドルだからできることを。
考えろ。ベルトルトさんにさとうさん……そして、アーナスさんを笑顔にする方法を。

「さとうさん」
「……何」

精神が落ちついたのか、さとうは自身から外れたDISCを再び挿入すると、立ち上がっていた。

「何か、甘いものでも持っていますか?あるのなら、みりあに渡してください」
そういうと、みりあはさとうに頭を下げる。

「意味がわからないんだけど?」
(それより……また、時間停止を感じた。あの時とはまた別人?)
さとうはみりあの申し出に怪訝な表情を見せる。
また同時にさとうは肌で直接感じた。

「ヨはノワール伯爵! 滅びのヨゲンの執行人にして、
 全てを滅ぼし消し去るものなり! ヨを打ち倒す覚悟を見せてもらおう!」

「させない!」

リリア―ナの刻を遅らせる能力の発動を感じた。
ただ、初めに感じたのと若干違うように感じたため、時間停止者が多くいることに辟易する。

(それに……”甘いもの”を渡せって)

甘いものを?
冗談じゃない。
甘いを他人に渡す気なんかおきるはずもない。
だけど……

―――チラッ

右腕の包帯……それが、楔となる。

はぁ……

さとうはため息をつくと、支給品の”甘いもの”をみりあに手渡す。

「包帯のお礼。それと、言ったからには結果を出して」
「はい!そして、ありがとう」
 さとうから甘い物……ハート形のチョコを受け取ると、前へ名乗り出る。

「……何だ。貴様も人間か。ならば、殺すまでだ!」
アーナスにとって余りにも力なき者だったためか認識されてなかった。
しかし、鮮血の場に出たのであれば、みりあにも八将神は、容赦しない。
だが、みりあはアーナスの言葉に怯まない。

「お願い!私に力をかして!!!」
叫ぶと自身の最後の支給品であるカードを掲げる。
カードはカッと光ると消滅し、代わりに道化師が姿を現す。

「ボンジュ〜ル。……ふぅ、それにしても、あっちこっちに呼び出されるとは流石の僕も予想できなかったよ」

442辺獄平安公演 昼の部 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:19:25 ID:2SqFhHp20

双子の悪魔にも吐いたが、やはり愚痴を吐くディメーン。
この場にいる彼らは知る由もないが、F-6のエリアで大規模戦闘が起こっており、巨大ロボを派遣した直後であった。

「それにしても……おやおや、僕を呼んだのはまたしても小さなレディーだとはね……これも奇妙な縁というやつなのかな。」
ディメーンは自身を召喚せし参加者が少女ということにあっはっはっと笑う。

「貴様は……邪魔をする気なのか?八将神の行為に。主催側が」
アーナスは主催側の望むように行動しているのに、結果として邪魔に当たる行為を行うことにいら立つ。

「んっふっふっ、悪いけどクレームは双子に言ってくれるかな。
 ボクはあくまで、管理者にすぎないからね」

アーナスの苛立ちにどこ吹く風といった様子のディメーン。
現状、彼は特定の参加者を贔屓するつもりはない。
そっけなく答えると、アーナスにはもう興味がないかの如く、視線を自身を呼びだしたみりあに向けられる。

「みりあに力を貸してくれるの」
「勿論、支給品にそのカードがあるのなら、ボクは平等に扱う」

みりあの言葉にディメーンは紳士を装うように立ち振る舞う。

―――パチン♪

軽快な音が弾ける。

「それじゃあ、小さなアイドルに幸あらんことを……」
自身の役目を終え、恭しく頭を下げるとディメーンは鮮血のステージから姿を消した。

ディメーンの手配によりみりあの傍に舞い降りたのは、ピョコンと生えたうさぎの耳にチェスの駒が描かれたスカートを穿く少女……ならぬ従魔。

アリス。

【うふふ……暴れてあげるわ〜〜】
可愛らしくも勇ましい従魔は、みりあにVサインを見せつける。

「よろしくね♪アリス!」
(カードに書かれていたことが本当なら……うん!これで、準備万端。お願いプロデューサー!!私を支えて!!!)

「みりあ……君は……今……何だ……?」
みりあの突然の行動にベルトルトは、問いかけるしかなかった。
ベルトルトの呟きに……みりあはニッと笑うと答える。

「みりあはね!苦しい人やつらい人を支える……アイドルだよ!」

……スゥ

息を大きく吸って吐くと……

歌を歌い始めた。

☆彡 ☆彡 ☆彡

443辺獄平安公演 夜の部 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:20:00 ID:2SqFhHp20
12章 初ライブ〜再開〜 わたぐも

「隣〜合わせ〜歩く公園」

「「「「なっ!?」」」」

みりあの行動に驚愕する4人。
そう、みりあが選択したのは歌うこと。
アイドルとして自分の歌を届けることを。
それが、みりあに出来ることだと。

「いつも〜と同じ〜 楽しい帰り道〜」
マイクも照明もないこの場は、ミニステージとはとてもじゃないがいえない。

しかし―――

「笑顔〜の中〜」
火災現場かつ血だまりのE-5は今、大きく場を変化させる。

「見付け〜たん〜だよ」

―――ガッ。

アーナスは頭を抱える。
まるで、何かを思い出されるためにだ。

「泣きそうな目と〜」

”蒼き血を湛える古き機構よ。
 移ろう時のごとく、流るる水のごとく、忌むべき血を、あるべき地へと送りだせ”

それは、祈りか歌か―――

「震えているエクボ」

「「「……」」」

さとう……ベルトルト……アーナスと聴かせたい顔を見ながら歌っている。

「両手のばして〜」
(さとうさん……みりあ、まだ愛とかよくわからないけど……甘いのはみりあも好きだよ
 !だから一緒にスイーツ巡りしよ!……そうそう、みりあ。食レポってやつやりたいな
 ー)

「背伸びをすれば〜」
(ベルトルトさん……みりあも帰りたい。帰ったらママやパパに思い切り甘えたい!だけど、何だかベルトルトさんの方が大人なんだけど、泣いているように見えるの。だからみりあがお姉さんになってあげる!……みりあ、妹がほしいなぁ)

「や……やめろ……」
ただの歌。
しかし、夜の君をも倒した伝説の半妖が狼狽を隠しきれない。

「心は晴れるから〜」
(アルーシェさん……自分を無くなるかもしれないって怖いよね……みりあ、幼稚園のお遊戯会で”お花のお姫様”やりたかったけど、やらせてもらえなかったんだ……「みりあちゃんは元気すぎるから」だって!周りの子はたまには自分を殺してみれば?といってくるけどみりあはみりあ。自分を失って手に入れたって嬉しくなんかないよね!だから、みりあは自分が大好き!アルーシェさん!みりあ、アルーシェさんが自分を見失わないよう応援するよ!)

―――ドクン

「だいじょーうぶーーー」
(アーナスさん……悪夢をみているんだね。大丈夫!みりあはアイドルなの!人が悲しん
 だり苦しんだりすることを楽しむ双子になんか、負けないから!だから……よかったら
 みりあのファンになってくれたら嬉しいなぁ……)

アイドルノセンリツ
―――それは救いの旋律。

モロクロの世界がサイリウムの輝くで染まる。

444辺獄平安公演 夜の部 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:21:05 ID:2SqFhHp20

「「「「「……」」」」

この場にいる全員唖然とする。
無理もない。
血と憎しみそしてモノクロームの世界が一変したのだから。

「その耳障りな歌声を今すぐ止めろ!!!」

アーナスは頭に響くそれを振り払おうと、ヨルドを容赦なく振るう。

「危ない!!!」
(しまった!?出遅れた……ッ!!!)
アーナスの凶行にアルーシェは一歩出遅れてしまった。

『私の優秀な部下を甘く見ないでもらえるかしら』

アリスにより、展開されたウサギ兵達が可愛らしくも勇ましい声が命を刈り取る刃を阻む。

「従魔風情がッ!!!」
『ふふ……そんなにカリカリするのはよくないわ』

アーナスの怒号にアリスはどこ吹く風。

「ならば……盤古旛!!!」
ボコ……ボコボコ……とアーナスの言葉に応じると黒いボールが分裂する。

『あら?いいのそれ使って』

―――ズン!!!

使用者であるアーナスの身体が沈む。

アリスの鏡の盾の効果である。
重力を跳ね返したのだ。

「ぐ……盤古旛!!!」
アーナスの呼びかけに応じ、盤古旛は動きを止める。

アリスはえへんとした表情で腰に手を当てる。
だが、アリスも予想外の行動をみりあは行う。

『ちょ……ちょっと!そんなに近づくと、いくら私でも守り切れないわッ!』

なんと、みりあは、自らアーナスの傍へ歩み始めたのだ。
アリスはみりあに警告を発する。
しかし、みりあは歩みを止めない。

(アリスちゃん……ありがとう。だけど、アーナスさんを助けるには、もっと……もっと!
 近づかないと!!!)

みりあ自身も自覚している。
死神の鎌に自分から近づいていることに。
だが、アイドルが聴かせる相手から距離を取るわけにはいかない。
今、ここで、潮対応をしたら、みりあは一生後悔する!!!

アー■ス! よ■った 本当■……

「リュリュ……?」

―――ズキン!

「私は……この女をしっている……?」

―――ズキン!!

―――寄宿舎にいたころは、よく■っていたよね

―――■、ダンス下手だったもの■。
―――■ー■■がつきっきりで教え■くれて……。
―――懐かしいわ。

―――ズキン!!!

「うああああああああああ!!!!!!!!!!」

445辺獄平安公演 夜の部 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:21:53 ID:2SqFhHp20

――――ザシュッ!!!!!!!!!!

「あ……」
貫かれた幼き身体。
誰の目から見ても致命傷。

「思い……切り顔を……上げたら、夕……焼けの空が……とても綺麗だよ」
だが、みりあは歌を止めない。

「明日も……ねぇ……一緒に帰ろう……」

歌い続ける。

「なっ!?」

流石のアーナスも驚愕に口を開け、顔を引きつらせる。

「手をそっと……つないでね」
届いた片手でアーナスの片手を握る。

「歩こう……よ。い……ま……」

「はぁ……はぁ……」
流石にもう歌う気力もないのか。
ここで歌は途切れる。

「ご……めん……なさい……あなたの怒り……憎しみ……。
 私の歌……じゃ、癒せないみたい……だね。
 だから……これ……あ……げるから、たべ……て」

みりあはさとうから受け取った箱から甘いのを一つ取り出す。
そして、アーナスの口内へ放り投げた。
みりあの言葉にアーナスは唖然として口を開けてしまう。

―――パク

ゴクン

アーナスの口内に小さいハートの固形状が流し込まれる。

そして、口の中で溶ける。
五臓六腑に染み渡る。
今でこそ嗜好品とされるチョコレートだが、遥か昔はチョコレートは薬として扱われていた。

”神の食べ物”とされるチョコレート。
それに含まれるカカオポリフェノールは血管の健康を維持する効能があるといわれている。
また、チョコレートには”吸血衝動を抑制する”効力を持ち合わせている。
アーナスもまた、チョコレートを摂取することで、吸血衝動を抑制していた。
無論、異なる世界のみりあがそれを知っていたわけではない。

「わ……私は一体……?」

祈りが込められたみりあの歌とチョコレートの相乗効果がアーナスの魂を縛る鎖を断ち切った。
みりあは弱弱しくも口元を弛ませる。

「うん……チョコレート、好きな……んだ……ね。みりあも……チョコ好きなんだよ」

アーナスの瞳を見つめる。
そして、手を握り語る。
ファンとの交流
みりあにとって最初で最後の握手会。
ゆっくりと瞼が閉じていく。
アンコールはない。
全力でやり切ったのだから。

「え……へへ……みりあ……ちゃんと……アイドルだったか……な」

コンサートの幕はこうして下りた。
幕が完全に下がるまで少女は笑った。
理由は問うまでもない。
赤城みりあは紛れもなく”アイドル”だった。
ただそれだけだ。

【赤城みりあ@アイドルマスター シンデレラガールズ  死亡】

446辺獄平安公演 夜の部 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:23:15 ID:2SqFhHp20

「……」
アーナスはみりあの死に顔を沈黙して眺める。
そして、丁重に下す。
眠った子供を起こさないようにゆっくりと。

「アーナスさん……正気に戻ったんですか」
「……目が覚めぬ悪い夢だった」
アーナスの狂気に満ちた目は鳴りを潜めており、アルーシェ達の前に立つのは優しい一人のエージェント。

―――だが

「……う゛ぐ゛っ!?」
「アーナスさん!?」
(そんな!?それほどまで、強く呪われているのか!)

しかし……辺獄の縛りは解放させない。
宿業を埋め込まれ魂を弄り回されて変容されし八将神を救うには”死”しかない。

「う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛〜〜〜〜〜!!!!!!」

再び繰り返される壮絶な苦痛を上げるアーナスの周囲に艶やかな蝶が周囲を包み込むとアーナスの体内へ。
そしてそのまま幾重にもの蝶になると飛び去って行った。

【??? /一日目/早朝】

【アーナス(歳刑神)@よるのないくに2 〜新月の花嫁〜】
[状態]:混乱・困惑(大)魔力消耗(中)、吸血衝動(低下中)、人間への激しい憎悪?、顔面打撲(中)
[装備]:魔剣ヨルド 盤古幡@封神演義
[道具]:基本支給品一色、不明支給品×1〜2
[思考・状況]
基本方針:『夜の君』としての本能に従い、人間を殺していく
1:?????
2:『人間』を見つけて殺す?。
3:小夜達(傘下)を利用する。
4:『人間』以外の参加者と出会えば、利用できそうなものであれば使役する
5:リュリュ……リュリ―ティス……その名が頭から離れない……ッ!!
[備考]
※参戦時期は暴走状態の頃からとなりますが、
 主催者からの改竄により「夜の君」としての理性だけは取り戻しております。
※また主催者の改竄により「大切なもの」を奪いとったものは、
 「人間」であったと認識させられていたのが、本当にそうなのか、懐疑的になりました。
※人間だった頃の記憶及び半妖だった頃の記憶については、欠落から時折、フラッシュバックするようになりました。
※ディメーンとのやり取りから主催陣に懐疑的な感情が芽生えました。
※フォームチェンジは魔力と引き換えに連続して使用可能

【盤古幡@封神演義】
アーナスに支給されたスーパー宝貝。
黒いボール状の形をしていて、使用すると分子構造のように分裂する。
使用することで局地的に重力を発生させることができる。最大出力は1000倍で空間が歪み、内部に居るだけで骨折するほどの威力だ。
制限により最大出力は一日二回とされている。

☆彡 ☆彡 ☆彡

447辺獄平安公演 夜の部 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:24:28 ID:2SqFhHp20

13章 一人に捧げる愛 皆へ捧げる愛 正しきは―――

「……」

―――ぐじゅっ

「……っ!」
ツウ―――と細い一筋の血が流れる。
無意識のうちに下唇を噛んだのだろう。

「……」

あの子……アイドルは皆を愛する。
皆同じで 一番はない。
特別が無い。
それは、先のコンサートで証明している。

でも、それって”愛”といえるの?

私はしおちゃんが好き。
ううん。しおちゃんだけが好き。
私の愛は―――特別はただ一人。
しおちゃんだけだ。

だから、その愛は間違っている。

否定したい。否定しなくちゃ。
”おばさん”に近い愛の形を。
でも、強く―――はっきりと否定できない。
だって、あの子が歌ったあの瞬間は、紛れもなくカラフルで色づいた。
しおちゃんと私の2人だけのハッピーシュガーライフに負けないぐらいの彩りを見せつけられた。
私としおちゃんは唯一無二。
だけど私はおばさんの愛を否定できるほど、胸を張って自分の”愛の形”をまだ見つけられていない。
私を満たし足りない。
揺らぐ。

揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ
揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ
揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ
揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ揺らぐ

間違っているのはどっち?
あの子の愛?それとも私の愛?

☆彡 ☆彡 ☆彡

448辺獄平安公演 夜の部 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:24:48 ID:2SqFhHp20

14章 自己愛……その正しさは

「……」

みりあから聞いたアイドルという職業は踊り子の範疇としか感じなかった。
この殺し合いには影響を与えない。
自分のような戦士とはかけ離れた存在だと。
だが、違った。
アイドルは踊り子ではなかった。
立派な”戦士”だった。

「羨ましいよ……自分の命より大事なものがあって……」

あのまま、アリスなる従者に守られつつ距離を取りながら歌えば、命を落とすことはなかったはずだ。
だけど、みりあは違った。
近づけば近づくほど危険が高まるのに自分の命を危険にさらし、結果命を落とした。
おそらく、みりあにとってアイドルという戦士は自分の命より大事なものがあったのだろう……
僕はみりあとは違う。
同じ戦士でも、自分の命が一番だ。
ライナーのように真っ先に一番危険な役回りを引き受けることはしない。
そこで命を落としたら夢を叶えることができなくなるからだ。

(僕は……僕たちは生き延びて故郷に帰りたい……っ!)

そう……その一念で任務に努めている。
訓練兵として共に過ごしていた同期のエレンから母の死を聞いたとき、”気の毒”だと心から思った。
また、かつてライナーがエレンに自分達の正体を告げたときは、体に戦律が走った。
そして、正体を明かした結果、恐れていた通り”裏切り者”と罵られ、憎しみをぶつけられ、僕は泣き言を喚いた。

松坂さとうのおかげで覚悟は決まっていた。
この場に呼ばれる前、大切な仲間だからこそちゃんと殺そうと思っていた。
だけど、あの歌声を聴いていたら、ふと、別の未来が浮かんでしまった、。

任務も全て幻で同期の仲間達とおっさんになるまで生きて酒を飲み合う未来が。

―――みりあなら血にまみれた僕らを救ってくれたかもしれない。

だが、もうそれは叶わない。

あああ―――

あああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

僕は心の中で叫ぶ。
どうして――――

世界はこんなにも惨酷なんだ。

☆彡 ☆彡 ☆彡

449辺獄平安公演 夜の部 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:25:28 ID:2SqFhHp20

15章 単凸〜碧い血特訓〜

「……」

とても、素敵な歌声だった。
いつまでも耳を傾けていたいほど。
だけど、もう聴けない。
歌姫は去ってしまったからだ。

「アーナスさんが手にかけることになったのは、私の所為だ」
教皇庁の聖騎士として私は何もできなかった。
暴走状態のアーナスさんを救うことも。
庇護すべき参加者であったみりあと呼ばれていた歌姫の盾となることも。
結局のところ、私の心の中に恐怖心が残っていたからだ。
アーナスさんとの初戦闘の際、私は恐怖した。
アーナスさんのように我を失い、皆を傷つけてしまうことに。
剣を突き付けてしまうことに。

”誰かを手にかける前に殺して……ってアルに頼むわ”

リリアに相談した夜。
リリアは自分なら……と答えた。
それを聴いて私も、もしもの時は私を殺してくれとルーエに頼んだ。
そのような願いは共にエージェントを目指したルーエにしか頼めないから。

”そんなことにはならない。私がアルを守る。そのために強くなった”

ルーエはそう言ってくれたけど、私は怖かった。
そして、その怖さがこの結末だ。

―――バシンッ!!!!!

