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真実の……バトルロワイアル 2

733FILE■■■■■■■■【序章・鏡面異界深話】 ◆0zvBiGoI0k:2020/09/14(月) 21:17:17 ID:p2F40R1k0

 

「……!?」


 物思いトリップに耽っていた精神が、慌ただしい物音で引き戻された。
 救護室の扉が開かれはしなかった。ただ扉の前を走って通り過ぎただけらしい。
 
「……会長?」

 根拠のない妄言は、何故だか否定しきれない色が混じっていた。
 どうしてそう思ったのか。ただ直前まで彼のことを考えていただけで、その妄想の延長ではないのかと自問自答する。
 まさか足音だけで会長であるかを判別できるまでに極まってしまったのか?それは流石にドン引きものでは?いやその程度は容易に見極められてこそ妻ではないのか。誰が妻よ!

「……」

 混乱する脳内議論をよそに、体は正直だった。
 おそるおそる、念の為荷物を持って扉の外を窺い、走り去った音の方角へ向かう。
 四宮の家でも流石に目にしない重厚な銃器の感触が精神を補強した。あるいは狂気を加速しているのかもしれない。
 足音を出さないよう、注意を払って廊下を進む。十歩分進んだのか、それとも百なのかも曖昧になる緊張した空気が満ちていく。

 そして、かぐやは見つけた。
 窓はなく電灯が行き届かず仄暗くなった廊下の窪みで、肩で息を切らす後ろ姿。金の髪に、黒の制服。
 
「会長!」

 その背格好を見間違えるはずがない。
 隣立つ位置から網膜に焼き付くほど見てきた白金御行の後ろ姿だ。たとえ百万の群衆からでも見分けられる自信がある。
 立ち込めていた不安はかき消えて、再会できた喜びと安心感が脳髄を包んでいく。

「よかった……無事だったんですね……! わたし、ずっと不安で……」
 
 普段生徒会に晒している、凛としたかぐやの態度からは多少乖離した弱々しさかもしれない、とどこかで思う。
 けれど、それを包み隠せるだけの余裕は今のかぐやには保てはしない。
 疲弊した心身を支える拠り所だった白銀と会ったことで一時的に普段のペルソナが剥がれ、幼い面のかぐや───いわゆる(アホ)状態に以降しかけていた。

「ん…………………ああ、ああそうか。そうだよな。もうすぐ、言えるんだったよな。ならいいか、うん」

 呼びかけられて振り返った白銀は、どこか上の空なままにかぐやを呆と見つめ。

「ああ。俺も、お前にずっと会いたかったよ」
「──────!」

 かぐやの心臓に、稲妻が直撃したかの如き電撃と熱が走る。
 顔が熱い。手汗が凄い。羞恥と多幸感がブレンドされた脳がシェイクされていく。
 言葉の通り安心を確かめただけにしても、実にストレートな告白の響きに心臓の鼓動は早まるばかり。
 これはもう、一日に摂取できるハッピーの量を越えてしまっている。
 日々更新されていく胸キュンワードで早くもトップ3まで昇り詰めていた。

「そ、そそそうだ会長、制服もそんなにボロボロで、ひょっとして怪我をしているんですか? たいへんです急いで救護室へ行きましょう。
 ちょうどさっき看護実習を受けましたので処方はバッチリです。疚しい気持ちなんてこれっぽっちもありませんのでさあ早く上着をこちらへ───」
「ん? ああ、大した事はない。ちょっとヘマをしただけだ。今の俺なら心配いらないさ」
「そう、ですか」

 にべもなく拒否されて、ちょっとシュンとなる。
 でもこんな状況でもクールさを失わないのは流石だと惚れ直す。

 それにしても───今日の会長は雰囲気が違って見える。
 所々擦り切れて破れた制服は、生徒会長らしい模範的な着こなし方とは違うギャップがあっていい。
 長袖でわかりづらいが少し筋肉質っぽくて、ワイルドみが増している気がする。
 特にいつも以上に濃くなった目の隈が素敵だった。一度徹夜したのを介抱した時よりさらに深刻になっていて、更には目も充血している。

 ───ああ……やっぱり無理してるんですね。私の前だからって格好つけるなんて本当に……もう。 

 見た目が好みストライク過ぎて、一周回って逆にクールダウンしたかぐやの思考が落ち着きを取り戻し始めた。
 会長に会えたことは心から嬉しい。
 こんな非現実的な状況でもいつもの生徒会長らしく振る舞っているのにも、誇らしさと可愛らしさが同居してむず痒くなる。
 けれども、それなら自分ぐらいには、少しぐらい弱気を見せてくれたっていいのに。
 それぐらいの信頼関係は構築できてると思っていたのに自惚れていたのかと、我侭とわかっていても不満をこぼしたくなる。


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