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真実の……バトルロワイアル 2
431
:
出口のないメビウスの輪の中で
◆OLR6O6xahk
:2019/11/18(月) 21:18:19 ID:5RmhQotg0
◆
斬刀・鈍を支えにハァハァと荒い息を吐く。
正しくギリギリの勝負であった。
一撃で勝負が決められていなければ、倒れていたのはスモーキーの方だっただろう。
「俺は、家族のために夢を見ることを…無名街で生きることを決して諦めない」
世界から見捨てられた無名街の住民であるスモーキーはそうすることでしか生きられない。
だがしかし。
「―――そうか、なら人の夢など下らんものだと、私が手づから示そう」
世界はそんな彼の夢を許さず、いつだって取り立てていく。
剣豪、宮本武蔵でも半身を斬られればすぐさま追跡することは困難だ。
しかし吸血鬼である雅にとって、半身の喪失程度では行動不能にすらならない。
ゆら、と背後で立ち上がる気配と殺気をスモーキーは感じるが、再び鮮血の混じった血を吐き崩れ落ちてしまう。
一撃で仕留める事ができなかった時点で、勝敗は既に決していたのだ。
「ハ、中々に見事な飛びっぷりだった」
地に這う敗者・スモーキーを見下ろし、勝者である雅は上機嫌そうに己の斬られた半身を持ち上げる。
それを切断面に着けるとまるで斬られた事など無かったかのように瞬時に癒着した。
スモーキーはそれを虚ろな目で見つめ、また血の塊を吐いてモッズコートを汚していく。
斬撃は初めから雅には通用せず、彼に勝ち目など無かったのだ。
「死ぬのか、スモーキーよ。あれほどの跳躍を見せたお前がそんな病ごときで」
憐れむような瞳で、雅は瀕死のスモーキーを見つめた。
だが直ぐに元の邪悪な笑みに戻り、スモーキーに告げる。
「小腹を満たすつもりだったが、気が変わった」と。
「お前は私が助からないと言ったが…私はお前を助けてやる」
雅はそう言って自分の腕に切込みを入れ、その場所からぽたぽたと赤い雫が垂れる。
それを見た瞬間、ぞくぞくと悪寒が奔った。
何とか雅から距離を取ろうともがくが、裏切り者の五体は言う事を聞かない。
せめてもの抵抗として射殺す様なギラギラと光る瞳で見つめるが、当の本人は笑みを深めるばかりで。
だから瀕死の身体に垂らされる血を防ぐ術は、彼にはなかった。
かくして燕は地へと墜ちる。
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