私は思い切り、自分の頬を叩いた。
これは、ケジメ。
恐怖心に打ち勝てなかった自分に対する。

「私は、殺し合いを止める」

それは、当初からの方針。
だけど、その意味合いは大きく変わった。
私は走り続ける。
この明けない霧の辺獄を。
そして奏でる。
自分の生きる音を。
あの可愛らしい歌姫への返歌のために。
それが私にできる鎮魂歌。

☆彡 ☆彡 ☆彡

450辺獄平安公演 夜の部 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:26:03 ID:2SqFhHp20
16章 フラッシュ

「あかりさん!」
「……あれは?」
(青い……モルフォチョウの一種かしら?)

モルフォチョウ。
北アメリカ南部から南アメリカにかけて生息する蝶の一種。
翅の表面にある光沢は青色で発色する。
トッペイの指さす視線に映る蝶の一団にアカリはとっさに自分の世界に生息する蝶を連想する。
やがて3人が現場に到着する。

―――ザッ

「どうやら、遅かったみたい……」

キヨスの言葉通り。
既にコンサートの幕は下りていた。

※みりあの遺体の傍に細谷はるなのPDA・包帯……茨木華扇の包帯・従魔アリス・みりあの基本支給品が傍にあります。

【E-5 火災現場/一日目/早朝】

【ベルトルト・フーバー@進撃の巨人】
[状態〕:右鎖骨が砕けている、右手首に切り傷、精神的疲労(大)、苦悩、右腕骨折(処置済み) 負傷(大)
[装備〕:ブレード、ブレードホルダー&付け替え刃@進撃の巨人 刃鋼線@魁!男塾
[道具〕:基本支給品、ランダム支給品×1
[思考・状況]
基本行動方針:参加者の殲滅・優勝。もしアニが生き残っていたら…
1:僕は……どうして、世界はこんなにも惨酷なんだ
2:取り合えず、自身が中心となり対主催者の集団を作る。
3:参加者が最も集まったと思った頃合いを見て超大型巨人になり、エリア一帯を爆破・踏み潰す。
4:定時放送で神戸しおが死んでいた場合、手段は問わずさとうは葬る。
[備考]
※参戦時期は原作第78話、超大型巨人に変化する直前の参戦です。
※さとうの守護霊の能力が時間停止だということを把握しました。
※大きなダメージを受けるとDISCが出ることを把握しました。
※みりあの歌を聴いて、苦悩するようになりました。

【刃鋼線@魁!男塾】
ベルトルトに支給された目に見えぬほど細いが恐ろしいほど鋭く研ぎ澄まされた刃物のような鋼線。
本来の使い手は戮家殺人拳の使い手で刃鋼線を使った奥義を使えるが、ベルトルトは拳法家ではないため、奥義は使用できない。
その代わり、そつない身体能力で刃鋼線を自在に操作することは可能。

451辺獄平安公演 夜の部 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:27:08 ID:2SqFhHp20
【松坂さとう@ハッピーシュガーライフ】
[状態]:愛に対する情緒不安定(大)、精神的疲労(中)、負傷(中) 右腕に切り傷(包帯を巻いている、処置済み)顔の頬に返り血
[装備]:ザ・ワールドのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品 ランダム支給品×1(確認済み、武器以外がある)
[思考・状況]
基本方針:しおちゃんを見つける。この愛が正しいってことを知りたい。
1:しおちゃん……会いたい……
2:世界をモノクロにする無駄を排除する。
3:ドミノ・サザーランドを探す。モッコスは確実に殺す。
4:ベルトルトに対する嫌悪。
5:時間停止能力を持ってる人は他にもいるので警戒。
6:正しいのはあの子の愛?それとも私の愛?
[備考]
※参戦時期は1巻で先生を『説得』した後
※エスデス・リリア―ナの時間停止能力を感じました。
※大きなダメージを受けるとDISCが出ることを把握しました。
※みりあの歌を聴いて、自分の愛の自信が揺らいでいます。

【手作りチョコレート2021@アイドルマスター シンデレラガールズ】
スタミナが100回復する手作りチョコレート
みりあに譲渡し、アーナスへと使用されました。
みんながLIVEに来てくれるのは、特別な思い出をつくりたいからだよねっ。私も特別なバレンタインの思い出、ほしいなー!
ほら、これ、プロデューサーチョコと、みりあチョコ!そっくりでしょ?これをふたつ、くっつけてー。
上にホイップで、ハートマーク♪ほらほら、とーってもなかよし!今年だけのスペシャルチョコ、いっしょに食べようねby赤城みりあ

452辺獄平安公演 夜の部 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:27:27 ID:2SqFhHp20
【アルーシェ・アナトリア@よるのないくに2 〜新月の花嫁〜】
[状態]:負傷(大) 疲労(大) 後悔と決意
[装備]:烈風丸@ストライクウィッチーズシリーズ 雷槍@進撃の巨人(左右の腕に射出装置がついている)
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない。
1:あの歌姫のためにも、私はもう後悔しないために動く
2:リリア、それにユズとはるなの知り合いを探す。
3:次、アーナスさんと対峙したら迷いなく斃す
4:獣かぁ。気を付けておかないと。
5:リリア……会いたいな
[備考]
※参戦時期は六章、クリストフォロスとの会話〜アーナスの理性を取り戻す前。
※活動制限に関しては後続の書き手にお任せします。
※トガビトノセンリツ、リベリオンズ、ブルーリフレクションの情報を得ました。
 ただしリベリオンズはDルートの為、充、琴美以外の人物の情報とは話が合いません。
 途中までであれば結衣とは話が合います。
※殺し合いに乗った人物並びに八将神と対峙したときは、迷いなく斃す決意を決めました。
※トッペイの情報交換でクライスタ、緑郎、カイン(名前は知らない)の情報を得ました。
※八将神の情報を得ました。
※みりあの歌を聴いて、殺し合いを止める障害の参加者は斃す決意を定めました。

【烈風丸@ストライクウィッチーズシリーズ】
扶桑軍人である坂本美緒が自ら魔力を込めて作刀した扶桑刀。
刀身自体がシールドの役割を果たす。
加速と共に魔力を込めた状態で一気に振り下ろすことで”烈風斬”という必殺技を放つことが出来る。ただし、魔力を持つ者にしか発動はできない。

【雷槍@進撃の巨人】
対鎧の巨人対策のために開発された兵器。
初お披露目の際エレンからは”鉄の棒?”と評されたが、その威力から雷槍と名付けられた。
長さ1メートルほどの細長さ。
腕に射出する装置をつけ、アンカーを打ち込み雷槍を目標に突き刺し、ロープを引き起爆させることで爆発する仕組み。
距離が近いと自らも爆発に巻き込まれるため、扱いには注意である。
鎧の巨人の装甲を打ち破ることができた対巨人兵器としては最高峰といえるだろう。
6本支給され、現在は残り5本

取り返してやる。お前らをぶっ殺して……お前らに、奪われたすべてを……byエレン

453辺獄平安公演 夜の部 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:28:05 ID:2SqFhHp20
【清棲あかり@へんなものみっけ 】
[状態]:健康
[装備]:ポケモン図鑑@ポケットモンスター モンスターボール×8 ひかりのドレス@ドラクエ7
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1 Eー3かねでの森博物館から持ってきたフィールドワークや解体用の道具(双眼鏡・ハイヒール(大型動物解体・調理用刃物)など) 火山灰(一人分の量)@血と灰の女王
[思考・状況]
基本方針:参加者たちの生きた証を記しこの殺し合いの出来事を風化させない
1:伯爵さまを探しつつエルピスと行動を共にする※ 南側EFGHを中心に
2:参加者の生きた証を集め、もしもの時は”託す”※作業の中心はポケモン図鑑に登録
3:ロック・鬼くびれ大羅漢(金髪の外人)に注意する
4:二日目の昼にはE-3のかなでの森博物館へ戻り、ギャブロ君達と合流して手にした情報を交換する
5:首輪の解除方法がないか、探しつつ考える
6:たどり着いた現場E-5の人達と情報を交換する
[備考]
※参戦時期は原作1話 事故死したカモシカを博物館に持って帰ったところ
※ロックの危険性について知りました。征史郎との会話から爆発させる能力はスタンドの力ではないかと推測しています。
※マネーラ・ギャブロ・藤丸立香の世界について簡単に知りました。
※パンドラボックス(エルピス)に戦闘の指示を出すことが可能となった。
※トッペイとの情報交換でクライスタの世界観を大まかに把握しました。
※征史郎との情報交換でリベリオンズ、ブルーリフレクション、よるのないくに2の情報を得ました。
 ただしリベリオンズはDルートの為充、琴美以外の人物とは話が合いません。
※トッペイの治療により、本来の服装であるパーカーを足りない包帯代わりに使用しました。
※トッペイの治療でかなでの森博物館から持ってきたフィールドワーク用の包帯は使い切りました。治療に使える薬はまだあります。

【パンドラボックス(エルピス)@ドラゴンクエスト7】
[状態]:モンスターマスター(キヨス)に懐いている 健康 トッペイを舌で巻き付けている
[装備]:トッペイ@バンパイヤ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1(強力な武具やアイテムです。)壊砲ティシア@ファンタシースターオンライン2
キングラウザー@仮面ライダー剣
[思考・状況]基本行動方針:マスターを守る
1:マスター(キヨス)と行動を共にして守る
2:征史郎とまた再会出来たら舌でぺろぺろ舐めたい
3:トッペイをうっかり齧らないように気をつける
※参戦時期は宝箱(パンドラボックス)を調べられる前
※キヨスの命名により”エルピス”と名付けられました。なお、名簿の記載に変化は起きません。
使える呪文 ザラキ マホトラ あまい息
※ザラキは参加者が”精神的に不安定” ”体力・気力が果てるような状況”などでないと効果が効きません。
※舌でトッペイを巻き付けて共に移動をしています。

【キングラウザー@仮面ライダー剣】
仮面ライダーブレイドキングフォームが操る大型剣。
内部にある”バリアシステム”で生成されたエネルギーバリアフィールドを放出することで、外部からの衝撃から保護する。また、敵の攻撃を防ぐ盾としても使用できる。
切れ味はブレイラウザーの3倍。まぁ、めっちゃ切れるということ。
重醒剣DXキングラウザー¥7,700(税込)
オートラウズシステムでラウズカードを自動で読み取る。5枚のコンボで必殺技が発動!!102種のラウズカードを読み取り可能で31種の台詞と12種の音声が鳴る!byBAN■AI公式サイトより

454辺獄平安公演 夜の部 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:28:50 ID:2SqFhHp20
【立花特平/トッペイ@バンパイヤ】
[状態]:負傷(大)、全身激痛(和らいできている(中)) 全身包帯並びにパーカーの生地、焦げ気味、エルピスに舌で巻き付けられている
     あかりさん……ぽーっ
[装備]:焦げ気味のエマの帽子@ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会
[道具]:目隠し@現地調達
[思考・状況]
基本方針:千さんの意志を継いで殺し合いを止めた後、マンガ映画を作る。
1:エルピスに巻き付けてもらう形で移動をする
2:たどり着いた現場(E-5)にいるアルーシェさん達と会話する。
3:千さんの仲間である零、彼女の妹であるみらいを探す。(ただみらいは用心する)
4:ロック、アナムネシスに警戒。
5:八将神のことを他の人へと伝える。
6:千さん……
7:白い服の人(カイン)は無事なのか。
8:あの人(姫和)を止めないと。
9:あかりさん……っとと、チッペイにこの顔を見られたら、茶化されるな
[備考]
※参戦時期は第一部終了後。
※八将神の存在を知りました。
※ロックが幽鬼ではないかと推測してます。また、ロックが現在、爆発させる能力を得ていることを知りました。
※千との情報交換でクライスタの世界観を大まかに把握してます
※アルーシェとの情報交換で彼女の同行者の名前だけ伝えられてます
※キヨスからマネーラ・ギャブロ・藤丸立香の情報を得ました。(簡単に)
※キヨスから二日目の昼にE-3にあるかなでの森博物館に人が集まる情報を得ました。

【従魔アリス@よるのないくに2】
みりあに支給された従魔。
ウサギ兵の展開と魔法攻撃を跳ね返す鏡の盾を使用する。
意思疎通は可能だが、あくまで支給品。使用者の命令には逆らえない。
現在はみりあが死亡したため、所有者は空白となっている。
『一番強そうな人にすり寄りましたね……』byカエデ

【茨木華扇の包帯@よるのないくに2】
みりあに支給された包帯。
茨木華扇が右腕に巻いていた包帯。さとうの治療に使用されたが、まだまだ包帯として使える量がある。
華扇は右腕に巻かれた包帯を操り、相手を包んで投げたり、龍の形にしてゴバーッとしたが、当然、普通の人間はそれを巻いてもそんな利用方法はできぬ。
「私の理念は天道と共にある!」by茨木華扇

☆彡 ☆彡 ☆彡

455辺獄平安公演 閉演 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:29:22 ID:2SqFhHp20
17章  緑天井

八将神を救うべく一人のアイドルが歌ったコンサート。
それを彼らが知ることはない。
そんな一幕。

「へへ、これで私もユウナとお揃いだね♪」
「はぁ……ったく物好きね。しなくていいわよと言ったのに」

ふんふふ〜ん♪と上機嫌で歩くレオーネを余所に私は眉間に手を置きながらため息をつく。
新たに仲間に加えたレオーネの元々の髪の色は黄金に輝く綺麗な金色だった。
世界が世界ならブロンド美女の一人。
その髪質に魅かれる人は多くいたはずだが……
当の本人は全く気にすることなく”緑髪”になれたことに満足気だ。

「そりゃあ、私だけ仲間外れは勘弁に決まっているからね。どうだい?ミスターL、似合うだろう」
「ああ!とってもイカす髪になったな!」

当のレオーネは自身の金髪に未練はない様子。
そして、自身の決断が間違ってないかと確認するためにミスターLに同意を求める。
ミスターLはレオーネの尋ねにサムズアップして快活に答える。

「あんたは緑なら手放しで喜ぶでしょ……」
「それは、当然だ!緑こそ至高のカラーなんだからな!」
「……はぁ」

予想通りの返事に私は頭を抱える。

(早く、まともそうな思考の参加者と出会いたいわ……)
勿論、自分の目的に手を貸してくれる二人には感謝しかない。
ただ、緑一筋のミスターLとノリが強すぎるレオーネ相手は疲れる。

「ユウナ」
「何?どうかした」
「そこの物陰に人がいる。出てきな。3秒以内に出てこなければ、敵と判断するよ」
ナイトレイドの一員として帝都の闇に紛れていただけあって、勘は鋭いようだ。
さっきまでのゆんだ空気は瞬時消えて、その眼光は闇の暗殺者に代わる。

「……降参だ。ジュネーヴ条約に則った人道的な対応を要求する」
バンザイしながら物陰から出てきたのは、私と同じ年頃の少年だった。

「ふっふっふっ〜。それはこちらの気分次第かな〜〜」
「こら、怖がらせないの」
私は軽くレオーネの頭にチョップする。

「冗談だって〜〜。ところでユウナ。ジュネーヴ条約って何だい?」
「オレもそんな条約は知らん!」
「ああ……もう、わかったわ。後で説明するから、ちょっとだまってなさい」

おーしえろ!とせがむ2人をあしらう。
それにしても、ジュネーヴ条約って言葉を使うぐらいだから、やっぱり彼は私と同じ世界のようね……

「ふむ……」

私達のやり取りから危険を感じないと判断したのか、いつの間にかバンザイポーズを止めて、観察しているようだ。
やがて、彼は口を開く。

「ところで緑軍団と情報交換するためには、僕も緑髪にしないといけないのだろうか?」
「しなくていい!」

はぁ……私の周りってこういうのしか集まらないのかしら

【D-3 南部/一日目/早朝】

456辺獄平安公演 閉演 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:30:46 ID:2SqFhHp20
【ミスターL@スーパーペーパーマリオ】
[状態]:健康、
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状態]
基本:悠奈のバカバカしい生き方とやらで主催共を叩き潰す
1:ユウナ・レオーネと行動を共にする
2:伯爵サマたちは一体何処にいるんだ?
3:ヒーロー……か
4:レオーネ!その緑髪とてもイカしてるぞ!
5:ユウナ!ジュネーヴ条約って何だ!?
[備考]
※参戦時期は6-2、マリオたちに敗北した直後
※悠奈からリベリオンズの世界について簡単な知識を得ました。
※名簿から伯爵さまたちが参加していることを知りました。
※悠奈から”拳銃”の脅威を知りました。
※レオーネからアカメの世界について簡単な知識を得ました。

【藤堂悠奈@リベリオンズ Secret game 2nd Stage】
[状態]:健康 緑髪
[装備]:コルトパイソン@ リベリオンズ Secret game 2nd Stage
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2 予備弾数多め
[思考・状態]
基本:なるべく多くの人を助け、殺し合いを止める
1:ミスターL・レオーネと行動を共にする
2:目の前の男の子と情報交換を行う。……てか、私の周りに集まるのってこういうのばかりなのかしら
2:彰……私は……
3:殺し合いに乗っていない参加者達を一つにまとめる。乗った参加者は無力化して拘束する
4:もう少し、威力が低い銃もほしいわね……あと、逃走用の対策も練らないと……
5:たとえ、どんな状況でも挫けず信念を貫く
[備考]
※参戦時期はAルート、セカンドステージ突入語で修平達と別れた後
※緑髪に染めました。
※運営が死者を蘇らせる力を持っていると推測しています。
※ミスターLからスパマリの世界について簡単な知識を得ました。
※レオーネからアカメの世界について簡単な知識を得ました。
※金髪の男は簀巻きにするとケツイしました。

【レオーネ@アカメが斬る!】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(小)、緑髪
[装備]:ホープナックル@グランブルーファンタジー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2(確認済み、ライオネルなし)
[思考・状況]
基本方針:メフィス達、覚悟できてんだろね。
1:民の為にもう一度戦いますかね。正義のマッサージ師として。
2:アカメを探……さなくても大丈夫だよね。親友を信じろって。
3:帝具なしでエスデスとかは会いたくねーな! あっても会いたくねーな!
4:優勝するしかなくなったらどうしよ。いや、正義のヒーローが勝つって決まってる。
5:ねぇユウナ。ジュネーヴ条約って何?
[備考]
※参戦時期は死亡後(アニメ版意識ですが漫画版でも問題ないです)
 ただ漫画版であればライオネルと少し融合してるため状態表が変わります。
※悠奈からリベリオンズの世界について簡単な知識を得ました。
※ミスターLからスパマリの世界について簡単な知識を得ました。
※悠奈と同じ緑髪に染めました。

457辺獄平安公演 閉演 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:31:04 ID:2SqFhHp20
【城本征史郎@トガビトノセンリツ】
[状態]:精神疲労(小)、ダメージ(中)、頭に包帯が巻かれている、
[装備]:スティッキィ・フィンガーズのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2(夕月×0〜1確認済み、はるな×0〜1確認済み、武器になりうるものではない)、スフォリアテッレ(箱入り)@クライスタ、伊藤大祐の首輪
[思考・状況]
基本方針:殺し合いに反抗する。
1:はるなの遺志を継ぐ。
2:目の前の緑軍団と情報交換を行う。
3:はるな、夕月、アルーシェの知り合いを探す。特に城咲充優先かつ、前者二名の知り合いには謝っておきたい。
4:スタンドでできることを試そう。できて当然と言う認知が大事だ。
5:ついでにスタンドを使える奴がいるか探す、或いは警戒をしておく。
6:あっさりと終わったが、これでいい。語られなかった物語とは、そういうもので。
7:生きたまま首輪が外せるかを乗った参加者で試す。できないとは思うが。
8:首輪について調べておく。
9:……ふむ、生きて帰れたら生物学でも齧ってみるとするか。あ、パンドラボックスの齧るとは別の意味だ
10:二日目の昼にかなでの森博物館へ寄るとするか。互いに生きていればの話だが。
[備考]
※参戦時期は死亡後です。
※リベリオンズ、ブルーリフレクション、よるのないくに2の情報を得ました。
 ただしリベリオンズはDルートの為充、琴美以外の人物とは話が合いません。
※おおよそスタンドでできることを把握しています。
※マネーラ・ギャブロ・藤丸立香の情報を得ました。(簡単に)
※キヨスから零の情報を得ました。(外見と妹を探していることについてのみ)
※二日目の昼にE-3にあるかなでの森博物館に人が集まる情報を得ました。
※ロックの危険性について知りました。※爆発させる能力はスタンドによるものではないかと推測しています。

