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真実の……バトルロワイアル 2
352
:
別問題なんだよ
◆0zvBiGoI0k
:2019/10/24(木) 23:38:24 ID:iDmGFlA.0
◆
慣れてしまった喪失の味が喉元を通り過ぎる。
仲間を、肉親を、師を、失う度に辛酸を舐めさせられてきた。
もう奪わせはしまいとどれだけ意気込んでも、人は死ぬ。
吸血鬼を斬り、邪鬼を刈り、亡者を殺し、アマルガムを討つだけ強くなっても。
傍にいないというだけで、人は鬼に貶められ、そして死ぬ。
放送を聞き内容を記憶して、すぐに明は家の玄関を抜け外に出て、塀に背をもたれかけていた。
クラゲの怪物の対決以来戦闘はなく体力の消耗もしてないが、やはりあの二人の死が思った以上に堪えてるのだろうか。
本土に渡ってから最も付き合いの長い二人だ。吸血鬼撲滅の戦いに荒れ果てた明の、少ない心許せる相手だった。
鮫島と勝次が死んだ今、明の知り合いは最早あの雅のみだ。
雅。あの吸血鬼はこの殺し合いも余興の戯れとして満喫している事だろう。
あの元凶を殺す事こそが今の自分の生きる理由だ。この場で何より優先すべき事柄であり、子守りに興じる暇はない。むしろ雅との戦いに巻き込まれる危惧を思えば遠ざけるのが気遣いだ。
ならばさっさと家を去ればいいのだが、明は離れない。
知り合いの死に少なからずショックを受けている上杉の様子が落ち着くまではここにいるつもりだった。
別に義理を持つ理由はないが、あの球磨川にいらぬ難癖をつけられて下手に邪魔をされるのも面倒だった。
奴の監視も兼ねて、二人の同行を受け入れたのだから。
「明さん」
背後からの呼び声に振り返ると。準備を済ませた上杉と球磨川が出てきていた。
「すみません、待たせました。もう行けます」
幾らか顔に憔悴が見られるが、だいぶ落ち着いてるようだ。目の光は死んでおらず、かつての勝次のような生きる意思が芽生えている。
まさか球磨川が激励でもしたのかと頭を掠めたが、すぐに取り下げる。どの道家の中で何が会ったかは自分とは関わりのない話だ。
「付き合うのはあのマンションまでだ。そこからは好きに動かせてもらう」
「はい。構いません」
『そりゃあないぜ明ちゃん』『幾ら仲間二人が死んで気楽になったからって』『まだ大事な人達が残ってる僕らを見捨てるっていうのかい』
「おい球磨川。ほんとお前黙っとけ今は」
上杉の制止が無ければそのまま殴って黙らせていただろう。いちいち人の神経を逆撫でるポイントを心得た発言しかしない男だ。無視という形で会話を強引に打ち切る。
常に笑顔を浮かべている球磨川はまるで変わりない。一人だけ知人の名が呼ばれなかった余裕か?いや違う。たとえ友人や肉親の名が呼ばれたところでこいつはいつもの笑顔でいるだろう。
明が二人と行動を共にしている理由の半分は球磨川だ。自分に余計な悪評が立って妨害されたり鮫島達に危害が及ぶのを防ぐ名目だ。
だが二人が死んだ今その効力も消えた。だというのに、こうして期限付きといはいえ連れ立ってるのはなぜか。
不気味だった。まるで見えない糸が足に括り付けられこちらの進路を誘導されているような。
球磨川は何も言わない。ただ明が球磨川を見て、言葉を聞き、直感で自分に被害を招くと察しているだけだ。
それこそ、知らず思考を誘導されてるかであるように。
負完全。
異常以上の、それ以下の何か。
混沌より這い寄る過負荷。
「大嘘憑き(オールフィクション)」なぞ、球磨川という黒点に彩りをつける飾りに過ぎない。
一度関われば無視を決め込もうが間に合わない。全てを引きずり込みグチャグチャに混ぜ合わせ台無しにする、負の引力こそが球磨川禊の真骨頂。
「……とんだ危険物を掴まされたようだな」
『え?』『明ちゃん爆弾持ってるの?』『それは危ない!』『うっかり支給品を調べようとした途端爆発して死にかけるようなヘマをしないでくれよ』『まあそれ僕なんだけど』
「球磨川。やっぱり暫く舌噛んどけお前」
普通(ノーマル)に生まれながら、
特別(スペシャル)な人生を歩み、
異常(アブノーマル)な強さを発揮しながら、
過負荷(マイナス)の結果しか残らない。
その本質を捉えつつある明が辿るのは、如何なる道に至るのか。
彼岸の果てまで遠く続く先は、いまだ見えない。
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