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真実の……バトルロワイアル 2

718FILE■■■■■■■■【序章・鏡面異界深話】 ◆0zvBiGoI0k:2020/09/14(月) 20:53:51 ID:p2F40R1k0



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 ───鏡は、異界と繋がる門である。



 古来より、人は自分と一寸違わぬ像を映し出す鏡に神秘性を見出してきた。
 古代邪馬台国の女王が持つとされる神獣鏡。日本の三種の神器の一つでもある八咫鏡。
 当時にとっては高級品である事もそうだが、鏡とは王朝の栄光を象徴するシンボル、神と交信する祭具でもあった。

 そして、人は鏡の中に異世界を見た。
 海外に目を向ければルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』が有名だ。
 鏡に手を触れれば指が沈み込み、そのままこことは別の世界への入り口になっている物語は、誰しもが一度は思い浮かべる。
 現実では目の前の風景をそっくり反射するだけでしかない鏡面に、人は想像力によって有り得ぬ『奥行き』を生み出したのだ。

 また別世界の入り口になるのは鏡に限らない。
 古くは水面。竜宮城の逸話にあるように、海底は地上と法則の異なる世界が広がっていると信じられた。
 見えない、という事は智慧をもたらす触媒となり、『物語』の基となる。
 現代では鏡はどんな世帯にも普及し、テレビや窓ガラスと、街の至るところに『映すもの』が溢れ返るようになった。


 神秘性が薄れるのと入れ替わりになって、鏡は『怪談』の題材として扱われるようになる。


 深夜二時に合わせ鏡をすると、鏡の中から悪魔が出てきて、取り憑かれてしまう。
 夜中の二時ちょうどに鏡を覗き込むと、鏡に死んだ人が出てくる。
 十二時ぴったりに合わせ鏡をして自分の顔を映すと、将来の結婚相手の顔が映る。 
 数千回に一回鏡が割れる瞬間にだけ繋がる、失われた鏡の中の世界がある。


 学校の怪談やおまじないで聞いた覚えのある人もいるだろう。
 鏡の中の自分を見るという行為には、呪術的な意味合いも含まれている。
 日用品として普及するにつれ鏡は人々の生活で身近となり、ゴシップや噂話に用いられる事が多くなった。



 鏡と怪異の関連を示す一例として、ここにある記事が残っている。
 ある時期に発生していた連続失踪事件について、モバイルネットニュース配信会社が書いた記事だ。
 鏡に映る、動物を人型に当て嵌めたような造形をした異形の怪物。
 この怪物は現実に存在せず、『鏡の中の世界』にのみ棲息している。
 失踪事件は、この怪物が餌として人間を襲っていたのが真相なのだという。

 当然信じる者は皆無だった。CGによるデタラメだと猛批判を受け会社は炎上。それがきっかけで一時は事務所が差し押さえになるまで追い込まれている。
 取り返した後には炎上の波も消え、事件についても、まるで『はじめから事件そのものが無かった』かのように誰も追求せず風化したという。

 これはあくまで一例にすぎない。
 似たような話は、ネットを漁れば幾らでも出てくる程度の眉唾でしかない。
 だが、仮に。埋もれたその中のどれかが『本物』であったとしたら。
 それを嗅ぎ取れる者が、真実を追い求めた結果辿り着いたとしたら。



 鏡は深淵に似ている。
 覗き込んだ時、怪物もまたそこから覗き込み、己を見つける誰かを引きずり込むのを待ち続けているのかもしれない……。




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