458辺獄平安公演 閉演 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:32:15 ID:2SqFhHp20
18章 そしてdread answerまで後僅かへ

「……つまらないなぁ」
静かな声。
一見、退屈そうに聞こえる声音。

しかし―――

―――明らかに苛立ちが入り混じっている。

先の結末に不満を隠しきれない。

―――スッ

フェレスは立ち上がると、苛立ちを表すかの如くカツカツと音を高く鳴らして歩きだす。

「ん?何処かへ行く気か?」
移動しようとするフェレスの様子にメフィスは首を傾げる。

「うん〜。口直しに鬼門でも封じにいこうかと〜。
 あれをほおっておくわけにはいかないからね……」

フェレスはメフィスに顔を向けずに話すと、立ち去る。

「なんじゃ、結局お主も行くんじゃな。
 そうそう、行くなら、その不服そうな表情を気取られないようにな」
メフィスは背を向けるフェレスへ言葉を投げかける。
フェレスから返事は来なかったが、そこは大丈夫だろうと思うことにした。

(それにしても……一瞬とはいえ、我らのプロデュースから解放したとは……)

人間なぞ、所詮は神の創りし慰み者であり、悪魔の玩具でしかない。
だが、取るに足らない慰み者が八将神として弄った夜の君を一瞬とはいえ正気に戻した。
その事実にメフィスは気づかないうちに下唇を噛んでいた。

かくして、アイドルデビューした少女の最初にして最後の公演は終了した。

そろそろ、第一回の放送が近づく。

459辺獄平安公演 閉演 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 00:34:14 ID:2SqFhHp20
投下終了します。

460 ◆EPyDv9DKJs:2022/03/28(月) 06:02:26 ID:ES82upN20
投下お疲れ様です
まずは忘れてたので放置してた感想から

>星屑ロンリネス
悪い意味でそれでも前へと進む、
クライスタの序盤における零らしさがあります
キヨス、全編を通しても一番大人してるなぁって
大人としての責任感と言うか包容力と言うか、
そういういい意味で年季の違いってところが感じられるのもいいですね
でもマネーラは伯爵の死がある以上どうなるか。アタシやさしくないのになるのかな
エルピスはマスコット。イイネ

>嵐を呼ぶ瀬辺獄平安大合戦
十六人、圧倒的な人数による八将神大決戦
実質劇場版クレヨンしんちゃんですね、これは!
オールスター。詰め込みすぎて最早クレヨンしんちゃん好きの人でないと、
分からないぐらいの山盛りの要素は楽しめない一方で楽しめてるなら最高の一言になるでしょう
まさに群像劇。数多の世界と数多の人物が織りなす大合戦の第一陣は驚くべことに死者ゼロ、
しかし次なる第二陣、しかもこのロワでも最強クラスの一人。果たしてどうなるか
子供たちが活躍し、大人がそれをサポートした。だから、次は大人たちの出番だ

>揺れる廻る振れる切ない気持ち
貴真が貴真しておりますなぁ
基本的には正論ではあると言うのが厄介で、
政も敵にしか出会ってないのでこれが擁護できないところもある
近くには悠奈もいることですが、彼もどうなってしまうのやら
奇しくも他のメンバーが一年後のシークレットゲームと出会っており、
ひょっとしたら彼も? と言うちょっとしたジンクスに期待してたりも

>辺獄平安公演
やっぱアーナスツエエエエエ!!
DISC、強みはあるんだけどこれなんですよね
自分はすっかりそこの点を書いてないのでそこ拾ってくれたのはありがたい限りです
八将神Pと言う斜め上なものが出てきたりで面白い呼び方も中々いいと思いました
双子ってそういう妙にユーモアと言うか現代的なのを使うことありますから(スマホ使うし)

征士郎の語り方がもうほんっとうに原作そのまんまで滅茶苦茶笑いました
真面目なことをしながら鬼くびれ大羅漢とか随所にネタが挟まれていて、
ああこれだよこれ、こういう奴なんだよとウンウンと唸りながら見ました
このどこか哀愁の漂いつつ、どこかふざけていて、しかしちゃんと考えてる。
征士郎と言う人物のらしいって部分が一杯あってたまりません
キヨスの変わらず頼れる大人と言う風格もまたグッド

>あの双子に”どうも、クソゲーを遊ばせてくれてありがとう”と鼻で笑ってカンチョ―することだ。

此処最高に好きです

アイドルがアイドルをしているのも特にいいなって思いました
歌って、踊って。人を笑顔にする。それがみりあの最大の武器ですから
酷い目に遭いながらも、不安に思う相手でありながらもさとうのことを、ベルトルトのことを考える
とても優しい子供であり、少女であり、アイドルだなと強く感じました
だからこそ、アーナスの心を。命懸けの踊りと、歌と、そしてチョコレートで
八将神による記憶の上書きで元来の暴走状態と違って多少脆くなったのかもしれない、
本来は指輪でなければたどり着けなかったところへと、彼女は偶然にも至れた
でもシンデレラの魔法は一夜限りの魔法。次はなく、彼女だけが斃れることに
此処がとてもいいと思います。一時的にアーナスが戻れたものの、宿業からは解放されないのが、
八将神の恐ろしい所だと思いましたね……悲劇以外での回避など許しはしないと

いやまさかの緑チーム増えるんかい!
常識人が少なすぎて悠奈さんの胃がマッハ!
しかも追加する奴も濃すぎるメンバーである!
突然のオチを前に、しんみりとした空気が引っ込んで笑いました

長編お疲れ様……と言いたかったのですが
いくつか、と言うより結構な数なので恐縮なのですが気になったところが
長々となりますが何卒おつきあいください

461 ◆EPyDv9DKJs:2022/03/28(月) 06:03:35 ID:ES82upN20
・アーナスの時間停止の認識
以前氏の『平安京での狂騒』の時にの善VSエスデスの際は、
『凍らせる』とのニュアンスから察していたので気にしませんでした
ただ今回については時間停止を二回だけで察するのには少々違和感があります
私もよるのないくにの一作目をしっかりやりこんでいるわけではないので、
時間停止ができる敵がいて、だから思い至ったとかであれば別なのですが……
とは言えこれは私がアーナスに対する解釈の問題ではあるとは思いますので、
氏のアーナスに対する見解では「できる」と言う解釈でありましたら失礼
ただ、時を止めると言う概念が存在していない中で、
二回みただけで『時を止めた』と言うのは少し引っかかるかなと

・時間について
アルーシェ、アーナスはE-5には深夜帯のバアルの攻撃を見てやってきているので、
深夜〜黎明になったばかりで三人しか出会ってないトッペイが情報交換に数時間、と言うのはあまり想像できません
戦闘が数時間に及ぶほどの戦闘、と言える程の展開であるわけでもないので時間帯的には黎明が正しい気がします
ただ、黎明にすると今度はあかりと征四郎が出会う〜トッペイに出会って現場へ急行、
と言う展開そのものも少し急すぎていて、気になってしまうところではあります
これについては私が思う時間の進み方とのイメージが違うだけなので、
別に修正するべきところでもないとは自分でも思う次第ではあります
細かく言うことではないと思いますが……念の為言っておくべきかなと

・ディメーンについて
ディメーンは基本的に監視ルームに(支給品の手渡し除く)いますが、
そこにいずに双子と様子を見に来た際に一切の言及をしてこないと言うのは少し気掛かりです
勿論双子はあのような性格なので多少雑に考えてること自体はあり得ないわけではないので、
言及しなかったとしても特別おかしいものではありませんのでこれについては些事に近いです
ただ、『とうとう出向いた』と言ってましたがディメーンの支給品手渡しは、
初登場『束の間の休息と新たな道筋』の黎明なので特に問題がないのですが、
前述のとおりの早朝なら完全者、アリサとすでに何度も出てるので、
『とうとう』と言ういい方には少し引っかかってしまいます
これらは台詞を差し替えればさして問題ないので、
少し突っかかりすぎとは思ってます。すみません

また拙作『dread answerまで後僅か』ではディメーンが、
大型の支給品を送っただけと明確には言ってませんが、現在大型で早朝に出たのはエルガンダーのみ、
作中でも今しがた送ってきたとでも言いたげな発言をしてることから、少々時系列が合いません
(拙作では辺獄平安大合戦>dread answerの時系列で書いていました)
また拙作で同時にそれを愚痴ってたことから、フェレスに二度も愚痴を零してると言うのも疑問が出ます

・トッペイについて
トッペイは参戦時期が一部終了後のはずですが、
その頃は人間社会ではバンパイアの掃討が図られてますし、
トッペイもそれを知った以上トッペイが人間社会には溶け込むことは難しいです
なので、マンガ映画を作るという目的がとてもできない状況下にあるとは思います
ただこれは『人里から離れた場所でもマンガ映画を作りたい』とも受け取れるので、
氏がそういう風に伝えるつもりでありましたら、読解力のない自分の問題です。すみません

・スナップブレードについて
スナップブレードは硬いもの(原作で言えば硬質化)を攻撃した時のように、
比較的折れやすい武器なので攻撃を防ぐ用途については少し難しいと思います
(相手が通常の相手であればいいですが、八将神でさらにアーナスなので余計に……)
此方についても個人の見解なので、これについては企画主や他の書き手の判断次第です

・時間の遅延
リリアーナの能力は世界全体を遅延させるのではなく、
至近距離の相手のみの遅延なので、さとうが認識するのはないと思います
(世界全体に関わるのであれば、原作でもアルーシェが遅延するはずなので)
感覚が違う、とさとうも感じてるのでこれも私個人の解釈ではありますので、
別にいいかなとは思いますが

・レオーネの行動について
レオーネは一般人である侑と負傷者のエレンを知っています
更にギースが逃げたという状況下。彼女達のところに向かった可能性もある中で、
彼女達を探すことをせず、暢気に髪を染めると言う行動をとると言うのはかなり違和感があるなと
悠奈の場合はミスターLとのやり取りの都合で髪の色を染める必要がありましたが、
今回は別段染めなければならない理由もない場面で二人を放置して髪を染めていて、
レオーネどころか話も聞いてるであろう悠奈でさえその行動に違和感が拭えません
明確な理由があって髪を染める必要に迫られたなら特に気にはしなかったのですが……

462 ◆EPyDv9DKJs:2022/03/28(月) 06:04:37 ID:ES82upN20
少なくとも自分が気になった点は以上になります
大作を相手に一行に行程度修正で済む重箱の隅をつつく内容が殆どの指摘で申し訳ありません
ただ、多数の拙作のリレーをしてくださり、直近の話も組み込んだ作品
書き手としてとても嬉しく思っていると明言させていただきます

本当に長々と失礼しました
ギース、完全者で予約します

463辺獄平安公演 閉演 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 17:17:26 ID:2SqFhHp20
感想ありがとうございます。
また気になった点にお答えします。
個人の小説ではなく、皆で完成させるリレー小説でありますので、大作に限らず、意見は当然の権利かつどうしてそう書いたのか真摯に答えるべきである(結果的に破棄となっても)と私は思います。
気になる点を修正してより良い作品へとブラッシュアップさせていただきます。
ですので、お気になさらないでください。

・アーナスの時間停止の認識
私としては、従魔の中に糸で動きを止めたり瞬間移動して攻撃ができたりする能力があるので、
突然腹をぶち抜かれた→しかし、糸は見当たらない。また、ビスク(瞬間移動)とも違うように見える→時止めか?
ということで、思い至ったつもりで書きました。ですが、それはあくまで、私目線だからであり、ご指摘の通り、だとしても直球である答えにたどり着くのは、察しが良すぎますので、台詞を一部変更並びにベルトルトが時止め把握した描写をカットいたします。

・時間について
私としてはご指摘で書かれた(黎明)あかりと征四郎が出会う〜トッペイに出会って現場へ急行→到着(早朝)認識で書きました。
私の時間間隔のズレ申し訳ございません。 もしよければ、今回はこれでいかせていただけたらと。もしくは、キヨス・エルピス・トッペイが出発するところで状態表に移します。

・ディメーンについて
私が思い違いをしていました。ご指摘の通り、時系列並びに台詞が合いません。大変申し訳ありません。
ディメーンの台詞を修正いたします。

・トッペイについて
私としては、確かに一部の最後、人間社会はバンパイヤを排斥しましたが、手塚先生といったトッペイのことを理解してくれる人間も絶対にいるから人間も捨てたもんじゃないよ!といった私の根拠なき希望で書きました。
私の問題です。申し訳ありません。
溶け込む難しさと人里から離れた場所でもマンガ映画を作りたい←EPyDv9DKJsさんの受け取り方を使わせていただき修正いたします。

・スナップブレードについて
ご指摘の通り、鎧の巨人のような硬質化への攻撃や高付加がかかると簡単に折れる仕組みです。
私としては、刀同士のつばぜり合いではなく、アーマーではなく、スピード重視のラビットの拳なので耐えたつもりで書きました。
ですが、私もEPyDv9DKJsさんが違和感を感じられたと同じく、一般人ではなく八将神かつアーナスだから軽くはないよなぁと思い、ベルトルトに台詞に「重いな……ッ!」←と書いたので、砕け、付け替え刃に交換する描写へと修正いたします。

・時間の遅延
リリアの刻止めがエスデスと違い範囲限定だと重々承知の上ですが、EPyDv9DKJsさんの作品を呼んだ際、さとうが時止めを把握したのを書かれていましたので、せっかくなら絡めたいと思い書きました。
描写をカットいたします。違和感を感じさせてしまい申し訳ありません。

・レオーネの行動について
緑髪にした流れは弁解の余地もございません。
行動の違和感を感じさせたこと申し訳ありません。
展開を練り直して修正します。

464辺獄平安公演 修正 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 17:20:59 ID:2SqFhHp20
・アーナスの時間停止の認識 修正

「その従魔らしき者の力によるものか?」
「……ッ!?」
平然と喋りかけてくるアーナスに流石のさとうもぎょっ!と目を見張る。

―――ズルッ

自分から後ろに下がり、ザ・ワールドの腕から離れる。
普通なら、胴体を貫かれ平然とできる筈はない。
だが、何度も述べられているが、今のアーナスは”八将神”である。
疑似霊核として用意された心臓を破壊しない限り殺すことは不可能なのだ。

「アラクネ……いや、ビスクに近い能力みたいだが、人間風情が夜の君である私に従魔を 
 差し向けるとは……許さん!」



(やはり、さとうの守護霊の力……危険だ)
アーナスが口にした従魔という単語。
ベルトルトは確かにその言葉を聞き逃さなかった。
無意識にさとうにより砕かれた右鎖骨を触る。
さとうの守護霊が従魔かどうかは分からないが、ほとんどの相手に対して優位に立てる能力であることは間違いない……
どう殺すか、ベルトルトはアーナスに対峙しつつも案を張り巡らせている……

・ディメーンについて 修正

「ボンジュ〜ル、お二人さん。ちょっと聴きたいことがあるんだけど?」
双子の前に現れるのは道化師。
ディメーン。

「ん?お主……ちゃんと管理ルームにいないのは感心せぬな」
「ちゃ〜んと、”まて”ができないわんちゃんはいらないんだけどなぁ〜……」

メフィスとフェレスはディメーンを嗜める。

「「ノ――――ン!直ぐに聞いたら戻るとするよ。
 どうして支給品に”シャンバラ”を選んだんだい?
 一歩間違えれば、この殺し合いを破綻してもおかしくないと思うけど」

ディメーンの疑問は至極同然。
”次元方陣シャンバラ”
マーキングした場所への瞬間移動を可能とする帝具。
一手違えれば、こちら側の詰みに繋がりかねない道具の一つ。

(それに、”空白の才”も……破たんしかねない道具だ。
 殺しを強要する主催側が、進んでそれらを多く支給するなんて……
 余裕なのか、浅はかなのか……)

双子の悪魔と陰陽師の思考に首を傾げざるをえないといった風だ。
殺し合いをさせるなら、別になくてもいい道具。
わざわざ、危険を冒す必要なんてないのだ。

「ん?ああ、別に構わぬよ。
 多少の希望は与えておかないと上質な理念を集めることが出来ないからな」
「そうそう……僕たちに反抗できる〜と喜んでから、やっぱり無理でした〜と
 理解したワンちゃんたちのわんわんわんと鳴く絶望からの理念は想像するだけで最高だ 
 よ〜」

双子の悪魔にとって、この殺し合いは余興でしかない。
如何に上質な理念が集められるかが重要なのだ。

「そういうことじゃ。それと、あの神の慰み者のくせに一人面白い理念がおっての。
 たしか……”蛙のツラ”じゃったかな。あれを参考にさせてもらった」
双子の悪魔はクスクスと嗤う。

「ふ〜ん……じゃ!捨てられるのは勘弁だから直ぐに戻るとするよ」
ディメーンは踵を返すと、管理ルームへ戻っていった……

465辺獄平安公演 修正 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 17:22:27 ID:2SqFhHp20
・トッペイについて 修正

「ぼくは……」
トッペイの脳裏に浮かぶ。
あの光景が。
マンガ映画が好きで手塚先生に会いたくて山を下りたときのことを。
かあちゃんに自分の夢を語ったときのことを。

「あかりさん……ぼく、実はマンガ映画が好きなんです。だから……絶対に生きて帰って
 マンガ映画を僕の手で作る!正直……バンパイヤ排斥が進み、その中を僕が作るのは難
 しいと思います。
 だけど、手塚先生みたいな人もいるから、たとえ人里から離れた場所でもやり遂げます!
 それが僕の勝利です!!」

トッペイもキヨスの瞳をしっかりと見つめて力強く答える。
トッペイは決意した。
勿論、千の意思を継いで、殺し合いを止めることは変わらない。
しかし、”その先”のビジョンをちゃんと定めたのだ。

「うん!お互い、勝つために頑張ろうね!」
(……確かに人間は自分と異なる存在を認めづらい。難しい道のりかもしれないど、私は応援するよ!)

・スナップブレードについて 修正

「く……ッ!」
(軽そうな見た目に反して、拳はライナー並みの硬さか……ッ!
 受けきるのは無理だな)

俊足の乱打がアルーシェとベルベルトを襲う。
それぞれ得物で拳を防ぐ。
重い一撃は、烈風丸は防げたが、受けた個所のブレードの刀身はヒビが入り、砕けてしまった。
ベルトルトは素早く残りの刀身を綺麗に折ると付け替え刃で装備をし直す。
ラビットフォームの特性を生かすためか、アーナスは火災現場でありながらも熱気をものともせず、俊敏に右往左往に動きながら、攻撃を加えてくる。

466辺獄平安公演 修正 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 17:27:40 ID:2SqFhHp20
・時間の遅延 修正

「何か、甘いものでも持っていますか?あるのなら、みりあに渡してください」
そういうと、みりあはさとうに頭を下げる。

「意味がわからないんだけど?」
さとうはみりあの申し出に怪訝な表情を見せる。

甘いものを?

