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真実の……バトルロワイアル 2

489南海怨身八裂心技 ◆3nT5BAosPA:2020/01/09(木) 02:00:50 ID:8INewzUQ0


 すっかり陽光の白みが大半を占めた空間を駆け抜けた先で、猛丸の目の前に現れたのは、地面に倒れ伏す犬養幻之介だった。

「ゲンノスキ……?」

 口から洩れた言葉に、返事は無い。幻之介は胸に開いた穴から多量の血を流している。死んでいた。
 兄弟の如く親しんでいた男の死を理解した途端、猛丸は腕をわなわなと震わせながら、幻之介の遺体を抱きかかえた。とっくに血は乾いているため、体が汚れることはない。どうやら死んでからそれなりの時間が経過していたようだ。
猛丸の姿を物陰から見つめるふたりの男が居た──七花と千翼である。
 追跡の末に無事追いついたのだが、彼らはそれ以上の行動をしていなかった。七花は千翼が次に出す指示を待っていたし、そして千翼は──

(あの男は……)

 亡骸を前に慟哭する半裸の男を見て、己の心が痛む感覚を味わっていたのだ。
 千翼にとって猛丸は、言葉を交わした事も無い見ず知らずの人間だ。だがそれでも猛丸の様子から、彼が抱きかかえている遺体とどのような間柄だったのかは推測できる。きっと、大切な人だったのだろう。
そして、そんな存在を失ってしまった心境も、痛いほど分かってしまう。何せ、千翼はそれと同じ心境を経験したばかりなのだから。
 まるで数時間前の自分を見ているような感覚は、千翼の思考に暫しの停滞を生む。
しかし、何度目かの呼吸の後、彼は意を決したように告げた。

「……やるぞ、七花」

 躊躇はしない。するわけにはいかない。ここで止まるわけにはいかないから。
 そんな覚悟と共に出された千翼の指示を聞いた七花は、

「了解」

 と、先ほどと同じく短い返事をした。
 千翼とは対照的に軽い口調だった。

「何か作戦はあるか?」
「そうだな……」

 顎に手を当てて考える千翼。
そもそも、長瀬達と共にアマゾンを狩っていた頃から戦いの前線に立っていた彼にとって、指示を出すなんて役割は縁が遠いのだが、だからと言って全くの無計画で戦いに臨むわけにはいくまい。
 参考として、この島に来るまでのアマゾンとの戦い──そして、この島に来てからの参加者達との戦いを思い返す。
その後、彼が出した指示は、

「相手に反撃する隙を与えないよう、最初から全力で攻撃してくれ」

 だった。
 千翼が見た限り、このバトルロワイアルは常識を超えたような技や術を使う者たちが犇めく魔境だ。これから戦う相手が、そんな例外共の例から外れていないとは思えない。予想していない攻撃を出されても十全な対処が出来るほど連携が取れたコンビとは言い難い千翼と七花にとって、相手がカードを切る展開は避けるべき事態だろう。
 ならばどうすべきか? 答えは簡単。そもそもカードを切る暇を与えなければいい。

「了解。俺は全力で隙の無い攻撃をしよう──千翼はここから見ていてくれ」

 『全力で隙の無い技』にアテがあるのか、七花は与えられた指示をすんなりと聞き入れた。


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