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真実の……バトルロワイアル 2

281せめて人間らしく ◆7ediZa7/Ag:2019/10/16(水) 23:40:24 ID:bSIn833M0





──臭いがする。

不確かな足取りで、だがはっきりとした目的を持って仁は街を歩いていた。

仁は視覚を喪っている。
だがその獣のごとき感覚は、こと標的を探し出す時は鋭敏に研ぎ澄まされる。
陽が昇ったというのに誰もいない無人の街。
灰色のコンクリートを踏みならし、仁はそれを探し当てた。

「──だ、誰だ? 七実か?」

ひどく甲高い声がした。
その声には震えがあり、不安が滲んでいることを仁は掴み取っていた。

「ああ……やっぱりいた」

だから、仁はおもむろにアマゾンズドライバーを装着し──炸裂させた。
全身のアマゾン細胞が活性化し、赤い獣、アマゾンアルファがその姿を現した。

「お、お主はまさか“あまぞん”」
「あぁ……」

震える声に対して、仁は安心させるように言った。

「そうだ、お前を──殺しにきた」

と。

……彼女のことを、仁は何一つ知らない。

彼女がとがめを名乗る奇策士であることは当然、その白い髪さえ光を喪った彼には視えていない。
だが──彼女がすでにアマゾンであることはわかっていた。
アマゾンの臭いは決して隠せない。
それこそが、彼がここに立つ理由であり、生きる唯一の意味だから。

故に彼は躊躇なく、彼女を殺しにやってきたのだった。

「殺しに、来た?」

対する彼女は──そこで何かを察するように声を出した。

「そうか、私は──こういう風に失敗するのか」

その言葉に込められているのか、決して絶望や恐怖の類ではなかった。
むしろどこか、腑に落ちるような、そのような響きさえあった。

「そうか──こうして、刀を奪われた私は、何の意味もなく、甲斐もなく、愛もなく──」

──だが、その響きは次第に変わっていった。

一度は受け入れたのかもしれない。
目の前の運命、避けようもない死を。
だが彼女の中の何かがそれを許さなかったのか、異なる想いがその言葉に含まれていた。

……鷹山仁は知らないのだ。

彼女の本当の名を。
他のすべてを捨ててでも諦めることのできない、一つの目的があることを。
一族を、家族をみな殺しにされた彼女の憎悪が、その長い髪を白く染め上げたことを。

その憎悪がある限り、彼女はその命を諦めることはあり得ない。

「認めて、なるものか」

彼女──容赦姫はだからこそ、立ち上がることを選んでいた。
舞い散る熱と共に、彼女はその身を顕現させる。

その熱は仁にとってもひどく馴染みのある感覚だった。

「私は──生きねばならぬのだ」

白き長髪のアマゾンは、その言葉と共に姿を現した。
仁は笑う。
ああ──やっぱり、殺さなくてはならない。
その事実を再確認しながら、その命を刈り取るべく地を蹴った。


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