・レオーネの行動について 修正

17章  教えてユウナ!

八将神を救うべく一人のアイドルが歌ったコンサート。
それを彼らが知ることはない。
そんな一幕。

「それで……レオーネに助けを求めたユウって子と現場から逃がした金髪の少女はこっちの方角にいるのね」
「ああ、そうだよ」

金髪の外人を見失った悠奈たち。
本来なら、直ぐにでも追いかけて、簀巻きにしたいところだが、どの方角へ向かったか分からない以上、闇雲に探しても徒労に終わる可能性が高い。
そこで、悠奈達は、レオーネに助けを求めたユウがいるであろう方角へ歩いている。

「ユウナ」
「何?どうかした」
「そこの物陰に人がいる。出てきな。3秒以内に出てこなければ、敵と判断するよ」
ナイトレイドの一員として帝都の闇に紛れていただけあって、勘は鋭いようだ。
その眼光は闇の暗殺者に代わる。

「……降参だ。ジュネーヴ条約に則った人道的な対応を要求する」
バンザイしながら物陰から出てきたのは、私と同じ年頃の少年だった。

「ふっふっふっ〜。それはこちらの気分次第かな〜〜」
「こら、怖がらせないの」
私は軽くレオーネの頭にチョップする。

「冗談だって〜〜。ところでユウナ。ジュネーヴ条約って何だい?」
「オレもそんな条約は知らん!」
「ああ……もう、わかったわ。後で説明するから、ちょっとだまってなさい」

おーしえろ!とせがむ2人をあしらう。
それにしても、ジュネーヴ条約って言葉を使うぐらいだから、やっぱり彼は私と同じ世界のようね……

「ふむ……」

私達のやり取りから危険を感じないと判断したのか、いつの間にかバンザイポーズを止めて、観察しているようだ。
やがて、彼は口を開く。

「Yahman」
「……ねぇ、それって何語?」

「ん?パトワ語だ。ジャマイカの公用語で使われるじゃないか?」
「……どうして、パトワ語を使うのよ」

少し……いや、かなり嫌な感じがするわ……
彼は私達の服や髪を指さして答えた。

「黒、黄色、緑。これだけなら唯の偶然で片づけられるが、よく見るとわざわざ髪を緑に染めている。
 だから、ジャマイカ好きの一行だと思っただけだ」
「……」

はぁ……私の周りの男ってこういうのしか集まらないのかしら

【D-3とD-2の境界線/一日目/早朝】

【ミスターL@スーパーペーパーマリオ】
[状態]:健康、
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状態]
基本:悠奈のバカバカしい生き方とやらで主催共を叩き潰す
1:ユウナ・レオーネと行動を共にする
2:伯爵サマたちは一体何処にいるんだ?
3:ヒーロー……か
4:ユウナ!ジュネーヴ条約にジャマイカって何だ!?
[備考]
※参戦時期は6-2、マリオたちに敗北した直後
※悠奈からリベリオンズの世界について簡単な知識を得ました。
※名簿から伯爵さまたちが参加していることを知りました。
※悠奈から”拳銃”の脅威を知りました。
※レオーネからアカメの世界について簡単な知識を得ました。

467辺獄平安公演 修正 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 17:28:23 ID:2SqFhHp20
【藤堂悠奈@リベリオンズ Secret game 2nd Stage】
[状態]:健康 緑髪
[装備]:コルトパイソン@ リベリオンズ Secret game 2nd Stage
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2 予備弾数多め
[思考・状態]
基本:なるべく多くの人を助け、殺し合いを止める
1:ミスターL・レオーネと行動を共にする
2:目の前の男の子と情報交換を行う。……てか、私の周りに集まるのってこういうのばかりなのかしら
2:彰……私は……
3:殺し合いに乗っていない参加者達を一つにまとめる。乗った参加者は無力化して拘束する
4:もう少し、威力が低い銃もほしいわね……あと、逃走用の対策も練らないと……
5:たとえ、どんな状況でも挫けず信念を貫く
[備考]
※参戦時期はAルート、セカンドステージ突入語で修平達と別れた後
※緑髪に染めました。
※運営が死者を蘇らせる力を持っていると推測しています。
※ミスターLからスパマリの世界について簡単な知識を得ました。
※レオーネからアカメの世界について簡単な知識を得ました。
※金髪の男は簀巻きにするとケツイしました。

【レオーネ@アカメが斬る!】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(小)、
[装備]:ホープナックル@グランブルーファンタジー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2(確認済み、ライオネルなし)
[思考・状況]
基本方針:メフィス達、覚悟できてんだろね。
1:民の為にもう一度戦いますかね。正義のマッサージ師として。
2:アカメを探……さなくても大丈夫だよね。親友を信じろって。
3:帝具なしでエスデスとかは会いたくねーな! あっても会いたくねーな!
4:優勝するしかなくなったらどうしよ。いや、正義のヒーローが勝つって決まってる。
5:ねぇユウナ。ジュネーヴ条約にジャマイカって何?
[備考]
※参戦時期は死亡後(アニメ版意識ですが漫画版でも問題ないです)
 ただ漫画版であればライオネルと少し融合してるため状態表が変わります。
※悠奈からリベリオンズの世界について簡単な知識を得ました。
※ミスターLからスパマリの世界について簡単な知識を得ました。

【城本征史郎@トガビトノセンリツ】
[状態]:精神疲労(小)、ダメージ(中)、頭に包帯が巻かれている、
[装備]:スティッキィ・フィンガーズのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2(夕月×0〜1確認済み、はるな×0〜1確認済み、武器になりうるものではない)、スフォリアテッレ(箱入り)@クライスタ、伊藤大祐の首輪
[思考・状況]
基本方針:殺し合いに反抗する。
1:はるなの遺志を継ぐ。
2:目の前のジャマイカ一行と情報交換を行う。
3:はるな、夕月、アルーシェの知り合いを探す。特に城咲充優先かつ、前者二名の知り合いには謝っておきたい。
4:スタンドでできることを試そう。できて当然と言う認知が大事だ。
5:ついでにスタンドを使える奴がいるか探す、或いは警戒をしておく。
6:あっさりと終わったが、これでいい。語られなかった物語とは、そういうもので。
7:生きたまま首輪が外せるかを乗った参加者で試す。できないとは思うが。
8:首輪について調べておく。
9:……ふむ、生きて帰れたら生物学でも齧ってみるとするか。あ、パンドラボックスの齧るとは別の意味だ
10:二日目の昼にかなでの森博物館へ寄るとするか。互いに生きていればの話だが。
[備考]
※参戦時期は死亡後です。
※リベリオンズ、ブルーリフレクション、よるのないくに2の情報を得ました。
 ただしリベリオンズはDルートの為充、琴美以外の人物とは話が合いません。
※おおよそスタンドでできることを把握しています。
※マネーラ・ギャブロ・藤丸立香の情報を得ました。(簡単に)
※キヨスから零の情報を得ました。(外見と妹を探していることについてのみ)
※二日目の昼にE-3にあるかなでの森博物館に人が集まる情報を得ました。
※ロックの危険性について知りました。※爆発させる能力はスタンドによるものではないかと推測しています。

468辺獄平安公演 修正 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 17:28:46 ID:2SqFhHp20
・時間について 8章での状態表の案

【E-5の何処かの家屋/一日目/早朝】

【清棲あかり@へんなものみっけ 】
[状態]:健康
[装備]:ポケモン図鑑@ポケットモンスター モンスターボール×8 ひかりのドレス@ドラクエ7
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1 Eー3かねでの森博物館から持ってきたフィールドワークや解体用の道具(双眼鏡・ハイヒール(大型動物解体・調理用刃物)など) 火山灰(一人分の量)@血と灰の女王
[思考・状況]
基本方針:参加者たちの生きた証を記しこの殺し合いの出来事を風化させない
1:伯爵さまを探しつつエルピスと行動を共にする※ 南側EFGHを中心に
2:参加者の生きた証を集め、もしもの時は”託す”※作業の中心はポケモン図鑑に登録
3:ロック・鬼くびれ大羅漢(金髪の外人)に注意する
4:二日目の昼にはE-3のかなでの森博物館へ戻り、ギャブロ君達と合流して手にした情報を交換する
5:首輪の解除方法がないか、探しつつ考える
6:アルーシェさんがいるであろう場所へ向かう
[備考]
※参戦時期は原作1話 事故死したカモシカを博物館に持って帰ったところ
※ロックの危険性について知りました。征史郎との会話から爆発させる能力はスタンドの力ではないかと推測しています。
※マネーラ・ギャブロ・藤丸立香の世界について簡単に知りました。
※パンドラボックス(エルピス)に戦闘の指示を出すことが可能となった。
※トッペイとの情報交換でクライスタの世界観を大まかに把握しました。
※征史郎との情報交換でリベリオンズ、ブルーリフレクション、よるのないくに2の情報を得ました。
 ただしリベリオンズはDルートの為充、琴美以外の人物とは話が合いません。
※トッペイの治療により、本来の服装であるパーカーを足りない包帯代わりに使用しました。
※トッペイの治療でかなでの森博物館から持ってきたフィールドワーク用の包帯は使い切りました。治療に使える薬はまだあります。

エルピス並びにトッペイの状態表はとくに変化なし

469辺獄平安公演 修正 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/28(月) 17:29:23 ID:2SqFhHp20
以上が修正案です。
お時間があるときご確認の方よろしくお願い致します。

470 ◆ZbV3TMNKJw:2022/03/29(火) 00:05:09 ID:.Bw24gjw0
皆さま投下お疲れ様です!
感想は投下する時にします
堂島正、鹿目まどか、真島、結衣、プロシュート、ドレミー、梨花、ワザップジョルノ、童磨で予約します

471 ◆EPyDv9DKJs:2022/03/29(火) 00:26:23 ID:r0GJ0oGA0
修正内容一通り確認させていただきました。
時間についてですが私が厳格にしすぎた面はあると思ってますので、
氏のあかりたちについては簡易的な修正内容でいいと思います。

それと、態々修正案を出させておいて追加の確認をするのは、
かなり不躾なことではあるのですが、もう一つ気になったことが
拙作『ナイトメアパーティ』でギースは夕月たちの遺体から、そう遠くない位置で休息してるはずで、
あかりがエルピスの壊砲ティシアも使っていて、一切気づかないとはあまり思えなかったもので
そこについての回答、もしくは修正などがあればお願いします

しつこいようで本当に申し訳ありません
ただ回答次第で此方の投下の内容の変更が必要あると発覚したので、
確認を取っておきたかったのです

472辺獄平安公演 修正 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/29(火) 06:58:29 ID:BqPSURK20
確認ありがとうございました。
時間に関してですが、なるべく皆さんと乖離しないように心掛けていきます。

エルピスの壊砲ティシアについて
私としては、壊砲ティシアは攻撃ではなく死者を弔う使用でした。
壊砲ティシアは”この子はエルピス”で描写した通り↓
バシュ!バシュ!バシュ!

ガシャァァァァァン!!!
常設展示のガラスが割れ、標本が傷つく―――

キュイィィィィィン―――
―――ビームがはっ……
といったように威力の出力を絞れる武器(通常弾とレーザーといった)ですので、ドカン!という爆音というよりもバシュ!といった音の為ギースは気づかなかったという意図で書きました。
この回答でEPyDv9DKJsさんの作品の内容の変更が生じる場合は、墓ではなく、目を瞑らせる方向で修正いたします。

473白の■済(White Sa■vage) ◆EPyDv9DKJs:2022/03/29(火) 10:56:45 ID:r0GJ0oGA0
返答ありがとうございます
なるほど、そういうことでしたか
PSO2もまた十全なプレイができてなかったので、
そういう武器だったことには気づいていませんでした
描写については問題は特にありませんので、修正は必要ないですね
長時間お付き合いいただきありがとうございます。改めて投下お疲れ様です
私も手際や疑問点がありましたら遠慮なく言ってくだされば幸いです

というわけで投下します

474白の■済(White Sa■vage) ◆EPyDv9DKJs:2022/03/29(火) 10:58:33 ID:r0GJ0oGA0
 左目を完治させた完全者はあれからずっと南下し続けていた。
 破片を抜いた痛み、回復の遅さ。それらも合わさり時間をかなり使っている。
 祝福の杖も傷は治ったが疲労が回復しきってるわけではなく少し体が重いが、
 残るビブルカードとなるプロシュートは北の方角。美炎達と合流する恐れがある以上、
 一人で戦うのは得策ではないのもあって、彼女は南へと逃げるような形になっていた。

「治ったが……視力はまだ安定しないな。クソッ、大分手酷くやられたものだ。」

 今後の為に次の協力者、或いは伯爵の部下を見つけることの方が先決だ。
 美炎みたいに高速で肉薄されては、中距離の一方的な基本戦術が成立できない。
 剣客である不律に電光機関でも持たせたかのような出鱈目っぷりは、
 自分が転生で生きながらえてる出鱈目を棚に上げて思ってしまう。

「全く、魔女がこの体たらくとはな。」

 (彼女から見れば)たかが小娘に目をやられ、同行者も死んで支給品も消費した。
 これでもかと言うぐらいの敗戦とも言えるような結果は、いっそ笑えてくるものだ。
 魔女の肩書きに誇りを特別持っているわけではないものの、此処での初陣があの結果。
 少しばかりは自分に対して笑いたくもなるものだが、別に彼女は心が折れてなどいない。
 この程度で折れる奴が、旧人類抹殺なんて大それたことを考えるはずがないのだから。

(しかし、やはり早いな。)

 彼女はオアシスを練習しながら移動を続けていた。
 やれることははっきり言って多すぎるし、セッコのような異常な聴力や発想もできない。
 本来のオアシスの半分も発揮できてないとは言え、単純な運用でも強いのがオアシスでもある。
 スムーズな移動は特別機動力に優れない彼女にとっては大変ありがたいものだ。
 今の肉体は成人女性のアノニムであることもあって、泳ぎに難があるわけでもない。
 なので時間を消費してオアシスでの移動だが、彼女の足ではありえないぐらいに動いている。
 お陰でD-4を通り越して、いつの間にかE-4にまでたどり着いてしまっていた。

(して、これはなんなのか……だ。)

 その手に握られた漆黒でありながらも光輝く黒いハート。
 完全者が知る由もないが、世界を滅びへ導く力を持つコントンのラブパワー。
 伯爵が死んでから、彼の身体から飛び出すように出てきたこれが一体何か。
 少なくともこれは曰く付きであるのは間違いなく、これを聞くべき相手はただ一人のみ。

(奴と出会うしかあるまい。)

『まあ、もう少し生き延びてくれるのなら、少しぐらいは君とお話してもいいかもね。』

 伯爵を二度裏切ったとされるあの道化、ディメーン。
 奴が裏切るのであれば、おそらくこれが目当てのはずだ。
 これが何かを奴は知っているだろうが、それはそれとして油断できない。

『ンッフッフ〜、何の感慨もないかな。
 これで裏切ったのは二度目───おっと、
 彼は僕が裏切る前の伯爵だったかな? 知らないか。
 何にせよ、元々僕はこういう奴だからね。何もないさ。』

 裏切る前の伯爵、と彼は言っていた。
 つまり、彼は既に伯爵を裏切った未来から来ている。
 思い返せば僅かながら伯爵とナスタシアには情報の齟齬があった。
 あの時は多少のずれぐらいはあるものだと認識していたものの、
 どうやら場合によっては結構な時間差も確認できる様子が伺える。
 未来でディメーンは裏切ったが、何らかの理由で手に入れ損ねた仮説を立てた。
 コントンのラブパワーを手に入れるために参加者として招いた可能性は十分にある。
 他の主催者の連中の意向によって殺すことができず、自分の手に渡るように此方へと仕向けたか。
 恐らくメフィス達には内密だろうことから、主催者の権限を利用して強引に奪うことはしないだろう。
 とは言え、相手は此方より上の立場にいる。次出会うときは、より警戒しておかなければならない。

(む。)

 地面から顔だけを出しながら進んでいくと、
 一人の参加者と遭遇することになって様子を伺う。
 家が倒壊し、掘り起こされた死体が転がっている戦場だった場所。
 そこ佇む相手は乗ってるか、乗ってないか。どちらであっても変わらない。
 彼女にとって今の状況の為に必要な存在かどうか、それが重要だから。

475白の■済(White Sa■vage) ◆EPyDv9DKJs:2022/03/29(火) 10:59:46 ID:r0GJ0oGA0
「おい、そこのお前。少し話がある。」


 ◆ ◆ ◆


 ギースもまた休憩を優先としてE-4から動くことを選ばなかった。
 最初のエレンはともかくとして続けてレオーネ、夕月達と戦ってきたのでは、
 いかにギースでも、いかにヴァンパイアでも限度がある。連戦の疲労は蓄積していた。
 今一度、次の戦いに備える為に此処で一先ず休息としてある程度や住んでおくと、
 そういえば二人の支給品の存在があったことを思い出し、支給品の回収をしておく。
 東にいるとされる強者には興味はあるものの、あくまで彼は優勝、ないし主催を超える。
 その為に活動してるのであって、無暗に負けるかもしれない戦いをしたいというわけではない。
 とは言え、一方的な蹂躙もつまらないと言う面倒な性分ではあるが。

「……誰かが来ていたようだな。」

 遺体がない。
 すぐ近くに真新しい地面があり、疾風拳を叩き込む。
 死者の尊厳や冒涜などこの男に説いたところで何もない。
 地面は抉れて埋葬された夕月の遺体を見つけるが、その状態に少し訝る。

(支給品を持って行ってないだと?)

