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真実の……バトルロワイアル 2

394アザナエル ◆0zvBiGoI0k:2019/11/09(土) 04:19:17 ID:lo0/.jkY0


 許し難い略奪に、身を焼き焦がすほどの情念がジウの内面を支配する。
 この手で殺したミクニが、あの女の中で息づいてるようで我慢がならない。
 ミクニを分かっていいのはジウだけだ。あいつを記憶していていいのは僕だけだ。同じ学校の生徒ですらない見ず知らずの女が理解していいわけがない。
 だから、殺さなくては。死んだ者が生きているのは、おかしいのだから。

「これ以上、僕とミクニとの思い出を奪うんじゃない!!」

 愛憎か悲哀か絶望か。
 あらゆる感情がないまぜになった叫びを上げ、立香に重なるミクニの虚像ごと斬ろうと走る。

「――――やっぱり、泣いてるんだね」

 声は聞こえなかった。
 聞こえたとしても確かめることは出来なかっただろう。流れた水さえ蒸発するこの熱気の中では。

「清姫!」

 蒼炎が舞い踊る。
 愛した人に拒絶された憎しみが生んだ狂気の火は、ジウを狙わずにその周囲に燃え広がっていく。
 その時、ジウにある剣士としての直感が、ここでの戦闘の継続が不可能であることを知らせた。
 憤懣に狂いそうになりながらも停止して急速反転。一度に取れる限界量の千刀を抱え即席の盾として炎を領域へ飛び込む。 
 まだ火の手が周りきってなかったのが幸いだった。持っていた千刀の融解と引き換えに火傷を最小限に抑えられた。境界線を抜けた後、放置されていたミクニのデイパッグを拾い上げ全力で離脱する。

 追ってくる気配はない。後ろを振り返ってみれば炎の蛇がとぐろを巻いている幻想的な光景が映った。
 やはりあれは熱と酸欠でジウを倒れさせる狙いだったようだ。殺す気はないと言っていたのは反故にしたかと思ったが、まともとは思えない。普通ならそのまま蒸し焼きだ。
 名簿にあった名前から、蛇と化した女に隠れた鐘ごと焼き殺された僧侶の伝説を思い出す。
 
 (クソッ……あの女はまともにやっては勝てない。手の内が読めなさすぎる)
 
 術もそうだが、年齢に不釣り合いなほど経験豊富な相手だった。
 ジウが身につけた技量はラブデスター最後の実験の仮想現実(ホログラム)で現実と別の時間を過ごした結果得たものだが、あの女も似た経験があるのか。
 ともかく今は離れなくては。派手な炎は朝でも格好の的だ。別れていた仲間や危険人物が寄ってくるかもしれない。まさかそこまで考えていたのか。

 顔は覚えた。殺す数も、居場所も当たりがついた。
 隙を窺う機会はいくらでもある。死ぬまで殺し続ければいつかは死に絶えるだ。
 熱が引いた後も、殺意の炎は燃え盛り、灰になるまでこの体を殺戮の装置として駆動させる。
 あるいはもう屍体になった肉に残る鬼火なのかもしれないが、それがどうした。
  
「―――お前のせいだぞミクニ。お前が僕を残したから、お前が残したぜんぶが死ぬんだ」
  
 虚ろに呟く言葉に、返ってくる声はなかった。


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