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真実の……バトルロワイアル 2

432出口のないメビウスの輪の中で ◆OLR6O6xahk:2019/11/18(月) 21:20:40 ID:5RmhQotg0







「これで良し。細工は終わった……」


眠るスモーキーの頭から手を離すと、満足げに独り言ちる。


雅にとってスモーキーは見どころのある男だった。
純粋な力量だけでいえば宮本明や煉獄杏寿郎の方が上だろう。
だが、体捌きや最後に見せた三次元的な動きは目を見張るものがあった。
何より満身創痍の身体で生に執着するその眼光と殺意は、凡庸な人間とは一線を画すものを感じたのだ。

そんな男が病魔程度で失われるというのは余りにも惜しい。
故に、自分の血を分け与えることに躊躇はなかった。
何時もよりも復活までのインターバルが長い事が少し気がかりではあったが、先程より遥かに穏やかな男の呼吸を見れば心配はないだろう。
じきに復活するはずだ。
そう考えて。
凄まじい轟音と衝撃が大地を揺らしたのはその直後の事だった。
震源地を見れば、雅が征服した東京の一等地に立っているような高層マンションが音を立てて崩れていく。
大きな闘争があったのは明白だった。


「では、先を急ぐとしよう。
参加者を狩り、吸血鬼として更に強くなったら…また会おう。スモーキーよ」


返事は当然ないが、雅はスモーキーの覚醒を待つつもりもなかった。
自分と相対した時の態度を見れば、この男が素直に自分の軍門に下るとは思えなかったからだ。
例え吸血鬼となっても稀に自分の支配に抵抗する者がいる。この男もきっとそうなのだろう。
自身のサイコジャックであれば自由意思を奪い完全に操縦することもできるが…それではつまらない。
折角この地に来て初となる眷属だ、どう動くかは分からないが暫く好きにさせる事とする。
その代わりとして、二つあったデイパックの片方を献上品として貰って行く事とした。


「中々いいデザインの服じゃないか」


ジープのシートに収まり、ごそごそと中を漁ってみれば中を漁れば求めていた服が出てきた。
変わったデザインだが、そもそも服のセンスが昭和で止まっている雅からすれば些細な事だった。
袖を通してみると、サイズも少々胸部分が苦しいくらいで問題はない。
着替え終わると、本土を征服し暇つぶしに得た知識をもとにジープのエンジンをかけた。
よく利用する乗り物はもっぱら神輿の彼にとって運転は初体験だが、恐れる事無くアクセルを踏む。


「……無名街に、家族か」


ジープを危なっかしい手つきで操作しながら、スモーキーの言葉を反芻し「くだらない」と彼は斬り捨てた。
雅もかつては一族の人間であり、家族と呼べる者もいた。
だが彼にとって家族とは、大嫌いな人間というなれ合う弱者でしかなかった。
それ故に弱肉強食という理の通り、一人残らず強者である雅の糧となったのだ。


「やはり人間は愚かだよ…なぁ、明」


愛しき宿敵の顔を想起しながら、ジープを走らせる。
行先は特に決めてはいない。強いて言うなら北の施設――病院でも目指すかという気分だった。
あの爆発だ。脆弱な人間どもならば医薬品を求めて病院を目指すだろう。
それに、もしかしたら自分を殺しうる薬品である501ワクチンが病院にあるかもしれない。

もちろんこれは可能性としては低い。
だが様々な不可思議な道具を用意したBBならばもしかするかもしれない。
それに、不死の自分を殺し合いに招いたからにはそうでもしなければ人間どもと釣り合いが取れないだろうという推察があった。
そしてきっと―――明も同じ考えに至るはずだ。


「明に、煉獄に、そして吸血鬼とは別種の鬼か……
いやはや与えられる武器はしけているが、まるでテーマパークだなここは。
そしてククッ……、あの男……スモーキーはどうするか楽しみだ」



テンションが高揚し、常に刺激的なこの島を雅は完全に気に入っていた。
これまで会ったどの人物も、明のいない古ぼけた島国では見られなかった者ばかりだ。
果たして次に出会うのは一体いかな存在か。
クリスマスを前にした子供の様に期待で胸を膨らませて、吸血鬼の王は殺し合いを満喫する。


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