 夕月は埋葬されていたものの、
 デイバックも一緒に埋められている。
 まさかと思ってもう一つの、はるなの方も確認したが手つかずだ。
 僅かばかりにリボンがなかったりで容姿が違うだけで、余計に疑問を持つ。

(埋葬してリボンだけ手に取って去った……何がしたいのか。)

 凄惨な戦場を前に支給品を回収すると言う頭が回らなかったか。
 とりあえず支給品を漁るも、ランダム支給品の数は合わないことにも気づく。
 回収したものや捨て置いたもの、残骸も合わせたとしても支給品の総数が合わない。
 夕月はともかくはるなは一般人。誰かに武器を譲渡するのはあまり考えられないことだ。
 埋葬した相手がランダム支給品だけをかっぱらっていく、なんてことはあり得ない。
 それなら今後の為の食糧がある基本支給品も放置するわけがないのだから。
 別の第三者が奪うにしても中途半端な奪い方から、誰がやったかを察する。

「あの小僧、まだ生きていたな。」

 征史郎は一度はワープして逃げたところを見た以上は、
 あれが一回きりかどうかの判断は彼から判断はつかない。
 当たる直前にそれを使って逃げた可能性だって考えられる。
 自分と言う存在が残ってる状態で、道具を全部回収して逃げる余裕はない。
 そう考えれば当然だが、一方で逃げに徹した弱者になんぞ興味は全くない。 
 次に向かうべき方針としては、三人の仲間が向かうべきとされる東の方角だが、
 一方で休みを取ったので時間も経った。既にいないか終わってしまっているだろう。
 そういう意味では、言う程向かうことに彼は拘りを持っていなかった。

(確か、これだったか。)

 まだ彼の墓荒らしは終わってはいない。
 物言わぬ躯となった夕月の指にはめられた指輪を抜き取る。
 ヴァンパイアの影響で加減が難しくなってるのか、
 取る際には彼女の指を千切ることになるが特に思うことはない。
 彼女は戦う際に、この指輪が光ってから魔法少女らしい姿に変身して戦っていた。
 別に彼に魔法少女趣味などはない。これによって更なる力を目指してみたいだけだ。
 指輪を手にしたはいいものの、当然ながら夕月の華奢な指に合わせたサイズ。
 成人男性で鍛え抜かれたギースに合うはずがなく、身に着けることはできない。

(持っているだけで効果がある可能性もある。捨て置くのはやめておくか。)

 残念ながら指輪ははめないと効果はないのだが、
 そんなことを知る由もない彼に理解できるはずがない。
 指を引き抜いて指輪だけを懐にしまっておく。

「おい、そこのお前。少し話がある。」

 気配自体は感じていた。
 襲ってくれば即座に返り討ちにするつもりだったが、
 この惨状を前に話し合いをしてくるとは能天気か、
 或いは冷静な判断力を以って行動しているのか。
 少しばかり興味が沸いて話し合いに応じることを選ぶ。

476白の■済(White Sa■vage) ◆EPyDv9DKJs:2022/03/29(火) 11:01:08 ID:r0GJ0oGA0
「何だ? 小娘。」

「今の一部始終を見たが、貴様は乗った側だな?」

「それがどうした? まさか、お前も道徳を説くつもりか?」

 殺意の薄い女や殺し合いそのものを否定とする緑の二人。
 殺し合いだと言うのに甘い連中とすでに何度も出会ており、
 三度ともなれば流石に呆れててしまう。

「いや? 寧ろ私としては礼を言いたくもあるだろうな。」

「……ほう、貴様もこちら側か。」

「そういうことだ。」

 互いに相対すると同時にそれぞれ不敵な笑みで返す。
 ギースには戦うと言う選択肢もあるにはあったが、
 今は希少な情報を手に入れられる機会なのは事実。
 闇雲に行動するのも悪くはないが、人数はかなり多い。
 些細な見落としから危うく敗北しかけた先の戦いもあり、
 此処は一度戦うと言う選択肢を捨て、情報交換を望むこととする。

「何? ミスターLが?」

「外見の特徴から奴で間違いないな。」

 意外なことに伯爵の部下の一人であるミスターL。
 彼がまさか殺し合いを止める側と行動しているとは思わなかった。
 伯爵の生存の為に考えた結果か、或いは何かしらの理由があるのか。
 とは言え、伯爵の死を伝えれば彼も恐らくはこちら側になるはずだ。
 そこを考えれば、寧ろ集団に潜り込めてるのでいい手段ではないか。
 今後出会うことがあれば、よりうまく立ち回ることができるだろう。

「紅白の学生服の少女か……興味があるな。」

 完全者の情報にはギースの知り合いはいなかったものの、
 美炎が赤いオーラを纏った瞬間から動きが変わった情報に食いつく。
 変身でも守護霊でもない。また新たな力が確認できたわけだ。
 いくつこの世界には特異な力があるのか。楽しみで仕方がない。

「奴は北だ。既に集団を形成してる中、向かうつもりか?」

「……いや、今はやめておこう。
 私が今試したいのは一対一の戦いだ。」

 一瞬にして集団を倒してしまって大した力が試せてないし、
 暴走していたのもあって余り記憶に残ってないのもあった。
 なのでこの力を試したく、改めて戦いの場が彼は欲しい。
 とは言え厄介なこととして、ギースは比較的北から南下している。
 此処で北へ戻れば、途中此方を萎えさせた連中が何人もいるわけだ。
 今度は負けることはないだろうが、気分が萎える相手に今会う気はない。
 酷く気分がいい。ヴァンパイアとして覚醒し、理性を取り戻した今は。
 このヴァンパイアの力、どこまで通用するのかを試したくなっている。

「話は終わりだ。何処へでも行くんだな。」

 情報は手に入れた。なら此処で潰し合うのもいいが、
 優勝目当てなので参加者を減らすのであればそれでいい。
 力を存分に振るえる相手がいなくなる可能性があるのは少しばかり残念だが、
 彼女程度に倒されるようである連中など、そもそも相手にする価値もないだろう。

「そうだな。貴様が許すのであれば同行をしたいものだが。」

「下らん。一人で問題ない。」

 誰かと馴れ合うつもりはない。
 あくまで完全者は使えるから放置するだけ。
 肩を並べて戦うような間柄など、ギースには必要のない存在だ。
 ビリーのように使える部下を重宝すると言うのは一応あるが、
 それを完全者に当てはめることはないだろうし、肩を並べるとは言わない。

「何、其方が一対一のための露払い要因とでも思えばどうだ?
 私は別に、戦いを邪魔するつもりなど最初からないからな。」

「……そう来たか。」

 完全者の返しにギースは再び笑みを浮かべる。
 『一対一の戦いをしてみたい』と言う何気ない一言が、
 交渉材料として使われるのは、彼女がただの子供ではない証左となる。
 下手なことを言えば、厄介なことになりそうだと少しばかり警戒を強めておく。

(伯爵と違って人脈は余りなかったが、ここで戦力の確保はしておくべきだ。)

 前衛、或いは距離を取れる手段の確立。
 どちらかが欲しい完全者にとってギースは間違いなく必要だ。
 伯爵程の協力関係を望むことはできないが、相性としては恐らく上になる。
 既に二人殺しており、しかもこの周囲のあれ具合。相当な力を持つだろう。
 物理的な力だけであれば、恐らく伯爵よりも強い部分はあるはずだ。

477白の■済(White Sa■vage) ◆EPyDv9DKJs:2022/03/29(火) 11:01:30 ID:r0GJ0oGA0
「いいだろう。私を相手に怯えも恐怖もない、
 強かな貴様を評価する。ついてくるなら勝手にするがいい。
 だが、貴様がどうなろうと助ける気はない。覚えておくことだな。」

「お互い様だろう? それに、私は貴様を撃つつもりはないさ。」

 一応その言葉自体に今のところ嘘偽りはない。
 利用価値がなくなったと判断したその時が終わりなだけで、
 価値がある以上はそのようなことをするつもりは毛頭なかった。

(精々利用させてもらうが、それは向こうも同じだろうな。)

(……とでも考えているだろうな、互いに。)

 伯爵の時と同じで、互いにいつかは始末する相手ではある。
 あくまで目指すのは一つだけの席、そしてその先の主催を超える為。
 殺し合いはそこに到達する為の通過点に過ぎないのだ。二人にとっては。
 二人が人の死に頓着することは決してない。

(だがいいだろう。その座興、乗ってやる。)

 自分を利用しようとする点はホワイトと同様だが、
 催眠術ではなく交渉事に持ち込んだ。その点は評価していた。
 ホワイトにはそんな度量も考えもなかったのと、此処での彼の戦績。
 そこも相まって、彼の評価が低いと言うのも一因ではあるか。



 次なる共犯者を見出す完全者。
 しかし雁(ギース)は世界中を羽ばたく鳥。
 そんな存在を御するのは、やわなことではないだろう。
 完全者にとっての救済(Salvage)になるか、
 それとも獰猛(Savage)な雁の餌食にされるか。

【E-4/1日目/早朝】

【完全者@エヌアイン完全世界】
[状態]:左目失明(治ったがまだ少し視力が安定しない)、ダメージ(中)、魔力消耗(中)、疲労(小)
[装備]:神楽の番傘@銀魂、ビブルカード×1(プロシュート)@ONEPEACE、祝福の杖@ドラゴンクエスト7、オアシスのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品一式、コントンのラブパワー@スーパーペーパーマリオ、ノワール伯爵のデイバック(基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2(確認済))、ノワール伯爵の首輪
[思考・状況]
基本情報:プネウマ計画の邪魔はさせん。メフィスとフェレスの扱いは対策が出来上がるまで保留
 1:ギースと行動する。いずれは出し抜くが。
 2:ビブルカードについては保留とする。
 3:エヌアイン以上に適した器の捜索。期待値は上がった。
 4:首輪の解除手段の模索。
 5:ムラクモを首輪を解除される前に始末しておく。
 6:童磨に警戒。
 7:伯爵の部下でも探しておくか。特にミスターLは必須。
 8:他に利用できる連中を手に入れておく。
 9:あの小娘(美炎)、まさかエヌアインのような存在か?
10:ディメーン……信用は出来ないが、利用はできるな。
11:ミスターLの状況は利用したい。

[備考]
※参戦時期は不明。
※モッコス死亡により、完全者の所持するビブルカードが消滅しています。
※ある程度生き延びたらディメーンから接触することがあるかもしれません。
※ギースと情報交換しました。

【ギース・ハワード@餓狼伝説シリーズ】
[状態]:ダメージ(中・再生中)、ヴァンパイア化(現在は人間態)、割とハイ
[装備]:
[道具]:基本支給品一式×3(自分、はるな、夕月)、ランダム支給品×0〜1(確認済み)、スモークボール@大貝獣物語2×4、黒鍵×5@MELTY BLOOD、夕月の指輪
[思考・状態]
基本:殺し合いに乗り優勝する。あわよくば主催すら越えて最強を示す
1 :完全者を利用する。お互いそのつもりだろう?
2 :カインにはそれなりの期待
3 :ロックは少し程度は期待。
4 :ホワイトはどうでもいい。
5 :緑達には付き合ってられない。
6 :東に興味はあるが優先度はそれほどでもない。
7 :ヴァンパイア、実によき力だ。
8 :他の特異な力も手に入れたい。紅白の女(美炎)は興味がある。
9 :ミスターLか。出会った際は利用させてもらおうか。
10:指輪か……使えるか? 使えてもあの恰好では困るが。

[備考]
※参戦時期はリアルバウト餓狼伝説での死亡後です。
※火山灰を浴びたことでヴァンパイアになりました。
 ヴァンパイア態は原作の阿久津潤に近い鳥を模した姿で、飛行能力もあります。
 (ただしなりたてなので安定した飛行ができるかどうかは別)
 現時点では能力は不明、D・ナイトは現時点では使用できません。
 またヴァンパイア態のレイジングストームは餓狼伝説3潜在版のように常に赤くなります。
※完全者と情報交換しました。

478白の■済(White Sa■vage) ◆EPyDv9DKJs:2022/03/29(火) 11:02:27 ID:r0GJ0oGA0
※E-4に以下のアイテムが落ちています
 一人分の火山灰@血と灰の女王(それを収納していた空の袋)
 柄のみの黒鍵@MELTY BLOOD
 からっぽのピストル@Undertale
 六花の水弩の残骸@御城project:Re

※E-4のはるなと夕月は埋葬されていますが、少しだけ掘り起こされています。
 また夕月の方は指がちぎれた状態で近くに転がってます

479 ◆EPyDv9DKJs:2022/03/29(火) 11:02:52 ID:r0GJ0oGA0
投下終了です

480辺獄平安公演 修正 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/30(水) 00:04:21 ID:8JGCSvuM0
投下お疲れ様です!
白の■済(White Sa■vage)
(持っているだけで効果がある可能性もある。捨て置くのはやめておくか。)
↑ふと、リフレクターの格好をしたギースを想像したらちょっと吹いちゃいました(笑)
完全者は新たな同行者に出会いましたが、伯爵同様互いに利用をしての関係はまた対主催とは違う魅力を感じさせられます!

また、こちらこそ色々とお手数をおかけしました。
今後も読まれた際に違和感が生じぬよう心掛けてまいります。
あかりの簡易的な修正について報告いたします。
あかりの状態表に↓
※フィールドワーク用の空の容器に火山灰が入っています。
と追記した修正とします。

481 ◆s5tC4j7VZY:2022/03/30(水) 00:28:16 ID:8JGCSvuM0
また色々と不備があった作品でしたが感想ありがとうございます!

辺獄平安公演
八将神なので、強さマシマシとしました(💦)
DISCの下りはさとう自身は一般人の枠であるため、拾おうと思い書いたので、そう言っていただき嬉しいです。
八将神Pは実はLiarMaskでのメフィスと姫和のやり取りから着想しました。
中々いいと感じてもらえて嬉しいです。
また、今回個人的に一番の不安と緊張は征士郎でした。
コンペとこれまでの話の征史郎からかけ離れないようにと神経をとがらせました(笑)
>あの双子に”どうも、クソゲーを遊ばせてくれてありがとう”と鼻で笑ってカンチョ―することだ。

此処最高に好きです
↑ありがとうございます!実は始めは少し違う台詞だったのですが、投下前に”いや、違うな……”と直したので、直してよかったと実感できました!
今回、みりあの参戦時期が妹が生まれる前だったので、アイドルを軸に考えました。
ラストは、現実のコンサートも参加者と理由が違えど非参加者がいるので、あかりと別れた征史郎が別の参加者に出会うで〆ようと思い、位置関係から悠奈達を選び、若干オチ風にまとめました。

嵐を呼ぶ辺獄平安大合戦
軸はしんのすけ、アリサ、マサオだったのですが、同行者や周辺からあれよあれよと人数が増え、私なりのクレヨンしんちゃんの劇場版となりました(💦)
当初の案では死者がでる予定だったのですが、私自身がひよってしまいました(💦)
結果的に第二陣に先送りしちゃいました……こんな引きで終わらせた私が言うのもなんですが、果たしてどうなるか……です。

482 ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/11(月) 22:48:55 ID:AyrgHGOM0
すみません、累の父を追加して予約を延長します

483 ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/15(金) 23:43:36 ID:YB2G1nFQ0
すみません、前編だけですが投下します

484英雄の条件(前編) ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/15(金) 23:45:10 ID:YB2G1nFQ0


「答えてください...堂島さん...!」

投げかけられる懐疑の目に、堂島の心臓が冷え、喉が渇いていく。
見るからに重体で気を失っているワザップジョルノ。無情にも両腕と首を断たれた益子薫。灰となっていく佐神善だったモノ。流血に沈む三島英吾。
知った顔も知らない顔もある中で、共通しているであろう一念は『堂島正がこの惨劇を招いた』という事実だ。

この現状に対して、堂島は。

「...わかった」

嘘偽りなく話すことにした。
自覚できるほどに疲弊しきっている心身とは裏腹に、彼の思考は冷静に働いていた。
彼は医者だ。手術を失敗し、遺族に現実を伝える時には感情的になることは許されない。
その経験が、この状況に於いても自白を可能とするだけの冷静さを取り戻させていた。

堂島は語る。

まどかと真島が離れた後、自分と善がエスデスと、ジョルノがミスティと戦いを始めた。
両組とも優勢になったところで、ミスティ達が雷を落とし、それを受けたジョルノは気絶。
洗脳された薫が善の首輪を引き殺害し、後に自分が彼女を殺した。

遅れて加勢にやってきた梨花と英吾がミスティ達と交戦を開始し、英吾が敗れ、その後に復帰した自分がミスティを殺害。
自我を取り戻していたエスデスはこの場は戦いを収め去っていった。

多少の簡略化はあれど、大まかには事実を語ることができた。

この自白を聞いた六人。

「どおおおおおおお」

古手梨花は、己の知らない空白の期間を知るも、ボミオスの杖の効果がまだ切れず、彼を庇う言動すらできなかった。

「堂島さん...」

鹿目まどかと真島彰則は顔を見合わせ警戒を解く。
彼らが堂島を責めるような言葉を持つことはできなかった。
自分の仲間たちが傷つき斃れていったのも、誰の良し悪しではなく、ただの戦いの結果に過ぎない。
全滅すら危うかった局面で、生還者が三人もいるというのに誰を責められようか。
むしろ、累の父との決着を着けられなかった自分たちの不甲斐なさを恥じるばかりだった。

「......」

プロシュートとドレミーは未だに警戒の姿勢を解いていない。
前者三人にとっての堂島正は紛れもない味方なのだろうが、彼ら二人にとってはなんてことのないただの殺し合いの参加者でしかない。
堂島が嘘を吐いていない、本当はミスティ達と組んでいる、といった可能性も頭から除外してはいない。
なによりも、堂島という男のある一点が不信感を拭わせてくれない。

「じゃあ、なんで」

そして荻原結衣は。

「なんで益子さんが死ななくちゃならなかったんですか」

本音を零さずにはいられなかった。

もしも堂島が怒りを露わにし、ただ『益子薫が善を殺した』という事実だけを伝えていれば、結衣も己の本音を嚙み殺すことができただろう。
けれど、堂島は冷静だった。薫が洗脳されていたことを冷静に伝えた上で事実を話してしまった。
そんな彼の姿から、結衣は『堂島は洗脳されていた薫を容赦なく殺した』という結論を抱かずにはいられなかった。

485英雄の条件(前編) ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/15(金) 23:46:29 ID:YB2G1nFQ0
「荻原、それは...」

結衣が堂島を責めると察した真島は、咄嗟に口を挟もうとする。
薫が善を殺してしまったのは洗脳を受けていた為。その事情から、薫を悪だと断じるつもりはない。
しかし、少ない交流の中で真島とまどかは知っていた。
殺し合いに乗りかけた堂島が、善の存在を知ることで思いとどまったことを。
それだけで、堂島正にとって佐神善という存在がどれほど大きなものかが窺い知れた。
だから、堂島が感情に逆らえず薫を切ってしまってもおかしくはない―――そう擁護しようとしたところ、ドレミーが真島の唇に人差し指を添えて黙らせる。

「ッ?」

疑問符を浮かべる真島にも取り合わず、ドレミーはプロシュートと共に、堂島への警戒心を最大限にまで引き上げる。

「堂島っつったか。オメーがこの状況を生んだ訳じゃあねえってのはわかった。オギハラのやつはともかく俺もドレミーも、洗脳されてたとはいえ仲間をブッ殺されたのが我慢ならねえって気持ちは理解できてる。だが」

カチリ、という音と共に、プロシュートは堂島へと銃を突きつけた。

「オメーがさっきこいつに向けた殺気。ありゃあなんだ?俺たちにも納得がいくように説明してくれや」

それはこの戦いに関係のない第三者の立場であるからこそわかったことだ。
堂島正を信じたいというまどか達とは違い、極めて公平かつ冷静に場を見ていたからこそ、堂島が微かに放った殺気を捉えることができたのだ。

プロシュートの言及に、結衣は一層堂島への拒否感を強め、真島とまどかも困惑を顔に出す。

「私は...」

言いかけて、口をつぐむ。
堂島とて、本気で結衣を殺したいわけじゃない。
ただ、ほんの少し苛立ち黙らせたいと思ってしまっただけのことだ。
けれど。
もしも結衣が薫に助けられたことを零していなければ。
もしもプロシュート達が来ていなければ。
本当に自分は殺意を抑えられたのだろうか?

『無理ですよ、貴方には』

声が響く。
ずっと堂島に纏わりつく死者の声が。

『貴方に正義なんてものはない。ただただ憎悪に身を委ねて、感情任せに剣を振るう。だから彼女だって殺そうとした』

(黙れ)

『認めなさいな。貴方はヒーローなんてなれない。ただ殺すことしかできない殺人鬼だと!』

(黙れ―――ッ!!)


