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真実の……バトルロワイアル 2
536
:
打々(蝶々)発止
◆0zvBiGoI0k
:2020/02/09(日) 21:38:13 ID:tHjlpQeg0
「らァッ!」
人体を殴ったのとはまるで異なる打撃音が響き渡る。
鍛え上げた格闘家といえども悶絶必死の急所。最悪内蔵破裂に至るほどの会心の最大威力。
「人形殺法・春一番」
突き出された前二脚を腕で受けられたのは、人形を打ったゆえの手応えのなさから来る違和感だ。
臓器もなければ痛覚もない日和号に肝臓打ち(レバー)も意味がない。どれほど痛打を与えようとも、機能停止に至るまで行動に一切の支障は出ない。
「ちっ……」
後退する広斗は唇を噛み締める。受けた腕に走る痺れと、垂れ落ちる鮮烈な赤い水。
日和号が蹴り飛ばすと同時、手首が文字通り旋回して下がる広斗の腕を掠めたのだ。
人形なら関節動作の限界がない。そして、人形である以上、牽制やフェイントにも引っかからない。
開発者が意図したかはともかく、近接戦の巧者であるほど日和号の前には隙を晒すのだ。
「人形殺法・竜巻」
内側に入る隙も逃げ場もない、四方からの同時の斬り付け。
辺りの壁も、調度品も、構わす切り裂きながら前進する。戸棚が割れ、ガラスが四散し、砕けた鏡面が光に反射する。
鬼であればいざしらず、太陽光発電という戦国期に先進的にも程がある動力源を持つ日和号には何の障りもない。目が眩む不手際も起こさない。
だが、今回に限っては――――――それが仇となった。
「言っとくが」
今度は、余裕をもって打ち払えた。
バイザー越しの視界からは、これまでにない情報が送られてくる。さっきよりも遥かに緩慢になった動きを見切り、流して拳を叩き入れる。
反応が追いついたのはスーツにより身体能力が増幅されたからだが、複数に迫る刀を的確に捌き胴体に拳を当てたのは鍛錬の賜物。
使う気は元々なかった。
同梱された説明書を見てもビタイチ信用ならなかったし、武器を使って戦うのは自分の、兄弟の流儀に合わない。
何よりその名前とレリーフの意向がこの上なく気に食わないのが一番の理由だ。使うことはないのだと考えていた―――こうして本物の人外と会うまでは。
日和号が周囲を斬り刻んで到達する前に『変身』は完了していた。飛び散った鏡面に映ったベルトが腰に装着され、デッキをはめ込む。
黒衣だった広斗の全身は、なお黒い装甲に覆われていた。
黒い龍の力を纏う鎧―――仮面ライダーリュウガ。
九つの龍に反抗してきた男が使うには、皮肉が過ぎる力だった。
「仕掛けてきたのは、てめえが先だ。ぶっ壊されても文句言うなよ」
「人間・認識。即刻・斬殺」
敵対者の変化には目もくれず、殺人人形は命令を遂行する。
『超常』の土俵を同じくした戦いの幕が上がった。
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