したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

終末世界ロワイアル

114 ◆5ddd1Yaifw:2020/04/03(金) 21:46:39 ID:bIh6UlaI0
 間桐シンジは天才を自負している。それは自他共に認められるくらいには確固としたものだ。
かつては天才少年だったシンジは、いつしか青年になって、なって――進み続けた。
最初に奪ったのは共に笑った友達だった。その次に奪ったのは、見も知らぬ誰かだった。
奪った代償はある、泥に塗れた天才はその重みを背負うことに決めた。
そして、抗い、負けないことを誓ったはずなのに、いつしか思いは消えて、空を茫洋と見上げるだけになってしまった。
その結果がどうだ、下から上がってきたアイツに逆襲を果たされた、
抗いは無意味に消えた。世界は終わった。自分自身も終わった。
終わって、終わって、全部が藻屑と消え去って。

 そうして、それで――?

 結局、何も生み出せないまま終わって、満足だったのか。

「んな訳、ないだろ」

 その声は嗄れたものだった。
頑張って、疲れて、それでも頑張って、諦めた者にしか出せない臭いがした。

「そんな訳、ないだろ――――っ!」

 できることは全てやった。泥しか生まれない世界で黄金を生み出そうと藻掻き続けた。
その果てで、アイツと会って、それから―――。

「ああくそっ、思い出した。思い出してしまったじゃないかよ」

 元来、自分は諦めが悪い人間だった。
辛い現実を見続けて大人になったつもりで、斜に構えていた。
どれだけ努力を重ねようとも、成果は実らず。
だから、諦めた。もう無理だって夢を見ることを捨てて、思い出に浸っていた。

「僕は人間が負けることを認めたくなかったんだ」

 それでも、残ったものが一つ。
偽りの空を見上げて、右手を伸ばして。
本物の世界が、その先に待っていると信じ続けた。
黄金の奇跡なんてものよりも強く、鋭く。
運命を掴み取る意志の力に、シンジは気づいてしまった。
全部、アイツが悪いのだ。諦観の海に浸ることを許さなかった、かつての友。
終わってしまった世界、夢を、もう一度、と。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板