「こらこら。そんなに大人数で詰め寄っちゃいけないよ?彼も困っているだろう」

486英雄の条件(前編) ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/15(金) 23:47:16 ID:YB2G1nFQ0

不意に放たれた声。
今の緊迫とした状況には全く似つかわしくない呑気泰然とした声だった。

「ひいふうみいの...いやあ、凄い雷が落ちてたからもしやと足を運んでみたが、俺の予感は間違っていなかったみたいだ。
再生が終わるまで誰とも会えなかったというのに一気に8人もの参加者に会えたのだからね。俺は童磨っていうんだ。君たちの名前は?」

人懐っこい笑顔とぺらぺらと捲し立てる童磨に、堂島へと向けられていた注意が全て集中する。
誰も答えを返さない。それどころか、単身でこうも平然と割って入ってきた彼に警戒心は嫌でも引き上げられる。

「あれえ?困ったなあ、名前を聞かせてもらわないと救う時に俺が覚えておくことができなくなっちゃうじゃないか」
「救う...?」

救いという単語に思わずまどかが聞き返すと、童磨は変わらぬ笑顔を浮かべながら説明する。

「そう。俺は万世極楽教の教祖をやっていてね。こんな殺し合いに巻き込まれて君たちは怯え恐れているんだろう?だから知らない誰かの影におびえ、こうして集団で排除しようとしてしまう。
そんな君たちのような迷い人の想いを、血を、肉を。しっかりと受け止めて救済へと導き高みへと導く。それが教祖の使命だと思うんだ」
「...要は、なにがしたいんだお前は?」
「救いたいんだよ。誰もが死ぬまでに怯え、苦しみ、怖がるから俺が食べてあげるんだ。君たちの苦悩を俺が受け止め共に永遠の刻を生きていく。それが俺の」

童磨の言葉は最後まで紡がれなかった。
タァン、と鈍い銃声が響き、彼の頭部を爆ぜさせたからだ。

「プロシュート、あんたなにを」
「黙ってろ」

まだ臨戦態勢に入っていない童磨を撃ったことに詰め寄ろうとする真島だが、プロシュートは一瞥もすることなく空いた腕で制する。

「もう、俺の話はまだ終わってないだろう?」

頭部が弾けた筈の童磨の身体がグリン、と起き上がり、撃たれた部位が瞬く間に修復していく。
その異様な光景に、プロシュート以外の面々も理解する。
この男は敵であり怪物であると。

真島は拳を構え、まどかは弓矢を作り出し、ドレミーは結衣を庇うように弾幕を浮かばせ臨戦態勢に入る。

「あらら、なんだかすごく嫌われちゃったなあ」

残念そうに眉をハの字に曲げる童磨。
しかしその実、彼は微塵もそんな感情を抱いていない。
否、抱けないのだ。鬼になる前からそういう産まれ方をしてしまったから。
だから情報収集が失敗してもそういうものだと割り切り、もう終わったことだとすっぱり切り捨てられる。

「じゃ、戦ってみよっか」

だから、彼らからの信頼を改めて得ようとするよりもさっさと『救って』首輪なり栄養なりにしてしまった方が効率が良いと即座に切り替えられる。

487英雄の条件(前編) ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/15(金) 23:48:12 ID:YB2G1nFQ0
「まずは様子見...」
「いきます!」

ドレミーとまどかが、共にチラと視線を合わせ、童磨目掛けて弾幕と弓を放つ。
迫りくる球状のモノと桃色の弓が迫ろうとも童磨は微塵も臆さない。
「うわあ、すごいなあ」という感想とは裏腹に、思考も感情も微塵も揺らいでいない。
眼前にまで迫ったところでようやく対の扇で払い落す。

その直後。

「シッ」

距離を詰めた真島のジャブが童磨目掛けて放たれ、肉を打つ音が響く。

「俺の友達ほどではないけど早い拳だね」

隙を突いての一撃。にも関わらず童磨は微塵も動じない。
褒める言葉とは裏腹に、今のジャブは童磨になにも残していない。
それはジャブを打ち込んだ真島が一番よく理解していた。

(このまま踏み込むのはマズイ!)

咄嗟に背後に飛び退き距離を取る真島。
だが、気づいた時にはそれにピタリと張り付くように童磨は真島の懐に入り込んでいた。

(速い!)
「そうれお返し―――」

真島のジャブの要領で扇を振るおうとした童磨だが、迫るモノを察知し咄嗟に顔を傾ける。
僅かに遅れ、童磨の顔のあった場所へと、横合いから銃弾が通り過ぎた。

「チッ、外れたか」
「どっちでもいいですよ。当たろうが当たるまいが大した傷にはならないらしいので」

プロシュートの弾丸を避けて微かにできた隙を突き、ドレミーの弾幕がプロシュートの背後から放たれ、童磨の脇腹へと着弾する。

「真島さん!」

間髪入れず、プロシュート達とは逆の方向からまどかの弓が童磨の逆脇腹へと当たる。
微かにできたその隙を突き。

「はあああああああっ!!」

真島の渾身の右ストレートが童磨の顔面を打ち、後方へとたたらを踏ませた。

「こいつでトドメだぜ...『グレイトフル・デッド』!こいつをカラッカラのミイラにしろ!!」

無造作に投げ出された右腕を、プロシュートのスタンド『グレイトフル・デッド』が掴み、能力を発動する。
周囲にガスを撒くのではなく、腕から直接流せばものの数秒で戦闘不可能の老体へとなり果てほどなくして死に至る。

488英雄の条件(前編) ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/15(金) 23:48:57 ID:YB2G1nFQ0
「うん?奇妙な感触だ。血鬼術とも違うようだね。興味深いなあ」
(ッ、この野郎、俺のスタンドが効いてねえ...!?)

だが、童磨はケロリとした表情でグレイトフル・デッドを観察していた。

この場にいる童磨以外の参加者は累の父という鬼を知っていたが、しかし、アレは見るからに怪物であり人間的な知能のある生物には見えなかった。
そんな累の父と、言葉を捲し立てへらへらと笑みを浮かべる童磨を同じ種族と初見で判断できる者が誰一人としていなかったのは仕方のないことだろう。

「妖術じみた技で俺の注意を引いて、何の力もない非力な彼の拳で翻弄し、最後に不思議な人形で俺にトドメを刺す。いい連携だったよ!今度は俺が見せてあげなくちゃね」

―――血鬼術 蓮葉氷

童磨が左の扇が振るうと、蓮の葉を模した氷の彫像がグレイトフルデッドとプロシュートへと降り注ぎ襲い掛かる。

「ぐおっ...!」

これ以上童磨の腕を掴んでいる旨味もないと判断したプロシュートは咄嗟にグレイトフルデッドを防御に回すも、その全ては防ぎきれず身体の至る所が凍てつき、あるいは痛みと共に肉が切れ出血する。

「君たちにはこれだ」

―――血鬼術 散り蓮華

遠距離から攻撃するドレミーとまどかには、扇から放たれる細かな硝子のような氷の花弁を放つ。

「ッ!」
「きゃああっ!」

広範囲かつ高速で飛来するソレは躱すことは非常に困難であり、距離が空いているにも関わらず二人は避けきれず被弾を許してしまう。

「そして君にはこれだ」

―――血鬼術 寒烈の白姫

そして距離の近い真島目掛けて、二体の氷で出来た女性が氷の息を撒き散らし広範囲に周囲と真島を凍てつかせる。

「うおあああああっ!」

フットワークを氷の足場で奪われ、特殊な力も持たない真島は両腕で己の身を庇うのが精いっぱいで、身に走る激痛に悲鳴をあげずにはいられなかった。

489英雄の条件(前編) ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/15(金) 23:49:43 ID:YB2G1nFQ0
「そんな...!」

一連の戦いを見ていた結衣から零れ出たのはその言葉。
それらはまさに一瞬の出来事。
ついさっきまで共に戦っていた四人が瞬きをする間に傷つき倒れてしまっていた。
まさに悪夢としか言えない光景だ。

「さて、と」
「ひっ!?」

ぐるりと向けられた童磨の視線に、結衣は恐怖で喉を鳴らし、まだ動けない梨花を護るように抱きしめつつ身体を震わせる。

「そんな怖がらないでよ。俺はみんなを救いたいだけなんだからさ」
「で、でも、あなたの救いって食べて殺すことなんでしょう!?あたしそんなの嫌ですよお!」
「ただ食べるんじゃないよ。例えば、そこに転がっている彼ら。彼らはいま痛くて苦しいはずだ。けど、ここにいるのが俺じゃなくて他の参加者だったらどうなるだろうね。
もっと甚振って殺されるかもしれないし、殺した奴は彼らの事なんてなにも覚えていないかもしれないし...殺されるよりも酷いことをされるかもしれない」

殺されるよりも酷いこと―――その言葉にミスティ達に壊された薫の顔が浮かび、結衣は顔を曇らせる。
そんな彼女に構わず童磨は己の高説を垂れ流す。

「これが殺し合いならずっとそんな恐怖におびえ続けなくちゃいけないだろう?だから俺が君たちの全てを覚えて受け止めてあげるんだ。
そうすれば彼らが悲しみにも苦しみにも怯える必要がなくなる。俺と共に永遠の時を生きていけるんだ」
「...意味わからないです。あたし、あなたとずっと一緒になんていたくありません」
「えーっ?そんなこと言われると傷つくなあ。でもまあ、解ってもらうために頑張るのも教祖の務めだしね」

その言葉と共にフッと童磨の姿が消える。

「え?」

それは何の種も仕掛けもない、純粋な身体能力による抜き足。
ただそれだけで結衣の目は彼の姿を見失ってしまった。
だから、童磨が既に彼女の背後へと回っていることに気づかなかったし、童磨が結衣を切り裂かんと扇を振りかぶっていたことには当然気づいていない。
そして扇が振り下ろされるその瞬間。

―――カッ

剣閃が奔り、童磨の腕が切断される。
堂島の剣が結衣を護ったのだ。
童磨はあまりにもあっさり腕が斬られた違和感から飛び退き、その間に割って入るように堂島は結衣に背を向け立ちふさがる。

「...大丈夫かい」

なんのことはない、労わりの言葉。
けれど。
結衣にとって堂島は未だ薫を殺し、自分も殺そうとした殺人者にすぎず。
結衣は向けられる視線に思わずビクリと震え、恐怖の入り混じる目で堂島を見てしまった。

「......」

その拒絶の視線にも堂島はなにも言わず、周囲を見回してから童磨へと目線を戻す。

「...どうやら、きみと戦えるのは私一人のようだね」
「そうだね。この手ごたえからして、きみが一番強いし、この中で唯一俺に傷をつけることができるみたいだ」

斬られた腕を再生しつつ、童磨はへらへらと浮かべる笑顔とは裏腹に場を観察する。

(彼の剣はただ『よく斬れる』というわけじゃなさそうだ。事実、俺の骨を断つ際にあまりにも剣筋に淀みがなかった。普通は骨という硬い部位を斬れば大なり小なり、軌道がブレるものなのにね)

自分が負けるとは微塵も思っていないが、鬼殺隊の下手な柱よりはよっぽど手ごわそうだ。
おそらく戦闘が始まれば他の者を狙う余裕もなくなるだろう。

(今のうちに数を減らしておくか)

そう判断するや否や、一番ダメージを負っている真島へと向けて氷柱を放つ。

「真島さん!」

真島を護るため、まどかは矢を放ち氷柱を破壊した。
その隙に。

童磨は既にまどかの背後へと回っていた。
まどかがそれに気づいた時には既に遅く、回避も防御も間に合わない速さで扇が振るわれる。

それを察知していたかのように、堂島もまた既に童磨の傍にまで迫っており、剣を振るうことで童磨の攻撃を中断させた。

「ッ、堂島さ...!」
「君たちは降りろ。足手まといだ」

それだけ言って。
堂島はこの場の誰にも一度ととて振り返ることもなく、童磨へと突貫していく。
放たれる礫や氷柱を切り払い、或いは避けつつ、堂島と童磨は移動しながら戦い―――あっという間にまどか達五人を置き去りに彼方へと去っていってしまった。

その遠ざかっていく姿を止めることは誰にもできず、ただ見届けることしかできなかった。

490英雄の条件(前編) ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/15(金) 23:50:14 ID:YB2G1nFQ0


「......」

先ほどまでの喧騒が嘘のように静寂に包まれる。

「いやはや...彼に助けられてしまいましたね。アレはあまりにも相手が悪すぎました」
「...チッ」

敗北を喫したにも関わらず相も変らぬ軽い調子のドレミーの言葉に、プロシュートは舌打ちする。
別にドレミーに対して怒っている訳ではない。
彼女は正しい。
童磨の氷の技にはグレイトフル・デッドは無力であり、そもそも老化ガス自体が効果が薄い。
その技の多彩さには、まどかの弓とドレミーの弾幕では対処しきれず、頼みの綱の身体能力は誰もが食い下がることすらできなかった。
そのうえで高速再生能力まで有している。
童磨がまだこちらの様子を観察していたから、四人の首は繋がっており、その気になっていれば既に堂島を除く者たちの死体が積み重なっていたのは間違いない。
それは誰もが自覚していた。
だからこそ、スタンドを封じられた程度でなにも為す術がなかった己の無力さに、プロシュートは苛立ったのだ。

「...あの〜、あたしたち、どうすればいいんでしょう」

恐る恐ると言った様子で結衣が手を挙げる。
いつでも能天気な彼女も、この時ばかりは普段の調子で淀んだ空気を戻すことはできなかった。

「...ひとまず、やれることをやろう。ワザップの治療と、古手の杖の効力切れと...三島の埋葬だな」

ひとまずは音頭をとる真島だが、その声には覇気はない。
当然だ。
辛うじて食い下がれていた累の父と違い、今回はまさに一蹴された上に他三人の足を引っ張っていた。
流石にこの現状には精神的に参ってしまっていた。

「......」
(足手まとい...)

まどかの脳裏に、堂島が残した言葉が反芻される。
別に、そう言われたことを根に持っている訳じゃない。
事実、まどかが援護しようとしても実力差がありすぎて助力は難しかっただろう。
それは認めている。
認めているからこそ、足を止めてしまう

―――コロネを除いた俺たち三人の中じゃあ嬢ちゃんが一番の腕っこきなんだ。頼りにしてるぜ魔法少女

そう、英吾に優しく頭に手を置かれたのも遠い記憶のように思えてくる。
どれだけまっすぐに生きていたいと思っても、どれだけ人を救いたいと思っていても。
力が及ばなければなにもできない。なんの意味もない。

(わたしって...なんなんだろう...)

仲間を誰一人救えず。
止めたいと願っていた堂島は自分一人でも立ち直っていて。
自分の横やりで惨劇を連鎖させてしまい。
いまも誰かを救うことなど出来やしない。

―――どろり。

その感情の淀みが彼女のソウルジェムを濁らせ、表情が陰っていく。
まどかの異変に真島が気づき、声をかけようとしたその時だった。

―――バサリ

羽の音が響いた。

地獄の底から沸き上がるような、昏く悍ましい重厚な羽音が。

491英雄の条件(前編) ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/15(金) 23:51:01 ID:YB2G1nFQ0



「お...おおお」

木々に押しつぶされていた累の父は、涙を流しながら呻いていた。
それは悲観や苦痛によるものではなく。
子の成長を喜び歓喜する親を思わせる慈愛の涙。

彼は見た。
己から少し離れた遠いところで、聳え立った巨大なモノを。

「家族...守る...!」

例え背格好が変わっても息子には変わらない。
家族を想う気持ちではち切れんほどに、彼の筋肉が膨れ上がり、のしかかる木々を揺り動かしていく。

「オレに...家族を...」

噴火寸前の火山のように、木々がガタガタと震え、徐々に累の父の身体が持ち上がっていく。

「守らせろオオオオオオオォォォォォ!!!」

そして呪縛から解かれるように―――木々が吹き飛び、累の父の身体が赤き月に照らし出される。

「ヴァアアアアアアア!!」

雄叫びと共に、累の父は走りだす。
全ては、愛する家族を護るために。

492英雄の条件(前編) ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/15(金) 23:51:30 ID:YB2G1nFQ0


ソレは主催側の者たちも存在は認識していた。

選別する際に、八将神の立場に於こうかとも思った。

しかし―――魂に触れたところで思いとどまった。

こいつに下手に手を出せば『食われる』。そう理解したからだ。

しかし彼らは危険だと思うのと同時に考えた。

果たしてコレに―――佐神善という男の皮を被ったナニかに、未だ底知れぬソレに我らが齎した呪縛は通じるのか。

そんな興味本位での実験。そして期せずして、『佐神善』という人格は首輪の爆発により消し飛ばされた。

それによって、『彼』はこの会場に顔を覗かせた。

『彼』の世界の、最も熱い炎の中から、最も冷たい海を越え。

灼かれ、凍え、全身から血を流しながら生まれたモノ。

形を変え、如何な生物にも届く闘争心を牙に、殺し食らい、取り込む。

『佐神善』という『人』を真似たソレは、いま己が食らうべきモノを求めて―――駆け出し、牙を剥いた。

493 ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/15(金) 23:52:13 ID:YB2G1nFQ0
前編投下終了です
続きは近いうちに書き上げます

494英雄の条件(後編) ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/25(月) 20:21:38 ID:YgZGbEJo0
大変遅くなりまして申し訳ございません。
期限の超過を深くお詫びいたします
投下します

495英雄の条件(後編) ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/25(月) 20:22:12 ID:YgZGbEJo0
―――血鬼術 枯園垂り

童磨の対の扇が振るわれ湾曲した氷柱が連続して放たれる。
放たれた後も直ぐには消えない氷柱は、近接戦においては相手の技をけん制できるため非常に有効なものである。
だが、堂島の剣の前では無意味。
振り下ろした剣の軌道を全く削ぐことなく氷柱は切断される。

(やっぱりなんの抵抗もないな。ただ斬れるだけならこうはならない)

堂島は打ち払うでも薙ぐでもなく、純粋に振り下ろしている。
まるで氷柱の壁が無意味だと知っているようにだ。
己の剣に対して絶対の自信を持っているかあるいはそういう技なのか。

「いいね。興味が湧いてきた」
(とりあえず剣潰しとこ)

―――血鬼術 凍て曇

扇を一振りすると、凍てつく粉が立ち込め、たちまちに堂島の剣に纏わりつき凍り付かせる。
剣は刃の部分を当てて初めてその真価を発揮する武器だ。
これでは切れ味が落ち、その価値を発揮するのは難しくなってしまう。

(さて。ここからどうするかな?)

