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真実の……バトルロワイアル 2

784鬼神爆走紅蓮隊・轟 ◆0zvBiGoI0k:2021/04/21(水) 08:33:20 ID:4zUlIlqM0

「ああ臭う、臭う。乳臭いわぁ。産まれての赤ちゃんかいな。あっちこっちふらふら生き迷って、まるで夜道におっかさんとはぐれて、わんわん泣く童子(わらし)みたい。
 あの牛乳女より乳臭いなんて、よっぽどやねえ。ま、あれほど歳いってないぶん可愛げもあるけどな」
「う……?」
「はい、おはようさん」

 半覚醒の心ここにあらずで顔を上げためだかの眼に入ったのは、にまにまと微笑んでる鬼ではなくて───その手に収まってる赤い肉塊。

「ぁ────────────ああぁ………………」

 震わせる心音に、剥き出しの肉感に、溜まっていく血の一条。
 目の前の酒吞も、戦っていた無惨も忘れて、宝石のような輝きに視線を釘付けにされる。
 それ以外に何も目に入らない。好きないろをして、欲しいかたちで、おいしそうなものだからと、忘我のまま手を伸ばす。

「だめ」

 心臓に心奪われ盲になっていた両目に、二本の指が一辺の躊躇なく深く突き入れられた。

「ぃっ!? あああああああああああああああっ!?」
「ああ、ごめんごめん。痛かった?。そやろねぇ。目玉両方とも潰れてしもうたもんねぇ。
 でも、あんたはんもいけないんやで? ひとのもん勝手に食べようとするなんて、人でも鬼でも、おイタがあるのは当然ちゃう?」
「ぅ、うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ………………!」
「ああ、もう、よしよし。泣かんの泣かんの。別にあげないなんて言うとらんやろ?
 気持ちは分かるで? こないな珍味(うましもの)、うちかていつまでも見せびらかしてたら我慢できんもんねぇ」

 灼熱の刺激と、流し込まれた魔力で盲目から回復しないめだかの鼻先に、ぶよぶよとした感触のものが押し付けられる。
 触れる距離からする芳醇な匂いにまたも我を失いかけたところで再び鬼が呼び止めた。

「待て」

 ……度重なる傷と急激な再生の循環の影響で一時的に幼体化していためだかの思考が、耳元でした声に染め上げられる。
 血液の塊がつけられてる事すら忘れるほどの、濃くて近過ぎる死の香りに。

「待て、やで。
 うちがいい言うまで、口つけるのはお預け。わかる?
 出来なかったらまた目玉ほじくり貫くからな? これももうあげへん。わかった?」

 眼球をくり抜かれたことで動物的な本能が食欲を上回ったのか。堪えつつも大人しく跪く。
 両手と両膝を地面につけた姿勢。土下座か、飼い主の許しが出るまで餌を待つ犬かどちらかだ。

「待て」

 涎が顎に垂れて糸を引く。
 まだ許しは出ていない。

「待て」

 体が痙攣して制動できない。
 前に乗り出そうとするのをぎりぎりで抑止する。

「まーて」

 もう限界だ。胃は捩れて血液がささくれだったように痒くて、一秒だって我慢ができない。
 早く。早く。歯の根が合わずガチガチと鳴り恐怖が欲を飲み込んで、どうなっても構わないから食べたいと嗚咽する。

「はい、ええよ」

 "は"の一音が聞こえたところで、張っていた緊張の意図がぶつりと切れていた。
 一も二もなく顎から飛びついてかぶりつく。口元が汚れるのも構わずに歓喜を咀嚼する。
 目尻から溢れるのは味への耽溺による涙なのか、それとも逆流した血か。

「よく我慢できたねぇ。えらい、えらい。たぁんと喰らいや。
 おいしい? おいしい? そうよかったねぇ。ふふ」

 礼儀も尊厳も打ち捨ててかっ食らうめだかの頭を撫でながら、鬼は笑っていた。
 ここまでの遣り取りの中で、終始、ずっと笑っていた。
 けらけらと愉しげに笑うのではなく、愛おしく、微笑の類で見つめながら。
 ……片手の指で少女からくり貫いた両目を舌で転がしながら。心臓を抜き出して被った鮮血で着物を着飾って。
 母の慈愛と呼ぶには、刺激が強すぎる光景だった。

「む……」

 心臓という血の凝縮を食らった事が『完成』を補強するのに繋がったのか、今度こそめだかが意識を取り戻す。
 損傷はまだ循環(ループ)から抜け出せない、半死人だが。

「やっと目、醒めた? じゃあ改めて、おはようさん」
「ああ、おはようございます……またも鬼、か。動物に避けられ人にも嫌われたのにこうも縁があるなんてな。
 ところで両目が一度潰されたかと思うほど痛いのだが、何か知らないか?」
「ああそれ、やったのうちやわ。うち」
「……なるほど。それが鬼流の挨拶なのか。常ならば指摘していたが郷に入っては郷に従えというしな……いやけどやっぱ引くなその礼儀」
「愛殺? ああ挨拶ね。そうそう、鬼と話するんならこれぐらい、軽うい前戯。今のうちに慣れときや」
「ああ、ともかく今後の交流に活かすとしよう」


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