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真実の……バトルロワイアル 2

666眠れ、地の底に ◆0zvBiGoI0k:2020/06/02(火) 19:05:33 ID:qa8Zn0Lc0


 世界に許されるか、生きる事を許されるか、その一切に関心を持っていない。心底、本当にどうでもいいといった口調だった。

「私、一度死んでるんです。比喩とか錯覚とかじゃなく、現実の肉体機能が停止するという意味でですよ。
 どこまでも私の身近にありながら、決して私の命を奪おうとしなかった、死。手触りだけはよく知ってるからよくわかるんです。
 胸を貫通する腕の衝撃、飛び散る血肉、完全に停止する肉体の活動。私は間違いなく本物の死を味わい、そして死にました」

 で、気づいたらここにいました。と手を広げる。

「ひょっとしたら死後の世界かもと思いましたがそれも違うようで。どうしたものかと考えてたら、見つけたんです。"あまぞん"というのを。
 黒い女の子で確か、いゆ、と言ったかしら。ご存知ですか?」

 負傷で早鐘を打つ心臓が一際強く跳ねる。イユ。悠には縁ある知己の子。親に殺され、死人のアマゾンとして酷使される子。

「ああ、知ってるんですか。なら話は早いですね。少し驚きました。私は生き損ないの死に体ですが、まさか本当に死んだ体を動かしてるだなんて」

 誰が考えついたんでしょうね、そんなもの?
 責めるでも憤るでもなく、ただ疑問なのだろう。七実は首を傾げた。

「……イユは、どうした」
「殺しました。いえ、もう死体でしたし、壊しましたが正しいかしら。少なくとも健常な人間の肉体とはいわないでしょう。いいとこ肉の塊」

 聞くまでもない。既に放送でイユの名は呼ばれていた。そのイユを殺した彼女がアマゾンに嫌悪感を持っている。
 感情のないイユに他人を苛立たせる真似はできない。ならばイユの体、死者を動かすアマゾンの体こそが。

「とにかく、そう。死体を動かす術。そんなものがあるなんてね。
 ようやく死ねたと思ったら死に損ねて、ひょっとしたら自分の体もあんな風に、死んだ後も他人に動かされてるかもしれないだなんて。
 こんなに不愉快なことって、ないでしょう?」

 声色も表情は冷淡な、金属の冷質さのままで。

「なので、とりあえずここにある"あまぞん"はすべて毟る事にしました」

 首の上にギロチンでも掲げられたような怖気を悠は抱いた。
 人とも獣とも違う、無機質な殺意というものに初めて底冷えした。
 まるで庭先に生えた雑草が景観を損ねて邪魔だからみたいな軽さで、虐殺を宣告した七実に。

「君はアマゾンじゃない!臭いでわかる、ましてやイユみたいな……!」
「けどあの"あまぞん"は死体から作るんですよね?あの様子からして承諾が必要でもなさそうだし、死体さえ残ってれば後は好きに改造し放題。
 死んでれば文句も抵抗も出てこないわけだし、今後死んだら絶対にあれにされないとは決して言い切れない」

「ほら、こういうのって、可能性を生んだ時点で駄目でしょう?」

 アマゾンを狩る者には理由がある。
 任務のため。生活のため。使命のため。欲望のため。憎しみのため。単なる遊び半分なのも中にはあったろう。
 正しきも悪しきも生きる行為には等しい価値であり。それぞれに命を張って、時に失って、目的を実現させてきた。

 けどこの理由だけは、想像したことはなかった。
 絶句だった。七美の語る理由は理解を完全に越えていた。
 そんな───事実かどうかもわからない、ひとりで抱いた妄想のせいで、自分達は殺されるというのか?

 駄目だ。
 この女を行かせてはならない。ここで生かしてはおけない。
 悠も、禰豆子も、あるいはただ単なる邪魔者まで。 
 コレは、悠の守りたいものを全て壊すモノだ。

 全力で地面を蹴りつけて距離を詰める。足から爆発が起きたと見紛う勢い。
 勝機はある。散々脅かされた対価に得た女の欠点、虚弱な体。たとえ相打ちでも押し切る覚悟で肉薄し、
 



「雷の呼吸、一の型───"霹靂一閃・神速"」




 暗転。
 反転。


 見えたのはそこまでだった。
 体に落ちた稲光に、悠の意識は力づくで断線された。


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