堂島は主に剣での戦闘を主体としている。
それを防がれた時、彼はどうするか。童磨は観察しつつも氷柱を放つ。

剣が凍り付いた時、無理に剝がそうと壁にでも叩きつければ、氷は破壊できても剣だって耐えられるかはわからない。
だが堂島は―――躊躇うことなく、剣を地面に叩きつけ氷を破壊し、迫る氷柱もあっさり切り捨てた。

(なるほどね)

最短距離で間合いを詰め、横なぎに振るわれた剣に腹を裂かれ、詰まっていたモノがはみ出る。
にもかかわらず、童磨は冷静に堂島の顔に目掛けて粉状の氷を放ち視界を防ぎ、その隙に飛び退き一旦距離を置いた。

「やっぱりね。その剣、血鬼術と同じだ。支給品じゃなくて、自分の力で生み出したものだろう?」

零れた内臓が巻き戻されるように高速で体内へと戻っていく様に、堂島は思わず足を止める。

「自分の能力だからそうやって武器が壊れるかもしれない対処法を平然とやれる。もしここで配られた、よく知らない支給品だったらそんな雑には扱えないからね。
そして今まで俺の氷柱に対しても、硬度とかをさして考慮せずに剣を振り下ろしてたところから、能力は『万物両断』ってところかな。
ただの剣の精製じゃあ、俺とやり合えるきみの実力と不釣り合いだし、斬られた俺自身には特に異常もないからね」

瞬く間に元の身体に戻る童磨を見て堂島は思う。
再生能力と固有の能力を有した異形。自分たち吸血鬼(ヴァンパイア)とこの男は似ていると。

「いやあ、それにしても驚いたよ。俺とよく似た参加者がまだいたなんて」
「似ている...?」
「俺がやってくる前から欠けていたその腕、ゆっくりではあるが元の形に戻っていっている。きみにも再生能力があるんだろう?
固有の能力と再生する身体。ホラ、俺と似ているじゃないか」

496英雄の条件(後編) ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/25(月) 20:22:44 ID:YgZGbEJo0

童磨の語るそれはつい今しがた、堂島が抱いた感想と同じもの。
しかし童磨の口からそれが語られると無性に悪感情が湧いて出てきた。

「きみと一緒にしないでもらおうか」

別に、吸血鬼という存在を誇っている訳ではないし愛着があるわけでもない。
それでも、眼前の男から『似ている』という評価を下されるのは嫌だった。

「あれえ?怒ってる?なにか気に入らないのかい?」
「独り善がりの救済を掲げるきみと同一視されたくはないからね」
「心外だなあ。独り善がりどころか、ここじゃなかったら俺を頼る信者はたくさんいるんだよ?悩みたくない、辛いのは嫌だ、救われたいってさ」

しょぼんとハノ字に眉根を下げ、至極残念そうな表情を浮かべるも、すぐに屈託のない笑顔に戻る。

「そうだ、きみもなにか辛いことがあったんだろう?俺に対して刺々しいのもそのせいだよ。聞いてあげよう、話してごらん?」
「本当にぺらぺらと回る口だね」

もうこれ以上言葉など交わしたくないと、童磨へと取り合わず、堂島は剣を握りしめ一足飛びに距離を詰める。

―――血鬼術 寒烈の白姫

再開する童磨の血鬼術と堂島の剣の凌ぎ合い。
有効な遠距離打を持たない堂島は童磨へと近づくために向かえ来る障害を切り払い、万物両断相手に接近戦は避けたいと思う童磨は中距離を保ちながら術を放ち続ける。
堂島は、中々、有効距離へと踏み入れないもどかしさを感じる一方で、己の振るう剣が軽くなっていることに気が付いた。
それは物理的な剣の損傷ではなく、彼自身の気の持ちようでしかない。
相手は、善のような、誰が見ても他者の為に戦う善良なる者ではなく、己を正義と称し人々を貪る『悪』でしかない。
つまりは、なんの後ろめたさを感じることもなく剣を振るえるわけだ。
やはり、斬るならば―――悪がいい。

『貴方と同じじゃないですか』

戦闘中だというのに声は止まない。
嘲る死者の笑い声は堂島の足に鎖のように纏わりついてくる。

『信念ともいえない薄っぺらい正義を掲げ、誰に頼まれている訳でもないのに独り善がりの正義に酔いしれる救世主(ヒーロー)気取り。
彼と貴方、なにが違うんです?』

反論することすら億劫になりながらも、その一言一句を逃すことはしない。
『童磨と同じ』。その言葉は堂島の心を蝕んでいく。

『彼の言葉に嫌悪するのは認めたくないからでしょう?』
(―――そうだ。認めるものか。インチキ臭い宗教を掲げる男と私が一緒など)

死者の声を曲解し、歪んだ憎悪を糧に足を前に進める。

(私はヒーローになるんだ。世の中を良くするために。その為に私は―――)

例え己では冷静だと思っていても、他者から見れば焦燥しているとしか見えない時はある。
その隙を、童磨は、合理性を極めた鬼は見逃さない。

497英雄の条件(後編) ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/25(月) 20:23:27 ID:YgZGbEJo0
(迂闊だね。きみの装甲を貫く技がないと考えての特攻かな?)

堂島はこれまで童磨の技の多くを斬り払い、残りをその硬い装甲で受けてきた。
それでもここまで重傷を負っていなかったことから、如何な技とて受けきれる―――そう判断しての特攻だと童磨は考えた。
当然ながら、それは童磨も認識しており対策も用意している。
童磨の血鬼術のひとつ、冬ざれ氷柱。本来は多くの氷柱を宙から降り注がせ相手の行動範囲を狭めるのを兼ねてダメージを与える技だが、童磨はそれを応用。
数多に作る氷柱に回す分の力を一本の氷柱に集中させ、貫通力と速度を強化。設置場所を宙ではなく足元にして、堂島が通り過ぎた時を狙い発射準備に入る。
狙いは頸。鬼と酷似しているのであれば、首を破壊すれば最低でも行動不能にはできるだろう。

堂島の歪んだ憎悪。
童磨の合理的な殺意。

互いに、あと数秒後には己の技が敵の急所を抉っている光景しか視えていない。

―――ビリィ。

その二人をして、戦闘を中断せざるを得ないほどの殺意が降りかかる。

互いに王手をかけたにも関わらず、二人は共にその出どころへと視線を向ける。

二人の視界の先にあったのは、異様、という言葉すら生易しい光景。
灰と化していた筈の肉体から溢れ出た翼が幾多も溢れ、あぶれ、巨大なナニかを象っていく。

童磨は知らない。
感情を欠落している筈の、鬼殺隊という憎悪の温床を知っている自分ですら本能的に身体が硬直するほどの殺意を。
堂島は知っている。
格上の相手にも揺らがず、己の信念を相手の本能に突き立てる牙の如き、純然たる殺意のこの感触を。

そして。
己が身を削りながら、高速で迫るソレに、在りえない者の姿を重ねる。
彼の面影などない。
けれど、その翼は。殺意の味は紛れもなく。

「佐神くん...?」

呆気にとられる堂島と童磨。
彼ら目掛けて伸ばされた巨大な腕が、獲物を掴み上げ、殺意の牙は食らうべき者―――堂島正へと剥かれた。

498英雄の条件(後編) ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/25(月) 20:23:54 ID:YgZGbEJo0



「ゥオオオオオオオオオオ!!!!!」

大気を震わせるほどの絶叫が響き渡り、堂島達の、少し離れた場所にいるプロシュート達の身体が竦みあがる。
感情で制御できぬ本性の警鐘が一同の身体を強張らせる。
『ソレ』はその隙を突き、堂島を掴み上げ、剣を落とさせると、大口を開くとその装甲へと牙を突き立てる。
真祖の中では最も硬い装甲を纏うユーベンの装甲にすら傷を入れるソレは、いくら硬い装甲を持つ吸血鬼の堂島とて耐えられるものではない。
瞬く間に牙は食い込み、その肉へと食い込んでいく。

「ッ!」

腹部に走る激痛に耐えつつ、堂島は掴まれた時に落とした剣を、能力で高速で手元に戻す。
飛来する剣は『ソレ』の手と顎を切り裂き、堂島の拘束を無理やり剥がす。

「くあっ...!」

地面に落ちた堂島は痛みで顔を歪めるも、すぐに飛び退き追撃を躱す。
それを逃がさないと言わんばかりに、断面から生えた無数の腕から針が掃射され堂島へと放たれた。

(どうなっているんだこれは。佐神くんは死んだはずじゃ!?)

迫る針を切り払いつつ、乱れた思考で現状を整理する。
善が死んだ。それは間違いない。
彼の能力は模倣だ。もしかして、自分のあずかり知らぬところで蘇生能力を有する吸血鬼でも倒していたのか?
だが、そんな殺し合いが破綻しかねない能力をD・ナイトのような縛りもなく主催は使わせるか?
なら目の前のコレはいったいなんだ?

いくら考えたところで堂島にはなにもわからない。
ただ、いまわかるのは一つだけ。

彼は自分を食おうとしている。

(このまま殺されるわけにはいかない)

堂島は迫る針の群れを避けつつ、『ソレ』のもとへと駆けていく。

(ッ...見れば見るほど悍ましいな)

蝙蝠のような翼で象られた巨体。
巨大な口腔から覗かせる数多の腕。
怪物の頭部の形を象るように連なる無数の顔。
全てを食らいつくさんと鋭利に生えそろう牙。
誰がどう見てもおとぎ話に出てくるような怪物だが、その殺意と能力は嫌でも『佐神善』を連想させられてしまう。

499英雄の条件(後編) ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/25(月) 20:24:14 ID:YgZGbEJo0
(これがもし暴走によるものならば止められるかもしれない)

先のミスティの黒針による洗脳とはまるで違うが、しかし暴走しているだけならばとれる手段が無いわけじゃない。
吸血鬼である以上は再生限界もあるはずだ。
そこまで達したところで梨花の持つふういんの杖を使い、正気を取り戻させて一旦落ち着かせる。
そうすれば時間を稼ぎ対策を練ることができるはずだ。

有効射程距離に入ったところで跳躍する。見据えるは怪物と化した『彼』の頭部。

(今の彼には首輪が無い。つまりここで正気に戻してしまえば、彼は脱出への道に大いに近づくというわけだ)

紋章の方はともかく、参加者の枷である首輪が無いのはかなりのアドバンテージだ。
後はどうにか説得し、殺し合いが終わるまで拘束でもしておけば少なくとも彼は生きて帰ることができるはず。

(君は帰らなくてはならないんだ―――シスカくんのもとへ)

迫る腕へと剣を振るい両断する。
これで道は開かれた。あとはひたすらに斬り続けるだけだ。
最初に戦ったあの夜のように。
まだ未熟な彼を止めようとしたあの時のように。

「目を覚ませ、佐神くん!!」

決断と共に剣を振り下ろす。

その刹那だった。

背後から、尾の形を模した翼の群れが堂島の身体を縛りあげたのは。

「なっ!?」

堂島は思わぬ奇襲に驚愕する。
先ほどまで無かったはずのソレがどこから湧いて出てきたのか―――その答えはすぐに思い知らされる。

『彼』の姿は、つい数秒前よりもさらに変容を重ねていた。
頭部からは幾多も翼が生え、臀部からは巨大な尾の形が象られ、質量も有している。
数呼吸の合間にも『彼』は加速度的に強さを増しているのだ。

「くそっ!」

纏わりつく翼を斬ろうとするも、腕が拘束されている為に切り離すことが出来ない。
堂島の剣は万物を両断する最強の矛ではあるが、しかしその有効範囲は刃が届く範囲でのみ。
振るうことができなければ斬ることなどできないし、手元から離れていなければ手元に戻す能力の副産物としての切断もできない。
つまり、今の堂島はもはや抵抗できないただの餌にすぎない。
『彼』は堂島を食らうため、その大口を開け牙を剥く。

己の死を悟る堂島の視界いっぱいに広がる無数の手と顔。
それは、今まで彼が斬ってきた亡者たちの怨嗟の姿に見えた。

―――がぶり。

500英雄の条件(後編) ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/25(月) 20:25:00 ID:YgZGbEJo0


あっという間の出来事、としか形容できない事態だった。
これからどうするかと持ち掛けたその瞬間に、『佐神善』だった灰の塊が蠢き湧きあがり、大量の翼に姿を変え巨大な怪物となり果てた。
真島も。
プロシュートも。
まどかも。
ドレミーも。
結衣も。

誰もが呆気にとられる中で『ソレ』は五人を無視し、離れた場所にいる堂島たちのもとへと駆け出していった。
童磨と堂島の戦いに乱入する『ソレ』を見て、真っ先に動きだしたのはドレミーとまどかだった。
一般人でしかない結衣は元より、真島とプロシュートも死闘を演じてきたとはいえ所詮はただの人間。
一方で、妖怪と魔法少女という異形が当たり前の世界に身を置く二人は彼らよりも立ち直りが早かった。

なにか特別な考えがあったわけじゃない。
本能に響く殺意の塊をぶつけられ、余計な悩みも思考も削ぎ落された結果、彼女たちは己の為すべきことを為すために身体が動いていた。


ドレミーの目的は夢遊管理。
まどかの目的は人命救助。

二人は意思疎通をして連携を取ったわけではない。
ただ、偶然、彼女たちのやるべきことが重ならなかっただけ。

その差が、彼女たちの命運を分けた。

ドレミーは食われそうになる堂島を無視して『ソレ』の頭部に当たる部分へと最短距離で飛び上がり。
まどかは捕まった堂島を救うために跳びあがった。

「今は眠りなさい。貴方の槐安は今作られる」

ドレミーなど眼中にないと言わんばかりに隙だらけの頭部に触れ、掌から黒色の霞が放たれる。
刹那、頭部を象る顔の幾つかがギョロリとドレミーの方へと向き、弾けるように襲い掛かった。

「ッ」

向かい来る弾を躱しつつ、ドレミーは後方へと退避する。


まどかに出来ることは多くない。
盾に成ろうにも、その小さな身体では大口にはあっさり飲まれてしまう。
だから、まどかは矢を握りしめ突き立てた。
己に向けられる牙ではなく、堂島を拘束している翼の群れに向けて。

501英雄の条件(後編) ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/25(月) 20:25:27 ID:YgZGbEJo0
弾かれた翼を裂き、堂島を解放する。それだけに留まらず、彼の身体を押して牙の射線から外した。
飛行能力を持たない堂島は宙に投げ出されてはなにもできず。そしてまどかもまた空では自在に動けない―――そんなことは百も承知だ。
死にたいわけじゃない。怖くないわけじゃない。
ただ、彼女という人間はいつもそうだった。
人を救う選択肢に犠牲を強いられれば。その犠牲の対象が自分であれば、必ずその選択肢を選んでしまう。
ある種の狂気的な自己犠牲心。それが、善意以上の彼女という人間の本質だ。

だから、迫りくる殺意に恐れながらも、己の末路を受け入れるように目を逸らさず、まどかの身体はかぶりと丸のみにされた。

その光景を見ていた堂島は思わず手を伸ばす。
しかしなにも掴めない。
握りしめた掌は空を切るだけで、己を庇う為に食われた少女も、こんな蛮行を望まないはずの少年の凶行も。
何も止めることが出来なかった。

そして、堂島正の中で―――ぷつりと、何かがキレた。

着地するや否や、再び跳躍し剣を振り下ろし頭部を両断する。
その翼の群れの中から、無造作に垂れさがる細い腕を掴み、まどかを引きずり出した。

彼女の身体は千切れてはいなかった。幸運にも牙は届いていなかったようだがしかし、あの口腔内に蠢く数多の腕にやられたのか。
衣類や髪の毛はところどころが千切れ、四肢の至る箇所に痣が付けられ、片目も潰れされていた。
堂島が斬って救い出すまでの数秒でこれだ。
そこには配慮の欠片もなく、千切り食らうことしか考えていないという事実がありありと示されていた。

「この子は救おうとしていただけだ...きみが見えていなかったというのか...!?」

堂島は少年だった善が大きくなり成長していくのをずっと見てきた。
そんな彼だからこそわかる。
佐神善という少年は優しく、真面目で責任感があり周りをよく見ている少年だ。
そんな彼の決意から生まれる信念だからこそ、誰にも折れず挫けないのだと。
その彼が、こんな真似をするはずがない。割り込んでくる影を見逃すはずがない。
誰かを救おうとする者を己の欲望のままに破壊する。
―――そんなものを、佐神善だとは認めない。

「...そうだ。死んでしまった者が蘇る...ヒーローでもないと、そんな都合のいい話はないよな」

佐神善は死んだ。己の目の前で首輪を爆破され、灰となった。
どんな凄腕の医者でも失われた命を戻すことはできない。
彼の死は揺るがない真実だ。
だから、目の前の『コレ』は佐神善では決してない。
これ以上凶行を重ねさせないためにも。彼の魂を穢さないためにも。
堂島正は一つの決断をする。

502英雄の条件(後編) ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/25(月) 20:25:50 ID:YgZGbEJo0
「それで?きみはいつまで見ているんだい?」
「いやあ、取り込み中のようだったから」

後方で堂島たちの戦いを観察していた童磨へと堂島は視線だけ向ける。
童磨は堂島と怪物が戦い始めてからずっと彼らを観察していた。
機を伺っていた、というよりは怪物の殺意に警戒していた。
童磨には死を恐れる感情が無い。
それは自覚しているし恥にも思っていない。
だからこそ、その自分がたかだが殺意の前に動けなかったという事実が童磨の警戒を強めていた。

「それでどうだい。この状況でまだ私と戦うつもりかな?」
「そうだねえ」

自分とほぼ同格の堂島と、己にすら脅威を抱かせる怪物。
効率的に戦うならば堂島を先に仕留め、怪物とは距離を置くのが正解だろう。
だがそれは怪物が正常な思考ができることが前提の場合だ。
思考回路のなく強力な獣ほど放置して厄介なものはない。
潰せるのならば潰しておくべきだ。

「普段は鬼が徒党を組むなどと嘆かれるかもしれないが、あの御方もこういう時は認めてくださるだろう。それじゃあ一時休戦といくとしようか」
「ああ」

短く返事を返し、堂島は気絶するまどかをそっと地面に横たえ、童磨と共に並び立つ。

「...きみのことはもう佐神くんだと思わない。断たせてもらうよ」

手段を択ばず悪を排除する。
それは、今までと変わらぬ彼の『ヒーロー』としての在り方だった。

503英雄の条件(後編) ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/25(月) 20:26:42 ID:YgZGbEJo0



「ふむ...今回はちゃんと効いているようですね」

堂島達と向き合う怪物を見ながら、己のかけた術の手ごたえを確かめるドレミー。
本来ならばまどかは食われた時点でその生を終えていただろう。
彼女が一命をとりとめたのは、ドレミーの技で微かにだが動きが鈍ったからだ。
累の父には効果が薄かったが、今回はかけ続ければ徐々に効果が増してくるはず。

(彼らに相手をしてもらっている隙を突き、私が眠りに落とすのが最適ですかね)

あれだけの質量相手では真島やプロシュートのような生身の人間には荷が重いだろう。
幸い、怪物が狙っているのは堂島達だけのようだ。ならば自分の術もかけやすいはずだ。

さて、もう一度―――そう思ったところで、不意に彼女の頭上に陰りが差した。
彼女が振り返るよりも速く、彼女の二の腕から身体にかけて鉄球の如き衝撃が襲い掛かる。
べきべきと嫌な音を立てて骨が軋み悲鳴を挙げる。

吹き飛ばされてゆく中、ドレミーは見た。
振り抜かれた剛腕。この殺し合いで何度も見てきたその風貌。

「俺の家族に手を出すあああああああああ!!!」

極めつけのこの台詞。
己を吹き飛ばした者が紛い物と称した鬼だと認識すると同時、ドレミーはぐしゃりと壁に叩きつけられ沈黙した。

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」

乱入者、累の父は吠える。
己の存在意義を示さんと、天高く赤き空を見上げて。
息子と称された怪物は微塵も興味を示していないが、累の父は構わず息子の為にその猛威を振るう。

「しつけーんだよてめえはよ!」

遅れて駆け付けたプロシュートは叫びと共にグレイトフル・デッドを出現させ累の父へと殴り掛からせる。
これで仕留められるとは思っていないが、けん制としては効果的だ―――そう読んでの先制攻撃。
だが。

「ガアアアアアア!!」

グレイトフル・デッドのラッシュは、累の父の剛腕の一撃で全てを弾かれた。

「なっ、なにぃぃぃぃ!?」

両腕を弾かれ体勢をのけ反らせながらプロシュートは驚愕する。
累の父は身体能力は上とはいえ、ここまで圧倒的ではなかったはずだ。
その差は、プロシュートの勘違いなどではなく、ボミオスの杖の効果である。
動きが遅くなるということは単純に動作が鈍る、というだけでない。
筋肉の動きが遅くなるということはそれだけ込められる力も減るということだ。
プロシュートが見たのは脱皮前の累の父とボミオスの杖がかけられた状態。
つまり、彼はまだ累の父の全力のパワーを未だに見ていない。
その差が彼の認識を誤らせた。

「ジャアアアア!!」
「チイッ!」

両腕を空けられた状態では躱しきれず、咄嗟にスタンドを己の身体との間に挟みクッションにする。

ドッ

「ガ...!」

スタンドを通じて伝わる衝撃に腹部が圧迫され、あえなく吹き飛ばされるプロシュート。
いくらか内臓をやられ、吐血し、地面を赤く染めていく。

504英雄の条件(後編) ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/25(月) 20:27:21 ID:YgZGbEJo0
「クソッ!」

最後に一人残された真島は右腕のストレートで累の父の腹部を殴りつける。
が―――

「ぐあっ!」

右腕に激痛が走り、拳の肉が裂け血が流れだす。
累の父の肉体の硬さに真島の拳は耐え切れず、打ち込んだ彼自身へのダメージとなって返ってきたのだ。

累の父は苦しむ真島の胸倉を掴みあげる。

「俺の家族に手を出すナアアアアアアアア!!!」

首元を絞める圧迫感に真島は苦悶の声を挙げる。
そんな彼に構わず、累の父は命を刈り取らんと拳を固める。
殺られる―――そう直感した真島は必死に声を絞り出す。

「荻原...鹿目を...あいつを頼む...!」
「真島さん、でも...!」
「俺のことはかまうな!はやくいけぇ!」
「いやです!真島さんを放っておけません!お願いだから真島さんを離してください!!」

この結衣の生きた時間軸においては真島との交流はほとんどない。
だが、知った人間が命を散らそうとしているのをみすみすと見逃せない。
それはどの世界の荻原結衣にも共通している信念だった。
縋るような声を挙げる結衣だが、累の父には関係ない。
ただ息子の邪魔をしようとする輩を排除するだけだ。

ビキビキと筋張る剛腕に、真島は死を覚悟する。

(すまん、鹿目、荻原―――だが、せめてこいつだけでも!)

