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真実の……バトルロワイアル 2
786
:
鬼神爆走紅蓮隊・轟
◆0zvBiGoI0k
:2021/04/21(水) 08:35:09 ID:4zUlIlqM0
対応は、間に合っていた。
めだかのような小細工もなしに直進する酒呑を無惨の感覚は捉え、正確に爪で迎撃する。
だが止まらない。被弾を意に介さず鬼は道をぶれずに突き進む。
傷はつくのだ。裂けた肌からは血が溢れて肉がこそげ落ちてエーテルで構成された仮初の体に傷が刻まれる。
サーヴァント、人理の記録に刻まれた悪鬼英霊の写し影をも無惨は打ち据えられる。
霊体に作用しない攻撃手段は通用しない、通常の法則を制限されていても、これは恐るべき所業。
千年に及ぶ殺戮と暗躍は伝説の一端に伍するものだと証明したのだ。
それでも鬼は止まらない。勢いが削がれない。
裂けるのは外皮のみ。斬撃が肉を越え骨の芯まで届きはしない。
「はい、拳(けん)・拳(けん)・破(ぱ)、拳・拳・破っと!」
衝突と激震。互いの爪がひしゃげ折れ、潰れ落ちる。
無惨は次の触手を、酒呑は次の手足を繰り出して再現を繰り返す。
技量の冴えも、培った経験の賜物もない、単調なる暴力の応酬。
相克する爪と爪で、先に崩れたのは酒吞童子。爪に繋がった腕が派手に潮を吹く。
矢継ぎ早に、同規模の爪の群れが、棘皮動物の捕食めいた光景を見せつけ、酒呑に絡みついて姿を呑み込む。
内部では管部の各所から生えた口の牙が一斉に噛み付いている。
逃げ場と動きを縫い止めたまま腕を振り上げ、捕縛した獲物を巻き付けた管ごと両断した。
「あはははははははははははははははははははははははははははは!!」
なのに狂笑は鳴り止まない。
縛鎖から解かれたのをこれ幸いと穴から飛び出て再び挑んでくる。
「せっかくいい体やのに、背中の尾っぽびゅんびゅんさせるだけって……他に何かあるやろ? ここまで来て出し惜しみせんといて?」
確かに刃は通っているのに。血を流しているのに。臆した気をまるで見せない。
喜悦。悦楽。表情には愉しみだけだ。
触れた全てを例外なく壊し散り飛ばしてきた無惨の攻撃。
鬼狩りの剣士が何人いようが誰一人逃れられない。上弦の鬼が何体向かおうが耐えられない。
それがこの小娘には通じない。尽くをかわし切るのでも、再生力で張り合うでもなく、単純に肉体の頑強さで張り合ってる。
殴り合い。
虚弱な人間の頃も強靭な鬼の頃も、そんなものはこの方体験した事もない。
千年の生で、この島でさえも起き得なかった初めての状況が無惨に襲い来る。
どれだけ攻撃を受けてもすぐに再生する無惨。
攻撃を受けても倒れない酒吞。
長期戦になれば、圧倒的な生命力を保有する無惨の方に天秤が傾くのは自明の理。
だが短期戦であれば、こうして拮抗する。めだかとの戦いがそうであったように。
そしてこの場合、無惨にとって時間が長引くのは決して有利に運ぶだけではない。
目の前の敵に気を揉んでいる中で、もしまた邪魔もの集まって来ようものなら。それが無惨を追い回す鬼狩りであったなら。
形勢が、徐々に変わりつつある。
『ぞわり』と、無惨の背筋を見えない手が撫ぜた。
『それ』は千年の時の中で常に感じていた感覚によく似ていたがどこか未知のものがあった。
“もういい。もう付き合ってられない。“
無惨は戦士ではない。
王族や剣士のような命より勝る誇りというもの、生き様を重視する事もしない。
鬼に成る女も、鬼そのものの小娘も、殺したところで太陽克服の近道どころか時間の無駄でしかない。
路傍の石がひとりでに足元に転がって挫きにかかるようなものだ。知性ある生物は石にいつまでも拘泥したりはしない。
既に無惨の思惑は如何にこの場を脱して安全を確保するかに向いていた。向こうとしていた。
それを途切れさせたのは、天蓋が落ちてくる断末魔の音だ。
これはどういうことだ。
なぜ、天井を支える糸がひとりでに切れていく。
血を与えて強化した糸が瓦礫を抑えられないほど脆弱なわけがない。現に今までは問題なく維持できていた。
であれば力が弱まってるのは強化が足りないのではなく、力を吐き出す本体に問題があるという事になる。
自分の意思ひとつで自由に操れるはずの駒が、命令に反する行動を取っているという事に。
「何をしている!! 累!!」
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