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真実の……バトルロワイアル 2

671眠れ、地の底に ◆0zvBiGoI0k:2020/06/02(火) 19:12:01 ID:qa8Zn0Lc0


「!」
「!?」

 地を揺らす振動に、二人は大地でなく空を仰いだ。
 隣のエリアにそびえ立つ高層マンションが、音を立てて根本から崩れ落ちていくのを七実は眺めた。
 禰豆子は、違うものを見た。

「ウ────ア"ア"ア"─────────!」

 視力の限界点で見えたものを起爆剤に腕を振り上げる。すぐに七実は仕留めんとするが、目潰し用に撒かれたと思われた血が桜色に発光し、炎となって七実の視界を塞いだ。
 炎の壁に七実は気を乱さず、手刀を払って渦をかき消す。この一瞬の攻防の時が明暗を分けた。
 崩落したビルの破片がここに落ちてくることはなかったが、押し出された大気が粉塵を巻き上げた。
 さながら入道雲のような煙幕となって周囲一帯を蹂躙し、七実のいる場所にまで殺到したのだ。
 視界を奪い、目を使えなくする。とがめが見稽古を封じるため使った奇策。
 関わっていないビルの倒壊は図らずもいいタイミング───あるいは悪いタイミングが重なって逃走のお膳立てをしてくれた。

「見失ってしまったわね。でも、聞き失ってはいないわ」
 
 目くらましは確かに見稽古を破る数少ない策だが、それは以前までの七実に有効の対策だ。
 目が使えないのなら耳を使うまで。雷の呼吸共々習得した音感は、遠ざかって走る足音の位置を正確に把握する。 
 足音と心音。近づけば骨と筋肉の軋み。これだけ揃えば特定は造作もない。気絶した悠も背負ってるのだろう、この速度なら十分追いつける。……が、七美は追わなかった。
 その場で咳き込み、落ちる汗と止まらない息切れ。例によって、時間切れである。

 迫りくる煙に、汚れるのは嫌だったので忍法足軽で重さを消して洗礼をかわす。
 ふわふわと舞い手頃な場所で降りるが、二人を完全に見失ってしまった。
 加えて七実は方向音痴だ。音が聞こえなくなったのなら目的地に辿り着けない。
 戦いでは終始圧倒していた七実だが、勝負の上では向こうの粘り勝ちといえた。

「空から見ればわかるかもとも思ったけど……知性がなさそうで意外と考えてるのね─────ああ」

 二人とは違う音の感触。遠方で、記憶していた人物の『音』が途切れた。目は届かなくても、何が起きたかを音響は雄弁に理解させた。

「はあ。草を毟りたいのに、どんどん悩みの種が植えられていくなんて」

 七実は息を吐いた。疲労でなく、憂鬱によるため息だ。
 自分から奪っておいて取り返して見せないと見栄を切ったのだから、流石に少しバツが悪い。
 なによりこれで七花が腑抜けになってしまうのでは当初の目論見そのものがご破算だ。

「けど、そうね」

 なったものは仕方ない。それより建設的に今後を考えてみる。
 自分を殺した時の七花。あの時は髪を落とし、次は首だと脅しただけでもあの怒りようだ。
 なら過程はどうあれ、とがめを守れなかった自分を七花は。

「とがめさんが死んだと聞けば、今のあの子でも本気で私を殺してくれるかしら」


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