己の首輪に指をかけ、累の父を道ずれにせんと気迫の満る目で睨みつける。
その覚悟とほぼ同時。
累の父の剛腕が真島の顔面を破壊せんと迫る。

走馬灯のように視界の全てがスローモーションに映る中。
彼は見た。
迫る拳と己の目の間に。

この赤い月夜には似つかわしくない、青色の蝶がヒラヒラと舞いおりた。

累の父は構わず拳を振り抜き蝶を四散させる。

刹那―――ベコリ、と累の父の腕が大きくひしゃげた。

505英雄の条件(後編) ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/25(月) 20:28:03 ID:YgZGbEJo0
「ヴァアアアアアアア!!」

腕を抑え累の父は叫び、思わず真島を解放してしまう。

「...!?」
「ま、真島さん!」

突如解放され、尻餅を着き困惑する真島の手を引き、結衣は慌てて累の父から距離を取らせる。

「ゴールドエクスペリエンスで生み出された生物は攻撃されるとダメージを相手に反射させる」
「ふういんの杖はあと2回よ。無駄遣いをするつもりはないからこれでキッチリ仕留めなさい」
「古手さん、貴重な杖を使ってくれただけでなく、体力まで回復させてくれたこと...感謝します」


〜〜〜〜♪(ジョルノが無駄無駄する時のBGM。ワザップジョルノの動画でも流れている)

例の如くBGMが流れ始め、二人の影を赤い月が照らし上げる。



「貴方を暴行罪及び殺人未遂で訴えます。理由はもちろんお分かりですね?」

犯した罪状を確かめるように静かなトーンで語り掛けるように。

「あなたが家族をダシにして僕の仲間の命を奪おうとしたからです!!」

罪を犯した愚者への怒りを解き放つように力強く。

「覚悟の準備をしておいて下さい!ちかいうちに訴えます。裁判も起こします。裁判所にも問答無用できてもらいます。慰謝料の準備もしておいて下さい!貴方は犯罪者です!刑務所にぶち込まれる楽しみにしておいて下さい!いいですね!!」

決して許されないことをした者への怒りをぶつけるように、烈火のごとく激しく。

ワザップジョルノは古手梨花と共に戦線に復帰するなり、累の父へと高らかに宣戦布告した。

506英雄の条件(後編) ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/25(月) 20:28:42 ID:YgZGbEJo0





『男』は世の中を変えるヒーローになりたいと願っていた。

『上弦の鬼』は周囲の期待に応えて可哀想な人を救ってあげる教祖(ヒーロー)であろうとした。

『青年』と『魔法少女』は互いの姿にヒーローの影を見つけ、尊重し合った。

『妖怪』は夢を管理する管理人(ヒーロー)となった。

『少女』は『ギャング』に不器用ながらも救ってくれるヒーローの姿を見出した。

『鬼』は家族を護る父親(ヒーロー)にされた。

『魔女』は惨劇の舞台から抜け出すヒーローを求め抗い続けた。

『被害者』は踊らされたガセネタを告発する為にネットミームと化してひとつの時代を築いた傑物(ヒーロー)となった。

『人を真似た何か』は己を救ってくれたヒーローの姿を真似して人の命を救いたいと思った。

誰もかれもがヒーローを求め、想い焦がれて踊り続ける。

その過程に正しきものなどあるかはわからない。

ヒーローとは、己が認めねば存在できない孤独な存在でしかないのだから。

507英雄の条件(後編) ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/25(月) 20:29:12 ID:YgZGbEJo0
【B-2からB-3にかけて/一日目/早朝(放送直前)】

【????@血と灰の女王】
[状態]:身体が徐々に崩れていっている。
[思考・状況]
0:とにかく有益な餌を食らい体力を取り戻す。(今のところは堂島正=童磨>>>>>その他、くらいの認識)

【童磨@鬼滅の刃】
[状態]:全身融解(ほぼ再生)、疲労(小)
[装備]:鉄扇×2(片方ほぼ融解)@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2 妖弦フェイルノート@Fate/Grand Order
[思考・状況]
基本方針:帰るために、力を取り戻すために人を喰らう。
0:堂島と協力し眼前の怪物を始末する。その後は改めてこの場の面子を『救って』あげる。
1:次会った時こそ美鈴ちゃん達を喰べてあげる。
2:無惨や他の鬼@鬼滅の刃が参戦していた場合は遭遇してから考える。
3:ナスタシアや桐生のような『かわいそう』な相手を『救う』
[備考]
※参戦時期は無限城編よりも前です。
※主催により上弦の弐としての力が抑えられています。少なくとも「結晶の御子」が使えません。
※無惨の呪いの有無については後続の書き手にお任せします。



【堂島正@血と灰の女王】
[状態]:精神的な疲労(絶大)、疲労(絶大)、身体にダメージ(中)、左腕破壊(再生中)、佐神善の死を受け入れる覚悟(?)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:生き残り正義のヒーローになる。
0:童磨を利用し『善らしきモノ』を討つ。童磨もついでに始末しておきたい。
1:日ノ元士郎を討つ。そのあとは...?

[備考]
※参戦時期は101話より。

[備考]
※参戦時期はBルート死亡後より
※魔法少女やまどかについて大雑把に聞きました。

【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:左目失調、出血(大)、四肢に引きちぎられかけた青あざ、全身にダメージ(大)、疲労(絶大)、髪の半ばほどを消失、魔力消費(絶大)、気絶
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
基本方針:誰も死なせず殺し合いを止める。
0:気絶中
1:『善のようなモノ』を止めたい。

[備考]
※参戦時期は3週目でマミを殺した後。

508英雄の条件(後編) ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/25(月) 20:30:08 ID:YgZGbEJo0

【累の父@鬼滅の刃】
[状態]:疲労(小、回復中)、黒針による認識改ざん
[装備]:
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:家族を守る
0:家族(善)を守るために戦う。
1:オ゛レの家族...護る!!
2:あの人間、うまがったあ゛あ゛あ゛
[備考]
※参戦時期は36話伊之助との戦闘中、脱皮する前
※ホワイトの精神操作はドレミーによって解かれました。
※しかし、ドレミーに何か”しこまれている”かもしれません。詳細は後続の書き手様に委ねます。
※ドレミーと夢の世界で出会いました。
※殺し合いのルールを理解できておりません。
※一般・ランダム支給品はドレミーに奪われました。空のデイバッグは捨てられています。
※黒針の効果でエスデス、ミスティ、善、薫が家族の面々に見えています。
※夢の中での啓示により、ホワイトの首輪を所持しましたがミスティに回収されました。




【古手梨花@ひぐらしのなく頃に 業】
[状態] 精神復調、後頭部にたんこぶ、精神的疲労(大)、疲労(大)、ボミオス状態、舌を改造
[装備] いつもの服、インパスの指輪@トルネコの大冒険3(英吾の支給品)
[道具] 基本支給品、不思議な杖三本セット(封印の杖[2]、ボミオスの杖[1]、ふきとばしの杖[0])@ドラゴンクエスト外伝 トルネコの大冒険 不思議のダンジョン
     ランダム支給品(0〜1)
[行動方針]
基本方針:繰り返しを脱する手がかりを掴む
0:累の父を倒し、『善のようなモノ』を止める
1:沙都子と会って真実を確かめる。
2:頑張れるだけ、頑張る。
3:三島...ごめんなさい
4:あれは人工呼吸だからノーカン...ノーカンよ...

[備考]
※参戦時期は16話で沙都子に腹を割かれている最中(完治はしています)
※ワザップジョルノ、プロシュートを危険人物と認識しています
※ミスティの黒針の効果で興奮すると感度が増して体力と引き換えに他者の体力を回復させる唾液が分泌されるようになりました。



【ワザップジョルノ@ワザップ!】
[状態]:主催者への怒り(極大)、全身にダメージ(中〜大)、陰茎生成中、全身やけど、疲労(中〜大)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[行動方針]
基本方針:主催者を訴え、刑務所にぶち込む
0:累の父を倒し、『善のようなモノ』を止める

[備考]
※外見はジョルノ・ジョバァーナ@ジョジョの奇妙な冒険 です。記憶も五部完結まで保持しているようです。
※ゴールド・エクスペリエンスも使えますが、矢をスタンドに刺してもレクイエム化はしないと思われます。
※CVは想像にお任せします。
※古手梨花、北条鉄平、プロシュートを犯罪者と認定していますが、梨花に対してはかなり軟化していると思われます。
※犯罪者の認定は完全な主観です。罪が重いほど対象に対する怒りは大きくなります。
※犯罪者対応は拘束が目的ですが、対応時に手加減はあまりしないようです。
※ワザップ状態が完全に解けてもジョルノ・ジョバーナ@ジョジョの奇妙な冒険にはならないようです。
※梨花の唾液を注入されて体力と怪我が少し回復しました。

509英雄の条件(後編) ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/25(月) 20:30:29 ID:YgZGbEJo0

【真島彰則@リベリオンズ Secret Game 2nd stage】
[状態]:疲労(大)、鼻血(止血済み)、右拳に重大なダメージ
[装備]:Jのメリケンサック(両拳)@魁!男塾
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:正しき道を歩む。
0:累の父を倒し、『善のようなモノ』を止める。
1:堂島からは後で話を聞く。
2:蒔岡彰に興味。やはり玲の弟のようだな


【荻原結衣@リベリオンズ Secret Game 2nd stage】
[状態]:疲労(小)、後悔、プロシュートに黄金の希望を見出している、悲しみ、堂島への複雑な感情(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜3、氷
[思考・状況]
基本:益子さんのためにもまずは生き延びる(可能なら益子さんとお買い物をしたい)
0:あたし、どうすればいいんだろう...
1:益子さん...!
2:兄貴にドレミーさんと私……これが続いてほしいな
[備考]
※参戦時期はepisode Cから 小屋の地下で黒河と心が通じ合う前
※プロシュートが裏の世界の人間だと理解はしています。
※スタンドなどはまだきちんと理解できていません。(なんか、よくわからないけど凄い程度)
※ドレミーの世界(幻想郷)について簡単に知りました。
※この殺し合いが終わったら、益子薫と買い物をする約束をしています。





【プロシュート@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:負傷(大)、疲労(大)、ところどころに凍傷と裂傷、腹部にダメージ(大)
[装備]:ニューナンブ@ひぐらしのなく頃に 業
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:ひとまずゲームには乗らずやれるところまでやる。
0:累の父を今度こそ始末する。その後はあの怪物を始末する。
1:ユイ・オギハラ……兄貴……か
2:レオーネの知り合い(アカメ)を探す。あったら言伝を伝える。※C3の貸本屋のこと
3:オレは死んでるのか?それとも、まだ生きているのか?
4:あれがワザップジョルノか...
[備考]
※参戦時期はブチャラティVSペッシを見届けてる最中です。
※此処が死者、特にロクデナシの連中を集めたものだと思っていましたが、結衣の存在やドレミーとの情報交換から今は生者死者入り交えていると推測しています。
また、自分はまだ死んではいないのかとも思い始めています。
※ドレミーとの会話で幻想郷について簡単に知りました。
※ワザップジョルノが護衛チームのジョルノなのか結論を下せず、半信半疑中です。


【ドレミー・スイート@東方project 】
[状態]:疲労(大)全身にダメージ(絶大)
[装備]:夢日記@ 東方project
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品0〜5 氷
[思考・状況]
基本方針:この殺し合いと言う酔夢が導く結末を見届ける
0:少々気を抜いてしまいましたか...
1:とりあえず、プロシュートの後をついていく(襲い掛かってきた者には対処する)
2:参加者が寝たとき、夢の世界へ介入する
3:妖怪とは気まぐれな者ですよ
[備考]
※参戦時期は東方紺珠伝ED後
※メフィスとフェレスも管理者であると気付きました(何の管理者かは、まだつかめていません)
※リリア―ナの刻を止める能力を知りました。
※夢日記より、サーヴァント達や第一部での顛末、・鬼滅の刃の鬼の体の構造・リベリオンズの首輪の解除方法、ギース・ハワードを知りました。
※プロシュートとの情報交換でプロシュートの世界について簡単に知りました。(スタンドの存在など)
※プロシュートのグレイトフル・デッドの能力を理解しています。
※累の父から基本・ランダム支給品を奪いました。

510英雄の条件(後編) ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/25(月) 20:30:56 ID:YgZGbEJo0



「...ねえ、メフィスちゃぁん。これってルール違反じゃない?」

「うむ。確かに、堂島正のように一度死んでからの蘇生を認めているケースはある...が、アレもアレで、首輪の爆発での死亡の際は使えないという制約がある。
今回の佐神善に関しては完全な違反じゃ。首輪が爆発して尚生きておるのじゃからのう」

「消しちゃった方がいいのかなぁ?これ以上玩具に僕たちの箱庭を荒らされると気分が良くないからさぁ」

「それには及ばんよ。首輪の爆発は即死には至らなかったようじゃが、あやつの身体は徐々に朽ちていっておる。放っておいてもあと数時間もあれば消え去るじゃろう。
まあ、今はアレの残り香も佐神善の『個性』として見逃しておるが...万が一にも堂島たちを食らい完全な蘇生を果たしたならば、それ相応の罰を与えてやらんとな」

メフィスはにたりと口角を釣り上げる。
アーナスの敗走で抱いた鬱憤を未だ忘れぬと言わんばかりに、どんよりと濁った瞳を浮かばせながら。

「わしらのプロデュースした八将神がどいつもこいつも無様に敗北を喫しておるからなぁ。見せしめとしてはちょうどいいかもしれん」
「ウフフ...いいかもねえソレ。善くんみたいな『アレ』が蘇れる〜って希望を抱いた瞬間に見せつければ理念もたくさん手に入るかもしれないし、力を見せつけてやれば情けない玩具たちも必死になってくれるかもねえ」
「佐神善の名は今回の放送では呼ばんでやろう。わしらの中ではもう死んだ扱いではあるが...今回は呼ばない方が楽しめそうじゃ」

くすくす、けらけらとメフィスとフェレスは互いに笑い合う。
いつものように。玩具を嗤う悪魔を体現するかのように。
味わった鬱憤を晴らしてくれるのを期待するかのように、彼女たちは声を揃えて語り掛ける。

「準備だけはしておいてねえ」
「お主の試運転の刻が来るやもしれんからのぅ」
「「『太歳神』―――高町なのは」」

511 ◆ZbV3TMNKJw:2022/04/25(月) 20:31:20 ID:YgZGbEJo0
投下を終了します

512 ◆2dNHP51a3Y:2022/05/02(月) 17:59:01 ID:zTuEpm9M0
皆様投下ありがとうございます
仕事疲れでモチベが死んでいたり、自分はここに手を出せてませんでしたが
それでも素晴らしい投下をしてくれて皆様には感謝です
そろそろいい感じですので第一回放送を投下させていただきます

513第一回放送 ◆2dNHP51a3Y:2022/05/02(月) 17:59:22 ID:zTuEpm9M0
思い出す、回想する、追憶する。
赤い海、砕けた月に、黒い大地に、何も変わらない満点の夜空。
黙示録、人も悪魔も相打った終末の歴史の中。

同志も、抵抗者も、反逆者も、何もかも死に絶えて、亡骸が大海を赤い夢幻で染め上げた、世界最後の夜の下。友であった男の亡骸を抱いて




――僕は、泣いた

514第一回放送 ◆2dNHP51a3Y:2022/05/02(月) 17:59:52 ID:zTuEpm9M0
○ ○ ○

昼も夜も無く、未だ辺獄に赤き月の廻る頃に、それは鳴り響く。

『ボンジュール! と言ってもこの場所は昼も夜の境界なんて無いに等しいのだけれどさ!』

軽快な音楽、そいて雰囲気に恐ろしく反した明るい音声

「そーろそろ6時間経過した頃だから、みんなお待ちかね! 死亡者情報の発表と行こうか!」

まるで玩具で遊ぶような気楽さで、道化師は楽しそうに死亡者の名を紡ぐ


『柳瀬舞衣』
『村田勤』
『ユカポンファンの吸血鬼』
『由香』
『スキャッター』
『オフェンダー』
『伊藤大祐』
『藤原美奈都』
『ブサイク大統領』
『ヒエ』
『ワム』
『ガビ』
『バボ』
『カミソリ鉄』
『チェーン万次郎』
『ドス六』
『メリケン錠』
『死神』
『沼の鬼』
『ドドンタス』
『カンフーマン』
『ホワイト』
『恵羽千』
『優木せつ菜』
『モッコス』
『吹石琴美』
『細谷はるな』
『司城夕月』
『北条沙都子』
『広瀬あゆり』
『ノワール伯爵』
『益子薫』
『三島英吾』
『ミスティ』
『絶鬼』
『フェザー』
『赤城みりあ』

「以上、死んだの38名。いやぁ、みんな張り切ってるようで何より何より! ……では次に禁止エリアの発表だけれど。抽選の結果この3つ!」

『C-5』『E-3』『F-7』

「というわけで、今言われたエリアに居る参加者は早く出ないとドッカ〜ン!」

「では放送はこれまで、次の放送も楽しみにしていてね、ボン・ボヤージュッ!」


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