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真実の……バトルロワイアル 2

85あけないたたかい ◆3nT5BAosPA:2019/08/16(金) 22:59:03 ID:lXXneOdM0
武蔵の同意を得られたので、圭はすぐに移動を開始した。
 とりあえずは現在地からなるべく離れることが最優先の目的だが、かといって、あてもなく歩き続けるというわけにも行くまい。
 身を潜めるのに適した場所はなかったか──歩きながら脳内に周辺の地図を思い浮かべていると、車輪が回る音と共に誰かがやってくるのが見えた。
 その誰かはママチャリに乗っていた。しかし、運転手は主婦ではなく男だ。圭と同年代くらいに見える、制服姿の少年である。金色に染まっている髪は、圭にカイを連想させた。
 彼も石上の声を聞いて、ここまで来たのだろうか。
「ここに居てはまた石上の聞いた誰かがやって来て面倒が起きるかもしれない」という圭の懸念は、すぐさま的中したようである。

「止まれ!」

 此方に向かってくる少年の姿を認めた瞬間、圭は叫んだ。
 すると、少年の動きは止まった。ちなみに、武蔵は圭が口を開いた時には両手で耳を塞いでいた。大した状況判断力である。
 がしゃあん、と。
 運転手の行動の急停止による必然の結果として、コントロールを失ったママチャリは派手な音を立てて転倒した。

──バイクじゃあるまいし、あの速度でそこまで酷い怪我をするとは思えないが……。

 圭が『亜人の声』を使ってこのようなことをしたのは当然であった。
 敵か味方かも分からない少年を不用意に近づけた結果、喜ばしくない結果を招いては困る。ならば、多少乱暴な手段になっても、少年を止めるべきだったのだ。
 しばらくすると、少年は体を起こした。

「いてて……、今の声は『言葉の重み』みたいだが、あれとは違う感覚だったぜ──いきなり何すんだよ!」
「僕たちは別に、殺し合いに乗っているわけじゃない。だけど、君がどういう人間なのか分からない今、接近を許すわけにはいかなかったんだ。許してくれ」

 我ながら誠意の籠っていない口調だな、と思いながら、少年に向かって圭は語りかけた。

「率直に聞かせてもらおう。君はこの殺し合いに乗っているのか?」
「カッ! このふざけたバトルロワイアルへのスタンスなら、俺もお前らと同じだぜ。乗るわけねえだろ」

 人の命が奪われる催しに心からの嫌悪を示すような表情で、少年は言った。
 
「この辺りから声がしただろ? 俺はその声の主を助けようと、ここまで来ただけなんだが」
「その者なら死んだ」
「なッ……!?」

 答えたのは武蔵だった。

「武蔵があの場に参った時には既に巨漢に踏み潰されていた」
「そうか……クソッ!」

 声の主の死を知った少年は、悔しそうに地面を殴った。
 
「間に合わなかったってことかよ!」
「そう悲嘆にくれるなよ。おそらく、あの声がした直後には殺されていたんだろうし、誰だって間に合わなかったさ」

 僕くらいの距離にいたのなら、まだしも。
 圭は心中に湧いた補足を、そっと握り潰した。

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