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真実の……バトルロワイアル 2

788鬼神爆走紅蓮隊・凛 ◆0zvBiGoI0k:2021/04/21(水) 08:38:03 ID:4zUlIlqM0

「ヅ……!」

 雨あられに鋼糸を腕で弾きながら本体目がけて突っ切る。 
 篭手で払え切れなかった糸の数条が、腹を打つも肉が裂かれる事はない。
 神便鬼毒は篭手だけでなく上着にも染み込ませてある。
 絞れば大量に水が出てくるほど染み込ませた服は防弾チョッキとして機能していた。
 だが防弾チョッキは銃弾の貫通こそ防ぐが着弾の衝撃を完全には殺せない。当たった部位の骨が折れるぐらいはざらにある。
 常人である村山が酒を浴びても平然としていられるには、毒の濃度をギリギリまで下げる必要があった。 
 そして村山の身体能力が向上するわけでもない。脅威の程は落ちても依然窮地のまま。
 得物が刃物から鈍器に変わっただけで、無数の凶器で殴りつけられる事には変わりない。
 今の村山は、金属バットを持った集団に囲まれて一斉に襲われてるのに等しい状態だ。

「上等だろォが!」

 望むところだ。
 殴り合い、我慢勝負なら自分の領分だ。
 たったひとつだけ鬼に村山が勝る経験値。
 喧嘩に明け暮れ、鬼邪高で番長に登り詰めてからも日常に慣れ親しんだいつもの場所だ。

「はっはははははははは!!」

 交差する腕で守った顔以外を止まない乱打に晒されながら哄笑する。破顔して爆笑であった。
 命を張って、向かない策を練り、ここにきて漸く、村山が鬼と向かい合うだけの土台ができた。
 状況が、空気が、村山に味方する。後押しをしてくれる。だからこうして進めるのだ。

 逃げる事だけはしない。最初からそれだけは決めていた。

 別に、戦うのにそう大きな理由があるわけではない。
 鬼も、化物も、殺し合いも、実のところ深く考えてなんかいなかった。
 喧嘩を売られて、やられて、しかも舐められたから、やり返す。
 ガキっぽい、そんな単純(シンプル)な理由を背負ってこんなところまで来てしまった。
 
 それともうひとつ。
 ここまでのやり取りと戦いを見て、村山は鬼についての事を何となく知った。醜悪なる鬼の様をこの目で見た。
 ああ、駄目だ、あれは。
 どんなに強くなれても、誰にも負けなくなっても、あんなのにはなりたくない。
 そう、固く誓う。
 自分達はろくな大人になんてなれやしないだろうが。
 それでも、仲間を捨てて自分だけ助かろうなんてする奴よりは、ずっとマシな生き様だと、胸を張れるだろう。

「確かにテメエは強いよ」

 村山は認める。
 鬼は強い。ただの人ではやはり勝てないのだろう。
 刃なき拳では頸を落とせない。殺し合いという舞台で殺すのは無理かもしれない。


「でも喧嘩なら───不良が勝つんだよぉ!!」
 
 
 最後の助走をつけて強く、強く大地を蹴って跳び立つ。
 片手片脚が離れていき、腹を捌かれるのを意に介さず。
 残った拳が血と酒で煌びやかに彩られて顔面に埋まる。
 加速と体重を限界まで乗せた一撃は、累の頭蓋を揺らし、脛椎を叩き割った。

 決まった。
 身を苛む痛みも吹き飛ぶ会心の一発に、痺れるような感覚だった。
 着地が上手くいかず無様に地面を転がってしまうが、どうにも立とうという気が湧かない。
 むしろこのまま暫く寝転がって掌に残った充足を味わっていたい。それぐらい爽やかな気持ちだ。
 なによりメチャクチャに動いたからか、経験にないほどの眠気が襲ってきていてしょうがなかった。

「あ、やべ。バイクなに選べばいいか、コブラに聞き忘れた……」

 四肢を落とされた喪失感も彼方のまま、意識が落ちる直前。
 唐突に浮かび上がった、他愛もないやり残しへの後悔が脳裏をよぎるが、まあ後でいいかと、痛みの先に手にしたものに包まれたまま、安らかに両の瞼を落とした。

【村山良樹 @HiGH & LOW 死亡】



 ◆


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