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真実の……バトルロワイアル 2

488南海怨身八裂心技 ◆3nT5BAosPA:2020/01/09(木) 01:59:42 ID:8INewzUQ0
摩訶不思議なタブレット(薬剤のほう)を摂取したことで肉体の損傷がほぼほぼ治った千翼は、新たな同行者、あるいは協力者である鑢七花と共に、次の行先を思案していた。
 彼らふたりには行動の指針がある。
 千翼は参加者全員の殺害。
 七花は実の姉に拉致された所有者の奪還。
 どちらも荒事なしには成し遂げられない目標である。 
 その上、聞いたところによれば、七花の姉はかなりの強物らしい。
千翼を瞬殺した七花よりも、遥かに格上の戦士だという。
そんな参加者とこれから戦わなければならないという事実は、千翼を憂慮させるのに十分だったが、この道が先ほども述べた彼の目的を達成するにはどっちみち通らなければいけない道であることも、また事実であった。
 そもそも、今千翼がこうして生きて思考しているのも、『目的に協力する』という契約を七花と結んだからだ。
とはいえ、ここに来て「そんな相手に勝利する策なんて、思いつけない」と無能を晒せば、後に待っているのは七花によって齎される死くらいだろう。
 しかし、七花との契約を早期に達成してしまう、つまり彼の姉をどうにかする策をすぐさま提案するのも、それはそれで問題である。
その場合、『千翼を瞬殺した七花よりも、遥かに格上の姉を相手に目的を成し遂げた七花』から、ほぼ間違いなく用済みと認定されるからだ。
そうなれば、後の結末は自明である。
己にとって益となる良策を求めながら、千翼は七花から渡されていたタブレット(電子機器のほう)を取り出した。
 これはただのタブレット端末ではなく、支給品として配られたタブレット端末だ。ならば、その中にこのバトルロワイアルに関する何らかの情報が収められている可能性は否定できない。
そうして得た情報が、千翼が直面している難題を解決する糸口に繋がる可能性だって、同じくらい否めない。はずだ。多分。
 端末内にはアプリケーションがダウンロードされていた。画面を埋めるほどに犇めいているそれらの中から、目についたひとつをタップする。
画面が切り替わる。
そこにはいくつかのテキストファイルがあった。どうやら千翼が選択したのは、メモ帳のような文章執筆用のアプリだったらしい。
テキストのひとつを開く。
出てきたのは、このバトルロワイアルでアドバンテージを取れる重要な情報……ではなく小説だった。
物語にカテゴリされる文字列が、画面内に並んでいる。
他のファイルを開いてみても、出てくるのは全て小説、あるいはそれに関するプロットのようなものだけだった。
バトルロワイアルに関する情報は1bも存在しない。
物書きが使っていたタブレットだったのだろうか。そんな代物が如何なる経緯を辿って七花の元に辿り着いたかは不明だが。
 
「すげえな。本当に使えてる」

 千翼の対面から画面を覗き込んでいる七花は、感心した様子で呟いた。

「残念だけど、意味のない情報しかなかったぞ」

落胆と共に、千翼は執筆用アプリケーションを閉じた。
 続けて他のアプリの調査をするのもアリかもしれないが、その必要性は限りなく低いと言えよう。今は他のアプリケーションならぬアプローチを探した方が良さそうだ──その時だった。
 何かが千翼たちの近くを通り過ぎていった。
 それは凡人では目に追えないほどの速度で地を駆けていたが、七花は剣士としての感覚で、千翼はアマゾンとしての探知力で、その存在を捕らえることができた。
 気配は北の方角に去っていった。千翼達には目もくれない様子だった。というより、あの急ぎ方は千翼たち、つまり殺し合いにおける己以外の参加者という最も警戒すべき対象よりも重要な何かが、行き先にあるように思えた。
 
「どうする」

七花は千翼に判断を委ねた。

「追うか? 今なら多分追いつけると思うぜ」
「もちろん追う」

デイバックにタブレットを収納しながら、千翼は言った。

「俺の目的はさっき話しただろ。だったら、アイツを見逃す理由はない。それに、お前と協力するためにも、まずはお前の強さを戦う相手ではない味方の立場から見る必要がある……と思う」
「了解」

 そういうことになった。




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